本発明の一実施形態について図1ないし図19に基づいて説明すると以下の通りである。
なお、本実施の形態では、本発明に係る画像形成装置として、電子写真方式のディジタル複写機について説明するが、本発明に係る画像形成装置は必ずしもこれに限らず、例えば、電子写真方式であればプリンタやファクシミリについても適用が可能である。
図2は、本実施の形態の帯電装置10を備えたディジタル複写機100の断面図である。本実施の形態のディジタル複写機100は、図2に示すように、原稿読取部110、画像形成部210、給紙部300、及び後処理装置260を備えている。
原稿読取部110は、透明ガラスからなる原稿台111、原稿読取部110の上方に配置される自動原稿搬送装置112、及び原稿台111に載置された原稿の画像を読み取る光学系ユニットを備えている。
自動原稿搬送装置112は、原稿セットトレイ上にセットされた複数枚の原稿を1枚ずつ自動的に原稿台111上へ給送する装置である。また、自動原稿搬送装置112は、原稿カバーとしても機能するものである。自動原稿搬送装置112には、ジョブの入力や画像形成内容の設定等のユーザから入力操作を受け付ける操作パネル40が配置されている。
光学系ユニットは、原稿台111の下方に配置され、原稿台111上に載置された原稿の画像を走査して読み取るものである。この光学系ユニットは、第1の走査ユニット113、第2の走査ユニット114、光学レンズ115、及び光電変換素子であるCCDラインセンサ116を有している。
第1の走査ユニット113は、原稿面上を露光する露光ランプユニット、及び原稿からの反射光を所定の方向に反射させる第1ミラーを備えている。第2の走査ユニット114は、第1ミラーから反射されてくる原稿からの反射光をCCDラインセンサ116に導く第2ミラー及び第3ミラーを備えている。光学レンズ115は、原稿からの反射光をCCDラインセンサ116上に結像させる。CCDラインセンサ116は、原稿からの反射光を光電変換して画像データを生成する。なお、この画像データは、図示しない画像処理部を介して、画像形成部210に出力される。
画像形成部210の下方には、給紙部300が設けられている。給紙部300は用紙カセット251・252・253、手差しトレイ254、及び両面ユニット255から構成されている。
用紙カセット251〜253、及び手差しトレイ254のそれぞれから、画像形成部210を経由して後処理装置260までの間に用紙搬送路が形成される。
用紙カセット251〜253、手差しトレイ254、または両面ユニット255から給紙された用紙は搬送ローラを有する搬送ユニット250を介して画像形成部210に供給される。
両面ユニット255は、用紙を反転させるスイッチバック路221に通じており、用紙の両面に画像形成を行う時に用いられる。なお、両面ユニット255は通常の用紙カセットと交換可能な構成となっており、両面ユニット255を通常の用紙カセットに置き換えて構成してもよい。
画像形成部210は、用紙搬送路に沿って上流側から順番に画像形成ユニット、定着ユニット217、及び排紙ローラ219を備えている。画像形成ユニットは、像担持体としての感光体ドラム(静電潜像担持体)1、露光装置としての光書込装置227、感光体ドラム1を所定の電位に帯電させる帯電装置10、感光体ドラム1上に形成された静電潜像にトナーを供給して顕像化する現像ユニット2、感光体ドラム1表面に形成されたトナー像を用紙に転写するチャージャ方式の転写器225、用紙を除電して感光体ドラム1から剥離し易くする除電器229、余分なトナーを回収するクリーニング器226を備えている。
上述の感光体ドラム1の周囲において、帯電装置10、光書込装置227、現像ユニット2、転写器225、除電器229、及びクリーニング器226によって、それぞれ、帯電処理、露光処理、現像処理、転写処理、除電処理、及び清掃処理が行われる。画像形成処理時には、感光体ドラム1は周速300mm/sで回転駆動される。
感光体ドラム1及び転写器225の間に位置する画像形成位置において、画像データに基づいた未定着の現像剤像が用紙の表面に転写される。その後、用紙搬送路における画像形成位置の下流側に配置されている定着ユニット217に導かれ、定着ユニット217によって、用紙上の未定着の現像剤像が加熱及び加圧され用紙に定着する。
定着ユニット217の下流側において用紙搬送路は二方向に分岐しており、一方が、用紙の裏面に再度画像を形成するために用紙の前後を反転させるスイッチバック路221に通じており、他方が、画像が形成された用紙に対してステープル処理等の後処理を行い昇降トレイ261上に用紙を排出する後処理装置260に通じている。
次に、本実施の形態の帯電装置10について図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施の形態の帯電装置10は、正または負に帯電した微小な液滴を発生させ、上記液滴によって静電潜像担持体(感光体)を所定の電位に帯電させることを特徴としている。
図1は本実施の形態の帯電装置の断面図である。帯電装置10は、図1に示すように、ノズル(静電噴霧手段)18、高圧電源19、及び貯蔵タンク(図示しない)を備えている。
本実施の形態では、帯電装置10が高圧電源19を備えるものとするが、本発明に係る帯電装置は必ずしも電源を備えている必要はなく、帯電装置の外部に設けられた電源(例えばディジタル複写機100の各部に電力を供給する電源)から電力の供給を受けるようになっていてもよい。
ノズル18は、例えばステンレス等の導電性材料からなるノズルであり、先端に向かって細くなる、いわゆる先細り形状となっている。言い換えれば、ノズル18は円錐の先端が切り取られた形状である。このように、ノズル18の先端部分(先端部)は鋭利なものとなっている。なお、図1においては、ノズル18の形状は円筒状であるが、ノズル18の先端部を拡大したものであり、実際には、上述のとおり、ノズル18は先細り形状となっている。
なお、ノズル18の先端部における開口部の外径は、10μm以下であることが望ましい。これにより、ノズル18の先端部から生じる液滴のサイズを1μm以下にすることができる。
ノズル18は、後述する配管21(図3参照)を介して、図示しない貯蔵タンクに接続されており、貯蔵タンクから、液体11がノズル18に供給されるようになっている。これにより、ノズル18の内部には液体11が充填されるようになっている。
ここで、液体11としては、水、アルコール類若しくはエーテル類のいずれか、またはそれらを主成分とする混合溶液が用いられる。なお、アルコール類およびエーテル類としては、市販品を用いればよく、また、水としては、超純水や水道水を適宜用いればよい。また、上記液体に添加物を添加したものを液体11として用いてもよい。上記添加物としては、例えばステアリン酸亜鉛等が考えられる。
ノズル18は高圧電源19に電気的に接続されており、高圧電源19からの電圧が、ノズル18を介して、液体11に対して印加されるようになっている。液体11に電圧が印加されると、ノズル18から印加電圧と同極性に帯電した微小な液滴13が発生することになる。なお、本実施の形態では、負の電圧を印加することにより、液滴13は負の電荷14に帯電されるものとして説明する。
また、ノズル18に対向する位置(ノズル18の下側)には感光体ドラム1が配置される。感光体ドラム1は、光導電性の有機感光体層15及び接地(アース)されたアルミ素管16から構成されている。感光体ドラム1は、図1の矢印に示すように、回転駆動される。
ここで、感光体ドラム1が帯電される原理について説明する。
ノズル18に液体11が供給されると、ノズル18の先端部では、液体11からなる略半球状のメニスカスが生じることになる。このメニスカスは、先端部から下側に盛りあがって形成される。このとき、高圧電源19からノズル18を介して液体11に負の電圧を印加すると、液体11は印加された電圧と同極性の電荷を有することになる。つまり、液体11は印加電圧と同極性に帯電されることになる。そして、印加電圧における適当な電圧値において、ノズル18の先端部における液体11のメニスカスにかかる静電気力により、図1に示すように、ノズル18先端に比較的安定なコーン状のメニスカス12が形成される。さらに、印加電圧(静電気力)の絶対値が増加して表面張力を超えると、コーン状のメニスカス12の先端における柱状となった部分から、液体11が分裂して、印加電圧と同極性に帯電した微小な液滴13が発生することになる。この現象はコーンジェットモードと呼ばれ、均質で安定な噴霧状態となっている。
なお、ここで用いられる液体11の粘度は、100cps以下であることが好ましい。液体11の粘度と噴霧状態の安定性との関係について下記の表1を参照して説明する。なお、表1の○、△、×はそれぞれ、液滴ばらつきなし、若干の液滴ばらつき有り、噴霧不良有りの状態を示している。表1の噴霧状態が○または△のときは、安定した噴霧状態とみなす。液体11の粘度が1〜16cpsの場合は、噴霧状態は非常に安定しており、粘度が100cpsの場合にも、噴霧状態は安定している。しかし、液体11の粘度が100cpsより大きくなると、噴霧状態の安定性は失われ、噴霧不良が発生する。これは、液体11の粘度が高くなることにより、ノズル18内部において液体11が流動する際に生じる抵抗が大きくなるためである。さらに、液体11の粘度が高くなることにより、液体11が分裂して液滴13が発生するときに、分裂せずに滴下するサイズの大きな液滴13が混在してしまう。そのため、噴霧状態にばらつきが発生する。このように、噴霧状態の安定性は、液体11の粘度によって変化する。
ノズル18から発生した液滴13は、ノズル18と感光体ドラム1表面との電位勾配に沿って感光体ドラム1に到達し、感光体ドラム1を帯電させることになる。すなわち、感光体ドラム1は電荷14を有することになる。
なお、液体11に印加する電圧値の絶対値を必要以上に上昇させると、メニスカス12のコーン状の先端が複数に分裂したマルチジェットモードとなり、放電現象をともなう不安定な噴霧状態となる。これは、感光体ドラム1における帯電ムラを生じさせることになる。また、液体11に印加する電圧値の絶対値をさらに上昇させると、ノズル18から放電が生じ、放電によるオゾンの発生が懸念される。
ここで、液体11に印加する電圧値と、ノズル18から生じる放電と、液体11の種類との関係について表2を参照して説明する。表2は、図1に示す帯電装置10において、液体11を感光体ドラム1に噴霧するときにノズル18から生じる放電の有無について、高感度カメラによって観測した結果である。ここで、液体11としては、ハイドロフルオロエーテルとエタノールとを1:0、1:1、1:2、0:1の割合で混合したものまたは水を用いており、液体11には1.0kV、2.0kVまたは3.0kVの電圧が印加される。
表2に示すように、液体11に印加する電圧の絶対値が2.0kV以下である場合には、液体11の種類に関らず、ノズル18からの放電は観測されない。また、ノズル18から生じる放電は、液体11に印加する電圧値だけでなく、ハイドロフルオロエーテルとエタノールとの混合比を調整することによっても抑制することが可能である。このように、液体11に印加する電圧値および液体の混合比を調節することにより、ノズル18から生じる放電を抑制することができ、オゾンの発生量をより一層低減することが可能である。
このように、本実施の形態の帯電装置10は、高圧電源19による印加電圧の大きさによって、ノズル18の先端部における液体11の電位を変化させて噴霧状態を制御することができる。
ところで、安定したコーンジェットモードにおいて、液滴径はノズルに供給される液体の流量Qと液体の導電率Kとの関数である式(1)に従うことが知られている。
Ddは液滴径、ε0は真空の誘電率、εは液体の比誘電率、τは電荷の緩和時定数、Gはεに依存する定数である。
上記式(1)は、液体の種類を決定することによってτ及びGが決定され、流量Qを制御することによって液滴径の制御が可能となる。
本実施の形態では、ノズル径を適切な大きさに設定することによって毛細管現象を利用して、液体11の流量Qを制御している。また、必要に応じて、マイクロポンプ等の流量制御装置を設けて液体11の流量Qを制御してもよい。なお、毛細管現象を利用する場合、流量制御装置が不要となるため、装置コストを低減することができる。
また、帯電装置10は、帯電した液滴13を発生させて、感光体ドラム1に付着させることにより感光体ドラム1を帯電させる。これにより、感光体ドラム1を帯電させるときに、従来のコロナ帯電器の基本原理であるコロナ放電とは全くことなる静電噴霧を基本原理としていることから、従来のコロナ帯電器のようなオゾンの発生をほとんどともなわない。したがって、オゾンの発生による人体に対する悪影響が生じ難くなる。
しかも、帯電装置10は、感光体ドラム1に対して、非接触であるので、帯電装置10及び感光体ドラム1が摩擦により劣化・磨耗することを防止することができる。
また、ノズル18は先細り形状となっているので、その先端部に電界が集中しやすくなる。言い換えれば、ノズル18の先端は鋭利なものとなっているので、低電圧の印加により、ノズル18の先端において電界の強度が高くなりやすい。すなわち、低電圧の印加により、ノズル18の先端部が高電界になりやすい。従って、低電圧の印加により、液滴13を発生することが可能となる。なお、ノズル18の形状を円筒形状とした場合でも、ノズル18が細ければ十分な電界集中を実現できる。
次に、帯電装置10におけるノズル18の配置について図3を参照しながら説明する。図3は感光体ドラムの軸方向における上記帯電装置の断面図である。
図3に示すように、帯電装置10では、感光体ドラム1の軸方向(幅方向)に沿って、複数のノズル18が一列に等間隔に配置された構成となっている。言い換えれば、複数のノズル18は、感光体ドラム1が駆動する方向と直交する方向に沿って一列に等間隔に配置されている。ノズル18は、それぞれ配管21を介して図示しない貯蔵タンクに接続されており、必要に応じて、外部からの衝撃から保護されるようにケース23内部に設けられる。
より具体的には、例えば、感光体ドラム1の軸方向の有効長300mmに対して、ノズル18は10mm周期で30個一列に配置されている。これにより、感光体ドラム1の軸方向に電荷14をほぼ均一に付与することができ、その結果、感光体ドラム1表面のより広い面積を同時に帯電させることが可能となり、感光体ドラム1はほぼ均一に帯電することになる。
また、ノズル18の配置としては、一列に等間隔に配置されているものに限るものではなく、例えば、ノズル18は複数列に千鳥状に配置されていてもよい。これにより、ノズル18が一列に配置されている場合に比べて、より多数のノズル18を配置することできるので、感光体ドラム1表面に液滴13をより均一に付着させることが可能となる。従って、感光体ドラム1の帯電ムラをより一層低減させることができる。
なお、上述の説明では、感光体ドラム1に対して、重力方向上側から下側に向かって液滴13が放出されるようになっている。しかしながら、感光体ドラム1には、いずれの方向から、液滴13が噴出されるようになっていてもよく、例えば、感光体ドラム1に対して、重力方向下側から上側に向かって液滴13が噴出されるようになっていてもよい。
これは、ノズル18から放出される液滴13は、その液滴径が非常に微小であるため、重力の影響を無視でき、ノズル18と感光体ドラム1との間の電界に沿って移動するためである。また、噴霧前の液体供給についても、ノズル先端部近傍では内径が非常に小さいため、重力の影響を無視でき、毛細管力で液体を供給可能である。そのため、既に説明したマイクロポンプ等の流量制御装置は、液滴径を別途制御する場合や、ノズル先端から遠い部分で流路内径が大きくなり重力に反して液体を供給するときに使用すればよい。
また、ノズル18の代わりに、ノズル18の孔を埋めたような形状を有する針状部材を使用してもよい。この場合、上記針状部材の外側表面に沿って針形状の先端部に液体を供給しながら、上記針状部材に電気的に接続された高圧電源19から電圧を印加することにより、針形状の先端部から帯電した液滴13を噴出することができる。なお、上記針状部材が多孔質セラミックで形成されている場合、液体が針状部材内部を通過し、針形状の先端部から滲み出すことにより、帯電した液滴13を噴出することができる。従って、本実施形態のノズル18と略同様の効果が得られる。
次に、本実施の形態の帯電装置10を用いた静電噴霧実験について説明する。
図4は静電噴霧実験に用いた装置の概略構成を示す断面図である。
本静電噴霧実験では、図示しない液体供給系(液体貯蔵タンク)と、高圧電源19に電気的に接続されたノズル18と、ノズル18に対向する位置に配置された平板電極24とを用いた。ここで、ノズル18として、内径が40μmであるノズルを用いると共に、液体11としてはエタノール及び純水を用いた。なお、平板電極24はアースされて、その電位が0Vとなっている。
上記の構成に基づいて、液体11を供給しながら、印加電圧を変化させたときの、平板電極24からアースに流れる電流値(基板電流)を測定した。また、このときの、ノズル先端のメニスカス形状を拡大観察することにより、良好な静電噴霧状態(コーンジェットモード)であるか、分裂したマルチジェットモードであるか、または放電状態であるかを調べた。さらに、噴霧後に、表面電位計を用いて、平板電極24の表面電位を計測することにより、平板電極24における帯電の均一性を調べた。
図5に、上記静電噴霧実験における印加電圧と基板電流との結果を示す。横軸は印加電圧(V)を、縦軸は基板電流(nA)をそれぞれ示している。なお、縦軸の基板電流(nA)とは、上述のとおり、平板電極24からアースに流れる電流値であり、これは、静電噴霧により液滴によって平板電極24に付与された単位時間当たりの電荷量と等価のものである。
図5より、エタノール噴霧の場合、印加電圧(絶対値)を増加させるにつれ、基板電流(絶対値)が増加することがわかる。そして印加電圧が−2.0kVから急激に電流値(絶対値)が増加した。これは、ノズル18から放電が発生して放電電流が流れたためである。また、純水噴霧の場合、−1.8kVから徐々に電流値(絶対値)が増加し、−2.0kV以上の電圧(絶対値)において、急激に電流値(絶対値)が増加した。
また、メニスカス形状を観察した結果、エタノール噴霧の場合、−1.2kVから−2.0kVの印加電圧において、良好なコーンジェットモードでの静電噴霧が確認できた。また、純水噴霧の場合、−1.8kVから−2.0kVの印加電圧において、良好なコーンジェットモードでの静電噴霧が確認できた。
さらに、各印加電圧における平板電極24の表面電位を調べると、エタノール噴霧の場合、−1.2kVから−2.0kVの印加電圧において、均一に帯電していることが確認できた。また、純水噴霧の場合、−1.8kVから−2.0kVの印加電圧において、均一に帯電していることが確認できた。
上記の結果より、エタノール噴霧の場合、−1.2kVから−2.0kVの印加電圧において、良好なコーンジェットモードでの静電噴霧が得られ、純水噴霧の場合、−1.8kVから−2.0kVの印加電圧において、良好なコーンジェットモードでの静電噴霧が得られることが確認できた。
次に、上記静電噴霧実験において、内径7μmのノズル18を用いると共に、液体11としてエタノール、ハイドロフルオロエーテル、エタノールとハイドロフルオロエーテルを1:1で混合させた混合液体、またはエタノールにステアリン酸亜鉛を質量%濃度で50%添加させたものを用いた場合の印加電圧と基板電流との結果を図6に示す。図6では、横軸は印加電圧(V)を、縦軸は基板電流(nA)をそれぞれ示している。なお、縦軸の基板電流(nA)とは、上述のとおり、平板電極24からアースに流れる電流値であり、これは、静電噴霧により液滴によって平板電極24に付与された単位時間当たりの電荷量と等価のものである。
図6に示すように、導電率Kの低いハイドロフルオロエーテルでは、噴霧による基板電流が少ない一方で、−2.0kV以上の電圧を加えても放電が生じていないことがわかる。また、液体11としてエタノールとハイドロフルオロエーテルとの混合液体を用いた場合の基板電流は、エタノールのみを用いた場合の基板電流とハイドロフルオロエーテルのみを用いた場合の基板電流との間の値となっている。また、エタノールにステアリン酸亜鉛を添加することによっても、基板電流が下がっていることがわかる。
このように、二種類以上の液体を混合したり、添加物を添加した液体11を用いることにより、液体11の導電率Kを変化させ、基板電流や放電を制御することができる。
次に、感光体ドラム1の帯電に適した静電噴霧の条件をより詳細に説明する。
例えば、感光体ドラム1の必要帯電電位を−700V、有機感光体層15の膜厚を20μm、比誘電率を3とすると、感光体ドラム1の表面電荷密度σは−9.3×10−4C/m2となる。感光体ドラム1の駆動速度(周速)を300mm/s、有効軸長300mmとすると、感光体ドラム1を帯電させる電流は−84μAとなる。A4の用紙1枚のサイズは210×298mmであることから、これに対応する面積の感光体ドラム1表面を帯電させるために必要な電荷量は−59μCとなる。
一方、直径Dの液滴が保持できる最大の電荷量Qmaxは、Rayleigh限界より、下式(2)で制約される。
液体の表面張力γを7.28×10−2N/mとすると、直径φ10nmの液滴が保持可能な最大電荷量は7.13×10−18Cとなる。静電噴霧により、Rayleigh限界まで帯電されたφ10nmの液滴を形成した後、感光体ドラム1表面まで100%の効率で搬送することができれば、A4の用紙1枚に対応する面積の感光体ドラム1表面を所定の電位に帯電させるために必要な液体の量は、4.3×10−12m3となる。同様に液滴の直径がφ100nmであれば、1.36×10−10m3の液体量となる。
このような計算から、できるだけ小粒径の帯電液滴を生成すると、少量の液体で感光体ドラム1を帯電できることがわかる。しかも、上記のように、液滴13のサイズがサブミクロンオーダーであれば、必要帯電量を得るための噴霧液量が微量で済むため、感光体ドラム1の表面を乾燥させる乾燥工程が不要となる。
ところで、実際には、静電噴霧により生成した帯電液滴を100%の効率で感光体ドラムに搬送することは困難であり、静電拡散などの様々なロスが生じるおそれがある。
そこで、上記静電噴霧実験において、A4の用紙1枚に対応する面積の感光体ドラム1表面を所定の電位に帯電させるのに必要な液体量を計測した結果、エタノールの場合、−1.6kVの印加電圧で100μl、−2.0kVの印加電圧で、83μlであった。また、純水の場合、−2.1kVの印加電圧で0.33μlであった。そして、エタノールと純水を混合した場合、その比に応じて導電率Kを変化させることができ、必要な液体量を制御できることを実験的に確認した。
なお、上述のとおり、上記式(1)より、流量Qや導電率Kを制御することによって、液滴径の制御は可能であることから、A4の用紙1枚に対応する面積の感光体ドラム1表面を帯電させるのに必要な液体の量を制御することが可能であることは明らかである。
また、電子写真方式による複写機やプリンタ等の画像形成装置に対して、本実施の形態の帯電装置を実用化する場合、水、アルコール類またはエーテル類を含有する液体をサプライ品(供給品)として供給する必要がある。現像装置や静電潜像担持体の寿命(メンテナンスサイクル)は、プリント枚数で少なくとも10万枚以上が一般的であるため、帯電装置10のサプライ品交換頻度も同様であることが望ましい。
そこで、サプライ品として供給された液体11のメンテナンスサイクルを10万枚印刷段階にするための液滴13の径について図7を参照して説明する。図7は、発生させる液滴13の径と、10万枚印刷段階での液体11の使用量との関係を示すグラフである。画像形成装置100内に設置可能な液体のタンク容量を500ml以下と設定した場合、図7に示すように、10万枚印刷段階において液体使用量を500ml以下にするためには、液滴13の径を1μm以下にする必要がある。
液滴13径を1μm以下にするためには、ノズル18の先端部における開口部の外径の大きさを考慮する必要がある。これは、液滴13がメニスカス形成を経て形成され、メニスカス径はノズル18の先端部における開口部の外径に依存するためである。ノズル18の先端部におけるメニスカスの形成は、ノズル18の先端部の材質と液滴13との親和性によって形成される位置が異なるが、基本的に液滴13はノズル18の先端部で濡れ広がるため、ノズル18の外側の稜線にしたがって行われる。
ノズル18の先端部における開口部の外径と、前記開口部から発生する液滴13径のサイズとの関係について図8を参照して説明する。図8に示すように、ノズル18の開口部の外径が大きくなると、液滴13の径も大きくなり、液滴13の径はノズル18の開口部における外径の1/7〜1/14となる。図8より、ノズル18の開口部の外径が10μmのときに、液滴13径が1μmとなる。そのため、液滴13の径を1μm以下にするためには、ノズル18の開口部の外径を10μm以下にする必要である。
以上のことから、サプライ品として噴霧液体用のタンクサイズを500ml以下にするためには、ノズル18の先端部における開口部の外径のサイズを10μm以下にすることが望ましい。
また、ノズルサイズを10μm以下にして、1μm以下の液滴13を発生させることにより、感光体ドラム1表面を液滴13によって必要以上に濡らすことがない。そのため、感光体ドラム1表面を乾燥させるための乾燥工程が不要となる。また、液滴13が揮発して機外に放出された場合には、その量が微量であるため、人体に対してほとんど害をなすことはない。
さらに、使用する液体11は最終的に揮発させ画像形成装置外に排気することから、人体に無害であり臭気もほとんどない、水、アルコール類またはエーテル類を利用することが望ましい。このような液体11は、感光体ドラム1を劣化させにくく、電子写真プロセスにおいて好適に用いられる。
次に、ノズルと噴霧対称物との距離と、噴霧領域との関係を図4に示した静電噴霧実験用の装置を用いて調べた。実験結果を、図9を参照して説明する。図9は、ノズル18と平板電極24間との距離と平板電極24上の噴霧領域との関係を示したグラフである。ノズル18と平板電極24間との距離に比例して、噴霧領域大きくなり、噴霧領域はノズル18と平板電極24間との距離の0.8〜1倍である。つまり、図3に示すように、複数のノズル18を配列した場合、隣接ノズル18間の距離を、ノズル18と感光体ドラム1との距離の0.8倍以下にすることにより、各ノズル18の噴霧領域に重なりが発生する。そのため、感光体ドラム1の軸方向に未帯電領域を形成することなく安定的に均一帯電することが可能となる。
また、画像形成装置100内に設置内部に設置可能な液体のタンク容量を500ml以下とし、サプライ品となる液体11の前記交換頻度を考慮すると、A4の用紙1枚に対応する面積の感光体ドラム1表面を帯電させるのに必要な液体11(液滴13)の量を5μl以下にすることが望ましい。
これに対して、液体11(液滴13)の量が5μlを超えた場合、大型のタンクを用いる必要が生じ、その結果、装置の大型化につながる。一方、上記の場合に、小型のタンクを用いるとサプライ品としての本液体の交換頻度が高くなり、メンテナンスコストの上昇につながる。
なお、本実施の形態では、上記の静電噴霧の液体必要量5μl以下という値は、上記実験結果から、流量Qや導電率Kを制御することで、実現可能であり制御可能な値である。なお、導電率Kは、エタノールと水またはハイドロフルオロエーテルとの混合比率を変化させたり、ステアリン酸亜鉛を添加することにより、調整することができる。従って、上述のとおり、エタノールと水若しくはハイドロフルオロエーテルとを混合したときの混合比またはステアリン酸亜鉛の添加量に応じて必要な液体量を制御できる。
また、上記のように、A4の用紙1枚に対応する面積の感光体ドラム1表面を帯電させるのに必要な液体11(液滴13)の量を5μl以下とすることにより、静電噴霧時に、感光体ドラム1表面を液滴13によって必要以上に濡らすことがない。従って、感光体ドラム1表面を乾燥させるための乾燥工程が不要となる。また、液滴13が揮発して機外に放出された場合に、その量が微量であるため、人体に対して、ほとんど無害とすることができる。
さらに、使用する液体は最終的に揮発させ画像形成装置外に排気することから、人体に無害であり臭気もほとんどない水やエタノールを利用することが望ましい。このような液体は、感光体ドラムを劣化させ難いので、電子写真プロセスにおいて適したものである。
ところで、帯電装置10は、図3に示した構成に加えて、図10に示すように、ケース23の下部にシャッター部(開閉部材)20が開閉自在に設けられていてもよい。ここで、図10は上記帯電装置の斜視図である。また、図11及び図12は感光体ドラムの周方向における上記帯電装置の断面図であり、それぞれ、シャッター部20の開状態と閉状態とを示している。
静電噴霧による帯電動作時には、図11に示すように、シャッター部20が開いており、ノズル18より噴出された帯電している液滴13が感光体ドラム1に到達できる。一方、帯電動作時以外は、図12に示すように、シャッター部20が閉じている。これにより、帯電動作時以外には、ノズル18内部の液体11が、乾燥により損失することを防止できるとともに、ノズル18内部に残った液体11が感光体ドラム1に滴下することを防止できる。しかも、ノズル18内部にダストが入ることを防止することができる。
次に、図13及び図14に本実施の形態に係る帯電装置の変形例を示す。
本変形例の帯電装置26では、図13及び図14に示すように、ノズル18と感光体ドラム1との間に、グリッド電極22が配置されている。
グリッド電極22は、感光体ドラム1を均一に帯電させるためのものであり、厚さ0.1mmのステンレスの網状の電極である。グリッド電極としては、例えば、従来のスコロトロン方式のコロナ帯電器に用いられるグリッド電極を使用することができる。
ここで、本変形例の帯電装置26において、グリッド電極22の設置位置と電荷供給比率との関係について図15を参照して説明する。ノズル18から帯電液滴として放出された電荷は、グリッド電極22を通過し、感光体ドラム1表面に供給される。そして、ノズル18から帯電液滴として放出された電荷の電荷供給効率は、ノズル18の先端部における開口部の外径またはグリッド電極22の設置距離により左右される。ノズル18からの放出電荷量に対する感光体ドラム1への供給電荷量の比率を電荷供給比とすると、電荷供給比はノズル18の開口部の外径に対するノズル18−グリッド電極22間の距離の比であるギャップ対ノズル比に依存する。図15に示すように、ギャップ対ノズル比が10%以下であると、電荷供給比が非常に低く、感光体ドラム1への帯電効率が悪くなる。そのため、高い帯電効率を得るためには、電荷供給比が70%以上となるように、ギャップ対ノズル比を10%以上にすることが望ましい。
ここで、図3に示すように、グリッド電極が設けられていない場合、一定の間隔を空けてノズル18が配置されていると、ノズルの配置によって、液適量の多寡が生じて、ノズル18と感光体ドラム1との間の電界が不均一になり、感光体ドラム1表面の帯電が不均一になるおそれがある。
これに対して、本変形例の帯電装置26では、液滴の進行方向に、グリッド電極22が配置されているので、一定の間隔を空けて配置されたノズル18の影響を低減し、グリッド電極22と感光体ドラム1との間の電界を均一にすることができる。これにより、感光体ドラム1の帯電を均一にすることができる。
ここで、静電噴霧による帯電動作時には、図10に示すように、シャッター部20が開いており、ノズル18から噴出された帯電している液滴13が感光体ドラム1に到達する。このとき、上述のとおり、グリッド電極22によって、グリッド電極22と感光体ドラム1との間の電界を均一にすることができる。一方、帯電動作時以外は、図11に示すように、シャッター部20が閉じた状態となっている。これによりノズル18の液体が乾燥により損失することが防止できるようになっている。
さらに、図16及び図17に本実施の形態に係る帯電装置の変形例を示す。
本変形例の帯電装置27では、図16及び図17に示すように、シャッター部20のケース29のノズル18が設けられている第1凹部33に面した側に、液体貯蔵部31が設けられている。そして、液体貯蔵部31は、シャッター部20が開くときに、ケース29の側面側に移動する。液体貯蔵部31の内部には、噴霧液体11と同種の液体が吸収剤を介して満たされている。吸収剤とは、ノズル18を破損しないように構成されたスポンジ状の液体保持材料のことであり、液体貯蔵部31の内部全体に設けられている。また、ケース29には、第1凹部33内に、シャッター部20が開いているとき、液体貯蔵部31を収容するための第2凹部35が設けられている。
図16に示すように、帯電動作時はシャッター部20が開いており、シャッター部20に設けられた液体貯蔵部31は帯電ケース29の第2凹部35へ収容されている。そして、図13の場合と同様に、ノズル18から噴出された帯電液滴13が感光体ドラム1に到達することで、感光体ドラム1を均一に帯電することができる。
そして、帯電動作時以外は、図17に示すように、シャッター部20が閉じた状態となることで、液体貯蔵部31がノズル18の直下まで移動し、ノズル18の先端部が液体貯蔵部31に満たされた液体中に浸漬する。このように、ノズル18の先端を液体中に浸漬することにより、帯電動作中にノズル18の先端部における開口部の外壁に付着した異物を洗浄することができる。また、ノズル18の先端部を液体中に浸漬させた状態で、液体11を強制的に吐出させることにより、ノズル内部に付着した異物を容易に除去することもでき、ノズル内部の洗浄をすることが可能である。また、ノズル内部の洗浄は、液体貯蔵部31に満たされた液体中にノズル18の先端部を一度浸漬させたあと、液体から取り出して液体11を強制的に吐出させても行うことができる。すなわち、ノズル内部を洗浄するためには、ノズル内部の付着物を湿らせることができる構成が備えられていればよい。
図18は本実施の形態に係る帯電装置の他の変形例を示す断面図である。
本変形例の帯電装置28では、図18に示すように、ノズル18の代わりに、非導電性材料(絶縁材料)からなるノズル30が設けられている。また、ノズル30内部に導体電極32が設けられており、導体電極32に高圧電源19が電気的に接続されている。
ノズル30は、例えば、ガラスや多孔質セラミック等の非導電性材料(絶縁材料)からなるノズルであり、その形状は上記ノズル18と同様のものとなっている。
導体電極32は、例えば、ステンレス等の導電性材料からなる電極であり、その形状は円柱状となっている。導体電極32は、ノズル30の先端部分の内部に設けられており、ノズル30内部の液体11の進行方向と平行に、かつノズル30の中心軸を通るように配置されている。
本変形例では、導体電極32を介して、高圧電源19から液体11に正又は負の電圧が印加される。このとき、導体電極32はノズル30の先端部分の内部に設けられているので、ノズル30の先端部分の内部に電界を集中させることができ、本実施の形態の帯電装置10と同様に、印加電圧と同極性に帯電した微小な液滴13を発生させることが可能となる。そして、液滴13は感光体ドラム1に表面に付着され、感光体ドラム1を帯電させることになる。
また、本変形例では、ノズル30はガラス等の絶縁材料からなるので、最も電界が集中するノズルの先端からの放電現象を防止することができる。これにより、放電現象にともなうオゾン発生を抑制することができる。
ここで、ノズル30の材質が多孔質セラミックである場合は、ノズルの毛細管に生じる静電ポテンシャルの分布により、ノズル中に電気浸透流が生じることになる。従って、液体中に不純物(例えば、Ca、Mg等の陽イオン)が混入しているとしても、上記不純物はノズル先端部に向かわず、導体電極32に向かうことになる。従って、ノズル先端部に不純物が析出することがないため、ノズル先端部が詰まるおそれがない。
また、ノズル30の先端部分において液体11に電圧を印加することができれば、導体電極32の形状や配置は特に限定されるものではない。例えば、導体電極32はノズル30先端部の内部における壁面全体を覆うように配置して、導体電極32の内部を液体11が通過するようにしてもよい。この場合、液体11の流れを遮ることがないので、安定した液滴を発生させやすい。
図19は本実施の形態に係る帯電装置のさらに他の変形例を示す断面図である。
本変形例の帯電装置34では、図19に示すように、感光体ドラム1の駆動方向の下流側に、送風機25が設けられている。
送風機(ファン)(乾燥装置)25は、感光体ドラム1表面に噴出された液滴13を乾燥させるために設けられおり、気流によって、感光体ドラム1表面の余分な液滴13を乾燥させるようになっている。
これにより、ノズル18から噴出された液滴13によって生じる感光体ドラム1の濡れを防止することができ、電子写真プロセス下流の露光工程や現像項工程に悪影響を及ぼさないようにすることができる。また、気流によって、感光体ドラム1を乾燥するので、乾燥時に感光体ドラム1が劣化し難い。
本発明の帯電装置では、前記液体は、水、アルコール類若しくはエーテル類のいずれか、またはそれらを主成分とする混合溶液であることが好ましい。
上記の構成によれば、人体に対して悪影響をほとんど及ぼさない水、アルコール類若しくはエーテル類のいずれか、またはそれらを主成分とする混合溶液を用いるので、静電潜像担持体表面に付着した液滴が揮発したとしても、人体に対して悪影響が生じ難くなる。
本発明の帯電装置では、前記液体は、粘度が100cps以下であることが好ましい。
上記構成によれば、ノズル内部で液体が流動する際の抵抗を小さくすることができ、噴霧不良を発生させることなく、安定した静電噴霧により静電潜像担持体に電荷を供給することが可能となる。また、液体が分裂して液滴が発生するときに、分裂せずに滴下するサイズの大きな液滴を生じにくくし、噴霧状態のばらつきを抑制することができる。
本発明の帯電装置では、A4サイズの紙に対応する面積の静電潜像担持体表面を所定の電位に帯電させるための前記液滴の総量が、5μl以下であることが好ましい。
ここで、「所定の電位」とは、電子写真方式の画像形成を行う際に必要となる静電潜像担持体表面の電位を意味する。
本発明の構成によれば、静電噴霧時に、例えば感光体ドラム等の静電潜像担持体表面を液滴によって必要以上に濡らすことがない。従って、上記静電潜像担持体表面を乾燥させるための乾燥工程が不要となる。また、液滴が揮発して機外に放出された場合に、その量が微量であるため、人体に対して、ほとんど無害とすることができる。
また、電子写真方式による複写機やプリンタ等の画像形成装置に対して、本発明の帯電装置を実用化する場合、液体をサプライ品(供給品)として供給する必要がある。現像装置や静電潜像担持体の寿命(メンテナンスサイクル)は、プリント枚数で少なくとも10万枚以上が一般的であるため、帯電装置のサプライ品交換頻度も同様であることが望ましい。
ここで、画像形成装置内に設置内部に設置可能な液体のタンク容量を500ml以下とする場合、本発明の構成によれば、液体の交換頻度と現像装置や静電潜像担持体のメンテナンスサイクルとを略同一頻度(例えば10万枚に一回)とすることが可能となる。
本発明の帯電装置では、前記静電噴霧手段が前記液体に印加する電圧は、2.0kV以下であることが好ましい。
上記の構成によれば、液体に印加する電圧を2.0kV以下とすることにより、放電を伴わずに液体を静電潜像担持体に噴霧することができる。そのため、噴霧状態が安定し、静電潜像担持体を均一に帯電させることができるとともに、オゾンの発生をより抑制することが可能となる。
本発明の帯電装置では、前記静電噴霧手段は、導電性材料からなるノズルを備え、該ノズルは先細り形状になっていることが好ましい。
上記の構成によれば、液体はノズル内を通って、ノズルの先端部に供給されるので、液体が乾燥することを防止することができる。また、ノズルは導電性材料からなるので、ノズル自体に電圧を印加することにより液体に電圧を印加することができる。さらに、ノズルは先細り形状であるので、先端部に電界が集中しやすくなる。従って、上記ノズルは、先端部が細くなっていないノズルに比べて、低電圧の印加によって、液滴を発生させることができる。
本発明の帯電装置では、前記静電噴霧手段は、非導電性材料からなるノズルと、該ノズル内部に設けられた電極とを備えることが好ましい。
上記の構成によれば、液体はノズル内を通って、ノズルの先端部に供給されるので、液体が乾燥することを防止することができる。また、ノズルが非導電性材料からなる場合には、電界が集中しやすいノズル先端において放電が生じる場合があるが、ノズルが非導電性材料からなる上記構成では、上記放電が生じる危険性を低減することができる。また、ノズル内部に電極が設けられているので、この電極によって液体に電圧を印加することができる。
本発明の帯電装置は、前記ノズルの前記液滴を発生させる開口部の外径が10μm以下であることが好ましい。
上記構成によれば、前記ノズルの開口部より生じる液滴のサイズを1μm以下にすることができる。そのため、液体の単位体積あたりにおける電荷供給量が高くなり、電荷の供給効率を向上することができる。
本発明の帯電装置では、前記ノズルが複数個配されていることが好ましい。
上記の構成によれば、複数のノズルから液滴を発生させることができるので、ノズルが一つだけ配置されている場合に比べて、静電潜像担持体表面のより広い面積を同時に帯電させることが可能となる。
本発明の帯電装置では、前記各ノズル間の距離D1と、前記ノズルの前記液滴を発生させる開口部と前記静電潜像担持体表面との間の距離D2とは、D1≦0.8×D2の関係を有していることが好ましい。
上記の構成によれば、前記各ノズルによって噴霧された噴霧範囲の一部が、互いに重なる。これにより、静電潜像担持体表面を、未帯電領域を形成することなく安定的に均一帯電することが可能となる。
本発明の帯電装置では、開状態において前記ノズルを露出させ、閉状態において前記ノズルを覆う開閉部材を備えていることが好ましい。
上記の構成によれば、静電潜像担持体を帯電させるときを除いて、ノズルを覆うことができるので、ノズル内部の液体が乾燥することを防止するとともに、ノズル内部へのダストの付着を防止することができる。
本発明の帯電装置では、帯電停止時において、前記ノズルの前記液滴を発生させる開口部を液体に浸漬させるメンテナンス機構を備えることが好ましい。
上記の構成によれば、前記ノズルの前記液滴を発生させる開口部の外壁面に異物が付着した場合に、前記液体中に前記ノズルの開口部を浸漬させることにより、付着した異物を除去することができる。また、前記ノズルの開口部の内壁面に異物が付着した場合でも、前記ノズルの開口部を前記液体中に浸漬させながら前記ノズル内部の液体を吐出させることにより、付着した異物を除去することができる。このように、前記ノズルの開口部を洗浄することが可能となる。
本発明の帯電装置では、液滴の進行方向に、グリッド電極を有することが好ましい。
例えば、帯電装置にノズルが一定間隔で複数配置されている場合、ノズルの配置によって、液適量の多寡が生じて、ノズルと静電潜像担持体間の電界が不均一になり、静電潜像担持体表面の帯電が不均一になるおそれがある。
本発明の構成によれば、液滴の進行方向に、配置されたグリッド電極によって、一定の間隔を空けて配置されたノズルの影響を低減し、グリッド電極と静電潜像担持体間の電界を均一にすることができる。これにより、静電潜像担持体表面の帯電を均一にすることができる。
本発明の帯電装置では、前記グリッド電極と前記ノズルの前記液滴を発生させる開口部との間の距離D3と、前記開口部の外径Dとは、D3≧10×Dの関係を有していることが好ましい。
上記の構成によれば、静電噴霧によってノズルから供給される電荷は、前記グリッド電極においてほとんど捕集されることなく、70%以上の電荷が静電潜像担持表面に輸送される。このように、静電潜像担持体への電荷供給比率を高く維持することが可能になる。
本発明の画像形成装置では、前記静電潜像担持体上に付着した液滴を乾燥する乾燥装置を備えていることが好ましい。
上記の構成によれば、静電潜像担持体表面の余分な濡れを防止することができる。これにより、電子写真プロセス下流の露光工程や現像工程に悪影響を及ぼさないようにすることができる。
本発明の画像形成装置では、前記乾燥装置は送風機であることが好ましい。
上記の構成によれば、気流によって静電潜像担持体表面を乾燥させるので、乾燥時における静電潜像担持体の劣化を抑制することができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。