JP4439492B2 - カルコパイライト型太陽電池およびその製造方法 - Google Patents
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Description
図1に示すように、カルコパイライト型太陽電池は、ガラス等の基板(サブストレート)上に形成された下部電極層(Mo電極層)と、銅・インジウム・ガリウム・セレンを含む光吸収層(CIGS光吸収層)と、光吸収層薄膜の上に、InS、ZnS、CdS等で形成される高抵抗のバッファ層薄膜と、ZnOAl等で形成される上部電極薄膜(TCO)とから形成される。
まず、ソーダライムガラス等の基板に下部電極となるMo(モリブデン)電極をスパッタリング等によって成膜する。次に、Mo電極をレーザー光の照射等によって除去することで分割する。(第1のスクライブ、図2の(a))
隣接する前記下部電極の間と隣接する前記下部電極の一方に跨って形成され且つ前記光吸収層の一部を改質することで当該光吸収層よりも導電性が高くなったコンタクト電極と、前記コンタクト電極に隣接する箇所で複数に分割された透明な導電層である上部電極と、前記コンタクト電極の素子分離用溝側に連続して残されたデッドスペースとを有する。
本発明によるカルコパイライト型太陽電池の断面を図5に示す。従来の技術と変わりがない部位には、同じ符号を付してある。
本発明によるカルコパイライト型太陽電池は、基板1の上部に形成された下部電極層(Mo電極層)2と、銅・インジウム・ガリウム・セレンを含む光吸収層(CIGS光吸収層)3と、光吸収層薄膜の上に、InS、ZnS、CdS等で形成される高抵抗のバッファ層薄膜4と、ZnOAl等で形成される上部電極薄膜(TCO)5とから1つの単位となる電池(ここでは便宜上、「単位セル」と呼ぶ)が形成され、さらに、単位となる電池を接続する目的で、上部電極と下部電極とを接続するコンタクト電極6の一部が、第1のスクライブで形成された下部電極2の分割線上に重なるように形成される。即ち、コンタクト電極6は隣接する下部電極2,2の間と隣接する下部電極の一方に跨って形成されている。
まず、基板に下部電極となるMo(モリブデン)電極をスパッタリングや蒸着等によって成膜する。下部電極には、モリブデンの他にチタンやタングステン等が使用されることがある。次に、Mo電極をレーザーの照射等によって除去することで分割する。(第1のスクライブ)
このプリカーサを炉に投入し、セレン化水素(H2Se)ガスの雰囲気中で400℃から600℃程度の温度でアニールすることにより、光吸収層薄膜を得る。このアニールの工程は、通常、気相セレン化もしくは、単に、セレン化と呼ばれることもある。
図8の(a)に、レーザーコンタクト形成工程を実施しない光吸収層の成分分析結果を、(b)にレーザーコンタクト形成工程をおこなったレーザーコンタクト部の成分分析結果を示す。なお、分析にはEPMA(Electron Probe Micro-Analysis)を用いた。EPMAは、加速した電子線を物質に照射し、電子線を励起することにより生じる特性X線のスペクトルを分析することにより構成元素を検出し、さらに、それぞれの構成元素の比率(濃度)を分析するものである。
この変化の理由について考察する。発明者によるシミュレーションによると、例えば、波長が355nmのレーザー光を0.1J/cm2で照射した際には、光吸収層の表面温度は6,000℃程度に上昇する。もちろん、光吸収層の内部(下部)側では温度が低くなるが、実施例に用いた光吸収層は1μmであり、光吸収層の内部でも、かなりの高温になっていると言える。
また、モリブデンの融点は2,610℃であるため、下部電極に存在するある程度のモリブデンが、溶融して光吸収層側に取り込まれていると推察される。
図9に、Cu/In比率による特性の変化を示す。図9(a)は、Cu/In比率による光吸収層のキャリア濃度の違いを、図9(b)は、Cu/In比率による抵抗率の変化を示している。
モリブデンは、周期表の6族に属する金属元素であり、比抵抗が5.4×10−6Ωcmの特性を示す。光吸収層が溶融し、モリブデンを取り込む形で再結晶化することで、抵抗率が減少することになる。
以上の2つの理由から、コンタクト電極がp+(プラス)型または金属に変質し、光吸収層よりも低抵抗化していると考えられる。
図10にTCO積層後のカルコパイライト型太陽電池表面を撮影した光学顕微鏡写真を示す。
従来のスクライブでは、第1のスクライブで形成されたスクライブラインからある程度離間させてデッドスペースを形成するように第2のスクライブをおこなう必要があったが、本発明では、第1のスクライブで形成したスクライブラインに一部が重なるように光吸収層が改質されたコンタクト電極が形成されるため、デッドスペースを形成することなく、モノリシックな直列接続構造を得ることが可能となる。また、光吸収層膜厚に相当する段差が存在しないため、透明電極に欠陥を生じるようなことも無い。
図11に示すコンタクト電極は、周波数20kHz、出力467mW、パルス幅35nsのレーザーを5回照射した。回数を5回としたのは、レーザー照射によるコンタクト電極膜厚の減少をみるためである。
Claims (3)
- 基板と、
前記基板の上部に形成された導電層を分割してなる複数の下部電極と、
前記複数の下部電極上に形成され複数に分割されたカルコパイライト型の光吸収層と、
前記光吸収層上に形成されたInSからなるバッファ層と、
隣接する前記下部電極の間と隣接する前記下部電極の一方に跨って形成され且つ前記光吸収層の一部と当該光吸収層の上に形成された前記バッファ層とを改質することで当該バッファ層が消失し、前記光吸収層よりもCu/In比率が1より高く導電性が高くなった単層のコンタクト電極と、
前記コンタクト電極に隣接する箇所で複数に分割された透明な導電層である上部電極と、
前記コンタクト電極の素子分離用溝側に連続して残されたデッドスペースとを有することを特徴とするカルコパイライト型太陽電池。 - 前記コンタクト電極は、モリブデンが含まれた合金であることを特徴とする請求項1記載のカルコパイライト型太陽電池。
- 基板の上部に下部電極となる導電層を形成する導電層形成工程と、
前記導電層を複数の下部電極に分割する第1のスクライブ工程と、
前記第1のスクライブ工程後、前記複数の下部電極表面およびその間の基板表面に光吸収層を形成する光吸収層形成工程と、
前記光吸収層上にInSを成膜するバッファ層形成工程と、
前記バッファ層形成工程後、前記光吸収層と該光吸収層上に形成された前記バッファ層のうち隣接する下部電極の間と隣接する下部電極の一方に跨がるとともに後に素子分離スクライブを行う部分に重ならないようにレーザー光を照射し、当該光吸収層と当該バッファ層とを改質してレーザ光を照射した部分のバッファ層を消失させ、Cu/In比率を当該光吸収層のレーザ光を照射しない部分より大きくすることによりレーザー光を照射しない部分の導電率よりも高くなるように改質するコンタクト電極形成工程と、
前記コンタクト電極形成工程後、前記バッファ層およびコンタクト電極上に透明電極層を積層する透明電極形成工程と、
前記透明電極形成工程後、前記コンタクト電極に隣接してデッドスペースを形成するように前記透明電極を分割する素子分離スクライブ工程とを備えることを特徴とするカルコパイライト型太陽電池の製造方法。
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