JP4437762B2 - 熱圧着装置 - Google Patents

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本発明は、2枚以上のセラミックグリーンシートが重ねられて1セットを構成する圧着前のセラミックグリーンシート積層体が層状に2セット以上配置されてなる被加圧加熱物を加圧・加熱して2セット以上の圧着後のセラミックグリーンシート積層体を製造する熱圧着装置に関する。
近年、積層セラミック基板等、セラミック積層体からなる種々の製品が開発されてきている。係るセラミック積層体は、一般に、2枚以上のセラミックグリーンシートを重ねて作製された(圧着前)セラミックグリーンシート積層体(即ち、被加圧加熱物)を熱圧着装置(ヒータ付きのプレス装置)により加圧・加熱して熱圧着し、その後、熱圧着されたセラミックグリーンシート積層体を焼成することで製造される。ここで、圧着前セラミックグリーンシート積層体からなる被加圧加熱物を加圧・加熱するための熱圧着装置については、種々のものが知られている(例えば、下記特許文献1を参照)。
特開2000−79611号公報
図20は、このような熱圧着装置のうち、本願の発明者が検討しているものの概略構成図である。図20(a)は、この熱圧着装置Bに被加圧加熱物Hをセットした状態、図20(b)は、セットした被加圧加熱物Hを加圧・加熱している状態を示している。
図20に示すように、この熱圧着装置Bは、下側加圧部材100と、上側加圧部材200とを含んでいる。下側加圧部材100は、床の上に固定された下側テーブル110と、下側テーブル110の上に配置・固定された断熱部材120と、断熱部材120の上に配置・固定された下側熱板130と、下側熱板130の上に配置・固定された弾性体140と、支柱150とから構成されている。弾性体140の上面(水平面)に被加圧加熱物Hがセットされる(配置される)ようになっている。
下側熱板130は鉄(或いは、ステンレス)から構成されていて、下側熱板130には、図示しないヒータ制御装置により制御される4本の下側ヒータ130aが所定の間隔をもって内蔵されている。係るヒータ制御装置を制御することにより、下側ヒータ130aから下側熱板130を介して熱伝達を受ける弾性体140の上面の温度は、熱圧着に必要な所定の高温(例えば、90℃)に調整されている。
これにより、弾性体140の上面上にセットされる被加圧加熱物Hは、弾性体140の上面にセットされた(加圧前の)時点から加圧終了時点まで弾性体140から(即ち、下側から)加熱されるようになっている。
また、断熱部材120には断熱材が充填されている。従って、加熱された下側熱板130の熱は下側テーブル110へは伝達され難くなっている。これにより、下側熱板130の熱が弾性体140の上面に向けて効率良く伝達され得るようになっている。
弾性体140は鉄(或いは、ステンレス)よりもヤング率が低いシリコンゴムから構成されている。この弾性体140は、加圧中において被加圧加熱物Hに加わる圧力における局所的な不均一の発生に伴う圧着不良等の不具合の発生を抑制するために配置されている。支柱150は、下側テーブル110から上方に向けて下側熱板130等を囲うように4本、立設されている。
上側加圧部材200は、上側テーブル210と、上側テーブル210の下に配置・固定された断熱部材220と、断熱部材220の下に配置・固定された上側熱板230とから構成されている。加圧中において上側熱板230の下面(水平面)に被加圧加熱物Hの上面が接触するようになっている。
上側テーブル210の4隅には上記4本の支柱150がそれぞれ貫通していて、これにより、上側テーブル210(従って、上側加圧部材200)が上下方向に平行移動可能となっている。
また、上側テーブル210(従って、上側加圧部材200)は、ECUを含んだ駆動制御装置EBにより上下方向に駆動制御され得るようになっている。これにより、上側加圧部材200の上下方向の位置、及び加圧中における被加圧加熱物Hが挿まれる圧力が調整可能となっている。
上側熱板230は下側熱板130と同様、鉄(或いは、ステンレス)から構成されていて、上側熱板230には、図示しないヒータ制御装置により制御される4本の上側ヒータ230aが所定の間隔をもって内蔵されている。係るヒータ制御装置を制御することにより、上側ヒータ230aから熱伝達を受ける上側熱板230の下面の温度は、熱圧着に必要な上記所定の高温(即ち、上記弾性体140の上面の温度と等しい温度)に調整されている。これにより、加圧中において上側熱板230の下面に接触される被加圧加熱物Hは、加圧中においてのみ上側熱板230から(従って、上側から)加熱されるようになっている。
断熱部材220にも断熱部材120と同様、断熱材が充填されている。従って、加熱された上側熱板230の熱は上側テーブル210へは伝達され難くなっている。これにより、上側熱板230の熱がその下面に向けて効率良く伝達され得るようになっている。
加えて、本願の発明者は、生産性の向上等のため、2セット以上の圧着前セラミックグリーンシート積層体を同時に熱圧着して2セット以上の圧着後セラミックグリーンシート積層体を一回の熱圧着工程で得ることを検討している。このため、本願の発明者は、上記構成を有する図20に示した熱圧着装置Bを用いて、圧着前セラミックグリーンシート積層体が層状に2セット以上配置されてなる被加圧加熱物Hを加圧・加熱することを検討している。この被加圧加熱物Hの詳細については後述する。
図21は、上記構成を有する図20に示した熱圧着装置Bを用いて圧着前セラミックグリーンシート積層体が層状に2セット配置されてなる被加圧加熱物Hを加圧・加熱する場合における、上側セラミックグリーンシート積層体(以下、単に「上側積層体」と呼ぶこともある。)の温度(実線を参照)、下側セラミックグリーンシート積層体(以下、単に「下側積層体」と呼ぶこともある。)の温度(破線を参照)、及び被加圧加熱物Hを挿む圧力(以下、単に「圧力」と呼ぶこともある。一点鎖線を参照)の変化の例を示したタイムチャートである。
この例では、時刻t1にて被加圧加熱物Hがセットされ、その後、上側加圧部材200を下降させて被加圧加熱物Hを下側加圧部材100と上側加圧部材200とで上下方向に挿むことで、時刻t2にて加圧が開始されている。圧力は、時刻t2以降において「0」から増大させられ、時刻t4にて圧着に必要な高圧(この例では、3.6MPa。以下、「圧着圧力Ps」と称呼する。)に達している。圧力は、時刻t4以降、時刻t5まで圧着圧力Psに維持された後、時刻t5以降にて減少させられて、時刻t6にて「0」になっている。即ち、時刻t6にて熱圧着工程が終了している。
この例の場合、被加圧加熱物Hがセットされる時刻t1以前では、上側積層体の温度、及び下側積層体の温度が共に雰囲気温度に維持されている。時刻t1において、被加圧加熱物Hが上記所定の高温(この例では、90℃)に調整されている弾性体140の上面にセットされると、被加圧加熱物H内の2セットの積層体のうち弾性体140の上面に近い側に存在する下側積層体が弾性体140から熱伝達を受ける。この結果、下側積層体の温度が時刻t1以降において上昇する。
この場合、シリコンゴムからなる弾性体140の熱伝導率は比較的小さいから、下側積層体が弾性体140から伝達される熱量は制限され易い。従って、時刻t1以降における下側積層体の温度の上昇勾配は比較的小さくなる。
一方、時刻t1から、加圧が開始される時刻t2までの間においては、被加圧加熱物Hが未だ上側熱板230の下面に接触していない。従って、上記2セットの積層体のうち上側熱板230の下面に近い側に存在する上側積層体が上側熱板230から熱伝達を受けることはない。従って、この間、上側積層体の温度は上記雰囲気温度に維持される。これにより、時刻t2では、下側積層体の温度が上側積層体の温度よりも高くなっている。
時刻t2において加圧が開始されると(即ち、加圧加熱物Hが上側熱板230の下面との接触を開始すると)、上側熱板230の下面に近い側に存在する上側積層体が上側熱板230から熱伝達を受ける。この結果、上側積層体の温度が時刻t2以降において上昇する。
この場合、鉄(或いは、ステンレス)からなる上側熱板230の熱伝導率は大きい(シリコンゴムからなる弾性体140のものに比して十分に大きい)から、上側積層体が上側熱板230から伝達される熱量は制限され難い。従って、時刻t2以降における上側積層体の温度の上昇勾配は、時刻t2以降における下側積層体の温度の上昇勾配よりも大きくなる。
この結果、時刻t2の直後の時点から上側積層体の温度が下側積層体の温度を上回るようになる。この時点以降、上側積層体の温度から下側積層体の温度を減じた値(以下、単に「温度差」と云う。)は、しばらく増大し続け、その後、上側積層体の温度、及び下側積層体の温度が上記所定の高温(この例では、90℃)に近づく(収束する)につれて減少していく。
ところで、セラミックグリーンシート(従って、セラミックグリーンシート積層体)は、その温度が高くなるほどより小さくなる(より収縮する)特性を有している。従って、図21に示した例では、被加圧加熱物H内の上側積層体、及び下側積層体もそれぞれの温度の上昇に応じて別個独立に収縮しようとする。
しかしながら、時刻t2以降、圧力も上昇していく。圧力が上昇するほど上記収縮が抑制される程度が増加する。そして、圧力が或る圧力(この例では、1.5MPa。以下、「拘束圧力Pr」と称呼する。)を超えると、上記収縮が完全に禁止される。
図21に示した例では、圧力が時刻t2以降、拘束圧力Prよりも大きい圧着圧力Psに向けて直ちに増大させられるから、圧力は時刻t4より前の時刻t3にて拘束圧力Prに達している。即ち、上側積層体、及び下側積層体は、時刻t3までにおいてそれぞれの温度の上昇に応じて別個独立して収縮していき、時刻t3以降、温度が上昇するにもかかわらずそれらの寸法が時刻t3での値に維持される。
ここで、図21に示したように、この時刻t3では温度差が非常に大きい。このことは、時刻t3以降、上側積層体の寸法が下側積層体の寸法よりも小さく、且つ、その寸法の差が大きい状態が維持されることを意味している。この結果、熱圧着工程が終了する時刻t6において製造される圧着後の上側積層体と圧着後の下側積層体とでは寸法に大きな差が生じる。
そして、このように寸法に大きな差がある2セット以上のセラミックグリーンシート積層体を同一の条件で焼成してセラミック積層体(即ち、製品)を製造すると、製品の寸法にも大きな差(バラツキ)が生じるという問題がある。
換言すれば、図20に示した熱圧着装置Bを用いて圧着前セラミックグリーンシート積層体が層状に2セット以上配置されてなる被加圧加熱物Hを加圧・加熱すると、熱圧着工程中における2セット以上のセラミックグリーンシート積層体の温度の変化パターン(以下、「温度プロファイル」と称呼する。)の相違に起因して、圧着後セラミックグリーンシート積層体の寸法、ひいては製品の寸法において大きなバラツキが生じるという問題がある。
従って、本発明の目的は、圧着前のセラミックグリーンシート積層体が層状に2セット配置されてなる被加圧加熱物を加圧・加熱する熱圧着装置において、圧着後セラミックグリーンシート積層体の寸法、ひいては焼成後の製品の寸法におけるバラツキを小さくすることができるものを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明に関連する技術の特徴は、2枚以上のセラミックグリーンシートが重ねられて1セットを構成する圧着前のセラミックグリーンシート積層体が層状に2セット配置されてなる被加圧加熱物を加圧・加熱して2セットの圧着後のセラミックグリーンシート積層体を製造する熱圧着装置であって、上側加圧部材を加熱するための上側ヒータを内蔵した上側加圧部材と、下側加圧部材を加熱するための下側ヒータを内蔵した下側加圧部材とを備え、前記上側ヒータにより加熱された前記上側加圧部材と前記下側ヒータにより加熱された前記下側加圧部材との間において前記セラミックグリーンシート積層体の積層方向が上下方向に一致するように配置された前記被加圧加熱物を同上側加圧部材と同下側加圧部材とで上下方向に挿んで加圧・加熱する熱圧着装置において、加圧中に亘って前記上側加圧部材から前記被加圧加熱物に伝達される時間経過に対する伝熱量と、加圧中に亘って前記下側加圧部材から同被加圧加熱物に伝達される時間経過に対する伝熱量とが等しいことにある。
上述した焼成後の製品の寸法バラツキ(従って、焼成前の圧着後セラミックグリーンシート積層体の寸法バラツキ)を小さくするための一つの解決策として、熱圧着工程中における被加圧加熱物内の2セット以上のセラミックグリーンシート積層体の温度プロファイルをより近づけることが考えられる。
ここで、上述した図20に示した熱圧着装置Bにおいて被加圧加熱物内の2セット以上のセラミックグリーンシート積層体の温度プロファイルに差が生じる大きな要因として、加圧中に亘って上側加圧部材200(具体的には、上側熱板230)から被加圧加熱物Hに伝達される時間経過に対する伝熱量と、加圧中に亘って下側加圧部材100(具体的には、弾性体140)から同被加圧加熱物Hに伝達される時間経過に対する伝熱量とが大きく異なることを挙げることができる。
即ち、上記構成のように、加圧中に亘って前記上側加圧部材から前記被加圧加熱物に伝達される時間経過に対する伝熱量と、加圧中に亘って前記下側加圧部材から同被加圧加熱物に伝達される時間経過に対する伝熱量とを等しくすれば、熱圧着工程中における被加圧加熱物内の2セット以上のセラミックグリーンシート積層体の温度プロファイルをより近づけることができる。
これにより、熱圧着工程中のどの時点で圧力が拘束圧力に達しても、その時点以降の熱圧着工程中において維持されるセラミックグリーンシート積層体の寸法においてバラツキが小さくなり、この結果、圧着後セラミックグリーンシート積層体の寸法バラツキ(従って、焼成後の製品の寸法バラツキ)が小さくなる。
この場合、前記上側加圧部材における前記被加圧加熱物と接触する接触面を有する部分(以下、「上側接触部分」と称呼する。)の熱伝導率と前記下側加圧部材における同被加圧加熱物と接触する接触面を有する部分(以下、「下側接触部分」と称呼する。)の熱伝導率とを等しくすることが好適である。
これによれば、加圧中に亘って上側加圧部材から被加圧加熱物に伝達される時間経過に対する伝熱量と、加圧中に亘って下側加圧部材から同被加圧加熱物に伝達される時間経過に対する伝熱量とが等しくなるように調整することがより一層容易となる。
なお、上側接触部分の熱伝導率と下側接触部分の熱伝導率とを等しくするためには、上側接触部分の材質と下側接触部分の材質とを等しくすればよい。例えば、図20に示した熱圧着装置Bにおいては、弾性体140を除去して、上側接触部分と下側接触部分の材質を鉄、或いはステンレス(即ち、熱板の材質)に統一すればよい。或いは、上側熱板の下面と下側熱板の上面に同じ材質からなる部材をそれぞれ配置すればよい。
具体的には、例えば、上側熱板の下面と下側熱板の上面に、シリコンゴム等からなる同じ材質の弾性体をそれぞれ配置すればよい。これにより、上述した図20に示した弾性体140と同様、加圧中において被加圧加熱物に加わる圧力における局所的な不均一の発生に伴う圧着不良等の不具合の発生を効果的に抑制することができる。また、例えば、上側熱板の下面と下側熱板の上面に、薄い鉄板、低熱伝導層(例えば、テフロンシート等)等をそれぞれ配置してもよい。これらの効果については後述する。なお、「テフロン」は、登録商標である。
記目的を達成するための本発明の特徴は、加圧前において、前記上側ヒータにより加熱された前記上側加圧部材と前記下側ヒータにより加熱された前記下側加圧部材との間に配置された前記被加圧加熱物を同上側加圧部材と同下側加圧部材の何れにも接触しない状態に維持する先行加熱防止機構を備えたことにある。
上述した図20に示した熱圧着装置Bにおいて被加圧加熱物内の2セット以上のセラミックグリーンシート積層体の温度プロファイルに差が生じる他の要因として、加圧前の段階で、被加圧加熱物が下側ヒータで加熱されている下側加圧部材に接触している一方、上側ヒータで加熱されている上側加圧部材には接触していないことを挙げることができる。
即ち、上記構成のように、加圧前において、被加圧加熱物を上側加圧部材と下側加圧部材の何れにも接触しない状態に維持すれば、加圧開始時点まで被加圧加熱物内の2セット以上のセラミックグリーンシート積層体の温度を等しい値に維持することができる。この結果、加圧開始後における被加圧加熱物内の2セット以上のセラミックグリーンシート積層体の温度プロファイルをより近づけることができる。
ここで、上側接触部分の熱伝導率と下側接触部分の熱伝導率とが等しくされるとともに、加圧前において、被加圧加熱物が上側加圧部材と下側加圧部材の何れにも接触しない状態に維持されることが好適である。これにより、加圧開始時点での被加圧加熱物内の2セット以上のセラミックグリーンシート積層体の温度を等しい値とすることができ、更に、加圧中に亘って上側加圧部材から被加圧加熱物に伝達される時間経過に対する伝熱量と、加圧中に亘って下側加圧部材から同被加圧加熱物に伝達される時間経過に対する伝熱量とを等しくすることができる。従って、被加圧加熱物内の2セット以上のセラミックグリーンシート積層体の温度プロファイルを更に一層近づけることができる。
この場合、前記先行加熱防止機構は、前記上側加圧部材と前記下側加圧部材との間に前記被加圧加熱物を配置するためのテーブルと、前記テーブルの上下方向位置を変動可能とするとともに、加圧前において同テーブルの上下方向位置を同テーブルに配置された前記被加圧加熱物が前記上側加圧部材と前記下側加圧部材の何れにも接触しない所定の位置に調整する弾性付勢力を発生する弾性付勢力発生部材(例えば、コイルスプリング)を含んだテーブル上下方向位置調整機構とを備えることが好適である。
これによれば、加圧前においてテーブルの上下方向位置が、同テーブルに配置された被加圧加熱物が上側加圧部材と下側加圧部材の何れにも接触しない所定の位置に弾性付勢力により調整されることに加え、加圧中では、被加圧加熱物が上側加圧部材、及び/又は下側加圧部材から受ける上下方向の力に応じてテーブルの上下方向位置が弾性付勢力に抗して自由に移動され得る。
従って、簡易な構成で、且つ、被加圧加熱物の自由な上下移動を阻害することなく、加圧開始時点まで被加圧加熱物内の2セット以上のセラミックグリーンシート積層体の温度を等しい値に維持することができる。
また、上記本発明に係る熱圧着装置の何れかにおいては、前記上側加圧部材と前記下側加圧部材は、同上側加圧部材における前記被加圧加熱物と接触する接触面(以下、「上側接触面」と称呼する。)と同下側加圧部材における同被加圧加熱物と接触する接触面(以下、「下側接触面」と称呼する。)の相対的な向き(傾き)が加圧中において同被加圧加熱物から受ける反力に応じて変動可能となるように構成されることが好適である。
いま、加圧前において、上側接触面、下側接触面、被加圧加熱物の上面(即ち、上側接触面と接触する面)、及び被加圧加熱物の下面(即ち、下側接触面と接触する面)の間での向き(より具体的には、平行度)の関係が、被加圧加熱物に加わる圧力を均一とするための適切な関係になっていない場合を考える。この場合であっても、上記構成によれば、加圧中において、上側接触面、及び/又は下側接触面が傾くことで、被加圧加熱物に加わる圧力が均一化され得、この結果、圧着不良等の不具合の発生が抑制され得る。
ところで、上述したように、上述した熱圧着装置は、熱圧着工程中における被加圧加熱物内の2セット以上のセラミックグリーンシート積層体の温度プロファイルをより近づけるための構成を有している。しかしながら、圧力が上記拘束圧力に達する前の段階で被加圧加熱物内の2セット以上のセラミックグリーンシート積層体の温度に大きなバラツキ(セット間のバラツキ、以下、単に「温度バラツキ」とも云う。)が生じていても、少なくとも圧力が拘束圧力に達した時点における温度バラツキが十分に小さくなっていれば、圧着後セラミックグリーンシート積層体の寸法バラツキ(ひいては、焼成後の製品の寸法バラツキ)を小さくすることができると考えられる。
ここで、上述した図21に示した例において圧力が拘束圧力に達した時点(時刻t3)における温度差(従って、温度バラツキ)が非常に大きくなる要因として、温度バラツキが加圧開始時点(時刻t2)の直後の短期間において非常に大きくなること、係る短期間内において圧力が拘束圧力に達していることを挙げることができる。
加えて、この温度バラツキは、図21から容易に推測され得るように、上記短期間が経過した後、2セット以上のセラミックグリーンシート積層体の温度が上記所定の高温(図21では、90℃)に近づくにつれて次第に減少していく。以上のことから、加圧開始時点の直後の上記短期間が経過した後において圧力が拘束圧力に達するように圧力の変化パターンを変更すれば、圧力が拘束圧力に達した時点における温度バラツキを小さくすることができる。
係る知見に基づき、本発明に関連する技術の特徴は、前記被加圧加熱物を挿む圧力が、加圧開始時点から所定時間に亘って、前記被加圧加熱物内での前記セラミックグリーン積層体の温度上昇による収縮が許容される値(即ち、上記拘束圧力未満の値)に維持され、前記所定時間の経過後において、同セラミックグリーン積層体の温度上昇による収縮が禁止される値(即ち、上記拘束圧力以上の値)であって同セラミックグリーンシート積層体の圧着に必要な値(即ち、上記圧着圧力)まで上昇させられるように調整されることにある。
これによれば、圧力が、加圧開始時点から所定時間に亘って上記拘束圧力未満の低い圧力に維持され、その後、同拘束圧力以上である上記圧着圧力まで増大・維持され得る。即ち、加圧開始後、維持される圧力の大きさが2段階に設定される。
従って、上記所定時間を調整することで、加圧開始時点の直後の上記短期間が経過した後において圧力が拘束圧力に達するように圧力変化パターンが設定され得、この結果、圧力が拘束圧力に達した時点における温度バラツキを小さくすることができる。
この場合、より具体的には、前記所定時間は、前記加圧開始時点から、前記2セット以上のセラミックグリーンシート積層体の温度におけるセット間のバラツキ(即ち、上記温度バラツキ)の程度が所定の程度以下となるまでに要する時間以上の時間に設定される。
或いは、前記所定時間は、前記加圧開始時点から、前記セラミックグリーンシート積層体の温度の上昇勾配が所定値以下となるまでに要する時間以上の時間に設定されてもよい。これは、図21から容易に推測され得るように、温度バラツキが上記短期間が経過した後において次第に減少していくにつれて2セット以上のセラミックグリーンシート積層体の温度上昇勾配も次第に減少していくことに基づく。
また、前記セラミックグリーンシート積層体において、隣接するセラミックグリーンシートの間にバインダ成分を含む接着層が設けられている場合、前記所定時間は、前記加圧開始時点から、前記セラミックグリーンシート積層体の温度が前記バインダ成分のガラス転移点温度に達するまでに要する時間を超えない時間に設定されることが好ましい。この点については後述する。
以下、図面を参照しながら本発明による熱圧着装置の各実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る熱圧着装置A1の概略構成図である。図1(a)は、この熱圧着装置A1に被加圧加熱物Hをセットした状態、図1(b)は、セットした被加圧加熱物Hを加圧・加熱している状態を示している。
図1に示すように、この熱圧着装置A1は、下側加圧部材10と、上側加圧部材20と、先行加熱防止機構30とを含んでいる。下側加圧部材10は、床の上に固定された鉄(或いは、アルミ合金)からなる下側テーブル11と、下側テーブル11の上に配置・固定された鉄(或いは、ステンレス)からなる固定部材12と、固定部材12の上に配置・固定された断熱部材13と、断熱部材13の上に配置・固定された下側熱板14と、下側熱板14の上に配置・固定された弾性体15と、支柱16とから構成されている。後述するように、加圧中において弾性体15の上面(水平面)に被加圧加熱物Hの下面が接触するようになっている。従って、弾性体15は、上記下側接触部分に相当する。
下側熱板14は鉄(或いは、ステンレス)から構成されていて、下側熱板14には、図示しないヒータ制御装置により制御される4本の下側ヒータ14aが所定の間隔をもって内蔵されている。係るヒータ制御装置を制御することにより、下側ヒータ14aから下側熱板14を介して熱伝達を受ける弾性体15の上面の温度は、熱圧着に必要な所定の高温(例えば、90℃近傍)に調整されている。これにより、加圧中において弾性体15の上面に接触される被加圧加熱物Hは、加圧中においてのみ弾性体15から(即ち、下側から)加熱されるようになっている。
また、断熱部材13には断熱材が充填されている。従って、加熱された下側熱板14の熱は下側テーブル11側へは伝達され難くなっている。これにより、下側熱板14の熱が弾性体15の上面に向けて効率良く伝達され得るようになっている。
弾性体15は鉄(或いは、ステンレス)よりもヤング率が低いシリコンゴムから構成されている。この弾性体15は、鉄(或いは、ステンレス)からなる下側熱板14に比して外力に応じて変形し易いから、加圧中において被加圧加熱物Hに加わる圧力における局所的な不均一の発生(従って、圧着不良等の不具合の発生)を抑制することができる。支柱16は、下側テーブル11から上方に向けて下側熱板14等を囲うように4本、立設されている。
上側加圧部材20は、鉄(或いは、アルミ合金)からなる上側テーブル21と、上側テーブル210の下に配置・固定された鉄(或いは、ステンレス)からなる固定部材22と、固定部材22の下に配置されたシリコンゴムからなる弾性体23と、弾性体23の下に配置された上側熱板24と、上側熱板24の下に配置・固定された弾性体25と、固定部材22に固定された一対の支持部材26,26とから構成されている。後述するように、加圧中において弾性体25の下面(水平面)に被加圧加熱物Hの上面が接触するようになっている。従って、弾性体25は、上記上側接触部分に相当する。
上側テーブル21の4隅には上記4本の支柱16がそれぞれ貫通していて、これにより、上側テーブル21(従って、上側加圧部材20)が上下方向に平行移動可能となっている。
また、上側テーブル21(従って、上側加圧部材20)は、ECUを含んだ駆動制御装置E1により上下方向に駆動制御され得るようになっている。これにより、上側加圧部材20の上下方向の位置、及び加圧中における被加圧加熱物Hが挿まれる圧力が調整可能となっている。
上側熱板24は下側熱板14と同じ鉄(或いは、ステンレス)から構成されていて、上側熱板24には、図示しないヒータ制御装置により制御される4本の上側ヒータ24aが所定の間隔をもって内蔵されている。係るヒータ制御装置を制御することにより、上側ヒータ24aから上側熱板24を介して熱伝達を受ける弾性体25の下面の温度は、熱圧着に必要な上記所定の高温(即ち、上記弾性体15の上面の温度と等しい温度)に調整されている。これにより、加圧中において弾性体25の下面に接触される被加圧加熱物Hは、加圧中においてのみ弾性体25から(従って、上側から)加熱されるようになっている。
弾性体25は弾性体15と同じシリコンゴムから構成されている。即ち、上側接触部分である弾性体25の熱伝導率と下側接触部分である弾性体15の熱伝導率とは等しい。この弾性体25は、弾性体15と同様、加圧中において被加圧加熱物Hに加わる圧力における局所的な不均一の発生に伴う圧着不良等の不具合の発生を抑制するために配置されている。
一対の支持部材26,26は、その下端にそれぞれフランジ部26a,26aを有している。上側熱板24に形成されている段差部24b,24bは、このフランジ部26a,26aに係止されるようになっている。即ち、上側熱板24は、支持部材26,26により、同支持部材26,26に対して相対移動可能に支持されるようになっている。
この結果、加圧中において、弾性体23が上側熱板24を介して被加圧加熱物Hから受ける力に応じて変形すると、上側熱板24は、同弾性体23の変形に応じて傾くことができるようになっている。換言すれば、上記上側接触面である弾性体25の下面と下側接触面である弾性体15の上面の相対的な向き(傾き)が加圧中において被加圧加熱物Hから受ける反力に応じて変動可能となっている。
これにより、加圧前において、弾性体25の下面、弾性体15の上面、及び被加圧加熱物Hの上面及び下面の間での向き(より具体的には、平行度)の関係が、被加圧加熱物Hに加わる圧力を均一とするための適切な関係になっていない場合であっても、加圧中において弾性体25の下面が傾くことで、被加圧加熱物Hに加わる圧力が均一化され得る。この結果、圧着不良等の不具合の発生が抑制され得るようになっている。なお、弾性体23が省略されても、弾性体15、或いは弾性体25の変形のみで同様の効果が得られる。
先行加熱防止機構30は、下側テーブル11から上方に向けて下側熱板14等を囲うように立設された4本の(図1において、左側2本、右側2本の)支柱31と、片側2本の支柱31,31の上端にそれぞれが固定された、被加圧加熱物Hを置くための一対のテーブル32,32と、各支柱31の周囲にそれぞれ配置された4本のコイルスプリング33とから構成されている。
4本の支柱31は、その下端の下側テーブル11への上下方向の侵入長さが変更可能になっていて、これにより、下側テーブル11に対して上下方向に平行移動可能になっている。この結果、一対のテーブル32,32の上下方向位置が変動可能になっている。
一対のテーブル32,32は、互いに水平方向に所定距離だけ離れて配置されていて、被加圧加熱物Hの両端部(図1において、左右両端部)がそれぞれ対応するテーブル32の上の所定位置に置かれることで、被加圧加熱物Hが一対のテーブル32,32の上に水平にセットされるようになっている。
これにより、被加圧加熱物Hは、一対のテーブル32,32の上にセットされた状態で、その下面(水平面)が弾性体15の上面と対向し、その上面(水平面)が弾性体25の下面と対向するようになっている。
4本のコイルスプリング33は、その下端が下側テーブル11に係止され、その上端が対応するテーブル32の下面に係止されている。これにより、4本のコイルスプリング33は、一対のテーブル32,32を上方へ付勢する弾性付勢力を発生するようになっている。
係る弾性付勢力により、加圧前(即ち、上側加圧部材20が原位置にある状態。図1(a)を参照。)において一対のテーブル32,32の上下方向位置が、同テーブル32,32にセットされた被加圧加熱物Hが弾性体25(上側接触部分)と弾性体15(下側接触部分)の何れにも接触しない原位置に調整されるようになっている。
加えて、上側加圧部材20が原位置から下降して弾性体25が被加圧加熱物Hに接触すると、被加圧加熱物Hが弾性体25から受ける下向きの力に応じて、一対のテーブル32,32が4本のコイルスプリング33の弾性付勢力に抗して上記原位置から自由に下降され得るようになっている。
従って、加圧中(被加圧加熱物Hが弾性体25と弾性体15とに挟まれている状態。図1(b)を参照。)では、一対のテーブル32,32は、弾性体25と弾性体15とに挟まれている被加圧加熱物Hの上下方向位置に対応する位置まで下降し得る。この結果、被加圧加熱物Hは、加圧中においてのみ、弾性体25の下面、及び弾性体15の上面に接触し得るようになっている。以上、4本のコイルスプリング33は、弾性付勢力発生部材に相当している。また、4本の支柱31と4本のコイルスプリング33が上下方向位置調整機構に相当している。
なお、この例では、一対のテーブル32,32は、下側テーブル11から上方に向けて立設された4本の支柱31の上端に固定されているが、上側テーブル21から下方に向けて立設された4本の支柱の下端に固定されてもよい。
次に、以上のように構成された第1実施形態に係る熱圧着装置A1により加圧・加熱される被加圧加熱物Hについて図2を参照しながら説明する。図2(a)は、被加圧加熱物Hの分解斜視図であり、図2(b)は、上記一対のテーブル32,32にセットされる状態(図1に示す状態)にある被加圧加熱物Hの斜視図である。
被加圧加熱物Hは、上方に向けて立設された4本のピンb1aを備えたステンレスからなるピン立台b1と、ピン立台b1の上に重ねられるステンレスからなる底板b2と、底板b2の上に重ねられる圧着前のセラミックグリーンシート積層体Ld(以下、「下側積層体Ld」とも称呼する。)と、下側積層体Ldの上に重ねられるステンレスからなる中板b3と、中板b3の上に重ねられる圧着前のセラミックグリーンシート積層体Lu(以下、「上側積層体Lu」とも称呼する。)と、上側積層体Luの上に重ねられるステンレスからなる上板b4とから構成されている。上側積層体Luと下側積層体Ldとは同一の構成、同一の形状を有している。
底板b2、下側積層体Ld、中板b3、上側積層体Lu、上板b4はそれぞれ、4本のピンb1aに対応する位置に4つのピン孔を有している。底板b2、下側積層体Ld、中板b3、上側積層体Lu、上板b4がピン孔にピンb1aを通しながらこの順に組みつけられていく(積まれていく)ことで、被加圧加熱物Hが準備される。
このように、被加圧加熱物H内では、圧着前のセラミックグリーンシート積層体(Lu,Ld)が層状に2セット配置されている。これにより、2セットの圧着前セラミックグリーンシート積層体(Lu,Ld)を同時に熱圧着して2セットの圧着後セラミックグリーンシート積層体(Lu,Ld)を一回の熱圧着工程で得ることができる。
また、図2から容易に理解できるように、被加圧加熱物Hが一対のテーブル32,32の上に水平にセットされた状態において、上側積層体Lu、及び下側積層体Ldの積層方向が上下方向(鉛直方向)に一致するようになっている。
次に、係る構成を有する被加圧加熱物Hの内部に配置される上側積層体Lu、及び下側積層体Ldについて図3〜図5を参照しながら説明する。図3(a)は、上側、下側積層体Lu,Ldの分解斜視図であり、図3(b)は、積層された状態の上側、下側積層体Lu,Ldの斜視図である。
図3(a)に示すように、上側、下側積層体Lu,Ldはそれぞれ、3枚のセラミックグリーンシートS1,S2,S3が積層されてなるものである。セラミックグリーンシートS1,S2,S3は、例えば、ドクターブレード法等により作製されたセラミックグリーンシートを、金型を用いた打抜加工やレーザー加工等の方法により図3(a)に示した形状に加工して作製される。
セラミックグリーンシートS1,S3は同一形状である。セラミックグリーンシートS1,S3に挟まれるセラミックグリーンシートS2は、セラミックグリーンシートS1,S3に対して更に、図3(a)に示すように、2列に亘って各列5個ずつ計10個の同一形状の窓Wが加工されたものである。この窓Wは、上側、下側積層体Lu,Ldの平面図(上面図)である図4に示すように、高さがa、幅がbの長方形を呈している。
上側、下側積層体Lu,Ldの熱圧着装置A1による熱圧着をより確実にするため、図4における5−5線に沿った切断面の拡大断面図である図5に示すように、上側、下側積層体Lu,Ldには、接着層g1,g2が設けられている。接着層g1,g2を構成する成分は、セラミックグリーンシートS1〜S3のものと組成が同じで配合比(特に、バインダ成分の配合比)が異なる。
上側、下側積層体Lu,Ldが作製される際には、先ず、セラミックグリーンシートS3の上に所定の厚さの接着層g2が、セラミックグリーンシートS2の上に所定の厚さの接着層g1が、スクリーン印刷等の方法によりそれぞれ印刷される。
次いで、接着層g2が印刷されたセラミックグリーンシートS3の上(即ち、接着層g2の上)に、接着層g1が印刷されたセラミックグリーンシートS2が重ねられ、その上(即ち、接着層g1の上)にセラミックグリーンシートS1が重ねられる。
このようにして作製される上側、下側積層体Lu,Ldの内部には、図5に示すように、窓Wに対応する位置にキャビティCが形成される。即ち、上側、下側積層体Lu,Ldの内部には、2列に亘って各列5個ずつ計10個の同一形状のキャビティCが形成されている。以下、窓Wの幅bに相当するキャビティの幅(図5に示す「b」)を「キャビティ幅」と称呼する。
なお、上側、下側積層体Lu,Ldを熱圧着、焼成した後に得られるセラミック積層体に所定の処理を加え、その後、図4、及び図5に示した2点鎖線(図4では、高さがA、幅がBの長方形の形状線)に対応する線(面)に沿って切断することにより、セラミック積層体からなる製品が完成する。即ち、上側、下側積層体Lu,Ld(即ち、2セットの積層体)を熱圧着、焼成することで、内部にキャビティCが形成された同一の製品を2×10=20個、得ることができる。
次に、上述したように、上側、下側積層体Lu,Ldが層状に配置された上記被加圧加熱物Hを上記熱圧着装置A1を用いて加圧・加熱する場合における、上側、下側積層体Lu,Ldの各温度、及び被加圧加熱物Hを挿む圧力の変化について説明する。
ここで、上側、下側積層体Lu,Ldの各温度の計測方法の例について説明しておく。上側、下側積層体Lu,Ldの各温度は、例えば、図6(a)(b)に示すように、上側、下側積層体Lu,Ldの各セラミックグリーンシートS2にそれぞれ切欠Kを設け、各切欠Kにシート状のK熱電対をそれぞれ挿入することで計測することができる。
この例では、上側、下側積層体Lu,Ldの温度として、対応するセラミックグリーンシートS2の温度が使用されている。また、圧力は、上側加圧部材10、又は下側加圧部材20を構成する部品の何れかの内部に圧電素子等を挿入する等により計測することができる。
図7は、第1実施形態に係る上記熱圧着装置A1を用いて駆動制御装置E1により上記被加圧加熱物Hを加圧・加熱する場合における、上側積層体Luの温度(実線を参照)、下側積層体Ldの温度(破線を参照)、及び圧力(一点鎖線を参照)の変化の例を示したタイムチャートである。
この例では、背景技術の欄において説明した図21に示した場合(即ち、図20に示した駆動制御装置EBにより従来の熱圧着装置Bが制御される場合)と同様、時刻t1にて被加圧加熱物Hがセットされ、その後、上側加圧部材20を下降させて被加圧加熱物Hを下側加圧部材10と上側加圧部材20とで上下方向に挿むことで、時刻t2にて加圧が開始される。
圧力は、時刻t2以降において「0」から増大させられ、時刻t3にて上述した拘束圧力Pr(この例では、1.5MPa)に達する。その後、圧力は、時刻t4にて上述した圧着圧力Ps(この例では、3.6MPa)に達する。圧力は、時刻t4以降、時刻t5まで圧着圧力Psに維持された後、時刻t5以降にて減少させられて、時刻t6にて「0」になっている。即ち、時刻t6にて熱圧着工程が終了する。即ち、この図7に示す例での圧力変化パターンは、図21に示すものと同一である。
この例の場合、被加圧加熱物Hがセットされる時刻t1以前では、上側積層体Luの温度、及び下側積層体の温度Ldが共に雰囲気温度に維持されている。また、時刻t1において、被加圧加熱物Hが一対のテーブル32,32上にセットされても、加圧が開始される時刻t2までの間においては、上述したように、先行加熱防止機構30の作用により、被加圧加熱物Hは、弾性体25と弾性体15の何れにも接触しない。
従って、上側積層体Luが上記所定の高温(この例では、90℃近傍)に調整されている弾性体25から熱伝達を受けることがなく、また、下側積層体Ldも同所定の高温に調整されている弾性体15から熱伝達を受けることがない。従って、この間、上側、下側積層体Lu,Ldの温度は共に上記雰囲気温度に維持される。これにより、時刻t2において、上側、下側積層体Lu,Ldの温度は等しくなっている。
時刻t2において加圧が開始されると、上述したように、被加圧加熱物Hの弾性体25及び弾性体15との接触が開始される。これにより、時刻t2以降、弾性体25の下面に近い側に存在する上側積層体Luが弾性体25から(従って、上側から)熱伝達を受け、弾性体15の上面に近い側に存在する下側積層体Ldが弾性体15から(従って、下側から)熱伝達を受ける。この結果、上側、下側積層体Lu,Ldの温度が時刻t2以降において上昇する。
この場合、上述したように、弾性体25の熱伝導率と弾性体15の熱伝導率とが等しく、この結果、加圧中に亘って弾性体25から被加圧加熱物Hに伝達される時間経過に対する伝熱量と、加圧中に亘って弾性体15から同被加圧加熱物Hに伝達される時間経過に対する伝熱量とが等しくなっている。従って、時刻t2以降における上側、下側積層体Lu,Ldの温度の上昇勾配も等しくなる。
この結果、図7に示すように、時刻t2以降、上側、下側積層体Lu,Ldの温度が上記所定の高温に収束する時刻t6までの間においても、上側、下側積層体Lu,Ldの温度が略等しい状態に維持される。即ち、上側、下側積層体Lu,Ldの温度プロファイルが時刻t1〜t6に亘って略一致し続ける。
これにより、圧力が拘束圧力Prに達する時刻t3における上側、下側積層体Lu,Ldの温度差が非常に小さくなる。このことは、時刻t3における上側、下側積層体Lu,Ldの寸法の差(バラツキ)が非常に小さいことを意味している。従って、時刻t3以降の熱圧着工程中において維持される(拘束され続ける)上側、下側積層体Lu,Ldの寸法のバラツキが小さくなる。この結果、熱圧着工程終了後の(従って、圧着後の)上側、下側積層体Lu,Ldの寸法バラツキ(従って、焼成後の上記製品の寸法バラツキ)が小さくなる。
図8は、図20に示した従来の熱圧着装置Bにより上記被加圧加熱物H(従って、上側、下側積層体Lu,Ld)の加圧・加熱を行った場合と、第1実施形態に係る上記熱圧着装置A1により同被加圧加熱物Hの加圧・加熱を行った場合とで、焼成後のセラミック積層体Lu1,Ld1(以下、「上側基板Lu1、下側基板Ld1」とも称呼する)の寸法バラツキについての比較を行った実験結果を示している。
この実験では、図8中の「基板形状バラツキ」を測定するため、図9に示すように、上側、下側積層体Lu,Ldにおいて、各窓W(従って、上記各製品)に対応する所定の位置に形状測定用孔hがそれぞれ設けられている。図10は、図9に示した10個の形状測定用孔hが設けられた上側、下側積層体Lu,Ldを熱圧着、焼成して得られる上側、下側基板Lu1,Ld1の例を示している。
図10に示したように、焼成に伴う収縮による形状測定用孔hの移動距離は、形状測定用孔hの基板全体における位置に応じて異なる。そして、この例では、図10に示したようにX軸、Y軸を採り、上側基板Lu1と下側基板Ld1における対応する1対の形状測定用孔hについてのX軸方向の位置の差を10箇所について順に測定していく。そして、これにより得られる差の値(10個の値)の最大値を図8中の「基板形状バラツキ」と定義する。
また、この実験では、図8中の「キャビティ幅バラツキ」を測定するため、上側、下側基板Lu1,Ld1から各10個ずつ計20個得られるキャビティの幅(上記キャビティ幅。図5を参照。)を測定する。そして、これにより得られる20個の値における標準偏差の3倍(所謂「3σ」)を「キャビティ幅バラツキ」と定義する。
また、この実験では、図8中の「反りのバラツキ」を測定するため、上側基板Lu1を水平面に置いた場合での同上側基板Lu1における最も高い位置の同水平面からの高さと、下側基板Ld1を水平面に置いた場合での同下側基板Ld1における最も高い位置の同水平面からの高さの差を測定する。そして、この差の値を「反りのバラツキ」と定義する。
図8では、第1実施形態として、上述した図1に示したもの(即ち、上側熱板24の下、及び下側熱板14の上に弾性体25,15がそれぞれ固定されたもの。以下、「実施例1」と云う。)、図1に示した弾性体25の下、及び弾性体15の上に更に同じ鉄(或いは、ステンレス)からなる薄い板がそれぞれ固定されたもの(以下、「実施例2」と云う。)、並びに、図1に示した弾性体15を省略して、弾性体25の下、及び下側熱板14の上に更に低熱伝導層(テフロンシート)がそれぞれ固定されたもの(以下、「実施例3」と云う。)が示されている。
即ち、実施例2では、弾性体25の下の上記薄い板が上記上側接触部分に相当し、弾性体15の上の上記薄い板が上記下側接触部分に相当する。実施例3では、弾性体25の下の低熱伝導層が上記上側接触部分に相当し、下側熱板14の上の低熱伝導層が上記下側接触部分に相当する。即ち、この実施例2,3でも、上側接触部分と下側接触部分の熱伝導率が等しくなっている。
なお、実施例2では、実施例1に比して、加圧開始直後の短期間内における上側、下側積層体Lu,Ldの温度の上昇勾配が大きくなる。また、実施例3では、実施例1に比して、加圧開始直後の短期間内における上側、下側積層体Lu,Ldの温度プロファイルの差がより一層小さくなる。
この実施例3から理解できるように、上側接触部分(この例では、弾性体25)と下側接触部分(この例では、下側熱板14)の材質が異なる場合(従って、上側接触部分と下側接触部分の熱伝導率が異なる場合)、上側接触部分の下、及び下側接触部分の上に更に同一の低熱伝導層を配置して上側接触部分と下側接触部分の熱伝導率を一致させることで、上側、下側積層体Lu,Ldの温度プロファイルの差を小さくすることができる。
図8に示すように、先行加熱防止機構30を備えていて、且つ、上側接触部分と下側接触部分の熱伝導率が等しい実施例1,2,3では、従来例に比して、「基板形状バラツキ」、「キャビティ幅バラツキ」、「反りのバラツキ」の全ての値が小さくなっていることが理解できる。これは、上述したように、第1実施形態では、上側、下側積層体Lu,Ldの温度プロファイルの差(特に、図7における時刻t3での温度差)が非常に小さくなることに起因すると考えられる。
また、この実験では、被加圧加熱物H(以下、「カセット」とも称呼する。)の内部の圧力分布を測定するため、カセット内の隣り合う所定の層と層の間に感圧紙を挿入した状態でカセットを加圧・加熱する。そして、感圧紙の色の分布を目視で確認して圧力分布の均一の程度を判定する。
図8に示すように、実施例1,2,3では、従来例に比して、圧力分布の均一の程度がより良好になっている。これは、上述したように、上記上側接触面の向きが、上記下側接触面に対して被加圧加熱物Hから受ける反力に応じて変動可能となっていることに起因すると考えられる。
以上、説明したように、本発明の第1実施形態に係る熱圧着装置A1では、先行加熱防止機構30の作用により加圧前において被加圧加熱物Hが上側接触部分(弾性体25)と下側接触部分(弾性体15)の何れにも接触しない。加えて、上側接触部分と下側接触部分の熱伝導率が等しい。これにより、被加圧加熱物H内の上側、下側積層体Lu,Ldの温度プロファイルが熱圧着工程中において略一致する。
この結果、圧力が拘束圧力Prに達する時点(図7において、時刻t3)での上側、下側積層体Lu,Ldの温度差が非常に小さくなるから、同時点以降の熱圧着工程中において維持される(拘束され続ける)上側、下側積層体Lu,Ldの寸法のバラツキが小さくなる。この結果、熱圧着工程終了後の(従って、圧着後の)上側、下側積層体Lu,Ldの寸法バラツキ(従って、焼成後の上記製品の寸法バラツキ)が小さくなる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る熱圧着装置A2について説明する。図11は、この熱圧着装置A2の概略構成図である。熱圧着装置A2は、加圧開始後における圧力の変化パターンのみが上述した図20に示した従来の熱圧着装置Bと異なり、機械的な構成については同熱圧着装置Bと同一である。
従って、図11において図20の部材と同一の部材については図20に示した符号を付してそれらの説明に代える。図11と図20とを比較すれば明らかなように、熱圧着装置A2と熱圧着装置Bとは、圧力の変化パターンを制御する駆動制御装置のみが異なっている。
図12は、この第2実施形態に係る熱圧着装置A2を用いて駆動制御装置E2により(図2に示した)被加圧加熱物Hを加圧・加熱する場合における、上側積層体Luの温度(実線を参照)、下側積層体Ldの温度(破線を参照)、及び圧力(一点鎖線を参照)の変化の例を示したタイムチャートである。
図12における時刻t1、t2、t3、t4、t5、t6はそれぞれ、従来の熱圧着装置Bを用いた場合を示した図21のタイムチャートにおける時刻t1、t2、t3、t4、t5、t6と対応している。
図12と図21を比較すれば明らかなように、上側、下側積層体Lu,Ldの温度プロファイルは、熱圧着装置A2を用いた場合と従来の熱圧着装置Bを用いた場合とで同じになる。これは、この熱圧着装置A2では、上記従来の熱圧着装置Bと同様、上記先行加熱防止機構30が備えられておらず、且つ、上側接触部分(上側熱板230)と下側接触部分(弾性体140)の各熱伝導率が熱圧着装置Bのものと同じだからである。
一方、熱圧着装置A2では、加圧開始時点である時刻t2以降において上昇する圧力が時刻t2aにて、上記拘束圧力Pr(この例では、1.5MPa)よりも十分に低い圧力であって予め設定された或る圧力(この例では、0.7MPa。以下、「非拘束中維持圧力Pk」と称呼する。)に達すると、時刻t2a以降、時刻t2bまでの間、圧力が非拘束維持圧力Pkに維持される。従って、上側、下側積層体Lu,Ldは、時刻t2bまでは、それぞれの温度上昇に応じて別個独立に収縮し得る。
時刻t2bになると、圧力は再び増大させられ、圧力は時刻t3にて拘束圧力Prに達する。その後、圧力は、時刻t4にて上述した圧着圧力Ps(この例では、3.6MPa)に達すると、時刻t4以降、時刻t5まで圧着圧力Psに維持される、そして、時刻t5以降にて減少させられて、時刻t6にて「0」になる。このように、熱圧着装置A2では、維持される圧力の大きさが2段階(非拘束中維持圧力Pk、及び圧着圧力Ps)に設定される。
ここで、図12における時刻t3は、図21における時刻t3よりも所定時間(t2b−t2a)だけ遅れていて、これにより、図12における時刻t3では、上側、下側積層体Lu,Ldの温度差が十分に小さくなっている。従って、図12における時刻t3では、上側、下側積層体Lu,Ldの寸法バラツキが十分に小さくなり得る。
従って、図12の時刻t3以降の熱圧着工程中において維持される(拘束され続ける)上側、下側積層体Lu,Ldの寸法のバラツキが小さくなる。この結果、熱圧着工程終了後の(従って、圧着後の)上側、下側積層体Lu,Ldの寸法バラツキ(従って、焼成後の上記製品の寸法バラツキ)が小さくなる。
ここで、上記非拘束中維持圧力Pkについて付言しておく。図13は、図2に示した被加圧加熱物Hが上下方向に挟まれる圧力と、被加圧加熱物Hの上面−下面間の見かけ熱伝導率との関係を示したグラフである。図13において、σ0.02は、セラミックグリーンシートS1〜S3の0.02%耐力を表す。なお、図13における見かけ熱伝導率には、測定誤差が含まれている。
図13から理解できるように、圧力がセラミックグリーンシートS1〜S3の0.02%耐力に相当する圧力(この例では、0.33MPa)未満である場合、見かけ熱伝導率の値が非常に不安定となっている。これは、圧力が非常に低いことから、上側、下側積層体Lu,Ldの内部において熱伝導率が非常に小さい空気層が残存していることに起因すると考えられる。
従って、圧力がセラミックグリーンシートS1〜S3の0.02%耐力に相当する圧力未満であると、上側、下側積層体Lu,Ldの内部において熱が均一に伝導し得ず、この結果、上側、下側積層体Lu,Ldの内部において温度の不均一の程度(従って、収縮の程度)が局所的に増大する可能性が大きくなる。
このことは、熱圧着工程終了後の(従って、圧着後の)上側、下側積層体Lu,Ldの寸法バラツキ(従って、焼成後の上記製品の寸法バラツキ)の増大に繋がる。以上のことから、非拘束中維持圧力Pkは、セラミックグリーンシートS1〜S3の0.02%耐力に相当する圧力以上であることが好ましい。
図14は、図12に示した圧力変化パターンで圧力を変化させた場合における、非拘束中維持圧力Pkと、上述した定義に基づく焼成後の「基板形状バラツキ」との関係を示したグラフである。図14において、σ0.1は、セラミックグリーンシートS1〜S3の0.1%耐力を表す。
図14から理解できるように、非拘束中維持圧力PkがセラミックグリーンシートS1〜S3の0.1%耐力に相当する圧力(この例では、1.65MPa)よりも小さい「1.0MPa」より大きいと、「基板形状バラツキ」が大きくなる傾向がある。
従って、非拘束中維持圧力Pkは、セラミックグリーンシートS1〜S3の0.1%耐力に相当する圧力より小さい「1.0MPa」以下であることが好ましい。即ち、この例の場合、非拘束中維持圧力Pkは、セラミックグリーンシートS1〜S3の0.02%耐力に相当する圧力(この例では、0.33MPa)以上であって、セラミックグリーンシートS1〜S3の0.1%耐力に相当する圧力(この例では、1.65MPa)より小さい「1.0MPa」以下であることが好ましい。
図15は、図20に示した従来の熱圧着装置Bにより上記被加圧加熱物H(従って、上側、下側積層体Lu,Ld)の加圧・加熱を行った場合と、第2実施形態に係る上記熱圧着装置A2により同被加圧加熱物Hの加圧・加熱を行った場合とで、焼成後のセラミック積層体Lu1,Ld1(以下、「上側基板Lu1、下側基板Ld1」とも称呼する)の寸法バラツキについての比較を行った実験結果を示している。
図15中の「基板形状バラツキ」、「キャビティ幅バラツキ」、「反りのバラツキ」の定義はそれぞれ、図8のものと同一である。図15では、第2実施形態として、非拘束中維持圧力Pkを0.2MPaに設定し、Pk維持終了時(図12の時刻t2bに相当する。)を所定の或る時点としたもの(以下、「実施例1」と云う。)、非拘束中維持圧力Pkを0.7MPaに設定し、Pk維持終了時を実施例1と同一の時点としたもの(以下、「実施例2」と云う。)、及び、非拘束中維持圧力Pkを0.7MPaに設定し、Pk維持終了時を実施例1,2に比して若干遅らせたもの(以下、「実施例3」と云う。)が示されている。
なお、図15中、「Pk維持終了時上下積層体温度差」とは、Pk維持終了時での上側、下側積層体Lu,Ldの温度差である。「Pk維持終了時温度上昇勾配」とは、Pk維持終了時での上側積層体Luの温度の上昇勾配である。「Pk維持終了時積層体温度」とは、Pk維持終了時での上側積層体Luの温度である。また、「バインダTg温度」とは、上述した接着層g1,g2(図5を参照)内のバインダ成分のガラス転移点温度である。
図15に示すように、所定時間に亘って圧力が非拘束中維持圧力Pkに維持される実施例1〜3では、従来例に比して、「基板形状バラツキ」、「キャビティ幅バラツキ」、「反りのバラツキ」の全ての値が小さくなっていることが理解できる。これは、上述したように、第2実施形態では、圧力が拘束圧力Prに達する時点(図12における時刻t3)が上記所定時間だけ遅れることにより、圧力が拘束圧力Prに達する時点での上側、下側積層体Lu,Ldの温度差が従来例に比して小さくなっていることに起因すると考えられる。
また、実施例1では、実施例2に比して、「基板形状バラツキ」、「キャビティ幅バラツキ」、「反りのバラツキ」の全ての値が大きくなっている。これは、実施例1では、非拘束中維持圧力Pkが上記セラミックグリーンシートS1〜S3の0.02%耐力に相当する圧力(0.33MPa)よりも小さいから上述した「上側、下側積層体Lu,Ld内部での空気層の残存」が発生し、上側、下側積層体Lu,Ld内部にて温度の不均一の程度が局所的に増大することに起因すると考えられる。
図16は、実施例2での上側、下側積層体Lu,Ldの温度差、及び圧力の変化を示したタイムチャートである。図17は、実施例2での上側積層体Luの温度上昇勾配、及び圧力の変化を示したタイムチャートである。図16,17における各時刻はそれぞれ、図12におけるものに対応している。
図15の実験結果、及び図16から理解できるように、従来例に比して基板Lu1,Ld1の寸法バラツキを十分に小さくするためには、Pk維持終了時上下温度差は「3.0℃以下」(より好ましくは、「2.5℃以下」)であることが好ましいと考えられる。即ち、上記所定時間(図12における時間(t2b−t2a))は、上側、下側積層体Lu,Ldの温度差が「3.0℃以下」となるまでに要する時間以上の時間に設定されることが好ましいと考えられる。
また、図15の実験結果、及び図17から理解できるように、従来例に比して基板Lu1,Ld1の寸法バラツキを十分に小さくするためには、Pk維持終了時温度上昇勾配を「0.5℃/sec以下」としてもよいことが判る。即ち、上記所定時間(図12における時間(t2b−t2a))は、上側積層体Luの温度上昇勾配が「0.5℃/sec以下」となるまでに要する時間以上の時間に設定されることが好ましいと考えられる。これは、上側、下側積層体Lu,Ldの温度差が時刻t2aの直後以降において次第に減少していくにつれて(図16を参照)、上側積層体Luの温度上昇勾配も同様に減少していくことに基づく(図17を参照)。
更には、実施例3では、実施例2に比して、「基板形状バラツキ」、「キャビティ幅バラツキ」、「反りのバラツキ」の全ての値が大きくなっている。この結果から、上記所定時間(図12における時間(t2b−t2a))を長めに設定することでPk維持終了時積層体温度がバインダTg温度を超えると、基板Lu1,Ld1の寸法バラツキが大きくなる傾向があることが判る。
図18は、Pk維持終了時積層体温度からバインダTg温度を減じた値と、上述した定義に基づく「キャビティ幅バラツキ」との関係を示したグラフである。図18からも、上記所定時間(図12における時間(t2b−t2a))を長めに設定することでPk維持終了時積層体温度がバインダTg温度を超えると、「キャビティ幅バラツキ」が大きくなることが判る。
図15の実験結果、及び図18から理解できるように、従来例に比して基板Lu1,Ld1の寸法バラツキを十分に小さくするためには、Pk維持終了時積層体温度はバインダTg温度以下であることが好ましいと考えられる。即ち、上記所定時間(図12における時間(t2b−t2a))は、上側積層体Luの温度がバインダTg温度に達するまでに要する時間を超えない時間に設定されることが好ましいと考えられる。
以上、説明したように、本発明の第2実施形態に係る熱圧着装置A2では、上記所定時間(図12において時間(t2b−t2a))に亘って圧力が拘束圧力Prよりも低い非拘束中維持圧力Pkに維持される。これにより、圧力が拘束圧力Prに達する時点(図12における時刻t3)が上記所定時間だけ遅れることにより、圧力が拘束圧力Prに達する時点での上側、下側積層体Lu,Ldの温度差が従来例に比して小さくなる。
この結果、上記第1実施形態と同様、圧力が拘束圧力Prに達する時点以降の熱圧着工程中において維持される(拘束され続ける)上側、下側積層体Lu,Ldの寸法のバラツキが小さくなる。この結果、熱圧着工程終了後の(従って、圧着後の)上側、下側積層体Lu,Ldの寸法バラツキ(従って、焼成後の上記製品の寸法バラツキ)が小さくなる。
なお、本発明は上記実施形態に限らず、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記第1実施形態において第2実施形態の圧力変化パターンを採用してもよい。この場合、上記第1実施形態に係る熱圧着装置A1において、駆動制御装置E1を第2実施形態用の駆動制御装置E2に変更すればよい。
また、上記第1、第2実施形態においては、層状に配置された2セットのセラミックグリーンシート積層体(上側、下側積層体Lu,Ld)を内蔵した被加圧加熱物Hを加圧・加熱しているが、層状に配置された3セット以上のセラミックグリーンシート積層体を内蔵した被加圧加熱物Hを加圧・加熱してもよい。
また、上記第1実施形態(図1を参照)においては、上側熱板24の下に弾性体25を配置する際、図19に示す構造を採用することが好ましい。即ち、上側熱板24の下面の外周部に、同外周部に対応する外形状を有するSK焼入れ鋼、或いはSUS440焼入れ鋼等の高剛性材料からなる枠部材27が固設される。枠部材27の下方部分の周囲には、内方へ向けて水平方向に突出したフランジ部27aが設けられていて、このフランジ部27aの上面に弾性体25が置かれている。弾性体25の下面にはPETフィルム28が貼り付けられていることが好ましい。
これにより、1.8〜7.5(W/m・K)と熱伝導率が高く、且つ、加圧時に破断し易い針入度硬度が30〜70(1/10mm)の弾性体を使用することが可能になる。なお、「針入度」とは、JIS K2207で規格されている硬度評価方法であって、その値が大きいほど柔らかいことを意味する。
これにより、加圧中において弾性体25が被加圧加熱物Hから圧力を受けた際に、弾性体25の上面が上側熱板24の下面に対して自由に相対移動可能となり、この結果、加圧による弾性体25の破壊等の不具合の発生を抑制することが可能となる。
なお、上記フランジ部27aの突出長さL(図19を参照)は、同フランジ部27aの厚さt(図19を参照)の2倍以下であることが好ましい。例えば、フランジ部27aの厚さtが3mmである場合、フランジ部27aの突出長さLは6mm以下であることが好ましい。これにより、フランジ部27aの割れ等の不具合の発生を抑制することができる。
また、図19に示した構造と同様の構造は、上記第1実施形態(図1を参照)における下側熱板14の上に弾性体15を配置する際、或いは、上記第2実施形態(図11を参照)における下側熱板130の上に弾性体140を配置する際にも使用されることが好適である。
本発明の第1実施形態に係る熱圧着装置の概略構成図である。図1(a)は、被加圧加熱物がセットされた状態を示した図であり、図1(b)は、セットされた被加圧加熱物が加圧・加熱されている状態を示した図である。 図2(a)は、図1に示した被加圧加熱物の分解斜視図であり、図2(b)は、セットされた状態にある同被加圧加熱物の斜視図である。 図3(a)は、図2に示した上側、下側積層体の分解斜視図であり、図3(b)は、積層された状態の同上側、下側積層体の斜視図である。 図3に示した上側、下側積層体の平面図(上面図)である。 図4における5−5線に沿った切断面の拡大断面図である。 図3に示した上側、下側積層体の各温度の計測方法の例を示した図である。 図1に示した熱圧着装置を用いて被加圧加熱物を加圧・加熱する場合における、上側積層体の温度、下側積層体の温度、及び圧力の変化の例を示したタイムチャートである。 被加圧加熱物(上側、下側積層体)の加圧・加熱を図20に示した従来の熱圧着装置を用いて行った場合と、図1に示した熱圧着装置を用いて行った場合とで、焼成後のセラミック積層体の寸法バラツキについての比較を行った実験結果を示した図である。 基板形状バラツキを測定するために形状測定用孔が設けられた上側、下側積層体の平面図である。 図9に示した形状測定用孔が設けられた上側、下側積層体を熱圧着、焼成して得られる上側、下側基板の平面図である。 本発明の第2実施形態に係る熱圧着装置の概略構成図である。図11(a)は、被加圧加熱物がセットされた状態を示した図であり、図11(b)は、セットされた被加圧加熱物が加圧・加熱されている状態を示した図である。 図11に示した熱圧着装置を用いて被加圧加熱物を加圧・加熱する場合における、上側積層体の温度、下側積層体の温度、及び圧力の変化の例を示したタイムチャートである。 被加圧加熱物が上下方向に挟まれる圧力と、被加圧加熱物の上面−下面間の見かけ熱伝導率との関係を示したグラフである。 図12に示した圧力変化パターンで圧力を変化させた場合における、非拘束中維持圧力と、キャビティ幅バラツキとの関係を示したグラフである。 被加圧加熱物(上側、下側積層体)の加圧・加熱を図20に示した従来の熱圧着装置を用いて行った場合と、図11に示した熱圧着装置を用いて行った場合とで、焼成後のセラミック積層体の寸法バラツキについての比較を行った実験結果を示した図である。 上側、下側積層体の温度差、及び圧力の変化を示したタイムチャートである。 上側積層体の温度上昇勾配、及び圧力の変化を示したタイムチャートである。 Pk維持終了時積層体温度からバインダTg温度(ガラス転移点温度)を減じた値と、キャビティ幅バラツキとの関係を示したグラフである。 上側熱板の下に弾性体を配置する際における好ましい構造の概略構成図である。 従来の熱圧着装置の概略構成図である。図20(a)は、被加圧加熱物がセットされた状態を示した図であり、図20(b)は、セットされた被加圧加熱物が加圧・加熱されている状態を示した図である。 図20に示した従来の熱圧着装置を用いて被加圧加熱物を加圧・加熱する場合における、上側積層体の温度、下側積層体の温度、及び圧力の変化の例を示したタイムチャートである。
符号の説明
10…下側加圧部材、14…下側熱板、15…弾性体、20…上側加圧部材、23…弾性体、24…上側熱板、25…弾性体、100…下側加圧部材、130…下側熱板、140…弾性体、200…上側加圧部材、230…上側熱板、H…被加圧加熱物、Lu…上側積層体、Ld…下側積層体、S1〜S3…セラミックグリーンシート、g1,g2…接着層

Claims (2)

  1. 2枚以上のセラミックグリーンシートが重ねられて1セットを構成する圧着前のセラミックグリーンシート積層体が層状に2セット配置されてなる被加圧加熱物を加圧・加熱して2セットの圧着後のセラミックグリーンシート積層体を製造する熱圧着装置であって、
    上側加圧部材を加熱するための上側ヒータを内蔵した上側加圧部材と、
    下側加圧部材を加熱するための下側ヒータを内蔵した下側加圧部材と、
    を備え、
    前記上側ヒータにより加熱された前記上側加圧部材と前記下側ヒータにより加熱された前記下側加圧部材との間において前記セラミックグリーンシート積層体の積層方向が上下方向に一致するように配置された前記被加圧加熱物を同上側加圧部材と同下側加圧部材とで上下方向に挿んで加圧・加熱する熱圧着装置において、
    加圧前において、前記上側ヒータにより加熱された前記上側加圧部材と前記下側ヒータにより加熱された前記下側加圧部材との間に配置された前記被加圧加熱物を同上側加圧部材と同下側加圧部材の何れにも接触しない状態に維持する先行加熱防止機構を備えたことを特徴とする熱圧着装置。
  2. 請求項1に記載の熱圧着装置において、
    前記先行加熱防止機構は、
    前記上側加圧部材と前記下側加圧部材との間に前記被加圧加熱物を配置するためのテーブルと、
    前記テーブルの上下方向位置を変動可能とするとともに、加圧前において同テーブルの上下方向位置を同テーブルに配置された前記被加圧加熱物が前記上側加圧部材と前記下側加圧部材の何れにも接触しない所定の位置に調整する弾性付勢力を発生する弾性付勢力発生部材を含んだテーブル上下方向位置調整機構と、
    を備えることを特徴とする熱圧着装置。
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