JP2005247895A - 医療用樹脂組成物及びそれを用いた医療用成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐擦過性、及び耐突き破り性に優れ、高圧蒸気滅菌することが可能な医療用成形品を形成し得る医療用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも2つの、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体を水素添加した所定の条件を満たす水添ジエン系共重合体、並びに、示差走査熱量測定法(DSC法)により測定される融解ピーク温度が100〜200℃であるポリオレフィン系樹脂、からなる医療用樹脂組成物である。
【選択図】なし

Description

本発明は、医療用樹脂組成物、及びそれを用いた医療用成形品に関し、更に詳しくは、耐擦過性、及び耐突き破り性に優れ、高圧蒸気滅菌することが可能な医療用成形品を形成し得る医療用樹脂組成物、及びそれを用いた、耐擦過性、及び耐突き破り性に優れ、高圧蒸気滅菌することが可能な医療用成形品に関する。
採血、輸血、輸液等の医療行為に際して用いられる、容器やチューブをはじめとする医療用成形品を構成する素材には、安全性、衛生性の他、種々の特性を具備するものであることが要求される。なかでも柔軟性、透明性、及び耐熱性を具備するものであることや、これらの特性をバランスよく具備するものであることは重要視される。
医療用成形品を構成するポリマー素材として従来から用いられているものとしては、軟質ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、及び低密度ポリエチレン等のポリエチレン系ポリマーを代表例として挙げることができる。しかしながら、これらのポリエチレン系ポリマーのうちの軟質ポリ塩化ビニルは、可塑剤の溶出、薬剤の吸着、着色、廃棄処理等において問題を生じる場合がある。
また、ポリエチレン系ポリマーは柔軟性、透明性、及び耐熱性のバランスが十分ではないという問題がある。更に、低密度ポリエチレンについては、柔軟性、及び透明性が比較的良好である一方で、低融点であるために耐熱性が良好ではない。このため、低密度ポリエチレンは、通常100〜130℃で行われる高圧蒸気滅菌に耐えられず、ブロッキング、失透(白化)、アバタ状のムラの発生、変形等の不具合が起こり易い。なお、低密度ポリエチレンの耐熱性を上げるには、化学架橋、放射線架橋等の架橋をを行うことが考えられるが製造工程の複雑化は回避し得ない。
これらの問題を解消すべく、結晶性ポリプロピレンや結晶性ポリブテン−1等を主成分とする結晶性コポリマーからなる層と、ポリプロピレン系アモルファスポリマーを含有する層とからなる医療容器用基材(例えば、特許文献1参照)、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比や密度が所定値に設定された、所定のα−オレフィンを含むエチレン・α−オレフィン共重合体と、特定のポリオレフィン系樹脂とをブレンドした医療用樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)等が開示されている。
しかしながら、これらの従来技術において開示された医療容器用基材や医療用樹脂組成物からなる医療用成形品は高圧蒸気滅菌可能なものではあるが、近年の医療現場において要求される特性は一層高まりつつあるため、未だ改良の余地がある。更に、これらの基材や成形品の耐擦過性、及び耐突き破り性については未だに十分であるとはいえず、更なる耐擦過性、及び耐突き破り性の向上を図る必要性がある。
特開平6−171040号公報 特開2003−699号公報
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、耐擦過性、及び耐突き破り性に優れ、高圧蒸気滅菌することが可能な医療用成形品を形成し得る医療用樹脂組成物、及びそれを用いた、耐擦過性、及び耐突き破り性に優れ、高圧蒸気滅菌することが可能な医療用成形品を提供することにある。
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、ビニル芳香族化合物を特定割合・特定ブロック構造で共重合させた水添ジエン系共重合体を用いること、及びこの水添ジエン系共重合体と特定のポリオレフィン系樹脂とを混合することによって、得られる成形品の耐擦過性、及び耐突き破り性を向上させるとともに、高圧蒸気滅菌にも耐え得るという特性を付与することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、以下に示す医療用樹脂組成物、及びそれを用いた医療用成形品が提供される。
[1]少なくとも2つの、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体を水素添加した下記(1)〜(3)の条件を満たす水添ジエン系共重合体、並びに、示差走査熱量測定法(DSC法)により測定される融解ピーク温度が100〜200℃であるポリオレフィン系樹脂、からなる医療用樹脂組成物(以下、「第一の医療用樹脂組成物」ともいう)。
(1):前記水添ジエン系共重合体中に占める、全ビニル芳香族化合物単位含有量が20〜70質量%である。
(2):前記水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、前記(B)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物単位含有量の割合(BS)が10〜80%である。
(3):前記水添ジエン系共重合体中の、前記共役ジエン化合物由来のビニル結合含量が30〜75%である。
[2]少なくとも2つの、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体を水素添加した下記(1)〜(3)の条件を満たす水添ジエン系共重合体、並びに、示差走査熱量測定法(DSC法)により測定される融解ピーク温度が100〜200℃であるポリオレフィン系樹脂、からなる医療用樹脂組成物(以下、「第二の医療用樹脂組成物」ともいう)。
(1):前記水添ジエン系共重合体中に占める、全ビニル芳香族化合物単位含有量が20〜70質量%である。
(2):前記水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、長連鎖のビニル芳香族化合物単位含有量の割合(LS)が10〜80%である。
(3):前記水添ジエン系共重合体中の、前記共役ジエン化合物由来のビニル結合含量が30〜75%である。
[3]少なくとも2つの、ビニル結合含量が20%未満である共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)と、少なくとも1つの、ビニル結合含量が20〜95%であるビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(D)と、を含有するブロック共重合体を水素添加した下記(1)〜(3)の条件を満たす水添ジエン系共重合体、並びに、示差走査熱量測定法(DSC法)により測定される融解ピーク温度が100〜200℃であるポリオレフィン系樹脂、からなる医療用樹脂組成物(以下、「第三の医療用樹脂組成物」ともいう)。
(1):前記水添ジエン系共重合体中に占める、全ビニル芳香族化合物単位含有量が10〜70質量%である。
(2):前記水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、前記(D)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物単位含有量の割合(BS)が10〜100%である。
(3):前記水添ジエン系共重合体中に占める、前記(C)ブロックの割合が10〜80質量%である。
[4]少なくとも2つの、ビニル結合含量が20%未満である共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)と、少なくとも1つの、ビニル結合含量が20〜95%であるビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(D)と、を含有するブロック共重合体を水素添加した下記(1)〜(3)の条件を満たす水添ジエン系共重合体、並びに、示差走査熱量測定法(DSC法)により測定される融解ピーク温度が100〜200℃であるポリオレフィン系樹脂、からなる医療用樹脂組成物(以下、「第四の医療用樹脂組成物」ともいう)。
(1):前記水添ジエン系共重合体中に占める、全ビニル芳香族化合物単位含有量が10〜70質量%である。
(2):前記水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、長連鎖のビニル芳香族化合物単位含有量の割合(LS)が0〜80%である。
(3):前記水添ジエン系共重合体は、示差走査熱量測定法(DSC法)により50〜150℃の範囲に測定される融解ピークを有する。
[5]前記水添ジエン系共重合体(イ)と、前記ポリオレフィン系樹脂(ロ)の含有割合が、質量比で(イ)/(ロ)=90/10〜10/90(但し、(イ)+(ロ)=100)である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の医療用樹脂組成物。
[6]前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂である前記[1]〜[5]のいずれかに記載の医療用樹脂組成物。
[7]前記[1]〜[6]のいずれかに記載の医療用樹脂組成物からなる医療用成形品。
[8]医療用チューブ、カテーテル、輸液バッグ、血液バッグ、連続携行式腹膜透析(CAPD)バッグ、又は連続携行式腹膜透析(CAPD)用排液バッグである前記[7]に記載の医療用成形品。
本発明の第一及び第二の医療用樹脂組成物は、少なくとも2つの、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体を水素添加した所定の条件を満たす水添ジエン系共重合体、並びに、DSC法により測定される融解ピーク温度が100〜200℃であるポリオレフィン系樹脂からなるものであるため、耐擦過性、及び耐突き破り性に優れ、高圧蒸気滅菌することが可能な医療用成形品を形成し得るという効果を奏するものである。
また、本発明の第三及び第四の医療用樹脂組成物は、少なくとも2つの、ビニル結合含量が20%未満である共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)と、少なくとも1つの、ビニル結合含量が20〜95%であるビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(D)と、を含有するブロック共重合体を水素添加した所定の条件を満たす水添ジエン系共重合体、並びに、DSC法により測定される融解ピーク温度が100〜200℃であるポリオレフィン系樹脂からなるものであるため、耐擦過性、及び耐突き破り性に優れ、高圧蒸気滅菌することが可能な医療用成形品を形成し得るという効果を奏するものである。
本発明の医療用成形品は、前述のいずれかの医療用樹脂組成物からなるものであるため、耐擦過性、及び耐突き破り性に優れ、高圧蒸気滅菌することが可能であるという効果を奏するものである。
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜、設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。なお、本明細書において、単に「本発明の医療用樹脂組成物」というときは、第一〜第四の医療用樹脂組成物のいずれをも指し示す。
本発明の第一及び第二の医療用樹脂組成物は、少なくとも2つの、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体を水素添加した下記(1)〜(3)の条件を満たす水添ジエン系共重合体、並びに、DSC法により測定される融解ピーク温度が100〜200℃であるポリオレフィン系樹脂からなるものである。
(1):水添ジエン系共重合体中に占める、全ビニル芳香族化合物単位含有量が20〜70質量%である。
(2):水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、(B)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物単位含有量の割合(BS)が10〜80%であるか、或いは水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、長連鎖のビニル芳香族化合物単位含有量の割合(LS)が10〜80%である。
(3):水添ジエン系共重合体中の、共役ジエン化合物由来のビニル結合含量が30〜75%である。
本発明の第一及び第二の医療用樹脂組成物に含まれる水添ジエン系共重合体として、具体的には下記構造式(1)〜(3)で表されるブロック共重合体の水素添加物を挙げることができる。
(A−B)m …構造式(1)
(A−B)m−Y …構造式(2)
A−(B−A)n …構造式(3)
(上記構造式(1)〜(3)中、Aは、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(以下、「(A)ブロック」ともいう)であり、実質的にビニル芳香族化合物からなる重合体ブロックであれば一部共役ジエン化合物が含まれていてもよい。好ましくは、ビニル芳香族化合物を90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上含有する重合体ブロックである。また、Bは、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロック(以下、「(B)ブロック」ともいう)であり、好ましくは、共役ジエン化合物が20質量%以上含有されるビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との共重合体ブロックである。また、Yはカップリング剤の残基であり、mは2〜5の整数、nは1〜5の整数をそれぞれ表す。)
ここで、上記構造式(1)〜(3)で表されるブロック共重合体中の2つ以上の「(A)ブロック」は、同一であってもよく、組成、又は分子量等が異なるものであってもよい。同様に「(B)ブロック」がブロック共重合体に2つ以上含有される場合は、2つ以上の「(B)ブロック」は同一であってもよく、組成、又は分子量等が異なるものであってもよい。更には、上記重合体ブロック、又は共重合体ブロック以外の、例えば、共役ジエン化合物が水添された重合体等の他の重合体ブロック(以下、「(E)ブロック」ともいう)が、ブロック共重合体末端、又はブロック共重合体鎖中に、1又は2以上共重合されていてもよい。
一方、本発明の第三の医療用樹脂組成物は、少なくとも2つの、ビニル結合含量が20%未満である共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)と、少なくとも1つの、ビニル結合含量が20〜95%であるビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(D)と、を含有するブロック共重合体を水素添加した下記(1)〜(3)の条件を満たす水添ジエン系共重合体、並びに、DSC法により測定される融解ピーク温度が100〜200℃であるポリオレフィン系樹脂からなるものである。
(1):水添ジエン系共重合体中に占める、全ビニル芳香族化合物単位含有量が10〜70質量%である。
(2):水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、(D)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物単位含有量の割合(BS)が10〜100%である。
(3):水添ジエン系共重合体中に占める、(C)ブロックの割合が10〜80質量%である。
また、本発明の第四の医療用樹脂組成物は、少なくとも2つの、ビニル結合含量が20%未満である共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)と、少なくとも1つの、ビニル結合含量が20〜95%であるビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(D)と、を含有するブロック共重合体を水素添加した下記(1)〜(3)の条件を満たす水添ジエン系共重合体、並びに、DSC法により測定される融解ピーク温度が100〜200℃であるポリオレフィン系樹脂からなるものである。
(1):水添ジエン系共重合体中に占める、全ビニル芳香族化合物単位含有量が10〜70質量%である。
(2):水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、長連鎖のビニル芳香族化合物単位含有量の割合(LS)が0〜80%である。
(3):水添ジエン系共重合体は、DSC法により50〜150℃の範囲に測定される融解ピークを有する。
本発明の第三及び第四の医療用樹脂組成物に含まれる水添ジエン系共重合体として、具体的には下記構造式(4)〜(6)で表されるブロック共重合体の水素添加物を挙げることができる。
(C−D)m …構造式(4)
(C−D)m−Y …構造式(5)
C−(D−C)n …構造式(6)
(上記構造式(4)〜(6)中、Cは、ビニル結合含量が20%未満である共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(以下、「(C)ブロック」ともいう)であり、実質的に共役ジエン化合物からなる重合体ブロックであれば一部ビニル芳香族化合物等共役ジエン化合物と共重合可能な化合物が含まれていてもよい。好ましくは、共役ジエン化合物を95質量%以上、更に好ましくは99質量%以上含有する重合体ブロックである。また、Dは、ビニル結合含量が20〜95%である、共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物との共重合体ブロック(以下、「(D)ブロック」ともいう)である。また、Yはカップリング剤の残基であり、mは1〜5の整数、nは1〜5の整数をそれぞれ表す。)
ここで、上記構造式(4)〜(6)で表されるブロック共重合体中の2つ以上の「(C)ブロック」は、同一であってもよく、組成、又は分子量等が異なるものであってもよい。同様に「(D)ブロック」がブロック共重合体に2つ以上含有される場合は、2つ以上の「(D)ブロック」は同一であってもよく、組成、又は分子量等が異なるものであってもよい。更には、上記重合体ブロック、又は共重合体ブロック以外の、例えば、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック等の他の重合体ブロック(以下、「(F)ブロック」ともいう)が、ブロック共重合体末端、又はブロック共重合体鎖中に、1又は2以上共重合されていてもよい。
上記構造式(1)〜(6)で表されるブロック共重合体は、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素溶媒、又はベンゼン、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒等の不活性有機溶媒中、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物、又はビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とこれらと共重合可能な他の単量体を、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としてリビングアニオン重合することにより得ることができる。なお、このブロック共重合体(以下、「水添前重合体」ともいう)を水素添加することにより、水添ジエン系共重合体を容易に得ることができる。
ビニル芳香族化合物としては、スチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等を挙げることができる。この中で、スチレンが好ましい。また、共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、ミルセン、クロロプレン等を挙げることができる。この中で、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
重合開始剤である有機アルカリ金属化合物としては、有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物等を挙げることができ、特にn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム等の有機リチウム化合物が好ましい。有機アルカリ金属化合物の使用量については特に限定はなく、必要に応じて種々の量を使用できるが、通常はモノマー100質量部あたり0.02〜15質量部の量で、好ましくは0.03〜5質量部の量で用いられる。
また、重合温度は、一般に−10〜150℃、好ましくは0〜120℃である。更に、重合系の雰囲気は窒素ガス等の不活性ガスをもって置換することが望ましい。重合圧力は、上記重合範囲でモノマー及び溶媒を液相に維持するに十分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されるものではない。
また、ビニル芳香族化合物、及び共役ジエン化合物を含有する共重合体ブロックを重合させる過程において、これらの化合物の単量体を重合系に投入する方法としては特に限定されず、一括、連続的、間欠的、又はこれらを組み合わせた方法を挙げることができる。更には、ビニル芳香族化合物、及び共役ジエン化合物を含有する共重合体ブロックを重合させるときの、その他の共重合成分の添加量、極性物質の添加量、重合容器の個数と種類等、及び上記単量体の投入方法は、得られる水添ジエン系共重合体の物性が好ましくなるよう選べばよい。
前述の水添前重合体は、上記の方法でブロック共重合体を得た後、カップリング剤を使用して共重合体分子鎖がカップリング残基を介した共重合体であってもよい。使用されるカップリング剤として、例えばジビニルベンゼン、1,2,4−トリビニルベンゼン、エポキシ化1,2−ポリブタジエン、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、ベンゼン−1,2,4−トリイソシアナート、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、テレフタル酸ジエチル、ピロメリット酸ジアンヒドリド、炭酸ジエチル、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,4−ビス(トリクロロメチル)ベンゼン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、(ジクロロメチル)トリクロロシラン、ヘキサクロロジシラン、テトラエトキシシラン、テトラクロロスズ、1,3−ジクロロ−2−プロパノン等を挙げることができる。この中で、ジビニルベンゼン、エポキシ化1,2−ポリブタジエン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、テトラクロロシランが好ましい。
本発明の医療用樹脂組成物に含まれる水添ジエン系共重合体は、上記のようにして得られたブロック共重合体を部分的又は選択的に水添して得られるものである。この水添の方法、反応条件については特に限定はなく、通常は、20〜150℃、0.1〜10MPaの水素加圧下、水添触媒の存在下で行われる。
この場合、水添率は、水添触媒の量、水添反応時の水素圧力、又は反応時間等を変えることにより任意に選定することができる。水添触媒として通常は、元素周期表Ib、IVb、Vb、VIb、VIIb、VIII族金属のいずれかを含む化合物、例えば、Ti、V、Co、Ni、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Pt原子を含む化合物を用いることができる。具体的には、例えば、Ti、Zr、Hf、Co、Ni、Pd、Pt、Ru、Rh、Re等のメタロセン系化合物、Pd、Ni、Pt、Rh、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等の担体に担持させた担持型不均一系触媒、Ni、Co等の金属元素の有機塩又はアセチルアセトン塩と有機アルミニウム等の還元剤とを組み合わせた均一系チーグラー型触媒、Ru、Rh等の有機金属化合物又は錯体、及び水素を吸蔵させたフラーレンやカーボンナノチューブ等を挙げることができる。この中で、Ti、Zr、Hf、Co、Niのいずれかを含むメタロセン化合物は、不活性有機溶媒中、均一系で水添反応できる点で好ましい。更に、Ti、Zr、Hfのいずれかを含むメタロセン化合物が好ましい。特に、チタノセン化合物とアルキルリチウムとを反応させた水添触媒は安価で工業的に特に有用な触媒であるので好ましい。なお、上記水添触媒は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用することもできる。水添後は、必要に応じて触媒の残渣を除去し、又はフェノール系又はアミン系の老化防止剤を添加し、その後、水添ジエン系共重合体溶液から水添ジエン系共重合体を単離する。水添ジエン系共重合体の単離は、例えば、水添ジエン系共重合体溶液にアセトン又はアルコール等を加えて沈殿させる方法、水添ジエン系共重合体溶液を熱湯中に撹拌下投入し、溶媒を蒸留除去する方法等により行うことができる。
本発明の第一及び第二の医療用樹脂組成物に含まれる水添ジエン系共重合体中に占める、全ビニル芳香族化合物単位の含有量(以下、「全ビニル芳香族化合物単位含有量」ともいう)は、20〜70質量%、好ましくは25〜65質量%の範囲内である。全ビニル芳香族化合物単位含有量が70質量%を超えると、これを用いて得られる医療用成形品の柔軟性が不足する傾向にある。また、全ビニル芳香族化合物単位含有量が20質量%未満であると、得られる医療用成形品の耐擦過性及び強度が不足する傾向にある。
一方、本発明の第三及び第四の医療用樹脂組成物に含まれる水添ジエン系共重合体の全ビニル芳香族化合物単位含有量は、10〜70質量%、好ましくは15〜60質量%の範囲内である。全ビニル芳香族化合物単位含有量が70質量%を超えると、得られる医療用成形品の柔軟性が不足する傾向にある。また、全ビニル芳香族化合物単位含有量が10質量%未満であると、得られる医療用成形品の耐擦過性及び強度が不足する傾向にある。
本発明の第一の医療用樹脂組成物に含まれる水添ジエン系共重合体中の、全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、(B)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物単位含有量の割合(BS)(以下、単に「BS割合」ともいう)は10〜80%であり、25〜75%であることが好ましく、30〜70%であることが更に好ましい。BS割合が10%未満であると、得られる医療用成形品の耐擦過性及び強度が不足する傾向にあり、80%を超えると、得られる医療用成形品の柔軟性が不足する傾向にある。
一方、本発明の第三の医療用樹脂組成物に含まれる水添ジエン系共重合体中のBS割合は10〜100%であり、20〜100%であることが好ましく、30〜100%であることが更に好ましい。BS割合が10%未満であると、得られる医療用成形品の耐擦過性及び強度が不足する傾向にある。
なお、BS割合は、重合時のビニル芳香族化合物の仕込量から以下の式を用いて求められる。
BS割合(%)=(水添ジエン系共重合体のそれぞれの(B)ブロック、又は(D)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物の仕込合計量/水添ジエン系共重合体中に占める全ビニル芳香族化合物の仕込合計量)×100
また、本発明の第二の医療用樹脂組成物に含まれる水添ジエン系共重合体は、水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、長連鎖のビニル芳香族化合物単位含有量の割合(LS)(以下、単に「LS割合」ともいう)が10〜80%であり、20〜70%であることが好ましく、30〜50%であることが更に好ましい。LS割合が10%未満であると、得られる医療用成形品の柔軟性が不足する傾向にあり、80%を超えると、得られる医療用成形品の耐擦過性が不足する傾向にある。
一方、本発明の第四の医療用樹脂組成物に含まれる水添ジエン系共重合体のLS割合は、0〜80%であり、0〜70%であることが好ましく、0〜50%であることが更に好ましい。LS割合が80%を超えると、得られる医療用成形品の耐擦過性が不足する傾向にある。
ここで、本発明にいう「LS割合」について説明する。一般に、スチレン−ブタジエン共重合体の1H−NMRスペクトルでは、スチレンのフェニルプロトンは、そのケミカルシフトが7ppm付近、及び6.5ppm付近の2つのピークを示し、6.5ppm付近のピークは長連鎖を形成したスチレンのオルト位のフェニルプロトンであるとされている(Boveyら、J.Polym.Sci.Vol38,1959,p73〜90)。そこで、本発明では、これらのピークのうち、高磁場側の6.5ppm付近のピークを「長連鎖のビニル芳香族化合物」として、270MHzの1H−NMRで測定される7.6〜6.0ppm部分の面積強度を全ビニル芳香族化合物単位含有量、6.8〜6.0ppm部分の面積強度を長連鎖のビニル芳香族化合物単位含有量とし、LS割合を、以下の式を用いて求める。
LS割合(%)=〔(6.8〜6.0ppm部分の面積強度×2.5)/(7.6〜6.0ppm部分の面積強度)〕×100
本発明の第一及び第二の医療用樹脂組成物に含まれる水添ジエン系共重合体における、水添前の共役ジエン化合物由来のビニル結合(1,2−及び3,4−ビニル結合)含量は、30〜75%であり、40〜75%であることが好ましく、50〜75%であることが更に好ましく、60〜75%であることが特に好ましい。かかる含量が30%未満であると、得られる医療用成形品の柔軟性が不足する傾向にあり、75%を超えると、生産速度が極めて遅くなる場合があるため好ましくない。
一方、本発明の第三の医療用樹脂組成物に含まれる水添ジエン系共重合体に占める(C)ブロックの含有量は、10〜80質量%であり、12〜60質量%であることが好ましく、15〜40質量%であることが最も好ましい。(C)ブロックの含有量が80質量%を超えると、得られる医療用成形品の柔軟性が不足する傾向にある。また、(C)ブロックの含有量が10質量%未満であると、得られる医療用成形品の強度が不足する傾向にある。
また、本発明の第四の医療用樹脂組成物に含まれる水添ジエン系共重合体は、50〜150℃の範囲に少なくとも1つの融解ピーク(結晶融解ピーク)を有するものである。この融解ピーク温度は、示差走査熱量測定法(DSC法)により測定される。具体的には、示差走査熱量計(DSC)を使用し、サンプルとなる水添ジエン系共重合体を200℃で10分保持した後、−80℃まで10℃/分の速度で冷却し、次いで−80℃で10分間保持した後、10℃/分の速度で昇温したときの熱流量(結晶融解熱量)のピーク温度である。なお、その融解ピークの結晶融解熱量は5〜70J/g、好ましくは10〜50J/gの範囲である。
また、本発明の第三及び第四の医療用樹脂組成物に含まれる水添ジエン系共重合体の、(C)ブロックにおける水添前の共役ジエン化合物由来のビニル結合(1,2−及び3,4−ビニル結合)含量は20%未満である。かかる含量が20%以上であると、得られる医療用成形品の強度が不足するとともに耐熱性が不足する傾向にある。なお、(C)ブロックにおける水添前の共役ジエン化合物由来のビニル結合(1,2−及び3,4−ビニル結合)含量の下限値は特に限定されないが、製造上の観点から5%以上であることが好ましい。また、本発明の第三及び第四の医療用樹脂組成物に含まれる水添ジエン系共重合体の、(D)ブロックにおける水添前の共役ジエン化合物由来のビニル結合(1,2−及び3,4−ビニル結合)含量は30〜75%であり、40〜75%であることが好ましく、50〜75%であることが更に好ましく、60〜75%であることが特に好ましい。かかる含量が30%未満であると、得られる医療用成形品の柔軟性が不足する傾向にあり、75%を超えると、生産速度が極めて遅くなる場合があるため好ましくない。
本発明の医療用樹脂組成物は、これまで述べてきた水添ジエン系共重合体(イ)と、DSC法により測定される融解ピーク温度が100〜200℃であるポリオレフィン系樹脂(ロ)とを、任意の割合で混合してなるものである。水添ジエン系共重合体(イ)に対して特定のポリオレフィン系樹脂(ロ)を混合することにより、耐擦過性、及び耐付き破り性に優れ、高温蒸気滅菌することが可能な医療用成形品を得ることができる。また、本発明の医療用樹脂組成物は、内分泌撹乱の可能性が懸念される化学物質等を可塑剤として用いる必要がないため、高い安全性等が要求される医療用成形品を構成する材料として特に好適である。なお、耐擦過性、及び耐突き破り性により優れ、更に高温蒸気滅菌に良好に耐え得る医療用成形品を得るという観点からは、DSC法により測定されるポリオレフィン系樹脂(ロ)の融解ピーク温度は、110〜180℃であることが好ましく、130〜170℃であることが更に好ましい。
ポリオレフィン系樹脂(ロ)としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン樹脂、メチルペンテン樹脂等を挙げることができる。この中で、ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。また、ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、プロピレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン共重合体等を挙げることができる。本発明においては、これらのポリオレフィン系樹脂の中でも、更に高温蒸気滅菌に良好に耐え得る医療用成形品を得るため、特にポリプロピレン系樹脂が好ましい。
本発明の医療用樹脂組成物は、水添ジエン系共重合体(イ)と、ポリオレフィン系樹脂(ロ)の含有割合が、質量比で(イ)/(ロ)=90/10〜10/90(但し、(イ)+(ロ)=100)であることが好ましく、(イ)/(ロ)=85/15〜40/60であることが更に好ましく、(イ)/(ロ)=85/15〜50/50であることが特に好ましい。水添ジエン系共重合体(イ)の含有割合が90質量%を超えると、得られる医療用成形品の耐熱性が不足する傾向にある。一方、水添ジエン系共重合体(イ)の含有割合が10質量%未満になると、得られる医療用成形品の柔軟性が不足する傾向にある。
本発明の医療用樹脂組成物に含まれるポリオレフィン系樹脂(ロ)の、230℃、21.2N荷重で測定したメルトフローレート(MFR)は、押出成形性等を考慮すると、0.01〜100g/10分であることが好ましく、0.01〜50g/10分であることが更に好ましく、0.05〜15g/10分であることが特に好ましい。
本発明の医療用樹脂組成物に含まれる水添ジエン系共重合体における、共役ジエン化合物由来の二重結合は、その90%以上が水添されていることが好ましく、95%以上が水添されていることが更に好ましい。水添率が90%未満である場合、得られる医療用成形品の耐熱性、強度が不足する傾向がある。なお、共役ジエン化合物由来の二重結合は、側鎖二重結合としての1,2−及び3,4−ビニル結合、並びに主鎖二重結合としての1,4−結合があるが、これらのうちの少なくとも1,2−及び3,4−ビニル結合は、その90%以上が水添されていることが好ましい。
例えば、本発明の医療用樹脂組成物使用して、Tダイ成形、インフレーション成形、又はカレンダー成形等の成形方法によって医療用成形品を製造するに際しては、水添ジエン系共重合体の、230℃、21.2N荷重で測定されるMFRは0.1〜100g/10分であることが好ましく、1.0〜50g/10分であることが更に好ましく、2.0〜30g/10分であることが特に好ましい。MFRが0.1g/10分未満であると、十分な押出し速度が得られず生産性が低くなる場合がある。一方、MFRが100g/10分を超えると、インフレーション成形を採用した場合にはバブルを形成し難くなることがあり、Tダイ成形を採用した場合にはドローダウンが激しくなることがあり、いずれの場合であっても生産性が低くなる傾向にある。
本発明の医療用樹脂組成物に含まれる水添ジエン系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、5万〜70万であることが、物性、生産性の面でより優れた医療用成形品を提供することができるために好ましく、8万〜35万であることが更に好ましい。このMwが5万未満であると、生産性が低くなる傾向にある。一方、Mwが70万を超えると、十分な押出し速度が得られず生産性が低くなる場合がある。
なお、水添ジエン系共重合体に代えて、又は水添ジエン系共重合体とともに、これまで述べてきた水添ジエン系共重合体にアミノ基、アルコキシシリル基、ヒドロキシル基、酸無水物基、エポキシ基等の官能基を導入してなる変性水添ジエン系共重合体を用いることも可能である。かかる変性水添ジエン系共重合体としては、例えば下記の共重合体((a)〜(f))を挙げることができる。
(a)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とを、アミノ基を有する有機アルカリ金属化合物の存在下で共重合し、得られた共重合体を水素添加した共重合体。
(b)ビニル芳香族化合物と、共役ジエン化合物と、アミノ基を有する不飽和単量体とを、有機アルカリ金属化合物の存在下で共重合し、得られた共重合体を水素添加した共重合体。
(c)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とを、有機アルカリ金属化合物の存在下で共重合し、得られた共重合体の活性点に、アルコキシシラン化合物を反応させた共重合体とし、その共重合体を水素添加した共重合体。
(d)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とを、有機アルカリ金属化合物の存在下で共重合し、得られた共重合体の活性点に、エポキシ化合物又はケトン化合物を反応させた共重合体とし、その共重合体を水素添加した共重合体。
(e)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とを、有機アルカリ金属化合物の存在下で共重合し、得られた重合体に水素添加した共重合体に、(メタ)アクリロイル基含有化合物、エポキシ基含有化合物、及び無水マレイン酸から選ばれる少なくとも1種を溶液中又は押出機等の混練機中で反応させて得られる共重合体。
(f)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とを、有機アルカリ金属化合物の存在下で共重合し、カップリング剤として、エポキシ化1,2−ポリブタジエン、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、ベンゼン−1,2,4−トリイソシアナート、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、テレフタル酸ジエチル、無水ピロメリット酸等を用いることにより、分子鎖の中央に−OH基、−NH−CO−基、−NH−基、−NH2基等の官能基を導入した共重合体。
変性水添ジエン系共重合体中に占める官能基の割合は、通常、水添ジエン系共重合体を構成する分子に対して、0.001〜10モル%であることが好ましく、0.005〜8モル%であることが更に好ましく、0.01〜5モル%であることが特に好ましい。
本発明の医療用樹脂組成物には、通常の熱可塑性材料に用いられる添加剤を必要に応じて添加することができる。例えば、フタル酸エステル等の可塑剤又は補強剤、パラフィン系オイル等のゴム用充填剤、シリカ、タルク、炭酸カルシウム等のフィラー、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、発泡剤、着色剤、顔料、炭素繊維、金属繊維、ガラスビーズ、架橋剤、架橋助剤等、又はこれらの混合物を添加することができる。
また、本発明の医療用樹脂組成物を構成する成分として、上述してきた水添ジエン系共重合体以外の熱可塑性材料やゴム状重合体を配合してもよい。具体的には、ポリブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン等のポリメチルペンテン類、水添テルペン樹脂、石油樹脂、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のポリアクリル酸アルキルエステル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル等のポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリブタジエン重合体及び/又はその水添物、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、ブタジエン−イソプレン共重合体及び/又はこれらの水添物、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、アクリルゴム、エチレン系アイオノマー等を配合することができる。また、本発明の医療用樹脂組成物の特性を損なうことのない配合量であれば、熱硬化性重合体、具体的にはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂等を配合することも可能である。
次に、本発明の医療用成形品について説明する。本発明の医療用成形品は、これまで述べてきた、本発明の実施形態であるいずれかの医療用樹脂組成物からなるものである。即ち、水添ジエン系共重合体(イ)とオレフィン系樹脂(ロ)とを混合してなる医療用樹脂組成物により構成されたものであるため、耐擦過性、及び耐突き破り性に優れているとともに、高圧蒸気滅菌することが可能な医療用成形品である。また、内分泌撹乱の可能性が懸念される化学物質等を可塑剤として用いる必要がないため、高い安全性等が要求される医療用途に特に好適である。
本発明の医療用成形品としては、医療において取り扱われる液体、具体的には血液若しくは血液成分、又は生理食塩水、電解質液、デキストラン製剤、マンニトール製剤、糖類製剤、アミノ酸製剤、更には前記以外の薬品溶液等の医薬液を保存又は搬送するためのボトル及び箱状物をはじめとする容器(バッグを含む)や、チューブ、医療器具等を挙げることができる。より具体的には、医療用チューブ、カテーテル、輸液バッグ、血液バッグ、連続携行式腹膜透析(CAPD)バッグ、及び連続携行式腹膜透析(CAPD)用排液バッグ等を挙げることができる。なお、本発明の医療用成形品は、単層構造のみならず、基材層と、この基材層の少なくとも一方の面上に配設された表面層とを備えた、多層構造を有する多層積層体としてもよい。
次に、本発明の医療用成形品の製造方法について説明する。本発明の医療用成形品を製造するには、まず、水添ジエン系共重合体(イ)とオレフィン系樹脂(ロ)とを所定の割合で混合して、医療用樹脂組成物を調製する。混合は、例えばバンバリ−ミキサー、ロールミル、押出機等の適当な混合機を用いて行うことができるが、押出成形機中で溶融混練することが好ましく、特に2軸押出機を用いて溶融混練することが好ましい。2軸押出機により溶融混練して得たものを用いれば、フィッシュアイの少ない、外観に優れた医療用成形品を得ることができる。なお、2軸押出機を用いて溶融混練して得た医療用樹脂組成物は、通常、ペレット化して用いることができる。
得られた医療用樹脂組成物を、押出成形、インフレーション成形、Tダイ成形、又はカレンダー成形等の従来公知の成形方法によって所望とする形状、具体的には、シート状、チューブ状、又は容器形状等に成形することにより、本発明の医療用成形品を容易に製造することができる。
なお、本発明の医療用成形品を多層構造のものとするには、溶融混練すること等により得た1種以上の医療用樹脂組成物を共押出成形し、基材層の少なくとも一方の面上に表面層を配設すればよい。共押出成形するに際しては、共押出しタイプの成形機、具体的にはインフレーション成形機又はTダイ押出成形機を好適に用いることができる。Tダイ押出成形機のTダイは、マルチマニホールドタイプ、又はフィードブロックタイプのいずれでもよい。なお、共押出成形して製造すること以外にも、例えば(a)基材層と表面層とをインフレーション法、Tダイ法等の通常の成形方法でそれぞれフィルム状又はシート状に成形した後、これらを熱貼合する方法や、(b)前記(a)の方法で予め成形した基材層又は表面層の面上に、他の層を押出しラミネートする方法、によっても製造することができる。
共押出成形法としては、基材層の一方の面に表面層を積層する二層共押出成形法の他、基材層の両方の面に、同種又は異種の表面層を積層する三層共押出成形法や、四層以上の多層押出成形法を採用することができる。なお、柔軟性と、耐ブロッキング性、耐擦過性、及び耐突き破り性とのバランスの観点から、基材層の両面に表面層を積層することが好ましい。基材層(中間基材層)の両面に表面層(外表面層と内表面層)を積層した構造の場合、薬液等と接触しない中間基材層、及び/又は薬液等と接触しない外表面層に、紫外線吸収剤を配合して紫外線防止性能を付与することが好ましい。同じく、基材層(中間基材層)の両面に表面層(外表面層と内表面層)を積層した構造の場合、医療過誤を防止するために、中間基材層、及び/又は外表面層に着色することも可能である。
本発明の医療用成形品を多層構造とした場合における全体の厚みは、要求される特性や用途に応じて適宜選択することができるが、成形性、強度維持等の観点から10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることが更に好ましい。厚みの上限については特に限定されないが、概ね20mm以下であればよい。なお、基材層と表面層との厚さの比率は、要求される特性や用途に応じて適宜選択することができるが、基材層/表面層=1/1〜20/1であることが好ましく、基材層/表面層=1/1〜8/1であることが更に好ましい。
本発明の医療用成形品を、輸液バッグやCAPDバッグ等のバッグとするには、まず、Tダイ成形やインフレーション成形等の押出成形によりシート状の基材を得る。シート状の基材は無延伸状態、延伸状態のいずれであってもよい。次いで、得られたシート状の基材をサーモフォーミング、ブロー、延伸、裁断、熱シール等の手法を適宜採用して加工することにより、所定形状のバッグを得ることができる。なお、耐ブロッキング性を向上させる目的で、医療用成形品の内面又は外面を粗面加工(エンボス加工)してもよい。なお、前述の押出成形のうち、インフレーション成形は、この成形方法によって得た基材をバッグに加工する際にもその内面に雑菌や異物が付着し難いため、医療用成形品を製造する成形方法として好適である。
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、各種物性値の測定方法、及び評価方法を以下に示す。
(1)水添ジエン系共重合体の物性値測定方法
水添ジエン系共重合体の物性値を以下の方法で測定した。
[水添率]:共役ジエンの水添率は、四塩化炭素溶液を用い、270MHz、1H−NMRスペクトルから算出した。
[メルトフローレート(MFR)]:JIS K7210に準拠して、230℃、21.2N荷重で測定した。
[全スチレン単位含有量(「全結合スチレン含有量」ともいう)]:四塩化炭素溶液を用い、270MHz、1H−NMRスペクトルから算出した。
[ビニル結合含量(V)]:ビニル結合(1,2−結合及び3,4−結合)含量は、赤外分析法を用い、ハンプトン法により算出した。
[BS割合]:以下の式を用いて仕込量から算出した。
BS割合(%)=(水添ジエン系共重合体のそれぞれの(B)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物の仕込合計量/水添ジエン系共重合体中に占める全ビニル芳香族化合物の仕込合計量)×100
[LS割合]:試料30mgを0.6mlの四塩化炭素に溶解した溶液を、テトラメチルシランを標準物質とし、1H−NMR(270MHz)を用いて、23℃で50回積算し、以下の式を用いて算出した。
LS割合(%)=〔(6.8〜6.0ppm部分の面積強度×2.5)/(7.6〜6.0ppm部分の面積強度)〕×100
[結晶融解ピーク温度/結晶融解熱量]:示差走査熱量計(DSC)を用いてサンプルを200℃で10分保持した後、−80℃まで10℃/分の速度で冷却し、次いで−80℃で10分間保持した後、10℃/分の速度で昇温したときの熱流量(結晶融解熱量(J/g))におけるピーク温度を、結晶融解ピーク温度(℃)とした。
[水添ジエン系共重合体の重量平均分子量(Mw)]:ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(室温GPC、カラム:東ソー社製、GMH−XL)を用いて、ポリスチレン換算で求めた。なお、(C)ブロックを有するポリマーについては水添前のジエン系共重合体の重量平均分子量を同様の方法で求めた。
(2)水添ジエン系共重合体の製造例
(製造例1:水添ジエン系共重合体(H−1)の製造)
内容積50リットルのオートクレーブに、脱気・脱水したシクロヘキサン25kg、スチレン200gを仕込んだ後、テトラヒドロフラン750g、及びn−ブチルリチウム2.8gを加え、50℃からの断熱重合を20分行った。反応液を20℃とした後、1,3−ブタジエン3700g、及びスチレン1000gを加え断熱重合を行った。転化率がほぼ100%になった後、更にスチレン100gを加え重合を行った。
重合が完結した後に水素ガスを供給し、特開2000−37632号公報記載のチタノセン化合物を使用して水添反応を行った。
得られた水添ジエン系共重合体(H−1)の水添率は98%、重量平均分子量は26万、結合スチレン含量は26質量%、BS割合は77%、LS割合は21%、(B)ブロックのビニル結合含量は73%、MFRは10g/10分であった。なお、物性値の測定結果を表1に示す。
以下、同様の方法により、モノマー量、テトラヒドロフラン添加量、触媒量、重合温度、重合時間等を変量することにより、表1に示すH−2〜H−4、R−1〜R−2の水添ジエン系共重合体を製造した。また、これらの水添ジエン系共重合体の物性値の測定結果を表1に示す。
(製造例2:水添ジエン系共重合体(H−4)の製造)
窒素置換された内容積50リットルの反応容器に、シクロヘキサン24kg、テトラヒドロフラン1.2g、1,3−ブタジエン800g、及びn−ブチルリチウム3.6gを加え、重合開始温度70℃にて重合し、反応完結後、温度を40℃としてテトラヒドロフラン800gを添加し、次いで1,3−ブタジエン2400g及びスチレン800gを逐次添加しながら断熱重合した。その後、系内にメチルジクロロシラン2.8gを添加して30分間反応させることによりポリマーを得た。得られたポリマーは1段目にブタジエンブロックのビニル結合を14%含有し、2段目にブタジエンブロックのビニル結合を70%含有するものであり、GPCで測定した重量平均分子量は24万、カップリング率は78%であった。また、水添ジエン系共重合体(H−4)のDSCチャートを図1に示す。なお、このDSCチャートから、この水添ジエン系共重合体(H−4)の結晶融解ピーク温度は92.7℃であった。
Figure 2005247895
(実施例1)
ポリオレフィン系樹脂(チッソ社製、ランダムPP(商品名:F8577)、MFR=8g/10分)70質量部と、前述の水添ジエン系共重合体(H−1)30質量部とを配合し、池貝社製二軸押出成形機PCM−45を使用して溶融混練した後にペレット化して、表面層(外面)用の重合体組成物のペレットを得た。また、同様にして、前記ポリオレフィン系樹脂50質量部と、所定の水添ジエン系共重合体(JSR社製、水添ジエン系ポリマー(商品名:ダイナロン1320P)、MFR=3.5g/10分、スチレン含有量=10%)50質量部とを溶融混練した後にペレット化し、基材層用の樹脂組成物のペレットを得た。得られた各組成物、及び表面層(内面)用としての前記ポリオレフィン系樹脂を、フィードブロック付きTダイを備えた、三種三層フィルムを成形することが可能な押出成形機(モダンマシナリー社製、基材層用:65mmφ、表面層用:50mmφ)に供給し、押出し温度240℃、冷却ロール温度40℃として三層共押出しを行い、厚みが200μm、各層の厚み比率(表面層(外面)/基材層/表面層(内面))が1/4/1であるシート状の三種三層積層体(実施例1)を作製した。
(実施例2〜4、比較例1〜3)
表面層(外面)用の重合体組成物及び基材層用の樹脂組成物の組成を表2に示した通りとしたこと以外は、実施例1と同様にしてシート状の三種三層積層体(実施例2〜4、比較例1〜3)を作製した。
実施例1〜4、比較例1〜3の三種三層積層体(シート)について、ヤング率(MPa)、及び引張り破断強度(MPa)を測定した。測定結果を表2に示す。また、これらのシートの耐擦過性、及び耐突き破り性を評価した。結果を表2に示す。なお、ヤング率、及び引張り破断強度の測定方法、耐擦過性、耐突き破り性、及び耐水蒸気滅菌性の評価方法を以下に示す。
[ヤング率]:幅1cmの短冊状試験片を使用し、この試験片を、引張り速度5mmにて引っ張った際の初期弾性率(ヤング率)を測定した。なお、測定されたヤング率の値が小さいほど柔軟性が良好であると評価することができる。
[引張り破断強度]:JIS K7127記載の5号ダンベル打ち抜き刃を使用してMD(引き取り方向)にサンプルを打ち抜き、500mm/minにて測定した。
[耐擦過性]:JIS L0801記載の学振型摩擦堅牢試験機(安田精機製作所社製)を用いて、シートの表面(表面層)をカナキン3号布で100往復(荷重500g)し、その後のシートの表面を目視観察することにより下記の基準に従って3段階に評価した。
○:傷付かない。
△:殆ど傷付かない。
×:傷が付く。
[耐突き破り性]:コルク穴開け器(外径=8mm、内径6mm)を使用して5枚重ねにしたシートに手動で穴を開ける際の開け易さを、下記の基準に従って評価した。
○:コルク穴開け器がシートに喰い込みにくく、穴が開きにくい。
×:コルク穴開け器がシートに容易に喰い込み、かつ容易に穴が開く。
[耐水蒸気滅菌性]:シートを121℃のオートクレーブ中で30分処理した後室温まで冷却して取り出し、下記の基準に従って評価した。
○:変形が無い。
×:変形が見られた。
Figure 2005247895
表2に示すように、実施例1〜4のシートは柔軟性に優れているとともに引張り破断強度の値が高く、また耐擦過性、耐突き破り性、及び耐水蒸気滅菌性にも優れたものであることが明らかである。これに対し、比較例1,2のシートは、引張り破断強度の値については実施例と比較しても大きく劣ることはない反面、耐擦過性、及び耐突き破り性が不十分であることが明らかである。なお、比較例3のシートは耐水蒸気滅菌性は同等であるものの、柔軟性に劣ることが明らかである。
(実施例5)
水添ジエン系共重合体(H−1)80質量部と、ポリプロピレン(商品名:XF1800(チッソ石油化学社製)、MFR=1.5)20質量部と、エルカ酸アミド(商品名:ニュートロンS(日本精化社製))0.05質量部と、グリセリンモノステアレート(商品名:リケマールS100(リケンビタミン社製))0.1質量部とを配合し、池貝社製の40mm一軸押出機を使用して、押出し温度210℃でチューブ用ダイスから押し出し、約5m/minの速度で引き取ることにより、外径5.5mm、内径4mmのチューブ(実施例5)を作製した。
(実施例6〜8、比較例4,5)
水添ジエン系共重合体の種類を表3に示した通りとしたこと以外は、実施例5と同様にしてチューブ(実施例6〜8、比較例4,5)を作製した。
実施例5〜8、比較例4,5のチューブについて、引張り破断強度(MPa)、及び硬度(度)を測定した。測定結果を表3に示す。また、これらのチューブのキンク性、及び耐擦過性を評価した。結果を表3に示す。なお、引張り破断強度、及び硬度の測定方法、並びにキンク性、及び耐擦過性の評価方法を以下に示す。
[引張り破断強度]:チャック間距離が5cmであるチャックの間にチューブをセットし、500mm/minの引張り速度にて測定した。
[キンク性]:150mmの長さのチューブの両端を、引張試験機の治具に、治具どうしの間隔が100mmとなるようにセットした。この状態で、100mm/分の圧縮速度でチューブを圧縮し、キンクの有無を目視観察することにより、以下の基準に従って3段階に評価した。
○:非常に良い(治具どうしの間隔が3cm未満でキンク発生)。
△:良い(治具どうしの間隔が3cm以上4cm未満でキンク発生)。
×:悪い(治具どうしの間隔が4cm以上でキンク発生)。
[硬度]:厚み6.3mmのプレスシートを熱プレスにて作製し、JIS K6253に準拠して測定した。
[耐擦過性]:JIS L0801記載の学振型摩擦堅牢試験機(安田精機製作所社製)を用いて、3本を隣接して固定したチューブの表面をカナキン3号布で100往復(荷重500g)し、その後のサンプルの表面を目視観察することにより下記の基準に従って3段階に評価した。
○:傷付かない。
△:殆ど傷付かない。
×:傷が付く。
Figure 2005247895
表3に示すように、実施例5〜8のチューブは、比較例4,5のチューブに比して優れたキンク性及び耐擦過性を示すものであることが明らかである。なお、比較例4,5のチューブは、その引張り破断強度や柔軟なものも一部あるが、実施例5〜8のチューブはこれらの物性値のバランスが極めて良好であり、前述の優れたキンク性及び耐擦過性を示すものであることが判明した。以上の結果から、本発明の医療用成形品(チューブ)の優れた特性を確認することができた。
本発明の医療用成形品は、耐擦過性、及び耐突き破り性に優れ、高圧蒸気滅菌することが可能なものである。従って、血液若しくは血液成分、又は医薬液を保存又は搬送するための容器(バッグを含む)や、チューブ、医療器具等、より具体的には、医療用チューブ、カテーテル、輸液バッグ、血液バッグ、連続携行式腹膜透析(CAPD)バッグ、及び連続携行式腹膜透析(CAPD)用排液バッグ等として好適に用いることができる。
水添ジエン系共重合体(H−4)のDSCチャートである。

Claims (8)

  1. 少なくとも2つの、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体を水素添加した下記(1)〜(3)の条件を満たす水添ジエン系共重合体、並びに、
    示差走査熱量測定法(DSC法)により測定される融解ピーク温度が100〜200℃であるポリオレフィン系樹脂、からなる医療用樹脂組成物。
    (1):前記水添ジエン系共重合体中に占める、全ビニル芳香族化合物単位含有量が20〜70質量%である。
    (2):前記水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、前記(B)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物単位含有量の割合(BS)が10〜80%である。
    (3):前記水添ジエン系共重合体中の、前記共役ジエン化合物由来のビニル結合含量が30〜75%である。
  2. 少なくとも2つの、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(A)と、少なくとも1つの、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(B)と、を含有するブロック共重合体を水素添加した下記(1)〜(3)の条件を満たす水添ジエン系共重合体、並びに、
    示差走査熱量測定法(DSC法)により測定される融解ピーク温度が100〜200℃であるポリオレフィン系樹脂、からなる医療用樹脂組成物。
    (1):前記水添ジエン系共重合体中に占める、全ビニル芳香族化合物単位含有量が20〜70質量%である。
    (2):前記水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、長連鎖のビニル芳香族化合物単位含有量の割合(LS)が10〜80%である。
    (3):前記水添ジエン系共重合体中の、前記共役ジエン化合物由来のビニル結合含量が30〜75%である。
  3. 少なくとも2つの、ビニル結合含量が20%未満である共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)と、少なくとも1つの、ビニル結合含量が20〜95%であるビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(D)と、を含有するブロック共重合体を水素添加した下記(1)〜(3)の条件を満たす水添ジエン系共重合体、並びに、
    示差走査熱量測定法(DSC法)により測定される融解ピーク温度が100〜200℃であるポリオレフィン系樹脂、からなる医療用樹脂組成物。
    (1):前記水添ジエン系共重合体中に占める、全ビニル芳香族化合物単位含有量が10〜70質量%である。
    (2):前記水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、前記(D)ブロックに含有されるビニル芳香族化合物単位含有量の割合(BS)が10〜100%である。
    (3):前記水添ジエン系共重合体中に占める、前記(C)ブロックの割合が10〜80質量%である。
  4. 少なくとも2つの、ビニル結合含量が20%未満である共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(C)と、少なくとも1つの、ビニル結合含量が20〜95%であるビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ブロック(D)と、を含有するブロック共重合体を水素添加した下記(1)〜(3)の条件を満たす水添ジエン系共重合体、並びに、
    示差走査熱量測定法(DSC法)により測定される融解ピーク温度が100〜200℃であるポリオレフィン系樹脂、からなる医療用樹脂組成物。
    (1):前記水添ジエン系共重合体中に占める、全ビニル芳香族化合物単位含有量が10〜70質量%である。
    (2):前記水添ジエン系共重合体中の全ビニル芳香族化合物単位含有量に対する、長連鎖のビニル芳香族化合物単位含有量の割合(LS)が0〜80%である。
    (3):前記水添ジエン系共重合体は、示差走査熱量測定法(DSC法)により50〜150℃の範囲に測定される融解ピークを有する。
  5. 前記水添ジエン系共重合体(イ)と、前記ポリオレフィン系樹脂(ロ)の含有割合が、質量比で(イ)/(ロ)=90/10〜10/90(但し、(イ)+(ロ)=100)である請求項1〜4のいずれか一項に記載の医療用樹脂組成物。
  6. 前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂である請求項1〜5のいずれか一項に記載の医療用樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の医療用樹脂組成物からなる医療用成形品。
  8. 医療用チューブ、カテーテル、輸液バッグ、血液バッグ、連続携行式腹膜透析(CAPD)バッグ、又は連続携行式腹膜透析(CAPD)用排液バッグである請求項7に記載の医療用成形品。
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