JP5023779B2 - 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents

硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具 Download PDF

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Description

この発明は、特に鋼、ステンレス鋼および鋳鉄などのターニングまたはミーリング加工を、高速断続切削条件で行った場合に、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
従来、一般的に、炭化タングステン基(以下、WC基で示す)超硬合金または炭窒化チタン基(以下、TiCN基で示す)サーメットで構成された基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、
(a)いずれも化学蒸着形成されたTiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなり、かつ0.5〜15μmの全体平均層厚を有するTi化合物層からなる下部層、
(b)0.5〜13μmの平均層厚を有し、AlとCrの合量に対するCrの含有割合が、原子比で、0.05〜0.35を満足する化学蒸着形成したAlとCrの複合酸化物(以下、(Al,Cr)で示す)層からなる上部層、
とで構成された硬質被覆層を被覆してなる被覆工具が知られており、この被覆工具を、鋼、ステンレス鋼および鋳鉄のターニングまたはミーリング加工に用いることが知られている。
また、被覆工具の耐摩耗性を向上させるために、WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体の表面に、Ti化合物層を下部層とし、その上に、Al層とTiCO層、TiNO層および/またはTiCNO層との交互積層(以下、Al−Ti系積層という)構造からなる上部層を設けることも知られている。
さらに、上記TiCN層については、通常の化学蒸着装置にて、反応ガスとして有機炭窒化物を含む混合ガスを使用し、700〜950℃の中温温度領域で蒸着することにより、縦長成長結晶組織を有するTiCN層(以下、l−TiCN層で示す)を形成することも知られている。
特開昭54−153758号公報 特開昭54−66912号公報 特開平6−8010号公報 特開平7−328808号公報
近年の切削加工の省力化および省エネ化に対する要求は強く、これに伴い、連続切削はもとより断続切削においても加工条件は一段と高速化の傾向にあるが、上記のごとき従来被覆工具において、これを鋼、ステンレス鋼および鋳鉄などの通常の加工条件での切削に用いた場合には問題ないが、これを高速断続加工に用いた場合、硬質被覆層の上部層を形成する前記(Al,Cr)層あるいはAl−Ti系積層のいずれも、その高温強度が十分でなく、また、上部層を、(Al,Cr)層−Ti系積層で構成したとしても、やはりその高温強度が十分とはいえないために、高速断続加工条件下における大きな衝撃的・機械的な負荷に耐えることができず、早期にチッピング(微小欠け)が発生しやすくなり、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、上記従来被覆工具の硬質被覆層の高速断続切削条件下における耐チッピング性の向上を図るべく、上部層を構成する材質とその構造に着目し研究を行った結果、
(a)例えば、上記従来被覆工具の硬質被覆層を構成するAl−Ti系積層のAl層とTiCO層との交互積層は、通常の化学蒸着装置にて、まず、Al層を、
反応ガス組成(容量%):
AlCl:1〜10%、
CO:1〜30%、
HCl:1〜30%、
S:0.01〜1%、
2:残り、
反応雰囲気温度:900〜1050℃、
反応雰囲気圧力:6〜25kPa、
の条件で化学蒸着し、その後、TiCO層を、
反応ガス組成(容量%):
TiCl:0.5〜10%、
CH:0.5〜5%、
CO:0.5〜10%、
2:残り、
反応雰囲気温度:900〜1050℃、
反応雰囲気圧力:6〜25kPa、
の条件(以下、通常条件という)で化学蒸着で形成し、その後、さらにAl層とTiCO層とを積み重ねて積層化を続けていくが、
まず、上記Al層の化学蒸着条件にかえて、
反応ガス組成(容量%):
AlCl: 1.3〜2.2 %、
CrCl: 0.10〜0.80 %、
CO: 3〜12 %、
HCl: 1〜5 %、
:残り、
反応雰囲気温度: 800〜1050 ℃、
反応雰囲気圧力: 5〜25 kPa、
の条件で蒸着してアルミニウムとクロムの複合酸化物層((Al,Cr)層)を形成し、
さらに、上記TiCO層の化学蒸着条件において、上記反応ガス中にCrClを0.02〜1容量%の割合で添加して蒸着を行うと、TiCO層の代わりに、TiとCrの炭酸化物層(以下、「Ti−Cr炭酸化物層」で示す)が蒸着形成され、
この結果形成された(Al,Cr)層には、CrがAlとの合量に占める割合で5〜35原子%含有され、このCrの作用により(Al,Cr)層の高温強度が向上し、また、Ti−Cr炭酸化物層には、CrがTiとの合量に占める割合で1〜10原子%の割合で含有され、このCrの作用によりTi−Cr炭酸化物層の高温強度が一段と向上したものになるので、(Al,Cr)層とTi−Cr炭酸化物層とを交互に積層した硬質被覆層は、切刃部にきわめて大きな衝撃的・機械的負荷が加わる高速断続切削においても、チッピングの発生が防止され、硬質被覆層の耐チッピング性が向上すること。
(b)また、上記Ti−Cr炭酸化物層にかえて、チタンとクロムの炭窒酸化物層(以下、「Ti−Cr炭窒酸化物層」で示す)を、(Al,Cr)層と交互に積層することによっても、上記と同様、硬質被覆層の耐チッピング性を向上させることもできる。
そして、上記Ti−Cr炭窒酸化物層は、
反応ガス組成(容量%):
TiCl:0.5〜10%、
:5〜30%、
CH:0.5〜5%、
CO:0.5〜10%、
2:残り、
反応雰囲気温度:900〜1050℃、
反応雰囲気圧力:6〜25kPa、
というTiCNO層の化学蒸着条件において、上記の反応ガスにCrClを0.02〜1容量%の割合で添加することにより蒸着形成することができ、そして、上記蒸着条件によって、CrがTiとの合量に占める割合で1〜10原子%含有されるTi−Cr炭窒酸化物層を形成することができ、そして、この結果形成されたTi−Cr炭窒酸化物層は、前記Ti−Cr炭酸化物層と同様に、すぐれた高温強度を有するため、硬質被覆層の耐チッピング性を向上させること。
(c)上記のごとき(Al,Cr)層とTi−Cr炭酸化物層および/またはTi−Cr炭窒酸化物層との交互積層からなる硬質被覆層は、(Al,Cr)層自体が具備する高温硬さ、高温強度と耐熱性に加えて、従来被覆工具の交互積層を構成するTiCO層、TiNO層あるいはTiCNO層に比べて、Ti−Cr炭酸化物層やTi−Cr炭窒酸化物層が一段と高い高温強度を有し、さらに、(Al,Cr)層に対する密着強度も大であるので、少なくとも、前記(Al,Cr)層とTi−Cr炭酸化物層および/またはTi−Cr炭窒酸化物層との交互積層を硬質被覆層として設けてなる本発明の被覆工具は、極めて高い負荷のかかる高速断続加工においても、前記硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮し、長期に亘ってすぐれた性能を発揮するようになること。
以上(a)〜(c)に示される研究結果を得たのである。
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、
「(1) 炭化タングステン基(WC基)超硬合金または炭窒化チタン基(TiCN基)サーメットで構成された工具基体の表面に硬質被覆層が被覆された表面被覆切削工具において、硬質被覆層が、少なくとも、一層平均層厚が0.5〜5μmのアルミニウムとクロムの複合酸化物層((Al,Cr)層)と、一層平均層厚が0.05〜0.5μmのチタンとクロムの炭酸化物層(Ti−Cr炭酸化物層)および/または炭酸窒化物層(Ti−Cr炭窒酸化物層)とが交互に積層された合計平均層厚が2〜15μmの交互積層を備えることを特徴とする、すぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具(被覆工具)。
(2) 上記(1)記載の表面被覆切削工具において、工具基体表面と上記交互積層との間に、2〜15μmの合計平均層厚を有し、かつ、炭化チタン層(TiC層)、窒化チタン層(TiN層)、炭窒化チタン層(TiCN層)のうちから選ばれる1層または2層以上のTi系化合物層からなる下部層を介在させたことを特徴とする、上記(1)記載の表面被覆切削工具(被覆工具)。
(3) 上記(2)記載の表面被覆切削工具において、上記下部層と上記交互積層との間に、0.2〜1μmの合計平均層厚を有し、かつ、炭酸化チタン層(TiCO層)、窒酸化チタン層(TiNO層)および炭窒酸化チタン層(TiCNO層)のうちから選ばれる1層または2層以上の中間層を介在形成したことを特徴とする、上記(2)記載の表面被覆切削工具(被覆工具)。」
に特徴を有するものである。
この発明の被覆工具の硬質被覆層の構成層について、上記の通りに限定した理由を以下に説明する。
(a)下部層
2〜15μmの合計平均層厚を有し、かつ、TiC層、TiN層、TiCN層のうちから選ばれる1層または2層以上のTi系化合物層からなる下部層は、高い高温硬さを有するので、工具基体表面と(Al,Cr)層とTi−Cr炭酸化物層および/またはTi−Cr炭窒酸化物層からなる交互積層との間に介在させることによって耐摩耗性を向上させることができるが、その合計平均層厚が2μm未満では、耐摩耗性向上効果を期待することはできす、一方、15μmを超えると高速断続切削においてチッピングなどの異常損傷が発生しやすくなることから、その合計平均層厚を2〜15μmとした。
(b)(Al,Cr)
Ti−Cr炭酸化物層および/またはTi−Cr炭窒酸化物層との交互積層構造を構成するアルミニウムとクロムの複合酸化物層((Al,Cr)層)の構成成分であるAl成分は、層の高温硬さおよび耐熱性を向上させ、同Cr成分は、層の高温強度を向上させるが、(Al,Cr)層の一層平均層厚が0.5μm未満では、すぐれた高温硬さ、高温強度、耐熱性を期待できず、一方、層厚が5μmを超えるとチッピングが発生しやすくなることから、(Al,Cr)層の一層平均層厚を0.5〜5μmと定めた。
なお、(Al,Cr)層に含有されるCr成分のAl成分との合量に占める含有割合(=Cr/(Al+Cr)。但し、原子比)が0.05未満では、層の高温強度の向上を期待することはできず、一方、Cr成分の含有割合が0.35を超えた場合には、相対的にAl成分の含有割合が低くなり、層の高温硬さを維持できなくなることから、Al成分との合量に占めるCr成分の含有割合を0.05〜0.35(原子比)の範囲内とすることが望ましい。
(c)Ti−Cr炭酸化物層および/またはTi−Cr炭窒酸化物層
Ti−Cr炭酸化物層および/またはTi−Cr炭窒酸化物層は、従来被覆工具の交互積層を構成するTiCO層、TiNO層、TiCNO層に比して、一段と高い高温強度を有するので、硬質被覆層の耐ピッチング性向上に寄与するが、Ti−Cr炭酸化物層、Ti−Cr炭窒酸化物層の一層平均層厚が0.05μm未満では、すぐれた高温特性を発揮することができず、また、0.5μmを超えると、隣接する(Al,Cr)層の相対的な存在割合が低下し、交互積層における(Al,Cr)層が備える十分な高温硬さ、高温強度、耐熱性を発揮することができなくなるので、Ti−Cr炭酸化物層および/またはTi−Cr炭窒酸化物層の一層平均層厚を0.05〜0.5μmとした。
また、蒸着形成されるTi−Cr炭酸化物層あるいはTi−Cr炭窒酸化物層に含有されるCr含有割合がTiとの合量に占める割合(Cr/(Ti+Cr)。但し、原子比)で0.01未満では高温強度向上の効果が見られず、また0.1を超えると、隣接する(Al,Cr)層との密着強度が低下しチッピングなどの異常損傷が発生するようになるため、Ti−Cr炭酸化物層あるいはTi−Cr炭窒酸化物層における、Tiとの合量に占めるCrの含有割合(原子比)は0.01〜0.1とすることが望ましい。
(d)(Al,Cr)層と、Ti−Cr炭酸化物層および/またはTi−Cr炭窒酸化物層との交互積層
(Al,Cr)層と、Ti−Cr炭酸化物層および/またはTi−Cr炭窒酸化物層との交互積層は、(Al,Cr)層自体がすぐれた高温硬さ、高温強度、耐熱性を具備し、また、Ti−Cr炭酸化物層、Ti−Cr炭窒酸化物層が一段と高い高温強度を有し、さらに、相隣接する層間の密着強度も大であることから、上記(Al,Cr)層とTi−Cr炭酸化物層および/またはTi−Cr炭窒酸化物層との交互積層を備える硬質被覆層はすぐれた耐チッピング性を発揮し、また、(Al,Cr)層、Ti−Cr炭酸化物層、Ti−Cr炭窒酸化物層のいずれもが酸化物であるためすぐれた耐酸化性を有するが、交互積層の合計平均層厚が2μm未満では、所望の性能を得ることができず、また合計平均層厚が15μmを超えると、高速断続切削加工ではチッピング等の異常損傷が起きやすくなるため、上記交互積層の合計平均層厚を2〜15μmとした。
(e)中間層
0.2〜1μmの合計平均層厚を有し、TiCO層、TiNO層およびTiCNO層のうちから選ばれる1層または2層以上の中間層を、前記下部層と、(Al,Cr)層とTi−Cr炭酸化物層および/またはTi−Cr炭窒酸化物層からなる交互積層との間に介在させると、前記下部層と前記交互積層間での密着強度がより一段と向上し、硬質被覆層全体としての高温強度をさらに高め、その結果として、硬質被覆層の耐チッピング性をさらに向上させる効果があるが、その合計平均層厚が0.2μm未満では、密着強度向上の効果が見られず、また1μmを超えた場合には、中間層それ自体の高温強度が前記下部層、前記交互積層ほど大きくはないため、中間層部分での異常損傷が起きやすくなることから、中間層の合計平均層厚を0.2〜1μmとした。
なお、一般的に、切削後の使用コーナーの識別を容易にする目的で、Al層の上層に金色を有するTiN層を被覆することが知られているが、本発明被覆工具においても、使用コーナー識別の目的で(Al,Cr)層とTi−Cr炭酸化物層および/またはTi−Cr炭窒酸化物層からなる交互積層の上層に、TiN層を被覆しても良い。その際のTiN層の平均層厚は0.2〜1μmとすることが好ましい。
なお、近年、硬質被覆層を被覆後、物理的な手法、具体的には砥石、ナイロン製等のブラシ、SiC、AlおよびZrO粒子等をメディアとして使用する乾式および湿式ブラスト処理等により、硬質被覆層の表面を平滑化し、耐溶着性を向上させる方法が知られているが、かかる方法を本発明被覆工具に適応することも勿論可能であり、そして、これによって、工具特性の劣化が生じるものでもない。
この発明の被覆工具は、その表面に、少なくとも、(Al,Cr)層とTi−Cr炭酸化物層および/またはTi−Cr炭窒酸化物層との交互積層からなる硬質被覆層を備え(請求項1)、あるいは、この交互積層と工具基体間に炭化チタン層(TiC層)、窒化チタン層(TiN層)、炭窒化チタン層(TiCN層)のうちから選ばれる1層または2層以上のTi系化合物層からなる下部層を備え(請求項2)、あるいは、さらに交互積層と下部層との間に、炭酸化チタン層(TiCO層)、窒酸化チタン層(TiNO層)および炭窒酸化チタン層(TiCNO層)のうちから選ばれる1層または2層以上の中間層を介在させた(請求項3)ので、各種の鋼、ステンレス鋼および鋳鉄などの通常条件でのターニング、ミーリング加工は勿論のこと、特に、大きな衝撃的・機械的負荷がかかる鋼、ステンレス鋼および鋳鉄などのターニングまたはミーリング加工を高速断続切削条件で行った場合にも、すぐれた耐チッピング性を示し、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものである。
つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末およびCo粉末を準備し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアルコール中で10時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、ISO・CNMG120408(超硬基体A〜D)およびISO・SEEN1203AFTN1(超硬基体E、F)の所定形状に98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、超硬基体A〜DについてはR:0.07mmのホーニング加工を、超硬基体E、Fについては研磨後、切刃部に幅0.15mm、角度20度のチャンフォーホーニング加工することによりWC基超硬合金製の工具基体A〜Fをそれぞれ製造した。
ついで、これらの工具基体A〜F表面に、まず、表2に示される条件かつ表6に示される目標合計平均層厚となるように下部層を蒸着形成し、或いは更に表5に示される条件かつ表6に示される目標合計平均層厚となるように中間層を蒸着形成した後、通常の化学蒸着装置を用いて、表3に示される条件かつ表7に示される目標一層平均層厚の(Al,Cr)層と、同じく表4にそれぞれ示される条件かつ表7に示される目標一層平均層厚のTi−Cr炭酸化物層および/またはTi−Cr炭窒酸化物層を蒸着形成し、目標合計平均層厚の交互積層からなる硬質被覆層を有する本発明被覆工具1〜18を製造した。
なお、表6に示されるように、いくつかの本発明被覆工具については、下部層あるいは中間層を形成しなかった。
比較の目的で、交互積層を構成するTi−Cr炭酸化物層および/またはTi−Cr炭窒酸化物層の代わりに、表5に示される条件と同一条件で、かつ、表8に示される目標合計平均層厚で、TiCO層、TiCNO層を形成し、他の条件(例えば、下部層、中間層、(Al,Cr)層の形成条件等)については上記本発明被覆工具1〜18と同一の条件とすることにより、比較被覆工具1〜18をそれぞれ製造した。
なお、例えば、特開平6−8010号公報に示されるような層の強度向上を目的として形成した縦長成長結晶組織を有するTiCN層については、表2、6中では「l−TiCN」として示している。
さらに、上記の本発明被覆工具1〜18および比較被覆工具1〜18について、これらの硬質被覆層の構成層をオージェ分光分析装置を用いて観察(層の縦断面を観察)したところ、目標組成と実質的に同じ組成を有することが確認され、また、これらの被覆工具の硬質被覆層の構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(同じく縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
まず、上記の本発明被覆工具1〜12および比較被覆工具1〜12について、次の切削条件AおよびBにより、ターニング加工を実施した。
[切削条件A]
被削材: JIS・S35Cの長さ方向等間隔2本縦溝入り丸棒
切削速度: 450 m/min、
切り込み: 1.5 mm、
送り量: 0.25 mm/rev、
切削時間: 5 分、
の条件での炭素鋼の高速乾式断続切削試験(通常の切削速度は、250m/min)、
[切削条件B]
被削材: JIS・SUS304の長さ方向等間隔2本縦溝入り丸棒
切削速度: 380 m/min、
切り込み: 1.5 mm、
一刃送り量: 0.25 mm/刃、
切削時間: 5 分、
の条件でのステンレス鋼の高速湿式断続切削試験(通常の切削速度は、150m/min)。
また、上記の本発明被覆工具13〜18および比較被覆工具13〜18について、次の切削条件CおよびDにより、ミーリング加工を実施した。
[切削条件C]
被削材: JIS・SKD11のブロック材
切削速度: 300 m/min、
切り込み: 1.5 mm、
一刃送り量: 0.12 mm/刃、
切削時間: 8 分、
の条件での工具鋼の高速湿式切削試験(通常の切削速度は、150m/min)、
[切削条件D]
被削材: JIS・FC300のブロック材
切削速度: 500 m/min、
切り込み: 2 mm、
一刃送り量: 0.15 mm/刃、
切削時間: 8 分、
の条件での普通鋳鉄の高速乾式切削試験(通常の切削速度は、250m/min)。
そして、上記の各切削試験における切刃の逃げ面摩耗幅を測定し、この測定結果を表9に示した。
Figure 0005023779
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表6〜9に示される結果から、本発明被覆工具1〜18は、少なくとも、(Al,Cr)層とTi−Cr炭酸化物層および/またはTi−Cr炭窒酸化物層との交互積層からなる硬質被覆層を有するので、大きな衝撃的・機械的負荷がかかる鋼、ステンレス鋼および鋳鉄などのターニングまたはミーリング加工を高速断続切削条件で行っても、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を備えているのに対して、硬質被覆層を、(Al,Cr)層と従来のTiCO層、TiCNO層の交互積層構造で形成した比較被覆工具1〜18においては、高速断続切削の激しい衝撃的な負荷に耐えられず、硬質被覆層にはチッピングが発生し、これが原因で比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆工具は、各種の鋼、ステンレス鋼および鋳鉄などの通常の条件でのターニングまたはミーリング加工は勿論のこと、特に、大きな衝撃的・機械的負荷が加わる高速断続切削条件でも、すぐれた耐チッピング性を示し、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものであるから、切削装置の高性能化ならびに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。

Claims (3)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に硬質被覆層が被覆された表面被覆切削工具において、硬質被覆層として、少なくとも、一層平均層厚が0.5〜5μmのアルミニウムとクロムの複合酸化物層と、一層平均層厚が0.05〜0.5μmのチタンとクロムの炭酸化物層および/または炭窒酸化物層とが交互に積層された合計平均層厚が2〜15μmの交互積層を備えることを特徴とする、すぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具。
  2. 請求項1記載の表面被覆切削工具において、工具基体表面と上記交互積層との間に、2〜15μmの合計平均層厚を有し、かつ、炭化チタン層、窒化チタン層、炭窒化チタン層のうちから選ばれる1層または2層以上のTi系化合物層からなる下部層を介在させたことを特徴とする、請求項1記載の表面被覆切削工具。
  3. 請求項2記載の表面被覆切削工具において、上記下部層と上記交互積層との間に、0.2〜1μmの合計平均層厚を有し、かつ、炭酸化チタン層、窒酸化チタン層および炭窒酸化チタン層のうちから選ばれる1層または2層以上の中間層を介在形成したことを特徴とする、請求項2記載の表面被覆切削工具。
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