JP4427694B2 - 成膜装置および成膜方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体装置の製造に用いる成膜装置に関し、特に原料ガスの反応を利用して、被処理基板の表面に半導体薄膜を形成する成膜装置および成膜方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の成膜装置としては、例えば、有機金属と水素化物とを原料ガスとして用いる有機金属気相成長法(MOCVD法)により、GaAs、InP、AlGaAs等のIII −V族の化合物半導体結晶の薄膜や、ZnS、ZnSe等のII−VI族の化合物半導体結晶の薄膜を、被処理基板の表面にエピタキシャル成長させるMOCVD装置が知られている。
【0003】
このようなMOCVD装置では、原料ガスの供給口と排気口とを有する反応室内部に、被処理基板を保持するためのサセプタと被処理基板を加熱するヒータとが設けられている。そして成膜にあたっては、反応室内部を排気して所定の減圧状態に保持しつつ、供給口から反応室内部に供給された原料ガスを、ヒータによって加熱されている被処理基板近傍で熱分解反応させることにより、被処理基板の表面に化合物半導体結晶をエピタキシャル成長させて薄膜を成膜するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のMOCVD装置およびこの装置を用いた成膜方法では、被処理基板の表面に膜を成長させる際、排気管および真空ポンプ等の負圧源からなる排気手段によって反応室内部を排気しているため、被処理基板近傍で原料ガスが熱分解して生成された生成物が、被処理基板の表面だけでなく、反応室の内面や、排気管、負圧源の反応室から排気された排気ガスにさらされる部分にも堆積してしまう。そして、このことによって以下に述べるような不都合が生じる。
【0005】
▲1▼生成物の堆積により反応室内の原料ガスの流れが経時変化し、被処理基板の表面に成長させる膜に分布が生じる。つまり、成長条件が経時変化する。
▲2▼堆積した生成物からの脱ガスにより、成長させる膜にドーピングする不純物のドーピング条件が経時変化する。
▲3▼成膜回数が増加するにしたがい、反応室内面に堆積した生成物によって上記したように成長条件が経時変化してしまうため、反応室内面に堆積した生成物を除去するといったメンテナンスを頻繁に行う必要がある。その結果、成膜処理のスループットが大幅に低下する。
【0006】
▲4▼装置内に形成されるガスの流れの下流側、すなわち排気手段の排気管や負圧源に生成物が多量に堆積することによってつまりが発生し易く、負圧源が故障し易い。
▲5▼上記したようにガスの流れの下流側に生成物が多量に堆積するため、特に下流側の排気手段のメンテナンスの頻度が高い。このことも成膜処理のスループットを大幅に低下させる一因となっている。
【0007】
以上のことから被処理基板の表面以外への、原料ガスからの生成物の堆積を低減できることにより、成長条件の安定化を図ることができるともに、メンテナンスの頻度を低減できる成膜技術の開発が切望されている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、上記課題を解決するために本発明に係る成膜装置は、反応室内部での原料ガスの反応を利用して、反応室内部に配置された被処理基板の表面に膜を形成するものにおいて、上記反応室の内面が、被処理基板の表面に膜が形成される温度にて、原料ガスから生成された生成物に対して不活性な材質の膜で被覆されてなり、前記反応室内部を排気するとともに、該反応室から排気された排気ガスにさらされる部分が前記不活性な材質の膜で被覆されてなる排気手段を有し、前記排気手段の外側には、前記不活性な材質の膜で被覆されている部分を前記被処理基板の表面に成長させる膜の成長温度に保持すべく該排気手段を加熱する加熱手段を有する構成となっている。
【0009】
また上記課題を解決するために本発明に係る成膜方法は、反応室内部を排気手段で排気しつつ反応室内部に供給された原料ガスの反応を利用して、反応室内部に配置された被処理基板の表面に膜を形成する成膜方法において、予め、反応室の内面と、排気手段の反応室から排気された排気ガスにさらされる部分とをそれぞれ、被処理基板の表面に膜が形成される温度にて、上記原料ガスから生成された生成物に対して不活性な材質の膜で被覆し、被処理基板の表面に膜を形成する際には、排気手段の排気ガスにさらされる部分を被処理基板の表面に成長させる膜の成長温度に保持すべく、該排気手段を加熱するようになっている。
【0010】
本発明の成膜装置では、反応室の内面が被処理基板の表面に膜が形成される温度にて、原料ガスから生成された生成物に対して不活性な材質の膜で被覆されているため、被処理基板の表面に膜を形成する際して、原料ガスからの生成物が反応室内面に堆積され難い。よって、反応室内面への生成物の堆積が低減されることから、成長条件が経時変化しない。また反応室のメンテナンスの頻度が低減される。
【0011】
また反応室内部を排気するための排気手段を備えており、排気手段の排気ガスにさらされる部分が上記の不活性な材質の膜で被覆されていれば、その部分を膜の成長温度に保持すべく加熱することにより、排気手段の排気ガスにさらされる部分に原料ガスからの生成物が多量に堆積することが防止される。よって、排気手段のメンテナンスの頻度も低減される。
【0012】
また本発明の成膜方法では、予め、反応室の内面と、排気手段の排気ガスにさらされる部分とをそれぞれ、被処理基板の表面に膜が形成される温度にて、上記原料ガスから生成された生成物に対して不活性な材質の膜で被覆するため、被処理基板の表面に膜を形成する際、原料ガスからの生成物の反応室内面への堆積が抑えられる。よって、安定した成長条件での成膜が行える。また反応室のメンテナンスの頻度が少なくて済む。さらに、被処理基板の表面に膜を形成する際には、排気手段の排気ガスにさらされる部分を被処理基板の表面に膜が形成される成長温度に保持すべく加熱するため、原料ガスから生成された生成物の排気手段への堆積が抑えられる。したがって、排気手段のメンテナンスの頻度も少なくて済む。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る成膜装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の成膜装置の一実施形態を示す概略構成図であり、原料ガスの熱分解反応により化合物半導体結晶をエピタキシャル成長させて成膜する減圧MOCVD装置に本発明を適用した例を示したものである。
【0014】
図1に示すようにこのMOCVD装置1は、原料ガスの供給口2aと排気口2bとを有する反応室2と、反応室2の供給口2aに接続された原料ガスの供給手段3と、反応室2の排気口2bに接続されて反応室2内部を排気する排気手段4とを備えて構成されている。
【0015】
反応室2は、その内部に、例えば半導体結晶基板からなる被処理基板10を保持するサセプタ5と、サセプタ5に保持された被処理基板10を加熱するためのヒータ等からなる加熱手段(図示略)とが設けられたものからなる。このヒータは、例えばサセプタ5に内蔵されている。また図示しないが反応室2の外周部にも、反応室2を加熱するためのヒータ、コイル等の加熱手段が設けられている。
【0016】
そしてこのような反応室2の内面は、例えば内面全体が、被処理基板10の表面に膜が形成される温度、つまり化合物半導体結晶がエピタキシャル成長する温度(成長温度)にて、原料ガスの分解反応により生成された生成物に対して不活性な材質の膜で被覆されている。
【0017】
ここで、不活性な材質の膜とは、成長温度にてエピタキシャル成長され難い膜という意味である。減圧MOCVD装置1では、成長温度が例えば数百度といったように高温となるため、このような高温でエピタキシャル成長され難い例えばアモルファス材質の膜が反応室2内面を被覆する膜として用いられる。アモルファス材質の膜としては、一例として酸化シリコン(SiO2 )系材質の膜が挙げられる。
【0018】
上記の反応室2に原料ガスを供給する供給手段3は、原料ガスの供給源3a、キャリアガスの供給源3b各供給源3a、3bと反応室2の供給口2aと間を接続する供給管3c、流量制御バルブ(図示略)等を備えて構成されたものである。本実施形態の供給手段3では、原料ガスとして例えば有機金属および水素化物それぞれを供給するようになっている。
【0019】
一方、排気手段4は、排気管4a、4c、4eと、フィルター4bと、真空ポンプ等からなる負圧源4dと、除害装置4fとを備えて構成されている。本実施形態では、反応室2の排気口2bから例えば、排気管4a、フィルター4b、排気管4c、負圧源4d、排気管4e、除害装置4fがこの順に接続された状態で設けられている。なお、フィルター4bおよび除害装置4fは、反応室2から排気されたガスに含まれる有害成分、例えば化合物半導体結晶のエピタキシャル成長に寄与しない生成物を除去することを目的として配設されている。
【0020】
本実施形態では、このような排気手段4も、反応室2から排気されたガスにさらされる部分が、反応室2内面と同様、被処理基板10の表面に形成する膜の成長温度にて、原料ガスの分解反応により生成された生成物に対して不活性な、例えばアモルファス材質の酸化シリコン系の膜で被覆されている。具体的には、排気手段4の排気管4a、4c、4eおよび負圧源4dにおいて、排気されたガスにさらされる部分が酸化シリコン系の膜で被覆されている。
【0021】
また、排気手段4の排気管4a、4c、4eおよび負圧源4dの外側には、酸化シリコン系の膜で被覆されている部分を膜の成長温度に保持すべく加熱する加熱手段(図示略)が設けられている。この加熱手段は、請求項4に係る発明の加熱手段となるものである。
【0022】
上記のように構成されたMOCVD装置1を用いて、被処理基板10の表面に化合物半導体結晶の薄膜を形成する場合には、排気手段4により反応室2内部を排気して所定の減圧状態にするとともに、サセプタ5を加熱して被処理基板10を膜の成長温度に設定する。そして、反応室2内部を所定の減圧状態に保ちつつ、供給手段3から原料ガスおよびキャリアガスを反応室2内部に供給する。またこの際、排気手段4の酸化シリコン系の膜で被覆されている部分を、加熱手段によって膜の成長温度に保持する。
【0023】
すると、原料ガスはサセプタ5により加熱されている被処理基板10の表面近傍で熱分解反応し、被処理基板10の表面にエピタキシャル成長することにより膜が形成される。一方、反応室2内面は、被処理基板10の表面に成長させる膜の成長温度にて、原料ガスから生成された生成物に対して不活性な例えば酸化シリコン系材質の膜で被覆されているので、成膜時において原料ガスからの生成物の反応室2内面への堆積が低く抑えられる。
【0024】
また排気手段4の排気管4a、4c、4eおよび負圧源4dの排気されるガスにさらされる部分も、酸化シリコン系の膜で被覆されており、しかも成膜に際して加熱手段により被処理基板10の表面に成長させる膜の成長温度に保持されるので、成膜時において原料ガスからの生成物が排気手段4に堆積し難い。
【0025】
したがって、生成物の堆積により反応室2内部にて原料ガスの流れが経時変化したり、堆積した生成物からの脱ガスによりドーピング条件が経時変化するのを防止することができるため、膜の成長条件を安定化でき、常に良質な膜を安定して成膜することができる。また反応室2のメンテナンスの頻度も低減できる。さらに排気手段4への生成物の堆積を低減でき、排気手段4にて堆積物のつまりも防止できることから、排気手段4のメンテナンスの頻度も低減できる。よって、成膜処理のスループットを大幅に向上できる。
【0026】
なお本実施形態のMOCVD装置1では、酸化シリコン系材質の膜で被覆した反応室2内面にわずかずつ生成物が堆積しても、原料ガスを反応室2内部に供給しない状態で反応室2の外周部に設けた加熱手段により反応室2内面を加熱することによって、酸化シリコン系材質の膜上に堆積した堆積物を容易に除去することができる。
【0027】
上記実施形態では、減圧MOCVD装置に本発明装置を適用した例を述べたが、この他、常圧MOCVD装置、加圧MOCVD装置、有機金属を原料に使用しないVPE(気相エピタキシャル)装置、MBE(分子線エピタキシャル)装置、LPE(低圧気相エピタキシャル)装置等、反応室内部での原料ガスの反応を利用して、反応室内部に配置された被処理基板の表面に膜を形成する成膜装置であれば本発明装置を適用可能であるのはもちろんである。
【0028】
また本発明方法は減圧MOCVD方法以外にも、反応室内部での原料ガスの反応を利用しかつ減圧状態で、反応室内部に配置された被処理基板の表面に膜を形成する成膜方法に適用することができる。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る成膜装置によれば、反応室の内面が被処理基板の表面に膜が形成される温度にて、原料ガスから生成された生成物に対して不活性な材質の膜で被覆された構成により、成膜時、原料ガスから生成された生成物の反応室内面への堆積を抑制できるようにしたので、成長条件の経時変化を防止でき、反応室のメンテナンスの頻度を低減できる。また反応室内部を排気するための排気手段を備えており、排気手段の排気ガスにさらされる部分が上記の不活性な材質の膜で被覆されていれば、排気手段の排気ガスにさらされる部分を膜が形成される温度に保持することにより、その部分への生成物の堆積を抑制できるので、排気手段のメンテナンスの頻度も大幅に低減できる。
【0030】
また本発明の成膜方法によれば、予め、反応室の内面と排気手段の排気ガスにさらされる部分とをそれぞれ、上記発明と同様の不活性な材質の膜で被覆し、被処理基板の表面に膜を形成する際には、排気手段の排気ガスにさらされる部分を被処理基板の表面に膜が形成される温度に保持するので、原料ガスから生成された生成物の反応室内面および排気手段への堆積を抑えることができる。
【0031】
したがって本発明の成膜装置および成膜方法によれば、膜の成長条件を安定化できることにより常に良質な膜を安定して成膜することができるとともに、メンテナンスの頻度も大幅に低減できることで成膜処理のスループットを大幅に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の成膜装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1…MOCVD装置、2…反応室、4…排気手段、4a,4c,4e…排気管、4d…負圧源

Claims (5)

  1. 反応室内部での原料ガスの反応を利用して、反応室内部に配置された被処理基板の表面に膜を形成する成膜装置において、
    前記反応室の内面は、前記被処理基板の表面に膜が形成される温度にて、前記原料ガスから生成された生成物に対して不活性な材質の膜で被覆されてなり、
    前記反応室内部を排気するとともに、該反応室から排気された排気ガスにさらされる部分が前記不活性な材質の膜で被覆されてなる排気手段を有し、
    前記排気手段の外側には、前記不活性な材質の膜で被覆されている部分を前記被処理基板の表面に成長させる膜の成長温度に保持すべく該排気手段を加熱する加熱手段を有する
    ことを特徴とする成膜装置。
  2. 前記排気手段は、前記反応室から排気されたガスが通過する排気管と、該排気管に接続された負圧源とを有してなり、これら排気管および負圧源の排気ガスにさらされる部分が、前記不活性な材質の膜で被覆されてなることを特徴とする請求項記載の成膜装置。
  3. 前記不活性な材質の膜は、アモルファス材質の膜である
    ことを特徴とする請求項1記載の成膜装置。
  4. 前記アモルファス材質は、酸化シリコン系の材質である
    ことを特徴とする請求項記載の成膜装置。
  5. 反応室内部を排気手段で排気しつつ前記反応室内部に供給された原料ガスの反応を利用して、反応室内部に配置された被処理基板の表面に膜を形成する成膜方法において、
    予め、前記反応室の内面と、前記排気手段にて排気されるガスにさらされる部分とをそれぞれ、前記被処理基板の表面に膜が形成される温度にて、前記原料ガスから生成された生成物に対して不活性な材質の膜で被覆し、
    前記被処理基板の表面に膜を形成する際には、前記排気手段の前記反応室から排気された排気ガスにさらされる部分を、前記被処理基板の表面に成長させる膜の成長温度に保持すべく、該排気手段を加熱する
    ことを特徴とする成膜方法。
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