JP2012192480A - 硬質被覆層が優れた耐異常損傷性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents

硬質被覆層が優れた耐異常損傷性を発揮する表面被覆切削工具 Download PDF

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Abstract

【課題】ステンレス鋼、低炭素鋼等の溶着を発生しやすい被削材の切削加工において硬質被覆層がすぐれた耐溶着性を発揮する表面被覆切削工具を提供する。
【解決手段】WC超硬合金、TiCN基サーメットからなる工具基体の表面に、(a)Ti化合物層からなる下部層、(b)酸化アルミニウム層からなる中間層、(c)第1上部層と第2上部層とからなる上部層、からなる硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、上記第1上部層は、上記中間層に接して形成され、0.5〜5μmの平均層厚を有し、層中の平均塩素濃度が0.2〜2原子%であるTi化合物層であって、上記第2上部層は、切れ刃稜線部以外では上記第1上部層に接して形成され、0.2〜5μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層または平均塩素濃度が0.1原子%以下のTi化合物層であって、上記上部層は、切れ刃稜線部において第2上部層が存在せず上記第1上部層が露出して形成されている。
【選択図】 図1

Description

この発明は、ステンレス鋼、低炭素鋼等の溶着を発生しやすい被削材の切削加工において、硬質被覆層がすぐれた耐溶着性を発揮し、溶着チッピング等の異常損傷の発生を抑制した表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、
(a)下部層が、いずれも化学蒸着形成された、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの2層以上からなるTi化合物層、
(b)上部層が、化学蒸着形成された酸化アルミニウム(以下、Alで示す)層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成してなる被覆工具が知られており、この被覆工具は、各種の鋼や鋳鉄などの切削加工に用いられていることが知られている。
ただ、上記の被覆工具を、ステンレス鋼や低炭素鋼の切削加工に用いた場合には、切削加工時の高熱によって切れ刃に溶着が発生しやすく、また、この溶着物が剥離することにより、溶着チッピングに代表される異常損傷が発生し、これを原因として溶着チッピング等の異常損傷が発生するという問題があった。
このような溶着、異常損傷の発生を防止するべく、被覆工具の耐溶着性、潤滑性を高める技術が提案されている。
例えば、引用文献1には、硬質被覆層に潤滑性を付与するために、硬質被覆層表面に、例えば、塩素等のハロゲン成分をイオン注入し、硬質被覆層中にハロゲン成分を含有させた被覆工具が提案されている。
また、引用文献2には、耐溶着性と耐摩耗性を向上するべく、硬質被覆層の最表面を塩素含有層で構成した被覆工具が提案されている。
国際公開第2004/096473号 特開2004−322226号公報
近年の切削加工における省力化および省エネ化の要求は強く、これに伴い、被覆工具は一段と過酷な条件下で使用されるようになってきているが、特に、溶着性の高いステンレス鋼や低炭素鋼等を高速切削条件で切削した場合には、切削加工時の高熱によって切れ刃に溶着が発生しやすく、また、この溶着物が剥離することにより、溶着チッピングに代表される異常損傷が発生し、その結果、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
また、特許文献1、2に示される被覆工具においては、潤滑性、耐溶着性についてある程度の改善はみられるものの、硬質被覆層の全表面に塩素が含有されていることから、硬質被覆層表面の耐摩耗性低下が激しく、所望の性能を得るには不十分であった。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、溶着性の高い被削材を高速条件で切削加工した場合でも、耐溶着性にすぐれ、かつ、被覆工具の長寿命化を図り得る硬質被覆層について鋭意研究を行った結果、以下の知見を得た。
本発明者等は、被覆工具の耐溶着性、潤滑性が最も必要とされる切れ刃稜線部においては、硬質被覆層の最表面に塩素を含有する層を(露出)形成することにより耐溶着性、潤滑性を確保するとともに、その一方、切れ刃稜線部以外、例えば、すくい面、逃げ面、においては、通常のAl層あるいはTi化合物層を形成することによって、耐溶着性、潤滑性に優れた被膜を構成し、結果として耐異常損傷性に優れた被覆工具が得られることを見出したのである。
そして、上記被覆工具の作製方法の一例は、例えば、次の通りである。
(a)工具基体表面に、通常のTi化合物層からなる下部層を蒸着形成し、
(b)下部層の上に、通常のAl層からなる中間層を蒸着形成し、
(c)その後、中間層上に上部層を蒸着形成するにあたり、上部層を第1上部層と第2上部層との複層構造とし、
(d)まず、塩素を含有するTi化合物層からなる第1上部層を、中間層表面に蒸着形成し、
(e)次いで、実質的に塩素を含有しない通常のTi化合物層あるいは塩素含有量が第1上部層よりも少ない通常のTi化合物層または通常のAl層からなる第2上部層を蒸着形成し、
(f)その後、切れ刃稜線部に形成されている第2上部層を、機械処理等により除去することにより、
(g)切れ刃稜線部において、第2上部層が存在せず、塩素を含有するTi化合物層からなる第1上部層が露出して形成された被覆工具を作製することができる。
この発明の被覆工具は、切れ刃稜線部のみに、塩素を含有するTi化合物層(第1上部層)が露出して形成されていることにより、切れ刃には被削材の溶着や構成刃先の発生が防止され、その結果、硬質被覆層の耐摩耗性、靭性を低下させることなく、耐溶着性、潤滑性を向上することができる。
また、切れ刃稜線部以外の、例えば、すくい面、逃げ面、には、第1上部層の表面を覆って第2上部層(通常のAl層あるいはTi化合物層)が形成されているため、耐摩耗性を確保することができ、さらに、機械的衝撃等によって例えば第2上部層に亀裂が生じた場合でも、第1上部層の存在によって、硬質被覆層の深部にまで亀裂が進展することが防止され、耐チッピング性も向上し、長期の使用にわたって、すぐれた切削性能が発揮され、被覆工具の長寿命化を図ることができる。
この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層は、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、1〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層からなる下部層、
(b)0.1〜15μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層からなる中間層、
(c)第1上部層と第2上部層とからなる上部層、
上記(a)〜(c)からなる硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、
上記第1上部層は、上記中間層に接して形成され、0.5〜5μmの平均層厚を有し、層中の平均塩素濃度が0.2〜2原子%であるTi化合物層であって、
上記第2上部層は、切れ刃稜線部以外では上記第1上部層に接して形成され、0.2〜5μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層または平均塩素濃度が0.1原子%以下のTi化合物層であって、
上記上部層は、切れ刃稜線部において、上記第2上部層が存在せず上記第1上部層が露出して形成されていることを特徴とする表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
本発明について、以下に詳細に説明する。
下部層のTi化合物層:
Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなる下部層は、通常の化学蒸着条件で形成することができ、それ自体が高温強度を有し、これの存在によって硬質被覆層が高温強度を具備するようになるほか、工具基体とAlからなる中間層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用をもつが、その合計平均層厚が1μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その合計平均層厚が20μmを越えると、チッピングを発生しやすくなることから、その合計平均層厚を1〜20μmと定めた。
中間層のAl層:
中間層を構成するAl層は、硬質被覆層の耐摩耗性を担保する作用があるが、その平均層厚が0.1μm未満では、長期の使用に亘っての耐摩耗性を確保することができず、一方、その平均層厚が15μmを越えるとAl結晶粒の粗大化による高温硬さ、高温強度が低下しやすくなり、高速切削加工時の耐チッピング性、耐摩耗性が低下するようになることから、その平均層厚を0.1〜15μmと定めた。
上部層のうちの第1上部層:
上部層のうち、前記Al層に直接接して形成される第1上部層は、層中の平均塩素濃度が0.2〜2原子%であるTi化合物層によって構成する。
ここで、第1上部層のTi化合物層は、下部層について述べたTi化合物層、即ち、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層、でよく、平均濃度0.2〜2原子%の塩素を含有する点で、下部層のTi化合物層とは異なる。
第1上部層中の平均塩素濃度が0.2原子%未満では、切れ刃稜線部に第1上部層が露出形成されていても、溶着性の高いステンレス鋼、低炭素鋼等の高熱発生を伴う高速切削加工において、十分な耐溶着性、潤滑性を発揮することができないため溶着チッピング等の耐異常損傷性を向上させることができず、一方、平均塩素濃度が2原子%を超えると、第1上部層の靭性が急激に低下し、例えば、切れ刃稜線部における被削材との接触による僅かな機械的衝撃によっても、層の剥落が生じやすくなることから、第1上部層の平均塩素濃度は0.2〜2原子%と定める。
さらに、切れ刃稜線部以外、例えば、逃げ面、すくい面等、に形成された第1上部層は、例えば、この上に形成される第2上部層に発生した亀裂が、硬質被覆層の深部に進展しようとする場合、亀裂の進展を抑制する作用を有することから、その結果、硬質被覆層の耐チッピング性を向上させる。
また、第1上部層の平均層厚が0.5μm未満では、長期の使用に亘って十分な耐溶着性、潤滑性を発揮することができず、一方、平均層厚が5μmを超えると、耐衝撃性が低下することから、第1上部層の平均層厚は0.5〜5μmと定める。
第1上部層の成膜は、
例えば、通常の化学蒸着装置を用い、
反応ガス組成:容量%で、TiCl4 :1〜3%、CHCN:0.1〜0.9%、CO:0〜2%、N:25〜80%、H:残り、
反応雰囲気温度:700〜870 ℃、
反応雰囲気圧力:7〜100 kPa、
の条件で蒸着することによって形成することができる。
この成膜条件の内では、反応雰囲気温度を通常より低温(700〜870℃)にし、成膜されたTi化合物層(上記の例では、TiCN層)中に、平均濃度0.2〜2原子%の塩素を含有させることができる。
上部層のうちの第2上部層:
上記第1上部層上に蒸着形成される第2上部層は、通常の化学蒸着によって形成されるAl層、または、実質的に塩素を含有しない通常のTi化合物層、または、第1上部層に比して平均塩素濃度が低い(0.1原子%以下)Ti化合物層によって構成する。
ここで、第1上部層のTi化合物層は、下部層のところで述べたTi化合物層、即ち、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層、でよいが、実質的に塩素を含有せず、あるいは、含有されたとしても平均塩素濃度は0.1原子%以下であることが必要である。
第1上部層が塩素を含有するTi化合物層として構成されているため、第2上部層中にも塩素が微量含有される場合があるが、第2上部層中の平均塩素濃度が0.1原子%を超える場合には、第2上部層の強度、硬さおよび靭性が不十分となるからである。
また、第2上部層の平均層厚が0.2μm未満では、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮することができず、一方、第2上部層の平均層厚が5μmを超えると、チッピングを発生しやすくなることから、第2上部層の平均層厚は0.2〜5μmと定める。
第1上部層と第2上部層とからなる上部層を蒸着形成した後、例えば、切れ刃稜線部に機械処理を施すことによって、第2上部層を除去し、第1上部層のみを露出させる。
具体的には、研磨粒子を含有したナイロンブラシにて切れ刃稜線部を機械的に処理すること、または、弾性砥石にて機械的処理をすることにより、第2上部層を除去し、第1上部層を露出させることができる。
図1には、切れ刃稜線部の上部層として、第1上部層が露出形成されており、また、切れ刃稜線部以外の逃げ面、すくい面等では、第1上部層と第2上部層によって上部層が構成されている、本発明被覆工具の硬質被覆層層構造の概略断面模式図を示す。
この発明の被覆工具は、工具基体表面に、硬質被覆層として、Ti化合物層からなる下部層、Al層からなる中間層、平均塩素濃度が高い第1上部層および実質的に塩素を含有しない(最大0.1原子%)Ti化合物層またはAl層からなる第2上部層が蒸着形成された被覆工具であって、ただ、被覆工具の切れ刃稜線部には、第2上部層が存在せず第1上部層が露出形成されていることから、ステンレス鋼、低炭素鋼等の溶着性の高い被削材の高速切削加工においても、切れ刃部に溶着、構成刃先の発生がなく、一方、切れ刃稜線部以外の逃げ面、すくい面等では、第2上部層によって、すぐれた耐摩耗性が確保され、また、第2上部層に亀裂が発生してもその下に形成されている第1上部層によって亀裂の進展が阻止されるため、溶着チッピング等の異常損傷の発生が抑制され、長期の使用にわたって、すぐれた耐摩耗性を発揮し、被覆工具の長寿命化が達成されるものである。
切れ刃稜線部に第1上部層が露出している層構造の本発明被覆工具の、概略断面模式図を示す。
つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG120408に規定するインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Fをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG120408のインサート形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体a〜fを形成した。
つぎに、これらの工具基体A〜Fおよび工具基体a〜fの表面に、通常の化学蒸着装置を用い、
(a)硬質被覆層の下部層として、表3に示される条件かつ表6に示される目標層厚でTi化合物層を蒸着形成し、
(b)次いで、硬質被覆層の中間層として、表3に示される条件かつ表6に示される目標層厚でAl層を蒸着形成し、
(c)次いで、硬質被覆層の第1上部層として、表4に示される条件かつ表7に示される目標層厚で、平均塩素濃度が0.2〜2原子%であるTi化合物層を蒸着形成し、
(d)次いで、硬質被覆層の第2上部層として、表3に示される条件かつ表7に示される目標層厚で、実質的に塩素を含有しない(あるいは塩素含有量が0.1原子%以下の)Ti化合物層またはAl層を蒸着形成し、
(e)次いで、切れ刃稜線部の第2上部層を、表5に示される条件で処理し、切れ刃稜線部に第1上部層を露出形成せしめ、
硬質被覆層として、表6に示される下部層、中間層、また、表7に示される上部層を蒸着形成して本発明被覆工具1〜13を製造した。
なお、図1に、本発明被覆工具1〜13の硬質被覆層層構造の概略断面模式図を示す。
また、比較の目的で、工具基体A〜Fおよび工具基体a〜fの表面に、表3に示される条件かつ表6に示される目標層厚で本発明被覆工具1〜13と同様に、硬質被覆層の下部層としてのTi化合物層及び中間層としてのAl層を、それぞれ蒸着形成し、
次いで、硬質被覆層の第1上部層として、表3あるいは表4に示される条件で表8に示される目標層厚で種々の平均塩素濃度のTi化合物層を蒸着形成し、
次いで、いくつかのものについては、硬質被覆層の第2上部層として、表3に示される条件かつ表8に示される目標層厚で、実質的に塩素を含有しない(あるいは塩素含有量が0.1原子%以下の)Ti化合物層またはAl層を蒸着形成し、
次いで、いくつかのものについては、切れ刃稜線部の第2上部層を、表5に示される条件で処理し、切れ刃稜線部に第1上部層を露出形成せしめることにより、
表8に示される比較被覆工具1〜13を製造した。
上記本発明被覆工具1〜13及び比較被覆工具1〜13の各構成層の層厚を、走査型電子顕微鏡を用いて測定したところ、いずれも表6、表7、表8に示される目標層厚と実質的に同じ平均層厚を示した。
また、本発明被覆工具1〜13及び比較被覆工具1〜13の第1上部層であるTi化合物層について、電子線プローブマイクロアナライザ(EPMA)にて、層厚方向に平行な縦断面のスポット分析を行い、測定値の5点平均を算出することにより平均塩素濃度を測定した。
その測定値を表7、8に示す。
Figure 2012192480
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つぎに、上記本発明被覆工具1〜13及び比較被覆工具1〜13について、以下の切削条件A、Bで切削加工試験を実施した。
《切削条件A》
被削材:JIS・SUS304の丸棒、
切削速度: 230 m/min.、
切り込み: 1.5 mm、
送り: 0.3 mm/rev.、
切削時間: 15 分、
の条件でのステンレス鋼の乾式高速連続切削試験(通常の切削速度は、120m/min.)、
《切削条件B》
被削材:JIS・S10Cの丸棒、
切削速度: 300 m/min.、
切り込み: 2.0 mm、
送り: 0.4 mm/rev.、
切削時間: 20 分、
の条件での低炭素鋼の乾式高速連続切削試験(通常の切削速度は、150 m/min.)、
を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定するとともに、異常損傷発生の有無を観察した。
この測定結果を表9に示した。
Figure 2012192480
表6〜9に示される結果から、硬質被覆層として、Ti化合物層からなる下部層、Al層からなる中間層、高塩素濃度のTi化合物層からなる第1上部層、Ti化合物層あるいはAl層からなる第2上部層を蒸着形成し、切れ刃稜線部のみ第1上部層を露出形成した本発明被覆工具は、ステンレス鋼、低炭素鋼等の溶着性の高い被削材の高速切削加工においても、切れ刃部に溶着、構成刃先の発生がなく、一方、切れ刃稜線部以外の逃げ面、すくい面等では、第2上部層によって、すぐれた耐摩耗性が確保され、溶着チッピング等の異常損傷の発生は観察されず、長期の使用にわたって、すぐれた耐摩耗性を発揮し、被覆工具の長寿命化が達成される。
これに対して、比較工具では、切削中の初期の段階で切れ刃に溶着、構成刃先が発生し、被削材の溶着と脱落の繰り返しによる被膜の異常損傷が生じ、切削時間と共に異常損傷が急激に進行して早期に切削不能となった。
上述のように、この発明の被覆工具は、例えばステンレス鋼、低炭素鋼等の溶着性の高い被削材の高速切削加工において、すぐれた耐溶着性、耐チッピング性、耐異常損傷性を発揮し、使用寿命の延命化を可能とするものであるから、切削加工の省力化および省エネ化に十分満足に対応できるものである。

Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
    (a)下部層は、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、1〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層からなる下部層、
    (b)0.1〜15μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層からなる中間層、
    (c)第1上部層と第2上部層とからなる上部層、
    上記(a)〜(c)からなる硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、
    上記第1上部層は、上記中間層に接して形成され、0.5〜5μmの平均層厚を有し、層中の平均塩素濃度が0.2〜2原子%であるTi化合物層であって、
    上記第2上部層は、切れ刃稜線部以外では上記第1上部層に接して形成され、0.2〜5μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層または平均塩素濃度が0.1原子%以下のTi化合物層であって、
    上記上部層は、切れ刃稜線部において、上記第2上部層が存在せず上記第1上部層が露出して形成されていることを特徴とする表面被覆切削工具。
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