JP4432097B2 - 粘性の高い難削材の高速切削で切粉に対してすぐれた表面潤滑性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具の製造方法 - Google Patents
粘性の高い難削材の高速切削で切粉に対してすぐれた表面潤滑性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、切粉に対する表面潤滑性にすぐれ、したがって特にステンレス鋼や軟鋼などのきわめて粘性が高く、かつ切粉が切刃表面に溶着し易い難削材の高速切削加工に用いた場合にも、切刃に欠けやチッピング(微小欠け)などの発生なく、すぐれた切削性能を長期に亘って発揮する表面被覆超硬合金製切削工具(以下、被覆超硬工具という)の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、切削工具には、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチップ、前記被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリルやミニチュアドリル、さらに前記被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエンドミルなどがあり、また前記スローアウエイチップを着脱自在に取り付けて前記ソリッドタイプのエンドミルと同様に切削加工を行うスローアウエイエンドミル工具などが知られている。
さらに、従来、一般に、上記の切削工具として、炭化タングステン基超硬合金基体(以下、超硬基体という)の表面に、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1種または2種以上からなるTi化合物層と、酸化アルミニウム(以下、Al2O3で示す)層、および例えば特開昭57−39168号公報や特開昭61−201778号公報に記載されるAl2O3の素地に酸化ジルコニウム(以下、ZrO2で示す)相が分散分布してなるAl2O3−ZrO2混合層(以下、Al2O3−ZrO2混合層と云う)のいずれか、または両方で構成された硬質被覆層を3〜30μmの平均層厚で化学蒸着してなる被覆超硬工具が知られている。
【0003】
また、一般に、上記の被覆超硬工具の硬質被覆層を構成するTi化合物層およびAl2 O3 層が粒状結晶組織を有し、かつ前記Al2O3層はα型結晶構造をもつものやκ型結晶構造をもつものなどが広く実用に供されており、さらにこれらAl2O3層について、例えば1.5オングストロームの波長を有するCukα線を線源として用いてX線回折を行うと、α―Al2 O3 層であれば、これの形成条件によって、いずれも2θで、25.6度(012結晶面配向)、35.1度(104結晶面配向)、37.8度(110結晶面配向)、43.4度(113結晶面配向)、52.6度(024結晶面配向)、57.5度(116結晶面配向)、66.5度(124結晶面配向)、および68.2度(030結晶面配向)のうちのいずれかの回折角に最高回折ピーク高さが現れるX線回折パターンを示すα―Al2 O3 層を形成することができ、またκ―Al2 O3 層であると、同じくこれの形成条件によって、いずれも2θで、19.7度、29.4度、32.1度、34.9度、37.3ど、43.9度、52.6度、56.0度、62.3度、および65.2度のうちのいずれかの回折角に最高回折ピーク高さが現れるX線回折パターンを示すκ―Al2 O3 層を形成することができることも良く知られている。
【0004】
さらに例えば特開平6−8010号公報や特開平7−328808号公報に記載されるように、上記被覆超硬工具の硬質被覆層を構成するTi化合物層のうちのTiCN層を、層自身の靭性向上を目的として、通常の化学蒸着装置にて、反応ガスとして有機炭窒化物を含む混合ガスを使用し、700〜950℃の中温温度域で化学蒸着することにより形成して縦長成長結晶組織をもつようにすることも知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年の切削加工装置のFA化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削工具には1種類の工具できるだけ多くの材種の被削材を切削加工できる汎用性が求められると共に、切削加工も高速化の傾向にあるが、上記の従来被覆超硬工具においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の条件での切削加工に用いた場合には問題はないが、これをきわめて粘性の高いステンレス鋼や軟鋼などの被削材の高速切削に用いた場合には、これら被削材の切粉は、硬質被覆層を構成するAl2O3層やTi化合物層に対する親和性が高いために、切刃表面に溶着し易く、この溶着現象は切削加工が高速化すればするほど顕著に現れるようになり、この溶着現象が原因で切刃に欠けやチッピングが発生し、この結果比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、特にステンレス鋼や軟鋼などの高速切削加工に用いた場合にも、切刃表面に切粉の溶着し難い被覆超硬工具を開発すべく研究を行った結果、
(a)上記の従来被覆超硬工具の表面に、
反応ガス組成を、体積%で、
TiCl4:0.2〜10%、
CO2:0.1〜10%、
Ar:5〜60%、
H2:残り、
とし、かつ、
反応雰囲気温度:800〜1100℃、
反応雰囲気圧力:4〜70kPa(30〜525torr)、
とした条件で、0.1〜5μmの平均層厚を有し、かつ、厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置で測定して、Tiに対する酸素の割合が原子比で1.2〜1.9、即ち、
組成式:TiOX 、
で表わした場合、
X:Tiに対する原子比で1.2〜1.9、
を満足するTi酸化物層を、最表面層として化学蒸着すると、この結果の上記Ti酸化物層が通常の硬質被覆層の表面に最表面層として化学蒸着された被覆超硬工具においては、前記最表面層を構成するTi酸化物層の被削材、特にステンレス鋼や軟鋼などの粘性の高い難削材に対する親和性がきわめて低く、これは高い発熱を伴う高速切削加工でも変わらず、この結果切刃に切粉が溶着することがない、すなわち前記Ti酸化物層がすぐれた表面潤滑性を発揮することから、切刃に欠けやチッピングの発生がなくなり、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するようになること。
【0007】
(b)上記(a)の被覆超硬工具の硬質被覆層の最表面層を構成するTi酸化物層をX線回折により観察したところ、組成式:TiOXのX値に対応して、Ti2O3、Ti3O5、Ti4O7、およびTi5O9などのうちの少なくともいずれかに主要ピークが現れる回折パターンを示し、これらの回折結果から前記Ti酸化物層はMagneli相と呼ばれるものからなり、一般的にTinO2n-1で表わされるものであること。
【0008】
(c)上記(a)において、従来被覆超硬工具の硬質被覆層を構成するAl2O3層またはAl2O3−ZrO2混合層の表面に、上記Ti酸化物層を最表面層として形成した場合で、そのX値が1.2〜1.9の範囲内の低い側、例えば1.2〜1.4の範囲内にある条件や、その平均層厚が0.1〜5μmの範囲内の薄い側、例えば0.1〜1μmの範囲内にある条件で形成した場合には、Al2O3層およびAl2O3−ZrO2混合層との間に十分な層間密着性が得られない場合がある(勿論、Ti酸化物層の形成条件によってはこの場合でも十分な層間密着性が得られるものである)ので、この場合には、上記Ti酸化物層形成後に、下記の雰囲気、即ち、
雰囲気ガス組成を、体積%で、
TiCl4:0.05〜10%、
不活性ガス:残り、
とし、かつ、
雰囲気温度:800〜1100℃、
雰囲気圧力:4〜90kPa、(30〜675torr)
とした雰囲気中に所定時間、例えば5分〜5時間程度保持して、上記Ti酸化物層と上記Al2O3層またはAl2O3−ZrO2混合層との界面部に、望ましくは0.05〜2μmの平均層厚で相互拡散層を形成し、これによって層間密着性を向上させるのが望ましく、さらにこの層間密着性向上処理は、上記Ti酸化物層のX値および平均層厚が上記の低い側および薄い側の値以外の値である場合であっても層間密着性のより一層の向上を図る目的で行ってもよいこと。
以上(a)〜(c)に示される研究結果を得たのである。
【0009】
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、超硬基体の表面に、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1種または2種以上からなるTi化合物層と、Al2O3層およびAl2O3−ZrO2混合層のいずれか、または両方で構成された硬質被覆層を3〜30μmの平均層厚で化学蒸着してなる被覆超硬工具における前記硬質被覆層の表面に、さらに最表面層として、
(a)反応ガス組成を、体積%で、
TiCl4:0.2〜10%、
CO2:0.1〜10%、
Ar:5〜60%、
H2:残り、
とし、かつ、
反応雰囲気温度:800〜1100℃、
反応雰囲気圧力:4〜70kPa(30〜525torr)、
とした条件で、
(b)組成式:TiOX 、
で表わした場合、厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置で測定して、
X:Tiに対する原子比で1.2〜1.9、
を満足すると共に、X線回折による観察で、組成式:TiOXのX値に対応して、Ti2O3、Ti3O5、Ti4O7、およびTi5O9のうちの少なくともいずれかに主要ピークが現れる回折パターンを示すTi酸化物層を0.1〜5μmの平均層厚で化学蒸着し、
(c)さらに、引き続いて、雰囲気ガス組成を、体積%で、
TiCl4:0.05〜10%、
不活性ガス:残り、
とし、かつ、
雰囲気温度:800〜1100℃、
雰囲気圧力:4〜90kPa、(30〜675torr)
とした雰囲気中に5分〜5時間保持して、上記Ti酸化物層と、Al2O3層およびAl2O3−ZrO2混合層のいずれか、または両方との界面部に0.05〜2μmの平均層厚で相互拡散層を形成し、層間密着性を向上してなる、
粘性の高い難削材の高速切削で切粉に対してすぐれた表面潤滑性を発揮する被覆超硬工具の製造方法に特徴を有するものである。
【0010】
なお、この発明の被覆超硬工具の製造方法において、最表面層を構成するTi酸化物層における酸素(O)のTiに対する原子比(X値)を1.2〜1.9としたのは、その値が1.2未満では所望のすぐれた表面潤滑性を確保することができず、一方その値が1.9を越えると、層中に気孔が形成され易くなり、健全な最表面層の安定的形成が難しくなるという理由によるものである。
また、同じく上記最表面層の平均層厚を、0.1〜5μmとしたのは、その平均層厚が0.1μm未満では、所望の表面潤滑性を確保することができず、一方この表面潤滑性付与作用は5μmの平均層厚で十分満足に行うことができるという理由にもとづくものである。
さらに、硬質被覆層の平均層厚を3〜30μmとしたのは、その層厚が3μmでは所望のすぐれた耐摩耗性を確保することができず、一方その層厚が30μmを越えると、切刃に欠けやチッピングが発生し易くなるという理由によるものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明の被覆超硬工具の製造方法を実施例により具体的に説明する。
(実施例1)
原料粉末として、いずれも0.5〜4μmの範囲内の所定の平均粒径を有するWC粉末、(Ti,W)C(重量比で、以下同じ、TiC/WC=30/70)粉末、(Ti,W)CN(TiC/TiN/WC=24/20/56)粉末、(Ta,Nb)C(TaC/NbC=90/10)粉末、Cr3C2粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、質量%で、(Ti,W)C:4%,(Ti,W)CN:4%,(Ta,Nb)C:5%,Cr 3 C 2 :0.5%,Co:8%,およびWC:残りの配合組成に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MPa(1ton/cm2 )の圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6Pa(0.05torr)の真空中、1410℃に1時間保持の条件で真空焼結することによりISO・CNMG120408に規定するスローアウエイチップ形状をもった超硬基体(チップ)Dを製造した。
【0012】
ついで、上記超硬基体(チップ)Dの表面に、ホーニングを施した状態で、通常の化学蒸着装置を用い、表1(表1中のl−TiCNは特開平6−8010号公報に記載される縦長成長結晶組織をもつTiCN層の形成条件を示すものであり、これ以外は通常の粒状結晶組織の形成条件を示すものである。また表2中のκ―Al2 O3の「目標回折角」はX線回折パターンで最高回折ピーク高さが現れる目標回折角(2θ)を示すものである)に示される条件にて、第1層:TiC層(目標層厚:0.5μm),第2層:l−TiCN層(同:6μm),第3層:TiCO層(同:0.4μm),第4層:κ−Al 2 O 3 層(同:7μm)で構成されたTi化合物層およびAl 2 O 3 層からなる硬質被覆層を形成し、引き続いて前記Al 2 O 3 層の表面に、最表面層として、反応ガス組成(体積%で):TiCl 4 :1%,CO 2 :8%,Ar:10%,H 2 :残り、反応雰囲気圧力:7kPa、反応雰囲気温度:950℃の条件で、同じく目標層厚:0.5μmのTiO X (Xは酸素のTiに対する含有割合の目標値(原子比)で1.75)層からなるTi酸化物層を形成し、さらに雰囲気ガス組成を、体積%で、TiCl4:0.2体積%,Ar:残りとし、雰囲気温度を1000℃、雰囲気圧力を20kPa(150Torr)とした雰囲気中に2時間保持の条件で、Al2 O3 層とTi酸化物層の界面部に相互拡散層を形成する層間密着性向上処理を施すことにより、本発明法を実施し、図1(a)に概略斜視図で、同(b)に概略縦断面図で示される形状を有する本発明被覆超硬工具としての本発明表面被覆超硬合金製スローアウエイチップ(以下、本発明被覆超硬チップと云う)を製造した。
【0013】
また、比較の目的で、上記最表面層としてのTi酸化物層を形成しない以外は同一の条件で同じく従来被覆超硬工具としての従来表面被覆超硬合金製スローアウエイチップ(以下、従来被覆超硬チップと云う)を製造した。
この結果の従来被覆超硬チップの硬質被覆層を構成するκ―Al2 O3層について、1.5オングストロームの波長を有するCukα線を線源として用いたX線回折で観察したところ、目標回折角(2θ)と実質的に同じ回折角に最高回折ピーク高さが現れるX線回折パターンを示した。
【0014】
さらに上記の本発明被覆超硬チップにおける相互拡散層の厚さを走査型電子顕微鏡およびオージェ分光分析装置を用いて測定したところ、5点測定の平均値で、0.5μmの平均層厚をそれぞれ示した。
【0015】
つぎに、上記本発明被覆超硬チップおよび従来被覆超硬チップについて、これを工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材:JIS・SUS304の丸棒、
切削速度:300m/min.、
切り込み:1mm、
送り:0.2mm/rev.、
切削時間:10分、
の条件でのステンレス鋼の乾式高速連続旋削加工試験、
被削材:JIS・SUS304の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:200m/min.、
切り込み:1mm、
送り:0.17mm/rev.、
切削時間:3分、
の条件でのステンレス鋼の乾式高速断続旋削加工試験、さらに、
被削材:JIS・S15Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:300m/min.、
切り込み:1.5mm、
送り:0.25mm/rev.、
切削時間:5分、
の条件での軟鋼の乾式高速断続旋削加工試験を行い、いずれの旋削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この結果、上記本発明被覆超硬チップは、
被削材がステンレス鋼の高速連続旋削加工では0.31mm、
被削材がステンレス鋼の高速断続旋削加工では0.31mm、
被削材が軟鋼の高速断続旋削加工では0.28mm、
の逃げ面摩耗幅を示したのに対して、上記従来被覆超硬チップは、いずれも以下に示す切削時間、すなわち、
被削材がステンレス鋼の高速連続旋削加工では1.1分、
被削材がステンレス鋼の高速断続旋削加工では1.1分、
被削材が軟鋼の高速断続旋削加工では1.8分、
で使用寿命(いずれも切刃に発生したチッピングが原因)に至るものであった。
【0016】
【表1】
【0017】
なお、この結果得られた本発明被覆超硬チップの最表面層について、その厚さ方向中央部の酸素含有割合(X値)をオージェ分光分析装置を用いて測定したところ、上記の目標値と実質的に同じ値を示した。また、本発明被覆超硬チップおよび従来被覆超硬チップの硬質被覆層の構成層およびTi酸化物層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて断面測定したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
【0018】
【発明の効果】
以上の結果から、最表面層としてTi酸化物層を形成した本発明被覆超硬チップは、いずれもステンレス鋼や軟鋼の切削加工を高い発熱を伴う高速で行っても、前記Ti酸化物層が高温加熱の切粉との親和性がきわめて低く、切粉が前記Ti酸化物層に溶着することがなく、切刃は常にすぐれた表面潤滑性を維持することから、切刃への切粉溶着が原因のチッピングが切刃に発生することがなく、すぐれた耐摩耗性を発揮するのに対して、前記Ti酸化物層の形成のない従来被覆超硬チップにおいては、切粉が硬質被覆層に溶着し易く、これが原因で硬質被覆層が局部的に剥がし取られることから、切刃にチッピングが発生し、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の方法で製造された被覆超硬工具は、各種の鋼や鋳鉄などの通常の条件での切削加工は勿論のこと、特に粘性が高く、切粉が切刃表面に溶着し易いステンレス鋼や軟鋼などの高速切削加工でも切粉に対してすぐれた表面潤滑性を発揮し、汎用性のある切削性能を示すものであるから、切削加工装置のFA化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は被覆超硬チップの概略斜視図、(b)は被覆超硬チップの概略縦断面図である。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金基体の表面に、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1種または2種以上からなるTi化合物層と、酸化アルミニウム層および酸化アルミニウムの素地に酸化ジルコニウム相が分散分布してなる酸化アルミニウム−酸化ジルコニウム混合層のいずれか、または両方で構成された硬質被覆層を3〜30μmの平均層厚で化学蒸着してなる表面被覆超硬合金製切削工具における前記硬質被覆層の表面に、さらに最表面層として、
(a)反応ガス組成を、体積%で、
TiCl4:0.2〜10%、
CO2:0.1〜10%、
Ar:5〜60%、
H2:残り、
とし、かつ、
反応雰囲気温度:800〜1100℃、
反応雰囲気圧力:4〜70kPa(30〜525torr)、
とした条件で、
(b)組成式:TiOX 、
で表わした場合、厚さ方向中央部をオージェ分光分析装置で測定して、
X:Tiに対する原子比で1.2〜1.9、
を満足すると共に、X線回折による観察で、組成式:TiOXのX値に対応して、Ti2O3、Ti3O5、Ti4O7、およびTi5O9のうちの少なくともいずれかに主要ピークが現れる回折パターンを示すTi酸化物層を0.1〜5μmの平均層厚で化学蒸着し、
(c)さらに、引き続いて、雰囲気ガス組成を、体積%で、
TiCl4:0.05〜10%、
不活性ガス:残り、
とし、かつ、
雰囲気温度:800〜1100℃、
雰囲気圧力:4〜90kPa、(30〜675torr)
とした雰囲気中に5分〜5時間保持して、上記Ti酸化物層と、上記酸化アルミニウム層および酸化アルミニウムの素地に酸化ジルコニウム相が分散分布してなる酸化アルミニウム−酸化ジルコニウム混合層のいずれか、または両方との界面部に、0.05〜2μmの平均層厚で相互拡散層を形成し、層間密着性の向上を図ること、
を特徴とする粘性の高い難削材の高速切削で切粉に対してすぐれた表面潤滑性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具の製造方法。
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