JP4445693B2 - プロジェクタの投射面色補正方法、プロジェクタの投射面色補正システムおよびプロジェクタの投射面色補正用プログラム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はプロジェクタの投射面色補正方法、プロジェクタの投射面色補正システムおよびプロジェクタの投射面色補正用プログラムに関し、特にカラー画像を色のある壁等に投影した場合に、良好な色再現を実現できる、プロジェクタの投射面色補正方法、プロジェクタの投射面色補正システムおよびプロジェクタの投射面色補正用プログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の補正回路付プロジェクタの一例が、特開平4−53374号公報「補正回路付プロジェクタ」に記載されている。図4に示すように、この従来の補正回路付プロジェクタは、プロジェクタ10から投射面Sに投射された画像を情報検出部11により読み取り、補正回路12が白バランス調整と輝度調整を行なう。色と輝度が調整された画像がドライバ13を介して再びプロジェクタ10により、投射される。
【0003】
ここで、白バランス調整がどのように行なわれるかは全く述べられていないので、どのように実現されるかは不明であるが、テレビジョン技術等で一般に行なわれる白バランス(ホワイトバランス)調整は、赤(R),緑(G),青(B)の3種の原色光の強度を調整し、例えば投射面Sの影響で白が黄色を帯びている場合には、青光を通常のmb倍にして、白色光を投影したときに投影面上で白色が得られるものと推察される。
【0004】
すなわち、本来の各画素の赤,緑,青の強度がR,G,Bであるとき、式(1)のような補正が行なわれ、R’,G’,B’の強度の色光が投影される。ここで、mr,mg,mbは比例係数である。
【0005】
これにより、白色は正しい色に表示される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記に示した従来の方法の問題点は、白色のみが厳密な補正の対象となっており、カラー画像中のその他の色は近似的にバランスのみが補正される。そのため、例外的な場合を除き、カラー画像の正しい色再現を行なうことはできない。
【0007】
本発明の目的は、色再現の原理に基づいてプロジェクタの色補正を行なうことができるプロジェクタの投射面色補正方法、プロジェクタの投射面色補正システムおよびプロジェクタの投射面色補正用プログラムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、カラー画像を壁面等の投射面に投射して画像を表示するプロジェクタにおいて、前記カラー画像の原色の混合量を三刺激値に変換する第1の変換行列と、三刺激値を投影画像の原色の混合量に変換する投射面の色情報に基づいて作成された第2の変換行列とから第3の変換行列を計算し、前記第3の変換行列によって、前記カラー画像の原色の混合量を、前記投影画像の原色の混合量に変換することにより、色再現を行なう。
【0009】
また、本発明は、カラー画像を壁面等の投射面に投射して画像を表示するプロジェクタの投射面色補正システムにおいて、壁面等の投射面の分光情報あるいは光源下での色情報を記憶する壁色記憶手段と、前記カラー画像の原色の混合量を三刺激値に変換する第1の変換行列と、三刺激値を投影画像の原色の混合量に変換する前記壁色記憶手段に記憶された前記色情報に基づいて作成された第2の変換行列とから第3の変換行列を計算する原色変換構築手段と、本来の投射面に画像を投射するための原色の混合量を、前記原色変換構築手段により得られた第3の変換行列により実際に投射するための原色の混合量に変換するための色変換手段と、を含み、該色変換手段の出力をプロジェクタに与えて画像を表示する。
【0010】
また、本発明は、カラー画像を壁面等の投射面に投射して画像を表示するプロジェクタにおいてコンピュータにより実行される投射面色補正プログラムであって、壁面等の投射面の分光情報あるいは光源下での色情報を記憶し、前記カラー画像の原色の混合量を三刺激値に変換する第1の変換行列と、三刺激値を投影画像の原色の混合量に変換する記憶された前記色情報に基づいて作成された第2の変換行列とから第3の変換行列を計算する処理と、前記カラー画像の原色の混合量を前記第3の変換行列を用いて変換した原色の混合量を実際に投影するカラー画像として出力する処理とをコンピュータに実行させる。
【0011】
【発明の実施の形態】
最初に、本発明の投射面色補正システムの補正の原理を色再現の理論にのっとり説明する。本来、カラープロジェクタは、CRT等と同様に3種類の原色光の混合により所望の色を投影する。3種の原色光の単位強度あたりの分光強度を、Ir,Ig,Ibとし、それぞれの相対強度をR,G,Bとすれば、プロジェクタから投射される任意の光Iは、式(2)のように書かれる。
【0012】
ここで、たとえば、
【0013】
であり、それぞれの要素は各波長における光の強度を示す。
この光を測色すると、CIE1931 XYZ座標系により、式(3)のようになる。
【0014】
ここで、
【0015】
は等色関数である。
【0016】
測色的な色再現としては、投射面上でこの3刺激値XI,YI,ZIを実現すればよい。投射面が白色のスクリーンのようなものであれば問題ないが、例えばクリーム色の壁のような場合には、そのままでは色は次のようになる。壁の分光反射率をβ、
【0017】
であると、各原色光は壁の色により成分が変化し、式(5)のような色光として目に見える。
【0018】
混合された光も式(6)のI’となり、測色値は式(7)のようになる。
【0019】
【0020】
この三刺激値は元の値とは異なっており、異なった色になる。
【0021】
しかし、上記の解析から、双方の色再現範囲内で再現色を一致させるには、式(6)の各原色の相対強度をR,G,Bと異なるR',G',B'として得られたI’に対して式(7)を適用した三刺激値が一致すればよいため、式(8)が成立すればよいことが分かる。
【0022】
これをR',G',B'について解くと、式(9)が解である。
【0023】
あるいは、
【0024】
ここで、
【0025】
式(11)に現れる要素は、プロジェクタの分光強度と投射面の分光反射率が既知、測定可能、あるいは、プロジェクタの原色値とプロジェクタの原色光が投射面で反射される色が既知、測定可能であれば、計算することができる。因みにプロジェクタの原色値は、CIE 1931-XYZ系で、
【0026】
で、プロジェクタの原色光が投射面で反射される色は、同じく、
【0027】
で表わされるため、式(11)は、式(11’)とも書ける。
【0028】
念のために述べれば、従来の技術である白バランスの補正は、以下のように説明される。
プロジェクタの各原色光の相対強度が1のときに色が白になるように本来の設計がされていると仮定する。すると、白を表示する際のプロジェクタの相対強度R'w,G'w,B'wは、式(9)にR=G=B=1を代入することにより、式(12)のように求まる。
【0029】
そして、このように正規化された相対強度に対して従来と同じ比率で三原色強度を変化させ、投射されることになるため、例えばkを定数として式(1)に式(13)を代入した形となる。
【0030】
反射された光は式(6)の代わりに式(14)のようになる。
【0031】
その三刺激値は、
【0032】
となり、式(3)のXYZ値とは、一般には比例しない。
【0033】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本発明の第1の実施の形態の色補正型プロジェクタ1を、図1を参照して説明する。色補正型プロジェクタ1には、三原色映像信号R,G,Bが入力される。従来型プロジェクタ2は、本来はこの三原色映像信号R,G,Bが入力されれば、白いスクリーン上に正しい色の画像が表示される。この三原色映像信号R,G,Bは色変換手段3に入力され、式(11)に示された3×3の行列Aにより、三原色映像信号R',G',B'に変換され、従来型プロジェクタ2に印加される。壁色記憶手段4は壁色に関する情報を記憶しており、行列計算手段5は該情報により行列Aを求め、色変換手段に出力する。上記色変換手段3は、該Aを用いて上記変換を行なう。
【0034】
先に述べたように、壁色記憶手段4が記憶している情報は、壁色に関する分光反射率でもよいし、従来型プロジェクタ2で用いている光源の三原色光が壁で反射された反射光の三刺激値等の色に関する情報でもよい。
【0035】
行列計算手段5の働きは、壁色記憶手段4が記憶している情報が壁色に関する分光反射率ならば、この情報と既知である等色関数と従来型プロジェクタ2で用いられている光源の三原色光の分光強度とから式(11)により行列Aを計算するように構成される。また、壁色記憶手段4が記憶している情報が光源の三原色光が壁で反射された反射光の三刺激値等の色に関する情報ならば、行列計算手段5の働きは、この情報と既知である従来型プロジェクタ2で用いられている光源の三原色光の色情報とから式(11’)により行列Aを計算するように構成される。
【0036】
尚、上記の説明では、色補正型プロジェクタ1は、その中に従来型プロジェクタ2および色変換手段3、壁色記憶手段4、行列計算手段5を含んでおり、外部から与えられる三原色信号は、従来型プロジェクタ2を用いて白いスクリーンに画像を投影する場合と同じ信号であるように構成されている。しかし、例えば、従来型プロジェクタ2がコンピュータの表示装置として用いられている場合には、色変換手段3、壁色記憶手段4、行列計算手段5は、コンピュータ内のプログラムとして実行し、その変換結果である(R',G',B')値を、従来型プロジェクタ2に与えることで全く同じ効果が実現できる。
【0037】
本発明の第2の形態の自律色補正型プロジェクタ7を図2を参照して説明する。自律色補正型プロジェクタ7は、前述の色補正型プロジェクタ1に対して、カラーセンサ6が付加されている。カラーセンサ6は色補正型プロジェクタ1が投射面8に画像を投射するエリアの中心部の色を測定する。自律色補正型プロジェクタ7の実施例を以下に説明する。以下では、色補正型プロジェクタ1に外部から与えられるR,G,Bの信号はそれぞれ0から1の値をとると仮定する。0が最暗値、1が最明値である。実際には、例えば、ディジタル値で8ビットのエンコード方法が用いられる場合には、この255倍した値が用いられる。
【0038】
壁のような投射面8が定まった状態で、較正モードとなり、プロジェクタはまず(R,G,B)=(1,0,0)で原色の赤を、(R,G,B)=(0,1,0)で原色の緑を、(R,G,B)=(0,0,1)で原色の青を投射面8に投射し、そのときの投射面の色をカラーセンサにより、測定する。この測定により、投射面8に対する(X'r Y'r Z'r),(X'g Y'g Z'g),(X'b Y'b Z'b)が求まる。このデータは、色補正型プロジェクタ1の壁色記憶手段4に伝えられる。行列計算手段5は、この値と既知である本来の三刺激値である、(Xr Yr Zr),(Xg Yg Zg),(Xb Yb Zb)を用いて式(11’)により補正行列Aを計算する。
【0039】
尚、上記の説明では、自律色補正型プロジェクタ7は、その中に色補正型プロジェクタ1とカラーセンサ6を含んでいるが、プロジェクタがコンピュータの表示装置として用いられているような場合、カラーセンサ6はコンピュータに接続し、壁色に関する情報をコンピュータから色補正型プロジェクタ1に与えるように構成しても、全く同じ効果が実現できる。また、前に記述したように、色変換手段3、壁色記憶手段4、行列計算手段5を、コンピュータ内のプログラムとして実行している場合には、カラーセンサからの入力値を用いて色変換までのすべての処理をプログラムで実行し、その変換結果である(R',G',B')値を、従来型プロジェクタ2に与えることでも全く同じ効果が実現できる。
【0040】
本発明によれば、色のついた壁にカラー画像を投影する場合においても、プロジェクタで測色的に正しい色でカラー画像を投影することが可能となる。但し、元の画像の(R,G,B)値に対して式(11)のような変換により(R',G',B')という、各原色を制御する値が得られるが、変換行列Aによってはいずれかの値が制御範囲である0〜1の範囲を越えることが予想される。これは、壁等の色によりプロジェクタの色再現範囲が狭くなることを意味している。通常、壁等に使われている色は濃度の低いものであるので、画像の色再現に与える影響は小さいが、濃度の高い色の壁等への投射の場合には、色再現域が狭くなることによる影響は大きくなる。
【0041】
このように色再現域が狭いデバイスに対して、元の画像を違和感なく再現するための手法として、従来、CRTなどのカラーモニタに表示されるべき画像を色再現域が狭いカラープリンタ等に違和感なく出力するために種々の画像の変換方法が知られている。例えば、特願平05−127640「自動色再現域変換方法、自動色再現域変換装置および自動色変換装置」には、そのような場合の最適な色変換を行なう方法が記述されている。
【0042】
本発明の色補正型プロジェクタ1の色変換手段3に色再現域変換の機能を含めた実施例を図3を参照して説明する。このでは、入力となる本来の(R,G,B)値に対して行列変換手段31が式(11)あるいは式(11’)の変換を施して(R'',G'',B'')を出力する。これらの値は0〜1の外の色再現域外の値を持っていることがあるが、更に色域圧縮手段32がこれに適用され再現域内の値(R',G',B')が出力されて従来型プロジェクタ2に印加される。このような構成にすると、濃度の高い色の壁に対しても違和感の小さいカラー画像を表示することが可能である。
【0043】
本発明では、基本的な原色の混合量を変換するには行列演算を用いているが、この演算の一部または全部を代表的な値についてLUT(Look Up Table)を検索しその間を内挿するような計算で実現することも可能である。このような実現方法を用いると、上述の色再現域変換の部分も同時にLUTに含めて実現することが可能である。
【0044】
【発明の効果】
本発明は、壁等の色のついた投射面に対して、その色を測定しておく、あるいは、カラーセンサによりその色を測定することによって、原色光の色の変化を計算することにより、測色的に正しい色再現を行なうことを可能とするため、色のついた投射面に対しても良い色再現を行なうことができる効果がある。
【0045】
また、壁色の濃度が高い場合、色再現域が狭くなり違和感の高い画像となるが、公知の色域圧縮手段を利用することで、違和感を減少させた色再現が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の色補正型プロジェクタの色変換手段に色再現域変換の機能を含めた実施例を示すブロック図である。
【図4】従来例を説明するブロック図である。
【符号の説明】
1 色補正型プロジェクタ
2 従来型プロジェクタ
3 色変換手段
4 壁色記憶手段
5 行列計算手段
6 カラーセンサ
7 自律色補正型プロジェクタ
8 投射面
Claims (9)
- カラー画像を壁面等の投射面に投射して画像を表示するプロジェクタにおいて、前記カラー画像の原色の混合量を第1の三刺激値に変換する第1の変換行列と、前記投射面の色情報に基づいて前記投射面に表示された画像の第2の三刺激値を投影画像の原色の混合量に変換する第2の変換行列とから第1の三刺激値と第2の三刺激値とを一致させる第3の変換行列を計算し、前記第3の変換行列によって、前記カラー画像の原色の混合量を、前記投影画像の原色の混合量に変換することにより、色再現を行なうことを特徴とするプロジェクタの投射面色補正方法。
- 該変換により再現範囲外に出た色を色域圧縮することにより、再現範囲内で色再現を行なうことを特徴とする請求項1記載のプロジェクタの投射面色補正方法。
- カラー画像を壁面等の投射面に投射して画像を表示するプロジェクタにおいて、カラーセンサにより壁面等の投射面の分光情報あるいは色情報を測定し、該測定情報を用いることを特徴とする請求項1または2記載のプロジェクタの投射面色補正方法。
- カラー画像を壁面等の投射面に投射して画像を表示するプロジェクタの投射面色補正システムにおいて、壁面等の投射面の分光情報あるいは光源下での色情報を記憶する壁色記憶手段と、前記カラー画像の原色の混合量を第1の三刺激値に変換する第1の変換行列と、前記壁色記憶手段に記憶された前記色情報に基づいて前記投射面に表示された画像の第2の三刺激値を投影画像の原色の混合量に変換する第2の変換行列とから第1の三刺激値と第2の三刺激値とを一致させる第3の変換行列を計算する原色変換構築手段と、本来の投射面に画像を投射するための原色の混合量を、前記原色変換構築手段により得られた第3の変換行列により実際に投射するための原色の混合量に変換するための色変換手段と、を含み、該色変換手段の出力をプロジェクタに与えて画像を表示することを特徴とするプロジェクタの投射面色補正システム。
- 前記色変換手段により再現範囲外に出た色を再現範囲内の色に変換する色域圧縮手段をさらに含むことを特徴とする請求項4記載のプロジェクタの投射面色補正システム。
- 壁面等の投射面の分光情報あるいは色情報を測定するカラーセンサを含み、該カラーセンサにより得られる分光情報あるいは色情報を利用することを特徴とする請求項4または5記載のプロジェクタの投射面色補正システム。
- カラー画像を壁面等の投射面に投射して画像を表示するプロジェクタにおいてコンピュータにより実行される投射面色補正プログラムであって、壁面等の投射面の分光情報あるいは光源下での色情報を記憶し、前記カラー画像の原色の混合量を第1の三刺激値に変換する第1の変換行列と、記憶された前記色情報に基づいて前記投射面に表示された画像の第2の三刺激値を投影画像の原色の混合量に変換する第2の変換行列とから第1の三刺激値と第2の三刺激値とを一致させる第3の変換行列を計算する処理と、前記カラー画像の原色の混合量を前記第3の変換行列を用いて変換した原色の混合量を実際に投影するカラー画像として出力する処理とをコンピュータに実行させるためのプロジェクタの投射面色補正プログラム。
- 前記第3の変換行列により再現範囲外に出た色を再現範囲内の色に変換する処理をさらにコンピュータに実行させるための請求項7記載のプロジェクタの投射面色補正プログラム。
- 前記壁面等の投射面の分光情報あるいは色情報を得るために、カラーセンサにより壁面等の投射面の分光情報あるいは色情報を測定する処理をコンピュータに実行させるための請求項7または8記載のプロジェクタの投射面色補正プログラム。
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