JP4439700B2 - 樹脂層形成装置、樹脂層の製造方法、及び積層体の製造装置と製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は支持体上に樹脂層を形成するための樹脂層形成装置、及び樹脂層の製造方法に関する。また、本発明は、支持体上に樹脂層と金属薄膜層とからなる積層体を製造するための積層体の製造装置及び製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
真空中で樹脂材料を加熱して蒸発・気化させて支持体上に付着させ、支持体上に樹脂層を形成する方法、及び、これを利用して、樹脂層を積層する工程と金属薄膜層を積層する工程とを一単位として、これを周回する支持体上で繰り返すことにより、樹脂層と金属薄膜層とが交互に積層された積層体を製造する方法が、例えば欧州特許公開第0808667号等で知られている。
【0003】
このような樹脂層と金属薄膜層との積層体の製造方法の一例を図面を用いて説明する。
【0004】
図9は、従来の積層体の製造装置の一例の概略を模式的に示した断面図である。
【0005】
図9において、901は真空槽、902は真空槽901内部を所定の真空度に維持する真空ポンプである。903は真空槽901内に設置された、図中の矢印903aの方向に回転する円筒形状のキャンローラ、910は樹脂層形成装置、921は樹脂硬化装置、923は金属薄膜形成装置である。
【0006】
樹脂層形成装置910は、樹脂層を形成するための樹脂材料を蒸発・気化させて、キャンローラ903の外周面に向けて放出する。キャンローラ903は所定の温度に冷却されているから、樹脂材料は冷却されてキャンローラ903の外周面に膜状に堆積する。
【0007】
樹脂材料の気化は以下のようにして行う。
【0008】
液体状態の樹脂材料を、流量調整バルブ911で所定流量に調整して、樹脂材料供給管912で樹脂層形成装置910内に供給する。樹脂材料は、樹脂材料供給管912の吐出口から加熱板913上に滴下される。加熱板913の下面には加熱ヒータ(図示せず)が取り付けられており、これにより加熱板913は所定の温度に加熱されている。滴下された液体状態の樹脂材料は加熱板913上を流動しながら加熱されて蒸発する。最終的に蒸発しきれなかった樹脂材料は冷却カップ917に回収される。樹脂層形成装置910の内部より真空槽901内の方が低圧に維持されているから、蒸発した樹脂材料はキャンローラ903の外周面に向けて形成された開口918より放出される。915a,915b,915cは防壁であり、防壁915aと防壁915b、防壁915aと防壁915cはそれぞれ一部を互いに対向させて所定間隔を隔てて設置されている。919は矢印919aの方向に移動して開口918を開閉する遮蔽板である。
【0009】
堆積した樹脂材料は、必要に応じて樹脂硬化装置921により、電子線又は紫外線等が照射されて所望の硬度に硬化処理される。
【0010】
その後、金属薄膜形成装置923により、キャンローラ903の外周面に向けて形成された開口925を通して金属薄膜層が蒸着などによって形成される。926は矢印926aの方向に移動して開口925を開閉する遮蔽板である。
【0011】
以上の製造装置900によれば、開口918,925を開いた状態では、周回するキャンローラ903の外周面上に、樹脂層形成装置910による樹脂層と、金属薄膜形成装置923による金属薄膜層とが交互に積層された積層体が製造され、また、開口925を遮蔽した状態では、周回するキャンローラ903の外周面上に、樹脂層形成装置910による樹脂層が連続して積層された積層体が製造される。
【0012】
また、図示していないが、樹脂層形成後、金属薄膜層形成前に、樹脂層表面にパターニング材料(例えばオイル)を所定形状に付与すると、パターニング材料上には金属薄膜層が形成されない。従って、これを利用して所望のパターン形状の金属薄膜層を形成することが出来る(これをオイルマージン法と呼ぶ)。
【0013】
このようにして得られた積層体に所定の後処理をして、コンデンサなどの電子部品を製造することができる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記図9に示した製造装置を用いて積層体を製造すると、樹脂層の形成に関して以下の問題があることが分かった。
【0015】
液体状態の樹脂材料を樹脂材料供給管912から加熱板913上に滴下すると、樹脂材料が急激に加熱されて、突沸し、液滴となって飛散する場合がある。飛散した液滴はキャンローラ903の外周面に付着して粗大突起を形成する。このため平滑な樹脂層を得ることができない。これを防止するために、特開平11−209870号公報では、樹脂材料の蒸発領域からキャンローラの外周面が直接見通せないように防壁915a,915b,915cを設置することが開示されている。ところが、この方法でも特に粒径の小さな液滴の付着を完全に防止することができず、満足のいく平滑な樹脂層表面を得ることはできなかった。
【0016】
また、樹脂層の形成を終了後、樹脂層形成装置を冷却すると、装置内の樹脂材料蒸気は冷却されて内壁面、開口918の周囲部材、遮蔽板919、防壁915a,915b,915c等の表面上で結露して固化する。その後、樹脂層の形成を再開すると、装置が加熱され、前記固化した樹脂材料が溶融し、落下する。例えば開口918の周囲部材や遮蔽板919に付着していた樹脂材料は、防壁915a,915b,915c上に落下する。樹脂層形成時には、通常、防壁915a,915b,915c等も高温になるから、落下した樹脂材料は突沸して液滴が飛散する。また、樹脂層形成中においても、樹脂材料蒸気中に混入した微細な液滴が例えば開口918の周囲部材や遮蔽板919に付着した後、液滴となってして防壁915a,915b,915c上に落下して、同様に突沸する場合がある。このようにして飛散した液滴によって形成される粗大突起に対しては、上記の従来の方法では防止することができなかった。
【0017】
また、このように樹脂層表面に粗大突起が形成されると、その上に蒸着等で金属薄膜層を形成すると、金属薄膜層は厚みが極めて薄いために、金属薄膜層表面に粗大突起の形状がそのまま反映される。従って、更にその上に樹脂層を形成すると、該粗大突起部分で樹脂層にピンホールが形成される。樹脂層のピンホールは、これを挟む上下の金属薄膜層の短絡を誘発し、例えばコンデンサにおいては絶縁抵抗値を低下させる。また、樹脂層上の粗大突起は金属薄膜層の破断を誘発し、金属薄膜層が電極や配線として機能しなくなる。
【0018】
更に、樹脂材料が加熱板913上で安定して蒸発せず、突沸が発生すると蒸発量が不安定となる。また、上記のように樹脂材料が落下して突沸したり蒸発したりしても、同様に樹脂材料の蒸発量が不安定となる。このように樹脂材料の蒸発量が変動すると、均一な厚みの樹脂層が得られない。また、樹脂材料の蒸発量の変動は樹脂層形成装置内の樹脂材料蒸気の圧力変動を意味し、これに伴って真空槽901内の真空度が変動し、その他の工程にも悪影響(例えば金属薄膜層形成工程では均一厚みの金属薄膜層が形成できないなど)を及ぼす。
【0019】
本発明は、上記の従来の問題点を解決し、樹脂材料の蒸発量が安定し、真空槽内の真空度を変動させず、表面が平滑な樹脂層を形成することができる樹脂層形成装置、樹脂層の製造方法、及び積層体の製造装置・製造方法を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の目的を達成するために以下の構成とする。
【0021】
本発明の第1の構成に係る樹脂層形成装置は、開口と、内部に加熱体とを備え、液状の樹脂材料を前記加熱体上で加熱し、気化させて得た樹脂材料蒸気を、前記開口から支持体に向けて放出して、真空又は減圧下で前記支持体上に樹脂層を形成する樹脂層形成装置であって、前記加熱体と前記開口との間に多孔体が設置され、前記樹脂材料蒸気は前記多孔体を通過した後、前記支持体に到達するように構成されていることを特徴とする。かかる構成によれば、多孔体がフィルタとして機能して、樹脂材料蒸気中の樹脂材料蒸気の液滴を捕捉することができるので、表面に粗大突起のない、極めて平滑な樹脂層を得ることができる。また、多孔体が圧力変動の緩衝材として機能して、多孔体より加熱体側の圧力変動が支持体側に伝わるのを防止するので、樹脂層形成装置の外部の圧力を変動させることがなく、また、厚みの均一な樹脂層を得ることができる。
【0022】
上記第1の構成の樹脂層形成装置において、前記多孔体を前記開口に設置することが好ましい。かかる構成によれば、樹脂層形成装置内の加熱体やそれ以外の部分で発生する樹脂材料蒸気中の液滴や圧力変動を、最終出口である開口で除去・吸収できるので、樹脂層表面がより一層均一となり、支持体側への圧力変動の伝達もより抑えることができる。
【0023】
また、上記第1の構成の樹脂層形成装置において、前記多孔体を2カ所以上に設置することもできる。かかる構成によれば、樹脂材料蒸気中の液滴の捕捉効果と、支持体側への圧力変動の伝達抑制効果が更に向上する。
【0024】
また、上記第1の構成の樹脂層形成装置において、樹脂層形成装置が、前記加熱体を含む蒸発室と、前記蒸発室で発生した樹脂材料蒸気を前記開口に導く調整室とを有し、前記蒸発室と前記調整室との境界部に前記多孔体を設置することができる。かかる構成によれば、蒸発室内で発生した樹脂材料の液滴を多孔体で捕捉することができる。また、蒸発室内の圧力変動を多孔体で吸収することができる。
【0025】
また、上記第1の構成の樹脂層形成装置において、前記樹脂層形成装置の内壁面の少なくとも一部、又は、前記調整室の内壁面に多孔体が貼付されていることが好ましい。かかる構成によれば、樹脂層形成後、装置を冷却すると、結露した樹脂材料は多孔体の孔内に浸透して固化するので、再加熱したとき該樹脂材料の落下を防止できる。また、樹脂層形成中は、装置内の樹脂材料蒸気中の液滴の捕捉・吸収効果が向上するので、捕捉した液滴の落下を防止できる。従って、かかる樹脂材料の落下によって発生する樹脂材料の突沸による液滴の発生や蒸発量の変動を防止することができる。
【0028】
上記第1の構成の樹脂層形成装置において、前記多孔体は金属フィルターであることが好ましい。また、前記多孔体は金属発泡体であることが好ましい。かかる構成によれば、上記の樹脂材料の液滴の捕捉・吸収効果と、圧力変動吸収効果とを容易に発現させることができる。
【0029】
また、上記第1の構成の樹脂層形成装置において、樹脂層形成時は前記多孔体を加熱することが好ましい。かかる構成によれば、捕捉した樹脂材料を蒸発させることができるので、多孔体の目詰まりを防止できる。また、樹脂層形成中は、樹脂材料蒸気が多孔体上で結露するのを防止できる。
【0030】
本発明の積層体の製造装置は、支持体と、前記支持体上に樹脂層を形成する樹脂層形成装置と、前記支持体上に金属薄膜層を形成する金属薄膜形成装置と、前記支持体、前記樹脂層形成装置、及び前記金属薄膜形成装置を収納する真空槽とを備えた積層体の製造装置であって、前記樹脂層形成装置が上記第1の樹脂層形成装置であることを特徴とする。かかる構成によれば、表面が極めて平滑な樹脂層及び積層体を得ることができる。また、真空槽内の圧力変動を少なくできるので、樹脂層や金属薄膜層の積層厚みが安定する。
【0031】
上記の積層体の製造装置において、前記支持体が周回し、樹脂層と金属薄膜層との交互積層体が製造される製造装置であってもよい。かかる構成によれば、極めて平滑な樹脂層が得られるので、金属薄膜層や樹脂層の破断やピンホールがない積層体を得ることができる。また、真空槽内の圧力変動を少なくできるので、樹脂層や金属薄膜層の積層厚みが安定する。よって、歩留まりが良好で高品質の積層体を得ることができる。
【0032】
また、本発明の第1の構成に係る樹脂層の製造方法は、筐体内に設置した加熱体上で液状の樹脂材料を加熱し、気化させて、樹脂材料蒸気を得た後、前記樹脂材料蒸気を前記筐体に設置した開口から支持体に向けて放出して、真空又は減圧下で前記支持体上に樹脂層を形成する樹脂層の製造方法であって、前記加熱体と前記開口との間に多孔体を設置して、前記樹脂材料蒸気は前記多孔体を通過した後、前記支持体上に付着することを特徴とする。かかる構成によれば、多孔体がフィルタとして機能して、樹脂材料蒸気中の樹脂材料蒸気の液滴を捕捉することができるので、表面に粗大突起のない、極めて平滑な樹脂層を得ることができる。また、多孔体が圧力変動の緩衝材として機能して、多孔体より加熱体側の圧力変動が支持体側に伝わるのを防止するので、筐体の外部の圧力を変動させることがなく、また、厚みの均一な樹脂層を得ることができる。
【0033】
上記第1の構成の樹脂層の製造方法において、前記多孔体を前記開口に設置することが好ましい。かかる構成によれば、樹脂層形成装置内の加熱体やそれ以外の部分で発生する樹脂材料蒸気中の液滴や圧力変動を、最終出口である開口で除去・吸収できるので、樹脂層表面がより一層均一となり、支持体側への圧力変動の伝達もより抑えることができる。
【0034】
また、上記第1の構成の樹脂層の製造方法において、前記多孔体を2カ所以上設置してもよい。かかる構成によれば、樹脂材料蒸気中の液滴の捕捉効果と、支持体側への圧力変動の伝達抑制効果が更に向上する。
【0036】
上記第1の樹脂層の製造方法において、前記多孔体は金属フィルターであることが好ましい。また、前記多孔体は金属発泡体であることが好ましい。かかる構成によれば、上記の樹脂材料の液滴の捕捉・吸収効果と、圧力変動吸収効果とを容易に発現させることができる。
【0037】
上記の第1の樹脂層の製造方法において、前記多孔体を加熱しながら樹脂層を形成することが好ましい。かかる構成によれば、捕捉した樹脂材料を蒸発させることができるので、多孔体の目詰まりを防止できる。また、樹脂層形成中は、樹脂材料蒸気が多孔体上で結露するのを防止できる。
【0038】
また、本発明の積層体の製造方法は、支持体上に樹脂層を形成する工程と、前記支持体上に真空プロセスにより金属薄膜層を形成する工程とを有し、前記樹脂層を上記第1の樹脂層の製造方法に従って形成することを特徴とする。かかる構成によれば、表面が極めて平滑な樹脂層及び積層体を得ることができる。また、各工程雰囲気の圧力変動を少なくできるので、樹脂層や金属薄膜層の積層厚みが安定する。
【0039】
上記の構成において、前記支持体を周回させて、樹脂層と金属薄膜層との交互積層体を製造することができる。かかる構成によれば、極めて平滑な樹脂層が得られるので、金属薄膜層や樹脂層の破断やピンホールがない積層体を得ることができる。また、各工程雰囲気の圧力変動を少なくできるので、樹脂層や金属薄膜層の積層厚みが安定する。よって、歩留まりが良好で高品質の積層体を得ることができる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を図面を用いて詳細に説明する。
【0041】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態の積層体の製造装置の内部の概略構成を示した断面図である。図1において、100は積層体の製造装置、101は真空槽であり、その内部空間は隔壁102a,102b,102cにより3つの空間105,107,109に分割されている。104,106,108は、それぞれ空間105,107,109内部を所定の真空度(例えば0.01Pa程度)に維持する真空ポンプである。110は真空槽101内に設置された、図中の矢印110aの方向に回転する円筒形状のキャンローラ、130はパターニング材料付与装置、140は金属薄膜形成装置、145はパターニング材料除去装置、147は樹脂硬化装置、149は表面処理装置、200は樹脂層形成装置である。
【0042】
図2は、図1の樹脂層形成装置200の内部構造を示した拡大断面図である。
【0043】
本実施の形態の樹脂層形成装置200の内部は、隔壁210により2つの部屋、即ち蒸発室220と調整室230に大別される。なお、240は、キャンローラ110の外周面に向けて形成された開口、242は矢印242aの方向に移動することにより開口240を開閉するための遮蔽板である。
【0044】
蒸発室220は、液状の樹脂材料を加熱して蒸発させて、樹脂材料蒸気を生成する。即ち、流量調整バルブ221で所定流量に調整された液体状態の樹脂材料は、樹脂材料供給管222で蒸発室220内に供給される。樹脂材料は、樹脂材料供給管222の吐出口から加熱板223上に滴下される。滴下された液体状態の樹脂材料は傾斜して設置された加熱板223,224上を順に流動する。加熱板223,224は図示しないヒータが下面に取り付けられており、所定温度に加熱されている。樹脂材料は、加熱板223,224上を流動しながら加熱され、蒸発する。加熱板223,224上を流動して最終的に蒸発しきれなかった樹脂材料は冷却カップ225に回収される。樹脂層形成装置200内の圧力は、その外の空間109よりやや高圧に設定されているから、蒸発した樹脂材料蒸気は開口240の方に向かって流動する。
【0045】
調整室230は、蒸発室220で発生した樹脂材料蒸気の流動を安定化させて、樹脂材料蒸気を開口240に導く。即ち、開口240から放出される樹脂材料蒸気の放出量の経時的な変動をできるだけ少なくし、また、幅方向(キャンローラ110の回転軸方向に平行な方向)の放出量を均一化させる。樹脂材料蒸気の放出量の経時的な変動は、例えば、図9に示した防壁915a,915b,915cのように、所定間隔を隔てて、一部対向させて複数の平板を設置することで抑えることができる。また、幅方向(キャンローラ110の回転軸方向に平行な方向)の放出量は、例えば開口240のキャンローラ110の外周面の走行方向の開口幅を、キャンローラ110の回転軸方向に平行な方向で変化させることで調整することができる。また、図9の防壁915a,915b,915cと同様の防壁を設置すれば、その防壁間を通過する間に幅方向の放出量を均一化することができる。
【0046】
本実施の形態では、隔壁210に開口を設け、該開口に多孔体251がはめ込まれている。多孔体251には、表裏間に連続する微細な空間(孔)が多数形成されており、フィルタとして機能する。
【0047】
このような多孔体251を蒸発室220と調整室230との間に介在させることにより、以下のような効果が得られる。まず、蒸発室220で突沸などにより発生した樹脂材料の液滴は、多孔体251で捕捉することができる。従って、表面が極めて平滑な樹脂層が得られる。これにより、樹脂層のピンホールや金属薄膜層の破断が減少する。また、蒸発量の経時的な変動により蒸発室220内の樹脂材料蒸気の圧力変動があっても、多孔体251が緩衝材として機能して、圧力変動を吸収し、調整室230に圧力変動が伝達されない。従って、真空槽101内の空間109や、これに隣接する空間105,107(図1参照)の圧力変動を防止できる。
【0048】
多孔体251は、樹脂材料蒸気を通過させ、樹脂材料の液滴を捕捉して、上記の効果を奏することができればその材質や形態は特に限定されない。多孔体251の材質は、耐熱性、耐薬品性などを有する材料、例えば金属、特に、ニッケル、ステンレス、ニクロムなどからなるのが好ましい。また、その構成形態は、金属材料を用いた場合には、例えば連続気泡が多数形成された金属発泡体や、多数の金属線状体を複雑に絡ませた不織布状物、金属微細粒子を焼結させた焼結金属体などが使用できる。
【0049】
多孔体251に形成される孔径は、0.6〜5mmが好ましく、1.0〜3.5mmがより好ましい。孔径が上記範囲より小さいと、樹脂材料蒸気の通過抵抗が増大する。また、目詰まりが頻発し、メンテナンス間隔が短くなって生産性が低下する。孔径が上記範囲より大きいと、液滴状粒子の捕捉効果や、圧力変動の吸収効果が低下する。
【0050】
また、多孔体251の厚さは、上記の孔径にもよるが、一般に2〜20mmが好ましく、5〜10mmがより好ましい。厚さが上記範囲より小さいと、液滴状粒子の捕捉効果や、圧力変動の吸収効果が低下する。厚さが上記範囲より大きいと、樹脂材料蒸気の通過抵抗が増大する。また、目詰まりが頻発し、メンテナンス間隔が短くなって生産性が低下する。
【0051】
また、樹脂層形成時は多孔体251を所定温度に加熱しておくことが好ましい。加熱温度は、樹脂材料に応じて設定できるが、一般に加熱板223,224と同程度に加熱しておくのが好ましい。具体的には、加熱板223,224に対して±10℃程度以内に維持しておくのが好ましい。多孔体251を加熱しておくと、樹脂層形成中は、多孔体251が捕捉した樹脂材料の液滴を多孔体251上で蒸発させることができる。また、樹脂材料蒸気が多孔体252上で結露するのを防止できる。更に、樹脂層形成の開始時に、多孔体251より上部の部材に付着固化していた樹脂材料が溶融して落下しても、蒸発させることができる。このため、樹脂材料の液滴が加熱板に落下するのを防止できる。また、樹脂層形成終了後、装置が冷却されて、樹脂材料蒸気が多孔体251の孔内で結露して、固化しても、その後樹脂層形成時に加熱することで、溶融し、気化させることができ、目詰まりが解消する。多孔体251を加熱するには、多孔体251に、又はこれを支持する隔壁210にヒータなどを取り付ければよい。
【0052】
上記のようにして樹脂層形成装置200内で蒸発気化された樹脂材料は開口240からキャンローラ110表面に向けて放出される。キャンローラ110は好ましくは−20〜40℃、特に好ましくは−10〜10℃に冷却されているから、樹脂材料は冷却されてキャンローラ110の外周面に膜状に堆積する。このような方法によれば、厚みが極めて薄く均一で、ピンホール等の欠点のない良好な樹脂層が得られる。
【0053】
樹脂材料としては、このように蒸発気化した後、堆積して薄膜を形成できるものであれば特に限定されず、得られる積層体の用途に応じて適宜選択できるが、反応性モノマー樹脂であるのが好ましい。例えば、積層体を電子部品材料用途に使用する場合には、アクリレート樹脂またはビニル樹脂を主成分とするものが好ましく、具体的には、多官能(メタ)アクリレートモノマー、多官能ビニルエーテルモノマーが好ましく、中でも、シクロペンタジエンジメタノールジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルモノマー等若しくはこれらの炭化水素基を置換したモノマーが電気特性、耐熱性、安定性等の点で好ましい。
【0054】
堆積した樹脂材料は、必要に応じて樹脂硬化装置147(図1参照)により所望の硬化度に硬化処理してもい。硬化処理としては、樹脂材料を重合及び/又は架橋する処理が例示できる。樹脂硬化装置としては、例えば電子線照射装置、紫外線照射装置、又は熱硬化装置等を用いることができる。硬化処理の程度は、製造する積層体の要求特性により適宜変更すれば良いが、例えばコンデンサなどの電子部品用の積層体を製造するのであれば、硬化度が50〜95%、更には50〜75%になるまで硬化処理するのが好ましい。硬化度が上記範囲より小さいと、後工程において外力等が加わると容易に変形したり、金属薄膜層の破断又は短絡等を生じてしまう。一方、硬化度が上記範囲より大きいと、後工程において外力等が加わると割れるなどの問題が生じることがある。なお、本発明の硬化度は、赤外分光光度計でC=O基の吸光度とC=C基(1600cm-1)の比をとり、各々のモノマーと硬化物の比の値をとり、減少分吸光度を1から引いたものと定義する。
【0055】
本発明において、樹脂層の厚みは特に制限はないが、1μm以下、更に0.7μm以下、特に0.4μm以下であることが好ましい。本発明の方法によって得られる積層体の小型化・高性能化の要求に答えるためには樹脂層の厚みは薄い方が好ましい。例えば、本発明の製造方法により得られた積層体をコンデンサに使用する場合、誘電体層となる樹脂層は薄い方が、コンデンサの静電容量はその厚みに反比例して大きくなる。
【0056】
形成された樹脂層は、必要に応じて表面処理装置149により表面処理される。例えば、酸素雰囲気下で放電処理又は紫外線照射処理等を行って、樹脂層表面を活性化させて金属薄膜層との接着性を向上させることができる。
【0057】
パターニング材料付与装置130は、オイルマージンと呼ばれる手法により金属薄膜層にマージン部を形成することにより、金属薄膜層を所定の形状にパターニングするための装置である。樹脂層上に予めパターニング材料を薄く形成した後に、金属薄膜層を蒸着などによって形成すると、パターニング材料上には金属薄膜層が形成されず、マージン部が形成される。このようにして形成された金属薄膜層はマージン部が抜けた状態で形成されており、所望のパターンを持つ金属薄膜層を形成することが出来る。パターニング材料は、流量調整バルブ131で所定流量に調整されてパターニング材料供給管132を通ってパターニング材料付与装置130に導入され、気化されて、キャンローラ110の外周面に向けて所定位置に形成された微細孔から放出される。これによりパターニング材料が薄く塗布される。微細孔のキャンローラ110の回転軸方向の配置(間隔、数)は形成しようとするマージン部の配置に応じて決定する。また、マージン部の幅は、微細孔の大きさやパターニング材料の吐出量を変化させることで調整できる。このとき、キャンローラ110の回転と同期させてパターニング材料付与装置130をキャンローラ110の回転軸と平行方向に移動させることにより、マージン部の位置が異なる金属薄膜層を形成することができる。
【0058】
使用するパターニング材料としては、エステル系オイル、グリコール系オイル、フッ素系オイル及び炭化水素系オイルよりなる群から選ばれた少なくとも一種のオイルであることが好ましい。更に好ましくは、エステル系オイル、グリコール系オイル、フッ素系オイルであり、特に、フッ素系オイルが好ましい。上記以外のパターニング材料を使用すると、積層表面の荒れ、樹脂層や金属薄膜層のピンホール、金属薄膜層の形成境界部分の不安定化等の問題を生じることがある。
【0059】
パターニング材料を付与した後、金属薄膜層形成装置140により金属薄膜層が形成される。金属薄膜層の形成方法としては、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等周知の真空プロセス手段が適用できるが、本発明では蒸着、特に電子ビーム蒸着が耐湿性の優れた膜が生産性良く得られる点で好ましい。金属薄膜層の材料としては、アルミニウム、銅、亜鉛、ニッケル、鉄、コバルト、シリコン、ゲルマニウム若しくはその化合物、若しくはこれらの酸化物、若しくはこれらの化合物の酸化物などが使用できる。中でも、アルミニウムが接着性と経済性の点で好ましい。なお、金属薄膜層には、上記以外の他成分を含むものであっても構わない。また、金属薄膜層を一種とせず、例えばAl層とCu層の混入とすることによって特性の補完がなされ、使用条件によっては高性能化が図れる場合もありうる。なお、金属薄膜の形成を中断する場合は、開口141を遮蔽板142で塞ぐ。
【0060】
金属薄膜層の厚みは、得られる積層体の用途により適宜決定すればよいが、電子部品用途に使用する場合は、100nm以下、更に10〜50nm、特に20〜40nmであるのが好ましい。また、膜抵抗は、上限は20Ω/□以下、さらに15Ω/□以下、特に10Ω/□以下であるのが好ましく、また下限は1Ω/□以上、さらに2Ω/□以上、特に3Ω/□以上であるのが好ましい。
【0061】
その後、パターニング材料除去装置145により余剰のパターニング材料が除去される。残存したパターニング材料は、積層表面の荒れ、樹脂層や金属薄膜層のピンホール(積層抜け)、金属薄膜層の形成境界部分の不安定化等の問題を発生させる。パターニング材料の除去手段は特に制限はなく、パターニング材料の種類に応じて適宜選択すればよいが、例えば加熱及び/又は分解により除去することができる。加熱して除去する方法としては、例えば、光照射や電熱ヒータによる方法が例示できるが、光照射による方法が装置が簡単であり、かつ除去性能も高い。なお、ここで光とは、遠赤外線及び赤外線を含む。一方、分解して除去する方法としては、プラズマ照射、イオン照射、電子照射などが使用できる。このとき、プラズマ照射は、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ、窒素プラズマ等が使用できるが、この中でも特に酸素プラズマが好ましい。
【0062】
以上の製造装置100によれば、開口141,240を開いた状態では、周回するキャンローラ110の外周面上に、樹脂層形成装置200による樹脂層と、金属薄膜形成装置140による金属薄膜層とが交互に積層された積層体が製造され、また、開口141を遮蔽した状態では、周回するキャンローラ110の外周面上に、樹脂層形成装置200による樹脂層が連続して積層された積層体が製造される。また、キャンローラ110の回転と同期させてパターニング材料付与装置130をキャンローラ110の回転軸と平行方向に移動させることにより、マージン部の位置が異なる金属薄膜層を形成することができる。
【0063】
その後、キャンローラ110の外周面上に形成された円筒状積層体を半径方向に切断して取り外し、平板プレスして、切断・電極形成・外装等の周知の工程を経て、コンデンサ等の電子部品を製造することができる。
【0064】
(実施の形態2)
本実施の形態は、樹脂層形成装置の構成が異なる点で実施の形態1と相違する。
【0065】
図3は、本実施の形態の樹脂層形成装置200の内部構造を示した拡大断面図である。
【0066】
本実施の形態の実施の形態1との相違点は、調整室230の内壁面に多孔体252を貼り付けた点である。
【0067】
多孔体252を貼付することにより、以下の効果が得られる。多孔体252がない場合、樹脂層の形成終了後、装置が冷却されると樹脂材料蒸気が冷却されて調整室230の内壁面上で結露し、更に固化して付着する。その後再加熱すると、壁面の固化物が一部溶融し、多孔体251等の上に落下する。この結果、多孔体251が目詰まりしたり、樹脂材料が多孔体251上で突沸したり、不規則に蒸発したりするという問題が生じる。内壁面に多孔体252を設けると、樹脂層の形成後、装置が冷却されると樹脂材料蒸気の液化物は多孔体252の孔内に浸透し、その中で固化するので、再加熱しても固化物は多孔体252の孔内に保持されるので落下しにくい。しかも、孔内の樹脂材料は徐々に加熱され、蒸発していく。従って、開口240からの樹脂材料蒸気の蒸発量が経時的に安定し、また、液滴の飛散を防止することができる。また、樹脂層形成中は、調整室230内で新たに発生した樹脂材料の液滴や、隔壁210の多孔体251で捕捉できず通り抜けた樹脂材料の液滴があったとしても、調整室230の内壁面の表面積が拡大することにより、樹脂材料の液滴をより多く捕捉し、吸収することができる。従って、捕捉した液滴が多孔体251等の上に落下するのを防止できる。よって、再度の液滴の発生や、蒸発量の不安定を防止できる。
【0068】
多孔体252としては、樹脂材料の液滴を捕捉、吸収して、上記の効果を奏することができればその材質や形態は特に限定されず、例えば実施の形態1で説明した多孔体251と同様の多孔体を用いることができる。
【0069】
多孔体252の孔径は、0.6〜5mmが好ましく、1.0〜3.5mmがより好ましい。多孔体252の孔径が上記範囲より小さいと、目詰まりが発生しやすくなり、多孔体252の機能が低下する。多孔体252の孔径が上記範囲より大きいと、再加熱時の樹脂材料の落下防止効果が低減する。また、表面積拡大効果も低下して、樹脂材料の捕捉・吸収能力が低下する。
【0070】
また、多孔体252の厚さは、上記の孔径や樹脂材料の蒸発量等にもよるが、一般に2〜20mmが好ましく、5〜10mmがより好ましい。多孔体252の厚さが上記範囲より小さいと、樹脂材料の捕捉・吸収能力が低下して、装置を冷却した際の結露した樹脂材料を孔内に収納しきれず、再加熱時に樹脂材料が落下しやすくなる。また、樹脂層形成中は樹脂材料の液滴捕捉効果が低下する。多孔体252の厚さが上記範囲より大きいと、収納されるべき樹脂材料に対して多孔体252の捕捉・吸収能力が大幅に上回って、効果の量的向上が望めないばかりか、コスト高となり、また、装置が大型化する。
【0071】
また、樹脂層形成時は多孔体252を所定温度に加熱することが好ましい。加熱温度は、樹脂材料に応じて設定できるが、一般に加熱板223,224と同程度に加熱しておくのが好ましい。具体的には、加熱板223,224に対して±10℃程度以内に維持しておくのが好ましい。多孔体252を加熱しておくと、多孔体252が捕捉した樹脂材料を多孔体252上で蒸発させることができる。また、樹脂層形成中に樹脂材料蒸気が多孔体252上で結露するのを防止できる。多孔体252を加熱するためには、多孔体252と、これを貼付する調整室230の内壁面との間にヒータ等を介在させればよい。
【0072】
(実施の形態3)
本実施の形態は、樹脂層形成装置の構成が異なる点で実施の形態1と相違する。
【0073】
図4は、本実施の形態の樹脂層形成装置200の内部構造を示した拡大断面図である。
【0074】
本実施の形態の実施の形態1との相違点は、開口240に多孔体253をはめ込んだ点である。
【0075】
多孔体253により以下のような効果が得られる。まず、隔壁210の多孔体251で捕捉できず、通り抜けた樹脂材料の液滴があったとしても、これを捕捉することができる。また、樹脂層の形成終了後、冷却した際、調整室230の内壁面に結露して固化した樹脂材料が再加熱時に多孔体251等の上に落下して、突沸して液滴が飛散したような場合であっても、これを確実に捕捉することができる。従って、表面がより平滑な樹脂層が得られる。これにより、樹脂層のピンホールや金属薄膜層の破断が減少する。また、蒸発量の経時的な変動により蒸発室220内の樹脂材料蒸気の圧力変動があっても、多孔体251に加えて多孔体253が緩衝材として機能して、圧力変動を吸収し、開口240の外部に圧力変動が伝達されない。また、調整室230内での樹脂材料の蒸発や突沸により、調整室230内の樹脂材料蒸気の圧力変動があっても、開口240の外部に圧力変動が伝達されない。従って、真空槽101内の空間109や、これに隣接する空間105,107(図1参照)の圧力変動を防止できる。
【0076】
多孔体253としては、樹脂材料蒸気を通過させ、樹脂材料の液滴を捕捉して、上記の効果を奏することができればその材質や形態は特に限定されず、例えば実施の形態1で説明した多孔体251と同様の多孔体を用いることができる。
【0077】
多孔体253の孔径は、0.6〜5mmが好ましく、1.0〜3.5mmがより好ましい。また、多孔体253の厚さは、上記の孔径にもよるが、一般に2〜20mmが好ましく、5〜10mmがより好ましい。多孔体253の孔径が上記範囲より小さいと、また、多孔体253の厚さが上記範囲より大きいと、樹脂材料蒸気の通過抵抗が増大する。また、目詰まりが頻発し、メンテナンス間隔が短くなって生産性が低下する。多孔体253の孔径が上記範囲より大きいと、また、多孔体253の厚さが上記範囲より小さいと、液滴状粒子の捕捉効果や、圧力変動の吸収効果が低下する。
【0078】
多孔体253も、樹脂層形成時は所定温度に加熱しておくことが好ましい。加熱温度は、樹脂材料に応じて設定できるが、一般に加熱板223,224と同程度に加熱しておくのが好ましい。具体的には、加熱板223,224に対して±10℃程度以内に維持しておくのが好ましい。多孔体253を加熱しておくと、樹脂層形成中は、多孔体253が捕捉した樹脂材料の液滴を多孔体253上で蒸発させることができる。また、樹脂材料蒸気が多孔体253上で結露するのを防止できる。更に、樹脂層形成終了後、装置が冷却されて、樹脂材料蒸気が多孔体253の孔内で結露して、固化しても、その後樹脂層形成時に加熱することで、溶融し、気化させることができ、目詰まりが解消する。多孔体253を加熱するためには、多孔体253に、又はこれを支持する開口240の枠体にヒータなどを取り付ければよい。
【0079】
(実施の形態4)
本実施の形態は、樹脂層形成装置の構成が異なる点で実施の形態1と相違する。
【0080】
図5は、本実施の形態の樹脂層形成装置200の内部構造を示した拡大断面図である。
【0081】
本実施の形態の実施の形態1との相違点は、以下の2点である。
【0082】
第1の相違点は、実施の形態1の樹脂層形成装置における隔壁210が存在せず、蒸発室と調整室の明確な区別がない点である。第2の相違点は、実施の形態1の隔壁210が存在しないために、多孔体251も存在せず、代わりに開口240に多孔体253をはめ込んだ点である。
【0083】
開口240に多孔体253を設けることにより以下の効果が得られる。まず、突沸などにより発生した樹脂材料の液滴を、多孔体253で捕捉することができる。従って、表面が平滑な樹脂層が得られる。これにより、樹脂層のピンホールや金属薄膜層の破断が減少する。また、蒸発量の経時的な変動により樹脂層形成装置200内の樹脂材料蒸気の圧力変動があっても、多孔体253が緩衝材として機能して、圧力変動を吸収し、装置の外に圧力変動が伝達されない。従って、真空槽101内の空間109や、これに隣接する空間105,107(図1参照)の圧力変動を防止できる。
【0084】
多孔体253としては、樹脂材料蒸気を通過させ、樹脂材料の液滴を捕捉して、上記の効果を奏することができればその材質や形態は特に限定されず、例えば実施の形態1で説明した多孔体251と同様の多孔体を用いることができる。
【0085】
多孔体253の孔径は、0.6〜5mmが好ましく、1.0〜3.5mmがより好ましい。また、多孔体253の厚さは、上記の孔径にもよるが、一般に2〜20mmが好ましく、5〜10mmがより好ましい。多孔体253の孔径が上記範囲より小さいと、また、多孔体253の厚さが上記範囲より大きいと、樹脂材料蒸気の通過抵抗が増大する。また、目詰まりが頻発し、メンテナンス間隔が短くなって生産性が低下する。多孔体253の孔径が上記範囲より大きいと、また、多孔体253の厚さが上記範囲より小さいと、液滴状粒子の捕捉効果や、圧力変動の吸収効果が低下する。
【0086】
樹脂層形成時は多孔体253を所定温度に加熱しておくことが好ましい。加熱温度は、樹脂材料に応じて設定できるが、一般に加熱板223,224と同程度に加熱しておくのが好ましい。具体的には、加熱板223,224に対して±10℃程度以内に維持しておくのが好ましい。多孔体253を加熱しておくと、樹脂層形成中は、多孔体253が捕捉した樹脂材料の液滴を多孔体253上で蒸発させることができる。また、樹脂材料蒸気が多孔体253上で結露するのを防止できる。更に、樹脂層形成終了後、装置が冷却されて、樹脂材料蒸気が多孔体253の孔内で結露して、固化しても、その後樹脂層形成時に加熱することで、溶融し、気化させることができ、目詰まりが解消する。多孔体253を加熱するためには、多孔体253に、又はこれを支持する開口240の枠体にヒータなどを取り付ければよい。
【0087】
(参考の形態1)
本参考の形態は、樹脂層形成装置の構成が異なる点で実施の形態4と相違する。
【0088】
図6は、本参考の形態の樹脂層形成装置200の内部構造を示した拡大断面図である。
【0089】
本参考の形態の実施の形態4との相違点は、実施の形態4で設けた開口240の多孔体253を取り除いた点と、樹脂層形成装置200の底面を除く内壁面に多孔体254を貼り付けた点である。
【0090】
多孔体254を貼付することにより、以下の効果が得られる。多孔体254がない場合、樹脂層の形成終了後、装置が冷却されると樹脂材料蒸気が冷却されて樹脂層形成装置200の内壁面上で結露し、更に固化して付着する。その後再加熱すると、壁面の固化物が一部溶融し、加熱体223,224等の上に落下する。この結果、樹脂材料が加熱体223,224上で突沸したり、不規則に蒸発したりするという問題が生じる。内壁面に多孔体254を設けると、樹脂層の形成後、装置が冷却されると樹脂材料蒸気の液化物は多孔体254の孔内に浸透し、その中で固化するので、再加熱しても固化物は多孔体254の孔内に保持されるので落下しにくい。しかも、孔内の樹脂材料は徐々に加熱され、蒸発していく。従って、開口240からの樹脂材料蒸気の蒸発量が経時的に安定し、また、液滴の飛散を防止することができる。また、樹脂層形成中は、樹脂層形成装置200の内壁面の表面積が拡大するので、飛散した液滴をより多く捕捉し、吸収することができる。従って、捕捉した液滴が加熱体223,224等の上に落下するのを防止できる。よって、再度の液滴の発生や、蒸発量の不安定を防止できる。
【0091】
多孔体254としては、樹脂材料の液滴を捕捉、吸収して、上記の効果を奏することができればその材質や形態は特に限定されず、例えば実施の形態1で説明した多孔体251と同様の多孔体を用いることができる。
【0092】
多孔体254の孔径は、0.6〜5mmが好ましく、1.0〜3.5mmがより好ましい。多孔体254の孔径が上記範囲より小さいと、目詰まりが発生しやすくなり、多孔体254の機能が低下する。多孔体254の孔径が上記範囲より大きいと、再加熱時の樹脂材料の落下防止効果が低減する。また、表面積拡大効果も低下して、樹脂材料の捕捉・吸収能力が低下する。
【0093】
また、多孔体254の厚さは、上記の孔径や樹脂材料の蒸発量等にもよるが、一般に2〜20mmが好ましく、5〜10mmがより好ましい。多孔体254の厚さが上記範囲より小さいと、樹脂材料の捕捉・吸収能力が低下して、装置を冷却した際の結露した樹脂材料を孔内に収納しきれず、再加熱時に樹脂材料が落下しやすくなる。また、樹脂層形成中は樹脂材料の液滴捕捉効果が低下する。多孔体254の厚さが上記範囲より大きいと、収納されるべき樹脂材料に対して多孔体254の捕捉・吸収能力が大幅に上回って、効果の量的向上が望めないばかりか、コスト高となり、また、装置が大型化する。
【0094】
また、樹脂層形成時は多孔体254を所定温度に加熱することが好ましい。加熱温度は、樹脂材料に応じて設定できるが、一般に加熱板223,224と同程度に加熱しておくのが好ましい。具体的には、加熱板223,224に対して±10℃程度以内に維持しておくのが好ましい。多孔体254を加熱しておくと、多孔体254が捕捉した樹脂材料を多孔体254上で蒸発させることができる。また、樹脂層形成中に樹脂材料蒸気が多孔体254上で結露するのを防止できる。多孔体254を加熱するためには、多孔体254と、これを貼付する内壁面との間にヒータ等を介在させればよい。
【0095】
上記の実施の形態1〜4では、加熱板223,224から、樹脂材料蒸気の付着地点(キャンローラ110の外周面)までの間で、樹脂材料蒸気が通過する多孔体の数が1層の場合(実施の形態1,2,4)、及び2層の場合(実施の形態3)を例示した。しかしながら、樹脂材料蒸気が通過する多孔体の数はこれらに限定されず、加熱板と樹脂材料蒸気の付着地点との間に、更に多層の多孔体を設けてもよい。
【0096】
また、実施の形態2では調整室230の内壁面に多孔体を貼付する構成を示したが、更に蒸発室250の内壁面にも多孔体を貼付してもよい。また、実施の形態1又は3において、多孔体251,253を設けることなく、蒸発室220及び/又は調整室230の内壁面に多孔体を貼付してもよい。このような構成によれば、参考の形態1で説明したのと同様の効果を得ることができる。なお、蒸発室220と調整室230のいずれか一方の内壁面のみに多孔体を貼付する場合は、開口240に近い側、即ち調整室230に貼付する方が得られる効果は大きい。また、多孔体の貼付は、内壁面の全面に貼付するのが好ましいが、該多孔体による効果を考慮して、例えば加熱体等の上部の内壁面等の構成部材のみに貼付しても、一定の効果を得ることができ、また装置コストを抑えることができる。
【0097】
また、実施の形態4と参考の形態1とを組み合わせて、開口240に多孔体253を設けるとともに、装置の内壁面にも多孔体254を貼付してもよい。かかる構成によれば、両実施の形態の効果を足し合わせた効果を得ることができる。
【0098】
また、遮蔽板242の樹脂層形成装置側の表面にも多孔体252,254と同様の多孔体を貼付しておくこともできる。この場合、実施の形態2,5で説明した多孔体252,254の効果と同様の効果を得ることができる。
【0099】
また、上記の実施の形態において、樹脂層形成装置200内の、加熱板223,224と開口240との間に、図9に示したような防壁915a,915b,915cを設けてもよい。この場合、この防壁の表面に多孔体252,254と同様の多孔体を貼付しておくと、実施の形態2,5で説明したのと同様の効果が得られるので好ましい。また、防壁の間に多孔体251,253と同様の多孔体を設置して、樹脂材料蒸気が該多孔体を通過するように構成してもよい。
【0100】
また、上記の実施の形態において、樹脂層形成装置200内で樹脂材料を加熱・蒸発させる加熱体として平板状の加熱板223,224を例示したが、樹脂材料を加熱・蒸発させることができれば、加熱体の形状はこれに限定されない。例えば、円筒体、円盤、円錐体、ベルト等の加熱体であってもよく、更に加熱体が回転・移動等していてもよい。また、加熱体の数も1つでも複数でもかまわない。
【0101】
また、上記の実施の形態では、樹脂層形成装置の適用例としてコンデンサ等の製造に適した積層体の製造装置を例示したが、本発明の樹脂層形成装置は上記以外にも適用可能である。例えば、支持体として、周回する円筒状のキャンローラに代えて、周回するベルト状支持体・円盤状支持体、一方向に走行する樹脂又は金属等のシート状支持体であってもよく、これらの上に本発明の樹脂層形成装置を用いて樹脂層を積層することもできる。また、上記実施形態の積層体の製造装置において、金属薄膜形成装置、パターニング材料付与装置、パターニング材料除去装置、樹脂硬化装置、表面処理装置などは積層体の用途等に応じて設ければよく、またこれ以外の工程を行なう装置を更に有するものであってもよい。
【0102】
【実施例】
(実施例1)
図1に示した積層体の製造装置を用いてチップコンデンサを製造した。
【0103】
樹脂層形成装置200は、図2に示す構成のものを用い、多孔体251として、住友電工株式会社製の発泡メタル多孔体「セルメット」(材質:ニッケル)を用いた。多孔体の孔径0.8mm、厚さ5mmとした。加熱板223,224を150℃に、多孔体251を150℃にそれぞれ維持した。樹脂材料として、ジシクロペンタジエンジメタノールジアクリレートを用いた。
【0104】
真空ポンプ104,106,108により真空槽101内の空間105,107,109をそれぞれ0.01Paに維持した。また、キャンローラ110の外周面を10℃に冷却した。キャンローラ110の直径は500mm、外表面の移動速度は100m/分とした。
【0105】
積層に先立ち、キャンローラ110の外周面にフッ素系離型剤(ダイキン工業(株)製“ダイフリー”)をスプレー塗布し、その後不織布で薄く延ばした。
【0106】
まず最初に、樹脂層のみを連続積層して、コンデンサの保護層を形成した。上記樹脂材料を樹脂層形成装置200に導入して気化させてキャンローラ110の外周面に堆積させた。1層当たりの積層厚さは0.3μmである。次いで樹脂硬化装置147として、紫外線硬化装置を用い、上記により堆積させた樹脂材料を重合し、硬化度が70%になるまで硬化させた。この操作を、キャンローラ110を回転させることにより繰返し、キャンローラ110の外周面に総厚さ10μmの樹脂層の連続積層部分を形成した。この間、金属薄膜形成装置140の開口141は遮蔽板142で遮蔽しておいた。
【0107】
次いで、樹脂層と金属薄膜層とが交互に積層された、コンデンサとしての容量を発生する部分(素子層)を積層した。流量調整バルブ221を調整して樹脂層1層当たりの積層厚さを0.15μmとした。次いで樹脂硬化装置147により樹脂層の硬化度が70%になるまで硬化させた。その後、表面処理装置149により、表面を酸素プラズマ処理した。次に、パターニング材料付与装置130により、気化させたパターニング材料を微細孔から噴出させて、樹脂層表面上に帯状に付着させた。パターニング材料として、フッ素系オイルを使用した。このパターニング材料の蒸気圧が13Pa(0.1torr)となる温度は100℃である。オイルの平均分子量は1500である。帯状のパターニング材料の付着幅は150μmとした。次に、遮蔽板142を移動して開口141を開いた。そして、金属薄膜形成装置140からアルミニウムを金属蒸着させた。積層厚みは30nmとした。その後、パターニング材料除去装置145により、遠赤外線ヒータによる加熱及びプラズマ放電処理を行ない、残存したパターニング材料を除去した。以上の操作を、キャンローラ110を回転させることにより3000回繰り返した。なお、この間、パターニング材料付与装置130を、キャンローラ110の回転に同期させて、1回転するごとに回転軸方向に1000μm往復移動させた。以上により総厚さ800μmの素子層部分を形成した。
【0108】
最後に、遮蔽板142を移動して開口141を閉じて、樹脂層のみを連続積層して保護層を再度形成した。積層条件は上記の保護層の積層条件と同様である。キャンローラ110を回転させて総厚さ10μmの保護層を形成した。
【0109】
次いで、キャンローラ110の外周面上に形成された円筒状積層体を周方向に8分割して取り外し、加熱下でプレスして図7に示すような平板状の積層体母素子300を得た。図7において、矢印301はキャンローラ110の外周面の走行方向と一致する。303は樹脂層、305は金属薄膜層、307はパターニング材料によって形成されたマージン部である。図7は、積層状態を理解しやすいように模式的に示しており、実際の積層数はこれより遙かに多い。また、樹脂層303と金属薄膜層305の厚みや、マージン部307の幅等の寸法比率は実際のものとは異なり誇張して描いてある。
【0110】
図7において、積層体母素子300の下側がキャンローラ110側であり、下から順に保護層311、コンデンサとして機能する素子層312、保護層313が順に積層されている。上記の通り、保護層311,313は開口141を閉じて樹脂層のみを連続して積層した層であり、素子層312は、開口141を開いて金属薄膜層と樹脂層とを交互に積層した層である。このとき、キャンローラ110の回転と同期させて1回転ごとにマージン部307の位置を変更して積層してある。
【0111】
積層体母素子300を切断面321で切断し、切断面に黄銅を金属溶射して外部電極を形成した。更に、金属溶射表面に熱硬化性フェノール樹脂中に銅、Ni、銀の合金等を分散させた導電性ペーストを塗布し、加熱硬化させ、更にその樹脂表面に溶融ハンダメッキを施した。その後、切断面322に相当する箇所で切断した。その後、シランカップリング剤溶液に浸漬して外表面をコーティングし、図8に示すようなチップコンデンサ330を多数得た。図8において、331a,331bは金属薄膜層305と電気的に接続して形成された外部電極である。
【0112】
得られたチップコンデンサは、積層方向厚み約820mm、奥行約1.6mm、幅(両外部電極間方向)約3.2mmである。
【0113】
(実施例2)
実施例1において、樹脂層形成装置200を図3の構成のものに変更する以外は同様にしてチップコンデンサを得た。多孔体251は実施例1と同一とした。また、調整室230の内壁面に貼付する多孔体252としては、住友電工株式会社製の発泡メタル多孔体「セルメット」を用いた。孔径3.2mm、厚さ5mmとした。多孔体251を150℃に、多孔体252を150℃にそれぞれ維持した。
【0114】
(実施例3)
実施例1において、樹脂層形成装置200を図4の構成のものに変更する以外は同様にしてチップコンデンサを得た。多孔体251は実施例1と同一とした。また、開口240の多孔体253としては、住友電工株式会社製の発泡メタル多孔体「セルメット」を用いた。孔径3.2mm、厚さ10mmとした。多孔体251を150℃に、多孔体253を150℃にそれぞれ維持した。
【0115】
(実施例4)
実施例3において、樹脂層形成装置200を図5の構成のものに変更する以外は同様にしてチップコンデンサを得た。多孔体253は住友電工株式会社製の発泡メタル多孔体「セルメット」を用いた。孔径0.5mm、厚さ5mmとした。多孔体253を150℃に維持した。
【0116】
(比較例1)
実施例1において、樹脂層形成装置200内の多孔体251を取り除いた以外は同様にしてチップコンデンサを得た。
【0117】
[評価]
実施例1〜4、比較例1を以下の評価項目で評価した。
【0118】
(1)異常粒子数
キャンローラ110上での積層を終了後、上層の保護層313の表面に観察される直径50μm以上の粗大突起の個数を、10cm四方の領域内でカウントした。
【0119】
(2)初期異常粒子数
積層開始後、樹脂層を200層積層した時点で表面に観察される直径20μm以上の粗大突起の個数を、10cm四方の領域内でカウントした。
【0120】
(3)IR歩留まり
得られたチップコンデンサの絶縁抵抗を計測し、それが1×1011Ω以上である個数割合を求めた。
【0121】
(4)真空度変動率
積層中の真空槽101の空間109の短時間圧力変動幅を平均圧力で除して、変動率(%)を求めた。
【0122】
評価結果を表1に示す。
【0123】
【表1】
【0124】
実施例1〜4と比較例1との対比より明らかなように、上記(1)〜(4)の全ての評価項目において実施例が優れることが分かる。即ち、本発明によれば樹脂層中の異常突起が少なく、製品歩留まりが良好で、樹脂材料の蒸発量も安定することが分かる。
【0125】
「異常粒子数」に関しては、実施例3,4のように、開口240に多孔体253を設置することが特に有効であることが分かる。実施例2が実施例1より良好なのは、樹脂層形成中の調整室230内の樹脂粒子の液滴を、実施例2では多孔体252が良好に捕捉し孔内に吸収できたのに対して、実施例1では内壁面に捕捉しきれずに一部が多孔体251等の上に落下して突沸を生じたためであると考えられる。
【0126】
「初期異常粒子数」に関しては、実施例1と実施例2との対比から明らかなように、蒸発室230の内壁面に多孔体252を貼付することで改善できることが分かる。実施例1では、実験前に蒸発室230の内壁面に付着していた樹脂材料の固化物が、実験開始によって加熱されて溶融し落下して、突沸等したことにより初期異常粒子が多発したものと思われる。これに対して、実施例2では、蒸発室230の内壁面に多孔体252を貼付していたことにより、付着していた樹脂材料の落下を防止できたため、初期異常粒子の発生を防止できたと考えられる。また、実施例2と実施例3との対比から明らかなように、蒸発室230の内壁面に多孔体252を貼付しなくても、開口240に多孔体253を設置すれば、異常粒子の発生を抑えることができる。
【0127】
「IR歩留まり」は、「異常粒子数」及び「初期異常粒子数」と相関関係が認められる。即ち、樹脂層に発現する粗大突起により樹脂層にピンホールが形成され、上下の金属薄膜層が短絡することで絶縁抵抗が低下すると考えられる。なお、実施例3が実施例4よりわずかによい結果となったのは、実施例3では多孔体を2枚設けた(多孔体251と多孔体253)ので、異常粒子の発生を上記評価方法では認められない範囲内でわずかに改善できたためであると考えられる。
【0128】
「真空度変動率」は、加熱板223,224で発生した樹脂材料蒸気がキャンローラに到達するまでに通過しなければならない多孔体の数と相関関係が認められ、通過する多孔体の数が2枚と最も多い実施例3が最も変動率が小さく、次いで1枚の実施例1,2,4、そして0枚の比較例1の順に真空度変動率が大きくなる。なお、実施例1,2より実施例4の方が真空度変動が小さかったのは、実施例4では多孔体の孔径が小さく、かつそれを開口240に設置したためであると考えられる。
【0129】
【発明の効果】
本発明によれば、樹脂材料蒸気が多孔体を通過した後、支持体上に到達するように構成することにより、多孔体が樹脂材料蒸気中の液滴を捕捉することができるので、表面に粗大突起のない、極めて平滑な樹脂層を得ることができる。また、多孔体より加熱体側の圧力変動が支持体側に伝わるのを防止できるので、厚みの均一な樹脂層を得ることができる。
【0130】
また、装置の筐体の内壁面に多孔体を貼付することにより、捕捉された樹脂材料の落下によって発生する樹脂材料の液滴の発生や蒸発量の変動を防止することができる。この結果、表面に粗大突起のない、極めて平滑な樹脂層を得ることができる。また、装置外部の圧力変動を防止でき、均一な厚みの樹脂層を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の積層体の製造装置の一例の内部構成を示した概略断面図である。
【図2】 本発明の実施の形態1の樹脂層形成装置の構成を示した概略断面図である。
【図3】 本発明の実施の形態2の樹脂層形成装置の構成を示した概略断面図である。
【図4】 本発明の実施の形態3の樹脂層形成装置の構成を示した概略断面図である。
【図5】 本発明の実施の形態4の樹脂層形成装置の構成を示した概略断面図である。
【図6】 参考の形態1の樹脂層形成装置の構成を示した概略断面図である。
【図7】 本発明の実施例で得た積層体母素子の模式的斜視図である。
【図8】 本発明の実施例で得たチップコンデンサの模式的斜視図である。
【図9】 従来の積層体の製造装置の一例の概略を模式的に示した断面図である。
Claims (19)
- 開口と、内部に加熱体とを備え、液状の樹脂材料を前記加熱体上で加熱し、気化させて得た樹脂材料蒸気を、前記開口から支持体に向けて放出して、真空又は減圧下で前記支持体上に樹脂層を形成する樹脂層形成装置であって、
前記加熱体と前記開口との間に多孔体が設置され、前記樹脂材料蒸気は前記多孔体を通過した後、前記支持体に到達するように構成されていることを特徴とする樹脂層形成装置。 - 前記多孔体が前記開口に設置されている請求項1に記載の樹脂層形成装置。
- 前記多孔体が2カ所以上設置されている請求項1に記載の樹脂層形成装置。
- 前記加熱体を含む蒸発室と、前記蒸発室で発生した樹脂材料蒸気を前記開口に導く調整室とを有し、前記蒸発室と前記調整室との境界部に前記多孔体が設置されている請求項1に記載の樹脂層形成装置。
- 前記樹脂層形成装置の内壁面の少なくとも一部に多孔体が貼付されている請求項1に記載の樹脂層形成装置。
- 前記調整室の内壁面に多孔体が貼付されている請求項4に記載の樹脂層形成装置。
- 前記多孔体は金属フィルターである請求項1、5、又は6に記載の樹脂層形成装置。
- 前記多孔体は金属発泡体である請求項1、5、又は6に記載の樹脂層形成装置。
- 樹脂層形成時は前記多孔体は加熱される請求項1、5、又は6に記載の樹脂層形成装置。
- 支持体と、前記支持体上に樹脂層を形成する樹脂層形成装置と、前記支持体上に金属薄膜層を形成する金属薄膜形成装置と、前記支持体、前記樹脂層形成装置、及び前記金属薄膜形成装置を収納する真空槽とを備えた積層体の製造装置であって、前記樹脂層形成装置が請求項1に記載の樹脂層形成装置であることを特徴とする積層体の製造装置。
- 前記支持体が周回することにより、樹脂層と金属薄膜層との交互積層体が製造される請求項10に記載の積層体の製造装置。
- 筐体内に設置した加熱体上で液状の樹脂材料を加熱し、気化させて、樹脂材料蒸気を得た後、前記樹脂材料蒸気を前記筐体に設置した開口から支持体に向けて放出して、真空又は減圧下で前記支持体上に樹脂層を形成する樹脂層の製造方法であって、
前記加熱体と前記開口との間に多孔体を設置して、前記樹脂材料蒸気は前記多孔体を通過した後、前記支持体上に付着することを特徴とする樹脂層の製造方法。 - 前記多孔体を前記開口に設置する請求項12に記載の樹脂層の製造方法。
- 前記多孔体を2カ所以上設置する請求項12に記載の樹脂層の製造方法。
- 前記多孔体は金属フィルターである請求項12に記載の樹脂層の製造方法。
- 前記多孔体は金属発泡体である請求項12に記載の樹脂層の製造方法。
- 前記多孔体を加熱しながら樹脂層を形成する請求項12に記載の樹脂層の製造方法。
- 支持体上に樹脂層を形成する工程と、前記支持体上に真空プロセスにより金属薄膜層を形成する工程とを有する積層体の製造方法であって、前記樹脂層を形成する工程では請求項12に記載の樹脂層の製造方法により樹脂層を形成する積層体の製造方法。
- 前記支持体を周回させて、樹脂層と金属薄膜層との交互積層体を製造する請求項18に記載の積層体の製造方法。
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