JP2017144548A - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】硬質被覆層に大きなせん断力が作用する高負荷・低速切削加工において、すぐれた耐塑性変形性、耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具を提供する。【解決手段】工具基体表面に、硬質被覆層が形成されている表面被覆切削工具において、前記硬質被覆層は、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層およびTiCNO層から選ばれる1層または2層以上からなり、その内の少なくとも1層はTiCN層で構成された2〜15μmの合計平均層厚を有するTi化合物層を含み、該Ti化合物層中の少なくとも1層のTiCN層は、(200)面にX線回折による最大回折ピーク強度が現れ、かつ、配向性指数Tc(200)は2.0以上であり、好ましくは、Ti化合物層において、アスペクト比が5以上である柱状縦長組織を有する結晶粒が、Ti化合物層の縦断面に占める面積割合は、70面積%以上である表面被覆切削工具。【選択図】図1

Description

本発明は、各種の鋼や鋳鉄などの切削加工を、硬質被覆層が塑性変形を起こしやすい高負荷かつ低速条件で行った場合でも、硬質被覆層がすぐれた耐塑性変形性を有し、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関する。
従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、
(a)下部層が、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層、
(b)上部層が、酸化アルミニウム層(以下、Al層で示す)、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層が蒸着形成された被覆工具が知られているが、被削材の種類、切削条件に応じて、耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性、耐摩耗性等の工具性能を高めるため、各種の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、WC基超硬合金基体の表面に、少なくとも1層のチタンの炭窒化物層を含むチタン化合物内層と、酸化アルミニウム外層とで構成された複合硬質層を被覆してなる切削工具において、前記チタン化合物内層を構成する少なくとも1層のチタンの炭窒化物層は、(220)面にX線回折による最大ピークが現れるTiCN層であり、前記酸化アルミニウム外層は、κ型結晶を主体とし、かつASTMにおいてκ−Alの面間隔2.79オングストロームの面として定義される面に最大ピークが現れる酸化アルミニウム層とすることにより、剥離、摩耗等による異常損傷の発生を防止し、工具寿命の向上を図ることが提案されている。
即ち、TiCN層は(220)面に配向することで、基体または下の層との密着力を増し、界面からの剥離が起きにくくなるため、剥離に起因する異常損傷の発生や寿命低下を抑えることができる。また、(220)面に配向したTiCN層の上に、κ型結晶を主体としかつASTMにおいてκ−Alの面間隔2.79オングストロームの面として定義される面に最大ピークが現れる酸化アルミニウム層を被覆すると、前記面間距離2.79オングストロームに配向性を示すκ−Alは被覆層表面が平滑であるために、切り屑と工具間の摩擦による異常損傷が生じにくくなり、この酸化アルミニウム層が異常損傷を起しにくく安定した耐摩耗性を示すというものである。
また、特許文献2には、工具基体表面に内層および外層を被覆形成した被覆工具において、内層を10μm以上の厚みを有し柱状組織からなる炭窒化チタン層を有する多層構造とし、外層を、少なくともα型酸化アルミニウム層を含む層とし、前記炭窒化チタン層について、(422)面と(311)面との配向性指数TC(422)、TC(311)をともに1.3以上3以下とする配向性をもたせ、また、配向性指数TC(422)とTC(311)とを除く配向性指数TC(hkl)がすべて1.5以下とすることによって、被覆工具の耐剥離性、耐摩耗性、耐クレータ性、また、破壊強度を向上させることが提案されている。
ここで、炭窒化チタン層の配向性指数TC(422)、TC(311)をともに1.3以上とし、その組織を柱状組織とすることにより、10μm以上の膜厚でも膜の耐破壊性を大きく向上させ耐摩耗性を向上させることが可能となり、また、切削中のチッピングによる摩耗の進行が抑制し得るとともに、切削中の被削材の溶着が起こりにくくなり、その結果、膜にかかる切削応力の増大が防げることから耐剥離性も大幅に向上するとされている。
また、特許文献3には、基体表面に、少なくとも1層の炭窒化チタン層を含む硬質被覆層を形成した被覆工具において、前記炭窒化チタン層の組織係数TC(hkl)のうちの配向性指数TC(220)を最大とし、また、硬度基準片の押し込み硬度をHsとし、炭窒化チタン層の押し込み硬度をHtとした場合、(Htの平均値)/Hs≧3、かつ、炭窒化チタン層の押し込み硬度の最大値をHtmax、最小値をHtminとした場合、(Htmax−Htmin)/(Htの平均値)<0.5とし、炭窒化チタン層の結晶配向性を制御するとともに、該炭窒化チタン層の硬度のばらつきをなくすことにより、被覆工具の耐摩耗性および耐欠損性の向上を図ることが提案されている。
特開平8−300203号公報 特許平11−140647号公報 特許第5729777号公報
近年の切削装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強い。これに伴い、切削加工は一段と高能率化すると共に、高切り込みや高送りなどの重切削、断続切削等で切れ刃に高負荷が作用する傾向にある。前述した従来の被覆工具を鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削、高速切削に用いた場合には問題はないが、従来の被覆工具を、高負荷が作用することにより、硬質被覆層が塑性変形を起こすような高負荷・低速切削加工条件に用いた場合には、硬質被覆層の塑性変形により、硬質被覆層を構成する結晶粒の脱落等が生じやすく、また、これに起因する異常摩耗が進行しやすく、これを原因として比較的短時間で工具寿命に至るという問題がある。
そこで、本発明者らは、前述のような観点から、切れ刃に高負荷が作用し、硬質被覆層が塑性変形を起こしやすい高負荷・低速切削加工条件で使用した場合でも、硬質被覆層の異常損傷が発生しにくい硬質被覆層の構造について鋭意研究を行ったところ、工具基体表面に、少なくともTi化合物層を含む硬質被覆層を形成し、さらに、Ti化合物層として、少なくとも1層のTiCN層を含む層を形成し、該TiCN層の(200)配向性を高めた場合には、高負荷(特に、TiCN層表面への大きなせん断力)が作用したとしても、TiCN層がすぐれた耐塑性変形性を有するため、TiCN層を構成する結晶粒の脱落等による異常損傷の発生を抑制し得ること、また、これにより耐摩耗性の向上を図り得ることを見出したのである。
また、前記TiCN層を、アスペクト比が5以上である柱状縦長組織として形成した場合には、すぐれた耐塑性変形性に加え、柱状縦長組織によりもたらされる一段とすぐれた耐摩耗性を発揮することを見出したのである。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、
「(1)炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、硬質被覆層が形成されている表面被覆切削工具において、
(a)前記硬質被覆層は、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層から選ばれる1層または2層以上からなり、その内の少なくとも1層はTiの炭窒化物層で構成された2〜15μmの合計平均層厚を有するTi化合物層を含み、
(b)前記Ti化合物層中の少なくとも1層のTiの炭窒化物層は、(200)面にX線回折による最大回折ピーク強度が現れ、かつ、配向性指数Tc(200)は2.0以上であることを特徴とする表面被覆切削工具。
(2)前記Ti化合物層の縦断面において、アスペクト比が5以上である柱状縦長組織を有する結晶粒が占める面積割合は、70面積%以上であることを特徴とする(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3)前記Ti化合物層において、すべてのTiの炭窒化物層の層厚が4〜13μmであることを特徴とする(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。」
次に、本発明の被覆工具について詳細に説明する。
本発明の被覆工具は、工具基体表面にTi化合物層を含む硬質被覆層が形成され、Ti化合物層は少なくとも1層のTiCN層を含み、該TiCN層の少なくとも1層は、(200)配向度の高いTiCN層からなっている。
硬質被覆層:
本発明被覆工具の硬質被覆層は、Ti化合物層(例えば、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層およびTiCNO層)を含み、Ti化合物層それ自身がすぐれた高温強度を有するとともに、工具基体表面との密着強度に優れるが、Ti化合物層の合計平均層厚が2μm未満の場合、前記作用を十分に発揮させることができない。
一方、Ti化合物層の合計平均層厚が15μmを越えるような場合には、切削加工時に作用する高負荷によって塑性変形を起し易くなり、その結果、結晶粒の脱落の発生、これによるチッピング、欠損、剥離の発生、あるいは偏摩耗の進行等の異常損傷発生の原因となる。
したがって、本発明では、Ti化合物層からなる下部層の合計平均層厚は2〜15μmと定めた。
TiCN層:
本発明被覆工具の硬質被覆層のTi化合物層は、少なくとも1層のTiCN層を含み、該層は、(200)配向性を有するTiCN層として構成される。
すなわち、前記少なくとも1層のTiCN層を構成する結晶粒について、X線回折により各格子面からの回折ピーク強度を測定した場合、(200)面に最大の回折ピーク強度が現れる(200)配向性を有する。
図1に、本発明被覆工具のTiCN層について、X線回折により測定した各格子面からの回折ピーク強度のチャートの一例を示す。
図1からも明らかなように、本発明被覆工具のTiCN層は、(200)面についての回折ピーク強度が、他の格子面からの回折ピーク強度に比べると最大のピーク強度を示していることがわかる。
なお、X線回折は、X線回折装置としてスペクトリス社PANalytical Empyreanを用いて、CuKα線による2θ‐θ法で測定し、測定条件として、測定範囲(2θ):30〜130度、X線出力:45kV、40mA、発散スリット:0.5度、スキャンステップ:0.013度、1ステップ辺り測定時間:0.48sec/stepという条件で測定した。
さらに、前記少なくとも1層のTiCN層について、配向性指数Tc(hkl)を求めた場合、本発明被覆工具ではTc(200)の値が2.0以上、好ましくは、3.0以上、を示す(200)配向性を有する。
なお、配向性指数Tc(hkl)とは、以下の式で定義されるものである。

上記式中、I(hkl)は測定された(hkl)面のピーク強度(回折強度)を示し、I(hkl)はJCPDSカード(Joint Committee on Powder Diffraction Standards(粉末X線回折標準))で表される(hkl)面を構成するTiCとTiNの粉末回折強度の平均値を示す。また、(hkl)は、(111)、(200)、(220)、(311)、(222)、(331)、(420)、(422)の8面であり、上記式の中括弧内は8面の平均値を示す。
本発明被覆工具の少なくとも1層のTiCN層は、前記したように(200)面にX線回折による最大ピーク強度を示し、かつ、配向性指数Tc(200)≧2.0という(200)配向性を有することによって、切削加工時にTiCN層に大きなせん断力が作用した場合でも、TiCN層は耐塑性変形性を有するため、該層を構成する結晶粒の脱落の発生、これによるチッピング、欠損、剥離の発生、あるいは、偏摩耗の進行等の異常損傷の発生を抑制することができ、また、これにより耐摩耗性を向上させることができる。
しかし、(200)面についてのX線回折ピーク強度が、他の格子面からの回折ピーク強度に比して最大であるといえない場合、あるいは、配向性指数Tc(200)が4.0未満であるような場合には、(200)面配向性が十分でないため、耐塑性変形性向上効果が十分でなく、その結果、高負荷(高せん断力)が作用した場合の粒子の脱落防止、チッピング・欠損の発生、偏摩耗の発生を抑制することができない。
したがって、本発明では、Ti化合物層の内の少なくとも1層のTiCN層について測定した(200)面のX線回折ピーク強度が、他の結晶格子面のピーク強度に比して最大であることとし、また、配向性指数Tc(200)は2.0以上、好ましくは、3.0以上であると定めた。
Ti化合物層中の少なくとも1層のTiCN層は、柱状縦長組織を有していることが好ましい。
特に、TiCN結晶粒の最大粒子幅Wと層厚方向の最大粒子長さLから求められるアスペクト比が5以上である柱状縦長TiCN結晶粒の占める面積割合が、TiCN層の縦断面面積の70面積%以上を占める場合には、柱状縦長組織の特徴である耐摩耗性向上効果を期待することができる。
なお、前記最大粒子幅W、最大粒子長さLとは、柱状縦長成長TiCN結晶粒について、TiCN層の縦断面における1つの結晶粒を計測したとき、層厚方向に垂直な方向の結晶粒の幅(短辺)で最も大きい値を最大粒子幅Wと呼び、一方、層厚方向の結晶粒の高さ(長辺)で最も大きい値を最大粒子長さLと呼ぶ。
また、TiCN層の層厚について特に限定するものではないが、Ti化合物層を構成するすべてのTiCN層の層厚が4〜13μmであることが望ましい。
これは、TiCN層の層厚が4μm以上になると、Tc(200)の値が大きくなる傾向を示し、高負荷切削加工における耐塑性変形性が向上するとともに、逃げ面摩耗量も減少し耐摩耗性が向上するからであり、一方、TiCN層の層厚が13μmを超えると、塑性変形を起し易くなり、偏摩耗の進行による異常損傷が発生するという理由による。
Ti化合物層の成膜:
この発明における下部層のTi化合物層は、例えば、以下のようにして形成する。即ち、通常の化学蒸着装置を使用して、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、TiCNO層およびTiAlN層のうちの1層または2層以上からなる種々のTi化合物層を蒸着形成する。
その中で、(200)配向性の高いTiCN層、あるいは、アスペクト比が5以上である柱状縦長組織を有する結晶粒が、Ti化合物層の縦断面の70面積%以上を占めるTiCN層は、例えば、以下の蒸着方法によって形成することができる。
反応ガス組成(容量%):TiCl 1〜5%、CHCN 0.5〜1.5%、N 25〜40%、残部H
反応雰囲気温度:750〜850℃、
反応雰囲気圧力:5〜10kPa
反応雰囲気温度を低温にし、TiCN層の原料となるガス濃度比を低くすることで、(200)配向性の高い結晶組織が形成しやすくなり、またその組織は柱状縦長組織を有しやすくなる。
また、TiN層の形成時に、例えば、
反応ガス組成(容量%):NH 0.5〜2.0%,TiCl 0.1〜0.3%、N 0〜10%、残部H
反応雰囲気温度:750〜850℃、
反応雰囲気圧力:5〜8kPa
のような条件で作成することで、アスペクト比が5以上である柱状縦長組織を有する結晶粒を形成しやすくなる。
本発明の被覆工具によれば、工具基体の表面に形成されたTi化合物層を含む硬質被覆層は、Ti化合物層として少なくとも1層のTiCN層を含み、かつ、該TiCN層の内の少なくとも1つの層は、(200)面にX線回折による最大回折ピーク強度が現れ、かつ、配向性指数Tc(200)は2.0以上である(200)配向性を有するため、すぐれた耐塑性変形性を備える。
その結果、TiCN層表面への大きなせん断力が作用する高負荷・低速切削加工条件で使用した場合でも、本発明被覆工具は、TiCN層の備えるすぐれた耐塑性変形性によって、結晶粒の脱落、チッピング・欠損・剥離等の異常損傷の発生を抑制することができ、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮するのである。
さらに、Ti化合物層において、アスペクト比が5以上である柱状縦長組織を有する結晶粒の面積割合が、下部層の縦断面の70面積%以上であることによって、耐摩耗性をより向上させることができ、切削工具の長寿命化を図ることができる。
本発明被覆工具のTiCN層について、X線回折により測定した各結晶格子面から得られた回折ピーク強度の一例を示す。
本発明の被覆工具の実施形態について、実施例に基づいて具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、NbC粉末、Cr粉末、TiN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、ISO規格CNMG120408のインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体a〜dをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、ZrC粉末、TaC粉末、Mo2C粉末、WC粉末、Co粉末およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1500℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、ISO規格CNMG120412のインサート形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体eを作製した。
ついで、これらの工具基体a〜dおよび工具基体eのそれぞれを、通常の化学蒸着装置に装入し、表3、表4に示される条件で、表6に示される目標層厚のTi化合物層を蒸着形成することにより、表6に示される本発明被覆工具1〜13をそれぞれ製造した。
なお、表3で示すHT−TiCN層は、段落0016で示したTiCN層よりも反応雰囲気温度が高温で作製したTiCN層を示す。
また、表3において、アスペクト比が5以上である柱状縦長組織の結晶粒が形成されやすいTi化合物層の成膜条件は、TiN層−1(第1層)とTiAlN層である。
また、比較の目的で、工具基体a〜dおよび工具基体eのそれぞれを、通常の化学蒸着装置に装入し、表3、表5に示される条件で、表7に示される目標層厚のTi化合物層を蒸着形成することにより、表7に示される比較例被覆工具1〜13をそれぞれ製造した。
本発明被覆工具1〜13および比較被覆工具1〜13のTi化合物層のTiCN層について、X線回折により、各格子面からの回折ピーク強度を測定した。
図1に、本発明被覆工具1について求めたチャートを示す。
なお、X線回折は、装置としてスペクトリス社PANalytical Empyreanを用い、CuKα線による2θ‐θ法で測定した。
測定条件は、測定範囲(2θ):30〜130度、X線出力:45kV、40mA、発散スリット:0.5度、スキャンステップ:0.013度、1ステップ辺り測定時間:0.48sec/stepである。
上記で求めたチャートから、(200)面からの回折ピーク強度が、他の格子面からの回折ピーク強度に対して最大であるか否かを判定した。
表6、表7に、その判定結果を示す。
また、上記回折ピーク強度の測定結果に基づき、配向性指数Tc(200)を求めた。
配向性指数Tc(200)は、


の式によって算出した。
ここで、I(hkl)は測定された(hkl)面の回折ピーク強度を示し、I(hkl)はJCPDSカード(Joint Committee on Powder Diffraction Standards(粉末X線回折標準))で表される(hkl)面を構成するTiCとTiNの粉末回折強度の平均値を示す。また、(hkl)は、(111)、(200)、(220)、(311)、(222)、(331)、(420)、(422)の8面である。
表6、表7に、上記で算出した配向性指数Tc(200)の値を示す。
また、本発明被覆工具1〜13および比較被覆工具1〜13の下部層のTiCN層の縦断面について、走査型電子顕微鏡(倍率5000倍)を用いて、工具基体と平行な方向に10μm、工具基体と垂直な方向にTiCN層の層厚分の高さの領域内に存在するTiCN結晶粒のそれぞれについて最大粒子幅W、最大粒子長さLを測定するとともに、アスペクト比L/Wの値を求め、アスペクト比L/Wが5以上である結晶粒が、TiCN層の縦断面に占める面積割合を求めた。
表6、表7に、上記で求めた面積割合を示す。
また、本発明被覆工具1〜13、比較例被覆工具1〜13の硬質被覆層の各構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。







つぎに、本発明被覆工具1〜13、比較例被覆工具1〜13の各種の被覆工具について、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、次の切削条件A、切削条件Bで切削試験を実施した。
≪切削条件A≫
被削材:SUS630,
切削速度:120m/min,
切り込み:3.0mm
送り:0.3mm/rev.
切削時間:5分間
の条件でのステンレス鋼丸棒の乾式連続高切り込み切削試験、
≪切削条件B≫
被削材:SUS304,
切削速度:200m/min,
切り込み:2.0mm
送り:0.3mm/rev,
切削時間:5分間
の条件でのステンレス鋼4本スリット材の乾式断続切削試験、
上記の切削試験における切れ刃の逃げ面摩耗幅を測定するとともに、チッピング、欠損、剥離等の異常損傷の発生状況を肉眼で観察した。
表8、表9に、この試験結果を示す。


表8、表9に示される結果から、本発明被覆工具1〜13は、硬質被覆層のTi化合物層として、耐塑性変形性にすぐれるTiCN層が存在するため、TiCN結晶粒の脱落、これを原因とするチッピング、欠損、剥離の発生もなく、すぐれた耐摩耗性を発揮する。
これに対して、比較例被覆工具1〜13は、高負荷・低速切削加工においては、TiCN結晶粒の脱落、チッピング・欠損・剥離等の異常損傷の発生により、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
前述のように、本発明の被覆工具は、切れ刃に高負荷(大きなせん断力)が作用する高負荷・低速切削において特にすぐれた切削性能を発揮するが、各種鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削にも勿論用いることができる。

Claims (3)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、硬質被覆層が形成されている表面被覆切削工具において、
    (a)前記硬質被覆層は、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層から選ばれる1層または2層以上からなり、その内の少なくとも1層はTiの炭窒化物層で構成された2〜15μmの合計平均層厚を有するTi化合物層を含み、
    (b)前記Ti化合物層中の少なくとも1層のTiの炭窒化物層は、(200)面にX線回折による最大回折ピーク強度が現れ、かつ、配向性指数Tc(200)は2.0以上であることを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記Ti化合物層の縦断面において、アスペクト比が5以上である柱状縦長組織を有する結晶粒が占める面積割合は、70面積%以上であることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記Ti化合物層において、すべてのTiの炭窒化物層の層厚が4〜13μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。

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