JP2018176381A - 高耐欠損性を有する被覆超硬合金工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】鋼の切刃に対する衝撃的な高負荷が作用する高速かつ断続の厳しい条件下におけるミーリング加工において、高耐チッピング性、耐欠損性、及び、耐酸化性において優れた硬質被覆層を備えた被覆工具の提供。
【解決手段】硬質被覆層は、工具基体と接するAlTiN下層と、AlTiN下層に接するTiCN層と、TiCN層に接するAlTiN上層とを少なくとも含み、AlTiN下層の平均層厚をa、TiCN層の平均層厚をb及びAlTiN上層の平均層厚をcとしたとき、(a+b+c)が5〜15μm、bが2μm以上、cが2μm以上、a及びcがいずれも0.5bμm以上であり、AlTiN下層及びAlTiN上層を構成するAlTiN結晶粒は、NaCl型の面心立方構造を主とし、AlとTiの合量に対してAlの占める平均含有割合は、0.65〜0.90であり、硬質被覆層はクーリングクラックを有さない被覆工具。
【選択図】図1
【解決手段】硬質被覆層は、工具基体と接するAlTiN下層と、AlTiN下層に接するTiCN層と、TiCN層に接するAlTiN上層とを少なくとも含み、AlTiN下層の平均層厚をa、TiCN層の平均層厚をb及びAlTiN上層の平均層厚をcとしたとき、(a+b+c)が5〜15μm、bが2μm以上、cが2μm以上、a及びcがいずれも0.5bμm以上であり、AlTiN下層及びAlTiN上層を構成するAlTiN結晶粒は、NaCl型の面心立方構造を主とし、AlとTiの合量に対してAlの占める平均含有割合は、0.65〜0.90であり、硬質被覆層はクーリングクラックを有さない被覆工具。
【選択図】図1
Description
本発明は、鋼の高熱発生を伴うとともに、切刃に対して衝撃的な高負荷が作用する高速かつ断続の厳しい条件下におけるミーリング加工において、硬質被覆層がすぐれた高耐チッピング性、耐欠損性、および、耐酸化性を備えることにより、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を有する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金あるいは炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された工具基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、硬質被覆層として、Ti−Al系の複合窒化物層を物理蒸着法により被覆形成した被覆工具が知られており、これらは、すぐれた耐摩耗性を発揮することが知られている。
しかしながら、従来の前記Ti−Al系の複合窒化物を被覆形成した被覆工具においては、比較的耐摩耗性にはすぐれるものの、高速断続切削条件にて用いた場合には、チッピングや欠損等の異常損傷を発生しやすく、また、被覆層に含有されるAl比率が低いことから、保護膜が十分に形成されず、耐酸化性に劣り早期に寿命に達するという課題を有していた。
しかしながら、従来の前記Ti−Al系の複合窒化物を被覆形成した被覆工具においては、比較的耐摩耗性にはすぐれるものの、高速断続切削条件にて用いた場合には、チッピングや欠損等の異常損傷を発生しやすく、また、被覆層に含有されるAl比率が低いことから、保護膜が十分に形成されず、耐酸化性に劣り早期に寿命に達するという課題を有していた。
これに対して、例えば、特許文献1では、炭化タングステン基超硬合金基体の表面に、下部層として、一部にMT−CVD法を用いたTiCN層を被覆した後、上部層として、CVD法を用い、酸化アルミニウム層またはTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層の一種以上からなる層で構成される被覆層を形成することにより、鋼の断続切削においてもすぐれた耐チッピング特性および耐摩耗特性を示し、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮する被覆工具が提案されている。
また、特許文献2では、超硬合金基体上に、700〜900℃にて行う熱CVD法において、少なくとも一つの硬質被膜が、高AlN率のTi1−XAlXN硬質被膜であって、具体的には、X>0.75〜X=0.93である立方晶NaCl構造を有する単相の層であるか、または、主相とする層を有し、かかる層を有する被膜は、2500〜3800Hvの硬度を有し、従来達成されなかった硬度と耐酸化性を有し、特に高温において、きわめて良好な耐摩耗性を有する硬質被膜として提案されている。
さらに、特許文献3では、炭化タングステン基超硬合金基体の表面に、800〜880℃において、CVD法により、炭窒化チタンの縦長結晶を有する炭窒化チタン層を形成した後、さらに、前記炭窒化チタン層上に、AlXTi1−XN(平均組成X≧0.7)層の多層膜を形成することが提案されている。
近年の切削加工における省力化および省エネ化の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段と高速化、高効率化の傾向にあり、被覆工具には、より一層、耐チッピング性、耐欠損性、および、耐酸化性等の特性が求められるとともに、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性が求められている。
そして、これに対し、前記特許文献1では、表面被覆WC基超硬合金製切削工具において、下部層としてCVD法により、TiCN層を形成し、また、上部層としてCVD法を用い、酸化アルミニウム層またはTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層の一種以上からなる層を形成することにより、鋼の断続切削においても、すぐれた耐チッピング性、および、すぐれた耐摩耗性を有するとするが、鋼の切削加工において、より厳しい条件である、高速かつ断続のミーリング加工においては、依然として、チッピングが発生するという問題を生じている。
前記特許文献3においても、炭化タングステン基超硬合金基体の表面にCVD法により、TiCN層を形成するものであって、その後、CVD法により、Al比率が高く、高硬度であるTi1−XAlXN硬質被膜を設け、耐酸化性および耐摩耗性の被膜を形成するものであるが、前記特許文献1と同様、鋼に対する高速かつ断続のミーリング加工においては、依然として、チッピングが発生するという問題を有している。
また、前記特許文献2では、超硬合金基体上に、Al比率を高めたTi1−XAlXN硬質被膜を形成し、耐酸化性を有し、特に高温における耐摩耗性の向上を図るものであるが、鋼の切削加工において、より厳しい条件である、高速かつ断続のミーリング加工においてチッピングが発生する問題に対してはなんら認識されておらず、課題とはされていない。
そして、これに対し、前記特許文献1では、表面被覆WC基超硬合金製切削工具において、下部層としてCVD法により、TiCN層を形成し、また、上部層としてCVD法を用い、酸化アルミニウム層またはTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層の一種以上からなる層を形成することにより、鋼の断続切削においても、すぐれた耐チッピング性、および、すぐれた耐摩耗性を有するとするが、鋼の切削加工において、より厳しい条件である、高速かつ断続のミーリング加工においては、依然として、チッピングが発生するという問題を生じている。
前記特許文献3においても、炭化タングステン基超硬合金基体の表面にCVD法により、TiCN層を形成するものであって、その後、CVD法により、Al比率が高く、高硬度であるTi1−XAlXN硬質被膜を設け、耐酸化性および耐摩耗性の被膜を形成するものであるが、前記特許文献1と同様、鋼に対する高速かつ断続のミーリング加工においては、依然として、チッピングが発生するという問題を有している。
また、前記特許文献2では、超硬合金基体上に、Al比率を高めたTi1−XAlXN硬質被膜を形成し、耐酸化性を有し、特に高温における耐摩耗性の向上を図るものであるが、鋼の切削加工において、より厳しい条件である、高速かつ断続のミーリング加工においてチッピングが発生する問題に対してはなんら認識されておらず、課題とはされていない。
本発明者らは、前述の観点から、AlとTiの複合窒化物(以下、「AlTiN」で示すことがある)層およびTiの炭窒化物(以下、「TiCN」で示すことがある)層を含む硬質被覆層を化学蒸着で形成した被覆工具において、鋼の切削加工において、より厳しい条件である、高速かつ断続のミーリング加工においても、チッピング、欠損等の異常損傷を発生することなく、耐酸化性に優れ、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆工具の硬質被覆層について鋭意研究を重ねた結果、次のような知見を得た。
即ち、本発明者らは、超硬母材に対し、CVD法により一定厚、例えば、2.0μm以上のTiCN被膜を成膜した場合には、通常、母材と被膜の熱膨張係数の差が原因となり、成膜温度から室温まで冷却する過程において、TiCN膜に引張残留応力が生じ、クーリングクラックが発生するため、これが切削時のチッピングの起点となる一方、CVD法を用いて成膜されたAlTiN被膜については、膜中に圧縮残留応力が生成するため、クーリングクラックの発生が抑制されることを知見した。
そして、本発明者らは、TiCN膜が所定値未満、例えば2.0μm未満である場合には、従来膜と比較して耐摩耗性が極めて劣るものの、TiCN膜が、所定の膜厚bμm、例えば、2.0〜7.5μmである場合に、AlTiN被膜に関する前記知見に基づき、その上層および下層にそれぞれCVD法によりAlTiN被膜を0.5bμm以上の膜厚にて成膜することにより、TiCN中に発生する引張残留応力を効果的に緩和することができ、切削時の膜のチッピングの起点となるクーリングクラックのない膜の成膜を可能とし、耐チッピング性や耐欠損性の向上を実現したものである。
また、従来のPVD-AlTiN膜では、被膜に含有されるAl比率が低いために、保護膜を十分に形成することができず、耐酸化性に劣り、早期に寿命に達するものとなっていたが、CVD法にてAl高含有のAlTiN上層を前記TiCN被膜上に形成することにより、Al高含有のAlTiN上層は、切削熱により被膜表面にAl酸化物の保護膜を形成することができるため、高耐酸化性膜としてもすぐれた特性を有するものとなった。
そして、本発明者らは、TiCN膜が所定値未満、例えば2.0μm未満である場合には、従来膜と比較して耐摩耗性が極めて劣るものの、TiCN膜が、所定の膜厚bμm、例えば、2.0〜7.5μmである場合に、AlTiN被膜に関する前記知見に基づき、その上層および下層にそれぞれCVD法によりAlTiN被膜を0.5bμm以上の膜厚にて成膜することにより、TiCN中に発生する引張残留応力を効果的に緩和することができ、切削時の膜のチッピングの起点となるクーリングクラックのない膜の成膜を可能とし、耐チッピング性や耐欠損性の向上を実現したものである。
また、従来のPVD-AlTiN膜では、被膜に含有されるAl比率が低いために、保護膜を十分に形成することができず、耐酸化性に劣り、早期に寿命に達するものとなっていたが、CVD法にてAl高含有のAlTiN上層を前記TiCN被膜上に形成することにより、Al高含有のAlTiN上層は、切削熱により被膜表面にAl酸化物の保護膜を形成することができるため、高耐酸化性膜としてもすぐれた特性を有するものとなった。
さらに、本発明者は、硬質被覆層を構成するAlTiN層を特定の成膜法からなる化学蒸着によって形成することにより、AlTiN層の成分組成を、組成式:(AlxTi1−x)Nで表した場合、AlとTiの合量に対してAlの占める平均含有割合Xavg(但し、Xavgは原子比)を、0.65≦Xavg≦0.90まで高めることができ、しかも、Alの平均含有割合Xavgが高いにもかかわらず、AlTiN層をNaCl型の面心立方構造として形成し得ることを見出した。
そして、AlTiN層の前記高Al含有割合及び結晶構造によって、AlTiN層の硬さを向上することができ、その結果、耐摩耗性の向上が図られることを見出した。
そして、AlTiN層の前記高Al含有割合及び結晶構造によって、AlTiN層の硬さを向上することができ、その結果、耐摩耗性の向上が図られることを見出した。
本発明は、前記の知見に基づいてなされたものであって、
「炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタンサーメットで構成された工具基体の表面に、硬質被覆層が設けられている表面被覆切削工具において、
(a)前記硬質被覆層は、工具基体と接するAlTiN下層と、前記AlTiN下層に接するTiCN層と、前記TiCN層に接するAlTiN上層とを少なくとも含み、
(b)前記AlTiN下層の平均層厚、前記TiCN層の平均層厚、および、前記AlTiN上層の平均層厚をそれぞれ、aμm、bμm、および、cμmとした場合に、
各層の平均層厚の合計層厚(a+b+c)μmは、5〜15μmであり、
前記TiCN層の平均層厚bμmは、2μm以上であり、
前記AlTiN上層の平均層厚cμmは、2μm以上であり、
前記AlTiN下層の平均層厚aμm、および、前記AlTiN上層の平均層厚cμmが、いずれも、0.5bμm以上であることを満足し、
(c)前記AlTiN下層および前記AlTiN上層を構成するAlTiN結晶粒の結晶構造は、NaCl型の面心立方構造を主とし、AlTiNの組成を組成式:(AlxTi1−x)Nで表した場合のAlとTiの合量に対してAlの占める平均含有割合Xavg(但し、Xavgは原子比)は、0.65≦Xavg≦0.90の関係を満足し、
(d)前記硬質被覆層はクーリングクラックを有さないこと、
を特徴とする表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
「炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタンサーメットで構成された工具基体の表面に、硬質被覆層が設けられている表面被覆切削工具において、
(a)前記硬質被覆層は、工具基体と接するAlTiN下層と、前記AlTiN下層に接するTiCN層と、前記TiCN層に接するAlTiN上層とを少なくとも含み、
(b)前記AlTiN下層の平均層厚、前記TiCN層の平均層厚、および、前記AlTiN上層の平均層厚をそれぞれ、aμm、bμm、および、cμmとした場合に、
各層の平均層厚の合計層厚(a+b+c)μmは、5〜15μmであり、
前記TiCN層の平均層厚bμmは、2μm以上であり、
前記AlTiN上層の平均層厚cμmは、2μm以上であり、
前記AlTiN下層の平均層厚aμm、および、前記AlTiN上層の平均層厚cμmが、いずれも、0.5bμm以上であることを満足し、
(c)前記AlTiN下層および前記AlTiN上層を構成するAlTiN結晶粒の結晶構造は、NaCl型の面心立方構造を主とし、AlTiNの組成を組成式:(AlxTi1−x)Nで表した場合のAlとTiの合量に対してAlの占める平均含有割合Xavg(但し、Xavgは原子比)は、0.65≦Xavg≦0.90の関係を満足し、
(d)前記硬質被覆層はクーリングクラックを有さないこと、
を特徴とする表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
本発明について、以下に詳細に説明する。
AlTiN下層、TiCN層、AlTiN上層、および、硬質被覆層の平均層厚:
図1は、本発明に係る超硬基材と、AlとTiの複合窒化物層(AlTiN層)およびTiCN層との関係の一例を示す断面模式図である。
本発明に係る硬質被膜層は、工具基体に対し、順に、AlTiN下層、TiCN層、および、AlTiN上層が被覆された構造を有し、AlTiN下層、および、AlTiN上層は、その内在する残留圧縮応力により、TiCN層の引張残留応力を緩和するものであり、その膜厚aμmおよびcμmが、それぞれ、TiCNの膜厚bμmに対し、1/2未満の場合には、TiCN中の引張残留応力を十分に緩和することができないため、AlTiN下層の膜厚aμm、および、TiCN層上層膜厚cμmは、a≧0.5b、および、c≧0.5bの関係を満足するよう規定した。
加えて、AlTiN上層については、その層厚が2μm未満では、前記保護膜が、十分に形成されないため、2μm以上とした。
また、前記TiCN層の平均層厚bμmは、2μm未満では、耐摩耗性が不十分となるため、2μm以上とした。
さらに、全硬質被覆層の総平均層厚については、5.0μm未満では、耐摩耗性が不十分であり、15.0μmを超える場合には、耐チッピング性が不十分となるため、5.0μm以上15.0μm以下と定めた。
図1は、本発明に係る超硬基材と、AlとTiの複合窒化物層(AlTiN層)およびTiCN層との関係の一例を示す断面模式図である。
本発明に係る硬質被膜層は、工具基体に対し、順に、AlTiN下層、TiCN層、および、AlTiN上層が被覆された構造を有し、AlTiN下層、および、AlTiN上層は、その内在する残留圧縮応力により、TiCN層の引張残留応力を緩和するものであり、その膜厚aμmおよびcμmが、それぞれ、TiCNの膜厚bμmに対し、1/2未満の場合には、TiCN中の引張残留応力を十分に緩和することができないため、AlTiN下層の膜厚aμm、および、TiCN層上層膜厚cμmは、a≧0.5b、および、c≧0.5bの関係を満足するよう規定した。
加えて、AlTiN上層については、その層厚が2μm未満では、前記保護膜が、十分に形成されないため、2μm以上とした。
また、前記TiCN層の平均層厚bμmは、2μm未満では、耐摩耗性が不十分となるため、2μm以上とした。
さらに、全硬質被覆層の総平均層厚については、5.0μm未満では、耐摩耗性が不十分であり、15.0μmを超える場合には、耐チッピング性が不十分となるため、5.0μm以上15.0μm以下と定めた。
AlTiN層の組成:
本発明のAlTiN下層、および、本発明のAlTiN上層は、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合Xavg(但し、Xavgは原子比)が、0.65≦Xavg≦0.90を満足するように制御する。
その理由は、Alの平均含有割合Xavgが0.65未満であると、AlTiN層は耐酸化性に劣るため、鋼を高速断続切削加工に供した場合に、耐摩耗性が十分でない。
一方、Alの平均含有割合Xavgが0.90を超えると、硬さに劣る六方晶構造のAlTiN結晶粒の析出量が増大し硬さが低下し、耐摩耗性が低下するためである。
また、本発明では、AlTiN層中のAlの平均含有割合Xavgは、0.65≦Xavg≦0.90であって、AlTiN層中のAlの含有量が高いため、切削加工時の発熱によってAlTiN上層表面にはAlリッチな酸化物層が形成され、これが保護層として働き、AlTiN層中のクラックの発生・進展を抑制する作用が期待される。
したがって、Alの平均含有割合Xavgは、0.65≦Xavg≦0.90と定めた。
本発明のAlTiN下層、および、本発明のAlTiN上層は、AlのTiとAlの合量に占める平均含有割合Xavg(但し、Xavgは原子比)が、0.65≦Xavg≦0.90を満足するように制御する。
その理由は、Alの平均含有割合Xavgが0.65未満であると、AlTiN層は耐酸化性に劣るため、鋼を高速断続切削加工に供した場合に、耐摩耗性が十分でない。
一方、Alの平均含有割合Xavgが0.90を超えると、硬さに劣る六方晶構造のAlTiN結晶粒の析出量が増大し硬さが低下し、耐摩耗性が低下するためである。
また、本発明では、AlTiN層中のAlの平均含有割合Xavgは、0.65≦Xavg≦0.90であって、AlTiN層中のAlの含有量が高いため、切削加工時の発熱によってAlTiN上層表面にはAlリッチな酸化物層が形成され、これが保護層として働き、AlTiN層中のクラックの発生・進展を抑制する作用が期待される。
したがって、Alの平均含有割合Xavgは、0.65≦Xavg≦0.90と定めた。
NaCl型の面心立方構造を主体とするAlTiN層:
本発明のAlTiN層は、NaCl型の面心立方構造を有するAlTiN結晶粒を主体として構成するが、微量の他の結晶構造のAlTiN結晶粒の存在は、耐チッピング性、耐摩耗性に特段の悪影響を与えないことから、その含有が許容される。
具体的には、AlTiN層中に、膜断面における面積割合で20%未満の六方晶構造のAlTiN結晶粒が存在しても、耐チッピング性、耐摩耗性に特段の悪影響はないことから、本発明において「NaCl型の面心立方構造を主体とするAlTiN層」とは、膜断面における面積割合で、80%以上のNaCl型の面心立方構造を有するAlTiN結晶粒が存在するAlTiN層をいうものとする。
本発明のAlTiN層は、NaCl型の面心立方構造を有するAlTiN結晶粒を主体として構成するが、微量の他の結晶構造のAlTiN結晶粒の存在は、耐チッピング性、耐摩耗性に特段の悪影響を与えないことから、その含有が許容される。
具体的には、AlTiN層中に、膜断面における面積割合で20%未満の六方晶構造のAlTiN結晶粒が存在しても、耐チッピング性、耐摩耗性に特段の悪影響はないことから、本発明において「NaCl型の面心立方構造を主体とするAlTiN層」とは、膜断面における面積割合で、80%以上のNaCl型の面心立方構造を有するAlTiN結晶粒が存在するAlTiN層をいうものとする。
AlTiN下層、TiCN層、および、AlTiN上層の成膜方法:
本発明に規定する成分組成、および、配向性を備えたAlTiN下層、TiCN層、および、AlTiN上層は、以下の成膜条件にて化学蒸着法を用いることにより形成することができる。
[成膜条件]
1.AlTiN下層の成膜条件
成膜方法:CVD
反応ガス組成(容量%):
ガス群A:NH3:0.8〜1.6%、H2:45〜55%、
ガス群B:AlCl3:0.5〜0.7%、TiCl4:0.1〜0.3%、
N2:0.0〜10%、H2:残、
反応雰囲気圧力:4.0〜5.0kPa、
反応雰囲気温度:700〜900℃、
供給周期:1〜5秒、
1周期当たりのガス供給時間:0.15〜0.25秒、
ガス群Aの供給とガス群Bの供給の位相差:0.10〜0.20秒
2.TiCN層の成膜条件
成膜方法:CVD
反応ガス組成(容量%):TiCl4 1.0〜4.0%、CH3CN 0.1〜1.0%、N2 0.0〜25.0% H2 残、
反応雰囲気圧力:4.0〜5.0kPa、
反応雰囲気温度:700〜900℃、
3.AlTiN上層の成膜条件
前記「1.AlTiN下層の成膜条件」にて規定されたと同じ条件範囲内より選定する。
本発明に規定する成分組成、および、配向性を備えたAlTiN下層、TiCN層、および、AlTiN上層は、以下の成膜条件にて化学蒸着法を用いることにより形成することができる。
[成膜条件]
1.AlTiN下層の成膜条件
成膜方法:CVD
反応ガス組成(容量%):
ガス群A:NH3:0.8〜1.6%、H2:45〜55%、
ガス群B:AlCl3:0.5〜0.7%、TiCl4:0.1〜0.3%、
N2:0.0〜10%、H2:残、
反応雰囲気圧力:4.0〜5.0kPa、
反応雰囲気温度:700〜900℃、
供給周期:1〜5秒、
1周期当たりのガス供給時間:0.15〜0.25秒、
ガス群Aの供給とガス群Bの供給の位相差:0.10〜0.20秒
2.TiCN層の成膜条件
成膜方法:CVD
反応ガス組成(容量%):TiCl4 1.0〜4.0%、CH3CN 0.1〜1.0%、N2 0.0〜25.0% H2 残、
反応雰囲気圧力:4.0〜5.0kPa、
反応雰囲気温度:700〜900℃、
3.AlTiN上層の成膜条件
前記「1.AlTiN下層の成膜条件」にて規定されたと同じ条件範囲内より選定する。
本発明は、工具基体の表面に硬質被覆層を設けた表面被覆切削工具であって、工具基体の表面に、AlTiN下層、TiCN層、および、AlTiN上層の順に成膜を行い、TiCN層中に発生する引張残留応力を前記TiCN層の上下に成膜されたAlTiN下層、および、AlTiN上層において発生する圧縮残留応力により効果的に緩和することにより、TiCN層において、切削時にチッピングの起点となるクーリングクラックが発生することを防ぎ、耐チッピング性や耐欠損性の向上を実現するとともに、さらに、CVD法を用い、最外層となるAlTiN層を高Al含有層とし、切削時の切削熱により被膜表面にアルミニウム酸化物層を形成させ、これを保護膜として機能させることにより、切刃に対して衝撃的な高負荷の作用する高速かつ断続による厳しい条件下における鋼のミーリング加工においても、すぐれた高耐チッピング性、耐欠損性、および、耐酸化性を発揮するものである。
また、前記AlTiN層は、Alの平均含有割合Xavgが0.65≦Xavg≦0.90であり、NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒を主体として構成され、高硬度を有しているため、より一層耐摩耗性が向上する。
また、前記AlTiN層は、Alの平均含有割合Xavgが0.65≦Xavg≦0.90であり、NaCl型の面心立方構造を有する結晶粒を主体として構成され、高硬度を有しているため、より一層耐摩耗性が向上する。
つぎに、本発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3C2粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、ISO・SEEN1203AFSNのインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A,Bをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、NbC粉末、WC粉末、Co粉末およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1500℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、ISO・SEEN1203AFSNのインサート形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体Cを作製した。
つぎに、これらの工具基体A〜Cの表面に、化学蒸着装置を用い、順次、AlTiN下層、TiCN層、AlTiN上層を成膜した。すなわち、まず、前記工具基体A〜Cの表面に表3に示される形成条件A〜G、すなわち、NH3およびH2からなるガス群Aと、AlCl3、TiCl4、N2およびH2からなるガス群B、および、おのおののガスの供給方法として、反応ガス組成(ガス群Aおよびガス群Bを合わせた全体に対する容量%)をガス群Aとして、NH3:0.8〜1.6%、H2:45〜55%、ガス群Bとして、AlCl3:0.5〜0.7%、TiCl4:0.1〜0.3%、N2:0.0〜10%、H2:残、反応雰囲気圧力:4.0〜5.0kPa、反応雰囲気温度700〜900℃、供給周期1〜5秒、1周期当たりのガス供給時間0.15〜0.25秒、ガス群Aの供給とガス群Bの供給の位相差を0.10〜0.20秒として、所定時間、熱CVD法を用い、表6に示されるAlTiN下層を成膜し、次いで、表4に示される形成条件A〜G、すなわち、TiCl4、CH3CN、N2およびH2からなる反応ガス組成をTiCl4:1.0〜4.0%、CH3CN:0.1〜1.0%、N2:0.0〜25.0%,H2:残とし、反応雰囲気圧力:4.0〜5.0kPa、反応雰囲気温度:700〜900℃として、所定時間、MT(Moderate Temperature)−CVD法を用い、表6に示されるTiCN層を成膜し、最後に、表5に示される形成条件A〜G、すなわち、NH3およびH2からなるガス群Aと、AlCl3、TiCl4、N2およびH2からなるガス群B、および、おのおのガスの供給方法として、反応ガス組成(ガス群Aおよびガス群Bを合わせた全体に対する容量%)をガス群Aとして、NH3:0.8〜1.6%、H2:45〜55%、ガス群Bとして、AlCl3:0.5〜0.7%、TiCl4:0.1〜0.3%、N2:0.0〜10%、H2:残、反応雰囲気圧力:4.0〜5.0kPa、反応雰囲気温度700〜900℃、供給周期1〜5秒、1周期当たりのガス供給時間0.15〜0.25秒、ガス群Aの供給とガス群Bの供給の位相差を0.10〜0.20秒として、所定時間、熱CVD法を用い、表6に示されるAlTiN上層を成膜することにより、工具基体上にそれぞれ所望の目標層厚(μm)にてAlTiN下層、TiCN層、およびAlTiN上層を順次積層して有する本発明被覆工具1〜12を製造した。
また、比較の目的で、前記工具基体A〜Cの表面に、順次表3乃至表5に示される比較成膜工程の条件で、表7に示される目標層厚(μm)にて本発明被覆工具1〜12と同様に、AlTiN下層、TiCN層、およびAlTiN上層を含む硬質被覆層を蒸着形成し比較例被覆工具1〜12を製造した。
ついで、本発明被覆工具1〜12、比較例被覆工具1〜12の各構成層の工具基体に垂直な方向の断面を、走査型電子顕微鏡(倍率5000倍)を用いて測定し、観察視野内の5点の層厚を測って平均して平均層厚を求めたところ、いずれも表6および表7に示される目標平均層厚と実質的に同じ平均層厚を示した。
また、AlTiN層の平均Al含有割合Xavgについては、電子線マイクロアナライザ(EPMA,Electron−Probe−Micro−Analyser)を用い、表面を研磨した試料において、電子線を試料表面側から照射し、得られた特性X線の解析結果の10点平均からAlの平均Al含有割合Xavgを求めた。
表6および表7に、Xavgの値を示す。
また、AlTiN層の平均Al含有割合Xavgについては、電子線マイクロアナライザ(EPMA,Electron−Probe−Micro−Analyser)を用い、表面を研磨した試料において、電子線を試料表面側から照射し、得られた特性X線の解析結果の10点平均からAlの平均Al含有割合Xavgを求めた。
表6および表7に、Xavgの値を示す。
また、AlTiN層の結晶構造については、X線回折装置を用い、Cu−Kα線を線源として測定範囲(2θ):30〜80度、スキャンステップ:0.013度、1ステップ辺り測定時間:0.48sec/stepという条件でX線回折を行った場合、JCPDS00−038−1420立方晶TiNとJCPDS00−046−1200立方晶AlN、各々に示される同一結晶面の回折角度の間(例えば、36.66〜38.53°、43.59〜44.77°、61.81〜65.18°)に回折ピークが現れることを確認することによって調査した。
また、電子線後方散乱回折装置を用いて、AlとTiとの複合窒化物層からなる硬質被覆層の工具基体に垂直な方向の断面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記断面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に照射し、工具基体と水平方向に長さ50μm、法線方向に該複合窒化物層の膜厚未満に亘り硬質被覆層について0.01μm/stepの間隔で、電子線後方散乱回折像を測定し、個々の結晶粒の結晶構造を解析することでNaCl型の面心立方構造を有する結晶粒からなる柱状組織の粒界部に存在する微粒結晶粒が六方晶構造であることを同定し、立方晶構造と六方晶構造に属する全ピクセル数に占める六方晶構造に属するピクセル数の割合を求めることで、その六方晶構造の占める面積割合を求めた。
なお、ここで、全体から前記六方晶構造の占める面積割合を差し引いた残りの面積割合を前記NaCl型の面心立方構造の占める面積割合とし、前記六方晶構造の存在する面積割合が、面積率で20面積%以下である場合には、前記NaCl型の面心立方構造の占める面積割合を80面積%以上として、「NaCl型の面心立方構造を主体とするAlTiN層」とすることは、段落0015において定義したとおりであり、これを、表6の結晶構造の欄では、その(注1)にて記載したとおり、「立方晶」として表現した。
他方、前記六方晶構造の存在する面積割合が、面積率で20面積%を超える場合には、前記NaCl型の面心立方構造の占める面積割合は、80面積%未満となるため、このような組織は、段落0015において定義される「NaCl型の面心立方構造を主体とするAlTiN層」には、該当せず、これを、表7の結晶構造の欄では、その(注2)にて記載したとおり、「立方晶+六方晶」として表現した。
また、クーリングクラックの有無については、従来より通常行われている方法により確認することができるが、例えば、膜断面を研磨し、TiCN層をエッチング液に浸漬した後、光学顕微鏡にて観察することにより、その有無を確認した。
また、電子線後方散乱回折装置を用いて、AlとTiとの複合窒化物層からなる硬質被覆層の工具基体に垂直な方向の断面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記断面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に照射し、工具基体と水平方向に長さ50μm、法線方向に該複合窒化物層の膜厚未満に亘り硬質被覆層について0.01μm/stepの間隔で、電子線後方散乱回折像を測定し、個々の結晶粒の結晶構造を解析することでNaCl型の面心立方構造を有する結晶粒からなる柱状組織の粒界部に存在する微粒結晶粒が六方晶構造であることを同定し、立方晶構造と六方晶構造に属する全ピクセル数に占める六方晶構造に属するピクセル数の割合を求めることで、その六方晶構造の占める面積割合を求めた。
なお、ここで、全体から前記六方晶構造の占める面積割合を差し引いた残りの面積割合を前記NaCl型の面心立方構造の占める面積割合とし、前記六方晶構造の存在する面積割合が、面積率で20面積%以下である場合には、前記NaCl型の面心立方構造の占める面積割合を80面積%以上として、「NaCl型の面心立方構造を主体とするAlTiN層」とすることは、段落0015において定義したとおりであり、これを、表6の結晶構造の欄では、その(注1)にて記載したとおり、「立方晶」として表現した。
他方、前記六方晶構造の存在する面積割合が、面積率で20面積%を超える場合には、前記NaCl型の面心立方構造の占める面積割合は、80面積%未満となるため、このような組織は、段落0015において定義される「NaCl型の面心立方構造を主体とするAlTiN層」には、該当せず、これを、表7の結晶構造の欄では、その(注2)にて記載したとおり、「立方晶+六方晶」として表現した。
また、クーリングクラックの有無については、従来より通常行われている方法により確認することができるが、例えば、膜断面を研磨し、TiCN層をエッチング液に浸漬した後、光学顕微鏡にて観察することにより、その有無を確認した。
つぎに、前記本発明被覆工具1〜12、比較例被覆工具1〜12について、以下に示す、高速切削断続加工試験を実施し、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
その結果を表8に示す。
なお、比較例被覆工具1〜12については、熱亀裂の伝播・進展を原因として、チッピング発生により工具寿命に至ったものについては、寿命に至るまでの切削時間(分)を記載している。
その結果を表8に示す。
なお、比較例被覆工具1〜12については、熱亀裂の伝播・進展を原因として、チッピング発生により工具寿命に至ったものについては、寿命に至るまでの切削時間(分)を記載している。
≪切削条件≫
切削試験 :乾式高速正面フライス、センターカット切削加工、
被削材 :JIS・SCM440幅100mm、長さ400mmのブロック材、
回転速度 :968min−1、
切削速度 :380m/min、
切り込み :1.5mm、
一刃送り量:0.2mm/刃、
切削時間 :5分、
切削試験 :乾式高速正面フライス、センターカット切削加工、
被削材 :JIS・SCM440幅100mm、長さ400mmのブロック材、
回転速度 :968min−1、
切削速度 :380m/min、
切り込み :1.5mm、
一刃送り量:0.2mm/刃、
切削時間 :5分、
表8に示されるように、本発明にかかる被覆工具は、鋼の高速、断続切削条件下においても、長期の使用に亘ってすぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮するものである。
他方、比較例被覆工具では、AlTiN下層、TiCN層やAlTiN上層について、所定の形成条件を満たしていないことから、クーリングクラックの発生もなく、所望の膜厚、結晶構造、および、Al平均含有割合を有する被覆工具については得られておらず、いずれの被覆工具も溶着やチッピングが生じており、摩耗幅が非常に大きいものであるか、短時間で寿命に至るものであった。
本発明の被覆工具は、鋼の高熱発生を伴い、また、切刃に対して衝撃的な高負荷が作用する高速かつ断続の厳しい条件下においても、すぐれた耐チッピング性、耐欠損性、および、耐酸化性を備え長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を有するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタンサーメットで構成された工具基体の表面に、硬質被覆層が設けられている表面被覆切削工具において、
(a)前記硬質被覆層は、工具基体と接するAlTiN下層と、前記AlTiN下層に接するTiCN層と、前記TiCN層に接するAlTiN上層とを少なくとも含み、
(b)前記AlTiN下層の平均層厚、前記TiCN層の平均層厚、および、前記AlTiN上層の平均層厚をそれぞれ、aμm、bμm、および、cμmとした場合に、
各層の平均層厚の合計層厚(a+b+c)μmは、5〜15μmであり、
前記TiCN層の平均層厚bμmは、2μm以上であり、
前記AlTiN上層の平均層厚cμmは、2μm以上であり、
前記AlTiN下層の平均層厚aμm、および、前記AlTiN上層の平均層厚cμmが、いずれも、0.5bμm以上であることを満足し、
(c)前記AlTiN下層および前記AlTiN上層を構成するAlTiN結晶粒の結晶構造は、NaCl型の面心立方構造を主とし、AlTiNの組成を組成式:(AlxTi1−x)Nで表した場合のAlとTiの合量に対してAlの占める平均含有割合Xavg(但し、Xavgは原子比)は、0.65≦Xavg≦0.90の関係を満足し、
(d)前記硬質被覆層はクーリングクラックを有さないこと、
を特徴とする表面被覆切削工具。
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---|---|---|---|
JP2017082603A JP2018176381A (ja) | 2017-04-19 | 2017-04-19 | 高耐欠損性を有する被覆超硬合金工具 |
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JP2020157473A (ja) * | 2019-03-25 | 2020-10-01 | 株式会社Moldino | 被覆切削工具 |
CN113195135A (zh) * | 2019-04-17 | 2021-07-30 | 住友电工硬质合金株式会社 | 切削工具 |
-
2017
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