JP5029825B2 - 硬質被覆層が高速重切削加工ですぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents

硬質被覆層が高速重切削加工ですぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 Download PDF

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この発明は、特に各種の鋼や鋳鉄などの被削材の切削加工を、高熱発生を伴うとともに、切刃に対して極めて大きな機械的負荷がかかる高送り、高切り込みの高速重切削条件下で行った場合にも、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、
(a)下部層として、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層、
(b)上部層として、酸化アルミニウム(Alで示す)層、
以上(a)、(b)で構成された硬質被覆層を化学蒸着で形成してなる被覆工具が知られている。
また、上記従来の被覆工具において、硬質被覆層の上部層を構成する酸化アルミニウム層の代表的なものとしては、α型Al層またはκ型Al層で構成することが知られ、さらには、α型Al層とκ型Al層の積層構造として構成することも知られており、硬質被覆層の上部層を、これらの各種Alで構成した被覆工具が、例えば各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削に用いられることも良く知られるところである。
特開平6−31503号公報 特公平7−88582号公報 特許第2648526号明細書 特許第2759935号明細書
近年の切削装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は高速化の傾向にあるが、上記の従来被覆工具においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削加工や断続切削加工に用いた場合には問題はないが、特にこれを高熱発生を伴うとともに、切刃に対して極めて大きな機械的負荷がかかる高送り、高切り込みの高速重切削条件下で行った場合には、硬質被覆層の上部層をα型Al23層で構成すると、これの有するすぐれた高温硬さにより耐摩耗性はすぐれるものの、機械的および熱的に十分な耐衝撃性を具備するものでないために、チッピング(微少欠け)を発生し易くなり、また、硬質被覆層の上部層の全部又は一部をすぐれた熱遮蔽性を有するκ型Al23層で構成したとしても、切削加工時の高熱によって、κ型Al23層がα型Al23層に熱変態し、その結果、κ型Al23層のすぐれた特性を十分に発揮できないままチッピング(微少欠け)を発生し、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、上記被覆工具の硬質被覆層の上部層を構成するα型Al23層、κ型Al23層に着目し、特に高速重切削加工における耐チッピング性と耐摩耗性の向上を図るべく研究を行った結果、
(a)被覆工具の硬質被覆層を構成する上部層を形成するに際して、まず、下部層として、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層を、蒸着形成した後、
ついで、上記下部層の表面に、例えば、通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成:容量%で、AlCl:3〜6%、ZrCl:0.6〜1.8%、CO:6〜10%、HCl:1.0〜3.0%、H2S:0.1〜0.18%、H2:残り、
反応雰囲気温度:880〜980 ℃、
反応雰囲気圧力:5〜8 kPa、
の条件で、
組成式:(Al1−XZr、(ただし、原子比で、0.0001≦X≦0.003)を満足するZr含有Al層を蒸着形成すると、このZr含有Al層は、化学蒸着した状態でκ型の結晶構造を有し、熱遮蔽性にすぐれるとともに、高温強度が一段と向上し、機械的・熱的にすぐれた耐衝撃性を具備するものであること。
(b)さらに、上記(a)のκ型の結晶構造を有するZr含有Al層上に、例えば、通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成:容量%で、AlCl:3〜6%、CO:6〜10%、HCl:2〜5%、H2S:0.2〜0.3%、H2:残り、
反応雰囲気温度:880〜980 ℃、
反応雰囲気圧力:5〜8 kPa、
の条件、即ち、Zr成分を含有しない反応ガス中での化学蒸着、で、Al層を蒸着形成すると、このAl層中は、実質的にZr成分を含有しておらず、化学蒸着した状態でκ型の結晶構造を有するとともに、熱遮蔽性にすぐれていること。
(c)上部層として、上記(a)による化学蒸着した状態でκ型の結晶構造を有するZr含有κ型Al層と、上記(b)による化学蒸着した状態でκ型の結晶構造を有するZr無添加κ型Al層とを、交互に蒸着形成した後、例えば、
保護雰囲気ガス:H
加熱温度:1000〜1100 ℃
加熱時間:30〜120 min
という範囲内の条件で加熱処理(以下、加熱変態処理という)を行うと、Zr含有κ型Al層は、層中に含有されているZrによって、κ型の結晶構造が安定的に維持されるが、Zr無添加κ型Al層については、κ型からα型への結晶構造変化が起こり、その結果、α型Al層が均一に形成(以下、加熱変態処理により形成されたα型Al層を、Zr無添加加熱変態α型Al層という)され、そして、Zr無添加加熱変態α型Al層は、すぐれた高温硬さと耐熱性を具備したものであることから、加熱変態処理によって形成されたZr含有κ型Al層とZr無添加加熱変態α型Al層の交互積層構造からなる上部層は、両層の有するすぐれた特性を兼ね備え、高熱発生を伴い、かつ、より大きな機械的負荷がかかるより厳しい切削条件の重切削加工に用いた場合にも、一段とすぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を発揮するようになること。
(d)上記(c)のとおり、本発明の被覆工具は、硬質被覆層の上部層を、Zr含有κ型Al層とZr無添加加熱変態α型Al層の交互積層構造として形成し、Zr含有κ型Al層によるすぐれた熱遮蔽性、高温強度、耐衝撃性、及び、Zr無添加加熱変態α型Al層によるすぐれた高温硬さ、耐熱性を備えたものとなるため、高熱発生を伴うとともに、切刃に対して極めて大きな機械的負荷がかかる高送り、高切り込みの高速重切削条件に用いた場合にも、すぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を発揮するようになること。
以上(a)〜(d)に示される研究結果を得たのである。
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、
「(1)炭化タングステン(WC)基超硬合金または炭窒化チタン(TiCN)基サーメットで構成された工具基体の表面に、下部層と上部層からなる硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆切削工具(被覆工具)において、
下部層は、Tiの炭化物(TiC)層、窒化物(TiN)層、炭窒化物(TiCN)層、炭酸化物(TiCO)層、および炭窒酸化物(TiCNO)層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層からなり、
上部層は、1〜5μmの層厚を有するA層と1〜5μmの層厚を有するB層の少なくとも3層以上の交互積層構造として構成され、
(a)上記A層は、
組成式:(Al1−XZrで表した場合、
0.0001≦X≦0.003(但し、原子比)を満足するZr含有κ型Al層であり、
(b)上記B層は、Zr無添加加熱変態α型Al層である、
ことを特徴とする表面被覆切削工具(被覆工具)。
(2) 前記(1)記載の表面被覆切削工具(被覆工具)において、上部層を形成するA層とB層の層間に、Tiの炭化物(TiC)層、窒化物(TiN)層、炭窒化物(TiCN)層、炭酸化物(TiCO)層、および炭窒酸化物(TiCNO)層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、0.2〜2μmの合計平均層厚を有するTi化合物層を中間層として介在させたことを特徴とする前記(1)記載の表面被覆切削工具(被覆工具)。」
に特徴を有するものである。
以下に、この発明の被覆工具の硬質被覆層の構成層について、詳細に説明する。
(a)下部層のTi化合物層
Ti化合物層は、交互積層構造からなる上部層の下部層として存在し、自身の具備するすぐれた高温強度によって硬質被覆層の高温強度向上に寄与するほか、工具基体と上部層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性を向上させる作用を有するが、その平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が20μmを越えると、特に高熱発生を伴なう高速重切削では熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その平均層厚を3〜20μmと定めた。
(b)上部層のA層を構成するZr含有κ型Al
交互積層構造のA層を構成するZr含有κ型Al層は、下部層の表面に、例えば、通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成:容量%で、AlCl:3〜6%、ZrCl:0.6〜1.8%、CO:6〜10%、HCl:1.0〜3.0%、H2S:0.1〜0.18%、H2:残り、
反応雰囲気温度:880〜980 ℃、
反応雰囲気圧力:5〜8 kPa、
の条件で蒸着形成することができ、
蒸着形成されたZr含有κ型Al層の組成を、
組成式:(Al1−XZr
で表した場合、0.0001≦X≦0.003(但し、原子比)を満足するものとして形成されるが、Xの値が0.0001未満では、熱遮蔽性、高温強度、耐衝撃性の向上が認められず、一方、Xの値が、0.003を超えると、κ型Al相中にZrOが形成され、κ型Al相の粒界強度が低下するので、Zr含有κ型Al層におけるAlとの合量に占めるZrの含有割合(但し、原子比)の値Xを、0.0001≦X≦0.003と定めた。
さらに、交互積層構造のA層を構成する上記Zr含有κ型Al層は、上記の通り熱遮蔽性、高温強度、耐衝撃性を有するが、一層平均層厚が1μm未満では前記の特性を十分に発揮することができず、一方、一層平均層厚が5μmを越えると、偏摩耗の原因となる熱塑性変形が発生し易くなり、摩耗が加速するようになることから、その一層の平均層厚を1〜5μmと定めた。
(c)上部層のB層を構成するZr無添加熱変態α型Al
上部層のZr無添加熱変態α型Al層は、まず、Zr無添加κ型Al層を生成した後、これを加熱変態処理することによって形成される。
例えば、Zr無添加κ型Al層は、通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成:容量%で、AlCl:3〜6%、CO:6〜10%、HCl:2 〜5%、H2S:0.2〜0.3%、H2:残り、
反応雰囲気温度:880〜980 ℃、
反応雰囲気圧力:5〜8 kPa、
の条件、即ち、Zr成分を含有しない反応ガス中での化学蒸着によって形成され、蒸着形成されたこのZr無添加κ型Al層中には、実質的にZr成分が含有されておらず、化学蒸着した状態でκ型の結晶構造を有する。そして、このZr無添加κ型Al層は、α型Al層に比し、高温硬さ、耐熱性が劣るが、Zr無添加κ型Al層に対して、加熱変態処理を施すことにより、すぐれた高温硬さ、耐熱性を有するZr無添加熱変態α型Al層とする。
(d)加熱変態処理
Zr無添加κ型Al層をZr無添加加熱変態α型Al層とするための加熱変態処理としては、Zr含有κ型Al層とZr無添加κ型Al層の交互積層構造を形成した後、例えば、
保護雰囲気ガス:H
加熱温度:1000〜1100 ℃
加熱時間:30〜120 min
という条件で加熱し、Zr無添加κ型Al層の加熱変態を促進することにより、Zr無添加加熱変態α型Al層を形成することができる。
加熱変態処理した場合、A層を構成するZr含有κ型Al層は、層中に含有されているZrによって、κ型の結晶構造が安定化されているため、結晶構造がα型に変化することはなく、Zr含有κ型Al層の有する熱遮蔽性、高温強度、耐衝撃性というすぐれた特性を維持したままであり、一方、B層を構成するZr無添加加熱変態α型Al層は、κ型からα型への結晶構造変化によって、高温硬さ、耐熱性にすぐれたα型Al層が均一に形成されることになり、その結果、A層とB層の交互積層構造からなる上部層は、層全体に亘り、均一かつすぐれた熱遮蔽性、高温強度、耐衝撃性とともに、均一かつすぐれた高温硬さ、耐熱性を示すようになる。
B層は、上記のとおり、すぐれた高温硬さと耐熱性を有するが、一層平均層厚が1μm未満では前記の特性を十分に発揮することができず、一方、一層平均層厚が5μmを越えると、偏摩耗の原因となる熱塑性変形が発生し易くなり、摩耗が加速するようになることから、B層の一層平均層厚を1〜5μmと定めた。
さらに、A層とB層の交互積層構造からなる上部層は、3層以上の交互積層でないと性能が発揮されず、また、上部層の合計平均層厚は、3μm未満であると高速重切削において所望の切削性能を得られず、一方、15μmを超えると、下部層との十分な付着強度が得られなくなるという理由から、3〜15μmとすることが望ましい。
(e)Ti化合物層からなる中間層
この発明では、A層とB層の交互積層構造からなる上部層を蒸着形成するにあたり、A層とB層の間に、さらに、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、0.2〜2μmの合計平均層厚を有するTi化合物層を中間層として介在形成することができる。
上記Ti化合物層からなる中間層を設けることにより、Zr含有κ型Al層からZr無添加κ型Al層へのZrの拡散を抑制することで、安定的にA層とB層の交互積層の性能を引き出すことができる。
また、Ti化合物層からなる中間層は、合計平均層厚が0.2μm未満ではZrの拡散を抑制することが難しく、一方、合計平均層厚が2μmを超えると、A層―B層間での付着強度が低下するので、その合計層厚は、0.2〜2μmと定めた。
さらに、A層とB層の間に中間層を介在させた場合には、上部層の合計平均層厚が3μmより薄いと所望の切削性能が得られず、15μmより厚くなると下部層との付着強度が十分に得られなくなるという理由から、上部層(A層とB層と中間層)の合計平均層厚は、3〜15μmとすることが望ましい。
この発明では、特に、硬質被覆層の上部層を、A層とB層の交互積層構造、あるいは、A層とB層の間に中間層を介在させた交互積層構造として構成することにより、A層の有するすぐれた熱遮蔽性、高温強度、耐衝撃性と、B層の有するすぐれた高温硬さ、耐熱性を相兼ね備えた硬質被覆層を形成することができるので、上記硬質被覆層を蒸着形成したこの発明の被覆工具は、高熱発生を伴うとともに、切刃に対して極めて大きな機械的負荷がかかる高送り、高切り込みの高速重切削条件下で用いた場合にも、すぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を発揮し、使用寿命の一層の延命化を可能とするものである。
つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも2〜4μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG160412に規定するスローアウエイチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Eをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG160412のチップ形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体a〜eを形成した。
ついで、これらの工具基体A〜Eおよび工具基体a〜eのそれぞれを、通常の化学蒸着装置に装入し、まず、表3(表3中のl−TiCNは特開平6−8010号公報に記載される縦長成長結晶組織をもつTiCN層の形成条件を示すものであり、これ以外は通常の粒状結晶組織の形成条件を示すものである)に示される条件にて、表6に示される組み合わせおよび目標層厚でTi化合物層を硬質被覆層の下部層として蒸着形成し、
ついで、同じく表4に示される条件で、表7に示される組み合わせおよび目標層厚でZr含有κ型Al層(A)〜(E)を蒸着形成し、また、表3に示される条件にて、表7に示される組み合わせおよび目標層厚でTi化合物層を中間層として蒸着形成し、あるいは、蒸着形成することなく、さらに、表5に示される条件にて、表7に示される組み合わせおよび目標層厚でZr無添加κ型Al層を蒸着形成し、A層の形成、(中間層の形成、)Zr無添加κ型Al層の形成を目標合計平均層厚(目標交互積層数)になるまで繰り返し行い、
ついで、
保護雰囲気ガス:H
加熱温度:1060 ℃
加熱時間:60 min
の条件で加熱変態処理を行うことにより、B層として、表7に示されるZr無添加加熱変態α型Al層を形成し、本発明被覆工具1〜12を製造した。
比較の目的で、表3に示される条件にて、表6に示される組み合わせおよび目標層厚でTi化合物層を硬質被覆層の下部層として蒸着形成した後、表3に示されるα型Al層、κ型Al層の形成条件で、表8に示される目標層厚でα型Al層、κ型Al層を上部層として形成し、比較被覆工具1〜12をそれぞれ製造した。
上記本発明被覆工具1〜12について、硬質被覆層の上部層を構成する各層(但し、中間層を除く)の結晶構造を、X線回折法および走査型電子顕微鏡を用いて測定した。即ち、X線回折法により、上部層(中間層を除く)がα型とκ型の結晶構造をもったAl相からなることを確認するとともに、走査型電子顕微鏡を用いた縦断面観察により、チャージアップして白く光って見える領域はZr無添加加熱変態α型Al層であり、また、チャージアップせずに見える領域はZr含有κ型Al層であるとして同定したところ、いずれの層(中間層を除く)も、目標とする結晶構造のAl相からなることが確認できた。その結果を表7に示す。
また、比較被覆工具1〜12についても、硬質被覆層の上部層を構成するAl相の結晶構造を、X線回折法により測定した。その結果を表8に示す。
さらに、本発明被覆工具1〜12および比較被覆工具1〜12の硬質被覆層の各構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。その結果を表6〜表8に示す。
まず、上記の本発明被覆工具1〜12および比較被覆工具1〜12について、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材:JIS・S30Cの丸棒、
切削速度: 450 m/min、
切り込み: 2.6 mm、
送り: 0.6 mm/rev、
切削時間: 10 分、
の条件(切削条件Aという)での炭素鋼の乾式高速高送り切削試験(通常の切削速度および送りは、それぞれ、250m/min、0.3 mm/rev)、
被削材:JIS・SCM420の丸棒、
切削速度: 325 m/min、
切り込み: 4.8 mm、
送り: 0.3 mm/rev、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件Bという)での合金鋼の乾式高速高切込み切削試験(通常の切削速度および切込みは、それぞれ、250m/min、2mm)、
被削材:JIS・FC300の丸棒、
切削速度: 550 m/min、
切り込み: 5.7 mm、
送り: 0.6 mm/rev、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件Cという)での鋳鉄の湿式高速高切込み切削試験(通常の切削速度および切込みは、それぞれ、250m/min、2.5mm)、
を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
この測定結果を表9に示した。
また、上記の本発明被覆工具1〜12および比較被覆工具1〜12について、前記と同様、
被削材:JIS・S20Cの丸棒、
切削速度: 455 m/min、
切り込み: 2.8 mm、
送り: 0.9 mm/rev、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件Dという)での炭素鋼の乾式高速高送り切削試験(通常の切削速度および送りは、それぞれ、250m/min、0.3 mm/rev)、
被削材:JIS・SNCM415の丸棒、
切削速度: 330 m/min、
切り込み: 4.5 mm、
送り: 0.3 mm/rev、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件Eという)での合金鋼の乾式高速高切込み切削試験(通常の切削速度および切込みは、それぞれ、250m/min、2mm)、
被削材:JIS・FC200の丸棒、
切削速度: 555 m/min、
切り込み: 5.8 mm、
送り: 0.40 mm/rev、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件Fという)での鋳鉄の湿式高速高切込み切削試験(通常の切削速度および切込みは、それぞれ、250m/min、2.5mm)、
を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
この測定結果を表10に示した。
Figure 0005029825
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表6〜10に示される結果から、本発明被覆工具1〜12の硬質被覆層は、Ti化合物層からなる下部層と、(中間層を介して、あるいは、介することなく)Zr含有κ型Al層(A層)とZr無添加加熱変態α型Al層(B層)の交互積層構造からなる上部層とで構成されているため、これを、高熱発生を伴うとともに、切刃に対して極めて大きな機械的負荷がかかる高送り、高切り込みの高速重切削条件下で用いた場合でも、すぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を発揮する。
これに対して、比較被覆工具1〜6は、硬質被覆層の上部層が、α型Al層のみで構成されているため、耐チッピング性に劣り、また、比較被覆工具7〜12は、硬質被覆層の上部層が、κ型Al層のみで構成されているため、十分な高温硬さを確保できず、耐摩耗性に劣り、いずれにしても、比較被覆工具1〜12は、耐チッピング性、耐摩耗性が不十分であって、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆工具は、各種の鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削加工や断続切削加工は勿論のこと、特に高熱発生を伴うとともに、切刃に対して極めて大きな機械的負荷がかかる高送り、高切り込みの高速重切削条件下でも、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を示し、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。

Claims (2)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、下部層と上部層からなる硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、
    下部層は、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層からなり、
    上部層は、1〜5μmの層厚を有するA層と1〜5μmの層厚を有するB層の少なくとも3層以上の交互積層構造として構成され、
    (a)上記A層は、
    組成式:(Al1−XZrで表した場合、
    0.0001≦X≦0.003(但し、原子比)を満足するZr含有κ型Al層であり、
    (b)上記B層は、Zr無添加加熱変態α型Al層である、
    ことを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 請求項1記載の表面被覆切削工具において、上部層を形成するA層とB層の層間に、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、0.2〜2μmの合計平均層厚を有するTi化合物層を中間層として介在させたことを特徴とする請求項1記載の表面被覆切削工具。
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