JP4421485B2 - 電源遮断時におけるヘッドリトラクト方法及び同方法を適用するディスク記憶装置 - Google Patents

電源遮断時におけるヘッドリトラクト方法及び同方法を適用するディスク記憶装置 Download PDF

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Description

本発明は、ディスクからのデータ読み出し及び当該ディスクへのデータの書き込みに用いられるヘッドを具備するディスク記憶装置に係り、特に、当該ディスク記憶装置の電源の遮断時に上記ヘッドを上記ディスクに近接して配置されたランプにリトラクトするのに好適な電源遮断時におけるヘッドリトラクト方法及び同方法を適用するディスク記憶装置に関する。
記録媒体にディスクを用いたディスク記憶装置の代表として磁気ディスク装置(HDD)が良く知られている。HDDは、ディスクからのデータの読み出し及び当該ディスクへのデータの書き込みに用いられるヘッド(磁気ヘッド)と、ディスクを回転させるスピンドルモータとを備えている。ヘッドは、ディスクの半径方向に移動可能なように、アクチュエータによって支持されている。アクチュエータは、当該アクチュエータの駆動源として用いられるボイスコイルモータを有している。
HDDがヘッドにより即座にリード/ライト可能な動作状態にある期間、当該ヘッドはディスク上に位置する。この状態では、ヘッドはディスクの回転により当該ディスク上を浮上する。そして、ヘッドによるリード/ライトが必要な場合、当該ヘッドはアクチュエータによってディスク上の目標位置に移動される。一方、HDDが非動作状態にある期間は、ヘッドはディスクの記録領域から外れたランプと呼ばれる特定の箇所(退避領域)にリトラクト(退避)されている。
もし、ヘッドがディスク上を浮上している状態で、意図しない電源遮断が発生した場合、当該ヘッドがディスクに吸着する可能性が極めて高い。そこで従来から、HDDの電源の遮断時にヘッドをランプに自動的にリトラクトするためのヘッドリトラクト方法が種々提案されている。このようなヘッドリトラクト方法の1つとして、スピンドルモータの逆起電力とコンデンサに蓄積された電荷とを利用した方法(以下、先行技術と称する)が知られている(例えば、特許文献1参照)。この先行技術による電源遮断時のヘッドリトラクトは、主として第1のリトラクト動作と第2のリトラクト動作とによって実現される。第1のリトラクト動作では、スピンドルモータの逆起電力を利用してボイスコイルモータを駆動することで、ヘッドをランプの近傍(リトラクト切り替え位置)に移動させる。第2のリトラクト動作では、コンデンサに蓄積された電荷を利用してボイスコイルモータを駆動することで、ヘッドをランプに移動させる。
特開2002−298530号公報(段落0030,0043、図5)
最近、HDDの小型化(ディスクの小径化)が進み、1.8インチ型HDD、1インチ型HDD、更には0.85インチ型HDDも出現している。このようなHDDの小型化に伴い、スピンドルモータのトルク(慣性力)も小さくなる。このためHDDの電源の遮断時には、小型のHDD(小径のディスクを搭載したHDD)ほど、スピンドルモータの回転速度が急速に低下する。したがって上記先行技術では、ヘッドがランプにリトラクトされる前にスピンドルモータの回転速度が低下して、ヘッドの浮上高を一定レベルに保つことができなくなる可能性がある。このスピンドルモータの回転速度の低下は、低温になるほど著しい。このため先行技術では、特に低温時に電源遮断が発生した場合、ヘッドがディスクに吸着するのを防止できないおそれがある。
本発明は上記事情を考慮してなされたものでその目的は、小径のディスクを搭載していても、電源遮断時のヘッドリトラクト動作中におけるスピンドルモータの回転速度の低下に起因するヘッドの吸着を防いで、ヘッドをランプに安全にリトラクトできる電源遮断時におけるヘッドリトラクト方法及び同方法を適用するディスク記憶装置を提供することにある。
本発明の1つの観点によれば、スピンドルモータによって回転されるディスクからのデータ読み出し及び当該ディスクへのデータの書き込みに用いられるヘッドを具備するディスク記憶装置に適用され、上記ディスクに近接して配置されたランプに上記ヘッドを上記ディスク記憶装置の電源の遮断に応じてリトラクトするためのヘッドリトラクト方法が提供される。このヘッドリトラクト方法は、上記電源により電荷が蓄積されるスピンドルモータ駆動用コンデンサからの電荷の放電を利用して、上記スピンドルモータに上記電源の遮断に応じて電流を供給することにより、上記スピンドルモータが上記ヘッドの浮上高の許容される下限レベルを維持可能な下限回転速度より低下しないように当該スピンドルモータを駆動するステップと、上記スピンドルモータ駆動用コンデンサからの電荷の放電を利用して、上記ヘッドを支持するアクチュエータを駆動するボイスコイルモータに上記電源の遮断に応じて電流を供給することにより上記ヘッドを上記ランプにリトラクトするためのリトラクト制御を行うステップとを具備する。
上記の構成においては、ディスク記憶装置の電源が遮断した場合に、前記先行技術とは異なって、スピンドルモータ駆動用コンデンサに蓄積された電荷を利用して当該スピンドルモータを駆動することで、ヘッドリトラクト動作が完了するまでの期間、当該スピンドルモータの回転速度を下限回転速度より低下しないように維持することが可能となる。このため、スピンドルモータ駆動用コンデンサからの電荷の放電を利用したボイスコイルモータへの電流供給により、ヘッドをランプにリトラクトするためのリトラクト制御を行うことで、ヘッドリトラクト動作中におけるスピンドルモータの回転速度の低下に起因するヘッドの吸着を防いで、ヘッドをランプに安全にリトラクトできる。
ここで、ディスク記憶装置の動作状態において、上記ヘッドを現在位置から予め定められたリトラクト切り替え位置まで移動するのに要するリトラクト時間を決定しておく一方、上記リトラクト制御を行うステップに、次のステップ、即ち上記電源の遮断時から上記リトラクト時間が経過した時点以降、上記電源により電荷が蓄積されるリトラクト用コンデンサからの電荷の放電及び上記スピンドルモータの逆起電力のうちのいずれか一方を利用して上記ボイスコイルモータに電流を供給するステップを含めると良い。このように、電源の遮断時から上記リトラクト時間が経過した時点以降のリトラクト動作の開始位置を予め定められたリトラクト切り替え位置にほぼ一定化することで、より確実に且つ安全にヘッドをランプにリトラクトすることが可能となる。また、上記リトラクト時間が経過した時点でスピンドルモータ駆動用コンデンサからの電荷の放電が完了したとしても、ボイスコイルモータに電流を供給してリトラクト動作を継続するための電流源として、スピンドルモータ駆動用コンデンサに代えて他の電流源、即ちリトラクト用コンデンサからの電荷の放電及びスピンドルモータの逆起電力のいずれか一方を利用することで、より一層確実に且つ安全にヘッドをランプにリトラクトすることが可能となる。
また、上記スピンドルモータ駆動用コンデンサの静電容量を選ぶことにより、当該コンデンサからの電荷の放電を利用して上記ボイスコイルモータに電流を供給する動作を、上記電源の遮断時から上記リトラクト時間が経過するまでの期間続けることも可能である。また、スピンドルモータ駆動用コンデンサとして静電容量の小さいコンデンサを用いた場合には、上記電源の遮断時から上記リトラクト時間が経過するまでの期間の途中で当該コンデンサからの電荷の放電が完了する可能性がある。このような場合には、上記リトラクト時間が経過するまでの残りの期間は、上記スピンドルモータの逆起電力を利用して上記ボイスコイルモータに電流を供給すれば良い。ここでは、スピンドルモータ駆動用コンデンサからの電荷の放電が進んで、当該コンデンサの電圧がスピンドルモータの逆起電力によって生じる電圧より低下すると、スピンドルモータの逆起電力の利用に自動的に切り替えられる。つまり、コンデンサからの電荷の放電による利用からスピンドルモータの逆起電力の利用への切り替えに特別な仕組みを必要しない。
また、上記とは逆に、電源の遮断時からリトラクト時間が経過するまでの期間のうちの当初の期間はスピンドルモータの逆起電力を利用し、残りの期間はスピンドルモータ駆動用コンデンサからの電荷の放電を利用するようにしても構わない。ここで、電源の遮断時以降、スピンドルモータの回転速度を監視して、当該回転速度が、上記下限回転速度より高く且つ定常回転速度より低い特定回転速度まで低下したことを検出するステップを追加し、この検出時点で、スピンドルモータの逆起電力の利用からスピンドルモータ駆動用コンデンサからの電荷の放電の利用に切り替えるならば、最適な切り替えが実現できる。
本発明によれば、ディスク記憶装置の電源が遮断した場合、当該電源の遮断前にスピンドルモータ駆動用コンデンサに蓄積された電荷を利用して当該スピンドルモータを駆動することにより、スピンドルモータの慣性力だけで当該スピンドルモータを回転させるようにしている先行技術と異なって、たとえ小径のディスクを回転させるスピンドルモータであっても、つまり慣性力(トルク)の小さなスピンドルモータであっても、また低温時であっても、ヘッドリトラクト動作が完了するまでの期間、当該スピンドルモータの回転速度を下限回転速度より低下しないように維持することができる。したがって、このような状態でヘッドリトラクト動作を行うことで、当該ヘッドリトラクト動作中のスピンドルモータの回転速度の低下に起因するヘッドのディスクへの吸着を防ぎ、当該ヘッドを安全にランプにリトラクトできる。
以下、本発明を磁気ディスク装置に適用した実施の形態につき図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態に係る磁気ディスク装置(HDD)の構成を示すブロック図である。図1において、ディスク(磁気ディスク)11は上側と下側の2つのディスク面を有している。ディスク11の2つのディスク面の少なくとも一方のディスク面は、データが磁気記録される記録面をなしている。ディスク11は、例えば0.85インチ型の小径ディスクである。ディスク11の記録面に対応してヘッド(磁気ヘッド)12が配置されている。ヘッド12は、ディスク11からのデータ読み出し及びディスク11へのデータ書き込みに用いられる。図1の構成では、単一枚のディスク11を備えたHDDを想定している。しかし、ディスク11が複数枚スタックされたHDDであっても構わない。
ディスク11の記録面には、同心円状の多数のトラック110が形成されている。各トラック110には、サーボ情報が等間隔で且つ離散的に予め書き込まれて(埋め込まれて)いる。サーボ情報は、ヘッド12を目標トラックに位置付ける制御に必要な位置情報を含む。この位置情報は、サーボ情報が書き込まれているディスク11上のシリンダ(トラック)位置を示すシリンダコードを含む。
ディスク11はスピンドルモータ(SPM)13により高速に回転させられる。SPM13は、例えば3相のブラシレスモータである。ヘッド12はアクチュエータ(キャリッジ)14に取り付けられている。更に具体的に述べるならば、ヘッド12はアクチュエータ14のアーム140から延出したサスペンション141に取り付けられている。サスペンション141の先端にはタブ144が形成されている。ヘッド12は、アクチュエータ14の回動に従ってディスク11の半径方向に移動する。これにより、ヘッド12は、目標トラック上に位置付けられる。アクチュエータ14は、当該アクチュエータ14の駆動源となるボイスコイルモータ(VCM)15を有している。つまりアクチュエータ14はVCM15により駆動される。
ディスク11は内周と外周とを有する。ディスク11の記録面から外れた位置、例えばディスク11の外周に近接する位置には、ランプ16が配置されている。このランプ16が、ディスク11の内周に近接する位置に配置されていても構わない。ランプ16は、HDDが非動作状態にある期間、ヘッド12をディスク11の記録面から外れた箇所にリトラクトさせておくための退避領域(パーキング領域)を提供する。但し実際には、ランプ16上には、ヘッド12ではなくて、タブ144が位置する。そのためランプ16は、タブ144の移動経路上の所定位置に配置されている。ここでは煩雑な表現を避けるため、ヘッド12がランプ16にリトラクトされると表現することもある。一方、HDDが動作状態にある期間、ヘッド12はディスク11上に存在する。
HDDの非動作状態とは、基本的にはHDDの動作停止状態を意味する。HDDの種類によっては、消費電力の節約レベルに応じて複数のパワーセーブ状態が定義されることがある。この種のHDDでは、一定の節約レベルを超える特定のパワーセーブ状態には、ヘッド12はランプ16にリトラクトされる。つまり、この種のHDDでは、当該HDDの非動作状態は、HDDの動作停止状態だけでなく特定のパワーセーブ状態をも含む。一方、HDDの動作状態とは、ディスク11へのデータの書き込みとディスク11からのデータの読み出しが即時に実行可能な状態を意味する。この動作状態が、上記特定のパワーセーブ状態を除くパワーセーブ状態を含むこともある。
アクチュエータ14のほぼ中央部には透孔が形成されている。このアクチュエータ14の透孔には、枢軸142が嵌合されている。アクチュエータ14は、枢軸142の回りで回動自在に支持されている。これにより、ヘッド12は、アーム140及びサスペンション141と一体的に回動して、ディスク11の半径方向に移動する。アクチュエータ14は、アーム141と反対方向に延出している例えばV字形状の支持フレーム143を有している。支持フレーム143には、ボイスコイル150が一体的に埋め込まれている。ボイスコイル150は、トップヨークとボトムヨークとの間に位置する。ボイスコイル150は、これら両ヨークとボトムヨークに固定された永久磁石と共に、VCM15を構成する
図1のHDDには、外周ストッパ17が設けられている。外周ストッパ17は、ヘッド12をランプ16の退避領域にリトラクトした際に、当該ヘッド12がランプ16外に飛び出さないように、アクチュエータ14の動作を規制するのに用いられる。そのために外周ストッパ17は、ヘッド12がランプ16外に飛び出そうとした際に、アクチュエータ14のV字形状支持フレーム143のうち、ディスク11に近い側の先端部143aが当接する位置に配置されている。
SPM13及びVCM15は、モータドライバ18からそれぞれ供給される駆動電流(SPM電流及びVCM電流)により駆動される。モータドライバ18は、HDDの電源の遮断時に、後述する1stリトラクト動作(第1リトラクト動作)と2ndリトラクト動作(第2リトラクト動作)とを順に実行する。モータドライバ18には、コンデンサC1,C2及びC3が接続されている。コンデンサC1,C2及びC3はHDDの動作状態において当該HDDの電源電圧+Vにより充電される。
コンデンサC1は、HDDの電源の遮断時における1stリトラクト動作の中で、SPM13を駆動するための電源(SPM電流源)として用いられるSPM駆動用コンデンサである。このSPM駆動用コンデンサC1は、1stリトラクト動作の中で、VCM15を駆動するための電源(VCM電流源)としても用いられる。1stリトラクト動作とは、HDDの電源の遮断時から1stリトラクト時間だけ、ヘッド12をリトラクト切り替え位置近傍まで一定方向に移動させる動作を指す。このリトラクト切り替え位置は、例えばランプ16の近傍に設定される。本実施形態では、リトラクト切り替え位置は、ディスク11上の外周側の位置に設定される。
コンデンサC2は、2ndリトラクト動作の期間に、VCM15を駆動するための電源(電流源)として用いられる2ndリトラクト用コンデンサである。2ndリトラクト動作とは、1stリトラクト動作の完了時点以降、つまり1stリトラクト動作の実行開始時から1stリトラクト時間が経過した時点以降、ヘッド12をランプ16にリトラクトさせる動作を指す。
コンデンサC3は、HDDの電源の遮断時における1st及び2ndリトラクト動作の期間、モータドライバ18自体(具体的には、後述するSPM制御回路181及びリトラクト制御回路182)の動作(モータ駆動制御)のためのバックアップ電源として用いられるバックアップ用コンデンサである。コンデンサC3は、他のコンデンサC1及びC2とは異なって、モータ駆動(つまり機械的動作)のための電源としては用いられない。このため、コンデンサC3の静電容量は、コンデンサC1及びC2よりも十分小さくても良い。
ヘッド12はヘッドIC(ヘッドアンプ回路)19と接続されている。ヘッドIC19はヘッド12により読み出されたリード信号を増幅するリードアンプ、及びライトデータをライト電流に変換するライトアンプを有する。ヘッドIC19は、リード/ライトIC(リード/ライトチャネル)20と接続されている。リード/ライトIC20は、リード信号のアナログ/ディジタル変換、ライトデータの符号化及びリードデータの復号化を含む各種の信号処理を実行する信号処理デバイスである。
リード/ライトIC20はディスクコントローラ(HDC)21及びCPU22と接続されている。HDC21は、ホスト(ホストシステム)及びCPU22と接続されている。ホストは、図1のHDDを利用する、パーソナルコンピュータのようなデジタル機器である。HDC21は、ホストから転送されるコマンド(リード/ライトコマンド等)の受信を制御すると共にホストと当該HDC21との間のデータ転送を制御するインタフェース制御機能を有する。HDC21はまた、ディスク11と当該HDC21との間のデータ転送を制御するディスク制御機能を有する。
CPU22は図1に示すHDDにおける主コントローラである。CPU22は、フラッシュROM(FROM)221と、RAM222とを含む。FROM221は、CPU22により実行される制御プログラムが予め格納された書き換え可能な不揮発性メモリである。RAM222の記憶領域の一部は、CPU22のワーク領域として用いられる。
CPU22は、ホストからのコマンド(リード/ライトコマンド)で指定された目標トラックにヘッド12を移動するシーク制御時にはリトラクト時間決定回路として機能して、新たなヘッド位置が検出される毎に、そのヘッド位置から予め定められたリトラクト切り替え位置にヘッド12を移動するのに必要な時間(1stリトラクト時間)を算出する。この1stリトラクト時間はドライバIC18内のリトラクト制御回路182(図2参照)に設定される。ここでは、ヘッド位置は、ヘッド12が位置するシリンダ位置である。
図2は、モータドライバ18の構成を周辺回路と共に示す。モータドライバ18は、SPM制御回路181と、リトラクト制御回路182と、電源監視回路183と、充放電制御回路184とを含む。
SPM制御回路181は、HDDの電源が正常な定常状態では、電源ライン185を介して印加される当該HDDの電源電圧+Vによって動作して、SPM13を一定速度(定常回転速度)で回転させるための制御を行う。またSPM制御回路181は、HDDの電源の遮断時(1stリトラクト動作の期間)はバックアップ用コンデンサC3の充電電圧によって動作する。SPM制御回路181は、1stリトラクト動作の期間の当初は、充放電制御回路184の制御によってスピンドルモータ駆動用コンデンサC1から供給される電流(の一部)をSPM電流としてSPM13に供給する。SPM制御回路181はまた、1stリトラクト動作の期間においてコンデンサC1からの電荷の放電が進んだ後は、SPM13の逆起電力から生成される電流をVCM電流としてVCM15に供給する。そのためSPM制御回路181は、SPM13の逆起電力から生成される電流を整流する整流回路(図示せず)を内蔵する。
リトラクト制御回路182は、リトラクトタイマ182aを内蔵する。リトラクトタイマ182aには、新たなヘッド位置が検出される毎にCPU22によって1stリトラクト時間が設定される。リトラクト制御回路182は通常は停止しており、HDDの電源の遮断時(1st及び2ndリトラクト動作の期間)のみバックアップ用コンデンサC3の充電電圧によって動作する。リトラクト制御回路182は、1stリトラクト動作の期間の当初は、充放電制御回路184の制御によってスピンドルモータ駆動用コンデンサC1から供給される電流(の一部)をVCM電流としてVCM15に供給する。リトラクト制御回路182はまた、1stリトラクト動作の期間においてコンデンサC1の放電が完了した後は、SPM13の逆起電力から生成される電流をVCM電流としてVCM15に供給する。リトラクト制御回路182は更に、2ndリトラクト動作の期間は、2ndリトラクト用コンデンサC2から供給される電流をVCM電流としてVCM15に供給する。
電源監視回路183は、HDDの電源の状態を監視して、当該電源の遮断を検出する。ここでは電源監視回路183は、電源ライン185を介して印加されるHDDの電源電圧+Vが一定電圧を下回った場合(または一定割合を超えて低下した場合)に、電源の遮断を検出する。電源監視回路183は電源監視結果を示す電源監視信号183aを出力する。この電源監視信号183aは、HDDの電源が正常な定常状態では例えば低レベル(オフ状態)となり、当該電源が遮断されている状態では高レベル(オン状態)となる。
充放電制御回路184は、コンデンサC1の充放電を制御する。即ち充放電制御回路184は、定常状態(電源監視信号183aが低レベルの状態)では、電源電圧+VによるコンデンサC1の充電を制御し、電源遮断状態(電源監視信号183aが高レベルの状態)では、コンデンサC1からの放電を制御する。なお、図2では、定常状態において動作して、CPU22によって指定されたVCM電流をVCM15に供給するVCM制御回路は省略されている。このVCM制御回路は、周知のように、ヘッド12を目標トラックに移動するシーク制御と、当該ヘッド12を目標トラックの目標位置に位置付ける位置決め制御(トラッキング制御)のために用いられる。
図3は、充放電制御回路184の構成を示す。充放電制御回路184は、ダイオード184a及び184bと、放電開始スイッチとしてのFET(Field Effect Transistor)184cと、電源供給スイッチとしてのFET184dと、インバータ184eとを含む。ダイオード184aのアノードは電源ライン185と接続され、当該ダイオード184aのカソードはコンデンサC1の一端及びFET184cのソースと接続されている。コンデンサC1の他端は接地されている。FET184cのドレインはダイオード184bのアノードと接続され、当該ダイオード184bのアノードはFET184dのドレインとも接続されている。ダイオード184bのカソードはSPM制御回路181及びリトラクト制御回路182dと接続されている。一方、FET184dのソースは電源ライン185と接続されている。FET184cのゲートには電源監視回路183からの電源監視信号183aが供給される。この電源監視信号183aはインバータ184eの入力にも供給される。インバータ184eの出力はFET184dのゲートと接続されている。
次に、本実施形態の動作について、図4及び図5を参照して説明する。なお、図4は電源遮断発生時からヘッドリトラクト動作が完了するまでの時間経過に対するSPM13の回転速度及びVCM電流の変化を示す。図5は、モータドライバ18内の各回路の状態遷移を示す。
まず、図1のHDDに電源電圧+Vが正常に印加されているものとする。この電源電圧+Vは、図1のHDDに設けられたモータドライバ18内の電源監視回路183及び充放電制御回路184にも電源ライン185を介して印加される。電源監視回路183は、電源ライン185を介して印加される電源電圧+Vが正常な定常状態では、電源監視信号183aを低レベルに保つ。
電源監視信号183aが低レベルの期間、充放電制御回路184内のFET184cのゲートは低レベルとなるため、当該FET(放電開始スイッチ)184cはオフ状態となる。充放電制御回路184内のインバータ184eは、電源監視信号183aのレベルを反転する。したがって、インバータ184eの出力、つまり充放電制御回路184内のFET184dのゲートは高レベルとなる。よって、電源監視信号183aが低レベルの期間、FET(電源供給スイッチ)184dはオン状態となる。
このように、電源監視信号183aが低レベルの状態、即ち電源電圧+Vが正常な定常状態では、電源電圧+Vが、電源ライン185からFET184d及びダイオード184bを介して、SPM制御回路181及びリトラクト制御回路182に印加される。SPM制御回路181は、電源電圧+Vが印加されている場合、当該電源電圧+Vに従って動作し、SPM13が定常回転速度で回転するように、当該SPM13を制御する。これに対してリトラクト制御回路182は、電源監視信号183aが低レベルの期間は動作しない。
さて、定常状態では、FET184cがオフ状態にあることから、SPM駆動用コンデンサC1には、ダイオード184aを介して印加される電源電圧+Vによって電荷が蓄積される。これによりコンデンサC1は電圧+Vに充電される。また、定常状態では、電源電圧+Vによって2ndリトラクト用コンデンサC2及びバックアップ用コンデンサC3も電圧+Vに充電される。なお、図2では、コンデンサC2及びC3に電源電圧+Vを印加するための電源ラインは省略されている。
このような状態で、時刻t11でHDDの電源が遮断して、電源ライン185を介して印加される電源電圧+Vが一定電圧よりも低下したものとする。このときリトラクト制御回路182のリトラクトタイマ182aには、その時点においてヘッド12が位置しているシリンダ位置からリトラクト切り替え位置にヘッド12を移動するのに必要な時間、つまり1stリトラクト時間が設定されている。この1stリトラクト時間がT1であるものとする。
電源監視回路183は、電源電圧+Vが一定電圧よりも低下したことを検出すると、HDDの電源の遮断を検出したとして、電源監視信号183aを低レベル(オフ状態)から高レベル(オン状態)に切り替える。すると充放電制御回路184内では、FET184cのゲートが高レベルに遷移すると共に、FET184dのゲートが低レベルに遷移する。これにより、FET184cがオン状態になると共に、FET184dがオフ状態となる。この結果、FET184d及びダイオード184bを介してのSPM制御回路181(及びリトラクト制御回路182)への電源電圧+Vの印加が遮断されると共に、コンデンサC1への電荷の蓄積が停止される。代わりに、定常状態においてSPM駆動用コンデンサC1に蓄積されていた電荷が放電される。これにより、コンデンサC1から放電される電荷の量に対応した電流、つまりコンデンサC1からの電荷の放電により生じる電流が、FET184c及びダイオード184bを介してSPM制御回路181及びリトラクト制御回路182に供給される。このとき、コンデンサC1と電源ライン185との間に接続されているダイオード184aにより、コンデンサC1から電源ライン185に電流が逆流するのが防止される。
SPM制御回路181は、HDDの電源が遮断されると、バックアップ用コンデンサC3をバックアップ電源として、当該コンデンサC3に充電された電圧に従って動作(制御動作)を開始する。ここではSPM制御回路181は、SPM駆動用コンデンサC1から供給される電流をSPM13に供給する。これによりSPM13の回転速度は、時刻t11でHDDの電源が遮断された後も、可能な限り定常回転速度に維持される(図4参照)。この結果、ヘッド12の浮上高が一定レベルを下回るのを防止できる。
一方、リトラクト制御回路182は、HDDの電源が遮断されて電源監視信号183aが高レベルになると、1stリトラクトモードに設定される。するとリトラクト制御回路182は、バックアップ用コンデンサC3をバックアップ電源として、当該コンデンサC3に充電された電圧に従って動作(制御動作)を開始する。ここでは、リトラクト制御回路182内のリトラクトタイマ182aは、電源監視信号183aが高レベルに切り替えられたタイミングで時間カウント動作を開始する。またリトラクト制御回路182は1stリトラクト動作(1stリトラクト制御動作)を開始し、SPM駆動用コンデンサC1から供給される電流を、アクチュエータ14によってヘッド12がリトラクトされるようにVCM15に供給する。すると、VCM15はアクチュエータ14を、ヘッド12がランプ16にリトラクトされる方向に駆動する。
このときSPM13には、上記したように、コンデンサC1から供給される電流がSPM制御回路181によって供給され、SPM13の回転速度が可能な限り定常回転速度に維持される。この状態では、先行技術とは異なって、少なくとも1stリトラクト動作期間の当初は、逆起電力を利用してヘッド12をリトラクトすることはできない。そこで本実施形態では、1stリトラクト動作の当初には、コンデンサC1からの電荷の放電により生じる電流が、リトラクト制御回路182によってVCM15に供給される構成を適用している。これにより、コンデンサC1からの電荷の放電により生じる電流を利用してSPM13を回転させているときも、ヘッド12をリトラクトするためのリトラクト動作を行うことができる。
さて、HDDの電源の遮断時、つまり時刻t11に、コンデンサC1からの電荷の放電が開始されると、時刻t11からの時間経過と共に当該コンデンサC1の電位(ダイオード184aのカソード側の電位)が徐々に低下する。やがて、時刻t11から時間T11(但しT11<T1)が経過した時刻t12で、コンデンサC1の電位が、SPM13の逆起電力によって生じる電位よりも低下したものとする。この場合、コンデンサC1からの電荷の放電は完了し、充放電制御回路184によるコンデンサC1からSPM制御回路181及びリトラクト制御回路182への電流の供給は停止される。代わりに、時刻t12からは、SPM13の逆起電力によって生じる電流が、SPM制御回路181の整流回路を介してリトラクト制御回路182に供給される。リトラクト制御回路182は、SPM13の逆起電力によって生じる電流をVCM15に供給することにより、時刻t12以降も第1リトラクト動作を継続する。このとき、コンデンサC1からSPM制御回路181(及びリトラクト制御回路182)への電流の供給パスに設けられたダイオード184bにより、SPM13の逆起電力によって生じる電流がSPM制御回路181からコンデンサC1側に逆流するのが防止される。
その後、時刻t11から1stリトラクト時間T1が経過すると、つまりリトラクト制御回路182内のリトラクトタイマ182aが時間T1をカウントすると、当該タイマ182aはタイムアウトを発生する。すると、リトラクト制御回路182は、1stリトラクトモードから2ndリトラクトモードに切り替えられる。この時刻がt13であるものとする。この時刻t13、つまり1stリトラクト動作の完了時には、ヘッド12は当該1stリトラクト動作により、リトラクト切り替え位置近傍に移動されている。リトラクト制御回路182は、時刻t13に1stリトラクトモードから2ndリトラクトモードに切り替えられると、2ndリトラクト用コンデンサC2をVCM電流源として用いて2ndリトラクト動作(2ndリトラクト制御動作)を実行する。即ちリトラクト制御回路182は、コンデンサC2から電荷を放電させ、この電荷の放電により生じる電流をVCM電流としてVCM15に供給することにより、ヘッド12をリトラクト切り替え位置近傍からランプ16にリトラクトさせる。ヘッド12がランプ16の退避領域にリトラクトされると、アクチュエータ14の支持フレーム143の先端部143aが外周ストッパ17にラッチされる。
上記したように本実施形態においては、時刻t11から時刻t13までの時間T1(1stリトラクトモードの期間)のうち、時刻t11から時刻t12までの時間T11の間(1stリトラクトモードの当初の期間)は、コンデンサC1から供給される電流を用いて、SPM13が回転されると共に1stリトラクト動作が行われる。一方、時刻t12から時刻t13までの時間がT12(T12=T1−T11)であるとすると、このT12の間(1stリトラクトモードの残りの期間)は、SPM13の逆起電力によって生じる電流を用いて1stリトラクト動作が継続される。そして、時刻t13以降は、2ndリトラクト用コンデンサC2から供給される電流を用いて、2ndリトラクト動作が行われる。
本実施形態では、時刻t12以降は、SPM13は慣性により回転を継続している。即ちSPM13は、先行技術とは異なって、時刻t11から時間T11が経過した時刻t12から慣性により回転を継続する。これによりSPM13の回転速度が、ヘッド12の浮上高を一定レベルに維持するのに必要な下限の速度(浮上下限回転速度)に到達するまでの時間を、先行技術と比べてほぼT11だけ遅らせることができる。
よって本実施形態においては、電源遮断時のヘッドリトラクト動作(1stリトラクト動作に続く2ndリトラクト動作)が完了する前に、SPM13の回転速度が浮上下限回転速度よりも低下するのを防止して、リトラクト動作中にヘッド12がディスク11に吸着するのを防止できる。但し、そのためには、コンデンサC1の静電容量として、以下に述べる第1及び第2の容量を合わせた容量に設計すると良い。第1の容量は、HDDの仕様で動作が保証される最低温度において、ヘッドリトラクトに要する時間の間、ヘッド12の浮上高を保証可能とするSPM13の回転速度(浮上下限回転速度)を維持するのに必要な容量である。第2の容量は、SPM13の逆起電力を利用して、リトラクト動作(2ndリトラクト動作)に必要な電流をVCM15に供給するのに必要な容量である。
なお、上記実施形態に比べてより静電容量の大きいSPM駆動用コンデンサC1を用いるならば、1stリトラクトモードの終端(時刻t13)まで当該コンデンサC1をSPM13の駆動とVCM15の駆動とに利用することも可能である。この場合、時刻t12から時刻t13までの時間T12の間も、上記実施形態とは異なって、コンデンサC1を利用した1stリトラクト動作を続ければ良く、SPM13の逆起電力を利用した1stリトラクト動作を不要とすることができる。
また、外周ストッパ17にマグネットラッチが用いられているならば、ヘッド12がランプ16にリトラクトされた際に、アクチュエータ14の支持フレーム143の先端部143aは、当該ストッパ17に磁力によりラッチされる。したがって、外周ストッパ17にマグネットラッチを用いると、マグネットラッチを用いない場合に比べて、2ndリトラクト動作に必要なVCM電流を低減できる。この場合、時刻t12から時刻t13までの時間T12の間も、コンデンサC1を利用した1stリトラクト動作を続けることが可能となるだけでなく、時刻t13以降はSPM13の逆起電力を利用して2ndリトラクト動作を実行することも可能となる。ここでは、2ndリトラクトコンデンサC2は不要となる。
上記実施形態では、リトラクト切り替え位置がディスク11上の外周側の位置に設定されることを想定している。しかし、リトラクト切り替え位置を、他の位置、例えばランプ16の退避領域に設定することも可能である。そのためには、上記実施形態に比べてより静電容量の大きいコンデンサC1を用いる必要がある。この場合、SPM13の回転速度が浮上下限回転数まで低下することなく、期間T11として上記実施形態よりも長い期間を確保して、時刻t11から期間T11+T12(=T1)が経過する時刻t13に、ヘッド12をランプ16の退避領域、またはその近傍に到達させることが可能となる。ヘッド12がランプ16の退避領域近傍に移動された状態では、アクチュエータ14の支持フレーム143の先端部143aは外周ストッパ17近傍に位置している。この場合、2ndリトラクト動作でVCM15に電流が供給されることにより、ヘッド12がランプ16に移動されている状態で、アクチュエータ14の支持フレーム143が外周ストッパ17に押しつけられることになる。ここでは、2ndリトラクト用コンデンサC2を用いる代わりに、SPM13の逆起電力を利用して2ndリトラクト動作を実行することも可能である。
[変形例]
次に、上記実施形態の変形例について説明する。この変形例の特徴は、上記実施形態とは逆に、1stリトラクト動作の当初の期間はVCM15の駆動にSPM13の逆起電力を用い、残りの期間は当該VCM15の駆動にコンデンサC1を用いることにある。
図6は、上記実施形態の変形例に係るモータドライバ28の構成を周辺回路と共に示す。この変形例では、図1のHDDにおいて、図2の構成のモータドライバ18に代えて、図6の構成のモータドライバ28が用いられる。図6において、図2と同様の部分には同一参照符号を付してある。
モータドライバ28は、SPM制御回路181と、リトラクト制御回路282と、電源監視回路183と、充放電制御回路284と、回転速度監視回路285とを含む。リトラクト制御回路282は図2中のリトラクト制御回路182に相当し、充放電制御回路284は図2中の充放電制御回路184に相当する。
リトラクト制御回路282は、次の第1及び第2の点で、リトラクト制御回路182と相違する。第1は、1stリトラクトモードの当初の期間、SPM制御回路181から供給される、SPM13の逆起電力から生成される電流を、VCM電流としてリトラクト制御回路282がVCM15に供給する点である。第2は、SPM13の回転速度が監視設定回転速度まで低下した場合に、充放電制御回路284によってコンデンサC1から供給される電流を、VCM電流としてリトラクト制御回路282がVCM15に供給する点である。監視設定回転速度は、定常回転速度と同等もしくは低く、浮上下限回転速度よりも高い速度に設定される。リトラクト制御回路282は、リトラクト制御回路182と同様にリトラクトタイマ182aを内蔵する。
充放電制御回路284は、コンデンサC1に蓄積された電荷の放電を開始するタイミングで、充放電制御回路184と相違する。即ち充放電制御回路284は、電源遮断時ではなくて、SPM13の回転速度が監視設定回転速度まで低下した時点で、コンデンサC1に蓄積された電荷の放電を開始する。これによりSPM制御回路181は、SPM13の回転速度が監視設定回転速度まで低下した時点以降、充放電制御回路284によってコンデンサC1から供給される電流を、SPM電流としてSPM13に供給する。
回転速度監視回路285は、SPM制御回路181によって生成される回転速度信号181aを、電源監視信号183aが高レベルの期間監視する。回転速度信号181aは、SPM13の回転速度に比例した周波数の信号であり、当該回転速度で決まる周期で出現するパルスの列からなる。回転速度監視回路285は、回転速度信号181aを監視することで、SPM13の回転速度を監視する。回転速度監視回路285は、SPM13の回転速度が監視設定回転速度と呼ぶ特定回転速度まで低下した場合に、高レベルの監視設定回転速度検出信号(特定回転速度検出信号)285aを出力する。この検出信号285aは、リトラクト制御回路282及び充放電制御回路284に供給される。
図7は、充放電制御回路284の構成を示す。図7において、図3の充放電制御回路184と同様の部分には同一参照符号を付してある。充放電制御回路284が充放電制御回路184と相違するのは、FET184cのゲートに、電源監視信号183aではなくて、監視設定回転速度検出信号285aが供給される点である。
次に、本実施形態の変形例について、図8及び図9を参照して説明する。なお、図8は電源遮断発生時からヘッドリトラクト動作が完了するまでの時間経過に対するSPM13の回転速度及びVCM電流の変化を示す。図9は、モータドライバ28内の各回路の状態遷移を示す。
まず電源監視回路183が、時刻t21でHDDの電源の遮断を検出したものとする。この場合、電源監視回路183は、電源監視信号183aを低レベルから高レベルに切り替える。リトラクト制御回路282内のリトラクトタイマ182aは、電源監視信号183aが高レベルに遷移すると、その時点において当該タイマ182aに設定されている1stリトラクト時間をカウントする動作を開始する。この1stリトラクト時間はT2であり、リトラクト切り替え位置が上記実施形態と同様に、ディスク11上の外周側の位置であるものとする。
またリトラクト制御回路282は、電源監視信号183aが高レベルに遷移すると1stリトラクト動作(1stリトラクト制御動作)を開始する。これによりリトラクト制御回路182は、SPM制御回路181から供給される、SPM13の逆起電力によって生じる電流をVCM電流としてVCM15に供給する。すると、VCM15はアクチュエータ14を、ヘッド12がランプ16にリトラクトされる方向に駆動する。
充放電制御回路284内のFET184cは、電源監視信号183aが高レベルに遷移した時点では、依然としてオフ状態にある。このため、高レベルの電源監視信号183aに応じてリトラクト制御回路282による1stリトラクト動作が開始されても、コンデンサC1からの電荷の放電は開始されない。この場合、SPM13には、SPM制御回路181からSPM電流は供給されず、当該SPM13は慣性により回転を続ける。
一方、回転速度監視回路285は、電源監視信号183aが高レベルに切り替えられると、SPM制御回路181から供給される回転速度信号181aに基づいてSPM13の回転速度を監視する。ここで、時刻t21から慣性により回転を続けていたSPM13の回転速度が、当該時刻t21から1stリトラクト時間より短い時間T21を経過した時刻t22で監視設定回転速度に低下したものとする。すると回転速度監視回路285は、時刻t22で高レベルの監視設定回転速度検出信号285aを出力する。
充放電制御回路284内のFET184cは高レベルの監視設定回転速度検出信号285aに応じてオン状態となる。すると、SPM駆動用コンデンサC1に蓄積されていた電荷の放電が、時刻t22から開始される。これにより、コンデンサC1からの電荷の放電により生じる電流が、FET184c及びダイオード184bを介してSPM制御回路181及びリトラクト制御回路282に供給される。
SPM制御回路181は、コンデンサC1から供給される電流(の一部)をSPM電流としてSPM13に供給する。これにより、監視設定回転速度に低下したSPM13の回転速度は、時刻22以降、可能な限り当該監視設定回転速度に維持される(図8参照)。この結果、時刻22以降もヘッド12の浮上高が一定レベルを下回るのを防止できる。
一方、リトラクト制御回路282は、時刻t22で監視設定回転速度検出信号285aが高レベルになると、コンデンサC1から供給される電流(の一部)をVCM電流としてVCM15に供給する。これにより、時刻t22以降も1stリトラクト動作が継続される。このように、上記実施形態の変形例では、HDDの電源の遮断が発生した時刻t21から、SPM13の回転速度が監視設定回転速度まで低下した時刻t22までの期間T21は、SPM13の逆起電力を用いて1stリトラクト動作が行われる。そして時刻t22以降は、コンデンサC1を用いて1stリトラクト動作が継続される。このコンデンサC1を用いた1stリトラクト動作は、時刻t22から時刻t21を基準とする1stリトラクト時間T2が経過する時刻t23までの期間T22、つまり時刻t22からリトラクトタイマ182aのタイムアウトが発生する時刻t23までの期間T22だけ続けられる。リトラクト制御回路282は、時刻t23においてリトラクトタイマ182aのタイムアウトが発生すると、上記実施形態におけるリトラクト制御回路182と同様に、2ndリトラクト用コンデンサC2をVCM電流源として用いて2ndリトラクト動作を開始する。即ちリトラクト制御回路282は、コンデンサC2から供給される電流をVCM電流としてVCM15に供給する。
上記実施形態の変形例では、リトラクト切り替え位置がディスク11上の外周側の位置に設定されることを想定している。しかし、リトラクト切り替え位置を、他の位置、例えばランプ16の退避領域に設定することも可能である。この場合、上記変形例に比べてより静電容量の大きいコンデンサC1を用いることにより、SPM13の回転速度が浮上下限回転数まで低下することなく、時刻t22から期間T22が経過する時刻t23にヘッド12をランプ16の退避領域、またはその近傍に到達させることが可能となる。ここでは、2ndリトラクト動作でVCM15に電流が供給されることにより、ヘッド12がランプ16に移動されている状態で、アクチュエータ14の支持フレーム143が外周ストッパ17に押しつけられる。この場合、2ndリトラクト用コンデンサC2を用いる代わりに、SPM13の逆起電力を利用して2ndリトラクト動作を実行することも可能である。
図10に、上記実施形態及びその変形例で説明した、VCM15を駆動するためのVCM電流源の組み合わせについて、SPM13の駆動の有無と併せて示す。なお、図10中のT*1及びT*2(*=1,2)は、それぞれ、電源の遮断時から1stリトラクト時間T*が経過するまでの期間における当初の期間及び残りの期間を表す。
なお、本発明は、上記実施形態またはその変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態またはその変形例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態またはその変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
本発明の一実施形態に係る磁気ディスク装置(HDD)の構成を示すブロック図。 図1中のモータドライバ18の構成を周辺回路と共に示すブロック図。 図2中の充放電制御回路184の構成を示す図。 同実施形態における電源遮断発生時からヘッドリトラクト動作が完了するまでの時間経過に対するSPM13の回転速度及びVCM電流の変化を示す図。 同実施形態におけるモータドライバ18内の各回路の状態遷移を示す図。 上記実施形態の変形例に係るモータドライバ28の構成を周辺回路と共に示すブロック図。 図6中の充放電制御回路284の構成を示すブロック図。 同変形例における電源遮断発生時からヘッドリトラクト動作が完了するまでの時間経過に対するSPM13の回転速度及びVCM電流の変化を示す図。 同変形例におけるモータドライバ28内の各回路の状態遷移を示す図。 VCM15を駆動するためのVCM電流源の組み合わせについて、SPM13の駆動の有無と併せて示すマトリクス図。
符号の説明
11…ディスク、12…ヘッド、13…スピンドルモータ(SPM)、14…アクチュエータ、15…ボイスコイルモータ(VCM)、16…ランプ、17…外周ストッパ、18,28…モータドライバ、22…CPU(リトラクト時間決定回路)、181…SPM制御回路、182,282…リトラクト制御回路、182a…リトラクトタイマ、183…電源監視回路、184,284…充放電制御回路、285…回転速度監視回路、C1…SPM駆動用コンデンサ、C2…2ndリトラクト用コンデンサ、C3…バックアップ用コンデンサ(バックアップ電源)。

Claims (16)

  1. スピンドルモータによって回転されるディスクからのデータ読み出し及び当該ディスクへのデータの書き込みに用いられるヘッドを具備するディスク記憶装置に適用され、前記ディスクに近接して配置されたランプに前記ヘッドを前記ディスク記憶装置の電源の遮断に応じてリトラクトするためのヘッドリトラクト方法において、
    前記電源により電荷が蓄積されるスピンドルモータ駆動用コンデンサからの電荷の放電を利用して、前記スピンドルモータに前記電源の遮断に応じて電流を供給することにより、前記スピンドルモータが前記ヘッドの浮上高の許容される下限レベルを維持可能な下限回転速度より低下しないように当該スピンドルモータを駆動するステップと、
    前記スピンドルモータ駆動用コンデンサからの電荷の放電を利用して、前記ヘッドを支持するアクチュエータを駆動するボイスコイルモータに前記電源の遮断に応じて電流を供給することにより前記ヘッドを前記ランプにリトラクトするためのリトラクト制御を行うステップと
    を具備することを特徴とするヘッドリトラクト方法。
  2. 前記ディスク記憶装置の動作状態において、前記ヘッドを現在位置から予め定められたリトラクト切り替え位置まで移動するのに要するリトラクト時間を決定するステップを更に具備し、
    前記リトラクト制御を行うステップは、前記電源の遮断時から前記リトラクト時間が経過した時点以降、前記電源により電荷が蓄積されるリトラクト用コンデンサからの電荷の放電及び前記スピンドルモータの逆起電力のうちのいずれか一方を利用して前記ボイスコイルモータに電流を供給するステップを含む
    ことを特徴とする請求項1記載のヘッドリトラクト方法。
  3. 前記リトラクト制御を行うステップは、前記電源の遮断時から前記リトラクト時間が経過するまでの期間のうちの少なくとも当初の期間、前記スピンドルモータ駆動用コンデンサからの電荷の放電を利用して前記ボイスコイルモータに電流を供給するステップを含むことを特徴とする請求項2記載のヘッドリトラクト方法。
  4. 前記スピンドルモータ駆動用コンデンサの静電容量は、少なくとも前記リトラクト時間が経過するまでは当該スピンドルモータ駆動用コンデンサからの電荷の放電が継続し、且つ前記ヘッドが前記リトラクト切り替え位置に到達するのに十分な値に選定されており、
    前記スピンドルモータ駆動用コンデンサからの電荷の放電を利用して前記ボイスコイルモータに電流を供給するステップは前記リトラクト時間が経過するまで実行されることを特徴とする請求項3記載のヘッドリトラクト方法。
  5. 前記リトラクト制御を行うステップは、前記電源の遮断時から前記リトラクト時間が経過するまでに前記スピンドルモータ駆動用コンデンサからの電荷の放電が完了した場合に、前記リトラクト時間が経過するまでの残りの期間、前記スピンドルモータの逆起電力を利用して前記ボイスコイルモータに電流を供給するステップを含むことを特徴とする請求項3記載のヘッドリトラクト方法。
  6. 前記リトラクト制御を行うステップは、
    前記電源の遮断時から前記リトラクト時間が経過するまでの期間のうちの当初の期間、前記スピンドルモータの逆起電力を利用して前記ボイスコイルモータに電流を供給するステップと、
    前記電源の遮断時から前記リトラクト時間が経過するまでの期間のうちの前記当初の期間を除く残りの期間、前記スピンドルモータ駆動用コンデンサからの電荷の放電を利用して前記ボイスコイルモータに電流を供給するステップと
    を含むことを特徴とする請求項2記載のヘッドリトラクト方法。
  7. 前記電源の遮断時以降、前記スピンドルモータの回転速度を監視して、当該回転速度が、前記下限回転速度より高く且つ定常回転速度より低い特定回転速度まで低下したことを検出するステップを更に具備し、
    前記スピンドルモータの逆起電力を利用して前記ボイスコイルモータに電流を供給するステップは、前記電源の遮断時から前記スピンドルモータの回転速度が前記特定回転速度まで低下したことが検出される時点までの期間、前記当初の期間として実行される
    ことを特徴とする請求項6記載のヘッドリトラクト方法。
  8. ディスクからのデータの読み出し及び当該ディスクへのデータの書き込みにヘッドが用いられるディスク記憶装置において、
    前記ディスクを回転させるスピンドルモータと、
    前記ヘッドを前記ディスクの半径方向に移動可能に支持するアクチュエータと、
    前記アクチュエータを駆動するボイスコイルモータと、
    前記ヘッドがリトラクトされる、前記ディスクに近接して配置されたランプと、
    前記ディスク記憶装置の電源により電荷が蓄積されるスピンドルモータ駆動用コンデンサと、
    前記電源の状態を監視して、当該電源の遮断を検出する電源監視回路と、
    前記電源により前記スピンドルモータ駆動用コンデンサに電荷を蓄積させ、当該スピンドルモータ駆動用コンデンサに蓄積されている電荷を前記電源監視回路による電源遮断検出に応じて放電させる充放電制御回路と、
    前記スピンドルモータ駆動用コンデンサからの電荷の放電を利用して、前記スピンドルモータに前記電源監視回路による電源遮断検出に応じて電流を供給することにより、前記スピンドルモータが前記ヘッドの浮上高の許容される下限レベルを維持可能な下限回転速度より低下しないように当該スピンドルモータを駆動するスピンドルモータ制御回路と、
    前記スピンドルモータ駆動用コンデンサからの電荷の放電を利用して、前記ヘッドを支持するアクチュエータを駆動するボイスコイルモータに前記電源遮断検出に応じて電流を供給することにより前記ヘッドを前記ランプにリトラクトするためのリトラクト制御を行うリトラクト制御回路と
    を具備することを特徴とするディスク記憶装置。
  9. 前記ディスク記憶装置の前記電源が遮断した場合において、前記スピンドルモータ制御回路及び前記リトラクト制御回路の動作を可能とするためのバックアップ電源を更に具備することを特徴とする請求項8記載のディスク記憶装置。
  10. 前記ディスク記憶装置の電源により電荷が蓄積されるリトラクト用コンデンサと、
    前記ディスク記憶装置の動作状態において、前記ヘッドを現在位置から予め定められたリトラクト切り替え位置まで移動するのに要するリトラクト時間を決定するリトラクト時間決定回路とを更に具備し、
    前記リトラクト制御回路は、前記電源遮断検出時から前記リトラクト時間が経過した時点以降、前記リトラクト用コンデンサからの電荷の放電を利用して前記ボイスコイルモータに電流を供給することを特徴とする請求項8記載のディスク記憶装置。
  11. 前記ディスク記憶装置の電源により電荷が蓄積されるリトラクト用コンデンサと、
    前記ディスク記憶装置の動作状態において、前記ヘッドを現在位置から予め定められたリトラクト切り替え位置まで移動するのに要するリトラクト時間を決定するリトラクト時間決定回路とを更に具備し、
    前記リトラクト制御回路は、前記電源遮断検出時から前記リトラクト時間が経過した時点以降、前記スピンドルモータの逆起電力を利用して前記ボイスコイルモータに電流を供給することを特徴とする請求項8記載のディスク記憶装置。
  12. 前記リトラクト制御回路は、前記電源遮断検出時から前記リトラクト時間が経過するまでの期間のうちの少なくとも当初の期間、前記スピンドルモータ駆動用コンデンサからの電荷の放電を利用して前記ボイスコイルモータに電流を供給することを特徴とする請求項10または請求項11記載のディスク記憶装置。
  13. 前記リトラクト制御回路は、前記電源遮断検出時から前記リトラクト時間が経過するまでに前記スピンドルモータ駆動用コンデンサからの電荷の放電が完了した場合に、前記リトラクト時間が経過するまでの残りの期間、前記スピンドルモータの逆起電力を利用して前記ボイスコイルモータに電流を供給することを特徴とする請求項10または請求項11記載のディスク記憶装置。
  14. 前記リトラクト制御回路は、前記電源遮断検出時から前記リトラクト時間が経過するまでの期間のうちの当初の期間、前記スピンドルモータの逆起電力を利用して前記ボイスコイルモータに電流を供給し、前記電源遮断検出時から前記リトラクト時間が経過するまでの期間のうちの前記当初の期間を除く残りの期間、前記スピンドルモータ駆動用コンデンサからの電荷の放電を利用して前記ボイスコイルモータに電流を供給することを特徴とする請求項10または請求項11記載のディスク記憶装置。
  15. 前記電源遮断検出時以降、前記スピンドルモータの回転速度を監視して、当該回転速度が、前記下限回転速度より高く且つ定常回転速度より低い特定回転速度まで低下したことを検出する回転速度監視回路を更に具備し、
    前記リトラクト制御回路は、前記電源遮断検出時から前記スピンドルモータの回転速度が前記特定回転速度まで低下したことが前記回転速度監視回路によって検出される時点までの期間を前記当初の期間として、前記スピンドルモータの逆起電力を利用して前記ボイスコイルモータに電流を供給することを特徴とする請求項14記載のディスク記憶装置。
  16. 前記ディスク記憶装置の前記電源が遮断した場合において、前記スピンドルモータ制御回路、前記リトラクト制御回路及び前記回転速度監視回路の各々の動作を可能とするためのバックアップ電源を更に具備することを特徴とする請求項15記載のディスク記憶装置。
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