JP4446651B2 - 高純度α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高純度α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルの製造方法に関し、詳しくは原料のα,ω−アルカンジオール残存量が5%以下で、α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルが70%以上の高純度α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルは、医農薬、塗料、半導体用UV硬化剤等の中間体として有用であることは公知であるが、その製造方法に関しては十分な検討がなされていなかった。従来、製造方法としては、
1)α,ω−アルカンジオールとエピハロヒドリンを硫酸、三弗化ホウ素エチルエーテル、四塩化錫等の酸性触媒の存在下に反応させて、モノハロヒドリンエーテルを製造し、次いで、このモノハロヒドリンエーテルを脱ハロゲン化水素剤と反応させて閉環せしめる2段階法、
2)α,ω−アルカンジオールとエピハロヒドリンとをアルカリ水酸化物を使用して一挙にα,ω−アルカンジオールのモノグリシジルエーテルを得る1段階法(特公昭42−20785号、特開平8−99968号公報参照)
が知られている。
【0003】
1)の2段階法は、α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルを選択的に得るのは困難であり、より高度な重合物が生成する。すなわちα,ω−アルカンジオールとエピハロヒドリンからα−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルを製造する場合、両者の当量比が1に近いとより高度な重合物の生成反応が主となり、α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルの収率はかなり低い。
【0004】
また、該反応はα,ω−アルカンジオール過剰で行うため、その回収工程が必要になる。特に、α,ω−アルカンジオールが1,4−ブタンジオールの場合、その回収は通常、残渣の熱履歴を避けるために減圧下で行うが、1,4−ブタンジオールは回収工程時に酸触媒により分子内脱水し、テトラヒドロフラン(以下THFと称する)を副生する。THFが副生すると、その蒸気圧により減圧度が低下し、残渣が熱履歴を受け、製品の純度低下につながる。
【0005】
2)の1段階法は、反応生成物中に、多種の副反応生成物が混在し、目的とするグリシジルエーテルの分離・精製が難しいだけでなく、収率が極めて低く、さらに、アルカリ金属水酸化物水溶液を用いると、反応容器の効率低下、廃水処理等の問題があるとして、非水系でポリアルキレングリコール誘導体を共存させるという提案(特開昭61−207381号公報参照)もなされている。しかし、この方法では、未反応のα,ω−アルカンジオール原料が多量に残存し、製品の純度が低く、満足のいくものではなかった。
【0006】
すなわち、高純度α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルは、通常、反応後水洗等によって副生塩を除去し、加熱によりエピハロヒドリンや水等の低沸物を留去した、いわゆる粗液のままで、又は、該粗液を蒸留精製してα−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルの原料アルコール付加体、2量体及びα,ω−ジグリシジルエーテル等の副反応生成物が分離除去された、いわゆる精製液とした後、次の製品化反応、例えばα−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルのα位のヒドロキシ基をアクリレート化する反応の原料として利用する。
【0007】
この製品化反応に際して、α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテル中に、未反応原料であるα,ω−アルカンジオールや、副反応生成物であるα−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルの原料アルコール付加体等、分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する化合物が存在すると、これらはジアクリレート等の分子中に2個以上のアクリレート基を有する化合物に変換され、架橋による性能劣化の原因となることが問題であった。また、上記蒸留精製に際しては、未反応原料α,ω−アルカンジオールが、分離性不良、回収中の環化(特に、1,4−ブタンジオールの場合)の原因となることも問題であった。
【0008】
さらに、種々の副反応生成物のうち、α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルの水和反応生成物であるα−ヒドロキシ−ω−(2,3−ジヒドロキシ)プロピルエーテルや、エピハロヒドリンの水和・脱ハロゲン化水素反応生成物であるグリシドールは、水溶性であって、水洗時に溶解除去されるので、粗液や精製液等の高純度α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルには混入しないものの、原料α,ω−アルカンジオール及びエピハロヒドリンの歩留まりを低下させる問題がある。加えて、上記のグリシドールは、重合してオリゴマー、ポリマー等の副反応生成物を形成すると、水洗時に水層と油層の間に中間層を形成して、分離を困難にする問題もあった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記のような種々の副反応生成物に起因する諸問題を解決するために、鋭意検討した結果、反応系の蒸留条件を適切な温度・圧力範囲内に設定し、かつ、反応系の水分を所定範囲内に維持することにより、実用上支障がない程度まで解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
本発明は上記2)の改良に関するもので、α,ω−アルカンジオールとエピハロヒドリンとを、アルカリ金属水酸化物の存在下に脱ハロゲン化水素反応させて、一段階でα−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルを製造するに際し、α,ω−アルカンジオールを1〜10倍モルのエピハロヒドリンに溶解した溶液に、該溶液中のα,ω−アルカンジオール1モルに対し0.9〜1.5モルのアルカリ金属水酸化物水溶液を徐々に供給し、温度25〜90℃、圧力3〜40kPa(絶対圧)の反応系から水とエピハロヒドリンとの共沸混合物を留出させ、凝縮分離したエピハロヒドリンを反応系に循環し、上記アルカリ金属水酸化物の供給及び/又は蒸留条件を調節して反応系の系内水分を2.0重量%以下に維持し、かつ、該系内水分の制御は、反応液温度の制御によって行うことを特徴とする高純度α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルの製造方法に存する。
【0011】
【発明の実施の形態】
脱ハロゲン化水素反応
本発明における、α,ω−アルカンジオールとエピハロヒドリンとの脱ハロゲン化水素反応は、脱ハロゲン化水素剤であるアルカリ金属水酸化物の存在下に行われるが、その際
(1)α,ω−アルカンジオールを、1〜10倍モルのエピハロヒドリンに溶解し、
(2)該溶液に、該溶液中のα,ω−アルカンジオール1モルに対し、0.9〜1.5モルのアルカリ金属水酸化物を含む水溶液を、徐々に供給することにより、ジグリシジルエーテルの生成を抑制し、モノグリシジルエーテルを主体とする反応生成物が得られる。また、このような供給方式をとることにより、エポキシ基の開環分解を最小限に止めることができる。
【0012】
さらに、本発明の脱ハロゲン化水素反応は、
(3)温度25〜90℃、圧力3〜40kPa(絶対圧)の反応系から水とエピハロヒドリンとの共沸混合物を留出させ、凝縮分離したエピハロヒドリンを反応系に循環し、
(4)上記アルカリ金属水酸化物の供給及び/又は蒸留条件を調節して反応系の系内水分を2.0重量%以下に維持することにより、原料のα,ω−アルカンジオール残存量が5%以下で、α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルが70%以上の高純度なα−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルを製造し、しかも、諸種の副反応生成物を実用上支障のない程度まで低減することができる。
【0013】
脱ハロゲン化水素反応温度は25〜90℃の範囲で、好ましくは40〜85℃の範囲で、より好ましくは60〜80℃の範囲内に設定し、水とエピハロヒドリンとが共沸するように減圧度を調整する必要がある。通常、圧力3〜40kPa(絶対圧)、好ましくは5〜35kPa(絶対圧)、より好ましくは10〜30kPa(絶対圧)の範囲内に設定される。脱ハロゲン化水素温度が25℃よりも低いと、反応が遅く、また水とエピハロヒドリンとの共沸蒸気の凝縮が困難になり好ましくない。逆に90℃よりも高いと、ポリマーが多く生成し、脱塩(水洗)時に中間層の生成、濾過時の目詰まり等の不具合が発生し好ましくない。
【0014】
反応系の水分を2.0重量%以下、好ましくは1.5重量%以下、経済的には0.02重量%以上に維持するには、まず、反応系の水分を、適切な方法で継続的に測定することが必要であるが、簡便には、液相からサンプリングした試料について、JIS K0068の4(カールフィッシャー滴定法)(2001年)等の水分分析方法で測定することができる。
【0015】
また、反応系の水分を、上記所定の範囲内に維持するには、アルカリ金属水酸化物の供給と蒸留条件を調節することによって行われる。すなわち、一定組成の水とエピハロヒドリンの共沸混合物が蒸発し、凝縮したエピハロヒドリンが循環されている反応系においては、水分及び減圧度が一定であれば、反応液温度も一定になるので、水分の制御は、反応液温度の制御によって行うのが実用的である。このような制御方法においては、反応液温度の微調整は、アルカリ金属水酸化物の供給速度を変更することによって実行可能である。しかし、アルカリ金属水酸化物の供給速度の増大は、コンデンサーの能力、加熱状態(エピハロヒドリンの循環量に影響)にもよるが、モノグリシジルエーテルの純度を低下させる傾向にあり、逆に、供給速度の減少は、純度は向上しても、反応時間が長くなる傾向にあるので、注意を要する。
【0016】
α,ω−アルカンジオール
用いられるα,ω−アルカンジオールとしては、総炭素数が2〜10であれば、直鎖でも1個以上の分岐鎖があっても問題はなく、特に限定されない。炭素数が10を超えると、生成するモノグリシジルエーテル体とジグリシジルエーテル体との沸点や、溶媒への溶解性などが近似してくるので、特に両者の分離が必要な場合、不具合を生じる。具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,3−ジメチル−1,4−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、2−エチル−1,4−ブタンジオール、2−ブチル−1,4−ブタンジオール等が挙げられる。これらの中でも、総炭素数が3〜6のα,ω−アルカンジオールが原料の取扱い性(融点、エピハロヒドリンへの溶解性)、反応性の観点から好ましく、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(以下、ネオペンチルグリコールと称す。)が特に好ましい。
【0017】
エピハロヒドリン
エピハロヒドリンの使用量は、α,ω−アルカンジオール1モルに対して1〜10モル、好ましくは2〜7モルであり、さらに好ましくは3〜5モルである。エピハロヒドリンの使用量が1モル未満の場合には、純度が低下し、WPE、粘度が高くなる。逆に、10モルを超えると反応速度が低下したり、エピハロヒドリン高モル付加体由来の高沸点物が多く生成し、WPE、粘度、塩素含有率が高くなるため好ましくない。
【0018】
エピハロヒドリンは、通常、エピブロモヒドリン、エピクロロヒドリン、エピヨードヒドリン、β−メチルエピブロモヒドリン、β−メチルエピクロロヒドリン等から選ばれる。入手の容易さ等から、好ましくはエピクロロヒドリンである。
【0019】
脱ハロゲン化水素剤
脱ハロゲン化水素剤としては、強アルカリが好適であり、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が挙げられる。中でも、水酸化ナトリウムが好ましい。他の弱アルカリ、例えば水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩もまた使用することができる。
アルカリ金属水酸化物は、水溶液として用いることが好ましいが、場合によっては粉末若しくは固形の脱ハロゲン化水素剤を、水と同時に又は別々に加えることもできる。好ましくは10〜50%水溶液で添加するのが良く、より好ましくは20〜50%水溶液である。
脱ハロゲン化水素剤として、アルカリ金属水酸化物の使用量はα,ω−アルカンジオール1モルに対して0.9〜1.5モルの範囲から選ばれ、1.0〜1.2モルが好ましい。該使用量がα,ω−アルカンジオールに対して上記下限モル比未満の場合には、グリシジルエーテル化されないハロヒドリンエーテル基が残存して純度が低下する。また、上記上限モル比を超えても無駄となるばかりでなく、生成したモノグリシジルエーテルの残るヒドロキシ基へさらにエピハロヒドリンが付加し、ジグリシジルエーテル化し、さらに、グリシジルエーテルへ水が付加し、グリセリルエーテル化する等の副反応によって製品の純度が低下するため好ましくない。
【0020】
後処理工程
上記脱ハロゲン化水素反応終了後、反応生成物からのα−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルの単離は、常法によって行うことができる。例えば、必要に応じて炭化水素等の非水溶性溶媒を加えた後、水洗して副生塩を溶出除去した後、脱溶媒、脱水、微量に析出する塩の濾過を行うことによって目的のα−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルを得ることができる。また、副生塩を除去する別法としては、濾過、遠心分離等の固液分離操作を行うことにより、目的のα−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルを得ることもできる。
【0021】
水洗に用いる水の量は、副生塩を溶出するに十分な量が選択されるが、便宜的な使用量の基準は、原料α,ω−アルカンジオールの量に対して200〜400重量%が選ばれる。水の使用量が少なすぎると、副生塩の除去が十分出来ない。逆に、多すぎると、水洗分離に要する時間が長くなり、また、製品の収率が低下し、廃水中のCOD負荷が高くなる。二層分離に要する時間を短くするには、多量の溶媒が必要となる。
【0022】
水洗温度は20℃〜80℃であり、35〜55℃が好ましい。20℃以下の低温では、副生塩の溶解に時間がかかる。逆に、80℃以上の高温では、α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルが加水分解し、α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルの収率及び純度が低下する。また、廃水中のCOD負荷が高くなる。水洗時間は通常5分間〜60分間である。
【0023】
水洗後、同温度範囲で静置、成層分離させる。分離後、水層を抜き出し、油層を加熱脱水する。脱水はα−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルが重合しないようにボトム温度を調節しながら減圧下で行うことが好ましい。脱水後、微量に析出する塩を濾過して、高純度α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテル(粗液)を得る。
この粗液は、未反応原料α,ω−アルカンジオールや、副反応生成物であるα−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルの原料アルコール付加体等、分子中にヒドロキシ基を2個以上有する化合物を若干量含有するが、アクリレート化用の中間体として利用する場合は、そのままアクリレート化反応を行うことができる。該アクリレート化反応後、蒸留精製を行い、2個以上のアクリレート基を有する不純物を除去すれば、架橋による性能劣化の問題のない、α−アクリロキシ−ω−グリシジルエーテルを取得することができる。
【0024】
蒸留精製工程
上記粗液は、未反応原料α,ω−アルカンジオール残存量が5%以下に低減されているので、α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルとの分離性不良、1,4−ブタンジオールの環化等の問題を発生する恐れはないが、まだ種々の副反応生成物、主としてα,ω−ジグリシジルエーテルや、α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルの原料アルコール付加体・2量体を含有しているので、用途によっては、これらを除去した高純度α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテル(精製液)を必要とする場合がある。その場合でも、上記の副反応生成物は、いずれも、α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルと比較的良好に蒸留分離することができる。
この場合の精製蒸留は、α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルの二量化(重合)防止の観点から、減圧下で行うことが好ましい。減圧度としては、ボトム温度をα−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルの二量化(重合)が起こらない温度で蒸留が行えるように調節する必要がある。
【0025】
【分析方法】
系内水分
JIS K0068の6(カールフィッシャー滴定法)(2001年)6.4電量滴定法、第10〜12頁に準拠して測定する。
【0026】
純度
製品の純度、ジグリシジルエーテル及び原料のα,ω−アルカンジオール、エピハロヒドリンの含有量はガスクロマトグラフィーを用いて測定した。測定条件の一例を以下に示す。
機種:(株)島津製作所製GC−17A
カラム:DB−1(膜厚0.25μm、内径0.25mm、長さ30m)
注入温度:250℃
カラム温度:150℃(5分間保持)→250℃(5℃/分の昇温)
各成分の含有量:表−1に示す保持時間の面積%を求めた。
【0027】
【表1】
【0028】
【実施例】
【0029】
以下に本発明を実施例により詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例における部及び%は、重量基準で示す。
【実施例1】
攪拌機、滴下ロート、温度計及びコンデンサー付き分離器を備えた1L容ガラス製フラスコに1,4−ブタンジオール126.6部、エピクロロヒドリン518.3部を仕込み、攪拌しながら絶対圧20kPaまで減圧にし、85℃のオイルバスで70℃まで加熱した。滴下中の系内水分は約1.4%で推移するよう、48%水酸化ナトリウム水溶液128.9部を5時間かけて連続滴下した。滴下中、水とエピクロロヒドリンは共沸するが、コンデンサーにて蒸気を凝縮し、分離器にてエピクロロヒドリンは系内に循環し(循環液量=約0.5%(対仕込液量)/分)、水のみ反応系外へ留去した。また、滴下中は、上記減圧度において、系内水分約1.4%を維持するために、反応系の温度を65℃に制御した。制御の微調整は、水酸化ナトリウム水溶液の滴下量によって行った。滴下終了後、同じ減圧度で共沸脱水を継続しながら65〜70℃に保ち、0.5時間熟成脱水を行った。留出水は合計102.8部であった。その後、反応系を常圧に戻し、析出した塩を溶解するために上水302.2部を添加した。40℃で10分間攪拌後、15分間静置した。水相394.5部を分離除去し、残った油相568.8部を減圧下加熱して未反応のエピクロロヒドリン344.3部、水23.8部を除去した。微量に析出した塩を濾過により除去し、目的とした1,4−ブタンジオールモノグリシジルエーテル193.7部が得られた(収率94.3%、純度70.0%)。
【0030】
【実施例2】
攪拌機、滴下ロート、温度計及びコンデンサー付き分離器を備えた1L容ガラス製フラスコにネオペンチルグリコール146.5部、エピクロロヒドリン518.3部を仕込み、攪拌しながら絶対圧20kPaまで減圧にし、85℃のオイルバスで70℃まで加熱した。滴下中の系内水分は約1.4%で推移するよう、48%水酸化ナトリウム水溶液129.0部を5時間かけて連続滴下した。滴下中、水とエピクロロヒドリンは共沸するが、コンデンサーにて蒸気を凝縮し、分離器にてエピクロロヒドリンは系内に循環し、水のみ反応系外へ留去した。また、滴下中は、上記減圧度において、系内水分約1.4%を維持するために、反応系の温度を65℃に制御した。制御の微調整は、滴下量によって行った。滴下終了後、同じ減圧度で共沸脱水を継続しながら65〜70℃に保ち、0.5時間熟成脱水を行った。留出水は合計99.1部であった。その後、反応系を常圧に戻し、析出した塩を溶解するために上水302.2部を添加した。40℃で10分間攪拌後、15分間静置した。水相420.5部を分離除去し、残った油相565.7部を減圧下加熱して未反応のエピクロロヒドリン332.0部、水17.0部を除去した。微量に析出した塩を濾過により除去し、目的としたネオペンチルグリコール−モノグリシジルエーテル210.2部が得られた(収率93.3%、純度70.8%)。
【0031】
【実施例3】
さらに実施例1と同様にして得られた、純度70.0%の1,4−ブタンジオールモノグリシジルエーテル(粗液)600.0gを1L容のガラス製蒸留フラスコに仕込み、段数5段のオルダーショー型蒸留塔を用いて、トップ圧力絶対圧400Pa、ボトム温度150℃で蒸留を行い、110℃/絶対圧400Paの1,4−ブタンジオール−モノグリシジルエーテル留分325.0部が得られた(蒸留収率54.2%、純度96.9%:精製液)。
【0032】
【比較例1】
攪拌機、滴下ロート、温度計及びコンデンサー付き分離器を備えた1L容ガラス製フラスコに1,4−ブタンジオール124.0部、エピクロロヒドリン543.2部を仕込み、攪拌しながら125℃のオイルバスで110℃まで加熱した。常圧で脱水しながら2時間をかけて48%水酸化ナトリウム水溶液169.5部を連続滴下した。滴下中、水とエピクロロヒドリンは共沸するが、コンデンサーにて蒸気を凝縮し、分離器にてエピクロロヒドリンは系内に循環し、水のみ反応系外へ留去した。脱水しながら100〜110℃に保ち、0.5時間熟成脱水を行った。留出水は合計118.0部であった。その後、減圧下加熱して未反応のエピクロロヒドリン343.3部を除去した。その後、析出した塩を除去するためにイソブタノール275.0部と上水439.0部とを添加した。40℃で10分間攪拌後、15分間静置後、油相と水相の間に中間層(グリシドールのオリゴマー、ポリマー類と推定される)が形成されているのが観察され、分離不良の状態となるが、この中間層を含む水相609.0部を分離除去し、残った油相472.6部を減圧下加熱してイソブタノール261.5部を回収した。微量に析出した塩を濾過により除去し、目的とした1,4−ブタンジオールモノグリシジルエーテル173.6部が得られた(収率86.3%、純度55.0%)。
【0033】
【比較例2】
攪拌機、滴下ロート温度計及びコンデンサー付き分離器を備えた1L容ガラス製フラスコに1,4−ブタンジオール126.2部、エピクロロヒドリン518.2部を仕込み、攪拌しながら絶対圧20kPaまで減圧にし、85℃のオイルバスで70℃まで加熱した。滴下中の系内水分は約2.5%で推移するよう、48%水酸化ナトリウム水溶液128.9部を2時間かけて連続滴下した。滴下中、水とエピクロロヒドリンは共沸するが、コンデンサーにて蒸気を凝縮し、分離器にてエピクロロヒドリンは系内に循環し(循環液量=約0.3〜0.4%(対仕込液量)/分)、水のみ反応系外へ留去した。また、滴下中は、上記減圧度において、系内水分約2.5%を維持するために、反応系の温度を62℃に制御した。制御の微調整は、滴下量によって行った。滴下終了後、同じ減圧度で共沸脱水を継続しながら60〜70℃に保ち、0.5時間熟成脱水を行った。留出水は合計103.3部であった。その後、反応系を常圧に戻し、析出した塩を溶解するために上水301.6部を添加した。40℃で10分間攪拌後、15分間静置後、油相と水相の間に中間層(グリシドールのオリゴマー、ポリマー類と推定される)が形成されているのが観察され、分離不良の状態となるが、この中間層を含む水相405.5部を分離除去し、残った油相567.8部を減圧下加熱して未反応のエピクロロヒドリン350.5部、水24.2部を除去した。微量に析出した塩を濾過により除去し、目的とした1,4−ブタンジオールモノグリシジルエーテル178.0部が得られた(収率87.0%、純度60.0%)。
【0034】
【比較例3】
攪拌機、滴下ロート、温度計及びコンデンサー付き分離器を備えた1L容ガラス製フラスコにネオペンチルグリコール130.5部、エピクロロヒドリン467.4部を仕込み、攪拌しながら絶対圧20kPaまで減圧にし、85℃のオイルバスで70℃まで加熱した。滴下中の系内水分は約2.5%で推移するよう、48%水酸化ナトリウム水溶液114.8部を2時間かけて連続滴下した。滴下中、水とエピクロロヒドリンは共沸するが、コンデンサーにて蒸気を凝縮し、分離器にてエピクロロヒドリンは系内に循環し、水のみ反応系外へ留去した。また、滴下中は、上記減圧度において、系内水分約2.5%を維持するために、反応系の温度を62℃に制御した。制御の微調整は、滴下量によって行った。滴下終了後、脱水を継続しながら60〜70℃に保ち、0.3時間熟成脱水を行った。留出水は合計78.4部であった。その後、反応系を常圧に戻し、析出した塩を溶解するために上水297.5部を添加した。40℃で10分間攪拌後、15分間静置後、油相と水相の間に中間層(グリシドールのオリゴマー、ポリマー類と推定される)が形成されているのが観察され、分離不良の状態となるが、この中間層を含む水相374.0部を分離除去し、残った油相530.5部を減圧下加熱して未反応のエピクロロヒドリン300.0部、水23.0部を除去した。微量に析出した塩を濾過により除去し、目的としたネオペンチルグリコール−モノグリシジルエーテル178.7部が得られた(収率89.0%、純度60.8%)。
【0035】
【表2】
【0036】
表−2から次のことがわかる。
実施例1と比較例1、比較例2、および実施例2と比較例3とから原料のα,ω−アルカンジオールを同じにした場合、系内水分濃度が2.0重量%以下の範囲で推移すると、製品の収率、純度がともに高いことがわかる。
さらに、実施例3から、実施例1で得られた製品をさらに蒸留精製した製品は、純度が非常に高いものになっていることがわかる。
Claims (8)
- α,ω−アルカンジオールとエピハロヒドリンとを、アルカリ金属水酸化物の存在下に脱ハロゲン化水素反応させて、一段階でα−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルを製造するに際し、
(1)α,ω−アルカンジオールを1〜10倍モルのエピハロヒドリンに溶解した溶液に、該溶液中のα,ω−アルカンジオール1モルに対し0.9〜1.5モルのアルカリ金属水酸化物水溶液を徐々に供給し、
(2)温度25〜90℃、圧力3〜40kPa(絶対圧)の反応系から水とエピハロヒドリンとの共沸混合物を留出させ、凝縮分離したエピハロヒドリンを反応系に循環し、
(3)上記アルカリ金属水酸化物の供給及び/又は蒸留条件を調節して反応系の系内水分を2.0重量%以下に維持し、かつ、該系内水分の制御は、反応液温度の制御によって行い、その際反応液温度の微調整は、アルカリ金属水酸化物の供給速度を変更することによって行う
ことを特徴とする高純度α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルの製造方法。 - α,ω−アルカンジオールを2〜7倍モルのエピハロヒドリンに溶解することを特徴とする請求項1に記載の高純度α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルの製造方法。
- 反応系の温度が40〜85℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高純度α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルの製造方法。
- アルカリ金属水酸化物の使用量が、α,ω−アルカンジオールに対して1.0〜1.2モルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の高純度α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルの製造方法。
- アルカリ金属水酸化物を10〜50重量%水溶液で供給することを特徴とする請求項4に記載の高純度α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルの製造方法。
- α,ω−アルカンジオールの総炭素数が3〜6であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の高純度α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルの製造方法。
- α,ω−アルカンジオールが1,4−ブタンジオール又は2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールであることを特徴とする請求項6に記載の高純度α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルの製造方法。
- エピハロヒドリンがエピクロロヒドリンであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の高純度α−ヒドロキシ−ω−グリシジルエーテルの製造方法。
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