JP4247582B2 - (メタ)アクリル酸グリシジルの精製方法及び製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は不純物としてα−クロルヒドリン類を含む(メタ)アクリル酸グリシジルの精製方法、及び(メタ)アクリル酸又はそのアルカリ金属塩とエピクロルヒドリンとを原料として不純物であるα−クロルヒドリン類の少ない(メタ)アクリル酸グリシジルを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エピクロルヒドリンを反応原料とする(メタ)アクリル酸グリシジルの一般的な製法には次の3方法がある。
(a) (メタ)アクリル酸とエピクロルヒドリンを第4級アンモニウム塩の存在下に反応させ、(メタ)アクリル酸の3−クロル−2−ヒドロキシプロピルエステルを得、これをアルカリにより脱塩化水素させる(特公昭46−34010号公報,特開昭48−5713号公報)。
(b) (メタ)アクリル酸とエピクロルヒドリンを第4級アンモニウム塩の存在下に反応させ、(メタ)アクリル酸の3−クロル−2−ヒドロキシプロピルエステルを得、エポキシ化合物とエステル交換反応させる(特公昭41−9005号公報,特公昭53−10575号公報,特開昭50−95216号公報)。
(c) (メタ)アクリル酸とアルカリを反応させ、(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩を得、次いで第4級アンモニウム塩の存在下に、エピクロルヒドリンと反応させ、脱塩化アルカリさせる(特公昭45−28762号公報,特公昭48−4006号公報,特開昭48−39423号公報)。
【0003】
いずれの方法によっても、その反応生成液にはα−クロルヒドリン類が含まれる。即ち1,3−ジクロル−2−プロパノール,2,3−ジクロル−1−プロパノール,グリセロール−α−モノクロルヒドリン,(メタ)アクリル酸の3−クロル−2−ヒドロキシプロピルエステル等である。この様なα−クロルヒドリン類は(メタ)アクリル酸グリシジルの品質の低下原因であるのみならず、含塩素化合物であるため、近年の環境問題の観点からも極力除去されることが望ましい物質である。
【0004】
この様なα−クロルヒドリン類を取り除くため、反応生成液を蒸留に供することが一般的である。しかし、(メタ)アクリル酸グリシジルは非常に重合性の高いモノマーであるため、充填物を内包する様な精留効果を有する蒸留塔を用いた場合、蒸留塔で生じる圧力差によりボトム温度が上昇するためボトムでの重合が懸念され、さらに蒸留塔充填物の滞留部分における重合等も懸念される。単蒸留ではこの様な不都合は回避されるが、上記α−クロルヒドリン類の完全な除去は不可能である。また、蒸留条件および重合禁止剤等の工夫により(メタ)アクリル酸グリシジルの重合トラブルを解決した上で、精留効果を有する蒸留塔を用いたとしても、α−クロルヒドリン類の中で特に1,3−ジクロル−2−プロパノールは(メタ)アクリル酸グリシジルと沸点が非常に近接しており、その除去は容易ではない。
このため、α−クロルヒドリン類が少ない(メタ)アクリル酸グリシジルを得る目的で、従来から実に多くの製造方法あるいは、精製方法に関する検討が見られる。
【0005】
α−クロルヒドリン類はアルカリにより脱塩化水素し閉環することが知られている。即ち1,3−ジクロル−2−プロパノール,2,3−ジクロル−1−プロパノールおよびグリセロール−α−モノクロルヒドリンは、アルカリと反応しエピクロルヒドリンあるいはグリシドールとなる。エピクロルヒドリンは蒸留精製により(メタ)アクリル酸グリシジルと分離することは容易である。グリシドールはエピクロルヒドリンほど容易に除去されないが、蒸留精製によりかなり低減は期待できる。また、(メタ)アクリル酸の3−クロル−2−ヒドロキシプロピルエステルはアルカリと反応し(メタ)アクリル酸グリシジルとなり、収率向上が期待できる。この様に(メタ)アクリル酸グリシジルもしくはその反応生成液にアルカリを添加することは、α−クロルヒドリン類を除去する上では非常に有効な手段である(特開平7−2818号公報,特開平9−59268号公報,特開平9−249657号公報)。しかし、アルカリの添加によりα−クロルヒドリン類が低下する一方で(メタ)アクリル酸グリシジルの加水分解反応をも触媒され収率が低下する。また、アルカリおよび副成する塩酸塩を除去するため水洗工程を加えなければならないし、この水洗を充分に行わないと蒸留工程にアルカリが同伴されるため、蒸留中に(メタ)アクリル酸グリシジルの加水分解が起こり精留品中のグリシドール濃度が増加したり、収率低下が起きる。またアルカリによりボトムの重合も促進される。
【0006】
特開平4−187682号公報では、第4級アンモニウム塩の存在下に反応生成液を酸素ガスと不活性ガスからなる混合ガスを吹き込みながらストリッピング処理し、塩素化合物を除去する方法が開示されている。また特開平7−309854号公報では、第4級アンモニウム塩とアルカリ金属塩の存在下に加熱処理した後、蒸留精製する方法が開示されている。これらの方法では、蒸留時に第4級アンモニウム塩が存在するため、高沸成分の増加あるいは重合物の発生が促進され、作業性の悪化および収率低下を招く。
【0007】
α−クロルヒドリン類を全く含まない(メタ)アクリル酸グリシジルの製造方法として、(メタ)アクリル酸メチルとグリシドールを塩基性触媒の存在下、エステル交換させる方法(特開昭47−18801号公報,特開昭55−11542号公報,特開昭55−102575号公報,特開平6−1780号公報)が開示されているが、グリシドールの貯蔵安定性の悪さおよび重合し易い等の問題がある。更に、(メタ)アクリル酸アリルをエポキシ化する方法(特公昭47−6289号公報,特開昭61−183275号公報,特開平5−92962号公報,特開平6−116254号公報等)があるが、原料価格が高く工程数も多くなり経済性が悪いという問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の従来技術における問題点を解決するための、従来技術には見られない全く新しい発想に基づく(メタ)アクリル酸グリシジルの新規な精製方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意検討した結果、(メタ)アクリル酸又はそのアルカリ金属塩とエピクロルヒドリンとを反応原料として得られる(メタ)アクリル酸グリシジルもしくは(メタ)アクリル酸グリシジルの反応生成液に含まれるα−クロルヒドリン類が、塩基性陰イオン交換樹脂との接触により容易に反応し脱塩化水素化され、高品位な(メタ)アクリル酸グリシジルが工業的に有利に製造できることを見いだし本発明を完成させた。
【0010】
すなわち本発明は、不純物としてα−クロルヒドリン類を含む(メタ)アクリル酸グリシジルを塩基性陰イオン交換樹脂に接触させる(メタ)アクリル酸グリシジルの精製方法、及び(メタ)アクリル酸又はそのアルカリ金属塩とエピクロルヒドリンとを触媒の存在下で反応させ(メタ)アクリル酸グリシジルを製造する方法において、(メタ)アクリル酸グリシジル及び不純物としてα−クロルヒドリン類を含む反応生成液を塩基性陰イオン交換樹脂に接触させた後、蒸留精製を行うことを特徴とする(メタ)アクリル酸グリシジルの製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明で言うα−クロルヒドリン類とは、1,3−ジクロル−2−プロパノール,2,3−ジクロル−1−プロパノール,グリセロール−α−モノクロルヒドリン,(メタ)アクリル酸の3−クロル−2−ヒドロキシプロピルエステル等である。
α−クロルヒドリン類に塩基性陰イオン交換樹脂を接触させると、塩基性陰イオン交換樹脂はアルカリと同様の触媒効果を発現し、α−クロルヒドリン類は脱塩化水素し閉環する。即ち1,3−ジクロル−2−プロパノール,2,3−ジクロル−1−プロパノールおよびグリセロール−α−モノクロルヒドリンは、塩基性陰イオン交換樹脂によりエピクロルヒドリンあるいはグリシドールとなる。(メタ)アクリル酸の3−クロル−2−ヒドロキシプロピルエステルは塩基性陰イオン交換樹脂により(メタ)アクリル酸グリシジルとなる。このとき、アルカリを添加する場合と異なり、(メタ)アクリル酸グリシジルのアルカリによる汚染が無く、また副成した塩化水素は塩基性陰イオン交換樹脂に捕捉されるため、水洗工程が不要である。更に、蒸留工程へのアルカリの同伴がないため、蒸留中の(メタ)アクリル酸グリシジルの加水分解および重合等の不都合が回避される。また塩基性陰イオン交換樹脂との接触による(メタ)アクリル酸グリシジルの加水分解も、アルカリを添加する場合と比較し格段に少ないし、ほとんど加水分解が無い条件が容易に選択できる。
【0012】
本発明で用いられる塩基性陰イオン交換樹脂としては、トリメチルアンモニウム基を官能基として有する強塩基性のI型と呼ばれる陰イオン交換樹脂、ジメチルエタノールアンモニウム基を官能基として有する強塩基性のII型と呼ばれる陰イオン交換樹脂、および1〜3級アミノ基を官能基として有する弱塩基性の陰イオン交換樹脂、さらにこれら強塩基性官能基と弱塩基性官能基の両方を有する中塩基性の陰イオン交換樹脂が例示できる。
塩基性陰イオン交換樹脂の基材樹脂はスチレン系であってもアクリル系であってもかまわない。塩基性陰イオン交換樹脂の形態はマクロポアを持たないゲル型であっても、ポーラス型,ハイポーラス型あるはMR型とよばれるマクロポアを有する構造であってもよく、本発明を実施する上で何等制約を受けない。、
【0013】
(メタ)アクリル酸グリシジルの反応生成液に塩基性陰イオン交換樹脂を接触させる場合、その接触時期は特に限定されないが、接触効率つまりα−クロルヒドリン類の濃度、および副成するエピクロルヒドリンあるいはグリシドールの分離除去を考えれば、反応生成液からエピクロルヒドリン等の低沸成分を有る程度留去した後、塩基性陰イオン交換樹脂を接触させ、蒸留精製するのが望ましい。
(メタ)アクリル酸グリシジルおよび(メタ)アクリル酸グリシジルの反応生成液に塩基性陰イオン交換樹脂を接触させるときの温度は、反応が進行し、なおかつ(メタ)アクリル酸グリシジルの重合が進行しない温度であり、5〜100℃が好ましい。当然この温度より塩基性陰イオン交換樹脂の耐用温度が優先するため、各銘柄の推奨温度範囲内で用いられるべきである。
(メタ)アクリル酸グリシジルおよび(メタ)アクリル酸グリシジルの反応生成液に塩基性陰イオン交換樹脂を接触させる方法は、回分式でも流通式でもかまわない。しかし、回分式の場合塩基性陰イオン交換樹脂の回収および再生等の操作が繁雑となるため、工業的には流通式が好適に実施される。
【0014】
不純物としてα−クロルヒドリン類を含む(メタ)アクリル酸グリシジルもしくは(メタ)アクリル酸グリシジルの反応生成液に塩基性陰イオン交換樹脂を接触させた後、用いられる蒸留方法は減圧蒸留であり、その方式は回分式でも連続式でもよい。
回分式で(メタ)アクリル酸グリシジルの反応生成液を蒸留する場合は次の操作手順が例示できる。まず反応生成液を重合禁止剤とともに釜に張り込み、所定圧力および所定温度で減圧蒸留を行い、低沸成分を留出させる。このときの重合防止を目的とした空気もしくは希釈空気を吹き込んでも良い。温度は(メタ)アクリル酸グリシジルの重合を避けるため、出来る限り低い温度が望ましく、それに伴い圧力も低く設定される。しかし、低沸成分を凝縮させる上で、圧力は冷媒温度およびコンデンサー能力にも依存する。一般的には釜温度は80℃以下、圧力は50torr以下が望ましい。低沸分が有る程度留出し終った後、所定温度に釜温度を保ち、塩基性陰イオン交換樹脂を所定量投入し、所定時間撹拌する。次に塩基性陰イオン交換樹脂を濾別した後、濾液を再び蒸留系に送り、所定圧力および所定温度とし、釜に空気もしくは希釈空気を吹き込みながら減圧蒸留を再開する。低沸成分を初留分として分取した後、製品として(メタ)アクリル酸グリシジルを留出させる。(メタ)アクリル酸グリシジルの留出中は蒸留塔の塔頂およびコンデンサーに重合禁止剤もしくは重合禁止剤を溶解した(メタ)アクリル酸グリシジルを添加してもよい。
【0015】
連続方式で(メタ)アクリル酸グリシジルの反応生成液を蒸留する場合は次の操作手順が例示できる。まず反応生成液を重合禁止剤とともに、所定圧力および所定温度の蒸留塔に連続的に仕込み減圧蒸留を行い、塔頂から有る程度低沸成分を留出させ、塔底から(メタ)アクリル酸グリシジルを含む反応生成液を抜き取る。また温度および圧力は上記と同じ理由で選択される。
塔底から抜き取られた(メタ)アクリル酸グリシジルを含む反応生成液を、所定温度に保たれた塩基性陰イオン交換樹脂が充填されたカラムに流通させる。このとき、所定の接触時間が得られる様に、充填長さ,流通速度および流通回数を設計する。
次に再び所定圧力および所定温度とした蒸留塔に反応生成液を連続的に仕込み、塔頂から低沸成分を抜き取り、サイドカットとして製品としての(メタ)アクリル酸グリシジルを留出させ、塔底より高沸成分を抜き取る。あるいは塔頂から低沸成分を抜き取り、塔底より高沸成分を含む(メタ)アクリル酸グリシジルを留出させ、更にこの高沸成分を含む(メタ)アクリル酸グリシジルを次の蒸留塔に連続的に仕込み塔頂より製品として(メタ)アクリル酸グリシジルを留出させ、塔底より高沸成分を抜き取る。
いずれの蒸留塔においても、重合防止を目的とした空気もしくは希釈空気を吹き込んでも良いし、蒸留塔内あるいは塔頂およびコンデンサーに重合禁止剤もしくは重合禁止剤を溶解した(メタ)アクリル酸グリシジルを添加してもよい。
【0016】
【発明の効果】
(イ)本発明の精製方法により、(メタ)アクリル酸グリシジルにアルカリ、塩酸及び/又は塩化アルカリの混入あるいは溶解が無いため新たに水洗工程を追加する必要が無く、塩基性陰イオン交換樹脂に接触、例えば塩基性陰イオン交換樹脂が充填されたカラムを流通させるだけの簡便な方法で効率的にα−クロルヒドリン類が低減できるため、工業的に有利に高品位な(メタ)アクリル酸グリシジルが製造できる。
(ロ)本発明の精製方法により、(メタ)アクリル酸グリシジルの蒸留母液にアルカリ、塩酸及び/又は塩化アルカリ等の混入あるいは溶解が無いため、ボトムにおける重合が促進されない。このため釜残量を多く取る必要が無いため、収率および生産性が向上する。
(ニ)本発明の精製方法により、(メタ)アクリル酸グリシジルと分離することが極めて困難な1,3−ジクロル−2−プロパノールを低減できるため、分離能力の高い蒸留塔を用いる必要が無く、蒸留塔で生じる圧力差のため生じるボトム温度の上昇による重合、および蒸留塔充填物の滞留部分における重合等、生産性を著しく低下させる重合トラブルが回避されるため、生産性が向上する。
(ホ)従来は(メタ)アクリル酸グリシジルと沸点が極めて近接している低沸のα−クロルヒドリン類(1,3−ジクロル−2−プロパノール)を低減するためには、初留カット分を多く取る必要があった。また、高沸のα−クロルヒドリン類(2,3−ジクロル−1−プロパノール,グリセロール−α−モノクロルヒドリン,(メタ)アクリル酸の3−クロル−2−ヒドロキシプロピルエステル)を低減するために、高沸カット分を多く取る必要があった。しかし、本発明の精製方法により初留カット分および高沸カット分が少なくて済むため、初留カットおよび高沸カット中に含まれるメタクリル酸グリシジルが少なくなり、収率が向上する。
(ヘ)エピクロルヒドリンと(メタ)アクリル酸とから(メタ)アクリル酸グリシジルを製造する方法において、副生成物である(メタ)アクリル酸の3−クロル−2−ヒドロキシプロピルエステルと未反応のエピクロルヒドリンが反応し、1,3−ジクロル−2−プロパノールと(メタ)アクリル酸グリシジルが生じる。反応後に触媒である第4級アンモニウム塩が充分に除去できないままに、蒸留等加熱処理されると、この逆反応が起こる。未反応のエピクロルヒドリンを初留として反応生成液から取り除いても、1,3−ジクロル−2−プロパノールが共存する状態で蒸留すれば、(メタ)アクリル酸グリシジルの留出中に新たにエピクロルヒドリンが生成し、精留品に同伴されることになる。つまり本発明の精製方法及び製造方法により、1,3−ジクロル−2−プロパノールが低減されるため、精留品中のエピクロルヒドリン濃度が低下する。更に蒸留時の(メタ)アクリル酸グリシジルの損失も防ぐ。
【0017】
【実施例】
以下に実施例,および比較例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、含有成分の同定および定量はガスクロマトグラフィー分析により行い、各成分濃度は単純面積率で示した。
[ガスクロマトグラフィー分析の条件]
機種 :島津製作所(株)製 GC−14A
カラム:キャピラリーカラム J&W製 PEG−20M(DBWAX)
インジェクション温度=230℃
カラム温度 =100℃〜230℃:4℃/min.の昇温速度
ディテクター温度 =230℃
[塩基性陰イオン交換樹脂の前処理]
市販品の塩基性陰イオン交換樹脂100g(湿潤状態)に2N−NaOHを200cc加え10分以上撹拌した後、濾過しイオン交換水で洗液が中性になるまで洗浄した。この操作を更に2回繰り返した後、イオン交換水1000cc中で1昼夜撹拌し、洗液が中性であることを確認してからメタノールで洗浄した。その後、40℃で5時間真空乾燥した。
【0018】
実施例1
メタクリル酸,炭酸ナトリウムおよびエピクロルヒドリンを原料として得られたメタクリル酸グリシジルを75%含む反応生成液100gを200ccのナス型フラスコにとり、強塩基性I型の陰イオン交換樹脂であるダイヤイオンPA308(三菱化学(株)製)10gを加え、室温で1時間撹拌した。塩基性陰イオン交換樹脂を濾別した後、濾液のガスクロマトグラフィー分析を行った。塩基性陰イオン交換樹脂を接触させる前後の1,3−ジクロル−2−プロパノールおよびメタクリル酸の3−クロル−2−ヒドロキシプロピルエステルの濃度を表1に示す。
【0019】
実施例2〜4
実施例1と同じ条件でメタクリル酸グリシジルの反応生成液に、強塩基性I型の陰イオン交換樹脂であるダイヤイオンPA318(三菱化学(株)製),弱塩基性の陰イオン交換樹脂であるダイヤイオンWA30(三菱化学(株)製),および強塩基性II型の陰イオン交換樹脂であるアンバーライトIRA411S(オルガノ(株))を各々接触させ、ガスクロマトグラフィー分析を行った。1,3−ジクロル−2−プロパノールおよびメタクリル酸の3−クロル−2−ヒドロキシプロピルエステルの濃度を表1に示す。
【0020】
表1から明かな様に、メタクリル酸グリシジルの反応生成液に含まれるα−クロルヒドリン類(1,3−ジクロル−2−プロパノールおよびメタクリル酸の3−クロル−2−ヒドロキシプロピルエステル)が、室温で塩基性陰イオン交換樹脂と接触させるだけで低下する事がわかる。また、塩基性陰イオン交換樹脂は強塩基性I型,強塩基性II型および弱塩基性いずれにおいても同様の効果が認められる。
【0021】
実施例5
メタクリル酸,炭酸ナトリウムおよびエピクロルヒドリンを原料としてえられた表2に示す組成を有するメタクリル酸グリシジルの反応生成液500gを1000ccの3角フラスコに取り、塩基性陰イオン交換樹脂アンバーリストA21(オルガノ(株))25gを加え、60℃のオイルバスに浸漬し1時間撹拌した。その後塩基性陰イオン交換樹脂を濾別した。
温度計および空気供給用のキャピラリーを備えた500ccの3口フラスコ,冷却管,メタノール/ドライアイスで冷却された真空トラップおよび真空ポンプから成る蒸留装置を用い、塩基性陰イオン交換樹脂と接触させたメタクリル酸グリシジルの反応生成液の単蒸留試験を行った。
塩基性陰イオン交換樹脂と接触させた反応生成液400gと、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(川口化学(株),アンテージ3C)0.8gを3口フラスコに入れオイルバスに浸漬した後、塔頂圧力を6torr、オイルバスの設定温度を80℃とし室温から加熱を開始した。エピクロルヒドリンが留出し終わったところで、塔頂圧力を4torr、オイルバスの設定温度を100℃とし蒸留を継続した。留出したエピクロルヒドリン,真空トラップおよび初留カット分の合計量が反応生成液の約30wt%に到達したところで、初留カットを止め精留品の採取を始めた。反応生成液の約85wt%が留出するまで蒸留を継続した。このとき釜残の重合は認められなかった。メタクリル酸グリシジル留出時の液相温度は74〜90℃、蒸留塔の塔頂温度は71〜72℃であった。得られた精留品のガスクロマトグラフィー分析結果を表2に示す。
【0022】
比較例1
塩基性陰イオン交換樹脂と接触させていない実施例5と同じメタクリル酸グリシジルの反応生成液400gと、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン0.8gを3口フラスコに入れ、実施例5と同様の蒸留装置を用い同様の条件で単蒸留を行った。留出したエピクロルヒドリン,真空トラップおよび初留カット分の合計量が反応生成液の約30wt%に到達したところで、初留カットを止め精留品の採取を始めた。反応生成液の約85wt%が留出するまで蒸留を継続した。このとき釜残の重合は認められなかった。得られた精留品のガスクロマトグラフィー分析結果を表2に示す。
【0023】
表2から明かな様に、塩基性陰イオン交換樹脂と接触させるだけの単純な操作で、メタクリル酸グリシジルとの分離が極めて困難な1,3−ジクロル−2−プロパノールの大幅な低減が可能となり、メタクリル酸グリシジルの純度が向上した。また蒸留時のボトムにおける重合の促進、および精留品中のエピクロルヒドリンあるいはグリシドール濃度の増加等、既存技術において認められた不都合も認められない。
【0024】
【表1】
表中、1,3−DCPは1,3−ジクロル−2−プロパノールを、MACEはメタクリル酸の3−クロル−2−ヒドロキシプロピルエステルを表す。
【0025】
【表2】
表中、EpCHはエピクロルヒドリンを、GMAはメタクリル酸グリシジルを、1,3−DCPは1,3−ジクロル−2−プロパノールを表す。
Claims (2)
- (メタ)アクリル酸又はそのアルカリ金属塩とエピクロルヒドリンとを触媒の存在下で反応させ(メタ)アクリル酸グリシジルを製造する方法において、(メタ)アクリル酸グリシジル及び不純物としてα−クロルヒドリン類を含む反応生成液から低沸成分を留去した後、該反応生成液を塩基性陰イオン交換樹脂に接触させた後、蒸留精製を行うことを特徴とする(メタ)アクリル酸グリシジルの製造方法。
- α−クロルヒドリン類が1,3−ジクロル−2−プロパノールである請求項1記載の(メタ)アクリル酸グリシジルの製造方法。
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