しかしながら、上記従来の技術には、以下に述べるいくつかの問題がある。
第1に、空気中のマイナスイオンはイオン発生源から到達できる距離が限られており、例えば風の流れがない場合は通常100mm以下である。よって、特許文献1のようにイオン発生器が画像形成装置の外部(転写紙の排出口付近)に設置されている場合、排出口から排出され機外で拡散した揮発性化学物質に対してマイナスイオンが作用することになるので、マイナスイオンが揮発性化学物質に到達する割合が低く、揮発性化学物質を効果的に削減することが困難となる。
第2に、マイナスイオン発生器を画像形成装置の筐体外部に設置した場合、マイナスイオンが画像形成装置周辺の空気中に含まれる窒素酸化物(NOx)と反応し、筐体外部で窒素酸化物を沈降させる。そのため、沈降した窒素酸化物が画像形成装置の排紙トレイや筐体、あるいは画像形成装置が設置されている部屋の壁や床などに付着し、これらを黒く汚してしまうおそれがある。
さらに、揮発性化学物質は、マイナスイオンによって完全に分解・無害化される訳ではなく、単に電荷が中和されて沈降するだけという学説もあり、特許文献1のように、画像形成装置の筐体外部にイオン発生器を設けた場合には、一旦沈降したVOCが再び揮発(2次発生)し、害をもたらす可能性も考えられる。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、VOCや臭気などの揮発性化学物質を十分に抑制でき、さらに、電子機器の外側表面や電子機器の周囲の壁などを汚すおそれが少ない電子機器を実現することにある。
上記の課題を解決するために、本発明に係る電子機器は、筐体を備え、該筐体の内部において揮発性化学物質の発生を伴う電子機器であって、雰囲気中にイオンを発生させることにより上記揮発性化学物質を雰囲気中から除去するイオン発生部をさらに備え、上記イオン発生部が上記筐体の内部に配されていることを特徴としている。
上記構成によれば、イオン発生部によって発生したイオンは、揮発性化学物質に対して、筐体から排出されて拡散する前に作用するので、雰囲気中から効率良く揮発性化学物質を除去することができる。これにより、特許文献1のものに比べ、VOCや臭気などの揮発性化学物質を十分に抑制することができる。
さらに、イオン発生部によって発生したイオンは、筐体外部に移動するまでに少なくとも一部が消失する。従って、筐体外部において窒素酸化物(NOx)と反応するイオンの量を抑制でき、特許文献1のものに比べ、電子機器の外側表面や電子機器の周囲の壁などを汚すおそれが少なくなる。
さらに、発生したイオンと揮発性化学物質との反応は主として筐体内で起こるため、反応の結果不活化された揮発性化学物質が電子機器の筐体外部に沈降するのを抑制することができる。従って、電子機器の筐体外部において沈降した揮発性化学物質が再び揮発して人体に害をもたらすおそれが少ない。
また、上記イオン発生部は、上記揮発性化学物質の発生源から100mm以内の位置に配されていることが好ましい。
イオン発生部によって発生したイオンは、イオン発生部から離れるに連れて減少し、100mm離れた位置にはほとんど到達しない。しかしながら、上記構成によれば、イオン発生部を揮発性化学物質の発生源から100mm以内の位置に設置するので、イオン発生部によって発生したイオンが揮発性化学物質に作用することができ、揮発性化学物質を効率的に抑制することができる。なお、「イオン発生部が揮発性化学物質の発生源から100mm以内の位置に配されている」とは、イオン発生部と揮発性化学物質の発生源の最も近い端部同士の距離が100mm以内であることを意味する。
また、上記電子機器は、上記筐体の内部に配され、上記揮発性化学物質を含む上記筐体の内部の気体を上記筐体の外部へ導く排気ダクトをさらに備え、上記イオン発生部は、上記排気ダクトの内部に配されていることが好ましい。
上記構成によれば、揮発性化学物質を排出するための排気ダクトが設けられ、該ダクト内において揮発性化学物質を除去するので、揮発性化学物質が拡散する前にイオンを作用させることができ、揮発性化学物質を効率的に除去することができる。
また、上記電子機器は、上記排気ダクト内において上記イオン発生部よりも通気方向上流に配された、粉塵を除去するフィルタをさらに備えていることが好ましい。
一般にイオン発生部は、粉塵などの影響でイオンの発生量が低下しやすい。しかしながら、上記構成によれば、イオン発生部よりも通気方向上流にフィルタが配されているので、イオン発生部への粉塵などの付着を抑制することができ、長期にわたってイオンの発生性能を維持することができる。
上記イオン発生部は、上記イオンを発生させるイオン発生部位が上記排気ダクト内において通気方向下流側を向くように配されていることが好ましい。
上述したように、イオン発生部は、粉塵などの影響でイオンの発生量が低下しやすい。しかしながら、上記構成によれば、イオン発生部はイオン発生部が通気方向下流側を向くように配されるので、イオン発生部に対する粉塵などの付着を抑制することができ、長期にわたってイオンの発生性能を維持することができる。
また、上記電子機器は、交番電圧を印加する電源装置をさらに備え、上記イオン発生部は、上記電源装置によって交番電圧が印加されることにより雰囲気中にプラスイオンおよびマイナスイオンを発生させる電極部材であってもよい。
上記構成によれば、電極部材に交番電圧が印加されることにより、電極部材はプラスの電位とマイナスの電位とを交互に有するようになる。その結果、電極部材の近傍の雰囲気中に、プラスイオンとマイナスイオンとが発生する。臭気やVOCなどの揮発性化学物質は、正に帯電しているものが多いものの、中にはマイナスに帯電しているものもあるが、上記構成によれば、揮発性化学物質がどちらに帯電していても効果的に除去することができる。
また、上記電子機器は、上記イオン発生部として、マイナスイオンを発生させるマイナスイオン発生部およびプラスイオンを発生させるプラスイオン発生部の2つのイオン発生部を備えていてもよい。
臭気やVOCなどの揮発性化学物質は、正に帯電しているものが多いものの、中にはマイナスに帯電しているものもある。上記構成によれば、プラスとマイナスの両方のイオンが発生するので、揮発性化学物質がどちらに帯電していても効果的に除去することができる。
なお、上記マイナスイオン発生部と上記プラスイオン発生部とは、上記揮発性化学物質の発生源を挟むように、あるいは、上記揮発性化学物質を含む上記筐体の内部の気体の流路を挟むように配されていることが好ましい。
上記構成によれば、それぞれのイオン発生部によって発生したマイナスイオンとプラスイオンとの間には引力が働くので、発生したイオンは、相手方のイオン発生部の方向へと誘導される。ここで、一方のイオン発生部から見て相手方のイオン発生部の方向には、揮発性化学物質の発生源、または、揮発性化学物質を含む気体の流路があるため、発生したイオンは、揮発性化学物質へと誘導されることになる。それゆえ、揮発性化学物質の抑制効果が向上する。
また、上記電子機器は、上記筐体の内部に配され、上記揮発性化学物質を含む上記筐体の内部の気体を上記筐体の外部へ導く排気ダクトをさらに備え、上記プラスイオン発生部と上記マイナスイオン発生部とは、上記排気ダクトの内部において、上記排気ダクトの内部における気体の流路を挟むように配されていてもよい。
上記構成によれば、一方のイオン発生部から見て相手方のイオン発生部の方向には、揮発性化学物質を含む気体の流路があるため、発生したイオンは、揮発性化学物質へと誘導されることになる。それゆえ、揮発性化学物質の抑制効果が向上する。
また、上記イオン発生部は、電子放射方式によりイオンを発生させるものであってもよい。
イオン発生部としては、針状の放電電極と対向電極を有し、対向電極に対してコロナ放電を発生させてイオンを生成する構成(コロナ放電方式)のものが一般的であるが、(1)イオンとともにオゾンの発生も非常に多い、(2)放電電極が磨耗劣化しやすい上、放電生成物で汚れやすい、などの欠点もある。これに対して、上記構成によれば、オゾンの発生を抑制することができる。さらに、電極への放電生成物の付着も少なく、たとえ放電生成物が付着しても、付着力が弱いために簡単にクリーニングできるため、イオンの発生性能を長期にわたって維持することができる。
上記イオン発生部は、電圧が印加されることにより雰囲気中にプラスまたはマイナスのイオンを発生させる電極部材と、上記電極部材に対向して配されるとともに上記イオンとは逆極性の電圧が印加される対向電極と、を備えていることが好ましい。
上記構成によれば、イオン発生部が、発生したイオンとは逆極性の電圧が印加される対向電極を備えているため、電極部材の近傍の雰囲気中に発生したイオンが対向電極へ引き寄せられ、強いイオン流が発生する。その結果、揮発性化学物質に対して高濃度のイオンを作用させることができ、揮発性化学物質を効率的に除去することができる。
また、上記イオン発生部は、板状の絶縁体部材と、該絶縁体部材の一方の面上に設けられた第1の面状電極と、上記絶縁体部材の他方の面上に設けられた第2の面状電極とを備え、第1の面状電極と第2の面状電極との間に電圧が印加されることによりイオンを発生させるものであってもよい。
これは、いわゆる沿面放電型のデバイスであり、これによれば、電極の形状が面状であるため、放電生成物が付着しにくく、また、たとえ放電生成物が付着しても容易にクリーニングすることができる。
また、上記電子機器は、上記第1の面状電極の表面をクリーニングするクリーニング手段をさらに備えていることが好ましい。
上記構成によれば、第1の面状電極に放電生成物が付着しても、上記クリーニング手段によって第1の面状電極をクリーニングすることができるので、イオンの発生性能を長期にわたって維持することができる。
また、上記筐体内に配され、上記揮発性化学物質を検知するセンサと、上記センサの検知結果に基づいて上記イオン発生部からのイオンの発生量を制御する制御部とをさらに備えていることが好ましい。
特許文献1の技術では、筐体外部に臭いセンサが設けられているため、揮発性化学物質の発生量が少ない場合に、雰囲気中の臭いを検知しようとしても揮発性化学物質が直ぐに拡散してしまい、精度の高い検知が困難であった。従って、高い検知精度を得るためには、高価なセンサを用いる必要があった。
これに対して、本発明の上記構成によれば、センサが筐体の内部に配されているため、特許文献1の技術を用いる場合よりも、揮発性化学物質を精度よく検知することができる。そして、揮発性化学物質が検知されない場合に、イオン発生部をオフに制御することができる。それゆえ、揮発性化学物質を確実に除去しつつ、イオン発生部の劣化を抑制し、寿命を延ばすことができる。
また、上記電子機器は、シート(記録材)に対して現像剤によって画像を形成する画像形成部を有しているものであってもよい。
インクジェット方式の画像形成装置にて用いられるインクや、電子写真方式の画像形成装置において用いられるトナーは、いずれも揮発性化学物質の発生源となる。従って、このような画像形成装置にイオン発生部を上記のように設けることにより、現像剤から生じる揮発性化学物質を効率よく除去することができる。
また、上記電子機器は、上記シートに対する該シートに形成される画像の面積の割合に応じて上記イオン発生部が発生させるイオンの量を調節する調節部をさらに備えていることが好ましい。
使用される現像剤が増えると発生する揮発性化学物質の量も増えることが予想される。ここで、上記構成によれば、印字率に応じてイオンの量が調節されるので、印字率の高い場合には十分量のイオンを発生させつつ、印字率の低い場合にはイオンの発生を抑えることで、揮発性化学物質を確実に除去しつつ、イオン発生部の劣化を抑制し、寿命を延ばすことができる。
また、上記電子機器は、画像形成部に、加熱されると共に圧接された1対の定着部材の圧接部にシート(記録材)を通過させることで、現像剤を加熱溶融し、シートに定着させる定着部が備えられ、上記イオン発生部は、発生させたイオンが上記定着部に向かうように配されていてもよい。
電子写真プロセスによって画像形成を行う電子機器では、シートに現像剤を定着させる工程に用いているシリコンオイルや、定着部材として用いているシリコンゴムから発生するシロキサンや、定着時に現像剤から発生するVOC、臭気成分が揮発性有機物質の主要因となっている。また、イオンによる揮発性有機物質の削減効果は、湿度が高いほど高くなる。
従って、上記構成のように、定着時に熱せられたシートから蒸発する水蒸気で高湿環境となっている定着部に向かうようにイオンを放出することで、揮発性有機物質をより効果的に削減することができる。
この場合、イオン発生部は、定着部材の圧接部のシートが排出される側に発生させたイオンが向かうように配されていることが好ましい。
揮発性有機物質の発生部であると共に高湿環境を生み出す水蒸気の発生部でもある圧接部に直接イオンが放出されるので、揮発性有機物質をより一層効果的に削減することができる。
さらに、この場合、定着部に外装カバーが設けられており、この外装カバーの内部にイオン発生部が配されていてもよい。
定着部に設けられた外装カバーにて、圧接部で発生した揮発性有機物質の拡散が抑制されると共に、水蒸気の拡散も抑制され、外装カバー内部は高湿環境が保持される。従って、外装カバーを設け、その内部にイオン発生部を配した構成とすることで、揮発性有機物質をより一層効果的に削減することができる。
なお、特許文献2には、定着器近傍に除電器を設けた例が開示されているが、特許文献2の定着方式はフラッシュ定着方式であり、本願の接触加熱定着方式とは異なる。フラッシュ定着方式は、シートを熱することが少なく、トナーを融かすことができることが特長であり、定着部においてシートから発生する水蒸気は少なく、定着部近傍でもそれ程高湿環境にはならない。また、特許文献2においては、除電器は定着部の下流側に設けられており、発生させたイオンが定着部に向かう構成でもない。
また、特許文献1にも定着部近傍にイオン発生器を設けた例が開示されているが、イオン発生器を定着部近傍に設けているのは、イオン発生器としてトルマリン鉱石を用いた場合、定着部の熱によってイオンの発生が活性化されるためであり、高湿環境下で揮発性有機物質の削減率が高くなる効果を狙ったものではない。
さらに、特許文献1においては、イオンを発生させる方向についても、より湿度の高い定着部(圧接部)の方向ではなく、機外であり、発生させたイオンが定着部に向かう構成ではない。
加えて、トルマリン鉱石は定着器の外装カバー(表面)に付設されていると記載されており、外装カバーの外側では温度は高くなるものの湿度はそれほど高くならない。
また、上記電子機器は、上記イオン発生部の近傍に配され、雰囲気中の湿度を検知する湿度センサと、上記湿度センサの検知結果に基づいて上記イオン発生部からのイオンの発生量を制御する制御部とをさらに備えていることが好ましい。
上記構成によれば、湿度に応じてイオンの量が調節されるので、湿度の低い場合には十分量のイオンを発生させつつ、湿度の高い場合にはイオンの発生を抑えることで、揮発性化学物質を確実に除去しつつ、イオン発生部の劣化を抑制し、寿命を延ばすことができる。
また、上記電子機器は、上記イオン発生部が上記定着部材と同等の幅を有しており、上記イオン発生部は、発生されたイオンが上記定着部材の全幅に対して向かうように構成されていることが好ましい。
上記構成によれば、イオンにより定着部材表面の電荷もコントール(除電や帯電)することができるため、揮発性有機物質の削減だけでなく、定着部での静電的なトナーの付着(オフセット)や飛び散りまでも防止することができる。
また、上記イオン発生部は、板状の絶縁体部材と、該絶縁体部材の一方の面上に設けられた第1の面状電極と、上記絶縁体部材の他方の面上に設けられた第2の面状電極とを備え、第1の面状電極と第2の面状電極との間に電圧が印加されることによりイオンを発生させるものであってもよい。
上述したように、このような沿面放電型のデバイスは、電極の形状が面状であるため、放電生成物が付着しにくく、また、たとえ放電生成物が付着しても容易にクリーニングすることができる。
特に、従来のコロナ放電方式や電子放射方式のようなイオン発生器に比べて、小型で、定着ユニット内への実装が容易であり、また長尺状にするのが容易で、定着部材の幅(紙幅)全面に渡ってイオンを放出する構成を容易に達成し得るといった利点を有する。
さらに、このような沿面放電型のデバイスは、本来、高湿環境では絶縁体(誘電体)が吸湿したり、表面が結露したりすることでイオン発生量が低下する課題があるが、定着部近傍に配されていれば、定着からの熱で昇温して吸湿が抑制されるため、環境によらずイオン発生量が安定する。
さらに、沿面放電型のデバイスは、針状の電子放射式のデバイスに比べてオゾンの発生量が多いといった課題があるが、定着部近傍では温度が高いため、オゾンが分解されやすく、この欠点を補うことができる。
以上のように、本発明に係る電子機器は、イオン発生部が上記筐体の内部に配された構成となっている。従って、上述したように、VOCや臭気などの揮発性化学物質を十分に抑制でき、さらに、電子機器の外側表面や電子機器の周囲の壁などを汚すおそれが少ないという効果を奏する。
〔実施形態1〕
本発明の第1の実施形態について図1から図9に基づいて説明すると以下の通りである。本実施形態では、本発明をカラー複合機に適用した例について説明する。図1は、本発明の一実施形態を示すものであり、カラー複合機100の概略構成を示す縦断面図である。
カラー複合機100は、電子写真方式の画像形成装置であり、図示しないパーソナルコンピュータなどから入力された印刷ジョブデータに基づいて、シート(記録材、記録用紙)に多色あるいは単色の画像を形成するものである。図1に示すように、カラー複合機100は、シートに画像を形成する画像形成部として、光学系ユニットE、4組の可視像形成ユニットpa・pb・pc・pd、中間転写ベルト11、二次転写ユニット14、定着ユニット15、内部給紙ユニット16、およびこれらを内包する筐体25、ならびに、該筐体25の外部に設けられた手差し給紙ユニット17および排紙トレイ18などを備えている。
可視画像形成ユニットpa・pb・pc・pdは、それぞれブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)のトナー像を形成するものである。可視画像形成ユニットpaは、トナー像の担持体となる感光体ドラム101aの周囲に、現像ユニット102a、帯電ユニット103a、クリーニングユニット104aを配置した構成となっている。
帯電ユニット103aは、感光体ドラム101aの表面を所定の電位に均一に帯電させるものである。本実施形態では、帯電ユニット103aがオゾンを極力発生させることなく感光体ドラム101aの表面を一様に帯電させられるように、帯電ローラ方式の帯電ユニット103aを採用している。なお、帯電ユニット103aとしては、図1に示す接触型のローラの代わりに、接触型のブラシや非接触のチャージャ型などを使用してもよい。
光学系ユニットEは、レーザ照射部4および反射ミラー8を備え、入力された印刷ジョブデータに応じてレーザ照射部4からの光により感光体ドラム101a・101b・101c・101dを露光して、各感光体ドラム上に静電潜像を形成するものである。露光ユニット1としては、上記の構成に代わりに、発光素子をアレイ状に並べた例えばELやLED書込みヘッドを用いたものを採用してもよい。
現像ユニット102aは、感光体ドラム101a上に形成された静電潜像をトナーにより顕像化するものである。なお、現像ユニット102aはKのトナーを有し、現像ユニット102b・102c・102dはそれぞれY,M,Cのトナーを有している。一次転写ユニット13aは、中間転写ベルト11を挟んで感光体ドラム101aの上側に配置されており、感光体ドラム101aの表面に形成されたトナー像を中間転写ベルト11に転写するものである。クリーニングユニット104aは、転写工程後に感光体ドラム101aの表面に残留しているトナーを除去し、回収するものである。
そして、他の3組の可視像形成ユニットpb・pc・pdも上述した可視画像形成ユニットpaと同様の構成である。
中間転写ベルト11は、2つのテンションローラ11a・11bによってたわむことなく張架され、中間転写ベルト11のテンションローラ11b側には廃トナーボックス12が、また、テンションローラ11a側には二次転写ユニット14が当接して配置されている。定着ユニット15は、定着ローラ15aおよび加圧ローラ15bから構成され、定着ローラ15aおよび加圧ローラ15bは、図示しない加圧手段により所定の圧力で互いに圧接されている。なお、定着ユニット15は、二次転写ユニット14よりも用紙搬送方向下流に配置されている。
以上のようなカラー複合機100において画像形成プロセスは以下のようにして行われる。まず、帯電ユニット103aが感光体ドラム101aの表面を一様に帯電した後、光学系ユニットEが感光体ドラム101aの表面の帯電領域を画像データに応じてレーザ露光することにより、静電潜像が形成される。続いて、感光体ドラム101a上の静電潜像を現像ユニット102aがトナーによって現像し、得られたトナー像を、トナーとは逆極性のバイアス電圧が印加された一次転写ユニット13aが中間転写ベルト11上に転写する。他の3組の可視像形成ユニットpb・pc・pdも上記と同様に動作して、順次各色トナー像を中間転写ベルト11上に重ねて転写する。
中間転写ベルト11上のトナー像は二次転写ユニット14まで搬送され、トナーとは逆極性のバイアス電圧が印加された二次転写ユニット14が、内部給紙ユニット16の給紙ローラ16aまたは手差し給紙ユニット17の給紙ローラ17aによって給紙されて搬送されてきた記録紙にトナー像を転写する。そして、記録紙上のトナー像は定着ユニット15へと搬送され、定着ユニット15がトナー像を十分に加熱して記録紙上に融着させ、トナー像が融着した記録紙を排紙ローラ18aが排紙トレイ18へ排出する。
このようなカラー複合機100において、本実施形態では、カラー複合機100の筐体25内の温度上昇を抑制するため、筐体25の内側で定着ユニット15の上部にダクト21が設けられている。図2は、ダクト21周辺の詳細な構成を示す図1の要部拡大図であり、図3は、ダクト21の横断面図である。
図2に示すように、ダクト21は定着ユニット15と隣接しており、図3に示すように、ダクト21は、定着ユニット15の直上に配された底のない覆いである本体部27と、該本体部27から延びる2つの中空の筒部26a・26bとからなる。筒部26a・26bは、筐体25に設けられた排気口24a・24bにそれぞれ通じ、内側が空気の流路となっている。この筒部26a・26bの径は一様であり、排気口24a・24bの径と同じ大きさとなっている。
筒部26a・26bの内側における排気口24a・24b側の端部には排気ファン22a・22bが設けられ、排気口24a・24bと反対側(本体部27側)の端部には、粉塵を除去するフィルタ23a・23bが流路を塞ぐようにして設けられている。排気ファン22a・22bは、筒部26a・26bの内側の空気を本体部27側から排気口24a・24b側へ搬送するように回転する。これにより、定着ユニット15によって加熱された空気は、ダクト21の本体部27で回収され、筒部26a・26bを通って排気口24a・24bから筐体25の外部へと排出される。
ところで、複写機やレーザプリンタ、複合機などの電子写真方式を用いた画像形成装置では、定着ユニットの定着ローラや加圧ローラに用いられるシリコンゴムが加熱されることによりシロキサンなどのVOCが発生する。また、トナーにもVOCや臭いの成分が含まれているため、定着プロセスにおいてトナーが加熱溶融されることによってもVOCや臭気が発生する。このように電子写真方式の画像形成装置では、VOCや臭気の大部分が主に定着ユニット周辺で発生し、発生したVOCや臭気は、定着ユニットで加熱された空気とともに筐体外へ排出されることになる。
そこで本実施形態では、発生したVOCや臭気を除去するために、マイナスイオンを発生させるイオン発生器20a・20bが排気ファン22a・22bとフィルタ23a・23bとの間に設置されている。換言すれば、イオン発生器20a・20bは、排気ファン22a・22bよりも空気搬送方向上流で、かつ、フィルタ23a・23bよりも空気搬送方向下流に配置されている。
イオン発生器20がダクト21の内部でマイナスイオンを発生させることにより、VOCや臭気がマイナスイオンの作用によって中和され、排気に含まれるVOCや臭気を削減することができる。本実施形態では、揮発性化学物質が排気口24a・24bから排出され拡散してしまう前に、ダクト21内においてマイナスイオンを作用させることにより、効率良く揮発性化学物質を除去する構成となっている。
イオン発生器20a・20bとしては、一定量のマイナスイオンを安定的に発生できるものであればよく、コロナ放電方式や電子放射方式、沿面放電方式などの各種形態のものを使用することができる。本実施形態では、オゾンの発生を極力抑制する目的から、図3に示すように対向電極を持たない針状部材に高電圧を印加する電子放射方式のイオン発生器20a・20bを採用している。以下では、イオン発生器20a・20bをまとめてイオン発生器20ということもある。
図4は、イオン発生器20の構成を示す側面図である。イオン発生器20は、複数本(ここでは3本)のイオン化針31・31・31、該イオン化針31・31・31を立設するためのベースフレーム32、イオン化針31・31・31をグランドに対して高電位にするための高圧電源34、および固定抵抗33を備えている。
イオン化針31・31・31は、直径1mm、先端曲率半径15μmの針状のタングステン(純度99.999%)からなり、それぞれのイオン化針31は、ピッチが10mmになるようにベースフレーム32上に固定配置されている。なお、ベースフレーム32は金属(ここではステンレス)製であり、高圧電源34の負極が接続されている。高圧電源34の正極は接地されている。固定抵抗33は抵抗値が200MΩであり、ベースフレーム32と高圧電源34との間に挿入されている。高圧電源34がオンになり電圧を印加するようになると、イオン化針31・31・31には固定抵抗33を介して−5kVの電圧が印加される。換言すれば、イオン化針31・31・31は、グランドに対して−5kVの電位を有するようになる。
なお、固定抵抗33を挿入する理由は、湿度の変動などに伴うイオン発生空間のインピーダンスの変化や、放電生成物、トナーおよび紙粉などがイオン化針31の先端に付着することによる電流の変動などを抑制し、安定的にイオンを生成できるようにするためである。
イオン発生器20のイオン化針31・31・31は、図2および図3に示すように、その尖端がダクト21の気体搬送方向上流側に向くように配置されている。これにより、イオン化針31・31・31によって発生したマイナスイオンが筐体25内部の定着ユニット15へ向けて飛散するので、定着ユニット15の周辺から発生した揮発性化学物質を効率良く除去することができる。
また、イオン発生器20の空気搬送方向上流には、粉塵を除去するフィルタ23が設置されているため、イオン化針31・31・31がトナーや紙粉などによって汚れるのを防止することができ、イオン発生量を長期にわたって安定的に維持することができる。
また、本実施形態では、図2および図3に示すように、ダクト21の筒部26aの内側壁面上に臭気センサ28が設けられている。この臭気センサ28は、雰囲気中に含まれる臭気を検知するものであり、例えば新コスモス電機株式会社製のニオイセンサXP−329IIIなどを用いることができる。
そして、カラー複合機100は、図4に示すように、イオン発生器20a・20bの高圧電源34を制御する電源制御部29をさらに備えている。電源制御部29は、臭気センサ28の出力値が所定の閾値を上回った場合に高圧電源34をオンにする一方、臭気センサ28の出力値が所定の閾値を下回った場合に高圧電源34をオフにする。その結果、イオン発生器20a・20bは、カラー複合機100の筐体25内の臭気が高まっているときにのみマイナスイオンを発生させるので、イオン化針31・31・31などの寿命が長くなる。
以下では、本発明の有効性を検証するために行った実験について説明する。
(実験1)
まず、上述したイオン発生器20を用い、中央のイオン化針31からの距離とマイナスイオンの濃度との関係を調べた。具体的には、イオン発生器20を周囲1m四方に何も無い空間に設置し、ベースフレーム32に高圧電源34を接続し、イオン化針31・31・31に−5kVの電圧を印加した状態で、イオン化針31・31・31からの距離を変えながら雰囲気中のマイナスイオンの濃度を測定した。
高圧電源34にはTrek社製MODEL610Cを用いた。また、マイナスイオン測定器には佐藤商事社製AIC−2000を用い、イオン化針31・31・31の尖端から5mm〜150mm離れた位置にマイナスイオン測定器の空気吸入口を設置し、マイナスイオンの個数(一定容積の気体に含まれる個数でありイオン濃度に相当)を測定した。
発生したイオンは距離が遠くなるほど拡散するので、基本的には、イオン濃度がイオン化針31・31・31からの距離rの2乗に反比例すると予想される。そこで、測定したイオンの個数nにイオン化針31・31・31の先端からマイナスイオン測定器までの距離rの2乗を乗じた値、すなわちn*r2を算出し、r=5mmのときのn*r2を基準(100%)として各距離における相対的なイオン量(n*r2)を百分率で算出した。その結果を図5に示す。
発生したイオンが単に3次元的に拡散するだけであれば、距離rに関係なくn*r2の値は一定となるはずであるが、実際には図5に示すように、距離rが大きくなるほどn*r2の値が小さくなり、100mm以上離れた位置には、5mmと比べてほとんど到達できないことが分かった。これは、発生したマイナスイオンが空気中に存在する逆荷電したイオン(ここではプラスイオン)などと結びついて減少したり、また空気分子と衝突するために拡散できる距離が制限されてしまったりするためと推測される。
従って、マイナスイオンによってVOCや臭気を効率的に削減するためには、VOCや臭気に対してなるべく至近距離からマイナスイオンを放出することが大変好ましく、少なくとも従来言われているように、イオン発生源(ここでは定着ユニット15)から100mm以内の位置にイオン発生器20を配置することが好ましいと考えられる。
(実験2)
次に、イオン発生器20によって発生したマイナスイオンにVOCや臭気の削減効果があることを検証した。本実験では、上述したカラー複合機100の代わりに、リコー社製カラーレーザープリンタCX−400の筐体内部の定着ユニットの上方の空間にイオン発生器20を設置したものを用いた。そして、CX−400に連続プリントを実行させた後、排紙口付近で臭気およびTVOC(total Volatile Organic Compounds)を測定した。なお、この測定は、イオン発生器20のイオン化針31・31・31に印加する電圧を0Vから−3.5kVの範囲で変化させながら繰り返し行った。連続プリントでは、毎分25枚の速度で印字率が20%(各色5%)のカラー原稿を計100枚プリントした。臭気測定器には新コスモス電機社製XP−329IIIを、TVOC測定器にはJMS社製JHV−1000を使用した。結果を図6に示す。
図6に示すように、イオン発生器20のイオン化針31・31・31に印加される電圧の大きさ(絶対値)が大きくなるほど、排紙口付近のTVOCおよび臭気がともに減少していった。このことから、定着ユニットの上方に設置したイオン発生器20から発生したマイナスイオンによってTVOCや臭気が削減されることが確かめられた。
(実験3)
次に、イオン発生器20を筐体内部に設置することによる効果について検証した。ここでは、シャープ社製カラー複合機MX−4500Nに対して図1に示すようにイオン発生器20を筐体内のダクト内部に設けたもの(実施例1)と、同MX−4500Nに対して図27に示すようにイオン発生器20を筐体外部の用紙の排出口付近に設けたもの(比較例1)および同MX−4500Nに対してイオン発生器20を設けなかったもの(比較例2)とを用いて比較実験を行った。なお、これらの実施例1、比較例1・2では、フィルタ23を設置していない。
本実験では、上述した実施例1および比較例2,3のカラー複合機を容積9.8m3のチャンバー内に設置し、毎分35枚の速度で印字率が20%(各色5%)のカラー原稿を計500枚プリントしたときのチャンバー内の臭気およびTVOC上昇値を測定した。なお、臭気測定器には新コスモス電機社製XP−329IIIを、TVOC測定器にはJMS社製JHV−1000を使用した。また、実施例1および比較例1のイオン発生器20のイオン化針31・31・31には−10kVの電圧を印加した。結果を図7および図8に示す。
図7および図8に示すように、イオン発生器20を設置することによって臭気およびVOCが低減することが確かめられた。さらに注目すべきことに、イオン発生器20を筐体外部に設けた比較例1よりも、筐体内部(ダクト内)に設けた実施例1の方が、チャンバー内でのVOCや臭気の削減効果が高いことが明らかとなった。
これは、実験1で示したように、イオン発生器20によって発生したイオンは広範囲に拡散することができないため、筐体外部にイオン発生器20を設けた場合では、チャンバー内に広く拡散したVOCや臭気に対して効果的にマイナスイオンを作用させることができないためであると推測される。
従って、上述したカラー複合機100のように、イオン発生器20は、筐体25の内部に設けられることが好ましい。さらに、定着ユニット15周辺の気体を外部に排出するダクト21の内部にイオン発生器20を設ければ、さらに濃度の高い揮発性化学物質に対してマイナスイオンを作用させられることから一層好ましい。
なお、イオン発生器20を筐体内部に設置した場合、筐体内部に沈着した揮発性化学物質にはマイナスイオンが継続的に供給される。従って、イオン発生器20を筐体外部に設置した場合に比べて、一度沈着した揮発性化学物質が再び揮発するおそれが少ないものと考えられる。
また、筐体外部にイオン発生器20を設けた比較例2では、排出口から近い位置のチャンバーの内壁やカラー複合機の外装などが黒く汚れてしまったのに対し、実施例1ではそのような現象が見られなかった。これは、イオン発生器20を筐体外部に設置した場合には、発生したイオンが空気中のNOxと筐体外部において反応し、その生成物が周囲の壁や床カラー複合機の外装などに沈着したのに対し、イオン発生器20を筐体内部に設置した場合には、大部分の反応・沈着が筐体内部でしか起こらないためと考えられる。
従って、カラー複合機の周囲の壁や床、あるいは、カラー複合機の筐体などの外装部分の汚れを防止する観点からも、イオン発生器20を筐体内部に設けることが好ましいことが結論付けられた。
(変形例)
以下では本実施形態のカラー複合機100の変形例について説明する。上述したカラー複合機100では、電源制御部29が臭気センサ28の検知結果に基づいてイオン発生器20の高圧電源34を制御するように構成されているが、臭気を検知する臭気センサ28の代わりに、VOCを検知するVOCセンサを用いてもよい。
また、電源制御部29は、カラー複合機100が取得あるいは生成した印刷ジョブデータから算出される印字率に基づいて高圧電源34の印加電圧を調節してもよい。図9は、本変形例における高圧電源34の制御機構を示すブロック図である。図9に示すように、カラー複合機100は、印刷ジョブデータ受信部41、印字率算出部42、電源制御部43を備えている。
印刷ジョブデータ受信部41は、パーソナルコンピュータなどから印刷ジョブデータを受信するものである。この印刷ジョブデータには、シートに印刷する画像のデータなどが含まれる。印字率算出部42は、印刷ジョブデータ受信部41が受信したこの印刷ジョブデータを解析して印字率を算出するものである。なお、印字率とは、シートの面積に対する、シートに形成される画像の面積の割合をいう。電源制御部43は、印字率算出部42が算出した印字率に基づいて高圧電源34の印加電圧を調節する。
印字率が高いということは、1枚のシートに定着されるトナーの量が多いことを意味する。従ってこの場合、1枚あたりのシートから発生する揮発性化学物質の量も多くなることが予想される。そこで、電源制御部43は、印字率が高い場合には高圧電源34の印加電圧の大きさを大きくし、一方、印字率が低い場合には高圧電源34の印加電圧の大きさを小さくする。このように、必要に応じてイオン化針31・31・31に対する印加電圧を下げることにより、イオン化針31・31・31などの寿命を延ばすことができる。
また、上述した実施形態では、イオン発生器20の設置対象となる電子機器として、電子写真方式のカラー複合機を例にとって説明したが、本発明はこれに限定されない。イオン発生器20の設置対象となる電子機器としては、揮発性化学物質の発生を伴う電子機器であればどのようなものであってもよく、例えば、使用時に基板から揮発性化学物質が発生するパーソナルコンピュータや、インクから揮発性化学物質が発生するインクジェット方式の画像形成装置などであってもよい。また、例えばモノクロ複写機など、他の電子写真方式の画像形成装置も本発明の電子機器に含まれる。
〔実施形態2〕
本発明の第2の実施形態について図10から図12に基づいて説明すると以下の通りである。上述した実施形態1では、排気用のダクトに粉塵を除去するフィルタが設けられており、そのフィルタの下流にイオン発生器が設けられている構成であったが、本実施形態では排気用のダクトに粉塵を除去するフィルタが設けられていない。排気用のダクトの形状およびその中に配置されている部材以外は上述した実施形態1のものと同一である。なお、本実施形態において、上述した実施形態1と同一の構成については説明を適宜省略する。
図10は本実施形態のダクト周辺の詳細な構成を示す縦断面図であり、図11はダクトの横断面図である。図10に示すように、ダクト51は、実施形態1と同形状の本体部27と、該本体部27と排気口24a・24bとを繋ぎ、該本体部27の内側の気体を排気口24a・24bへと導く2つのガイド部53a・53bとを備えている。ガイド部53a・53bの内側の通路は、本体部27と接する部分で最も広く、排気口24a・24bに近づくに連れて狭くなっている。
ガイド部53a・53bの内側における排気口24a・24b側の端部付近には排気ファン22a・22bが設けられており、この排気ファン22a・22bにより、ガイド部53a・53bの内側の空気が本体部27側から排気口24a・24b側へと搬送される。従って実施形体1と同様に、定着ユニット15によって加熱された空気は、ダクト51の本体部27で回収され、ガイド部53a・53bを通って排気口24a・24bから筐体25の外部へと排出される。
そして、それぞれのガイド部53a・53bの内側には、マイナスイオンを発生させるイオン発生器20a・20bが1つずつ設けられている。イオン発生器20a・20bは、上述した実施形態1と同一のものであり、排気ファン22a・22bよりも空気搬送方向上流において、ベースフレーム32上のイオン化針31・31・31の尖端が排気ファン22a・22bの方向を向くような姿勢で配されている。
この姿勢により、画像形成プロセスにおいて生じた紙粉やトナーがベースフレーム32に遮られるためにイオン化針31・31・31に付着しにくくなっている。それゆえ、フィルタがなくとも、イオン発生量を長期にわたって安定的に維持することができる。
以下では、本発明の有効性を検証するために行った実験について説明する。
(実験4)
イオン発生器20のイオン化針31・31・31の尖端が図11に示すように排気ファン22a・22bの方向(空気搬送方向下流側)に向いているカラー複合機(実施例2)と、イオン化針31・31・31の尖端が本体部27の方向(空気搬送方向上流側)に向いているカラー複合機(比較例3)とを用いてエージング試験を行い、イオン発生量に差が生じるかを調べた。
本実験では、実施例2および比較例3のカラー複合機をそれぞれ用い、毎分35枚の速度で印字率が20%(各色5%)のカラー原稿をプリントし、プリント枚数が10万枚に達するまでの各時点でイオン発生器20からのイオン発生量を測定した。なお、イオン発生量は、プリント開始時の発生量を100%とした百分率によって表した。結果を図12に示す。
図12に示すように、実施例2のカラー複合機の方が、比較例3のものよりもイオン発生量の低下が少なく、イオン発生量が維持された。これは、イオン発生器20のベースフレーム32が排気流を遮るように作用し、フィルタが無くとも排気流の中に含まれるトナーや紙粉によるイオン化針31・31・31の汚れを抑制することができるためと考えられる。このことから、イオン発生器20はイオン化針31・31・31の尖端がダクト51内において空気搬送方向下流側を向くように配置することが好ましいことが分かった。
〔実施形態3〕
本発明の第3の実施形態について図13から図16に基づいて説明すると以下の通りである。上述した実施形態1,2では、排気用のダクトにマイナスイオンを発生させるイオン発生器が2つ設けられている構成であったが、本実施形態ではマイナスイオンを発生させるイオン発生器とプラスイオンを発生させるイオン発生器とが1つずつ設けられている。排気用のダクトの形状およびその中に配置されている部材以外は上述した実施形態1,2のものと同一である。なお、本実施形態において、上述した実施形態1,2と同一の構成については説明を適宜省略する。
図13は本実施形態のダクト周辺の詳細な構成を示す縦断面図であり、図14はダクトの横断面図である。図13に示すように、ダクト56は、実施形態1と同形状の本体部27と、該本体部27と排気口24a・24bとを繋ぎ、該本体部27の内側の気体を排気口24a・24bへと導く1つのガイド部55とを備えている。実施形態1,2では、排気口24aへ気体を導く通路と排気口24bへ気体を導く通路とが別々に設けられていたが、本実施形態ではそれらが共通(一体)となっている。
ガイド部55の内側の通路は、本体部27と接する部分で最も広く、排気口24a・24bに近づくに連れて狭くなっている。ガイド部55の排気口24a・24b付近には排気ファン22a・22bが設けられており、この排気ファン22a・22bにより、ガイド部55の内側の空気が本体部27側から排気口24a・24b側へと搬送される。従って実施形体1と同様に、定着ユニット15によって加熱された空気は、ダクト51の本体部27で回収され、ガイド部55を通って排気口24a・24bから筐体25の外部へと排出される。
そして、本実施形態では、ダクト56のガイド部55の内側に2つのイオン発生器20・50が対向して配置されている。一方のイオン発生器20は、上述した実施形態1,2のものと同様に、イオン化針31・31・31に−5kVの電圧が印加されることによりマイナスイオンを発生させるものであり、他方のイオン発生器50は、構造は上記イオン発生器20と同じであるが、イオン化針31・31・31への印加電圧が正(ここでは+5kV)となっており、雰囲気中にプラスイオンを発生させるものとなっている。以下では、説明の便宜上、イオン発生器50を構成する各部材に対して、イオン発生器20と同一の部材番号を付す。
イオン発生器20とイオン発生器50とは、互いのイオン化針31・31・31が対向するような姿勢で、かつ、排気口24aへの気体の流路および排気口24bへの気体の流路の双方を挟むようにして設置されている。これにより、2つの流路を流れる気体に対してプラスとマイナスのそれぞれのイオンが浴びせられる。
臭気やVOCなどの揮発性化学物質は正に帯電しているものが多いものの、中にはマイナスに帯電しているものもある。それゆえ、本実施形態のようにプラスとマイナスの双方のイオンを発生させることで、揮発性化学物質がどちらの極性に帯電していても効果的に削減することができる。
さらに、極性が逆の2つのイオン発生器20・50の相互作用により、発生したイオンの到達距離が長くなるという効果もある。つまり、単一のイオン発生器しかない場合、イオン発生器近傍に生じたイオンは、同一極性の物質間に働く斥力により様々な方向へランダムに拡散する。これに対して、本実施形態のように、対向する位置に逆極性のプラスイオンを発生させるイオン発生器50を設置することにより、イオン発生器20によって生じたマイナスイオンと、イオン発生器50の近傍に発生したプラスイオンやイオン発生器50の電極との間に引力が生じるので、イオン発生器20によって発生したマイナスイオンは対向配置されているイオン発生器50へと誘導される。
それゆえ、発生したイオンの到達距離が長くなる。そして、このようなイオン発生器とイオン発生器との間に、揮発性化学物質を含む気体の流路を設けることにより、揮発性化学物質に対して濃度の高いプラスおよびマイナスの双方のイオンを浴びせることができ、揮発性化学物質の不活化を効果的に行うことができる。
なお、本実施形態では、イオン発生器20・50の配置位置を定着用のダクト56の内部としたが、筐体25の外部に装着しても、従来のマイナスイオン発生器のみを設置した場合に比べてイオンの到達範囲が広がることから、その効果を十分引き出すことができる。
以下では、本発明の有効性を検証するために行った実験について説明する。
(実験5)
本実験では、プラスイオンを発生させるイオン発生器20とマイナスイオンを発生させるイオン発生器50との双方を対向させて配置することにより、イオンの到達距離が長くなるかを調べた。
図15は、本実験におけるイオン発生器20・50の配置を示す図である。イオン発生器20、イオン発生器50のベースフレーム32には、それぞれ−5kV,+5kVの電圧を印加し、実験1と同様に、イオン化針31・31・31からの距離を変えながら雰囲気中のマイナスイオンの濃度を測定した。測定に用いた機器は実験1と同一である。その結果を図16に示す。なお、図16における「距離r」とは図15に示すように、中央のイオン化針31からの距離である。
実験1の結果(図5)と対比すると、マイナスイオンを発生させるイオン発生器20に対して、プラスイオンを発生させるイオン発生器50を対向させて配置することにより、イオン発生器20によって発生したマイナスイオンの到達距離が長くなることが明らかとなった。
なお、マイナスイオンを発生させるイオン発生器20とプラスイオンを発生させるイオン発生器50との双方を設置する際に、この実験のように或る程度の間隔を設けてやれば、発生したマイナスイオンとプラスイオンとが打ち消しあうことによる影響はほとんどない。
〔実施形態4〕
本発明の第4の実施形態について図17から図20に基づいて説明すると以下の通りである。上述した実施形態1〜3では、イオン発生器として図4に示す電子放射方式のものを用いる構成であったが、本実施形態では沿面放電方式のものを用いている。本実施形態において、イオン発生器およびそのダクト内における配置以外は上述した実施形態3のものと同一である。なお、本実施形態において、上述した実施形態1〜3と同一の構成については説明を適宜省略する。
図17は、本実施形態のカラー複合機に用いられるイオン発生器の構成を示す側面図であり、図18は、そのイオン発生器の電極部の構造を示す平面図である。このイオン発生器60は、沿面放電を利用してイオンを発生させるタイプのもので、電極部が3層構造となっている。具体的には、セラミックやマイカなどからなる板状の誘電体(絶縁体部材)61の表面および裏面上に、それぞれ、ステンレスやタングステンなどからなる1つの面状の放電電極(第1の面状電極)62と、同じくステンレスやタングステンなどからなる面状の2つの誘導電極(第2の面状電極)63・63とがエッチングにより形成されている。
誘電体61は長方形の板形状である。一方、放電電極62は鋸歯状で、誘導電極63・63は線状となっており、いずれも誘電体61の長手方向に延びるように形成されている。そして、放電電極62は、誘電体61の短手方向中央に配されている。一方、2本誘導電極63・63は、それぞれ誘電体61の短手方向中央よりも上寄り、下寄りに配されている。なお、放電電極62および誘導電極63・63の形状は上述したものに限定されず、例えば放電電極62が線状であってもよい。
放電電極62と誘導電極63・63との間には、高圧電源64により所定のパルス状の駆動電圧(ここでは周波数1.5kHz、電圧0〜−3kV、デューティー10%)が印加される。なお、誘導電極63・63は接地されており、高圧電源64が電圧を印加すると、放電電極62は誘導電極に対して0〜−3kVの電位を有するようになる。これにより、放電電極62と誘導電極63・63との間で沿面放電が発生し、放電電極62と誘導電極63・63との間の空気がイオン化され、マイナスイオンが発生する。
図19は本実施形態のダクト周辺の詳細な構成を示す縦断面図であり、図20はダクトの横断面図である。イオン発生器60は、図19,20に示すように、ダクト56のガイド部55の内部で、かつ、排気口24a・24bへの流路上に、誘電体61の長手方向が上記の2つの流路の双方を横断するように設置されている。また、イオン発生器60は、放電電極62が上側、誘導電極63が下側、そして板状の誘電体61が水平となるような姿勢になっている。
イオン発生器60の放電電極62および誘導電極63・63の間に電圧を印加すると、マイナスイオンが発生し、イオン発生器60の上方へ向けて拡散する。これにより、2つの流路を流れる揮発性化学物質に対してマイナスイオンが浴びせられる。
さらに、本実施形態では、図19,20に示すように、イオン発生器60の放電電極62の表面をクリーニングするクリーニング部材65が備わっている。クリーニング部材65は、面状の放電電極62の上面に当接しており、図20中の矢印の方向(誘電体61の長手方向)にスライド可能に設けられている。そして、このクリーニング部材65をスライドさせると、クリーニング部材65によって放電電極62の上面が拭われ、放電電極62に付着したトナーや紙粉、放電生成物などが除去される。なお、クリーニング部材65は、例えばフェルトによって形成することができ、手動または任意の駆動機構によってスライドされる。
沿面放電方式のイオン発生器60は、上述した針状タイプ(電子放射方式)のイオン発生器20と比べて、イオンの飛ぶ距離が短いものの(約5mm)、面状の電極を用いるために放電生成物が付着しにくく、たとえ放電生成物に付着しても容易にクリーニングすることができる。それゆえ、長期にわたって安定的にイオンを生成することができる。
〔実施形態5〕
本発明の第5の実施形態について図21に基づいて説明すると以下の通りである。上述した実施形態3では、マイナスおよびプラスの双方の極性を有するイオンを発生させるために2つのイオン発生器を備える構成としたが、本実施形態では、1つのイオン発生器によって両極性のイオンを発生させる構成となっている。本実施形態において、イオン発生器以外の構成は上述した実施形態1のものと同一であり、上述した実施形態1と同一の構成については説明を適宜省略する。
図21は、本実施形態のイオン発生器20’の構成を示す側面図である。イオン発生器20’は、実施形態1と同様に、複数本(ここでは3本)のイオン化針31・31・31、該イオン化針31・31・31を立設するためのベースフレーム32、イオン化針31・31・31をグランドに対して高電位にするための高圧電源34’、および固定抵抗33を備えている。各部材の接続形態や、イオン化針31・31・31、ベースフレーム32、固定抵抗33の構成は、実施形態1と同様である。
高圧電源34’は、交番電圧(例えば+4.0kV〜−4.0kV、周波数1kHz)を印加する電源であり、一方の極が固定抵抗33を介してベースフレーム32に接続され、他方の極が接地されている。この高圧電源34’がイオン化針31・31・31に対して交番電圧を印加することにより、イオン化針31・31・31は、グランドに対して正および負の高電位を交互に有するようになる。その結果、イオン化針31・31・31の近傍の雰囲気中では、マイナスイオンとプラスイオンとが交互に生成される。
これにより、本実施形態のイオン発生器20’は、雰囲気中に含まれる揮発性化学物質がどちらの極性に帯電していても、揮発性化学物質を効果的に削減することができる。さらに、1つのイオン発生器20’がマイナスイオン、プラスイオンの両方を発生させることができるので、実施形態3と比べて、複合機100の省スペース化およびコストダウンを図ることができる。
ただし、イオン発生器20’を用いる場合、マイナスイオンの到達距離がある程度短くなってしまうので、マイナスイオンの到達距離を長くしたい場合は、実施形態3のようにイオン発生器20およびイオン発生器50の組み合わせを用いる方が好ましい。
〔実施形態6〕
本発明の第6の実施形態について図22から図26に基づいて説明すると以下の通りである。本実施形態では、イオン化針に対向する対向電極を設けることにより、効率的にイオンを作用させる構成となっている。本実施形態において、イオン発生器以外の構成は上述した実施形態1のものと同一であり、上述した実施形態1と同一の構成については説明を適宜省略する。
図22は、本実施形態におけるダクト21周辺の詳細な構成を示す図である。図22に示すように、本実施形態では、イオン発生器20a”のイオン化針31aと対向するように、対向電極35aが設けられている。この対向電極35aは、イオン化針31aとフィルタ23aとの間に配されている。
この構成は、実施形態1のイオン発生器20bに対応するもう一方のイオン発生器20b”についても同様である。従って、以下では、イオン発生器20a”およびイオン発生器20b”をまとめてイオン発生器20”として説明する。
図23は、本実施形態におけるイオン発生器20”の構成を示す側面図である。イオン発生器20”は、図23に示すように、実施形態1と同様に、複数本(ここでは3本)のイオン化針31・31・31、該イオン化針31・31・31を立設するためのベースフレーム32、イオン化針31・31・31をグランドに対して高電位にするための高圧電源34、および固定抵抗33を備えている。これらの部材の接続形態や構成は、実施形態1と同様である。
そして、イオン発生器20”は、さらに、イオン化針31・31・31に対向して配された対向電極35、およびこの対向電極35に電圧を印加するための電源36を備えている。より具体的には、対向電極35は格子状の電極であり、格子面がイオン化針31・31・31の尖端と対向するように設けられている。なお、対向電極には、例えばSUS(Stainless used steel)を用いることができる。また、電源36は、正極が対向電極35に接続され、負極が接地されている。
対向電極35は、電源36によって正の電圧を印加されることにより、グランドに対して正の電位を有するようになる。その結果、イオン化針31・31・31の近傍の雰囲気中に発生したマイナスイオンが正の電位を有する対向電極35の方向へ強く引き寄せられ、強いマイナスイオン流が発生する。これにより、高濃度のマイナスイオンを揮発性化学物質に作用させ、揮発性化学物質を効率的に除去することができる。
(変形例)
ところで、対向電極を用いる構成は図23に示すものに限定されない。図24は、上述した実施形態4,6の変形例を示すものであり、対向電極を用いた沿面放電方式のイオン発生器60’の構成を示す側面図である。なお、本変形例において、上述した実施形態4,6と同一の構成については説明を適宜省略する。
イオン発生器60’は、図24に示すように、沿面放電を利用してイオンを発生させるタイプのもので、電極部として、誘電体61、放電電極62、および誘導電極63・63、そして、放電電極62と誘導電極63・63との間にパルス状の駆動電圧を印加する高圧電源64を備えている。これらの部材は、実施形態4と同一の構成である。
そしてイオン発生器60’は、さらに、面状の放電電極62に対向して配された対向電極35、および該対向電極35に電圧を印加するための電源36を備えている。本変形例においても、上記の実施形態6と同様に、対向電極35は格子状の電極であり、格子面が放電電極62の表面(誘電体61と接する面と反対の面)と対向するように設けられている。また、電源36は、正極が対向電極35に接続され、負極が接地されている。
本変形例においても、上記の実施形態6と同様に、対向電極35が、電源36によって正の電圧を印加されることにより、グランドに対して正の電位を有するようになる。そして、放電電極62と誘導電極63・63との間に発生したマイナスイオンが正の電位を有する対向電極35の方向へ強く引き寄せられ、強いマイナスイオン流が発生する。その結果、上記の実施形態と同様に、高濃度のマイナスイオンを揮発性化学物質に作用させ、揮発性化学物質を効率的に除去することができる。
以下では、本発明の有効性を検証するために行った実験について説明する。
(実験6)
本実験では、実施形態6の構成のイオン発生器20”について、上述した実験3と同様の実験を行うことにより、その効果を検証した。具体的には、シャープ社製カラー複合機MX−4500Nに対して図22に示すようにイオン発生器20”を筐体内のダクト内部に設けたもの(ただしフィルタ23は設置せず)(実施例3)を用い、上述した実験3と同様の条件で臭気およびTVOC上昇値を測定した。
なお、対向電極35は、ステンレスSUS316製であり、3つのイオン化針31・31・31のうち、真ん中のイオン化針31の先端から30mmとなるように配置した。イオン発生器20”のイオン化針31・31・31には−10kVの電圧を印加し、対向電極35には+1.5kVの電圧を印加した。本実験の結果を上述した実験3の結果とともに図25および図26に示す。
図25および図26に示すように、対向電極35を備えるイオン発生器20”を設置することによって、実験3の実施例1の場合よりも臭気およびVOCの削減効果が高くなることが明らかとなった。これは、イオン化針31・31・31に対向し、正の電圧が印加される対向電極35をイオン発生器20”が備えていることにより、強いイオン流を発生させて効率的に臭気およびVOCを削減できるためと考えられる。
〔実施形態7〕
本発明の第7の実施形態について図28〜図30に基づいて説明すると以下の通りである。本実施形態では、イオン発生器は、発生させたイオンが定着ユニット15に向かうように配されている。より詳細には、イオン発生器は、定着ユニット15の内部であって、発生させたイオンが定着ニップ部のシートが排出される方に向かうように配されている。これにより、定着ユニット15にて発生した揮発性化学物質に対し、定着ユニット15内部で発生する水蒸気による高湿環境を利用して、より一層効率的にイオンを作用させる構成となっている。
本実施形態において、図29に示すように、実施形態4で説明した沿面放電方式のイオン発生器60と同タイプのイオン発生器70を用いている。したがって、イオン発生器70の構成については説明を省略する。
図28は本実施形態の定着ユニット15周辺の詳細な構成を示す縦断面図である。イオン発生器70は、定着ユニット15における外装カバー71の内部であって、かつ、定着ニップ部Nのシートが排出される方に、発生させたイオンが向かうように、一対の定着部材である定着ローラ15a及び加圧ローラ15bに近接して配されている。
そして、図28に示すように、定着ニップ部Nのシートが排出される側の空間は、排出されるシート自体によって分割されるが、その場合、溶融されてシート状に定着されるトナー像の有る方の空間にイオン発生器70が配されることがより好ましい。図28の例では、定着ローラ15aがトナー像と接触してトナーを溶融する構成であるので、この定着ローラ15aの側に、イオン発生器70は配されている。
これにより、定着ニップ部Nに発生する揮発性有機物質に対して、イオンをより効果的に降り注がせることができる。
また、本実施形態のイオン発生器70は、定着ローラ15a及び加圧ローラ15bの長手方向全幅に亘ってイオンを放出できるよう、定着部材長(本実施例では320mm)よりも若干長い全長の長方形状(330×8mm)となっている。このような長尺状のイオン発生器60を構成する上で、沿面放電方式のイオン発生器70は適している。
また、本実施形態では、図28に示すように、定着ユニット15の外装カバー71の内部であって、かつ、イオン発生器70の近接に湿度センサ72が設置されており、この湿度センサ72の検出結果に基づいて、発生させるイオン量が調整されるようになっている。これについては、後述する。
そして、イオン発生器70の放電電極62および誘導電極63・63(図29参照)の間に電圧を印加すると、マイナスイオンが定着部材長全域で発生し、イオン発生器70の下方、すなわち用紙排出側の定着ニップ部Nへ向けて拡散する。これにより、定着工程で発生する揮発性化学物質に対してマイナスイオンが浴びせられる。
本実施例のような電子写真方式を用いた画像形成機器においては、定着工程で離型剤として用いるシリコンオイルや、定着ローラ15a及び加圧ローラ15bに用いるシリコンゴム等が加熱されて発生するシロキサン、或いは定着工程で加熱溶融されたトナーから発生するVOCや臭気成分が揮発性有機物質の主要因となっている。また、イオンによる揮発性有機物質の削減効果は、湿度が高いほど効果が高くなる。
したがって、図28に示すように、イオン発生器70を配置することで、定着時に熱せられたシートから蒸発する水蒸気で高湿環境となっている定着ニップ部Nのシート排出側に向かうようにイオンを放出することで、従来に比べて揮発性有機物質をより効果的に削減することができる。
また、本実施形態で例示した沿面放電方式のイオン発生器70は、コロナ放電方式や電子放射方式のようなイオン発生器に比べて小型であるため、定着ユニット15内への実装が容易であり、また上述のように長尺状にするのが容易であることから、定着部材の(シート幅)全面に渡ってイオンを放出することが可能であるといった利点を有する。
さらに、このような沿面放電型のイオン発生器70は、高湿環境では、例えば誘電体61(図29参照)がマイカの場合はマイカ自身が吸湿したり、また誘電体17が吸湿性のないセラミックの場合でも、セラミックの表面が結露することでイオン発生量が低下したり、イオン発生量が不均一となる課題がある。
しかしながら、本実施形態に示したように、イオン発生器70が定着ユニット15近傍に配置されていれば、定着部材からの熱で昇温し吸湿が抑制されるため、高湿環境においてもイオン発生量が安定する。
加えて、沿面放電方式のイオン発生器70は、針状の電子放射式に比べてオゾンの発生量が多いといった課題があるが、定着部近傍では温度が高いため、オゾンが分解されやすく、この欠点を補うことができる。
(実験7)
イオン発生器70を定着ユニット15内部に設置することによる効果について検証した。ここでは、実験3と同様に、シャープ社製カラー複合機MX−4500Nに対して図28に示すようにイオン発生器70を定着ユニット15内部に設けたもの(実施例4)と、同MX−4500Nに対してイオン発生器70を筐体内のダクト内部に設けたもの(実施例5)、筐体外部の用紙の排出口付近に設けたもの(比較例3)および同MX−4500に対してイオン発生器20を設けなかったもの(比較例2)とを用いて比較実験を行った。
本実験では、上述した実施例4,5および比較例2,3のカラー複合機を容積9.8m3のチャンバー内に設置し、毎分35枚の速度で印字率が20%(各色5%)のカラー原稿を計500枚プリントしたときのチャンバー内の臭気の上昇値を測定した。なお、臭気測定器には新コスモス電機社製XP−329IIIを使用した。また、実施例4,5および比較例3のイオン発生器70には−3kVpp、2kHzの矩形波状の交流電圧を印加した。結果を図30に示す。
図30に示すように、定着ユニット15内にイオン発生器70を設置した場合、ダクト内に設置した場合に比べて更に臭気が低減することが確かめられた。また、湿度センサ72を用いて、印字中のイオン発生器70近傍の相対湿度を測定した結果、下記の通りであった。
1.実施例5(ダクト内) 50%
2.実施例4(定着ユニット内) 80%
3.比較例3(筐体外部)50%
このことより、実施例4では、定着ユニット15内部がシートから蒸発した水分により高湿環境となっているため、イオンによる揮発性有機物質の削減効果が向上したものと考えられる。
また、実験7の結果から、イオンによる揮発性有機物質の削減効果は湿度によって異なることがわかった。そこで、本実施形態では、定着ユニット15内に設置した例えば湿度センサ72を用いて、定着ユニッ15ト内の湿度を検知し、湿度に応じて発生させるイオンの量を制御している。
具体的には、図29に示すように、放電電極62と誘電電極63・63との間にパルス状の駆動電圧を印加する高圧電源64を制御する電源制御部(制御部)73がさらに備えられている。電源制御部73は、湿度センサ72の出力値が所定の閾値を上回った場合に高圧電源64に所定の周波数の交流電圧を発生させる一方、湿度センサ72の出力値が所定の閾値を下回った場合に交流電圧の周波数を低下させる。
具体的には、電源制御部72は、湿度が60%より低い場合には、イオン発生器70に−3kVpp、2kHzの交流電圧を印加することで十分量のイオンを発生させ、湿度が60%以上の場合は、イオン発生器70に印加する交流電圧の周波数を1kHzに落として、イオンの発生を半分に抑制するよう制御している。
これにより、湿度に応じてイオンの量が調節されるので、湿度の低い場合には十分量のイオンを発生させつつ、湿度の高い場合にはイオンの発生を抑えることで、揮発性化学物質を確実に除去しつつ、イオン発生部の劣化を抑制し、寿命を延ばすことができる。
(実験8)
次に、イオン発生器70を加熱した場合と加熱しなかった場合のオゾン削減効果について実験を行った。
イオン発生器70には、誘電体61がマイカ製の沿面放電方式のものを用い、図28に示すように、定着ユニット15内の定着ローラ15a近傍にイオン発生器70を設置した。
次に、定着ユニット15を1m3の容積のチャンバー内に設置し、このイオン発生器70に対し、所定の交流電圧(−3kVpp、2kHz)を印加した時のチャンバー内のオゾン発生量について、定着ユニット15のハロゲンヒーター(定着ヒーター)がOFFの場合、及びONの場合の2条件について測定を行った。なお、オゾン測定器としては荏原実業社製オゾンモニターEG2002Fを使用し、電圧を印加後5分経過後のチャンバー内のオゾン濃度を測定した。
実験結果を表1に示す。
表1より、定着ユニットのヒーターをONすることで、イオン発生器は約80℃に昇温し、オゾン量が約48%削減(0.957→0.494ppm)されることがわかる。これは、オゾンは熱によって分解されやすい性質を有しているためである。
この結果から、針状電極の電子放射式に比べてオゾンの発生量が多いといった課題がある沿面放電方式のイオン発生器70でも、定着ユニット15近傍に設置した場合、温度が高くなるため、オゾンが分解されやすく、この欠点を補うことができることを確認した。
(実験9)
次に、イオン発生器70による定着部材へのイオンの照射と、定着部材で発生する静電オフセット現象との関係について検討を行なった。
ここで、静電オフセットの試験方法としては、実験6と同様に、シャープ社製カラー複合機MX−4500Nに対して図28に示すようにイオン発生器70を定着ユニット15内部に設け、定着用クリーニング部材を取り外した状態で、シート(LTサイズのハンマーミル紙)の先端部に幅290mm×20mmのハーフトーン画像(ID0.75)とベタ画像(ID 1.3以上)を形成して定着を行い、定着ローラ15aの1周後(約157mm後)にトナー画像が現れるかどうか、目視により評価した。
また、合わせて表面電位計(Trek社製 Model370)を用いて、定着ローラ15aの表面電位も測定した。
結果を表2に示す。
表2より、イオン発生器70によるイオン発生量を多くするほど、静電オフセットが低減されることがわかる。これは、イオン発生器70により発生したマイナスイオンが定着ローラ15aをマイナス側に帯電することで、トナー(マイナス帯電)との間に静電的な反発力が生じるためである。
なお、ここでは、これ以上の説明は行わないが、イオン発生器70に、イオン発生器60’のように、対向電極を設けるなどの変形例も可能である。また、上記した電源制御部72に、実施の形態1で説明した機内に設けた臭気センサ28からの出力値に基づいてイオン発生量を調整する電源制御部29の機能を併せ持たせた構成としてもよい。
さらに、定着ユニット15内部に設けるイオン発生器としは、沿面放電方式が好ましいことを述べたが、これに限定されるものではなく、前述の実施形態で述べた沿面放電方式以外のイオン発生器であってもよい。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。