JP2017164859A - 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性、耐剥離性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents

硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性、耐剥離性を発揮する表面被覆切削工具 Download PDF

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Abstract

【課題】二相ステンレス鋼等の難削材の断続切削加工において、硬質被覆層がすぐれた耐溶着チッピング性、耐剥離性を発揮する表面被覆切削工具を提供する。【解決手段】工具基体表面に硬質被覆層が形成されている表面被覆切削工具であって、工具基体表面直上には、少なくとも窒素と炭素を含むTi化合物層が形成され、切れ刃近傍において前記工具基体表面から垂直方向に、前記Ti化合物層側へ0.2μmにわたり、工具基体からの距離が離れるにしたがい、前記Ti化合物層中の窒素濃度が漸次増加し、該窒素濃度の平均濃度勾配が20原子%/μm以上300原子%/μm以下であり、好ましくは、前記Ti化合物層の表面に、異なる膜種のTi化合物層あるいはさらにα型またはκ型の結晶構造を有するAl2O3層が形成されている。【選択図】 図1

Description

本発明は、二相ステンレス鋼のように溶着を発生しやすい難削材の断続切削加工において、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性、耐剥離性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、
(a)下部層が、いずれも化学蒸着形成された、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層、
(b)上部層が、化学蒸着形成された酸化アルミニウム(以下、Alで示す)層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成してなる被覆工具が知られており、この被覆工具は、各種の鋼や鋳鉄などの切削加工に用いられている。
ただ、このような被覆工具は、二相ステンレス鋼のような難削材の切削加工、特に、切れ刃に断続的かつ衝撃的な高負荷が作用する断続切削加工においては、溶着に起因するチッピング、剥離を発生しやすく、工具寿命が短命であるという問題があるため、これを解消するために、従来からいくつかの提案がなされている。
例えば、特許文献1には、工具基体と硬質被覆層との密着性、耐剥離性を向上させることを目的として、工具基体と硬質被覆層との界面にはオージェ分光分析法で測定される酸素量を10原子%以下とし、かつ、該界面における表面粗さが、算術平均粗さRa値換算で50〜150nmである微細凹凸を形成した被覆工具が提案されており、この被覆工具によれば、工具基体と硬質被覆層との界面に酸化物が介在せず、かつ界面の凹凸が所定の算術平均粗さRaを有するため、工具基体と硬質被覆層との間の密着性が良くてチッピング、欠損や膜剥離の発生がないとされている。
特開2012−30309号公報
近年の切削加工における省力化および省エネ化の要求は強く、これに伴い、被覆工具は一段と過酷な条件下で使用されるようになってきているが、例えば、前記特許文献1で提案されている被覆工具においては、炭素鋼、合金鋼、鋳鉄の断続切削加工においてはある程度の耐チッピング性、耐欠損性を示すが、これを、難削材、例えば、二相ステンレス鋼の切れ刃に断続的・衝撃的な高負荷が作用する断続切削加工に用いた場合には、二相ステンレス鋼は溶着が激しいため、この溶着発生を起因として、工具基体と硬質被覆層との界面での剥離を生じ、また、溶着チッピングを発生し、工具寿命が短命となる。
そこで、難削材の切削加工においても、耐チッピング性、耐剥離性がより優れる被覆工具が求められている。
そこで、本発明者らは、前述のような観点から、切れ刃に断続的・衝撃的な高負荷が作用する二相ステンレス鋼のような難削材の断続切削加工に用いた場合であっても、硬質被覆層がすぐれた密着性を備え、その結果、長期の使用にわたってすぐれた耐チッピング性、耐剥離性を発揮する被覆工具について鋭意研究を行った。
そして、工具基体と硬質被覆層の界面に存在する窒素濃度に着目して研究を進めたところ、工具基体表面に、少なくとも窒素と炭素を含むTi化合物層を形成するとともに、硬質被覆層の界面から、硬質被覆層の表面に向かって、窒素濃度が漸次増加する領域を形成した場合には、工具基体と硬質被覆層との密着性の向上が認められ、その結果、二相ステンレス鋼のような難削材の断続切削加工において、溶着が発生したとしても、これを原因とするチッピング、剥離の発生を抑制し得ることを見出したのである。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、
「(1)WC基超硬合金またはTiCN基サーメットからなる工具基体の表面に硬質被覆層が形成されている表面被覆切削工具であって、工具基体表面直上には、少なくとも窒素と炭素を含むTi化合物層が形成されており、切れ刃近傍において工具基体表面から垂直方向に窒素濃度を測定した場合、工具基体表面からTi化合物層側へ0.2μm以内の範囲において、工具基体からの距離が離れるにしたがい、前記Ti化合物層中の窒素濃度が漸次増加しており、窒素濃度の平均濃度勾配が、20原子%/μm以上300原子%/μm以下であることを特徴とする表面被覆切削工具。
(2)前記(1)に記載の表面被覆切削工具において、前記少なくとも窒素と炭素を含むTi化合物層の表面に、これとは異なる膜種の一層又は多層のTi化合物層が形成されていることを特徴とする前記(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3)前記(2)に記載の表面被覆切削工具において、最表面の前記Ti化合物層の表面に、さらに、α型またはκ型の結晶構造を有するAl層が形成されていることを特徴とする前記(2)に記載の表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
本発明について、以下に詳細に説明する。
図1に、本発明被覆工具の縦断面模式図の一例を示す。
図1に示される本発明被覆工具の一つの態様によれば、本発明被覆工具は、WC基超硬合金またはTiCN基サーメットからなる工具基体の表面に、第一層として、少なくとも窒素と炭素を含むTi化合物層(図1では、窒素濃度が工具基体側から硬質被覆層表面側に向かって漸次増加するTiCN層)が形成され、その上に、第二層として、第一層とは異なる膜種のTi化合物層が形成され、その上にさらに、Al層が形成され、硬質被覆層は三層構造として形成されている。
前記第一層としてのTi化合物層(以下、「第一Ti化合物層」ともいう)は、窒素濃度が層厚方向に向かって変化するTiCN層、言い換えれば、層厚方向に沿って、工具基体表面側から硬質被覆層表面側に向かうにしたがって、層中に含有される窒素濃度が漸次増加するものである。
一方、第二層として形成されているTi化合物層(以下、「第二Ti化合物層」ともいう。図1では、TiCN層)は、該層内において成分濃度がほぼ均一なTi化合物層であって、層厚方向に沿った窒素濃度の変化はない。
したがって、前記第一Ti化合物層と第二Ti化合物層とは、例えば、TiCN系というように成分系が同じであったとしても、少なくとも層厚方向に沿った窒素濃度の変化の有無という点で、異なるTi化合物層であるといえる。
第一層である少なくとも窒素と炭素を含むTi化合物層(第一Ti化合物層):
工具基体表面に形成される第一Ti化合物層は、少なくとも窒素と炭素を含むTi化合物層であり、例えば、Tiの炭窒化物(TiCN)層あるいはTiの炭窒酸化物(TiCNO)層である。
なお、第一Ti化合物層としては、TiCN層が好ましい。
前記第一Ti化合物層について、工具基体表面から垂直方向に、第一Ti化合物層の内部へ0.2μmまでの範囲にわたって窒素濃度を測定した場合、工具基体表面からの距離が離れるに従い、窒素濃度が漸次増加する領域が存在する。
そして、前記窒素濃度が漸次増加する領域が存在することによって、工具基体と第一Ti化合物層との界面密着性が向上する。
界面密着性が向上する理由を以下に記す。
まず、界面密着性を向上させるために第一Ti化合物層に求められる特徴は下記の2点である。
(1)切削時には、切削熱および切削によって刃先にかかる圧力により、超硬合金基体が変形することが知られており、第一Ti化合物層の靭性が高いほど、基体が変形した際に変形に追従することができ、剥離を生じにくくなる。
TiCとTiNを比較すると、TiNの方が靭性に優れていることから、「超硬合金基体の変形に耐えるためには、第一Ti化合物層は、窒素量が多い方が好ましい」といえる。
(2)一方、「超硬合金基体とその直上のTi化合物の熱膨張係率の差」は小さい方が、断続切削時に刃先温度が変化した際、界面にかかる熱応力が小さくなるため、剥離を生じ難くなると考えられる。
室温25℃から1000℃の間で測定した熱膨張係数は、超硬合金はおよそ6.0×10−6/℃(組成により異なる)、TiCは7.7×10−6/℃、TiNは9.2×10−6/℃であり、「刃先温度の変化に耐えるためには、超硬合金基体に接するTi化合物は、窒素量が少ない方が好ましい」といえる。
そうすると、「工具基体表面から距離が離れるに従い窒素濃度が漸次増加している第一Ti化合物層」は、両者を両立しているため、界面密着性に優れていると考えられる。
すなわち、
(1) “第一Ti化合物層全体としては”窒素量が高く、第一Ti化合物層全体として靭性を確保することができるため、超硬合金基体の変形に十分耐えることができる。
(2)超硬合金基体に接するTi化合物は、窒素量が少ないので超硬合金基体との熱膨張差が小さくなり、かつ第一Ti化合物層の内部での熱膨張率の変化が緩やかであるため、刃先温度変化への耐久性が向上する。
ためであると推測される。
なお、前記第一Ti化合物層の平均層厚は、0.2〜2.0μmであることが望ましい。これは、平均層厚が、0.2μm未満であると、層厚方向に沿って窒素濃度を漸次増加させたことによる工具基体との密着性向上効果が少なく、一方、平均層厚が2.0μmを超えると、耐摩耗性に優れる他の層の厚さを確保し難くなるためである。
つまり、第一Ti化合物層は密着性の確保を目的に形成しており、高温硬さ、高温強度は第二Ti化合物層に劣る。しかし、硬質被覆層の総厚が厚いほど剥離を生じやすくなってしまうため、第一Ti化合物層は「界面密着性が確保できる必要最小限の層厚」が望ましい。
また、前記窒素濃度の漸次増加において、工具基体表面から垂直方向に、第一Ti化合物層の内部へ0.2μmまでの範囲にわたり、窒素濃度の平均濃度勾配が20原子%/μm以上300原子%/μm以下である領域が存在することが必要である。
前記第一Ti化合物層の内部へ0.2μmまでの範囲にわたる窒素濃度の平均濃度勾配が20原子%/μm未満では、窒素濃度を漸次増加させたことによる効果が少ないため、「第一Ti化合物層全体としての靭性」と「超硬合金基体とその直上のTi化合物の熱膨張係率の差を小さくすること」を十分に両立できないためであり、また、窒素濃度の平均濃度勾配が300原子%/μmを超えると、第一Ti化合物層中での熱膨張率の変化が急峻になりすぎ、刃先温度変化への耐久性が低下する(熱膨張系率の変化が大きすぎるため、温度が変化したときの熱応力が大きくなり、界面からの剥離を生じやすくなる)という理由による。
前記第一Ti化合物層、即ち、少なくとも窒素と炭素を含むTi化合物層は、例えば、以下の方法で形成することができる。
まず、化学蒸着法による通常の条件、例えば、
反応ガス組成(容量%):TiCl 1.5〜5.0%,CHCN 0.5〜1.5%,N 8〜25%,H 残り、
反応雰囲気温度:880〜920℃、
反応雰囲気圧力:5〜9kPa、
で、TiCNを最初蒸着し、その後、CHCN量を漸次減少させ、併せて他のガスの濃度および反応雰囲気圧力を漸次変化させ、
最終的に、TiNの通常の蒸着条件、例えば、
反応ガス組成(容量%):TiCl3.5〜5.0%,N 15〜35%,H残り、
反応雰囲気温度:880〜920℃、
反応雰囲気圧力:9〜35kPa、
とする。
上記のような蒸着によって、工具基体表面直上には、成膜初期には、少なくとも窒素と炭素を含むTi化合物層(上記例では、TiCN層)が形成され、TiN層の成膜に、成膜条件が漸次変化することによって、第一Ti化合物層としては、工具基体表面から垂直方向に、第一Ti化合物層の内部へ0.2μmまでの範囲にわたり、窒素濃度が漸次増加する(窒素濃度の平均濃度勾配が20原子%/μm以上300原子%/μm以下)領域が存在する第一Ti化合物層を形成することができる。
なお、後述するが、第一Ti化合物中の窒素濃度が基体表面から0.2μmまでの範囲にわたり徐々に窒素濃度が変化するよう、複数回に分けて成膜を行うことでも、界面密着性に優れた第一Ti化合物層を得ることが可能である。
前述した第一Ti化合物層を形成することによって、工具基体と硬質被覆層の密着性は向上し、難削材の断続切削において、溶着チッピング、剥離等の発生を抑制することはできるが、長期の使用にわたって、すぐれた耐摩耗性を維持させるためには、第一Ti化合物層の表面に、第二Ti化合物層を形成し(必要に応じ、第三、第四、あるいはそれ以上の多層のTi化合物層を設けてもよい)、あるいはさらに、耐摩耗性にすぐれたα−Al層またはκ−Al層を形成することが望ましい。
第二Ti化合物層:
第二Ti化合物層としては、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、TiCNO層から選ばれる何れか1層、または、少なくとも窒素と炭素を含有し、工具基体からの距離が離れるに従い窒素量が漸次変化する傾斜組成を有するTi化合物層で形成することができる。
好ましい第二Ti化合物層は、高温硬さ、高温強度に優れているという観点から、TiCN層であるが、いずれのTi化合物層であっても、硬質被覆層全体としての高温硬さ、高温強度を高める。また同時に、第一Ti化合物層との密着性にすぐれ、Al層を形成した場合には、該α−Al層あるいはκ−Al層との密着性にもすぐれる。
第二Ti化合物層上にさらに第三、第四、あるいはそれ以上の多層のTi化合物層を形成してもよい。
なお、Ti化合物層の平均総層厚は、2〜25μmであることが望ましい。これは、2μm未満であると高温硬さ、高温強度が十分に確保できず、耐摩耗性向上による寿命延長効果が少ないためであり、一方、平均層厚が25μmを超えると断続切削加工時に溶着チッピング、剥離等が発生するようになるという理由による。
Al層と最外層:
Ti化合物層上に、α型またはκ型の結晶構造を有するAl層を形成した場合には、既によく知られているように、高温硬さと耐熱性の向上が図られる。ただ、α型またはκ型の結晶構造を有するAl層の平均層厚が0.5μm未満では、耐摩耗性向上による寿命延長効果が少なく、一方、その平均層厚が20μmを越えるとAl結晶粒が粗大化し易くなり、その結果、高温硬さ、高温強度の低下に加え、断続切削加工時に溶着チッピング、剥離等が発生するようになることから、α型またはκ型の結晶構造を有するAl層をTi化合物層上に形成する場合には、その平均層厚を0.5〜20μmとすることが望ましい。
また、刃先識別性の向上のためにAl層上にTiN等を形成してもよく、さらに硬質被覆層の形成後にショットピーニング等の処理を施してもよい。
本発明の被覆工具は、工具基体表面に、第一Ti化合物層として、少なくとも窒素と炭素を含むTi化合物層からなる硬質被覆層を形成し、該第一Ti化合物層において、工具基体表面から垂直方向に、第一Ti化合物層の内部へ0.2μmまでの範囲にわたって窒素濃度が漸次増加する領域が存在することにより、工具基体と第一Ti化合物層との界面密着性の向上を図ることができる。
したがって、本発明の被覆工具によれば、二相ステンレス鋼のような難削材の断続切削加工において、断続的・衝撃的高負荷が切れ刃に作用した場合であっても、溶着チッピングの発生、剥離の発生を抑制することができる。
さらに、本発明の被覆工具において、前記第一Ti化合物層の表面に、第二Ti化合物層を設けること、あるいは、必要に応じ、第三、第四、あるいはそれ以上の多層のTi化合物層を設けること、また、さらに、α型またはκ型の結晶構造を有するAl層を設けることによって、耐摩耗性をより一層向上させることができるとともに、切削工具の長寿命化を図ることができる。
本発明被覆工具の縦断面模式図の一例を示す。
つぎに、本発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.04mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG120408に規定するインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A、Bを製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、ZrC粉末、Mo2C粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.04mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG120408のインサート形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体Cを形成した。
つぎに、これらの工具基体A〜Cの表面に、通常の化学蒸着装置を用い、次のようにして、硬質被覆層を蒸着形成した。
まず、少なくとも窒素と炭素を含むTi化合物層(第一Ti化合物層)を形成するために、表3に示される条件で、TiCNを蒸着し、ついで、成膜条件を漸次変化させ、同じく表3に示す条件で、TiNあるいは窒素量の多いTiCNを蒸着成膜した。
このような蒸着により、工具基体表面から垂直方向に、第一Ti化合物層の内部へ0.2μmまでの範囲にわたって窒素濃度が漸次増加する領域を有する第一Ti化合物層を形成した。
ついで、表4に示される条件で第二Ti化合物層を蒸着し、さらに、同じく表4に示される条件で第三層であるα型またはκ型の結晶構造を有するAl層を蒸着することにより、表5に示される本発明被覆工具1〜12を作製した。
前記本発明被覆工具1〜12の工具基体表面と第一Ti化合物層との界面近傍について、オージェ電子分光法により、第一Ti化合物層中の種々の位置における窒素濃度(原子%)を測定した。
より具体的にいえば、まず切れ刃近傍(ホーニングを有する工具の場合はホーニング部、ホーニングの無い工具の場合は切れ刃から距離0.02mm以内の領域を切れ刃近傍とする)にて、厚さ方向から15°傾いた面で斜面ラップを行い、CP研磨を施した。次に工具基体表面と第一Ti化合物層との界面を挟んだ界面近傍領域において線分析を行い、工具基体表面と第一Ti化合物層との界面から第一Ti化合物層の内部へ0.04μmに相当する位置(この位置を「位置A」という。位置Aは、“厚さ方向と平行な面で研磨した場合に、工具基体表面と第一Ti化合物層との界面から第一Ti化合物層の内部へ0.04μmの位置”である。したがって厚さ方向から15°傾いた面でラップして分析する場合は、0.04/sin(15°)=0.15より、工具基体表面と第一Ti化合物層との界面から第一Ti化合物層の内部へ0.15μmの位置が位置Aである。)における窒素濃度、界面から第一Ti化合物層の内部へ0.12μmに相当する位置(「位置B」という)における窒素濃度、界面から第一Ti化合物層の内部へ0.20μmに相当する位置(「位置C」という)における窒素濃度をそれぞれ測定した。
そして、前記の線分析を、異なった界面近傍領域で5本行い、それぞれの位置において測定された窒素濃度を平均し、この値を、各位置における「窒素濃度(原子%)」として求めた。
さらに、前記で求めた「窒素濃度(原子%)」から、位置A−位置B間における窒素濃度の平均濃度勾配を、平均濃度勾配BA(原子%/μm)=(位置Bでの窒素濃度−位置Aでの窒素濃度)/(0.12−0.04)として算出し、また、位置B−位置C間における窒素濃度の平均濃度勾配を、平均濃度勾配CB(原子%/μm)=(位置Cでの窒素濃度−位置Bでの窒素濃度)/(0.20−0.12)として算出した。
表5に、前記で求めた「窒素濃度(原子%)」、平均濃度勾配BA(原子%/μm)および平均濃度勾配CB(原子%/μm)を示す。
ここで「平均濃度勾配BA(原子%/μm)と平均濃度勾配CB(原子%/μm)が、いずれも、20原子%/μm以上300原子%/μm以下であること」を以て、「切れ刃近傍において工具基体表面から垂直方向に窒素濃度を測定した場合、工具基体表面からTi化合物層側へ0.2μm以内の範囲において、工具基体からの距離が離れるにしたがい、前記Ti化合物層中の窒素濃度が漸次増加しており、窒素濃度の平均濃度勾配が、20原子%/μm以上300原子%/μm以下である」とする。
なお、第一Ti化合物層の形成法について、ガス濃度および成膜雰囲気圧力を漸次変化させる方法以外に、ガス条件を段階的に変化させる方法も考えられる。この場合でも「平均濃度勾配BA(原子%/μm)と平均濃度勾配CB(原子%/μm)が、いずれも、20原子%/μm以上300原子%/μm以下であること」の条件を満たせば、界面密着性に優れた第一Ti化合物層を得ることが出来る。
比較の目的で、工具基体A〜Cの表面に、表4に示される条件でTi化合物層を蒸着し、さらに同じく表4に示される条件で、α型またはκ型の結晶構造を有するAl層を蒸着することにより、表6に示される比較例被覆工具1〜8を作製した。
前記で作製した比較例被覆工具1〜8について、本発明被覆工具1〜12の場合と同様に、位置A、位置B及び位置Cにおける「窒素濃度(原子%)」を求め、さらに、濃度勾配BA(原子%/μm)および濃度勾配CB(原子%/μm)を求めた。
表6に、これらの値を示す。
なお、比較例被覆工具3、5、6、8の位置Aにおける窒素量が50原子%でないのは、基体からわずかに炭素が拡散したためと推定される。同様に、比較例被覆工具7の位置Aにおける窒素量が0原子%でないのは、基体からわずかに窒素が拡散したためと推定される。
なお、本発明被覆工具1〜12および比較例被覆工具1〜8の各構成層の層厚を、走査型電子顕微鏡を用いて測定し平均層厚を求めた。
表5、表6に、これらの値を示す。






つぎに、上記本発明被覆工具1〜12および比較例被覆工具1〜8について、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材:JIS・SUS329の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、、
切削速度:130m/min.、
切り込み:2.0mm、
送り:0.18mm/rev.、
切削時間:1.0分、
の条件での二相ステンレス鋼の湿式断続切削加工試験、
を行い、逃げ面摩耗幅(mm)を測定するとともに、切れ刃の目視観察を行い、すくい面の溶着チッピングの有無を確認した。
表7に、その結果を示す。

表5〜7に示される結果から、本発明被覆工具の硬質被覆層は、「工具基体表面直上には、少なくとも窒素と炭素を含むTi化合物層が形成されており、切れ刃近傍において工具基体表面から垂直方向に窒素濃度を測定した場合、工具基体表面からTi化合物層側へ0.2μm以内の範囲において、工具基体からの距離が離れるにしたがい、前記Ti化合物層中の窒素濃度が漸次増加しており、窒素濃度の平均濃度勾配が、20原子%/μm以上300原子%/μm以下」であることから、工具基体と第一Ti化合物層との界面密着性の向上が図られていることから、二相ステンレス鋼のような難削材の断続切削加工において、断続的・衝撃的高負荷が切れ刃に作用した場合であっても、溶着チッピングの発生、剥離の発生を抑制することができる。
これに対して、比較例被覆工具では、「工具基体表面直上には、少なくとも窒素と炭素を含むTi化合物層が形成されており、切れ刃近傍において工具基体表面から垂直方向に窒素濃度を測定した場合、工具基体表面からTi化合物層側へ0.2μm以内の範囲において、工具基体からの距離が離れるにしたがい、前記Ti化合物層中の窒素濃度が漸次増加しており、窒素濃度の平均濃度勾配が、20原子%/μm以上300原子%/μm以下」ではないことから、工具基体と第一Ti化合物層との界面密着性が不足しており、二相ステンレス鋼のような難削材の断続切削加工では、溶着チッピングあるいは欠損の発生によって、工具寿命が短命となっており、本発明被覆工具に比して切削性能が劣ることは明らかである。
前述のように、本発明の被覆工具は、二相ステンレス鋼の断続切削加工においてすぐれた切削性能を発揮するのみならず、各種の難削材の刃先に高負荷が作用する断続切削加工において、溶着チッピング、剥離等の発生を招くことなく、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮し、使用寿命の延命化を可能とするものである。

Claims (3)

  1. WC基超硬合金またはTiCN基サーメットからなる工具基体の表面に硬質被覆層が形成されている表面被覆切削工具であって、工具基体表面直上には、少なくとも窒素と炭素を含むTi化合物層が形成されており、切れ刃近傍において工具基体表面から垂直方向に窒素濃度を測定した場合、工具基体表面からTi化合物層側へ0.2μm以内の範囲において、工具基体からの距離が離れるにしたがい、前記Ti化合物層中の窒素濃度が漸次増加しており、窒素濃度の平均濃度勾配が、20原子%/μm以上300原子%/μm以下であることを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 請求項1に記載の表面被覆切削工具において、前記少なくとも窒素と炭素を含むTi化合物層の表面に、これとは異なる膜種の一層又は多層のTi化合物層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  3. 請求項2に記載の表面被覆切削工具において、最表面の前記Ti化合物層の表面に、さらに、α型またはκ型の結晶構造を有するAl層が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の表面被覆切削工具。










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