JP2020151774A - 耐熱亀裂性および耐欠損性にすぐれた表面被覆切削工具 - Google Patents

耐熱亀裂性および耐欠損性にすぐれた表面被覆切削工具 Download PDF

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Abstract

【課題】硬質被覆層が、すぐれた耐熱亀裂性および耐欠損性を兼ね備え、工具寿命の向上をもたらす、特に、転削加工用としてすぐれた表面被覆切削工具を提供する。【解決手段】工具基体表面に、組成式AlαTi1−α−βXβN(ただし、Xは、Si、V、Cr、Y、Zr、Mo、Ta、Wから選ばれる一種または二種以上の元素)にて表現される、平均層厚0.1μmを超え1.0μm未満の非晶質相からなる下地層を設け、その上層として、組成式AlxTi1−x−yMyN(ただし、Mは、Si、V、Cr、Y、Zr、Mo、Ta、Wから選ばれる一種または二種以上の元素を示す)にて表現され、下地層に対し、3.0倍以上の膜厚を有する、立方晶単相組織からなる硬質被覆層を設けることにより、達成したものである。【選択図】図1

Description

この発明は、たとえば、合金鋼や炭素鋼などの転削加工において、硬質被覆層がすぐれた耐熱亀裂性および耐欠損性を発揮することにより、熱亀裂や、チッピング、欠損等の異常損傷を発生することなく、長期の使用にわたりすぐれた切削性能を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という。)に関するものである。
従来、転削加工用の被覆工具において、炭化タングステン基超硬合金や炭窒化チタン基サーメット等にて構成された工具基体の表面に、硬質被覆層として、Al−Ti系の複合窒化物層等を被覆形成することにより、すぐれた耐摩耗性や耐熱性などを発揮する表面被覆切削工具が知られている。
例えば、特許文献1では、工具基体表面に、(AlTi1−x)(N1−y)で示される化学組成(但し、0.56≦x≦0.75、0.6≦y≦1)を有するTiAl(C,N)層からなる、厚さ0.8〜10μmの耐摩耗性皮膜をアークイオンプレーティング法で形成した耐摩耗性、耐熱性および密着性にすぐれた被覆工具が提案されている。
特開平8−209333号公報
近年の切削加工における省力化および省エネ化、さらには低コスト化への要求は高く、これに伴い、切削加工は一段と高速化、高能率化への傾向にあるが、例えば、合金鋼や炭素鋼などの転削加工時においては、耐摩耗性に加え、切削時に高温となることからすぐれた耐熱亀裂性が要求される。また、被削材に断続部がある場合、チッピングや欠損等が生じることとなるため、あわせて、耐チッピング性や耐欠損性の向上が求められている。
これに対し、前記特許文献1に記載された被覆切削工具は、硬質被覆層として、すぐれた耐摩耗性、耐熱性、密着性を有するAlTi(C,N)層を用いるものの、合金鋼や炭素鋼などの転削加工時においては、耐熱亀裂性および耐欠損性のいずれもが不十分であるという問題を有していた。
そこで、本発明は、前記合金鋼や炭素鋼の転削加工においてみられる、硬質被覆層の熱亀裂やチッピング、欠損等の発生の問題に対して、硬質被覆層が耐摩耗性に加え、すぐれた耐熱亀裂性および耐欠損性を両立して発揮させてなる被覆工具を提供することにより解決することを目的とする。
本発明者らは、前記合金鋼や炭素鋼の転削加工用の被覆工具において、長期の使用にわたり、硬質被覆層がすぐれた耐熱亀裂性および耐欠損性を兼ね備え、工具寿命の向上をもたらす、被覆工具について、鋭意研究を行った結果、以下の知見を得たものである。
すなわち、本発明者らは、被覆工具、特に合金鋼や炭素鋼の転削加工用として用いられる従来の被覆工具において、チッピングや欠損等が発生する原因の一つとして、粒界からの熱亀裂の発生に起因することを見出した。
すなわち、切削加工時、硬質被覆層に熱亀裂が生じた場合には、亀裂部から侵入した酸素が粒界を介して拡散し、さらに、皮膜および基体が酸化されることで亀裂部が拡大する結果、チッピングや欠損が発生する知見を得た。
そこで、本発明者らは、下地層に粒界のほとんどない非晶質を用い、酸素が拡散しにくい組織とすることにより、硬質被覆層のチッピング、欠損等の異常損傷の発生を抑制し、長期の使用にわたり、すぐれた切削性能を発揮する被覆工具が得られることを見出したものである。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、
「(1)WC基超硬合金またはTiCN基サーメットからなる工具基体の表面に、工具基体側より順に、下地層と硬質被覆層とが形成された表面被覆切削工具において、
(a)前記下地層は、その平均層厚は、0.1を超え1.0μm未満であり、
組成式AlαTi1−α−ββNにて表した場合(ただし、Xは、Si、V、Cr、Y、Zr、Mo、Ta、Wから選ばれる一種または二種以上の元素を示す)、Alの含有割合αおよびXの含有割合β(ただし、α、βは、いずれも原子比)は、それぞれ、0.50≦α≦0.75、および、0≦β≦0.20を満足する平均組成を有する非晶質組織からなり、
(b)前記硬質被覆層は、その平均層厚は、前記下地層の平均層厚の3.0倍以上であり、
組成式AlTi1−x−yNにて表した場合(ただし、Mは、Si、V、Cr、Y、Zr、Mo、Ta、Wから選ばれる一種または二種以上の元素を示す)、Alの含有割合xおよびMの含有割合y(ただし、x、yは、いずれも原子比)は、それぞれ、0.40≦x≦0.70、および、0≦y≦0.20を満足する平均組成を有する立方晶単相組織からなることを特徴とする表面被覆切削工具。」を特徴とするものである。
なお、ここでいう「原子比」は、AlTiXNにおいては、Nを除く、Al、TiおよびXの原子数の合計比率を1.00とした場合のAl、Ti、Xのそれぞれの原子数の比率をいい、また、AlTiMNにおいては、Nを除く、Al、TiおよびMの原子数の合計比率を1.00とした場合のAl、Ti、Mのそれぞれ原子数の比率をいうものとする。
本発明の被覆工具は、特に、工具基体上の下地層とその上層の硬質被覆層との組み合わせにより、すぐれた耐亀裂性および耐欠損性を合わせ持ち、高熱発生を伴いかつ刃先に高負荷が発生する炭素鋼、合金鋼等の高速切削加工において、硬質被覆層における熱亀裂の進展に起因するチッピング、欠損等の異常損傷の発生を抑制することができるため、長期の使用にわたりすぐれた切削性能を発揮するものである。
本発明の被覆工具の断面組織図である。 被覆工具の硬質被覆層を蒸着形成するためのアークイオンプレーティング装置の概略図であり、(a)は正面図、(b)は側面図を示す。
次に、本発明の被覆工具について、以下、詳細に説明する。
下地層;
本発明に係る下地層は、非晶質層よりなることにより、熱亀裂部からの酸素の拡散を防止し、熱亀裂の進展を抑制する。また、非晶質層はすぐれた靱性のため高い耐欠損性を有するものである。
本発明に係る下地層は、工具基体上に直接設けられ、0.1μmを超え1.0μm未満の平均層厚を有するAlとTiとX(Xは、Si、V、Cr、Y、Zr、Mo、Ta、Wから選ばれる一種または二種以上の元素を示す)の非晶質複合窒化物(以下、「AlTiXN」という場合がある。)層である。
前記AlTiXNは、その組成を、組成式AlαTi1−α−ββNで表した場合、AlとTiとXがそれぞれその合量に占める平均含有割合は、それぞれ、α、(1−α−β)、βにて表現されるが、Alの平均含有割合αは、0.50未満では、耐酸化性が不十分であるため、αは、0.50以上と規定した。一方、αが0.75を超えると結晶化した六方晶が析出し、酸素拡散防止効果が期待できなくなるため、0.75以下と規定した。
また、Xの平均含有割合βは、0.20を超えると格子歪が大きくなり、高圧縮残留応力が発生し、膜剥離を生じるおそれがあるため、0.20以下と規定した。
また、前記下地層は、前記複合窒化物がAlTiNである場合を含むので、Xの平均含有割合βは、0を含む。
下地層の膜厚は、0.1μm以下では、靱性層としての靱性特性が不十分であり、一方、1.0μm以上では、非結晶質層が軟質であり、耐摩耗性が不十分となるため、0.1μmを超え1.0μm未満と規定した。
また、膜厚に関して、後述する立方晶単相からなる硬質被覆層との関係についてみると、
下地層の層厚に対する前記立方晶単相からなる硬質被覆層の層厚の比が3.0未満では、前記硬質被覆層の層厚に対する軟質の非晶質層の層厚が相対的に高まり、耐摩耗性が不十分となるため、下地層の層厚に対する硬質被覆層の層厚の比は、3.0以上と規定した。
硬質被覆層;
本発明に係る硬質被覆層は、工具基体に対し、前記下地層を介して成膜されてなり、立方晶単相組織を有することから、耐摩耗性にすぐれ、前記下地層との組み合わせにより、たとえば、合金鋼や炭素鋼などの転削時において、すぐれた耐熱亀裂性および耐欠損性を発揮するものである。
また、前述のとおり、本発明に係る硬質被覆層の平均層厚は、前記下地層の平均層厚の3倍以上とすることにより、すぐれた耐摩耗性を発揮する。硬質被覆層の層厚は好ましくは5μm以下である。
前記硬質被覆層は、AlとTiとM(Mは、Si、V、Cr、Y、Zr、Mo、Ta、Wから選ばれる一種または二種以上の元素を示す)の複合窒化物(以下、「AlTiMN」という場合がある。)層で構成され、前記AlTiMNは、組成式AlTi1−x−yNにて表した場合、AlとTiとMがそれらの合量に占める平均含有割合は、それぞれ、x、(1−x−y)、yにて表現されるが、Alの平均含有割合xは、0.40未満では、耐酸化性が不十分であるため、0.40≦xを満足する必要がある。他方、Alの平均含有割合xが、0.70を超えると、軟質な六方晶AlN(h−AlN)が析出し、耐摩耗性が不十分となるため、x≦0.70と規定した。Mの平均含有率yが0.20を超えると非晶質等の異常相が生じることによる硬さ低下や、格子歪が大きくなり、高圧縮残留応力が発生し、膜剥離の発生するおそれが生じる場合があるため、Mの組成範囲yは、0.20以下と規定した。
前記硬質被覆層は、前記複合窒化物がAlTiNである場合を含むので、Mの平均含有割合yは0を含むものである。
なお、前記下地層および硬質被覆層の平均層厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)、または、透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、例えば、被覆層縦断面において、倍率20000倍にて、観察視野内の5点の層厚の平均値として求めることができる。
また、下地層および硬質被覆層におけるそれぞれのAlの平均含有割合αおよびx、それぞれのTiの平均含有割合(1−α−β)および(1−x−y)、ならびに、下地層におけるXの平均含有割合β、および、硬質被覆層におけるMの平均含有割合yについては、電子線マイクロアナライザ(Electron−Probe−Micro−Analyser;EPMA)を用い、工具基体表面に垂直な非晶質下地層および硬質被覆層の縦断面を研磨し、該断面に電子線を照射し、各層について、得られた特性X線の解析結果の10点平均から求めることができる。
下地層および硬質被覆層の形成方法;
本発明に係る前記下地層および前記硬質被覆層は、PVD法の一種であるイオンプレーティング法やスパッタ法等を用い、成膜を行うことにより得ることができる。
以下では、具体的にアークイオンプレーティング(AIP)装置を用いて、工具基体に前記下地層および前記硬質被覆層を成膜し、所望の被覆工具を製造する方法について説明を行う。
図2(a)、(b)に、本発明の硬質被覆層を成膜するための、アークイオンプレーティング装置の概略図を示す。
図2(a)、(b)に示すアークイオンプレーティング装置は、装置中央部に基体装着用の回転テーブルを設け、前記回転テーブルを挟んで、一方側にカソード電極(蒸着源)として下地層のAlTiXN層成膜用のAlTiX合金ターゲットを配置し、他方側に同じくカソード電極として所定の組成を有する硬質被覆層のAlTiMN層成膜用のAlTiM合金ターゲットを配置し、WC基超硬合金あるいはTiCN基サーメットなどからなる工具基体を前記回転テーブル上に基体自体の自転も可能となるよう載置し、工具基体に対するボンバード前処理、および、工具基体の温度、Nガス圧、成膜時のバイアス電圧、アーク電流値の調整後、窒素ガス雰囲気にてアーク放電を発生させることにより、成膜を行うことができる。
成膜は、まず、カソード電極である前記下地層のAlTiXN層成膜用のAlTiX合金ターゲットと、対応するアノード電極との間にてアーク放電を発生させ、前記工具基体表面に、非晶質相組織からなる下地層を成膜する。
非晶質相組織からなる下地層は、Alの原子比が0.5を超えたターゲットを用い、低温、低バイアス、高窒素圧雰囲気にて成膜することにより形成することができる。
ついで、前記下地層のAlTiXN層成膜用のAlTiX合金ターゲットと、対応するアノード電極との間のアーク放電のみを停止し、同装置内の雰囲気を窒素雰囲気に保持したままで、前記硬質被覆層成膜用のAlTiMN層成膜用のAlTiM合金ターゲットと対応するアノード電極との間にてアーク放電を発生させ、前記下地層であるAlTiXN層上に硬質被覆層としてAlTiMN層を蒸着することにより、すぐれた耐摩耗性、耐熱亀裂性、および、耐欠損性を両立させて発揮してなる表面被覆切削工具を得ることができる。
つぎに、本発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
なお、具体的な説明としては、WC基超硬合金またはTiCN基サーメットを工具基体とする被覆工具について説明するが、立方晶窒化ホウ素焼結体を工具基体とする被覆工具についても同様である。
工具基体の作製;
原料粉末として、いずれも0.5〜5μmの平均粒径を有する、Co粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr粉末、WC粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてボールミルで72時間湿式混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力でプレス成形し、これらの圧粉成形体を焼結し、所定寸法となるように加工して、ISO規格SEEN1203AFENのインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A、Bを製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜5μmの平均粒径を有する、TiCN(質量比にてTiC/TiN=50/50)粉末、NbC粉末、MoC粉末、WC粉末、Co粉末およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてボールミルで72時間湿式混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力でプレス成形し、これらの圧粉成形体を焼結し、所定寸法となるように加工して、ISO規格SEEN1203AFENのインサート形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体C、Dを製造した。
Figure 2020151774


Figure 2020151774

成膜工程;
前記工具基体に対して、図2に示すAIP装置(アークイオンプレーティング装置)を用いて成膜を行い、本発明の被覆工具を作製した。
(a)前記工具基体のそれぞれについて、アセトン中にて超音波洗浄し、乾燥した状態で、図2に示すAIP装置内の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部に沿って装着し、前記回転テーブルを挟んで対向する位置の一方側に非晶質下地層(AlTiXN)成膜用のAlTiXターゲット(カソード電極)を配置し、他方側に立方晶単相硬質被覆層(AlTiMN)成膜用のAlTiMターゲット(カソード電極)を配置する。
(b)次いで、AIP装置内を排気し、10−2Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターにて装置内を500℃に加熱した後、0.5〜2.0PaのArガス雰囲気に設定し、回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−400〜−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、5〜30分間ボンバード処理を行う。
(c)次いで、AIP装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入し、窒素ガスの圧力を表3に示す4.0〜10.0Paの範囲内の所定の反応雰囲気とするとともに、表3にて示す装置内温度に維持し、また、回転テーブル上にて自転しながら表3にて示す回転数にて回転する工具基体に対し、表3にて示す−10〜−60Vの範囲内の所定の直流バイアス電圧を印加し、かつ、表3に示すカソード電極である非晶質下地層(AlTiXN)成膜用のAlTiXターゲットと、対応するアノード電極との間に表3に示す50〜200Aの範囲内の所定の電流を流してアーク放電を発生させ、工具基体の表面に表5にて示される目標平均組成、および、目標平均層厚にて非晶質下地層を蒸着形成する。
(d)次いで、カソード電極である非晶質下地層(AlTiXN)成膜用のAlTiXターゲットと対応するアノード電極との間のアーク放電を停止し、装置内温度を維持しつつ、装置内の窒素ガスの圧力を表3に示す2.0〜8.0Paの範囲内の所定の反応雰囲気に調整し、回転テーブル上にて自転しながら回転する工具基体に対し、表3にて示す−30〜−100Vの範囲内の所定の直流バイアス電圧を印加し、かつ、表3に示すカソード電極である硬質被覆層(AlTiMN)成膜用のAlTiMターゲットと、対応するアノード電極との間に表3に示す50〜200Aの範囲内の所定の電流を流してアーク放電を発生させ、工具基体の表面に、表5にて示される目標平均組成、および、目標平均層厚にて硬質被覆層を蒸着形成し、本発明被覆工具(以下、「本発明工具」という。)1〜10を作製した。
また、比較の目的にて、前記工具基体に対して、表4に示す条件にて、表6にて示される目標平均組成、および、目標平均層厚にて非晶質下地層および硬質被覆層を蒸着形成し、表6にて示される比較例被覆工具(以下、「比較例工具」という。)1〜10を作製した。
なお、ここで、非晶質下地層および硬質被覆層の平均層厚、成分組成、あるいは、結晶構造の解析等についてその測定手段および測定方法について整理すると以下のとおりである。
すなわち、非晶質下地層および硬質被覆層の平均層厚については、被覆層の垂直断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた断面測定により行うことができる。
本発明において、非晶質下地層および硬質被覆層の平均層厚については、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、5μm以上離れた膜断面において任意の5点についての層厚を測定し、この値を平均することによって、非晶質下地層および硬質被覆層の平均層厚を算出した。
また、非晶質下地層および硬質被覆層におけるAl、Ti、XおよびMの平均含有割合(原子比)、具体的には、Alについては、αまたはx、Tiについては、(1−α−β)または(1−x−y)、Xについてはβ、または、Mについてはyについて、微小領域の組成分析に最適なエネルギー分散型X線分光法(EDS)、または、透過型電子顕微鏡(TEM)付属のエネルギー分散型X線分光法(EDS)を用い、非晶質下地層および硬質被覆層の断面の5点において、膜厚の半分以上のスケールを含む領域にてエリア分析を行い、前記各成分の含有割合を測定し、その値を平均して、各層における成分組成を求めた。
次いで、非晶質下地層および硬質被覆層について、いずれも、膜厚断面の5点において、膜厚の半分以上のスケールを含む領域にて結晶組織についてエリア分析を行った。
まず、非晶質下地層については、TEM−ASTER(Automated Crystal Orientation Mapping+DigiSTAR)を用いて、観察断面において、結晶粒としての観察限界を超えた5nm以下の領域を非晶質領域とし、結晶配向性が確認できる粒の面積割合が30面積%以下である場合に非晶質相とした。
また、硬質被覆層については、立方晶単相であることが求められるため、観察断面において、六方晶相が存在するかTEMにより電子線回折を用いて、硬質被覆層の任意の5か所にて(膜厚)×0.8の直径の円内の六方晶の有無により判断した。
Figure 2020151774

Figure 2020151774




Figure 2020151774




Figure 2020151774





次に、本発明工具1〜10、比較例工具1〜10をいずれも工具鋼製カッタ先端部に固定治具にてクランプした状態で、以下に示す、乾式高速正面フライス、センターカット切削加工試験を実施し、8パス後の逃げ面摩耗量を測定した。
逃げ面摩耗量は、チッピングを含む最大の摩耗量を測定した。
ここで、切り込みとは被削材を除去する厚みであり、1刃送りとはカッタが一回転した際にテーブルが進む距離を刃数で割った量である。
<切削条件1>
被削材: JIS・SCM400幅100mm、長さ400mmのブロック材
回転速度: 700 min−1
切削速度: 300 m/min、
切り込み: 2.0 mm、
一刃送り量:0.2 mm/刃、
<切削条件2>
被削材: JIS・SCM400幅100mm、長さ400mmのブロック材
回転速度: 600 min−1
切削速度: 250 m/min、
切り込み: 2.5 mm、
一刃送り量:0.2 mm/刃、
表7、表8にその結果を示す。
Figure 2020151774


Figure 2020151774

表7、表8の結果によれば、本発明工具1〜10は、比較例工具1〜10に比して、特に、熱亀裂に起因するチッピング、欠損等の異常損傷の発生を抑制することができ、あわせて、耐摩耗性にすぐれ逃げ面摩耗の進行を抑制することができる。
その結果、長期の使用にわたって、すぐれた切削性能を発揮することができる。
本発明の表面被覆切削工具は、耐摩耗性に加え、従来、合金鋼や炭素鋼の転削加工において、課題とされた、耐熱亀裂性と耐欠損性の両立を実現し、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものであるから、切削加工装置の高性能化、あるいは、切削加工の省力化および省エネ化、さらには、低コスト化への要求に対し十分満足に対応するものである。


Claims (1)

  1. WC基超硬合金またはTiCN基サーメットからなる工具基体の表面に、工具基体側より順に、下地層と硬質被覆層とが形成された表面被覆切削工具において、
    (a)前記下地層は、その平均層厚は、0.1を超え1.0μm未満であり、
    組成式AlαTi1−α−ββNにて表した場合(ただし、Xは、Si、V、Cr、Y、Zr、Mo、Ta、Wから選ばれる一種または二種以上の元素を示す)、Alの含有割合αおよびXの含有割合β(ただし、α、βは、いずれも原子比)は、それぞれ、0.50≦α≦0.75、および、0≦β≦0.20を満足する平均組成を有する非晶質組織からなり、
    (b)前記硬質被覆層は、その平均層厚は、前記下地層の平均層厚の3.0倍以上であり、
    組成式AlTi1−x−yNにて表した場合(ただし、Mは、Si、V、Cr、Y、Zr、Mo、Ta、Wから選ばれる一種または二種以上の元素を示す)、Alの含有割合xおよびMの含有割合y(ただし、x、yは、いずれも原子比)は、それぞれ、0.40≦x≦0.70、および、0≦y≦0.20を満足する平均組成を有する立方晶単相組織からなることを特徴とする表面被覆切削工具。
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