JP4435934B2 - 多層チューブ及び多層チューブからなる医療用具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層チューブ及び多層チューブからなる医療用具に関する。より詳しくは、柔軟性、透明性、耐キンク性、耐鉗子性に優れ、さらに耐高圧蒸気滅菌性を有し、他の異径のチューブ、コネクター、ジョイント類等との接続性に優れた医療用多層チューブに関する。
【0002】
本発明の多層チューブは、例えば血液回路、血液バッグ、薬液バッグ、輸血・輸液セット、カテーテル等の医療用具の構成部材として好適に使用される。
【0003】
【従来の技術】
従来より、ポリ塩化ビニルは、産業用途、一般家庭用途のみならず、医療・福祉用途に広く使用されており、特にディスポーザブル医療用具の大部分がポリ塩化ビニルを用いて製造されている。しかしながら、軟質ポリ塩化ビニルには、ジオクチルフタレート(DOP)等の可塑剤が比較的多量に添加されており、血液または輸液剤への可塑剤の溶出という問題が医療用具の安全性の面から指摘されている。
【0004】
一方、感染防止の観点から、医療用具のディスポーザブル化が進められており、使用後にこれらの医療用具を焼却処分しなければならないことが法的に義務づけられている。ポリ塩化ビニルは、充分な酸素を供給し、かつ850〜900℃程度の温度で燃やすと、最終的に二酸化炭素、水及び塩化水素になり、ダイオキシン等の有毒塩素系物質をほとんど発生しなくなるとされているが、現実には、高温に耐え得る焼却炉の不足、焼却能力不足の小型焼却炉の存在、ダイオキシン処理装置の不足等の理由から、ダイオキシンや他の有毒塩素系物質による環境汚染の問題がしばしば生じている。
【0005】
このため、最近では医療用具、産業用途および一般家庭用途の素材として軟質塩化ビニルを他の材料へ置換することが検討されている。
【0006】
ポリ塩化ビニルを含まない医療用チューブの材料として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVAC)、ポリエチルメタアクリレート(PEMA)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレン共重合体の水素添加物(スチレン系熱可塑性エラストマー)等が検討されている。
【0007】
例えば、柔軟性に優れ、医療用に適した成形物を与える樹脂組成物としては、特開平4−158868号公報(文献1)、特開平4−159344号公報(文献2)、特開平8−131537号公報(文献3)に、オレフィン系樹脂とスチレン−ブタジエンブロック共重合体の水添物(スチレン系熱可塑性エラストマー)およびスチレン−イソプレンブロック共重合体の水添物からなる樹脂組成物(スチレン系熱可塑性エラストマー)が提案されている。
【0008】
また、特開平9−103493号公報(文献4)、特開平9−123314号公報(文献5)には、基材層と接着層からなり、該接着層はオートクレーブ滅菌温度(121℃)以上で寸法的に安定ではなく、121℃のオートクレーブ滅菌の間に他の径の異なるチューブとの接続圧力下で流れる傾向を有する材料より構成した多層チューブが記載されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、基本的に、(1)前記PE、EVAC、PEMAからなるチューブは、柔軟性はあるが単一の組成ではキンク(チューブが折れたり捩じれたりして、チューブ内面同士が密着した状態となることを云う。)しやすいという課題がある。
【0010】
(2)また前記スチレン系熱可塑性エラストマーの単一組成ないしこれを60質量%以上含む樹脂組成物は、柔軟性はあるが高圧蒸気滅菌(オートクレーブ滅菌)すると表面に粘着性を帯び、血液との接触面に使用するには適さないものであり、また、鉗子などにクランプした場合チューブ内面同士が粘着して、クランプを開放した際のチューブの復元性が悪くなると云う問題がある。
【0011】
(3)さらに前記PPの単一組成及びこれを40質量%以上含む樹脂組成物からなるチューブは、剛性が高すぎて柔軟性に乏しくキンクしやすいという課題がある。
【0012】
また、上記の文献1〜文献3に記載された樹脂組成物は、柔軟性に優れた成形物を与え、しかも成形物を焼却してもダイオキシンのような有毒ガスの発生を伴わないという特徴を有している。しかしながら、かかる樹脂組成物から得られる単層チューブは、まず▲1▼柔軟性に重点を置いた場合、スチレン系熱可塑性エラストマーの割合が多くなり、オートクレーブ滅菌後のチューブの断面形状の変形やチューブ同士の癒着が起きるなどの耐熱性の不足、または鉗子で閉止後、鉗子を開放した際のチューブの復元性の不足と云う問題が無視できなくなり、一方、▲2▼耐熱性、耐鉗子性に重点を置いた場合、スチレン系熱可塑性エラストマーの割合が少なくなり、柔軟性が不足するなどの医療用チューブとして十分満足できるものではなく、この点において改良の余地が認められる。
【0013】
多層チューブにおいては、接続の確実性という点を考慮すると熱溶着あるいは溶剤接着であることが最も好ましいが、文献4ないし文献5に記載の多層チューブは、接着層がオートクレーブ滅菌温度(121℃)以上で寸法的に安定ではなく、121℃のオートクレーブ滅菌の間に他の径の異なるチューブとの接続圧力下で流れる傾向を有する材料より構成し、チューブ間の「プレス嵌め」により接続している。したがって粘着性により密着しているため、当該嵌合部分は、小さな力で外れやすい。また、オートクレーブ滅菌の熱により粘着力が発生するため、滅菌時、またはそれ以前の加工段階において嵌合部が外れる恐れがあり、医療用具を目的とした生産には適していないものと考える。
【0014】
以上のごとく、高圧蒸気滅菌可能な医療用チューブとして要求される性能としては、以下の条件を具備することが好ましい。
【0015】
すなわち、(a)チューブを折り曲げた時にキンクや曲りぐせが発生せず適度の柔軟性を有すること、(b)高圧蒸気滅菌しても表面に粘着性を帯びず、形状、寸法等の変化がないこと、及び(c)チューブを他の径の異なるチューブや射出成形部品と接着する時に熱溶着や溶剤接着等が可能であること、である。
【0016】
かくして本発明の目的は、透明性、柔軟性、耐キンク性、耐鉗子性、耐熱性に優れ、可塑剤の溶出がなく、しかも、焼却した際に有毒ガスを発生させることのない多層チューブ及び多層チューブからなる医療用具を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記観点から鋭意検討した結果、ポリプロピレン系樹脂と、ビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックとイソプレン及び/又はブタジエン重合体ブロックとの水添ブロック共重合体との樹脂組成物、及びビニル芳香族化合物とブタジエンとの共重合体の水添物から選ばれる少なくとも1種の共重合体からなる樹脂組成物から、ポリプロピレン系樹脂の含有量を特定の範囲に変化せしめて基材層及び接着層を形成し、多層チューブとすることにより、及び当該多層チューブから医療用具を形成することにより、上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0018】
すなわち、本発明に従えば、まず基本的に以下の発明が提供される。
〔1〕 少なくとも基材層(A)と接着層(B)を含む多層チューブであって、両層とも、
ポリプロピレン系樹脂(a)と、
一個以上のビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックと、一個以上のイソプレン及び/又はブタジエンの重合体ブロックからなる共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体(b1)との樹脂組成物、またはビニル芳香族化合物及びブタジエンの共重合体を水素添加して得られる水添共重合体(b2)との樹脂組成物からなり、
【0019】
上記基材層(A)は、ポリプロピレン系樹脂(a)20〜30質量%と、水添ブロック共重合体(b1)または水添共重合体(b2)80〜70質量%との樹脂組成物からなる層であり、
【0020】
上記接着層(B)は、ポリプロピレン系樹脂(a)50〜70質量%と、水添ブロック共重合体(b1)または水添共重合体(b2)50〜30質量%の樹脂組成物からなる層であることを特徴とする多層チューブ(以下、「本基本発明」と称することがある。)。
【0021】
〔2〕 上記多層チューブの接着層(B)を他の径の異なるチューブまたは射出成形部品に接続してなることを特徴とする医療用具。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下本基本発明を詳細に説明する。
本基本発明の多層チューブを構成するポリプロピレン系樹脂(a)としては、公知のものを使用することができ、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンのいずれであってもよい。また、ポリプロピレン系樹脂(a)は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。ポリプロピレン系樹脂(a)の溶融粘度は、基本的にASTMD−1238に従って230℃、荷重2160gにおいて測定したときのメルトフローレート(MFR)が0.1〜500の範囲内にあるものが好ましく、0.1〜200の範囲内にあるものがより好ましい。
【0023】
かかるポリプロピレン系樹脂において、基材層(A)に使用するポリプロピレンとしては、曲げ弾性率が200〜400MPa(結晶化度30〜40%、分子量50,000〜200,000)のものが好ましく、他方接着層(B)に使用するポリプロピレンは、曲げ弾性率が500〜900MPa(結晶化度50%以上、分子量100,000〜500,000)のものを使用するのが好ましい。
【0024】
基材層(A)に配合するポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率を上記の範囲のものとすることにより、チューブに柔軟性と耐キンク性を付与することができる。曲げ弾性率が上記未満では、柔らかすぎてこしがなくなり、上記を超えるとチューブを折り曲げた時にキンク及び曲りぐせが生じやすいので好ましくない。
【0025】
また、接着層(B)に配合するポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率を上記範囲とすることにより、接着層(B)にこしをもたせて高圧蒸気滅菌時に接着層が流動するのを防止することができる。
【0026】
本基本発明で使用する水添ブロック共重合体(b1)は、一個以上のビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックと、一個以上のイソプレン及び/又はブタジエンの重合体ブロックからなる共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体であるが、好ましくはビニル芳香族化合物がスチレンであり、スチレン−イソプレン−スチレンの共重合体の水素添加物、スチレン−ブタジエン−スチレンの共重合体の水素添加物、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンの共重合体の水素添加物、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンの共重合体の水素添加物等であるのが望ましい。なお、(b1)におけるビニル芳香族化合物としては、スチレン以外にも後記するものが使用可能である。
【0027】
また水添共重合体(b2)は、ビニル芳香族化合物及びブタジエンの共重合体を水素添加して得られる水添共重合体であるが、好ましくはビニル芳香族化合物がスチレンである水添スチレン・ブタジエン・ラバーが好ましい。特に、ポリプロピレン中に超微分散しうるタイプを使用するのが望ましい。
【0028】
本基本発明において、上記基材層(A)は、ポリプロピレン系樹脂(a)20〜30質量%と、水添ブロック共重合体(b1)または水添共重合体(b2)80〜70質量%との樹脂組成物からなる層である。
【0029】
この基材層を有することにより、本基本発明の多層チューブに柔軟性と耐キンク性を付与することができる。すなわち水添ブロック共重合体(b1)または水添共重合体(b2)が80質量%を越えると柔らかすぎてこしがなくなり、またこれが70質量%未満では、チューブを折り曲げた時にキンク及び曲りぐせが生じやすいので好ましくない。
【0030】
また本基本発明において、上記接着層(B)は、ポリプロピレン系樹脂(a)50〜70質量%と、水添ブロック共重合体(b1)または水添共重合体(b2)50〜30質量%の樹脂組成物からなる層である。
【0031】
この接着層(B)を有することにより、多層チューブは、溶剤接着性を確保し、高圧蒸気滅菌時に表面が粘着性を帯びるのを防止することができる。すなわち水添ブロック共重合体(b1)または水添共重合体(b2)が50質量%を越えると高圧蒸気滅菌時に表面が粘着性を帯びてチューブをつぶした時の復元性が損なわれ、またこれが30質量%未満では、他の径の異なるチューブと接続する時に溶剤接着が困難となるため好ましくない。溶剤に対する感受性は、ブタジエン・ラバー等の含有量に依存しているためである。
【0032】
以下、添付図面を参照しながら本基本発明について説明する。
図1は、本基本発明の多層チューブの横断面図であり、図2及び図3は、本基本発明の多層チューブを、他の径の異なるチューブや射出成形部品等の接続部材に接続した医療用具の一部拡大縦断面図である。なお、射出成形部品とは、本発明の多層チューブと接続が可能な管状部材を言い、例えばコネクターやジョイント等が含まれる。
【0033】
図1 (1) において、多層チューブ1は、基材層(A)により内層3を形成し、接着層(B)は外層5を形成した2層チューブであり、図1 (2) は、基材層(A)により外層5を形成し、接着層(B)は、内層3を形成した2層チューブである。さらに図1 (3) は、基材層(A)により中間層7を形成し、接着層(B)は、内層3と外層5を形成した3層チューブである。
【0034】
2層チューブの場合、基材層(A)と接着層(B)の両者の厚さ比率は、基材層(A)/接着層(B)=940/60〜980/20であることが好ましい。これは、基材層(A)を接着層(B)に対して充分厚く構成することにより、チューブ全体に柔軟性と耐キンク性を付与するためである。すなわち、基材層(A)が940未満(接着層(B)が60を越える場合)では、チューブの肉厚が薄くなりキンクが発生しやすいので好ましくない。また基材層(A)が980を越える(接着層(B)が20未満の場合)と、あまりに肉厚となり剛性が大きくなりすぎてチューブの柔軟性が低下するので好ましくなく、さらに接着層(B)が薄くなりすぎて溶剤接着または熱溶着に好適に適用できなくなる
【0035】
3層チューブの場合、基材層(A)と二つの接着層(B)との三者の厚さの比率は、接着層(B)/基材層(A)/接着層(B)=20〜30/940〜960/20〜30であることが好ましい。基材層(A)が940未満(接着層(B)が30を越える場合)では、チューブの肉厚が薄くなりキンクが発生しやすいので好ましくない。また接着層(B)が20未満(基材層(A)が960を越える場合)は、接着層(B)が薄くなりすぎて溶剤接着または熱溶着に適用できなくなるので好ましくない。
【0036】
図2は、図1 (1) の2層チューブと他の径の異なる異径のチューブや射出成形部品等の接続部材50と接続する状態を示しているが、外層5を形成する接着層(B)と接続部材50の内壁面55とを接続することができる。ここで「接続」とは、溶剤による接続や熱溶着による接続を意味する。熱溶着による接着とは、電熱等による熱溶着、高周波溶着、熱風加熱溶着等が適用できるがこれに限られるものでなく、他の熱溶着機を用いてもよい。図3は、同様にして図1 (2) の2層チューブと接続部材50との接続状態であり、内層3を形成する接着層(B)と接続部材50の外壁面57とを同様に溶剤により接続するかまたは熱溶着により接続している。
【0037】
以上のごとく、本発明の多層チューブは、これを構成部材として他の異径のチューブや射出成形部品に接続することにより血液回路、血液バッグ、カテーテル等の医療用具を好適に形成することができる。
【0038】
本基本発明の基本的な形態は、以上の〔1〕、〔2〕のとおりであるが、本発明に従えば、以下のような、さらに発展した形態の発明〔3〕、〔4〕が提供される。すなわち、
【0039】
〔3〕2層以上の層から構成される多層チューブであって、当該層の少なくとも1層は、基材層を構成する層であり、
ポリプロピレン系樹脂(a)5〜40質量%と、
1個以上のビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックと1個以上のイソプレン重合体ブロックからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体(b)、1個以上のビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックと1個以上のイソプレン及びブタジエンの重合体ブロックからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体(c)、1個以上のビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックと1個以上のブタジエン重合体ブロックからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体(d)、並びにビニル芳香族化合物及びブタジエンの共重合体を水素添加して得られる水添共重合体(e)からなる群から選ばれる少なくとも1種の共重合体95〜60質量%との樹脂組成物からなる層(I)であり、
【0040】
他層は、接着層を構成する層であり、
ポリプロピレン系樹脂(a)45〜100質量%と、
1個以上のビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックと1個以上のイソプレン重合体ブロックからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体(b)、1個以上のビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックと1個以上のイソプレン及びブタジエンの重合体ブロックからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体(c)、1個以上のビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックと1個以上のブタジエン重合体ブロックからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体(d)、並びにビニル芳香族化合物及びブタジエンの共重合体を水素添加して得られる水添共重合体(e)からなる群から選ばれる少なくとも1種の共重合体55〜0質量%の樹脂組成物からなる層(II)であることを特徴とする多層チューブ(以下、単に「本発明」と称することがある。)。
【0041】
〔4〕 上記記載の多層チューブの接続層を、他の異径のチューブ、コネクター又はジョイント類と接続してなることを特徴とする医療用具。
【0042】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明の多層チューブを構成するポリプロピレン樹脂(a)としては、すでに述べたものが好適に使用される。
【0043】
また本発明の多層チューブを構成し、当該ポリプロピレン系樹脂と組み合わされて樹脂組成物を形成する水添ブロック共重合体や水添共重合体としては、すでに本基本発明における(b1)や(b2)として述べたとおりであるが、これをより詳しく述べると、水添ブロック共重合体(b)は、1個以上のビニル芳香族からなる重合体ブロック(以下、重合体ブロックAという)と1個以上のイソプレン重合体ブロック(以下、重合体ブロックBという)からなる共重合体ブロックを水素添加して得られるブロック共重合体である。水添ブロック共重合体(c)は、1個以上の重合体ブロックAと1個以上のイソプレン及びブタジエン重合体ブロック(以下、重合体ブロックCという)からなる共重合体ブロックを水素添加して得られるブロック共重合体である。水添ブロック共重合体(d)は、1個以上の重合体ブロックAと1個以上のブタジエン重合体ブロック(以下、重合体ブロックDという)からなる共重合体ブロックを水素添加して得られるブロック共重合体である。
【0044】
また、ビニル芳香族化合物及びブタジエンの共重合体を水素添加して得られる水添共重合体(e)をポリプロピレン系樹脂と組み合わせて樹脂組成物としてもよく、この場合は、すでに述べたように水添共重合体(e)は、ポリプロピレン系樹脂(a)中に超微分散するタイプを使用するのが好ましい。
【0045】
本発明の多層チューブは、2層以上の層から構成され、当該層の少なくとも1層は、基材層を形成する層であり、
ポリプロピレン系樹脂(a)が5〜40質量%、好ましくは15〜35質量%、さらに好ましくは、20〜30質量%と、
水添ブロック共重合体(b)、(c)、(d)又は水添共重合体(e)が95〜60質量%、好ましくは85〜65質量%、さらに好ましくは、80〜70質量%との樹脂組成物からなるものである。この樹脂組成物からなる基材層を形成する層を層(I)と称する。
【0046】
また他層は、接着層を形成する層であり、
ポリプロピレン系樹脂(a)が45〜100質量%、好ましくは50〜80質量%、さらには50〜70質量%と、
水添ブロック共重合体(b)、(c)、(d)又は水添共重合体(e)が55〜0質量%、好ましくは50〜20質量%、さらには50〜30質量%との樹脂組成物からなるものである。この樹脂組成物からなる接着層を形成する層を層(II)と称する。
【0047】
特に基材層を形成する層(I)において、柔軟性、耐鉗子性、耐熱性の面から、ポリプロピレン系樹脂(a)と水添ブロック共重合体等(b)〜(e)の配合割合は、質量比で35/65〜15/85とするのが好ましく、30/70〜20/80とするとさらに好ましい。ポリプロピレン系樹脂(a)の割合がこれよりあまり多い場合には、樹脂組成物の弾性率が高く、チューブの柔軟性が低下し、一方、ポリプロピレン系樹脂(a)の割合があまり少ないと、医療用チューブ鉗子でチューブを15時間閉止後、鉗子を外しても3秒以下でチューブ内側が貫通しにくく、また、オートクレーブ滅菌(121℃、20分)などの加熱処理実施後、チューブ断面形状が変形しやすくなるなど、耐鉗子性、耐熱性に劣りやすい。
【0048】
本発明の多層チューブは、すでに本基本発明について述べたものと同様にして2層又は3層のチューブとして使用するのが好ましい。
【0049】
多層チューブが2層チューブの場合は、図1 (1) や図1 (2) に示した構成図において上記層(I)が基材層(A)に、層(II)が接着層(B)に対応するので、層(I)が内層3の場合は、層(II)が外層5に(図1 (1) )、層(I)が外層5の場合は、層(II)が内層3となる(図1 (2) )。
【0050】
また、多層チューブが3層チューブで、中間層7を基材層である層(I)で形成し、さらに好ましくは内層3及び外層5を層(II)で形成する場合は、図1(3)に対応する態様であって、この中間層7の厚みを内層3や外層5に比較して厚くすると柔軟性に優れるものとなりより好ましい。この場合、外層5の層(II)は、ポリプロピレン系樹脂(a)と水添ブロック共重合体等(b)〜(e)の比が質量比で45〜60/55〜40となるように構成し、内層3の層(II)は、ポリプロピレン系樹脂(a)と水添ブロック共重合体等(b)〜(e)の比が質量比で60〜100/40〜0となるように構成するとより好ましい。
【0051】
本発明においては、水添ブロック共重合体(b)〜(d)は、より好ましくは、次のような水添ブロック共重合体であることが望ましい。すなわち、
【0052】
水添ブロック共重合体(b)において、重合体ブロックAの含有量は、10〜40質量%とする。重合体ブロックAの含有量があまり少ないと、機械的強度が十分でないことがあり、またあまり多いと、溶融粘度が高くなり、ポリプロピレン系樹脂(a)との混合性が悪化して、成形加工上の制約を受けることがある。また、水添ブロック共重合体(b)において、1,2−結合と3,4−結合の含有量(以下、これをビニル結合含有量と称することがある。)は、10〜75質量%とするのが好ましい。あまり少ないと、透明性の点で不十分であり、またあまり多いと、ガラス転移温度が高くなりすぎ、樹脂組成物から得られる成形物の柔軟性が損なわれる傾向がある。なお、水添ブロック共重合体(b)においては、炭素−炭素二重結合の水素添加率があまり小さいと耐候性及び耐熱性が劣る傾向があるので、70%以上が水素添加されているものが好ましい。ここで透明性について言及したのは、本発明の多層チューブを医療用具に使用する場合、透明性に優れていることは、きわめて望ましいことだからである。
【0053】
水添ブロック共重合体(c)は、上記と同じ理由で、1個以上のビニル芳香族化合物10〜40質量%からなる重合体ブロックAと、イソプレン/ブタジエンを重量比で5/95〜95/5の割合からなる共重合体で、1,2−結合と3,4−結合の含有量が20〜85%で、炭素−炭素二重結合の70%以上が水素添加されたイソプレン・ブタジエン重合体ブロックを1個以上有する水添ブロック共重合体を使用するのが好ましい。
【0054】
また水添ブロック共重合体(d)も、同様にして、1個以上のビニル芳香族化合物10〜40質量%からなる重合体ブロックと、1,2−結合の含有量が30%以上で、炭素−炭素二重結合の70%以上が水素添加されたブタジエン重合体ブロックを1個以上有する水添ブロック共重合体を使用するのが好ましい。
【0055】
本発明の水添ブロック共重合体や水添共重合体におけるビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン等が挙げられるが、これらの中でも特にスチレンが好ましい。
【0056】
なお、このビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックである重合体ブロックAの数平均分子量は、特に制限されないが、2,500〜20,000の範囲内であるのが好ましい。
【0057】
重合体ブロックBの数平均分子量は、特に制限されないが、10,000〜200,000の範囲内にあるのが好ましい。
【0058】
重合体ブロックCにおけるイソプレンとブタジエンの重合形態は、特に制限がなく、ランダム、ブロック、テーパードなどいずれの形態であってもよく、また、重合体ブロックCの数平均分子量は、特に制限されないが、10,000〜200,000の範囲内にあることが好ましい。
【0059】
水添ブロック共重合体(b)〜(d)における各重合体ブロックの結合様式は特に制限はなく、線状、分岐状またはこれらの任意の組み合せであってもよい。水添ブロック共重合体(b)〜(d)の分子構造の具体例としては、A(BA)n 、(AB)n などを示すことができる。(ここでAは、重合体ブロックA、Bは重合体ブロックB、C又はDを表し、nは、1以上の整数である。)
【0060】
また、水添ブロック共重合体(b)〜(d)として、ジビニルベンゼン、錫化合物またはシラン化合物等をカップリング剤として得られる星型(例えば、〔(AB)m X〕で表現されるもので、ここでmは、2以上の整数、Xは、カップリング剤の残基を表す)の分子構造を有するものも使用可能である。
【0061】
水添ブロック共重合体(b)〜(d)としては、上記の各種の分子構造を有するものを単独で使用してもよいし、また、例えば、トリブロック型のものとジブロック型のものの混合物などのように異なる分子構造のものを2種以上併用してもよい。かかる水添ブロック共重合体(b)、(c)、又は(d)の数平均分子量は、30,000〜300,000の範囲内にあることが好ましい。
【0062】
水添ブロック共重合体(b)〜(d)の製造方法としては、従来公知の製造方法を利用することができ、例えば、次の(イ)〜(ハ)の方法で得られるブロック共重合体を水素添加する方法などが挙げられる。すなわち、
【0063】
(イ)アルキルリチウム化合物を開始剤としてビニル芳香族化合物を重合した後、共役ジエン化合物及びビニル芳香族化合物を逐次重合させる方法、
(ロ)ビニル芳香族化合物、続いて共役ジエン化合物を重合し、得られたブロック共重合体をカップリング剤を用いてカップリングする方法、及び
(ハ)ジリチウム化合物を開始剤として共役ジエン化合物を重合した後、ビニル芳香族化合物を逐次重合させる方法等である。
【0064】
上記の方法において、開始剤であるアルキルリチウム化合物としては、アルキル基の炭素数が1〜10である化合物が使用されるが、中でもメチルリチウム、エチルリチウム、ペンチルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウムが好ましい。また、ブロック共重合体をカップリングするためのカップリング剤としては、例えば、ジクロロメタン、ジブロムメタン、ジクロロエタン、ジブロムエタン、ジブロムベンゼン、四塩化錫等のハロゲン化合物;安息香酸フェニル、酢酸エチル等のエステル化合物;ジビニルベンゼン、各種シラン化合物などが挙げられる。さらに、開始剤であるジリチウム化合物としては、例えば、ナフタレンジリチウム、ジリチオヘキシルベンゼンなどが挙げられる。
【0065】
上記の開始剤またはカップリング剤の使用量は、所望とするブロック共重合体の分子量に応じて適宜決定されるが、通常、重合に用いられる全モノマー100質量部に対し、開始剤は0.01〜0.2質量部、カップリング剤は0.04〜0.8質量部となる範囲内で使用される。
【0066】
また、重合体ブロックB〜Dにおけるビニル結合含有量は、重合の際に共触媒としてルイス塩基を用いることによって制御することができる。かかるルイス塩基としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;トリエチルアミン、N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(以下、これをTMEDAと略称する)、N−メチルモルホリン等のアミン系化合物などが挙げられる。ルイス塩基の使用量は、重合開始剤におけるリチウム原子1モル当り0.1〜1,000モルとなる範囲内の量である。
【0067】
重合の際には、重合開始剤に対して不活性な有機溶媒を溶媒として用いることが好ましい。かかる溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン等の炭素数が6〜12の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン等の芳香族炭化水素を使用することが望ましい。重合は、上記(イ)〜(ハ)のいずれの重合法による場合でも、通常0〜80℃の温度範囲で行われ、反応時間は、通常0.5〜50時間である。
【0068】
次に、上記の方法によって得られたブロック共重合体は、例えば、反応に不活性な溶媒に溶解した状態で公知の水添触媒を用いて分子状態の水素を反応させる方法などの公知の方法によって、水添ブロック共重合体(b)、(c)又は(d)とされる。ここで使用される水添触媒としては、ラネーニッケル、Pt、Pd、Ru、Rh、Ni等の金属を、カーボン、アルミナ、硅藻土等の担体に担持させた不均一触媒;ニッケル、コバルトなどの第VIII族の金属からなる有機金属化合物とトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物または有機リチウム化合物等の組み合わせからなるチーグラー系の触媒;チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどの遷移金属のビス(シクロペンタジエニル)化合物とリチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、亜鉛またはマグネシウムなどの有機金属化合物の組み合わせからなるメタロセン系触媒などが用いられる。
【0069】
水素添加は、通常、水素圧が常圧〜20MPa、反応温度が常温〜250℃の範囲内で行われる。反応時間は、通常0.1〜100時間である。水素添加によって得られた水添ブロック共重合体(b)、(c)又は(d)は、(i)反応混合液をメタノール等により凝固させた後、加熱あるいは減圧乾燥させるか、(ii)反応液を沸騰水中に注ぎ、溶媒を共沸させて除去するいわゆるスチームストリッピングを施した後、加熱あるいは減圧乾燥すること等により取得される。
【0070】
本発明の多層チューブにおいて基材層を構成する層(I)は、25℃の弾性率(層そのものの弾性率)が30MPa以下であるものが好ましい。また、基材層を構成する層(I)及び接着層を構成する層(II)の厚さ1mmのヘイズは、25%以下であることが好ましい。さらに、本発明の多層チューブは、キンクせず半径20mmの弧を形成することができるものが好ましい。
【0071】
本発明の多層チューブは、そのままで使用されることもあるが、当該多層チューブの外表面及び/又は内表面を形成する層(II)を接続層とし、これに他の異径のチューブや、コネクター又はジョイント類とを接続して使用するのが実用的であり、好ましい。かかる接続は、すでに述べたように溶剤又は熱溶着による接続の他に、接着剤で接着して接続するものであってもよい。
【0072】
また、本発明の多層チューブは、当該多層チューブを121℃、20分のオートクレーブ滅菌を実施後、当該多層チューブの最外層同士の癒着部分のせん断剥離強度が35N以下であり、かつ該多層チューブの最外層と滅菌袋の最内層を構成するポリプロピレンなどのポリオレフィンとの癒着部分の180゜剥離強度が5N以下であるものが好ましい。なお、本発明でいう180゜剥離強度とは、JIS K6854に規定された試験方法で測定されるものである。
【0073】
本発明の多層チューブは、体外循環用の回路などの医療用のチューブとして好適であり、医療用チューブ鉗子で15時間閉止後、鉗子を外して3秒以下でチューブ内側が貫通するものが好ましい。
【0074】
本発明の多層チューブは、すでに述べたように他の異径のチューブや接続部材であるコネクター及びジョイント類と接続してこれを構成部材とする医療用具として好ましく使用される。
【0075】
本発明の多層チューブを構成する樹脂組成物は、その性質を損なわない範囲内で酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、結晶核剤等の各種添加剤を配合することができる。これらの添加剤の使用量は、通常、樹脂組成物100質量部に対して0.01〜5質量部の範囲である。
【0076】
また、多層チューブを構成する樹脂組成物には、発明の趣旨を損なわない範囲内であれば、例えば、水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、水添スチレン−イソプレンランダム共重合体、ブチルゴム、ポリイソブチレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン系ゴム、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリ酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体及びこれらのアイオノマー、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、アタクチックポリプロピレン等の他のポリマーを配合することができ、過酸化物等を用いた通常の架橋方法により架橋して使用することも可能である。
【0077】
本発明の多層チューブを構成する樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂及び、水添共ブロック共重合体や水添共重合体、さらに所望により上記添加剤等を単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロールなどの混練機を用いて調製することができる。このようにして得られた樹脂組成物は、共押出成形またはコーティングによって、多層チューブに成形することができる。
【0078】
本発明の多層チューブは、柔軟性、透明性、耐キンク性、耐鉗子性、耐熱性に優れる。すなわち、▲1▼光学式気泡検知器を用いた場合、1mLの単独気泡が300mL/分の流速で確認でき、▲2▼各層の組成物の厚さ1mmのヘイズが25%以下であり、▲3▼半径20mm以上の弧を描いても折れ曲がらず、▲4▼医療用チューブ鉗子で15時間閉止後、鉗子を外して3秒以下でチューブ内側が貫通し、しかも▲5▼オートクレーブ滅菌(121℃、20分)を実施後、チューブの最外層同士の癒着部分のせん断剥離強度が35N以下であり、かつチューブの最外層と最内層ポリプロピレンの滅菌袋との癒着部分の180°剥離強度が5N以下である。
【0079】
図4〜7は、図2〜3と同様な図であるが、本発明の多層チューブ1を他の径の異なる接続部材50に接続した状態をより一般的に示す断面図である。
【0080】
図4は、内層3が(I)層等、外層5が(II)層等の場合であり、図5は、内層3が(II)層等、外層5が(I)層等の場合である。図4の場合は、接続部材50の内表面55を、多層チューブ1の外層5(II)等と嵌合させて溶剤、接着剤または熱溶着することにより接続が行われ、図5の場合は、接続部材50の外表面57を、多層チューブ1の内層3(II)等と嵌合させ、同様に溶着等させて接続が行われる。
【0081】
図6〜7は、多層チューブ1の中間層7が(I)層等であり、内層3及び外層5のいずれもが(II)層等の場合である。基本的には、上記と同様にして、図6の場合は、接続部材50の内表面55を、多層チューブ1の外層5(II)等と嵌合させて溶着等して接続が行われ、図7の場合は、接続部材50の外表面57を、多層チューブ1の内層3(II)等と嵌合させて同様にして溶着等させて接続が行われることになる。
【0082】
本発明の多層チューブは、上記の特性を生かして、例えば、人工腎臓透析用血液回路、血漿交換用血液回路、腹水濾過濃縮用回路等の体外循環用回路に使用される。また、本発明の多層チューブは、上記の体外循環用回路の他に、例えば、血液チューブ、輸液チューブ、カテーテル、バルーンカテーテルなどの各種医療用具、ホースなどの工業用途、農林水産業用途、家庭用途など優れた柔軟性及び透明性が要求される分野においても使用することができる。
【0083】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。なお、特に断りなき限り、%は質量%を示す。
【0084】
(I)参考例1〜2、実施例1〜3、比較例1〜3において、多層チューブのついての、滅菌時のチューブ同士の粘着性、キンク性、接着性は以下の評価方法によった。
【0085】
(滅菌時の粘着性)
チューブ同士が密着するように紙テープで固定し、121℃、20分でオートクレーブ滅菌を行い、チューブ同士のせん断剥離抵抗を測定する。
【0086】
(キンク発生半径)
20cmのチューブの両端を治具に固定し、徐々に治具の間隔を狭めていき、チューブの折れ曲がりが発生したところの寸法をとり、曲率半径を算出する。
【0087】
(溶剤接着性)
内径φ6.8mmの接着層と同一処方のチューブをTHFで接着、24時間後の引張強度を測定する。
【0088】
〔参考例1〕(基材層(A)の弾性率設定)
表1のように曲げ弾性率の異なる単層のポリプロピレン製チューブ(F327(商品名、グランドポリマー社製)外径5.6mm、厚さ1.2mm)でのキンクの発生する曲率半径を調査し、上記の曲げ弾性率が200〜300MPaの範囲のものを基材層(A)とし、基材層(A)とポリプロピレン(F327)と水添ブロック共重合体(HVS−3)の組成物からなるの接着層(B)の厚みの比率を表1のようにそれぞれ変更し、キンクの発生する曲率半径を調べた。結果を表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
表1の結果より曲げ弾性率が400MPa以下の単層PPチューブがキンク発生の曲率半径が20mm以下で耐キンク性に優れていることがわかる。
【0091】
また曲げ弾性率が200MPa未満の単層PPチューブは、チューブとして柔らかすぎてこしがなくなるので好ましくない。
【0092】
基材層(A)と接着層(B)の厚みの比率において基材層(A)の厚さが940以上(接着層(B)が60以下)でキンク発生の曲率半径が20mm以下で耐キンク性に優れていることがわかる。
【0093】
一方基材層(A)の厚さが980を越える(接着層(B)が20未満)と剛性が大きくなりすぎてチューブの柔軟性が低下するので好ましくない。
【0094】
なお、本発明で使用するポリプロピレン系樹脂は、前記F327以外にも基材層(A)を構成する場合は、曲げ弾性率(JIS K7203)200〜400MPaのものが、接着層(B)を構成する場合は、曲げ弾性率(JIS K7203)が500〜900MPaのものであれば何れでも使用することができる。
【0095】
〔参考例2〕(接着層(B)の配合比率の設定)
接着層(B)にポリプロピレン(F327)と水添ブロック共重合体(HVS−3)を表2の比率で配合して外径φ6.8mmチューブを作製し、チューブの滅菌時における粘着の強度と溶剤による接着強度を調べて行った。結果を表2に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
表2の結果よりポリプロピレン系樹脂(a)と水添ブロック共重合体(b1)の配合比率において、ポリプロピレン系樹脂(a)の配合比が70未満(水添ブロック共重合体(b1)が30を越える)では異径チューブとの接着強度は90Nを越えて良好であるが、ポリプロピレン系樹脂(a)が50未満(水添ブロック共重合体(b1)が50を越える)ではチューブ同士の粘着が35N以上になるので好ましくない。
【0098】
またポリプロピレン系樹脂(a)の配合比が70を越える(水添ブロック共重合体(b1)が30未満)とチューブ同士の粘着が10N未満で良好であるが異径チューブの接着強度が90N未満となり好ましくない。
【0099】
したがってポリプロピレン系樹脂(a)と水添ブロック共重合体(b1)の配合比は70/30〜50/50に設定するのが好ましいことがわかる。
【0100】
〔実施例1〜3〕
ポリプロピレン系樹脂(a)として市販のポリプロピレン〔F327(商品名)(曲げ弾性率(JIS K7203) 780MPa)、グランドポリマー社製〕を使用し、水添ブロック共重合体(b1)として市販の水添ブロック共重合体〔クレイトンG G1652(商品名)、シェル化学社製〕、水添イソプレン共重合体〔ハイブラー HVS−3(商品名)、クラレ社製〕、また水添スチレン・ブタジエン・ラバー(b2)として市販の水添スチレンブタジエンラバー〔ダイナロン1320P(商品名)、JSR社製〕を使用した。
【0101】
これらのポリプロピレン系樹脂、水添ブロック共重合体、水添スチレン・ブタジエン・ラバーをそれぞれ表3の配合組成のように配合して樹脂組成物を作成した。
【0102】
前記樹脂組成物を用いて、共押出成形により接着層(B)(外層)/基材層(A)(中間層)/接着層(B)(内層)よりなる多層チューブを作成した。
【0103】
多層チューブのサイズは外径φ7mm、肉厚1mmで、基材層(A)と接着層(B)の厚さの比率は表3に記載の通りである。
【0104】
前記多層チューブを用いて滅菌時のチューブ同士の粘着性、キンク性、接着性を測定した結果を表3に示す。
【0105】
〔比較例1〜3〕
表3に記載した条件を使用したほかは、実施例と同様な試験を行った。結果を表3に示す。
【0106】
表3から明らかなように、本発明の実施例1から実施例3の多層チューブは、医療用チューブとして要求される前記性能(a)から(c)をほぼ満たしているのに対し、比較例1のように接着層(B)の厚さの比率を大きくするとキンク発生半径が大きくなり耐キンク性が低下する。
【0107】
また比較例3のように接着層(B)をポリプロピレン単体で構成した場合も耐キンク性の低下とともに溶剤接着強度が低下する。
【0108】
また比較例2のように接着層(B)の配合組成において、ポリプロピレンの配合比率を少なくし、水添ブロック共重合体配合比率を多くすると滅菌時の粘着性が増加する。
【0109】
【表3】
【0110】
(II)以下の参考例3〜5、実施例4〜14、比較例4〜5において、重合体のスチレン含有量、数平均分子量、ビニル結合含有量及び水素添加率、樹脂組成物から得られる成形物の柔軟性、透明性、ならびにチューブの透明性、耐キンク性、耐鉗子性及び耐熱性はそれぞれ以下の方法により求めた。
【0111】
(スチレン含有量)
重合に使用した各モノマー成分の質量から算出した。
【0112】
(数平均分子量)
GPC測定によりポリスチレン換算の数平均分子量(Mn )を求めた。
【0113】
(ビニル結合含有量)
水添前のブロック共重合体を、重水素化クロロホルム(CDC13)に溶解して 1H−NMRスペクトルを測定し、1,2−結合及び3,4−結合に対応するピークの大きさからビニル結合含有量を算出した。
【0114】
(水素添加率)
水素添加前後におけるブロック共重合体のヨウ素価を測定し、その測定値より算出した。
【0115】
(樹脂組成物の柔軟性)
長さ30mm、幅5mm、厚さ1mmの試験片を作製し、温度依存性の動的粘弾性を測定した。25℃の弾性率を採用した。測定条件は、引張りモード(正弦波歪、振幅変位;10μm、周波数;1Hz)、チャック間距離;20mm、測定温度範囲;−100〜150℃、昇温速度;3℃/分である。
【0116】
(樹脂組成物の透明性)
厚さ1mmのシートを作製し、JIS K7105に規定された方法に準拠してヘイズメーターによりヘイズ値を測定し、樹脂組成物の透明性の指標とした。
【0117】
(チューブの透明性)
チューブ内を水で満たした時、チューブ内の気泡を目視で確認できる程度を透明性の指標とした。
【0118】
(チューブの耐キンク性)
長さ20cmのチューブをU字に曲げて、約1分間放置後、チューブのキンクの有無を確認し、チューブの曲率半径をRゲージにて測定し、キンクが発生しない最低の曲率半径を耐キンク性の指標とした。
【0119】
(チューブの耐鉗子性)
生理食塩液を満たしたチューブを医療用チューブ鉗子で15時間閉止後、鉗子を外しチューブ内側が貫通する時間を測定し、チューブの耐鉗子性の指標とした。
【0120】
(チューブ/チューブ間の耐熱膠着性)
長さ10cmの2本のチューブを5cm平行に重ねて紙テープで縛り、オートクレーブ滅菌(121℃、 20分)実施後、縛った紙テープを除き、せん断剥離強度を測定し、チューブ/チューブ間の癒着力を耐熱膠着性の指標とした。せん断剥離強度は、引張試験機にてテストスピード100mm/分の条件で最大値を採用した。
【0121】
(チューブ/フィルム間の耐熱膠着性)
長さ10cmのチューブを滅菌袋(ホギ社製)に入れ、オートクレーブ滅菌(121℃、 20分)実施後、フィルムの180°剥離強度を測定し、チューブ/フィルム間の癒着力を耐熱膠着性の指標とした。せん断剥離強度は、引張試験機にてテストスピード100mm/分の条件で平均値を採用した。
【0122】
〔参考例3〕(水添ブロック共重合体1の製造)
乾燥した窒素で置換された耐圧容器中、溶媒としてシクロヘキサンを用い、かつ重合開始剤としてs−ブチルリチウムを用いて60℃でスチレンを重合した後、ルイス塩基としてTMEDAを加え、次いでイソプレン及びスチレンを順次重合させてスチレン−イソプレン−スチレン型のブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体を、シクロヘキサン中、Pd/Cを触媒として、2MPaの水素雰囲気下で水素添加を行い、水添ブロック共重合体を得た(以下、参考例3で得られた水添ブロック共重合体をそれぞれ水添ブロック共重合体1と略称する)。得られた水添ブロック共重合体1のスチレン含有量、数平均分子量、ビニル結合含有量及び水素添加率を表4に示す。
【0123】
〔参考例4〕(水添ブロック共重合体2の製造)
参考例3と同様にして、シクロヘキサン溶媒中、s−ブチルリチウム及びTMEDAを用いて、スチレン、イソプレンとブタジエンの混合物〔イソプレン/ブタジエン=60/40(質量比)〕及びスチレンを順次重合させ、スチレン−(イソプレン/ブタジエン)−スチレン型のブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体を、参考例3と同様にして水素添加することにより、水添ブロック共重合体を得た(以下、参考例4で得られた水添ブロック共重合体をそれぞれ水添ブロック共重合体2と略称する)。得られた水添ブロック共重合体2のスチレン含有量、数平均分子量、ビニル結合含有量及び水素添加率を表4に示す。
【0124】
〔参考例5〕(水添ブロック共重合体3の製造)
参考例3と同様にして、シクロヘキサン溶媒中、s−ブチルリチウム及びTMEDAを用いて、スチレン、ブタジエン及びスチレンを順次重合させ、スチレン−ブタジエン−スチレン型のブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体を、参考例3と同様にして水素添加することにより、水添ブロック共重合体3を得た(以下、参考例5で得られた水添ブロック共重合体をそれぞれ水添ブロック共重合体3と略称する)。得られた水添ブロック共重合体3のスチレン含有量、数平均分子量、ビニル結合含有量及び水素添加率を表4に示す。
【0125】
【表4】
【0126】
〔実施例4〜7〕及び〔比較例4〜5〕
ポリプロピレン系樹脂(a)として、市販のブロックタイプのポリプロピレン〔BC1B(商品名)、日本ポリケム社製〕、ランダムタイプのポリプロピレン〔J215W(商品名)、グランドポリマー社製〕、ホモタイプのポリプロピレン〔MA3(商品名)、日本ポリケム社製〕、水添ブロック共重合体(b)として参考例3で得た水添ブロック共重合体1、水添ブロック共重合体(c)として参考例4で得た水添ブロック共重合体2、水添ブロック共重合体(d)として参考例5で得た水添ブロック共重合体3、水添共重合体(e)として、市販の水添スチレンブタジエンラバー〔ダイナロン1320P(商品名)、JSR社製〕を使用した。
【0127】
これらのポリプロピレン系樹脂、水添ブロック共重合体、水添共重合体(e)をそれぞれ表5に示す割合(質量比)で、二軸押出機により230℃で混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を230℃で外径5.6mm、内径3.3mmの2層チューブに成形し、柔軟性、透明性、耐キンク性、耐熱膠着性及び耐鉗子性の評価を行った。結果を表5に示す。
【0128】
【表5】
【0129】
表5より、実施例4から実施例7の多層チューブは、柔軟性、透明性、及び耐キンク性が良好であるのに対し、比較例4のように層(I)のポリプロピレン系樹脂の割合が少ないとチューブ成形が困難となり、断面が楕円に変形することがわかる。また、比較例5のように層(II)のポリプロピレン系樹脂の割合が多いとチューブの柔軟性が不足する。
【0130】
〔実施例8〜11〕
ポリプロピレン系樹脂として市販のランダムタイプのポリプロピレン〔J215W(商品名)、グランドポリマー社製〕を、水添ブロック共重合体(b)として参考例3で得た水添ブロック共重合体1を使用した。
【0131】
これらのポリプロピレン系樹脂、水添ブロック共重合体をそれぞれ表6に示す割合(質量比)で、二軸押出機により230℃で混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を230℃で外径5.6mm、内径3.3mmの3層チューブに成形し、柔軟性、透明性、耐キンク性、耐熱膠着性、及び耐鉗子性の評価を行った。結果を表6に示す。表6より、実施例8から実施例11の多層チューブは、柔軟性、透明性、耐キンク性、耐熱膠着性、耐鉗子性が良好であることがわかる。
【0132】
【表6】
【0133】
〔実施例12〕
実施例6と同じ層構成のチューブで外径8mm、内径6mmの2層チューブと、実施例8と同じ3層構成のチューブで外径6mm、内径4mmのチューブを作製し、これらのチューブをテトラヒドロフランにより溶剤接着を行った。この部分の引張り接着強度は、130Nであり、強固な接続が可能であった。
【0134】
〔実施例13〕
ポリプロピレン系樹脂として市販のブロックタイプのポリプロピレン〔BC1B(商品名)、日本ポリケム社製〕を、水添ブロック共重合体(c)として参考例4で得た水添ブロック共重合体2を使用し、ポリプロピレン系樹脂/水添ブロック共重合体(c)=30/70(質量比)の割合で配合し、二軸押出機により210℃で混練して樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を230℃で射出成形し、接続部分の内径6mmのコネクターを得た。実施例5と等しい層構成のチューブで外径6mm、内径4mmの2層チューブに成形した。このコネクターとチューブを水添ブロック共重合体(b)(参考例3)をテトラヒドロフランに20質量%溶解させた接着剤を用いて接着をした。この部分の接着強度は140Nであり、強固な接続が可能であった。
【0135】
〔実施例14〕
実施例8で作製した3層チューブを用いて、透析用の血液回路を作製した。この3層チューブとコネクターとの接続も強固であった。この血液回路の3層チューブの部分を医療用チューブ鉗子で15時間閉止後、鉗子を外すと3秒以下でチューブ内側が貫通した。この3層チューブは、柔軟性、透明性、耐キンク性、耐鉗子性、耐熱膠着性に優れ、医療用具、医療用チューブ、特に体外循環用の回路に使用した場合、実用レベルであった。
【0136】
【発明の効果】
本発明により、柔軟性、透明性、耐キンク性、耐鉗子性、耐熱性、耐熱膠着性及び接着性に優れ、可塑剤の溶出がなく、しかも、焼却した際に有毒ガスを発生させることのない多層チューブが提供される。
【0137】
本発明の多層チューブは、これをそのまま、または構成部材として含む血液チューブ、血液バッグ、輸液バッグ、輸液チューブ、血液回路、カテーテル等の医療用具、特に体外循環用回路として好適に使用される。また、医療用途に限らず、ホース、チューブとして、産業用途、一般家庭用途などあらゆる用途へ適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多層チューブ1の横断面図
【図2】本発明の多層チューブを他の径の異なる接続部材に接続した医療用具の一部拡大縦断面図
【図3】本発明の多層チューブを他の径の異なる接続部材に接続した医療用具の一部拡大縦断面図
【図4】本発明の多層チューブを他の径の異なる接続部材に接続した医療用具の一部拡大縦断面図
【図5】本発明の多層チューブを他の径の異なる接続部材に接続した医療用具の一部拡大縦断面図
【図6】本発明の多層チューブを他の径の異なる接続部材に接続した医療用具の一部拡大縦断面図
【図7】本発明の多層チューブを他の径の異なる接続部材に接続した医療用具の一部拡大縦断面図
【符号の説明】
1 多層チューブ
3 内層
5 外層
7 中間層
50 接続部材
55 接続部材の内表面
57 接続部材の外表面
A 基材層
B 接着層
I I層(基材層)
II II層(接着層)
Claims (20)
- 《1》少なくとも基材層(A)と接着層(B)を含む多層チューブであって、
《2》両層とも、ポリプロピレン系樹脂(a)と、
《3》一個以上のビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックと、
《3−1》一個以上のイソプレン及び/又はブタジエンの重合体ブロックからなる共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体(b1)との樹脂組成物、
または
《3−2》ビニル芳香族化合物及びブタジエンの共重合体を水素添加して得られる水添共重合体(b2)との樹脂組成物からなり、
《4》上記基材層(A)は、前記ポリプロピレン系樹脂(a)20〜30質量%と、前記水添ブロック共重合体(b1)または水添共重合体(b2)80〜70質量%との樹脂組成物からなる層であり、
《5》上記接着層(B)は、前記ポリプロピレン系樹脂(a)50〜70質量%と、前記水添ブロック共重合体(b1)または水添共重合体(b2)50〜30質量%の樹脂組成物からなる層であり、
《6−1》(i)前記基材層(A)により内層を、前記接着層(B)により外層を形成するか、または、前記接着層(B)により内層を、前記基材層(A)により外層を形成する(A)/(B)の二層構造を含むものであるか、(ii)前記接着層(B)により内層と外層とを形成し、前記基材層(A)により中間層を形成する、(B)/(A)/(B)の三層構造を含むものであり、
《6−2》 前記二層構造の場合は、前記基材層(A)と接着層(B)の厚さの比率が基材層(A)/接着層(B)=940/60〜980/20であり、
《6−3》前記三層構造の場合は、前記基材層(A)と接着層(B)の厚さの比率が接着層(B)/基材層(A)/接着層(B)=20〜30/940〜960/20〜30であり、
《7》少なくとも当該多層チューブは、耐キンク性及び耐鉗子性を有することを特徴とする多層チューブ。 - 前記基材層(A)のポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率が200〜400MPaであり、前記接着層(B)のポリプロピレン系樹脂(a)の曲げ弾性率が500〜900MPaである請求項1に記載の多層チューブ。
- 前記請求項1又は2に記載の多層チューブの接着層(B)を他の径の異なるチューブまたは射出成形部品に接続してなることを特徴とする医療用具。
- 《1》 2層以上の層から構成される多層チューブであって、
《2》当該層の少なくとも1層は、基材層(I)を構成する層であり、
《3》当該基材層(I)は、
《3−1》ポリプロピレン系樹脂(a)5〜40質量%と、
《3−2》1個以上のビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックと1個以上のイソプレン重合体ブロックからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体(b)、
1個以上のビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックと1個以上のイソプレン及びブタジエンの重合体ブロックからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体(c)、
1個以上のビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックと1個以上のブタジエン重合体ブロックからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体(d)、
並びにビニル芳香族化合物及びブタジエンの共重合体を水素添加して得られる水添共重合体(e)からなる群から選ばれる少なくとも1種の共重合体95〜60質量%との樹脂組成物からなる層(I)であり、
《4》他層は、接着層(II)を構成する層であり、
《5》当該接着層(II)は、
《5−1》ポリプロピレン系樹脂(a)と、
《5−2》1個以上のビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックと1個以上のイソプレン重合体ブロックからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体(b)、
1個以上のビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックと1個以上のイソプレン及びブタジエンの重合体ブロックからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体(c)、
1個以上のビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックと1個以上のブタジエン重合体ブロックからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体(d)、
並びにビニル芳香族化合物及びブタジエンの共重合体を水素添加して得られる水添共重合体(e)からなる群から選ばれる少なくとも1種の共重合体の樹脂組成物とからなる層(II)である多層チューブであり、
《6》前記接着層である層(II)が前記内層及び/又は前記外層を形成する場合において、前記外層を形成する場合は、ポリプロピレン系樹脂(a)と水添ブロック共重合体(b)〜(e)の比が質量比で45〜60/55〜40の樹脂組成物からなり、前記内層を形成する場合は、ポリプロピレン系樹脂(a)と水添ブロック共重合体(b)〜(e)の比が質量比で60〜100/40〜0の樹脂組成物からなり、
《7》少なくとも当該多層チューブは、耐キンク性及び耐鉗子性を有することを特徴とする多層チューブ。 - 前記多層チューブが2層のチューブであり、基材層である(I)が内層を、接着層である(II)が外層を形成するか、又は、基材層である(I)が外層を、接着層である(II)が内層を形成する請求項4に記載の多層チューブ。
- 前記多層チューブが3層のチューブであり、少なくとも基材層である層(I)が中間層を形成し、接着層である層(II)が内層及び外層の少なくとも一層を形成する請求項4に記載の多層チューブ。
- 前記多層チューブが3層のチューブであり、少なくとも接着層である層(II)が外層及び内層を形成する請求項4又は6に記載の多層チューブ。
- 請求項4〜7のいずれかに記載の多層チューブにおいて、前記水添ブロック共重合体(b)が、1個以上のビニル芳香族化合物10〜40質量%からなる重合体ブロックと、1,2−結合と3,4−結合の含有量が10〜75%で、炭素−炭素二重結合の70%以上が水素添加されたイソプレン重合体ブロックとを1個以上有する水添ブロック共重合体である多層チューブ。
- 請求項4〜8のいずれかに記載の多層チューブにおいて、前記水添ブロック共重合体(c)が、1個以上のビニル芳香族化合物10〜40質量%からなる重合体ブロックと、イソプレン及びブタジエンを質量比で5/95〜95/5の割合で含有する共重合体で、1,2−結合と3,4−結合の含有量が20〜85%で、炭素−炭素二重結合の70%以上が水素添加されたイソプレン−ブタジエン重合体ブロックとを1個以上有する水添ブロック共重合体である多層チューブ。
- 請求項4〜9のいずれかに記載の多層チューブにおいて、前記水添ブロック共重合体(d)が、1個以上のビニル芳香族化合物10〜40質量%からなる重合体ブロックと1,2−結合の含有量が30%以上で、炭素−炭素二重結合の70%以上が水素添加されたブタジエン重合体ブロックとを1個以上有する水添ブロック共重合体である多層チューブ。
- 前記ビニル芳香族化合物がスチレンである請求項1〜10のいずれかに記載の多層チューブ。
- 請求項4〜11のいずれかに記載の多層チューブにおいて、基材層を形成する層(I)の25℃の弾性率が30MPa以下である多層チューブ。
- 請求項4〜12のいずれかに記載の多層チューブにおいて、基材層を形成する層(I)及び接着層を形成する層(II)の厚さ1mmのヘイズが25%以下である多層チューブ。
- 請求項4〜13のいずれかに記載の多層チューブにおいて、当該多層チューブがキンクせず半径20mm以上の弧を形成することができる多層チューブ。
- 請求項4〜14のいずれかに記載の多層チューブにおいて、当該多層チューブの外表面及び/又は内表面を形成する層(II)が他の異径のチューブ、コネクター又はジョイント類と接続可能な接続層を形成する多層チューブ。
- 請求項4〜15のいずれかに記載の多層チューブにおいて、121℃、20分のオートクレーブ滅菌後の多層チューブの最外層同士の癒着部分のせん断剥離強度が35N以下であり、かつ該多層チューブの最外層と滅菌袋の最内層を構成するポリオレフィンとの癒着部分の180゜剥離強度が5N以下である多層チューブ。
- 当該多層チューブが医療用多層チューブである請求項1〜2及び4〜16のいずれかに記載の多層チューブ。
- 当該多層チューブが体外循環用の回路を形成するものである請求項17に記載の多層チューブ。
- 請求項17に記載の多層チューブにおいて、当該多層チューブが医療用チューブ鉗子で15時間閉止後、鉗子を外して3秒以下でチューブ内側が貫通するものである多層チューブ。
- 請求項4〜19のいずれかに記載の多層チューブの接続層を、他の異径のチューブ、コネクター又はジョイント類と接続してなることを特徴とする医療用具。
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