JP4438274B2 - 窒化物半導体素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、LED(発光ダイオード)、LD(レーザダイオード)、あるいはスーパルミネッセントダイオード(SLD)等の発光素子、太陽電池、光センサー等の受光素子、あるいはトランジスタ、パワーデバイス等の電子デバイスに使用される窒化物半導体(InXAlYGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いた素子に関する。なお、本明細書において使用する一般式InXGa1−XN、AlYGa1−YN等は単に窒化物半導体層の組成式を示すものであって、異なる層が例えば同一の組成式で示されていても、それらの層のX値、Y値が一致していることを示すものではない。
【0002】
【従来の技術】
窒化物半導体は高輝度青色LED、純緑色LEDの材料として、フルカラーLEDディスプレイ、交通信号等で最近実用化されたばかりである。これらの各種デバイスに使用されるLEDは、InGaNよりなる井戸層を有する単一量子井戸構造(SQW:Single-Quantum- Well)、若しくは多重量子井戸構造(MQW:Multi-Quantum-Well)の活性層が、n型窒化物半導体層とp型窒化物半導体層との間に挟まれたダブルへテロ構造を有している。青色、緑色等の波長はInGaN井戸層のIn組成比を増減することで決定されている。
【0003】
また、本出願人は、最近この材料を用いてパルス電流下、室温での410nmのレーザ発振を世界で初めて発表した{例えば、Jpn.J.Appl.Phys.35(1996)L74、Jpn.J.Appl.Phys.35(1996)L217等}。このレーザ素子は、InGaNよりなる井戸層を用いた多重量子井戸構造の活性層を有するダブルへテロ構造を有し、パルス幅2μs、パルス周期2msの条件で、閾値電流610mA、閾値電流密度8.7kA/cm2、410nmの発振を示す。さらに、我々は改良したレーザ素子をAppl.Phys.Lett.69(1996)1477において発表した。このレーザ素子は、p型窒化物半導体層の一部にリッジストライプが形成された構造を有しており、パルス幅1μs、パルス周期1ms、デューティー比0.1%で、閾値電流187mA、閾値電流密度3kA/cm2、410nmの発振を示す。そして、さらに我々は室温での連続発振にも初めて成功し、発表した。{例えば、日経エレクトロニクス 1996年12月2日号 技術速報、Appl.Phys.Lett.69(1996)3034、Appl.Phys.Lett.69(1996)4056 等}、このレーザ素子は20℃において、閾値電流密度3.6kA/cm2、閾値電圧5.5V、1.5mW出力において、27時間の連続発振を示す。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
窒化物半導体よりなる青色、緑色LEDは順方向電流(If)20mAで、順方向電圧(Vf)が3.4V〜3.6Vあり、GaAlAs系の半導体よりなる赤色LEDに比べて2V以上高いため、さらなるVfの低下が望まれている。また、LDでは閾値での電流、電圧が未だ高く、室温で長時間連続発振させるためには、この閾値電流、電圧が下がるような、さらに効率の高い素子を実現する必要がある。
【0005】
レーザ素子の閾値電圧を低下させることができれば、その技術をLED素子に適用すると、LED素子のVfの低下が予想できる。従って本発明の目的とするところは、主として窒化物半導体よりなるLD素子の閾値での電流、電圧を低下させることにより長時間の連続発振を実現することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、窒化物半導体素子において、活性層以外のいずれか1つ以上の半導体層を歪み超格子構造とすることにより、該半導体層の結晶性をよくでき、該半導体層の電気抵抗を低くできることを見いだして完成させたものである。
すなわち、本発明の第1の窒化物半導体素子は、活性層が、n導電側(以下、n側という。)の窒化物半導体層とp導電側(以下、p側という。)の窒化物半導体層との間に形成されてなる窒化物半導体素子であって、
前記n導電側の窒化物半導体層において、前記活性層と離れた位置、若しくは接した位置に、互いにバンドギャップエネルギーが異なりかつ互いにn型不純物濃度が異なる第1と第2の窒化物半導体層とが積層されてなるn側歪み超格子層を有することを特徴とする。
これによって、超格子層で構成された窒化物半導体層の電気抵抗を小さくできるので、n導電側の窒化物半導体層の全体としての抵抗を小さくできる。
【0007】
また本発明の第2の窒化物半導体素子は、活性層が、n導電側の窒化物半導体層とp導電側の窒化物半導体層との間に形成されてなる窒化物半導体素子であって、
前記p導電側の窒化物半導体層において、前記活性層と離れた位置、若しくは接した位置に、互いにバンドギャップエネルギーが異なりかつ互いにp型不純物濃度が異なる第3と第4の窒化物半導体層とが積層されてなるp側歪み超格子層を有することを特徴とする。
これによって、超格子層で構成された窒化物半導体層の電気抵抗を小さくできるので、p導電側の窒化物半導体層の全体としての抵抗を小さくできる。
ここで、p導電側とは活性層と正電極(p電極)との間にある窒化物半導体層を指し、n導電側とは、活性層を挟んでp導電側と反対側にある窒化物半導体層を指すものとする。
なお、第1の窒化物半導体層と第2の窒化物半導体層との積層順序、及び第3の窒化物半導体層と第4の窒化物半導体層との積層順序は問わないことは言うまでもない。
【0008】
さらに本発明の第3の窒化物半導体素子は、活性層が、n導電側の窒化物半導体層とp導電側の窒化物半導体層との間に形成されてなる窒化物半導体素子であって、
前記n導電側の窒化物半導体層において、前記活性層と離れた位置、若しくは接した位置に、互いにバンドギャップエネルギーが異なりかつ互いにn型不純物濃度が異なる第1と第2の窒化物半導体層とが積層されてなるn側歪み超格子層を有し、
前記p導電側の窒化物半導体層において、前記活性層と離れた位置、若しくは接した位置に、互いにバンドギャップエネルギーが異なりかつ互いにp型不純物濃度が異なる第3と第4の窒化物半導体層とが積層されてなるp側歪み超格子層を有することを特徴とする。
これによって、超格子層で構成された窒化物半導体層の電気抵抗を小さくできるので、n導電側及びp導電側の窒化物半導体層の全体としての抵抗を小さくできる。
【0009】
本発明の第1又は第3の窒化物半導体素子では、n側歪み超格子層は、例えば発光素子、受光素子のような光電変換素子であれば、基板に接して形成されたバッファ層、n電極が形成されるn側コンタクト層、キャリア閉じ込めとしてのn側クラッド層、及び活性層の発光を導波するn側光ガイド層の内の少なくとも1種の層として形成される。第2又は第3の窒化物半導体素子では、p側歪み超格子層は、p電極が形成されるp側コンタクト層、キャリア閉じ込めとしてのp側クラッド層、及び活性層の発光を導波するp側光ガイド層の内の少なくとも1種の層として形成される。
【0010】
本発明の第1及び第3の窒化物半導体素子では、超格子層においてバンドギャップエネルギーの大きな第1の窒化物半導体層の不純物濃度をバンドギャップエネルギーの小さい第2の窒化物半導体層の不純物濃度に比較して、大きくしてもよいし、小さくしてもよい。
前記第1の窒化物半導体層の不純物濃度を第2の窒化物半導体層の不純物濃度に比較して大きくした場合、キャリアをバンドギャップエネルギーの大きな第1の窒化物半導体層で発生させて、バンドギャップエネルギーの小さい第2の窒化物半導体層に注入でき、注入されたキャリアを不純物濃度が小さく移動度の大きい第2の窒化物半導体層で移動させることができるので、超格子層の電気抵抗を小さくできる。
ここで、本明細書において、n側歪み超格子層とp側歪み超格子層とを総括して呼ぶときは、上述のように単に超格子層と呼ぶ。
【0011】
また、前記第1の窒化物半導体層の不純物濃度を第2の窒化物半導体層の不純物濃度に比較して大きくした場合、第1の窒化物半導体素子では、超格子層の第1の窒化物半導体層において、第2の窒化物半導体層に近接する部分(以下、近接部分という。)のn型又はp型不純物濃度を、第2の窒化物半導体層から離れた部分に比較して小さくすることが好ましい。これによって、第2の窒化物半導体層中を移動するキャリアが、前記近接部分の不純物によって散乱されるのを防止でき、第2の窒化物半導体層の移動度をさらに高くでき、超格子層の電気抵抗をさらに低くできる。
【0012】
具体的には、第1、第3の窒化物半導体素子において、バンドギャップエネルギーの大きい第1の窒化物半導体層にn型不純物を多くドープする場合、第1の窒化物半導体層のn型不純物濃度が1×1017/cm3〜1×1020/cm3の範囲にあり、第2の窒化物半導体層のn型不純物濃度が、第1の窒化物半導体層より小さくかつ1×1019/cm3以下に設定することが好ましい。なおバンドギャップエネルギーが小さい第2の窒化物半導体層のn型不純物濃度は、1×1018/cm3以下であることがより好ましく、1×1017/cm3以下であることがより好ましい。すなわち、第2の窒化物半導体層の移動度を高くする観点からは、第2の窒化物半導体層のn型不純物濃度は小さければ小さいほどよく、第2の窒化物半導体層をアンドープ(undope)層、即ち不純物を意図的にドープしない状態が最も望ましい。
【0013】
また、前記第1の窒化物半導体層の不純物濃度を第2の窒化物半導体層の不純物濃度に比較して小さくした場合、前記第2の窒化物半導体層において、前記第1の窒化物半導体層に近接する部分のn型不純物濃度を前記第1の窒化物半導体層から離れた部分に比較して小さくすることが好ましい。
さらに、前記第1の窒化物半導体層の不純物濃度を第2の窒化物半導体層の不純物濃度に比較して小さくした場合、前記第1の窒化物半導体層のn型不純物濃度が1×1019/cm3以下であり、前記第2の窒化物半導体層のn型不純物濃度が1×1017/cm3〜1×1020/cm3の範囲であることが好ましい。
尚、前記第1の窒化物半導体層は、好ましくは1×1018/cm3以下、さらに好ましくは1×1017/cm3以下、最も好ましくはアンドープ(undope)、すなわち、不純物を意図的にドープしない状態が最も望ましい。
【0014】
また、第1及び第3の窒化物半導体素子では、超格子層において、結晶性のよい超格子層を形成するために、前記第1の窒化物半導体層を比較的エネルギーバンドギャップが大きくかつ結晶性のよい層を成長させることができるAlYGa1−YN(0<Y<1)で形成し、前記第2の窒化物半導体層を比較的エネルギーバンドギャップが小さく結晶性のよい層を成長させることができるInXGa1−XN(0≦X<1)で形成することが好ましい。
【0015】
また、第1及び第3の窒化物半導体素子では、超格子層において、前記第2の窒化物半導体層がGaNからなることがさらに好ましい。これによって、前記第1の窒化物半導体層(AlYGa1−YN)と、前記第2の窒化物半導体層(GaN)とを同じ雰囲気中で成長させることができるので、超格子層の製造上極めて有利である。
【0016】
また、第1及び第3の窒化物半導体素子では、超格子層において、前記第1の窒化物半導体層はAlXGa1−XN(0<X<1)で形成し、前記第2の窒化物半導体層はAlYGa1−YN(0<Y<1,X>Y)で形成することもできる。
【0017】
さらに、前記第1の窒化物半導体層又は前記第2の窒化物半導体層には、n型不純物がドープされていないことがさらに好ましい。
【0018】
本発明の第2及び第3の窒化物半導体素子では、超格子層においてバンドギャップエネルギーの大きな第3の窒化物半導体層の不純物濃度をバンドギャップエネルギーの小さい第4の窒化物半導体層の不純物濃度に比較して、大きくしてもよいし、小さくしてもよい。
前記第3の窒化物半導体層の不純物濃度を第4の窒化物半導体層の不純物濃度に比較して大きくした場合、キャリアをバンドギャップエネルギーの大きな第3の窒化物半導体層で発生させて、バンドギャップエネルギーの小さい第4の窒化物半導体層に注入でき、注入されたキャリアを不純物濃度が小さく移動度の大きい第4の窒化物半導体層で移動させることができるので、超格子層の電気抵抗を小さくできる。
【0019】
また、第2及び第3の窒化物半導体素子では、前記第3の窒化物半導体層の不純物濃度を第4の窒化物半導体層の不純物濃度に比較して大きくした場合、超格子層の第1の窒化物半導体層において、第4の窒化物半導体層に近接する部分(以下、近接部分という。)のp型不純物濃度を、第4の窒化物半導体層から離れた部分に比較して小さくすることが好ましい。これによって、第4の窒化物半導体層中を移動するキャリアが、前記近接部分の不純物によって散乱されるのを防止でき、第4の窒化物半導体層の移動度をさらに高くでき、超格子層の電気抵抗をさらに低くできる。
【0020】
また、第2、第3の窒化物半導体素子において、前記第3の窒化物半導体層の不純物濃度を第4の窒化物半導体層の不純物濃度に比較して大きくした場合、バンドギャップエネルギーが大きい第3の窒化物半導体層のp型不純物濃度が1×1018/cm3〜1×1021/cm3の範囲にあり、第4の窒化物半導体層のp型不純物濃度が、第3の窒化物半導体層の不純物濃度より小さくかつ1×1020/cm3以下に設定することがより好ましい。なおバンドギャップエネルギーが小さい第4の窒化物半導体層は1×1019/cm3以下であることがより好ましく、1×1018/cm3以下であることがさらに好ましい。すなわち、第4の窒化物半導体層の移動度を高くする観点からは、第4の窒化物半導体層のp型不純物濃度は小さければ小さいほどよく、第4の窒化物半導体層をアンドープ層、即ち不純物を意図的にドープしない状態が最も望ましい。
【0021】
また、第2及び第3の窒化物半導体素子において、前記第3の窒化物半導体層の不純物濃度を第4の窒化物半導体層の不純物濃度に比較して小さくした場合、前記第4の窒化物半導体層において、前記第3の窒化物半導体層に近接する部分のp型不純物濃度を前記第3の窒化物半導体層から離れた部分に比較して小さくすることが好ましい。
【0022】
また、第2及び第3の窒化物半導体素子において、前記第3の窒化物半導体層の不純物濃度を第4の窒化物半導体層の不純物濃度に比較して小さくした場合、前記第3の窒化物半導体層のp型不純物濃度が1×1020/cm3以下であり、第4の窒化物半導体層のp型不純物濃度が1×1018/cm3〜1×1021/cm3の範囲であることが好ましい。
尚、前記第3の窒化物半導体層は、1×1019/cm3以下、さらに好ましくは1×1018/cm3以下、最も好ましくはアンドープ(undope)、すなわち、不純物を意図的にドープしない状態が最も望ましい。
【0023】
また、第2及び第3の窒化物半導体素子において、結晶性のよい超格子層を形成するために、前記第3の窒化物半導体層を比較的エネルギーバンドギャップが大きくかつ結晶性のよい層を成長させることができるAlYGa1−YN(0<Y<1)で形成し、前記第4の窒化物半導体層をInXGa1−XN(0≦X<1)で形成することが好ましい。前記第4の窒化物半導体層は、GaNからなることがさらに好ましい。これによって、前記第3の窒化物半導体層(AlYGa1−YN)と、前記第4の窒化物半導体層(GaN)とを同じ雰囲気中で成長させることができるので、超格子層の製造上極めて有利である。
【0024】
また、第2及び第3の窒化物半導体素子において、前記第3の窒化物半導体層はAlXGa1−XN(0<X<1)で形成し、前記第4の窒化物半導体層はAlYGa1−YN(0<Y<1,X>Y)で形成してもよい。
【0025】
また、第2及び第3の窒化物半導体素子において、前記第3の窒化物半導体層又は前記第4の窒化物半導体層には、p型不純物がドープされていないことが好ましい。
【0026】
第3の窒化物半導体素子では、前記n側歪み超格子層において、前記第1の窒化物半導体層のバンドギャップエネルギーが前記第2の窒化物半導体層のバンドギャップエネルギーより大きく、かつ前記第1の窒化物半導体層のn型不純物濃度が前記第2の窒化物半導体層のn型不純物濃度より高く、しかも、
前記p側歪み超格子層において、前記第3の窒化物半導体層のバンドギャップエネルギーが前記第4の窒化物半導体層のバンドギャップエネルギーより大きく、かつ前記第3の窒化物半導体層のp型不純物濃度が前記第4の窒化物半導体層のp型不純物濃度より高く設定することができる。
この場合、前記第1の窒化物半導体層のn型不純物濃度が1×1017/cm3〜1×1020/cm3の範囲であって、第2の窒化物半導体層のn型不純物濃度が1×1019/cm3以下でありかつ、
前記第3の窒化物半導体層のp型不純物濃度が1×1018/cm3〜1×1021/cm3の範囲であって、前記第4の窒化物半導体層のp型不純物濃度が1×1020/cm3以下であることが好ましい。
【0027】
また、第3の窒化物半導体素子では、前記n側歪み超格子層において、前記第1の窒化物半導体層は、前記第2の窒化物半導体層より大きいバンドギャップエネルギーと前記第2の窒化物半導体層より大きいn型不純物濃度とを有するように設定しかつ、 前記p側歪み超格子層において、前記第3の窒化物半導体層は、前記第4の窒化物半導体層より大きいバンドギャップエネルギーと前記第4の窒化物半導体層より小さいp型不純物濃度とを有するように設定することができる。
この場合、前記第1の窒化物半導体層のn型不純物濃度が1×1017/cm3〜1×1020/cm3の範囲であって、第2の窒化物半導体層のn型不純物濃度が1×1019/cm3以下でありかつ、
前記第3の窒化物半導体層のp型不純物濃度が1×1020/cm3以下であり、第4の窒化物半導体層のp型不純物濃度が1×1018/cm3〜1×1021/cm3の範囲であることが好ましい。
【0028】
また、第3の窒化物半導体素子では、前記n側歪み超格子層において、前記第1の窒化物半導体層は、前記第2の窒化物半導体層より大きいバンドギャップエネルギーと前記第2の窒化物半導体層より小さいn型不純物濃度とを有しかつ、前記p側歪み超格子層において、前記第3の窒化物半導体層は、前記第4の窒化物半導体層より大きいバンドギャップエネルギーと前記第4の窒化物半導体層より大きいp型不純物濃度とを有するように設定することができる。
この場合、前記第1の窒化物半導体層のn型不純物濃度が1×1019/cm3以下であって、前記第2の窒化物半導体層のn型不純物濃度が1×1017/cm3〜1×1020/cm3の範囲でありかつ、前記第3の窒化物半導体層のp型不純物濃度が1×1018/cm3〜1×1021/cm3の範囲であって、前記第4の窒化物半導体層のp型不純物濃度が1×1020/cm3以下であることが好ましい。
【0029】
さらに、第3の窒化物半導体素子では、前記n側歪み超格子層において、前記第1の窒化物半導体層は、前記第2の窒化物半導体層より大きいバンドギャップエネルギーと前記第2の窒化物半導体層より小さいn型不純物濃度とを有しかつ、
前記p側歪み超格子層において、前記第3の窒化物半導体層は、前記第4の窒化物半導体層より大きいバンドギャップエネルギーと前記第4の窒化物半導体層より小さいp型不純物濃度とを有するように設定することができる。
この場合、前記第1の窒化物半導体層のn型不純物濃度が1×1019/cm3以下であって、前記第2の窒化物半導体層のn型不純物濃度が1×1017/cm3〜1×1020/cm3の範囲でありかつ、前記第3の窒化物半導体層のp型不純物濃度が1×1020/cm3以下であり、第4の窒化物半導体層のp型不純物濃度が1×1018/cm3〜1×1021/cm3の範囲であることが好ましい。
【0030】
第3の窒化物半導体素子では、前記n側歪み超格子層において、前記第1の窒化物半導体層はAlYGa1−YN(0<Y<1)で形成し、前記第2の窒化物半導体層はInXGa1−XN(0≦X<1)で形成しかつ、
前記p側歪み超格子層において、前記第3の窒化物半導体層はAlYGa1−YN(0<Y<1)で形成し、前記第4の窒化物半導体層はInXGa1−XN(0≦X<1)で形成することができる。
さらに、前記第2と第4の窒化物半導体素子がそれぞれ、GaNからなることが好ましい。
【0031】
第3の窒化物半導体素子では、前記n側歪み超格子層において、前記第1の窒化物半導体層はAlXGa1−XN(0<X<1)で形成し、前記第2の窒化物半導体層はAlYGa1−YN(0<Y<1,X>Y)で形成し、
前記p側歪み超格子層において、前記第3の窒化物半導体層はAlXGa1− XN(0<X<1)で形成し、前記第4の窒化物半導体層はAlYGa1−YN(0<Y<1,X>Y)で形成することができる。
【0032】
さらに、第3の窒化物半導体素子では、前記第1の窒化物半導体層又は前記第2の窒化物半導体層は、n型不純物がドープされていないアンドープ層であることが好ましく、前記第3の窒化物半導体層又は前記第4の窒化物半導体層は、p型不純物がドープされていないアンドープ層であることが好ましい。
【0033】
また、第1第2第3の窒化物半導体素子では、前記活性層がInGaN層を含むことが好ましく、前記InGaN層が量子井戸層であることがさらに好ましい。尚、前記活性層は、単一量子井戸構造であってもよいし、多重量子井戸構造であってもよい。
【0034】
また、本発明に係る1つの態様の窒化物半導体素子は、前記活性層がp側クラッド層とn側クラッド層の間に位置するレーザ発振素子であって、
前記p側クラッド層と前記n側クラッド層のうちの少なくとも一方が、前記n側歪み超格子層又は前記p側歪み超格子層である。これによって、しきい値電流の低いレーザ発振素子を構成できる。
【0035】
また、前記レーザ発振素子では、前記p側クラッド層と活性層との間、又は前記p側クラッド層と活性層との間の少なくとも一方に、Inを含む窒化物半導体又はGaNからなり、不純物濃度が1×1019/cm3以下である光ガイド層が形成されることが好ましい。この光ガイド層は、前記活性層で発生する光の吸収率が低いので、活性層の発光を消衰させることが少なく、低利得で発振可能なレーザ素子を実現できる。本発明では、光の吸収率を低くするために、前記光ガイド層の不純物濃度は1×1018/cm3以下であることがより好ましく、1×1017/cm3以下であることがさらに好ましく、アンドープであることが最も好ましい。尚、前記光ガイド層を超格子構造にしてもよい。
【0036】
さらに、前記光ガイド層と活性層との間に、活性層の井戸層及び前記光ガイド層のバンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有する、膜厚0.1μm以下の窒化物半導体よりなるキャップ層が形成されることが好ましく、そのキャップ層の不純物濃度は1×1018/cm3以上に設定することが好ましい。このように、バンドギャップエネルギーの大きな前記キャップ層を形成することにより、リーク電流を少なくすることができる。この光ガイド層及びキャップ層はp導電側窒化物半導体層側に形成されているとより効果的である。
【0037】
また本発明においては、第1〜第3の窒化物半導体素子は、窒化物半導体とは異なる材料よりなる異種基板上に窒化物半導体層を成長させ、該成長された窒化物半導体層上に、該窒化物半導体層の表面を部分的に露出させるように保護膜を形成した後、露出された窒化物半導体層から前記保護膜を覆うように成長された窒化物半導体からなる窒化物半導体基板の上に形成することが好ましい。これによって、第1〜第3の窒化物半導体素子の各層を結晶性よく形成できるので、優れた特性を有する窒化物半導体素子を形成することができる。
本願発明では、この異種基板、及び保護膜は、窒化物半導体素子が形成された(又はされるべき)窒化物半導体層を基板として残して、素子成長前または素子成長後に除去してもよい。
【0038】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る一実施形態の窒化物半導体素子の構造を示す模式的な断面図である。この実施形態の窒化物半導体素子は、活性層端面を共振面とする電極ストライプ型のレーザ素子(従って、以下単に実施形態のレーザ素子という。)であって、図1は、レーザ光の共振方向に垂直な方向で素子を切断した際の断面を模式的に示している。以下、図1を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0039】
まず、図1において、各符号は以下のものを示す。
10は、窒化物半導体と異なる材料よりなる異種基板、例えばサファイア、スピネル、SiC、Si、GaAs、ZnO等の材料よりなる基板の上に成長された、例えば膜厚10μm以上のGaN基板を示す。なお、異種基板は、図1に示すように、GaN基板10を形成した後除去してもよいし、後述する実施例に示すように除去しないで用いてもよい(図4)。
11は、Siドープn型GaNよりなるバッファ層、兼n側コンタクト層を示す。
12は、活性層から離れた位置にあり、例えば膜厚40オングストロームのSiドープn型Al0.2Ga0.8N(第1の窒化物半導体層)と膜厚40オングストロームのアンドープ(undope)GaN層(第2の窒化物半導体層)とが交互に100層積層されてなる超格子構造のn側クラッド層を示す。
13は、n側クラッド層12と、活性層14との間にあり、n側クラッド層12のAl0.2Ga0.8Nよりも小さいバンドギャップエネルギーを有する、例えばアンドープGaNよりなるn側ガイド層を示す。
14は、膜厚30オングストロームのIn0.2Ga0.8Nよりなる井戸層3層と、井戸層よりもバンドギャップエネルギーが大きい膜厚30オングストロームのIn0.05Ga0.95Nよりなる障壁層2層とが交互に合計5層積層されてなる多重量子井戸構造の活性層を示す。
15は、活性層14の井戸層のバンドギャップエネルギーよりも大きく、p側光ガイド層16のバンドギャップエネルギーよりも大きい、例えばMgドープp型Al0.3Ga0.7Nよりなるp側キャップ層を示す。このp側キャップ層15のバンドギャップエネルギーは好ましくは、超格子構造のp側クラッド層17のバンドギャップエネルギーの小さい方の窒化物半導体層(第4の窒化物半導体層)よりも大きくする。
16は、p側クラッド層17と、活性層14との間にあり、p側クラッド層17のAl0.2Ga0.8Nよりも小さいバンドギャップエネルギーを有する、例えばアンドープGaNよりなるp側ガイド層を示す。
17は、活性層から離れた位置にあり、例えば膜厚40オングストロームのMgドープp型Al0.2Ga0.8Nと膜厚40オングストロームのアンドープ(undope)GaN層とが交互に100層積層されてなる超格子構造のp側クラッド層を示す。
18は、p側クラッド層17のAl0.2Ga0.8Nよりも小さいバンドギャップエネルギーを有する、例えばMgドープGaNよりなるp側コンタクト層を示す。
【0040】
このように本発明の実施形態のレーザ素子は、GaN基板10の上に上述の各窒化物半導体層11〜18が積層された構造を有しており、p側クラッド層17から上の窒化物半導体層はストライプリッジが形成され、リッジ最表面にあるp側コンタクト層18のほぼ全面にp電極21が形成されている。一方、窒化物半導体層上部からエッチングされて露出されたn側バッファ層11の表面にはn電極23が形成されている。本実施の形態では、n電極23はn側バッファ層11の表面に形成されているが、基板としてがGaN基板10を用いているので、n電極を形成する部分をGaN基板10までエッチングしてGaN基板10の表面を露出させ、その露出させたGaN基板10の表面にn電極を形成して同一面側にp電極とn電極とを設ける構造とすることもできる。またn電極23とp電極21との間に露出している窒化物半導体表面には、例えばSiO2からなる絶縁膜25が設けられ、その絶縁膜25の窓部を介してそれぞれボンディング用としてpパッド電極22とnパッド電極24が設けられている。なお先にも述べたように、本明細書において、活性層とp電極との間にある窒化物半導体層は、窒化物半導体層の導電型に関わらず、総称してp側窒化物半導体層といい、その活性層とGaN基板10との間にある窒化物半導体層を総称してn側窒化物半導体層という。
【0041】
本発明の実施形態のレーザ素子では、図1に示す活性層14の下部にあるn側窒化物半導体層中において、活性層14と離れた位置に、バンドギャップエネルギーの大きな第1の窒化物半導体層と、第1の窒化物半導体層よりもバンドギャップエネルギーの小さな第2の窒化物半導体層とが積層されて、互いに不純物濃度が異なる超格子構造のn側クラッド層12を有している。超格子層を構成する第1の窒化物半導体層、第2の窒化物半導体層の膜厚は100オングストローム以下、さらに好ましくは70オングストローム以下、最も好ましくは10〜40オングストロームの膜厚に調整する。100オングストロームよりも厚いと、第1の窒化物半導体層及び第2の窒化物半導体層が弾性歪み限界以上の膜厚となり、膜中に微少なクラック、あるいは結晶欠陥が入りやすい傾向にある。本発明では、第1の窒化物半導体層、第2の窒化物半導体層の膜厚の下限は特に限定されず、1原子層以上であればよいが、前記のように10オングストローム以上が最も好ましい。さらに第1の窒化物半導体層は少なくともAlを含む窒化物半導体、好ましくはAlXGa1−XN(0<X≦1)を成長させる方が望ましい。一方、第2の窒化物半導体は第1の窒化物半導体よりもバンドギャップエネルギーが小さい窒化物半導体であればどのようなものでも良いが、好ましくはAlYGa1−YN(0≦Y<1、X>Y)、InZGa1−ZN(0≦Z<1)のような2元混晶、3元混晶の窒化物半導体が成長させやすく、また結晶性の良いものが得られやすい。その中でも特に好ましくは第1の窒化物半導体はIn、Gaを含まないAlXGa1−XN(0<X<1)とし、第2の窒化物半導体はAlを含まないInZGa1−ZN(0≦Z<1)とし、中でも結晶性に優れた超格子を得る目的で、Al混晶比(Y値)0.3以下のAlXGa1−XN(0<X≦0.3)と、GaNの組み合わせが最も好ましい。
【0042】
また、AlXGa1−XN(0<X<1)を用いて第1の窒化物半導体を形成し、GaNを用いて第2の窒化物半導体を形成した場合、以下のような製造上優れた利点を有する。すなわち、有機金属気体層成長法(MOCVD)によるAlXGa1−XN(0<X<1)層及びGaN層の形成においては、いずれの層も同じH2雰囲気中で成長させることができる。従って、雰囲気を変えることなくAlXGa1−XN(0<X<1)層とGaN層とを交互に成長させることにより超格子層を形成することができる。このことは、数10から数100層を積層して形成する必要がある超格子層を製造する上で極めて大きな利点である。
【0043】
光閉じ込め層、及びキャリア閉じ込め層としてクラッド層を形成する場合、活性層の井戸層よりもバンドギャップエネルギーの大きい窒化物半導体を成長させる必要がある。バンドギャップエネルギーの大きな窒化物半導体層とは、即ちAl混晶比の高い窒化物半導体である。従来ではAl混晶比の高い窒化物半導体を厚膜で成長させると、クラックが入りやすくなるため、結晶成長が非常に難しかった。しかしながら本発明のように超格子層にすると、超格子層を構成する第1の窒化物半導体層としてのAlGaN層をAl混晶比の多少高い層としても、弾性臨界膜厚以下の膜厚で成長させているのでクラックが入りにくい。そのため、本発明では、Al混晶比の高い層を結晶性良く成長できるので、光閉じ込め、キャリア閉じ込め効果の高いクラッド層を形成することができ、レーザ素子では閾値電圧、LED素子ではVf(順方向電圧)を低下させることができる。
【0044】
さらに、本発明に係る実施の形態のレーザ素子では、このn側クラッド層12の第1の窒化物半導体層と第2の窒化物半導体層とのn型不純物濃度が互いに異なるように設定する。これはいわゆる変調ドープと呼ばれるもので、一方の層のn型不純物濃度を小さく、好ましくは不純物をドープしない状態(アンドープ)として、もう一方の層に高濃度にドープすると、閾値電圧、Vf等を低下させることができる。これは不純物濃度の低い層を超格子層中に存在させることにより、その層の移動度が大きくなり、また不純物濃度が高濃度の層も同時に存在することにより、キャリア濃度が高いままで超格子層が形成できることによる。つまり、不純物濃度が低い移動度の高い層と、不純物濃度が高いキャリア濃度が大きい層とが同時に存在することにより、キャリア濃度が大きく、移動度も大きい層がクラッド層となるために、閾値電圧、Vfが低下すると推察される。
【0045】
バンドギャップエネルギーの大きな窒化物半導体層に高濃度に不純物をドープした場合、この変調ドープにより高不純物濃度層と、低不純物濃度層との間に二次元電子ガスができ、この二次元電子ガスの影響により抵抗率が低下すると推察される。例えば、n型不純物がドープされたバンドギャップの大きい窒化物半導体層と、バンドギャップが小さいアンドープの窒化物半導体層とを積層した超格子層では、n型不純物を添加した層と、アンドープの層とのヘテロ接合界面で、障壁層側が空乏化し、バンドギャップの小さい層側の厚さ前後の界面に電子(二次元電子ガス)が蓄積する。この二次元電子ガスがバンドギャップの小さい側にできるので、電子が走行するときに不純物による散乱を受けないため、超格子の電子の移動度が高くなり、抵抗率が低下する。なおp側の変調ドープも同様に二次元正孔ガスの影響によると推察される。またp層の場合、AlGaNはGaNに比較して抵抗率が高い。そこでAlGaNの方にp型不純物を多くドープすることにより抵抗率が低下するために、超格子層の実質的な抵抗率が低下するので素子を作製した場合に、閾値が低下する傾向にあると推察される。
【0046】
一方、バンドギャップエネルギーの小さな窒化物半導体層に高濃度に不純物をドープした場合、以下のような作用があると推察される。例えばAlGaN層とGaN層にMgを同量でドープした場合、AlGaN層ではMgのアクセプター準位の深さが大きく、活性化率が小さい。一方、GaN層のアクセプター準位の深さはAlGaN層に比べて浅く、Mgの活性化率は高い。例えばMgを1×1020/cm3ドープしてもGaNでは1×1018/cm3程度のキャリア濃度であるのに対し、AlGaNでは1×1017/cm3程度のキャリア濃度しか得られない。そこで、本発明ではAlGaN/GaNとで超格子とし、高キャリア濃度が得られるGaN層の方に多く不純物をドープすることにより、高キャリア濃度の超格子が得られるものである。しかも超格子としているため、トンネル効果でキャリアは不純物濃度の少ないAlGaN層を移動するため、実質的にキャリアはAlGaN層の作用は受けず、AlGaN層はバンドギャップエネルギーの高いクラッド層として作用する。従って、バンドギャップエネルギーの小さな方の窒化物半導体層に不純物を多くドープしても、レーザ素子、LED素子の閾値を低下させる上で非常に効果的である。なおこの説明はp型層側に超格子を形成する例について説明したが、n層側に超格子を形成する場合においても、同様の効果がある。
【0047】
バンドギャップエネルギーが大きい第1の窒化物半導体層にn型不純物を多くドープする場合、第1の窒化物半導体層への好ましいドープ量としては、1×1017/cm3〜1×1020/cm3、さらに好ましくは1×1018/cm3〜5×1019/cm3の範囲に調整する。1×1017/cm3よりも少ないと、第2の窒化物半導体層との差が少なくなって、キャリア濃度の大きい層が得られにくい傾向にあり、また1×1020/cm3よりも多いと、素子自体のリーク電流が多くなりやすい傾向にある。一方、第2の窒化物半導体層のn型不純物濃度は第1の窒化物半導体層よりも少なければ良く、好ましくは1/10以上少ない方が望ましい。最も好ましくはアンドープとすると最も移動度の高い層が得られるが、膜厚が薄いため、第1の窒化物半導体側から拡散してくるn型不純物があり、その量は1×1019/cm3以下が望ましい。n型不純物としてはSi、Ge、Se、S、O等の周期律表第IVB族、VIB族元素を選択し、好ましくはSi、Ge、Sをn型不純物とする。この作用は、バンドギャップエネルギーが大きい第1の窒化物半導体層にn型不純物を少なくドープして、バンドギャップエネルギーが小さい第2の窒化物半導体層にn型不純物を多くドープする場合も同様である。
【0048】
また、本発明の実施の形態のレーザ素子では、図1に示す活性層14の上部にあるp側窒化物半導体層中において、活性層14と離れた位置に、バンドギャップエネルギーの大きな第3の窒化物半導体層と、第3の窒化物半導体層よりもバンドギャップエネルギーの小さな第4の窒化物半導体層とが積層されてなり、互いの不純物濃度が異なる超格子構造のp側クラッド層17を有している。このp側クラッド層17の超格子層を構成する第3、第4の窒化物半導体層の膜厚も、n側クラッド層12と同じく、100オングストローム以下、さらに好ましくは70オングストローム以下、最も好ましくは10〜40オングストロームの膜厚に調整する。同様に、第3の窒化物半導体層は少なくともAlを含む窒化物半導体、好ましくはAlXGa1−XN(0<X≦1)を成長させることが望ましく、第4の窒化物半導体は好ましくはAlYGa1−YN(0≦Y<1、X>Y)、InZGa1−ZN(0≦Z≦1)のような2元混晶、3元混晶の窒化物半導体を成長させることが望ましい。
【0049】
p側クラッド層17を超格子構造とすると、超格子構造がレーザ素子に与える作用は、n側クラッド層12の作用と同じであるが、さらにn層側に形成した場合に加えて次のような作用がある。即ち、p型窒化物半導体はn型窒化物半導体に比べて、通常抵抗率が2桁以上高い。そのため超格子層をp層側に形成することにより、閾値電圧を低くする効果が顕著に現れる。詳しく説明すると窒化物半導体はp型結晶が非常に得られにくい半導体であることが知られている。p型結晶を得るためp型不純物をドープした窒化物半導体層をアニーリングして、水素を除去する技術が知られている(特許第2540791号)。しかしp型が得られたといってもその抵抗率は数Ω・cm以上もある。そこで、このp型層を超格子層とすることにより結晶性が良くなり、抵抗率が1桁以上低下するため閾値電圧を低くすることができる。
【0050】
p側クラッド層17の第3の窒化物半導体層と第4の窒化物半導体層とのp型不純物濃度が異なり、一方の層の不純物濃度を大きく、もう一方の層の不純物濃度を小さくする。n側クラッド層12と同様に、バンドギャップエネルギーの大きな第3の窒化物半導体層の方のp型不純物濃度を大きくして、バンドギャップエネルギーの小さな第4のp型不純物濃度を小さく、好ましくはアンドープとすると、閾値電圧、Vf等を低下させることができる。
またその逆の構成も可能である。つまりバンドギャップエネルギーの大きな第3の窒化物半導体層のp型不純物濃度を小さくして、バンドギャップエネルギーの小さな第4の窒化物半導体層のp型不純物濃度を大きくしても良い。理由は先に述べたとおりである。
【0051】
第3の窒化物半導体層への好ましいドープ量としては1×1018/cm3〜1×1021/cm3、さらに好ましくは1×1019/cm3〜5×1020/cm3の範囲に調整する。1×1018/cm3よりも少ないと、同様に第4の窒化物半導体層との差が少なくなって、同様にキャリア濃度の大きい層が得られにくい傾向にあり、また1×1021/cm3よりも多いと、結晶性が悪くなる傾向にある。一方、第4の窒化物半導体層のp型不純物濃度は第3の窒化物半導体層よりも少なければ良く、好ましくは1/10以上少ない方が望ましい。最も移動度の高い層を得るためには、アンドープとすることが最も好ましい。現実には、膜厚が薄いため、第3の窒化物半導体側から拡散してくるp型不純物があると考えられるが、本願発明において良好な結果を得るためには、その量は1×1020/cm3以下が望ましい。
尚、p型不純物としてはMg、Zn、Ca、Be等の周期律表第IIA族、IIB族元素を選択し、好ましくはMg、Ca等をp型不純物とする。この作用は、バンドギャップエネルギーが大きい第3の窒化物半導体層にp型不純物を少なくドープして、バンドギャップエネルギーが小さい第4の窒化物半導体層にp型不純物を多くドープする場合も同様である。
【0052】
さらにまた超格子を構成する窒化物半導体層において、不純物が高濃度にドープされる層は、それぞれ厚さ方向に対し、半導体層中央部(第2の窒化物半導体層又は第4の窒化物半導体層から離れた位置)の不純物濃度が大きく、両端部近傍(第2の窒化物半導体層又は第4の窒化物半導体層に近接する部分)の不純物濃度が小さく(好ましくはアンドープ)なるようにすることが望ましい。具体的に説明すると、例えばn型不純物としてSiをドープしたAlGaNと、アンドープのGaN層とで超格子層を形成した場合、AlGaNはSiをドープしているのでドナーとして電子を伝導帯に出すが、電子はポテンシャルの低いGaNの伝導帯に落ちる。GaN結晶中にはドナー不純物をドープしていないので、不純物によるキャリアの散乱を受けない。そのため電子は容易にGaN結晶中を動くことができ、実質的な電子の移動度が高くなる。これは前述した二次元電子ガスの効果と類似しており、電子横方向の実質的な移動度が高くなり、抵抗率が小さくなる。さらに、バンドギャップエネルギーの大きいAlGaNにおいて、GaN層から比較的離れた中央領域にn型不純物を高濃度にドープすると効果はさらに大きくできる。即ちGaN中を移動する電子のうち、AlGaN層に近い部分を通過する電子は、AlGaN層中のGaN層に近接する部分にあるn型不純物イオン(この場合Si)の散乱を多少なりとも受ける。しかし、上述のようにAlGaN層において、GaN層に近接する部分をアンドープとすると、AlGaN層に近い部分を通過する電子がSiの散乱を受けにくくなるので、さらにアンドープGaN層の移動度が向上するのである。作用は若干異なるが、p層側の第3の窒化物半導体層と第4の窒化物半導体層とで超格子を構成した場合も類似した効果があり、バンドギャップエネルギーの大きい第3の窒化物半導体層の中央部領域に、p型不純物を多くドープし、第4の窒化物半導体層に近接する部分を少なくするか、あるいはアンドープとすることが望ましい。一方バンドギャップエネルギーの小さな窒化物半導体層にn型不純物を多くドープした層を、前記不純物濃度の構成とすることもできるが、バンドギャップエネルギーの小さな方に不純物を多くドープした超格子では、その効果は少ない傾向にある。
【0053】
以上、n側クラッド層12、p側クラッド層17を超格子層とすることについて説明したが、本発明では超格子層は、この他、コンタクト層としてのn側バッファ層11、n側光ガイド層13、p側キャップ層15、p側光ガイド層16、p側コンタクト層18等を超格子構造とすることができる。つまり活性層から離れた層、活性層に接した層、どの層でも超格子層とすることができる。特にn電極が形成されるn側バッファ層11を超格子とすると、前記HEMTに類似した効果が現れやすい。
【0054】
さらに、本発明の実施形態のレーザ素子においては、図1に示すように、超格子層からなるn側クラッド層12と活性層14との間に、不純物(この場合n型不純物)濃度が1×1019/cm3以下に調整されたn側光ガイド層13が形成されている。このn側光ガイド層13は、アンドープとしても、n型不純物が他の層から拡散して入ってくる可能性があるが、本発明においては、1×1019/cm3以下のドープ量であれば、光ガイド層として動作し本願発明の効果を損なうことはない。しかしながら、本発明において、n側光ガイド層13の不純物濃度は1×1018/cm3以下であることが好ましく、1×1017/cm3以下であることがさらに好ましく、アンドープであることが最も好ましい。また、このn側光ガイド層はInを含む窒化物半導体、またはGaNで構成することが望ましい。
【0055】
また実施形態のレーザ素子においては、超格子層からなるp側クラッド層17と活性層14との間に、不純物(この場合p型不純物)濃度が1×1019/cm3以下に調整されたp側光ガイド層16が形成されている。本発明において、p側ガイド層16の不純物濃度は、1×1019/cm3以下であればよいが、好ましい不純物濃度は1×1018/cm3以下であり、最も好ましくはアンドープとする。窒化物半導体の場合、アンドープとすると、通常n型の導電性を示すが、本発明は、このp側ガイド層16の導電型はn又はpのいずれでもよく、本明細書においては、導電型にかかわらずp側光ガイド層と呼ぶ。また、実際には、p型不純物が他の層から拡散してこのp側光ガイド層16に入ってくる可能性もある。尚、このp側光ガイド層もInを含む窒化物半導体、またはGaNで構成することが望ましい。
【0056】
なぜ、活性層とクラッド層との間にアンドープの窒化物半導体を存在させることが好ましいのかは次の通りである。即ち、窒化物半導体の場合、活性層の発光は通常360〜520nm、特に380〜450nmを目的として設計される。アンドープの窒化物半導体はn型不純物、p型不純物をドープした窒化物半導体に比較して、前記波長を有する光の吸収率が低い。従って、アンドープの窒化物半導体を、発光する活性層と、光閉じ込め層としてのクラッド層との間に挟むことにより、活性層の発光を消衰させることが少ないので、低利得で発振するレーザ素子が実現でき、閾値電圧を低くすることができる。尚、この効果は、光ガイド層の不純物濃度が、1×1019/cm3以下であれば確認できる。
【0057】
従って、本発明の好ましい組み合わせとしては、活性層と離れた位置に不純物が変調ドープされた超格子構造を有するクラッド層を有し、そのクラッド層と活性層との間に、不純物濃度が低い、好ましくはアンドープのガイド層を有する発光素子である。
【0058】
さらに好ましい態様として、本発明の発光素子では、p側ガイド層16と活性層14との間に、活性層の井戸層、及びp側ガイド層16界面のバンドギャップエネルギーよりも大きいバンドギャップエネルギーを有する膜厚0.1μm以下の窒化物半導体よりなるp側キャップ層15が形成されており、そのp側キャップ層の不純物濃度が1×1018/cm3以上に調整されている。このp型キャップ層15の膜厚は0.1μm以下、さらに好ましくは500オングストローム以下、最も好ましくは300オングストローム以下に調整する。0.1μmより厚い膜厚で成長させると、p型キャップ層15中にクラックが入りやすくなり、結晶性の良い窒化物半導体層が成長しにくいからである。このようにバンドギャップエネルギーが大きな層を活性層に接して、0.1μm以下の薄膜で形成することにより、発光素子のリーク電流が少なくなる傾向にある。これによって、n層側から注入された電子が、キャップ層のエネルギーバリアの障壁により、活性層内に溜まり、電子と正孔との再結合の確率が高くなるために素子自体の出力を向上させることができる。また、不純物濃度は1×1018/cm3以上に調整する必要がある。このキャップ層は比較的Al混晶比の高い層であり、Al混晶比の高い層は高抵抗になりやすい。このため不純物をドープすることによりキャリア濃度を高くして抵抗率を下げてやらないと、この層が高抵抗なi層のようになり、p−i−n構造となって電流電圧特性が悪くなる傾向にあるからである。なお、このp側にあるキャップ層は、n側に形成してもよい。n側に形成する場合は、n型不純物をドープしてもしなくても良い。
【0059】
以上のように構成された実施形態のレーザ素子は、n側クラッド層12及びp側クラッド層17を超格子構造で構成しているので、n側クラッド層12及びp側クラッド層17の電気抵抗を低くでき、閾値電圧を低くできしかも長時間のレーザ発振が可能である。
また、本実施形態のレーザ素子では、n側クラッド層12及びp側クラッド層17を超格子構造で構成する以外にも、上述したように種々の手段を講じて、さらなる閾値電圧の低減を可能としている。
【0060】
以上の実施形態では、n側クラッド層12及びp側クラッド層17を超格子構造としたが、本発明はこれに限らず、n側クラッド層12及びp側クラッド層17のうちのどちらか一方を超格子構造としてもよい。以上のようにしても閾値電圧を従来例に比較して低くできる。
【0061】
また、実施形態では、n側クラッド層12及びp側クラッド層17を超格子構造としたが、本発明はこれに限らず、n側クラッド層12及びp側クラッド層17以外のp側及びn側の窒化物半導体層のいずれか1つ以上が超格子構造であればよい。以上のように構成しても、閾値電圧を従来例に比較して低くできる。
【0062】
以上の実施形態では、レーザ素子においてn側クラッド層12及びp側クラッド層17を超格子構造としたが、本発明はこれに限らず、発光ダイオード(LED)等、他の窒化物半導体素子に適用できることはいうまでもない。以上のように構成することにより、発光ダイオードでは、Vf(順方向電圧)を下げることができる。
【0063】
【実施例】
以下、図1、図2を元に本発明の実施例を詳説する。図2は図1のレーザ素子の形状を示す斜視図である。
【0064】
[実施例1]
サファイア(C面)よりなる基板の上にGaNよりなるバッファ層を介してGaNよりなる単結晶を50μmの膜厚で成長させたGaN基板10を用意する。このGaN基板10を反応容器内にセットし、温度を1050℃まで上げ、キャリアガスに水素、原料ガスにアンモニアとTMG(トリメチルガリウム)、不純物ガスとしてシランガスを用い、GaN基板10上にSiを1×1018/cm3ドープしたGaNよりなるn側バッファ層11を4μmの膜厚で成長させる。このバッファ層は、図1のような構造の発光素子を作製した場合にはn電極を形成するためのコンタクト層としても作用する。さらに、このn側バッファ層は高温で成長させるバッファ層であり、例えばサファイア、SiC、スピネルのように窒化物半導体体と異なる材料よりなる基板の上に、900℃以下の低温において、GaN、AlN等を、0.5μm以下の膜厚で直接成長させるバッファ層とは区別される。
【0065】
(n側クラッド層12=超格子層)
続いて、1050℃でTMA(トリメチルアルミニウム)、TMG、アンモニア、シランガスを用い、Siを1×1019/cm3ドープしたn型Al0.2Ga0.8Nよりなる第1の層を40オングストロームの膜厚で成長させ、続いてシランガス、TMAを止め、アンドープのGaNよりなる第2の層を40オングストロームの膜厚で成長させる。そして第1層+第2層+第1層+第2層+・・・というように超格子層を構成し、それぞれ100層ずつ交互に積層し、総膜厚0.8μmの超格子よりなるn側クラッド層12を成長させる。
【0066】
(n側光ガイド層13)
続いて、シランガスを止め、1050℃でアンドープGaNよりなるn側光ガイド層13を0.1μmの膜厚で成長させる。このn側光ガイド層は、活性層の光ガイド層として作用し、GaN、InGaNを成長させることが望ましく、通常100オングストローム〜5μm、さらに好ましくは200オングストローム〜1μmの膜厚で成長させることが望ましい。またこの層をアンドープの超格子層とすることもできる。超格子層とする場合にはバンドギャップエネルギーは活性層より大きく、n側クラッド層のAl0.2Ga0.8Nよりも小さくする。
【0067】
(活性層14)
次に、原料ガスにTMG、TMI、アンモニアを用いて活性層14を成長させる。活性層14は温度を800℃に保持して、アンドープIn0.2Ga0.8Nよりなる井戸層を25オングストロームの膜厚で成長させる。次にTMIのモル比を変化させるのみで同一温度で、アンドープIn0.01Ga0.95Nよりなる障壁層を50オングストロームの膜厚で成長させる。この操作を2回繰り返し、最後に井戸層を積層した総膜厚175オングストロームの多重量子井戸構造(MQW)の活性層を成長させる。活性層は本実施例のようにアンドープでもよいし、またn型不純物及び/又はp型不純物をドープしても良い。不純物は井戸層、障壁層両方にドープしても良く、いずれか一方にドープしてもよい。
【0068】
(p側キャップ層15)
次に、温度を1050℃に上げ、TMG、TMA、アンモニア、Cp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)を用い、p側光ガイド層16よりもバンドギャップエネルギーが大きい、Mgを1×1020/cm3ドープしたp型Al0.3Ga0.7Nよりなるp側キャップ層17を300オングストロームの膜厚で成長させる。このp型キャップ層15は前に述べたように、0.1μm以下の巻く厚保で形成し、膜厚の下限は特に限定しないが、10オングストローム以上の膜厚で形成することが望ましい。
【0069】
(p側光ガイド層16)
続いてCp2Mg、TMAを止め、1050℃で、バンドギャップエネルギーがp側キャップ層15よりも小さい、アンドープGaNよりなるp側光ガイド層16を0.1μmの膜厚で成長させる。この層は、活性層の光ガイド層として作用し、n型光ガイド層13と同じくGaN、InGaNで成長させることが望ましい。なお、このp側光ガイド層をアンドープの窒化物半導体、不純物をドープした窒化物半導体よりなる超格子層とすることもできる。超格子層とする場合にはバンドギャップエネルギーは活性層の井戸層より大きく、p側クラッド層のAl0.2Ga0.8Nよりも小さくする。
【0070】
(p側クラッド層17)
続いて、1050℃でMgを1×1020/cm3ドープしたp型Al0.2Ga0.8Nよりなる第3の層を40オングストロームの膜厚で成長させ、続いてTMAのみを止め、アンドープGaNよりなる第4の層を40オングストロームの膜厚で成長させる。そしてこの操作をそれぞれ100回繰り返し、総膜厚0.8μmの超格子層よりなるp側クラッド層17を形成する。
【0071】
(p側コンタクト層18)
最後に、1050℃で、p側クラッド層17の上に、Mgを2×1020/cm3ドープしたp型GaNよりなるp側コンタクト層18を150オングストロームの膜厚で成長させる。p側コンタクト層18はp型のInXAlYGa1−X−YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)で構成することができ、好ましくはMgをドープしたGaNとすれば、p電極21と最も好ましいオーミック接触が得られる。またp型AlYGa1−YNを含む超格子構造のp側クラッド層17に接して、バンドギャップエネルギーの小さい窒化物半導体をp側コンタクト層として、その膜厚を500オングストローム以下と薄くしているために、実質的にp側コンタクト層18のキャリア濃度が高くなりp電極と好ましいオーミックが得られて、素子の閾値電流、電圧が低下する。
【0072】
以上のようにして窒化物半導体を成長させたウェーハを反応容器内において、窒素雰囲気中700℃でアニーリングを行い、p型不純物をドープした層をさらに低抵抗化させる。
【0073】
アニーリング後、ウェーハを反応容器から取り出し、図1に示すように、RIE装置により最上層のp側コンタクト層18と、p側クラッド層17とをエッチングして、4μmのストライプ幅を有するリッジ形状とする。このように、活性層よりも上部にある層をストライプ状のリッジ形状とすることにより、活性層の発光がストライプリッジの下に集中するようになって閾値が低下する。特に超格子層よりなるp側クラッド層17以上の層をリッジ形状とすることが好ましい。
【0074】
次にリッジ表面にマスクを形成し、RIEにてエッチングを行い、n側バッファ層11の表面を露出させる。露出させたこのn側バッファ層11はn電極23を形成するためのコンタクト層としても作用する。なお図1ではn側バッファ層11をコンタクト層としているが、GaN基板10までエッチングを行い、露出したGaN基板10をコンタクト層とすることもできる。
【0075】
次にp側コンタクト層18のリッジ最表面にNiとAuよりなるp電極21をストライプ状に形成する。p側コンタクト層と好ましいオーミックが得られるp電極21の材料としては、例えばNi、Pt、Pd、Ni/Au、Pt/Au、Pd/Au等を挙げることができる。
【0076】
一方、TiとAlよりなるn電極23を先ほど露出させたn側バッファ層11の表面にストライプ状に形成する。n側バッファ層11、またはGaN基板10と好ましいオーミックが得られるn電極23の材料としてはAl、Ti、W、Cu、Zn、Sn、In等の金属若しくは合金が好ましい。
【0077】
次に、図1に示すようにp電極21と、n電極23との間に露出した窒化物半導体層の表面にSiO2よりなる絶縁膜25を形成し、この絶縁膜25を介してp電極21と電気的に接続したpパッド電極22、及びnパッド電極24を形成する。このpパッド電極22は実質的なp電極21の表面積を広げて、p電極側をワイヤーボンディング、ダイボンディングできるようにする作用がある。一方、nパッド電極24はn電極23の剥がれを防止する作用がある。
【0078】
以上のようにして、n電極とp電極とを形成したウェーハを研磨装置に移送し、ダイヤモンド研磨剤を用いて、窒化物半導体を形成していない側のサファイア基板をラッピングし、サファイア基板の厚さを70μmとする。ラッピング後、さらに細かい研磨剤で1μmポリシングして基板表面を鏡面状とし、Au/Snで全面をメタライズする。
【0079】
その後、Au/Sn側をスクライブして、ストライプ状の電極に垂直な方向でバー状に劈開し、劈開面に共振器を作製する。共振器面にSiO2とTiO2よりなる誘電体多層膜を形成し、最後にp電極に平行な方向で、バーを切断してレーザチップとした。次にチップをフェースアップ(基板とヒートシンクとが対向した状態)でヒートシンクに設置し、それぞれの電極をワイヤーボンディングして、室温でレーザ発振を試みたところ、室温において、閾値電流密度2.0kA/cm2、閾値電圧4.0Vで、発振波長405nmの連続発振が確認され、1000時間以上の寿命を示した。
【0080】
[実施例2]
図3は本発明の他の実施例に係るレーザ素子の構造を示す模式的な断面図であり、図1と同じくレーザ光の共振方向に垂直な方向で素子を切断した際の図を示している。以下この図を元に実施例2について説明する。尚、図3において、図1及び図2と同様のものには同様の符号を付して示す。
【0081】
サファイア(C面)よりなる基板の上にGaNよりなるバッファ層を介してSiを5×1018/cm3ドープしたGaNよりなる単結晶を150μmの膜厚で成長させたGaN基板10を用意する。このGaN基板10の上に実施例1と同様にして、n側バッファ層11を成長させる。
【0082】
(クラック防止層19)
n側バッファ層11成長後、温度を800℃にして、原料ガスにTMG、TMI、アンモニア、不純物ガスにシランガスを用い、Siを5×1018/cm3ドープしたIn0.1Ga0.9Nよりなるクラック防止層19を500オングストロームの膜厚で成長させる。このクラック防止層19はInを含むn型の窒化物半導体、好ましくはInGaNで成長させることにより、Alを含む窒化物半導体層中にクラックが入るのを防止することができる。なおこのクラック防止層は100オングストローム以上、0.5μm以下の膜厚で成長させることが好ましい。100オングストロームよりも薄いと前記のようにクラック防止として作用しにくく、0.5μmよりも厚いと、結晶自体が黒変する傾向にある。
【0083】
クラック防止層19成長後、実施例1と同様にして、変調ドープされた超格子よりなるn側クラッド層12と、アンドープn側光ガイド層13を成長させる。
【0084】
(n側キャップ層20)
続いてTMG、TMA、アンモニア、シランガスを用い、n側光ガイド層13よりもバンドギャップエネルギーが大きい、Siを5×1018/cm3ドープしたn型Al0.3Ga0.7Nよりなるn側キャップ層20を300オングストロームの膜厚で成長させる。
【0085】
後は実施例1と同様にして活性層14、p側キャップ層15、アンドープp側光ガイド層16、変調ドープされた超格子よりなるp側クラッド層17、p側コンタクト層18を成長させる。
【0086】
窒化物半導体層成長後、同様にしてアニーリングを行い、p型不純物をドープした層をさらに低抵抗化させ、アニーリング後、図3に示すように最上層のp側コンタクト層18と、p側クラッド層17とをエッチングして、4μmのストライプ幅を有するリッジ形状とする。
【0087】
リッジ形成後、p側コンタクト層18のリッジ最表面にNi/Auよりなるp電極21をストライプ状に形成し、p電極21以外の最表面の窒化物半導体層のにSiO2よりなる絶縁膜25を形成し、この絶縁膜25を介してp電極21と電気的に接続したpパッド電極22を形成する。
【0088】
以上のようにして、p電極を形成したウェーハを研磨装置に移送し、サファイア基板を研磨により除去し、GaN基板10の表面を露出させる。露出したGaN基板表面のほぼ全面にTi/Alよりなるn電極23を形成する。
【0089】
電極形成後GaN基板のM面(窒化物半導体を六方晶系で近似した場合に六角柱の側面に相当する面)で劈開し、その劈開面にSiO2とTiO2よりなる誘電体多層膜を形成し、最後にp電極に平行な方向で、バーを切断してレーザ素子とする。このレーザ素子も同様に室温において連続発振を示し、実施例1とほぼ同等の特性を示した。
【0090】
[実施例3]
実施例1において、n側バッファ層11成長後、実施例2と同様にしてクラック防止層19を成長させる。次にそのクラック防止層の上に、Siを1×1019/cm3ドープしたAl0.3Ga0.7N層単一層のみよりなるn側クラッド層12を0.4μmの膜厚で成長させる。後は実施例1と同様にして、レーザ素子を作製したところ、同じく室温でレーザ発振を示したが、寿命は実施例1のレーザ素子よりも若干短くなった。
【0091】
[実施例4]
実施例1において、p側クラッド層17成長時に、Mgを1×1020/cm3ドープしたAl0.3Ga0.7N層単一層を0.4μmの膜厚で成長させる他は、実施例1と同様にして、レーザ素子を作製したところ、同じく室温でレーザ発振を示したが、寿命は実施例1のレーザ素子よりも若干短くなった。
【0092】
[実施例5]
実施例1において、n側クラッド層12を超格子構造とせずに、Siを1×1018/cm3ドープしたAl0.2Ga0.8N層0.4μmとする。また、p側クラッド層も同様に超格子構造とせず、Mgを1×1020/cm3ドープしたAl0.2Ga0.8N層0.4μmとする。代わりに、n側光ガイド層13をアンドープIn0.01Ga0.99N層30オングストロームと、Siを1×1017/cm3ドープしたGaN層30オングストロームとを積層した総膜厚0.12μmの超格子構造とし、p側光ガイド層16をアンドープIn0.01Ga0.99N層30オングストロームと、Mgを1×1017/cm3ドープしたGaN層30オングストロームとを積層した総膜厚0.12μmの超格子構造とする他は実施例1と同様にしてレーザ素子を作製したところ、同じく室温でレーザ発振を示したが、寿命は実施例1のレーザ素子よりも若干短くなった。
【0093】
[実施例6]
実施例1において、n側バッファ層11を形成する際、アンドープGaN層を30オングストロームと、Siを1×1019/cm3ドープしたAl0.05Ga0.95N層を30オングストロームとを積層した総膜厚1.2μmの超格子層とする。後は実施例1と同様にして、n側クラッド層12から上の層を成長させ、レーザ素子とする。但しn電極を形成する際、エッチングにより露出させる面は、前述の1.2μmの超格子層の中間とし、その超格子層にn電極を形成する。このレーザ素子も同様に室温において連続発振し、閾値は実施例1のものに比較して若干低下し、寿命は1000時間以上であった。
【0094】
[実施例7]
図4は本発明の他の実施例に係るレーザ素子の構造を示す模式的な断面図であり、他の図面と同一符号は同一層を示している。以下、この図を基に実施例7について説明する。
【0095】
実施例1と同じく、2インチφ、(0001)C面を主面とするサファイア基板30の上に500℃にて、GaNよりなるバッファ層(図示せず)を200オングストロームの膜厚で成長させた後、温度を1050℃にしてアンドープGaN層31を5μm膜厚で成長させる。尚、この成長させる膜厚は、5μmに限定されるものではなく、バッファ層よりも厚い膜厚で成長させて、10μm以下の膜厚に調整することが望ましい。基板はサファイアの他、SiC、ZnO、スピネル、GaAs等窒化物半導体を成長させるために知られている、窒化物半導体と異なる材料よりなる基板を用いることができる。
【0096】
次にこのアンドープGaN層31成長後、ウェーハを反応容器から取り出し、このGaN層31の表面に、ストライプ状のフォトマスクを形成し、CVD装置によりストライプ幅20μm、ストライプ間隔(窓部)5μmのSiO2よりなる保護膜32を0.1μmの膜厚で形成する。図4はストライプの長軸方向に垂直な方向で切断した際の部分的なウェーハの構造を示す模式断面図である。保護膜の形状としてはストライプ状、ドット状、碁盤目状等どのような形状でも良いが、アンドープGaN層31の露出部分、即ち保護膜が形成されていない部分(窓部)よりも保護膜の面積を大きくする方が、結晶欠陥の少ないGaN基板10を成長させやすい。保護膜の材料としては、例えば酸化ケイ素(SiOX)、窒化ケイ素(SiXNY)、酸化チタン(TiOX)、酸化ジルコニウム(ZrOX)等の酸化物、窒化物、またこれらの多層膜の他、1200℃以上の融点を有する金属等を用いることができる。これらの保護膜材料は、窒化物半導体の成長温度600℃〜1100℃の温度にも耐え、その表面に窒化物半導体が成長しないか、成長しにくい性質を有している。
【0097】
保護膜32形成後、ウェーハを再度反応容器内にセットし、1050℃で、アンドープGaNよりなるGaN基板10となるGaN層を10μmの膜厚に成長させる。成長させるGaN層の好ましい成長膜厚は、先に形成した保護膜32の膜厚、大きさによっても異なるが、保護膜32の表面を覆うように保護膜上部において横方向(厚さ方向に垂直な方向)にも成長するように十分の厚さに成長させる。このように窒化物半導体が成長しにくい性質を有する保護膜32の表面上に、横方向にGaN層を成長させる手法でGaN基板10を成長させると、最初は保護膜32の上にはGaN層が成長せず、窓部のアンドープGaN層31の上にGaN層が選択成長される。続いてGaN層の成長を続けると、GaN層が横方向に成長して、保護膜32の上に覆いかぶさって行き、隣接した窓から成長したGaN層同士でつながって、保護膜32の上にGaN層が成長したかのような状態となる。つまり、GaN層31上に保護膜32を介してGaN層を横方向に成長させる。ここで、重要なことは、サファイヤ基板30の上に成長されているGaN層31の結晶欠陥と、保護膜32の上に成長されているGaN基板10との結晶欠陥の数である。すなわち、異種基板と窒化物半導体との格子定数のミスマッチにより、異種基板の上に成長される窒化物半導体には非常に多くの結晶欠陥が発生し、この結晶欠陥は順次上層に形成される窒化物半導体成長中を、表面まで伝わる。一方、本実施例7のように、保護膜32上に横方向に成長されたGaN基板10は、異種基板上に直接成長したものではなく、隣接する窓から成長させたGaN層が、保護膜32上に横方向に成長することにより成長中につながったものであるため、結晶欠陥の数は異種基板から直接成長したものに比べて非常に少なくなる。従って、異種基板上に成長された窒化物半導体層の上に、部分的に形成された保護膜を形成して、その保護膜上に横方向に成長されてなるGaN層を基板とすることにより、実施例1のGaN基板に比較して、はるかに結晶欠陥の少ないGaN基板が得られる。実際、アンドープGaN層31の結晶欠陥は1010/cm2以上あるが、この実施例7の方法によるGaN基板10の結晶欠陥は106/cm2以下に減少させることができる。
【0098】
以上のようにしてGaN基板10を形成した後、該GaN基板上に実施例1と同様にしてSiを1×1018/cm3ドープしたGaNよりなるn側バッファ層、件コンタクト層11を5μmの膜厚で成長させた後、実施例2と同様にして、Siを5×1018/cm3ドープしたIn0.1Ga0.9Nよりなるクラック防止層19を500オングストロームの膜厚で成長させる。尚、クラック防止層19は省略することもできる。
【0099】
(中央部が高不純物濃度の超格子構造のn側クラッド層12)
次に、1050℃で、TMG、アンモニアガスを用い、アンドープGaN層を20オングストロームの膜厚で成長させることにより、バンドギャップエネルギーの小さい第2の窒化物半導体層を形成する。次に同温度にて、TMAを追加しアンドープAl0.1Ga0.9N層を5オングストローム成長させ、続いてシランガスを追加しSiを1×1019/cm3ドープしたAl0.1Ga0.9N層を20オングストロームの膜厚で成長させた後、Siを止めてアンドープAl0.1Ga0.9N層をさらに5オングストロームの膜厚で成長させることにより、バンドギャップエネルギーの大きい厚さ30μmの第1の窒化物半導体層を形成する。以後同様にして、第2の窒化物半導体層と第1の窒化物半導体層とを交互に繰り返し形成する。尚、実施例7では、第2の窒化物半導体層と第1の窒化物半導体層とがそれぞれ120層になるように積層し、0.6μm厚の、超格子構造よりなるn側クラッド層12を形成する。
【0100】
次に、実施例1と同様にして、n側光ガイド層13、活性層14、p側キャップ層15、p側光ガイド層16を順に成長させる。
【0101】
(中央部が高不純物濃度の超格子構造のp側クラッド層17)
次に、1050℃で、TMG、アンモニアガスを用い、アンドープGaN層を20オングストロームの膜厚で成長させることにより、バンドギャップエネルギーの小さい第4の窒化物半導体層を形成する。次に同温度にて、TMAを追加しアンドープAl0.1Ga0.9N層を5オングストローム成長させ、続いてCp2Mgを追加しMgを1×1020/cm3ドープしたAl0.1Ga0.9N層を20オングストロームの膜厚で成長させた後、Cp2Mgを止めてアンドープAl0.1Ga0.9N層をさらに5オングストロームの膜厚で成長させることにより、バンドギャップエネルギーの大きい厚さ30μmの第3の窒化物半導体層を形成する。以後同様にして、第4の窒化物半導体層と第3の窒化物半導体層とを交互に繰り返し形成する。尚、実施例7では、第4の窒化物半導体層と第3の窒化物半導体層とがそれぞれ120層になるように積層し、0.6μm厚の、超格子構造よりなるn側クラッド層17を形成する。
【0102】
そして最後に、実施例1と同様にしてp側コンタクト層18を成長させた後、ウェーハを反応容器から取り出し、アニーリングを行った後、エッチングを行いp側クラッド層17以上の層をストライプ状のリッジ形状とする。
【0103】
次に図4に示すようにリッジに対して、左右対称にエッチングを行い、n電極23を形成すべきn側バッファ層表面を露出させ、n電極23を形成し、一方p側コンタクト層18のリッジ最表面にもp電極21をストライプ状に形成する。後は実施例1と同様にして、レーザ素子を作製したところ、実施例1のものに比較して閾値で、電流密度、電圧でおよそ10%低下し、波長405nmの連続発振寿命は、2000時間以上の寿命を示した。これはGaN基板10に結晶欠陥の少ないものを使用したことによる、窒化物半導体の結晶性の向上によるものが多大である。なお図4において、GaN基板10を例えば80μm以上の膜厚で成長させた場合には、異種基板30〜保護膜32は除去することも可能である。
【0104】
[実施例8]
実施例7において、n側クラッド層12を成長させる際、中央部を高不純物濃度とせず、通常のアンドープGaN層を20オングストロームと、Siを1×1019/cm3ドープしたAl0.1Ga0.9N層を20オングストロームとを積層し、総膜厚0.6μmの超格子構造とする。
【0105】
一方、p側クラッド層17を成長させる際も、中央部を高不純物濃度とせずに、アンドープGaN層を20オングストロームと、Mgを1×1020/cm3ドープしたAl0.1Ga0.9N層を20オングストロームとを積層し、総膜厚0.6μmの超格子構造とする他は実施例7と同様にしてレーザ素子を作製したところ、実施例7のものに比較して、若干閾値は低下したが、寿命はほぼ同じ2000時間以上を示した。
【0106】
[実施例9]
実施例7において、n側クラッド層12を成長させる際、Siを1×1019/cm3ドープしたGaN層を25オングストロームと、アンドープAl0.1Ga0.9N層を25オングストロームとを交互に積層し、総膜厚0.6μmの超格子構造とする。一方、p側クラッド層17を成長させる際も、Mgを1×1020/cm3ドープしたGaN層を25オングストロームと、アンドープAl0.1Ga0.9N層を25オングストロームとを交互に積層し、総膜厚0.6μmの超格子構造とする他は実施例7と同様にしてレーザ素子を作製したところ、実施例7のものとほぼ同等の特性、寿命を有するレーザ素子が得られた。
【0107】
[実施例10]
実施例7において、n側クラッド層12を成長させる際、Siを1×1019/cm3ドープしたGaN層を25オングストロームと、Siを1×1017/cm3ドープしたAl0.1Ga0.9N層を25オングストロームとを交互に積層し、総膜厚0.6μmの超格子構造とする。一方、p側クラッド層17を成長させる際も、Mgを1×1020/cm3ドープしたGaN層を25オングストロームと、Mgを1×1018/cm3ドープしたAl0.1Ga0.9N層を25オングストロームとを交互に積層し、総膜厚0.6μmの超格子構造とする他は実施例7と同様にしてレーザ素子を作製したところ、実施例7のものとほぼ同等の特性、寿命を有するレーザ素子が得られた。
【0108】
[実施例11]
実施例7において、n側クラッド層を超格子構造とせずに、Siを1×1019/cm3ドープしたAl0.1Ga0.9N層を0.6μmの膜厚で成長させる。一方、p側クラッド層17を成長させる際は、Mgを1×1020/cm3ドープしたGaN層を25オングストロームと、1×1018/cm3ドープしたAl0.1Ga0.9N層を25オングストロームとを交互に積層し、総膜厚0.6μmの超格子構造とする他は実施例7と同様にしてレーザ素子を作製したところ、実施例7に比較して閾値は若干上昇したが同じく1000時間以上の寿命を示した。
【0109】
[実施例12]
実施例7において、n側クラッド層、及びp側クラッド層の超格子における不純物濃度を通常の変調ドープ(中央部が高濃度ではなく、層内ほぼ均一)とし、n側バッファ層11を成長させる際に、Siを1×1019/cm3ドープしたAl0.05Ga0.95N層50オングストロームと、アンドープGaN層50オングストロームとを交互に成長させ、総膜厚2μmの超格子層とする他は実施例7と同様にしてレーザ素子を作製したところ、実施例7のものに比較して、閾値が若干低下し、寿命は3000時間以上を示した。
【0110】
[実施例13]
実施例7において、n側クラッド層12をアンドープGaN層20オングストロームと、Siを1×1019/cm3ドープしたAl0.1Ga0.9N層20オングストロームとを積層した総膜厚0.6μmの超格子構造とする。次のn側光ガイド層13をSiを1×1019/cm3ドープしたGaN層25オングストロームと、アンドープAl0.05Ga0.95N層25オングストロームとを交互に成長させ、総膜厚0.1μmの超格子構造とする。
【0111】
一方、p側光ガイド層も、Mgを1×1019/cm3ドープしたGaN層25オングストロームと、アンドープAl0.05Ga0.95N層25オングストロームとを交互に成長させ、総膜厚0.1μmの超格子構造とする。次に、p側クラッド層17をアンドープGaN層20オングストロームと、Mgを1×1020/cm3ドープしたAl0.1Ga0.9N層を20オングストロームとを交互に積層した、総膜厚0.6μmの超格子構造とする他は、同様にしてレーザ素子を作製したところ、実施例7のものに比較して、若干閾値は低下し、寿命は3000時間以上を示した。
【0112】
[実施例14]
実施例14は、実施例7と同様、GaN基板10を用いて構成したレーザ素子である。
すなわち、実施例14のレーザ素子は、実施例7と同様に構成されたGaN基板10上に以下の各半導体層が形成されて構成される。
まず、そのGaN基板10の上にSiを1×1018/cm3以上ドープしたn型GaNよりなるn側コンタクト層(n側の第2の窒化物半導体層)を2μmの膜厚で成長させる。なお、この層をアンドープのGaNと、SiをドープしたAlXGa1−XN(0<X≦0.4)からなる超格子層としても良い。
【0113】
次に、n側コンタクト層を成長させた後、温度を800℃にして、窒素雰囲気中、TMG,TMI,アンモニア、シランガスで、Siを5×1018/cm3ドープしたIn0.1Ga0.9Nよりなるクラック防止層を500オングストロームの膜厚で成長させる。このクラック防止層はInを含むn型の窒化物半導体、好ましくはInGaNで成長させることにより、後に成長させるAlを含む窒化物半導体層中にクラックが入るのを防止することができる。なおこのクラック防止層は100オングストローム以上、0.5μm以下の膜厚で成長させることが好ましい。100オングストロームよりも薄いと前記のようにクラック防止として作用しにくく、0.5μmよりも厚いと、結晶自体が黒変する傾向にある。
【0114】
続いて、1050℃でTMA、TMG、アンモニア、シランガスを用い、Siを1×1019/cm3ドープしたn型Al0.2Ga0.8Nよりなる層を40オングストロームと、アンドープのGaN層を40オングストロームの膜厚で成長させ、これらの層を交互に、それぞれ100層ずつ積層した、総膜厚0.8μmの超格子よりなるn側クラッド層を成長させる。
【0115】
続いて、アンドープAl0.05Ga0.95Nよりなるn側光ガイド層を0.1μmの膜厚で成長させる。この層には活性層の光を導波する光ガイド層として作用し、アンドープの他、n型不純物をドープしても良い。またこの層をGaNとAlGaNからなる超格子層とすることもできる。
【0116】
次に、アンドープIn0.01Ga0.99Nよりなる活性層を400オングストロームの膜厚で成長させる。
【0117】
次に、後で形成するp側光ガイド層よりもバンドキャップエネルギーが大きいMgを1×1019/cm3ドープしたp型Al0.2Ga0.8Nよりなるp側キャップ層を300オングストロームの膜厚で成長させる。
【0118】
次に、バンドキャップエネルギーがp側キャップ層よりも小さい、Al0.01Ga0.99Nよりなるp側光ガイド層を0.1μmの膜厚で成長させる。この層は、活性層の光ガイド層として作用する。なお、このp側光ガイド層をアンドープの窒化物半導体よりなる超格子層とすることもできる。超格子層とする場合にはバンドキャップエネルギーの大きな方の層(障壁層)のバンドキャップエネルギーは活性層より大きく、p側クラッド層よりも小さくする。
【0119】
続いてMgを1×1019/cm3ドープしたp型Al0.2Ga0.8N層を40オングストロームと、アンドープGaNを40オングストロームとを交互に積層成長した総膜厚0.8μmの超格子層構造よりなるp側クラッド層を成長させる。
【0120】
最後に、p側クラッド層の上に、Mgを1×1020/cm3ドープしたp型GaNよりなるp側コンタクト層を150オングストロームの膜厚で成長させる。特にレーザ素子の場合、AlGaNを含む超格子構造のp側クラッド層に接して、バンドキャップエネルギーの小さい窒化物半導体をp側コンタクト層として、その膜厚を500オングストローム以下と薄くしているために、実質的にp側コンタクト層のキャリア濃度が高くなりp電極と好ましいオーミックが得られて、素子の閾値電流、電圧が低下する傾向にある。
【0121】
以上にようにして窒化物半導体を成長させたウェーハを所定の温度でアニーリングを行いp型不純物をドープした層をさらに低抵抗化させた後、ウェーハを反応容器から取り出し、RIE装置により最上層のp側コンタクト層と、p側クラッド層とをエッチングして、4μmのストライプ幅を有するリッジ形状とする。このように、活性層よりも上部にある層をストライプ状のリッジ形状とすることにより、活性層の発光がストライプリッジの下に集中するようになって閾値が低下し、特に超格子層よりなるp側クラッド層以上の層をリッジ形状とすることが好ましい。
【0122】
次にリッジ表面にマスクを形成し、RIEにてエッチングを行い、n側コンタクト層の表面を露出させ、TiとAlよりなるn電極をストライプ状に形成する。一方p側コンタクト層のリッジ最表面にはNiとAuよりなるp電極をストライプ状に形成する。p型GaN層と好ましいオーミックが得られる電極材料としては、例えばNi,Pt,Pd,Ni/Au,Pt/Au,Pd/Au等を挙げることができる。n型GaNと好ましいオーミックが得られる電極材料としてはAl、Ti,W,Cu,Zn,Sn,In等の金属若しくは合金等を挙げることができる。
【0123】
次に、p電極と、n電極との間に露出した窒化物半導体層の表面にSiO2よりなる絶縁膜を形成し、この絶縁膜を介してp電極と電気的に接続したpパッド電極を形成する。このpパッド電極は実質的なp電極の表面積を広げて、p電極側をワイヤーボンディング、ダイボンディングできるようにしている。
【0124】
以上のようにして、n電極とp電極とを形成したウェーハを研磨装置に移送し、ダイヤモンド研磨剤を用いて、窒化物半導体を形成していない側のサファイア基板をラッピングし、サファイア基板の厚さを70μmとする。ラッピング後、さらに細かい研磨剤で1μmポリシングして基板表面を鏡面状とし、Au/Snで全面をメタライズする。
【0125】
その後、Au/Sn側をスクライプして、ストライプ状の電極に垂直な方向でバー状に劈開し、劈開面に共振器を作製する、共振器面にSiO2とTiO2よりなる誘電体多層膜を形成し、最後にp電極に平行な方向で、バーを切断してレーザチップとする。次にチップをフェースアップ(基板とヒートシンクとが対向した状態)でヒートシンクに設置し、それぞれの電極をワイヤーボンディングして、室温でレーザ発振を試みたところ、室温において、閾値電流密度2.0kA/cm2、閾値電圧4.0Vで、発振波長368nmの連続発振が確認され、1000時間以上の寿命を示した。
【0126】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では不純物が変調ドープされた超格子層よりなるクラッド層を有しているために、閾値電圧が低下して、長時間連続発振できるレーザ素子を実現することができる。またこのレーザ素子は特性温度の高い良好なレーザ素子が実現できる。特性温度とは、温度変化による閾値電流密度で
exp(T/T0)に比例する{T:動作温度(K)、T0:特性温度(K)}。T0が大きいほどLDは、高温でも閾値電流密度が低く安定に動作することを示している。例えば本発明の実施例1のレーザ素子では、T0が150K以上ある。この値はLDの温度特性が非常に優れていることを示している。このため本発明のレーザ素子を書き込み光源、読みとり光源として用いることにより、従来にはない容量が達成でき、その産業上の利用価値は非常に大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る一実施形成のレーザ素子の構造を示す模式断面図。
【図2】 図1のレーザ素子の斜視図。
【図3】 本発明に係る実施例2のレーザ素子の構造を示す模式断面図。
【図4】 本発明に係る実施例7のレーザ素子の構造を示す模式断面図。
【符号の説明】
10・・・GaN基板、
11・・・n側バッファ層、
12・・・超格子構造のn側クラッド層、
13・・・n側ガイド層、
14・・・活性層、
15・・・p側キャップ層、
16・・・p側ガイド層、
17・・・超格子構造のp側クラッド層、
18・・・p側コンタクト層、
19・・・クラック防止層、
20・・・n側キャップ層、
21・・・p電極、
22・・・pパッド電極、
23・・・n電極、
24・・・nパッド電極、
25・・・絶縁膜。
Claims (9)
- 活性層が、n導電側の窒化物半導体層とp導電側の窒化物半導体層との間に形成されてなる窒化物半導体素子であって、
前記n導電側の窒化物半導体層において、前記活性層と離れた位置、若しくは接した位置に、Al X Ga 1−X N(0<X<1)とAl Y Ga 1−Y N(0≦Y<1、X>Y)、又はAl X Ga 1−X N(0<X<1)とIn Z Ga 1−Z N(0≦Z<1)の2元混晶若しくは3元混晶の窒化物半導体からなる第1と第2の窒化物半導体層とが積層されたn側超格子層を有し、
前記第1の窒化物半導体層は、前記第2の窒化物半導体層より大きいバンドギャップエネルギーと前記第2の窒化物半導体層より小さいn型不純物濃度を有することを特徴とする窒化物半導体素子。 - 前記第1の窒化物半導体層はAlXGa1−XN(0<X<1)からなり、前記第2の窒化物半導体層はAlYGa1−YN(0<Y<1,X>Y)からなる請求項1に記載の窒化物半導体素子。
- 前記第1の窒化物半導体層はAlYGa1−YN(0<Y<1)からなり、前記第2の窒化物半導体層はInXGa1−XN(0≦X<1)からなる請求項1に記載の窒化物半導体素子。
- 前記第2の窒化物半導体層がGaNである請求項3に記載の窒化物半導体素子。
- 前記窒化物半導体素子は、前記活性層がp側クラッド層とn側クラッド層の間に位置する発光素子であって、
前記n側クラッド層が、前記n側超格子層である請求項1乃至4のいずれか1つに記載の窒化物半導体素子。 - 前記窒化物半導体発光素子は、前記n側クラッド層と活性層との間、又は前記p側クラッド層と活性層との間の少なくとも一方に光ガイド層が設けられたレーザ素子である請求項5に記載の窒化物半導体素子。
- 前記光ガイド層が超格子層である請求項6に記載の窒化物半導体素子。
- 前記光ガイド層が、InGaNとGaNとの超格子層である請求項7に記載の窒化物半導体素子。
- 前記n導電側の窒化物半導体層が、n側コンタクト層を有し、前記n側超格子は、前記活性層と前記n側コンタクト層との間に設けられる請求項1乃至8のいずれか一項に記載の窒化物半導体素子。
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