JP4420577B2 - シリコンウェハの窒化処理方法及び窒化処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、常圧プラズマ法によりシリコンウェハ表面に窒化珪素膜を形成するシリコンウェハの窒化処理方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、半導体素子の一般的構成としては、基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、シリコン膜、ソース電極、ドレイン電極、パシベーション膜(保護膜)等からなっている。ここで、基材としては、ガラス基板又はウェハ基板等からなり、電極としては、Al、Cu等の金属又は金属化合物等からなり、パシベーション膜を含む層間絶縁体としては、酸化珪素、窒化珪素、炭化珪素等からなり、シリコン層としては、Si単結晶層、a−Si層及びa−SiにP、B、As、Ge等をドーピングした材料等からなっている。
【0003】
上記ゲート絶縁膜としては、主としてシリコン酸化膜が用いられているが、素子寸法の微細化、動作速度の高速化等の高特性化に伴い、ゲート絶縁膜には酸化珪素膜(誘電率3.9)よりも誘電率の大きい窒化珪素膜(誘電率7.9)を採用する検討がなされている。
【0004】
しかし、PCVDやCVD法等の通常の成膜法により成膜した窒化珪素膜は、膜中に電子またはホールトラップが多く存在し、信頼性に乏しいという問題がある。また、均一で数nm程度の窒化珪素膜を安定して形成する必要があるが、従来の方法では均一な膜厚を再現性良く成膜するのは困難という問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、シリコンウェハ表面への窒化珪素膜の形成において、膜中の電子またはホールトラップのない窒化珪素膜を形成する方法及びその装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、大気圧条件下で安定した放電状態を実現できる常圧プラズマ法を用いることにより、低温下で、簡便に、良質な窒化珪素膜をシリコンウェハ表面に形成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明は、対向する一対の電極の少なくとも一方の対向面に固体誘電体を設置した窒化処理装置を用意し、大気圧近傍の圧力下で上記一対の対向電極間に窒素含有ガスを導入してパルス状の電界を印加することにより得られるプラズマをシリコンウェハに接触させ、シリコンウェハの表面を窒化し、上記窒素含有ガスが、窒素ガス、又は窒素と窒素以外の不活性ガスとの混合ガスであり、かつ水素原子を含まないことを特徴とするシリコンウェハの窒化処理方法である。
【0008】
また、本発明の第2の発明は、上記窒素含有ガスが、100%の窒素ガスであることを特徴とする第1の発明に記載のシリコンウェハの窒化処理方法である。
【0009】
また、本発明の第3の発明は、パルス状の電界が、パルス立ち上がり及び/又は立ち下がり時間が20μs以下、電界強度が20〜400kV/cmであることを特徴とする第1又は2の発明に記載のシリコンウェハの窒化処理方法である。
【0010】
また、本発明の第4の発明は、パルス状の電界が、周波数が0.5〜100kHz、パルス継続時間が1〜100μsであることを特徴とする第1〜3のいずれかの発明に記載のシリコンウェハの窒化処理方法である。
【0011】
また、本発明の第5の発明は、シリコンウェハの表面を大気圧近傍の圧力下で窒化する窒化処理装置であって、少なくとも一方の対向面に固体誘電体が設置された一対の対向電極と、当該一対の対向電極間に窒素含有ガスを導入する機構、該電極間にパルス状の電界を印加する機構、該パルス電界により得られるプラズマをシリコンウェハに接触させる機構を備えてなり、上記窒素含有ガスが、窒素ガス、又は窒素と窒素以外の不活性ガスとの混合ガスであり、かつ水素原子を含まず、プラズマをシリコンウェハに接触させる機構が、上記対向電極間で発生したプラズマをシリコンウェハに向かって吹き出す吹き出し口を含むことを特徴とするシリコンウェハ表面の窒化処理装置である。
【0012】
本発明の第5の発明では、対向電極間で発生したプラズマを上記吹き出し口からシリコンウェハに向かって導き、シリコンウェハに接触させる。
【0013】
また、本発明の第6の発明は、プラズマをシリコンウェハに接触させる機構が、予備放電後に上記プラズマをシリコンウェハに接触させることを特徴とする第5の発明に記載の窒化処理装置である。
【0014】
また、本発明の第7の発明は、第5又は第6の発明に記載の装置において、さらに、シリコンウェハを搬送する機構を具備する窒化処理装置である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明は、常圧プラズマ法による半導体素子に用いるシリコンウェハ表面に窒化珪素膜を形成するシリコンウェハの窒化処理方法及び装置であって、大気圧近傍の圧力下で、対向する一対の電極の少なくとも一方の対向面に固体誘電体を設置し、当該一対の対向電極間に窒素含有ガスを導入し、当該電極間にパルス状の電界を印加することにより、得られる該ガスのプラズマをシリコンウェハに接触させて、シリコンウェハ上に窒化珪素膜を形成する方法である。以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
上記大気圧近傍の圧力下とは、1.333×104〜10.664×104Paの圧力下を指す。中でも、圧力調整が容易で、装置が簡便になる9.331×104〜10.397×104Paの範囲が好ましい。
【0017】
本発明の窒化珪素膜の形成における処理ガスの窒素含有ガスとしては、窒素ガス又は窒素ガスと不活性ガスの混合ガスが好ましい。不活性ガスとしては、アルゴン、ネオン、キセノン、ヘリウム等が挙げられ、これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。窒素ガス含有量は、10〜100体積%が好ましく、より好ましくは20〜100体積%である。本発明の方法では、窒素ガス100%でも処理できるところに特徴がある。
【0018】
なお、本発明においては、処理ガス中に酸素原子、水素原子、ハロゲン原子を含まないことが好ましい。このうち水素については、従来の熱酸化法ではNH3を用いるために膜中にSi−H結合、N−H結合等が混入することは避けられず、耐熱性の劣る原因となっていたが、本発明の方法により窒素ガス又は窒素ガスと不活性ガスの混合ガス中で処理を行えば、耐熱性の良好なSiN膜を得ることができる。
【0019】
上記電極としては、銅、アルミニウム等の金属単体、ステンレス、真鍮等の合金、金属間化合物等からなるものが挙げられる。電極の形状としては、特に限定されないが、電界集中によるアーク放電の発生を避けるために、対向電極間の距離が一定となる構造であることが好ましい。この条件を満たす電極構造としては、例えば、平行平板型、円筒対向平板型、球対向平板型、双曲対向平板型、同軸円筒型構造等が挙げられる。
【0020】
また、略一定構造以外では、円筒対向円筒型で円筒曲率の大きなものもアーク放電の原因となる電界集中の度合いが小さいので対向電極として用いることができる。曲率は少なくとも半径20mm以上が好ましい。固体誘電体の誘電率にもよるが、それ以下の曲率では、電界集中によるアーク放電が集中しやすい。それぞれの曲率がこれ以上であれば、対向する電極の曲率が異なっても良い。曲率は大きいほど近似的に平板に近づくため、より安定した放電が得られるので、より好ましくは半径40mm以上である。
【0021】
さらに、プラズマを発生させる電極は、一対のうち少なくとも一方に固体誘電体が配置されていれば良く、一対の電極は、短絡に至らない適切な距離をあけた状態で対向してもよく、直交してもよい。
【0022】
上記固体誘電体は、電極の対向面の一方又は双方に設置される。この際、固体誘電体と設置される側の電極が密着し、かつ、接する電極の対向面を完全に覆うようにすることが好ましい。固体誘電体によって覆われずに電極同士が直接対向する部位があると、そこからアーク放電が生じやすいためである。
【0023】
上記固体誘電体の形状は、シート状でもフィルム状でもよく、厚みが0.01〜4mmであることが好ましい。厚すぎると放電プラズマを発生するのに高電圧を要することがあり、薄すぎると電圧印加時に絶縁破壊が起こり、アーク放電が発生することがある。また、固体誘電体の形状として、容器型のものも用いることができる。
【0024】
固体誘電体の材質としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック、ガラス、二酸化珪素、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン等の金属酸化物、チタン酸バリウム等の複酸化物、及びこれらの複層化したもの等が挙げられる。
【0025】
特に、固体誘電体は、比誘電率が2以上(25℃環境下、以下同じ)であることが好ましい。比誘電率が2以上の誘電体の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン、ガラス、金属酸化膜等を挙げることができる。さらに高密度の放電プラズマを安定して発生させるためには、比誘電率が10以上の固定誘電体を用いことが好ましい。比誘電率の上限は特に限定されるものではないが、現実の材料では18,500程度のものが知られている。比誘電率が10以上の固体誘電体としては、例えば、酸化チタニウム5〜50重量%、酸化アルミニウム50〜95重量%で混合された金属酸化物皮膜、または、酸化ジルコニウムを含有する金属酸化物皮膜からなり、その被膜の厚みが10〜1000μmであるものを用いることが好ましい。
【0026】
上記電極間の距離は、固体誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して適宜決定されるが、1〜50mmであることが好ましい。1mm未満では、電極間の間隔を置いて設置するのに充分でないことがある。50mmを超えると、均一な放電プラズマを発生させにくい。
【0027】
本発明のパルス電界について説明する。図1にパルス電圧波形の例を示す。波形(a)、(b)はインパルス型、波形(c)はパルス型、波形(d)は変調型の波形である。図1には電圧印加が正負の繰り返しであるものを挙げたが、正又は負のいずれかの極性側に電圧を印加するタイプのパルスを用いてもよい。また、直流が重畳されたパルス電界を印加してもよい。本発明におけるパルス電界の波形は、ここで挙げた波形に限定されず、さらに、パルス波形、立ち上がり時間、周波数の異なるパルスを用いて変調を行ってもよい。上記のような変調は高速連続表面処理を行うのに適している。
【0028】
上記パルス電界の立ち上がり及び/又は立ち下がり時間は、20μs以下が好ましい。20μsを超えると放電状態がアークに移行しやすく不安定なものとなり、パルス電界による高密度プラズマ状態を保持しにくくなる。また、立ち上がり時間及び立ち下がり時間が短いほどプラズマ発生の際のガスの電離が効率よく行われるが、40ns未満の立ち上がり時間のパルス電界を実現することは、実際には困難である。より好ましくは50ns〜5μsである。なお、ここでいう立ち上がり時間とは、電圧(絶対値)が連続して増加する時間、立ち下がり時間とは、電圧(絶対値)が連続して減少する時間を指すものとする。
【0029】
また、パルス電界の立ち下がり時間も急峻であることが好ましく、立ち上がり時間と同様の20μs以下のタイムスケールであることが好ましい。パルス電界発生技術によっても異なるが、立ち上がり時間と立ち下がり時間とが同じ時間に設定できるものが好ましい。
【0030】
上記パルス電界の電界強度は、20〜400kV/cmとなるようにするのが好ましい。電界強度が20kV/cm未満であると処理に時間がかかりすぎ、400kV/cmを超えるとアーク放電が発生しやすくなる。
【0031】
上記パルス電界の周波数は、0.5〜100kHzであることが好ましい。0.5kHz未満であるとプラズマ密度が低いため処理に時間がかかりすぎ、100kHzを超えるとアーク放電が発生しやすくなる。より好ましくは、1〜100kHzであり、このような高周波数のパルス電界を印加することにより、処理速度を大きく向上させることができる。
【0032】
また、上記パルス電界におけるひとつのパルス継続時間は、1〜100μsであることが好ましい。1μs未満であると放電が不安定なものとなり、100μsを超えるとアーク放電に移行しやすくなる。より好ましくは、1〜50μsである。ここで、ひとつのパルス継続時間とは、図1中に例を示してあるが、ON、OFFの繰り返しからなるパルス電界における、ひとつのパルスの連続するON時間を言う。
【0033】
本発明の処理材料は、シリコンウェハであり、本発明のプラズマ処理による窒化珪素膜の形成は、シリコンウェハ温度を200〜400℃にすることが好ましく、より好ましくは200〜300℃である。
【0034】
プラズマをシリコンウェハに接触させる手段としては、例えば、(1)対向する電極間で発生するプラズマの放電空間内にシリコンウェハを配置して、シリコンウェハにプラズマを接触させる方法、及び(2)対向する電極間で発生させたプラズマを放電空間の外に配置されたシリコンウェハに向かって導くようにして接触させる方法(リモート型)がある。
【0035】
上記(1)の具体的方法としては、固体誘電体で被覆した平行平板型電極間にシリコンウェハを配置し、プラズマと接触させる方法であって、多数の穴を有する上部電極を用い、シャワー状プラズマで処理する方法、シリコウェハを走行させる方法、一方の電極に吹き出し口ノズルを有する容器状固体誘電体を設け、該ノズルからプラズマを他の電極上に配置したシリコンウェハに吹き付ける方法等が挙げられる。
【0036】
また、上記(2)の具体的方法としては、固体誘電体が延長されてプラズマ誘導ノズルを形成しており、放電空間の外に配置されたシリコンウェハに向けて吹き付ける方法等が挙げられ、平行平板型電極と長尺型ノズル、同軸円筒型電極と円筒型ノズルの組み合わせを用いることができる。なお、ノズル先端の材質は、必ずしも上記の固体誘電体である必要がなく、上記電極と絶縁がとれていれば金属等でもかまわない。
【0037】
これらの中でも、ガス吹き出し口ノズルを有する固体誘電体を通して、対向電極間で発生したプラズマをシリコンウェハに吹き付ける方法は、シリコンウェハが直接高密度プラズマ空間にさらされることが少なく、シリコンウェハ表面の目的とする箇所にのみにプラズマ状態のガスを運び、窒化珪素膜の形成を行うことができるので、シリコンウェハへの電気的熱的負担が軽減された好ましい方法である。さらに、被処理基材のシリコンウェハ側にバイアス印加することによって、窒化を促進することができる。
【0038】
本発明のプラズマ処理による窒化珪素膜の形成においては、膜質向上のためにプラズマの発生直後から放電が安定するまでの間、予備放電を行い、その後被処理基材に接触させるとよい。
【0039】
また、シリコンウェハや窒化珪素膜が大気中の湿潤空気やその他の不純物に接触することを防ぐ意味で、不活性ガス雰囲気で処理を行うようにすることができ、このために、上記プラズマをシリコンウェハに接触させて窒化珪素膜を形成する装置に加えて、プラズマとシリコンウェハとの接触部近傍を不活性ガス雰囲気に保つ機構を付加した装置を用いることができる。
【0040】
また、シリコンウェハを搬送する手段としては、搬送コンベア、搬送ロボット等の搬送系を用いることができる。
【0041】
図で本発明の方法及び装置を具体的に説明する。図2は、平行平板型電極からなる長尺ノズルを用いた装置を用いてプラズマをシリコンウェハに吹き付ける装置の一例を示す図である。1はパルス電源、2及び3は電極、4は固体誘電体、5は処理ガス導入口、6は放電空間、7はプラズマガス吹き出し口、10は支持台、14はシリコンウェハをそれぞれ表す。
【0042】
図2において、例えば、処理ガスは、ガス導入口5から固体誘電体で被覆された電極2及び3間にパルス電界を印加することによって放電空間6で励起され、プラズマガスとして吹き出し口7から吹き出され、支持台10上のシリコンウェハ14の表面の窒化処理を行い、シリコンウェハ表面上に窒化珪素膜を形成する。なお、支持台10として、搬送ベルト等の送りスピードを任意に調整できるものを用いることにより形成膜厚の制御が可能となる。さらに支持台10には加熱機構を有するものが好ましい。
【0043】
図3は、平行平板型電極からなる長尺ノズルを用いた装置を用いてプラズマをシリコンウェハに吹き付ける装置の一例を示す図である。1はパルス電源、2及び3は電極、4は固体誘電体、5は処理ガス導入口、6は放電空間、7はプラズマガス吹き出し口、10は支持台、12は直流電源、14はシリコンウェハをそれぞれ表す。
【0044】
図3において、例えば、処理ガスは、ガス導入口5から固体誘電体で被覆された電極2及び3間にパルス電界を印加することによって放電空間6で励起され、プラズマガスとして吹き出し口7から吹き出され、シリコンウェハ14の表面の窒化処理を行い、シリコンウェハ表面上に窒化珪素膜を形成する。その際、シリコンウェハ側に直流電源12によりバイアスを印加すると窒化膜の形成が促進される。なお、支持台10として、搬送ベルト等の送りスピードを任意に調整できるものを用いることにより形成膜厚の制御が可能となる。さらに支持台10には加熱機構を有するものが好ましい。
【0045】
本発明のパルス電界を用いた大気圧放電では、全くガス種に依存せず、電極間において直接大気圧下で放電を生じせしめることが可能であり、より単純化された電極構造、放電手順による大気圧プラズマ装置、及び処理手法で低温下に高速処理を実現することができる。また、パルス周波数、電圧、電極間隔等のパラメータにより窒化珪素膜の形成に関するパラメータも調整できる。
【0046】
【実施例】
本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0047】
実施例1
図2に示す装置を用いて、シリコンウェハ(200mmφ)上にSiN膜を形成した。平行平板対向型長尺ノズルは、アルミニウム製の電極2及び3にアルミナ製の固体誘電体4が溶射され、プラズマ吹き出し口のスリット間隔2mm、シリコンウェハまでの距離を5mmとした。
【0048】
処理ガスとして、100%の窒素ガスを流量10l/minで、ガス導入口5から導入し、電極2と3間に周波数20kHz、図1(a)に示すパルス波形、パルス立上がり/立下がり速度5μs、電圧20kVを印加し、95kPa(大気圧)下で放電させ、プラズマを発生させ、400℃に調整したシリコンウェハに吹き付け、シリコンウェハを処理した。
【0049】
処理後のシリコンウェハ上には、処理時間40分で、1nmのSiN膜が形成されたのを確認した。処理面をESCAで観察したところ、全面的に深さ方向で、Si/Nが1.3となっていた。
【0050】
実施例2
図3に示す装置を用いて、シリコンウェハ(200mmφ)上にSiN膜を形成した。平行平板対向型長尺ノズルは、アルミニウム製の電極2及び3にアルミナ製の固体誘電体4が溶射され、プラズマ吹き出し口のスリット間隔2mm、シリコンウェハまでの距離を5mmとし、シリコンウェハ側に直流電圧を印加できるようにした。
【0051】
処理ガスとして、100%の窒素ガスを流量10l/minで、ガス導入口5から導入し、電極2と3間に周波数20kHz、図1(a)に示すパルス波形、パルス立上がり/立下がり速度5μs、電圧20kVを印加し、95kPa(大気圧)下で放電させ、プラズマを発生させ、さらに、基材側に直流電圧300Vを印加し、400℃に調整したシリコンウェハに吹き付け、シリコンウェハを処理した。
【0052】
処理後のシリコンウェハ上には、処理時間20分で、1nmのSiN膜が形成されたのを確認した。処理面をESCAで観察したところ、全面的に深さ方向で、Si/Nが1.3となっていた。
【0053】
実施例3
処理ガスとして、窒素ガス5体積%とキセノンガス95体積%の混合ガスを用いる以外は、実施例1と同様にしてシリコンウェハを処理した。処理時間60分で、1nmのSi膜が形成された。
【0054】
比較例1
パルス電界に代えて、20kHz、150Wのsin波の交周波電界を印加したところ、アーク放電になり成膜はできなかった。このため、処理ガスを窒素100%から窒素10体積%とヘリウム90体積%の混合ガスに変更して処理を行ったが、処理時間2時間を経ても、SiN膜は形成されなかった。SiN膜の存在は、ESCAでNが確認されなかったことから形成されていないと判断した。
【0055】
比較例2
処理ガスとして、アンモニアガスを用いる以外は、実施例1と同様にしてシリコンウェハを処理したが、SiN膜は形成されたもののホールトラップが確認された。ESCA観察したところ、膜中に水素が確認されたので、ホールトラップの原因は、この水素だと推測される。
【0056】
【発明の効果】
本発明のパルス電界を印加するシリコンウェハの窒素ガスによる窒化硅素膜の形成方法によれば、大気圧近傍で、処理ガスのプラズマをシリコンウェハに接触させてシリコンウェハの表面に窒化珪素膜の形成を行うので、低温下において、膜形成工程をより効率的なシステムとすることができ、歩留まり向上に寄与できる。また、本発明の方法は、低温下の大気圧下での実施が可能であるので、容易にインライン化でき、本発明の方法を用いることにより処理工程全体の速度低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のパルス電界の例を示す電圧波形図である。
【図2】本発明の窒化珪素膜形成装置の例を示す図である。
【図3】本発明の窒化珪素膜形成装置の例を示す図である。
【符号の説明】
1 電源(高電圧パルス電源)
2、3 電極
4 固体誘電体
5 ガス導入口
6 放電空間
7 ガス吹き出し口
10 支持台
12 直流電源
14 シリコンウェハ
Claims (7)
- 対向する一対の電極の少なくとも一方の対向面に固体誘電体を設置した窒化処理装置を用意し、大気圧近傍の圧力下で上記一対の対向電極間に窒素含有ガスを導入してパルス状の電界を印加することにより得られるプラズマをシリコンウェハに接触させ、シリコンウェハの表面を窒化し、上記窒素含有ガスが、窒素ガス、又は窒素と窒素以外の不活性ガスとの混合ガスであり、かつ水素原子を含まないことを特徴とするシリコンウェハの窒化処理方法。
- 上記窒素含有ガスが、100%の窒素ガスであることを特徴とする請求項1に記載のシリコンウェハの窒化処理方法。
- パルス状の電界が、パルス立ち上がり及び/又は立ち下がり時間が膜20μs以下、電界強度が20〜400kV/cmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコンウェハの窒化処理方法。
- パルス状の電界が、周波数が0.5〜100kHz、パルス継続時間が1〜100μsであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリコンウェハの窒化処理方法。
- シリコンウェハの表面を大気圧近傍の圧力下で窒化する窒化処理装置であって、少なくとも一方の対向面に固体誘電体が設置された一対の対向電極と、当該一対の対向電極間に窒素含有ガスを導入する機構、該電極間にパルス状の電界を印加する機構、該パルス電界により得られるプラズマをシリコンウェハに接触させる機構を備えてなり、上記窒素含有ガスが、窒素ガス、又は窒素と窒素以外の不活性ガスとの混合ガスであり、かつ水素原子を含まず、プラズマをシリコンウェハに接触させる機構が、上記対向電極間で発生したプラズマをシリコンウェハに向かって吹き出す吹き出し口を含むことを特徴とするシリコンウェハ表面の窒化処理装置。
- プラズマをシリコンウェハに接触させる機構が、予備放電後に上記プラズマをシリコンウェハに接触させることを特徴とする請求項5に記載の窒化処理装置。
- さらに、シリコンウェハを搬送する機構を具備する請求項5又は6に記載の窒化処理装置。
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