JP4610069B2 - 半導体素子の製造装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマCVD法による半導体素子における窒化膜の製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、半導体素子の一般的構成としては、基板上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、シリコン膜、ソース絶縁体、ドレイン絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、パシベーション膜(保護膜)等からなっている。ここで、基材としては、ガラス基板又はウェーハ基板等からなり、電極としては、Al、Cu等の金属又は金属化合物等からなり、パシベーション膜を含む層間絶縁体としては、酸化珪素、窒化珪素、炭化珪素等からなり、シリコン層としては、Si単結晶層、a−Si層及びa−SiにP、B、As、Ge等をドーピングした材料等からなっている。
【0003】
半導体素子は、これらの上記材料を要求機能に応じて組み合わせ、基材等の洗浄後、その上に電極、絶縁膜、シリコン層等の薄膜を形成し、さらにドーピング、アニール、レジスト処理(例えば、塗布、現像、ベーキング、レジスト剥離等)を行い、続いて露光・現像、エッチング等を繰り返す複雑な工程により製造されている。これらの製造工程においては、絶縁膜の形成、保護膜の形成、電極の形成、シリコン層の形成等の薄膜形成が重要であり、その形成方法として、主にプラズマ処理方法が用いられている。
【0004】
薄膜の形成法としては、一般に、低圧プラズマCVD,常圧熱CVD、蒸着、スパッタリングなどがある。また、これまでの常圧プラズマCVDは、ヘリウム雰囲気下など、ガス種が限定されていた。例えば、ヘリウム雰囲気下で処理を行う方法が特開平2−48626号公報に、アルゴンとアセトン及び/又はヘリウムからなる雰囲気下で処理を行う方法が特開平4−74525号公報に開示されている。
【0005】
しかし、上記方法はいずれも、ヘリウム又はアセトン等の有機化合物を含有するガス雰囲気中でプラズマを発生させるものであり、ガス雰囲気が限定される。さらに、ヘリウムは高価であるため工業的には不利であり、有機化合物を含有させた場合には、有機化合物自身が被処理体と反応する場合が多く、所望する表面改質処理が出来ないことがある。
【0006】
さらに、従来の方法では、処理速度が遅く工業的なプロセスには不利であり、また、プラズマ重合膜を形成させる場合など、膜形成速度より膜分解速度の方が早くなり良質の薄膜が得られないという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題に鑑み、半導体素子の製造工程における窒化膜の製造において、大気圧近傍の圧力下で均一なプラズマを継続して発生させ、被処理基材を該プラズマで処理して、被処理基材上に窒化膜の形成を行う方法を用いて、良質の窒化膜を容易に製造することができる装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、大気圧条件下で安定した放電状態を実現できるプラズマCVD法とガスシール機構を組み合わせることにより、簡便に良質な窒化膜を形成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明は、プラズマCVD法による半導体素子における窒化膜の形成装置において、少なくとも一方の対向面に固体誘電体が設置された一対の対向電極と、当該一対の対向電極間に処理ガスを導入する機構、該電極間にパルス状の電界を印加する機構、該パルス電界により得られるプラズマを基材に接触させる機構、及び該プラズマと基材との接触部近傍を窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノンからなる群から選ばれるいずれか一種以上の雰囲気に保つ機構を備え、
該プラズマを基材に接触させる機構が、ガス吹き出し口ノズルを有する固体誘電体を通して対向電極間で発生したプラズマを基材に向かって導くようになされ、
さらに、予備放電後に該ガス吹き出し口ノズルを基材表面上に移動させるノズル体待機機構を有することを特徴とする半導体素子の製造装置である。
【0014】
また、本発明は、パルス状の電界が、パルス立ち上がり時間もしくはパルス立ち下がり時間の少なくとも一方が100μs以下、電界強度が0.5〜250kV/cmであるのが好ましい。
【0015】
また、本発明は、パルス状の電界が、周波数が0.5〜100kHz、パルス継続時間が1〜1000μsであるのが好ましい。
【0017】
また、本発明は、ガスカーテン機構により、プラズマと基材の接触部近傍を窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノンからなる群から選ばれるいずれか一種以上の雰囲気に保つ機構であるのが好ましい。
【0018】
また、本発明は、プラズマと基材との接触部の周囲にガス排気機構を有し、その周囲にガスカーテン機構を配置することにより、プラズマと基材との接触部近傍を窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノンからなる群から選ばれるいずれか一種以上の雰囲気に保つ機構であるのが好ましい。
【0019】
また、本発明は、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノンからなる群から選ばれるいずれか一種以上を満たした容器中に、少なくとも一方の対向面に固体誘電体が設置された一対の対向電極と、当該一対の対向電極間に処理ガスを導入する機構と、該電極間にパルス状の電界を印加する機構と、該パルス状の電界により得られるプラズマを基材に接触させる機構とを配置することによりプラズマと基材との接触部近傍が窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノンからなる群から選ばれるいずれか一種以上の雰囲気に保たれるようにするのが好ましい。
【0020】
また、本発明は、容器内に窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノンからなる群から選ばれるいずれか一種以上が常時供給されることによりプラズマと基材との接触部近傍が窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノンからなる群から選ばれるいずれか一種以上の雰囲気に保たれるようになされているのが好ましい
【0021】
また、本発明は、プラズマを基材に接触させる機構が、ガス吹き出し口ノズルを有する固体誘電体を通して対向電極間で発生したプラズマを基材に向かって導くようになされているのが好ましい
【0023】
また、本発明は、さらに基材搬送機構を具備するのが好ましい。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明又は本発明に関連する内容であるプラズマCVD法による半導体素子製造用の窒化膜の形成方法及び装置は、大気圧近傍の圧力下で、対向する一対の電極の少なくとも一方の対向面に固体誘電体を設置し、当該一対の対向電極間に処理ガスを導入し、当該電極間にパルス状の電界を印加することにより、得られる該ガスのプラズマを基材に接触させ、基材上に窒化膜を形成する方法であって、かつ、該プラズマと基材との接触部近傍が窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノンからなる群から選ばれるいずれか一種以上のガス(以下、「不活性ガス」という。)雰囲気下に保たれていることを特徴とする方法及び装置である。以下、本発明又は本発明に関連する内容を詳細に説明する。
【0025】
上記大気圧近傍の圧力下とは、1.333×10〜10.664×10Paの圧力下を指す。中でも、圧力調整が容易で、装置が簡便になる9.331×10〜10.397×10Paの範囲が好ましい。
【0026】
大気圧近傍の圧力下では、ヘリウム、ケトン等の特定のガス以外は安定してプラズマ放電状態が保持されずに瞬時にアーク放電状態に移行することが知られているが、パルス状の電界を印加することにより、アーク放電に移行する前に放電を止め、再び放電を開始するというサイクルが実現されていると考えられる。
【0027】
大気圧近傍の圧力下においては、本発明のパルス状の電界を印加する方法によって、初めて、ヘリウム等のプラズマ放電状態からアーク放電状態に至る時間が長い成分を含有しない雰囲気において、安定して放電プラズマを発生させることが可能となる。
【0028】
なお、本発明の方法によれば、プラズマ発生空間中に存在する気体の種類を問わずグロー放電プラズマを発生させることが可能である。公知の低圧条件下におけるプラズマ処理はもちろん、特定のガス雰囲気下の大気圧プラズマ処理においても、外気から遮断された密閉容器内で処理を行うことが必須であったが、本発明のグロー放電プラズマ処理方法によれば、開放系、あるいは、気体の自由な流失を防ぐ程度の低気密系での処理が可能となる。
【0029】
さらに、大気圧での処理により高密度のプラズマ状態を実現出来るため、連続処理等の半導体素子の製造プロセスを行う上で大きな意義を有する。上記高密度のプラズマ状態の実現には、本発明が有する2つの作用が関係する。
【0030】
第1に、電界強度が0.5〜250kV/cmで、立ち上がり時間が100μs以下という、急峻な立ち上がりを有するパルス電界を印加することにより、プラズマ発生空間中に存在する気体分子が、効率よく励起する作用である。立ち上がりが遅いパルス電界を印加することは、異なる大きさを有するエネルギーを段階的に投入することに相当し、まず低エネルギーで電離する分子、すなわち、第一イオン化ポテンシャルの小さい分子の励起が優先的に起こり、次に高いエネルギーが投入された際にはすでに電離している分子がより高い準位に励起し、プラズマ発生空間中に存在する分子を効率よく電離することは難しい。これに対して、立ち上がり時間が100μs以下であるパルス電界によれば、空間中に存在する分子に一斉にエネルギーを与えることになり、空間中の電離した状態にある分子の絶対数が多く、すなわちプラズマ密度が高いということになる。
【0031】
第2に、ヘリウム以外のガス雰囲気のプラズマを安定して得られることにより、ヘリウムより電子を多くもつ分子、すなわちヘリウムより分子量の大きい分子を雰囲気ガスとして選択し、結果として電子密度の高い空間を実現する作用である。一般に電子を多く有する分子の方が電離はしやすい。前述のように、ヘリウムは電離しにくい成分であるが、一旦電離した後はアークに至らず、グロ−プラズマ状態で存在する時間が長いため、大気圧プラズマにおける雰囲気ガスとして用いられてきた。しかし、放電状態がアークに移行することを防止できるのであれば、電離しやすい、質量数の大きい分子を用いるほうが、空間中の電離した状態にある分子の絶対数を多くすることができ、プラズマ密度を高めることができる。従来技術では、ヘリウムが90%以上存在する雰囲気下以外でのグロー放電プラズマを発生することは不可能であり、唯一、アルゴンとアセトンとからなる雰囲気中でsin波により放電を行う技術が特開平4−74525号公報に開示されているが、本発明者らの追試によれば、実用レベルで安定かつ高速の処理を行えるものではない。また、雰囲気中にアセトンを含有するため、親水化目的以外の処理は不利である。
【0032】
上述のように、本発明は、ヘリウムより多数の電子を有する分子が過剰に存在する雰囲気、具体的には分子量10以上の化合物を10体積%以上含有する雰囲気下において、はじめて安定したグロー放電を可能にし、これによって表面処理に有利な、高密度プラズマ状態を実現するものである。
【0033】
本発明で形成される窒化膜としては、SiN、TiN、AlN、BN、CBN、AlInN等の各膜が挙げられる。
【0034】
上記窒化膜を形成するための原料ガスとしては、それらの膜を作る際に用いる汎用のガスを用いることができる。例えば、SiN膜の場合は、SiH、Si等のシラン化合物ガス、SiCl、SiHCl等のハロゲン系シラン化合物ガス、Si(CH等のアルキル系シラン化合物ガス等のシラン含有ガスと、無水アンモニア、窒素ガス等の窒素含有ガスとを用いることができる。また、水素ガスを添加することもできる。また、TiN膜の場合は、TiClと窒素ガス等を用いることができる。
【0035】
本発明では、上記原料ガスをそのまま処理ガスとして用いてもよいが、経済性及び安全性等の観点から、原料ガスを希釈ガスによって希釈し、これを処理ガスとして用いることもできる。希釈ガスとしては、ネオン、アルゴン、キセノン等の希ガス等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0036】
従来、大気圧近傍の圧力下においては、ヘリウムが大過剰に存在する雰囲気下で処理が行われてきたが、本発明の方法によれば、ヘリウムに比較して安価なアルゴン、窒素等の気体中における安定した処理が可能であり、さらに、これらの分子量の大きい、電子をより多く有するガスの存在下で処理を行うことにより、高密度プラズマ状態を実現し、処理速度を上げることが出来るため、工業上大きな優位性を有する。
【0037】
上記電極としては、例えば、銅、アルミニウム等の金属単体、ステンレス、真鍮等の合金、金属間化合物等からなるものが挙げられる。上記対向電極は、電界集中によるアーク放電の発生を避けるために、対向電極間の距離が略一定となる構造であることが好ましい。この条件を満たす電極構造としては、例えば、平行平板型、円筒対向平板型、球対向平板型、双曲面対向平板型、同軸円筒型構造等が挙げられる。
【0038】
また、略一定構造以外では、円筒対向円筒型で円筒曲率の大きなものもアーク放電の原因となる電界集中の度合いが小さいので対向電極として用いることができる。曲率は少なくとも半径20mm以上が好ましい。固体誘電体の誘電率にもよるが、それ以下の曲率では、電界集中によるアーク放電が集中しやすい。それぞれの曲率がこれ以上であれば、対向する電極の曲率が異なっても良い。曲率は大きいほど近似的に平板に近づくため、より安定した放電が得られるので、より好ましくは半径40mm以上である。
【0039】
さらに、プラズマを発生させる電極は、一対のうち少なくとも一方に固体誘電体が配置されていれば良く、一対の電極は、短絡に至らない適切な距離をあけた状態で対向してもよく、直交してもよい。
【0040】
上記固体誘電体は、電極の対向面の一方又は双方に設置される。この際、固体誘電体と設置される側の電極が密着し、かつ、接する電極の対向面を完全に覆うようにすることが好ましい。固体誘電体によって覆われずに電極同士が直接対向する部位があると、そこからアーク放電が生じやすいためである。
【0041】
上記固体誘電体の形状は、シート状でもフィルム状でもよく、厚みが0.01〜4mmであることが好ましい。厚すぎると放電プラズマを発生するのに高電圧を要することがあり、薄すぎると電圧印加時に絶縁破壊が起こり、アーク放電が発生することがある。また、固体誘電体の形状として、容器型のものも用いることができる。
【0042】
固体誘電体の材質としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック、ガラス、二酸化珪素、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン等の金属酸化物、チタン酸バリウム等の複酸化物、及びこれらの複層化したもの等が挙げられる。
【0043】
特に、固体誘電体は、比誘電率が2以上(25℃環境下、以下同じ)であることが好ましい。比誘電率が2以上の誘電体の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン、ガラス、金属酸化膜等を挙げることができる。さらに高密度の放電プラズマを安定して発生させるためには、比誘電率が10以上の固定誘電体を用いことが好ましい。比誘電率の上限は特に限定されるものではないが、現実の材料では18,500程度のものが知られている。比誘電率が10以上の固体誘電体としては、例えば、酸化チタニウム5〜50重量%、酸化アルミニウム50〜95重量%で混合された金属酸化物皮膜、または、酸化ジルコニウムを含有する金属酸化物皮膜からなり、その被膜の厚みが10〜1000μmであるものを用いることが好ましい。
【0044】
上記電極間の距離は、固体誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して適宜決定されるが、1〜50mmであることが好ましい。1mm未満では、電極間の間隔を置いて設置するのに充分でないことがある。50mmを超えると、均一な放電プラズマを発生させにくい。
【0045】
本発明のパルス電界について説明する。図1にパルス電圧波形の例を示す。波形(a)、(b)はインパルス型、波形(c)はパルス型、波形(d)は変調型の波形である。図1には電圧印加が正負の繰り返しであるものを挙げたが、正又は負のいずれかの極性側に電圧を印加するタイプのパルスを用いてもよい。また、直流が重畳されたパルス電界を印加してもよい。本発明におけるパルス電界の波形は、ここで挙げた波形に限定されず、さらに、パルス波形、立ち上がり時間、周波数の異なるパルスを用いて変調を行ってもよい。上記のような変調は高速連続表面処理を行うのに適している。
【0046】
上記パルス電界の立ち上がり及び/又は立ち下がり時間は、100μs以下が好ましい。100μsを超えると放電状態がアークに移行しやすく不安定なものとなり、パルス電界による高密度プラズマ状態を保持しにくくなる。また、立ち上がり時間及び立ち下がり時間が短いほどプラズマ発生の際のガスの電離が効率よく行われるが、40ns未満の立ち上がり時間のパルス電界を実現することは、実際には困難である。より好ましくは50ns〜5μsである。なお、ここでいう立ち上がり時間とは、電圧変化が連続して正である時間、立ち下がり時間とは、電圧変化が連続して負である時間を指すものとする。
【0047】
また、パルス電界の立ち下がり時間も急峻であることが好ましく、立ち上がり時間と同様の100μs以下のタイムスケールであることが好ましい。パルス電界発生技術によっても異なるが、立ち上がり時間と立ち下がり時間とが同じ時間に設定できるものが好ましい。
【0048】
上記パルス電界の電界強度は、0.5〜250kV/cmとなるようにするのが好ましい。電界強度が0.5kV/cm未満であると処理に時間がかかりすぎ、250kV/cmを超えるとアーク放電が発生しやすくなる。
【0049】
上記パルス電界の周波数は、0.5〜100kHzであることが好ましい。0.5kHz未満であるとプラズマ密度が低いため処理に時間がかかりすぎ、100kHzを超えるとアーク放電が発生しやすくなる。より好ましくは、1〜100kHzであり、このような高周波数のパルス電界を印加することにより、処理速度を大きく向上させることができる。
【0050】
また、上記パルス電界におけるひとつのパルス継続時間は、1〜1000μsであることが好ましい。1μs未満であると放電が不安定なものとなり、1000μsを超えるとアーク放電に移行しやすくなる。より好ましくは、3〜200μsである。ここで、ひとつのパルス継続時間とは、図1中に例を示してあるが、ON、OFFの繰り返しからなるパルス電界における、ひとつのパルスの連続するON時間を言う。
【0051】
本発明の処理基材材料としては、シリコンウエーハ、GaAsウェーハ等のウェーハ、PET、ポリイミド等のプラスチックフィルム、プラスチック板、ガラス板等が挙げられる。
【0052】
プラズマを基材に接触させる手段としては、例えば、(1)対向する電極間で発生するプラズマの放電空間内に基材を配置して、基材にプラズマを接触させる方法、及び(2)対向する電極間で発生させたプラズマを放電空間の外に配置された基材に向かって導くようにして接触させる方法(ガン型)がある。
【0053】
上記(1)の具体的方法としては、固体誘電体を被覆した平行平板型電極間に基材を配置し、プラズマと接触させる方法であって、多数の穴を有する上部電極を用い、シャワー状プラズマで処理する方法、フィルム状基材を放電空間内を走行させる方法、一方の電極に吹き出し口ノズルを有する容器状固体誘電体を設け、該ノズルからプラズマを他の電極上に配置した基材に吹き付ける方法等が挙げられる。
【0054】
また、上記(2)の具体的方法としては、固体誘電体が延長されてプラズマ誘導ノズルを形成しており、放電空間の外に配置された基材に向けて吹き付ける方法等が挙げられ、平行平板型電極と長尺型ノズル、同軸円筒型電極と円筒型ノズルの組み合わせを用いることができる。なお、ノズル先端の材質は、必ずしも上記の固体誘電体である必要がなく、上記電極と絶縁がとれていれば金属等でもかまわない。
【0055】
これらの中でも、ガス吹き出し口ノズルを有する固体誘電体を通して、対向電極間で発生したプラズマを基材に吹き付ける方法は、被成膜物である基材が直接高密度プラズマ空間にさらされることが少なく、基材表面の目的とする箇所にのみにプラズマ状態のガスを運び、薄膜形成を行うことができるので、基材への電気的熱的負担が軽減された好ましい方法である。
【0056】
本発明のプラズマ処理による窒化膜の形成は、基材温度を80〜400℃にすることが好ましく、より好ましくは150〜400℃である。
【0057】
本発明のプラズマ処理による窒化膜の形成においては、成膜前の基材表面の酸化防止と成膜された窒化膜の膜質向上のため、基材や膜が大気中の湿潤空気やその他の不純物に接触することを防ぐ意味で、不活性ガス雰囲気で処理を行う必要がある。また、プラズマが安定した状態で基材上に窒化膜を形成させるようにすることが好ましい。
【0058】
したがって、本発明の装置は、上記プラズマを基材に接触させて窒化膜を形成する装置に加えて、プラズマと基材との接触部近傍を不活性ガス雰囲気に保つ機構を付加した装置が必要である。
【0059】
本発明において、プラズマと基材との接触部近傍を不活性ガス雰囲気に保つ機構としては、不活性ガスによるガスカーテン機構、不活性ガスで満たされた容器中で処理を行う機構等が挙げられる。
【0060】
また、基材を搬送する手段としては、基材がフィルム状のものであれば、繰り出しロールと巻き取りロールからなる搬送系を用い、枚葉のものであれば、搬送コンベア、搬送ロボット等の搬送系を用いることができる。
【0061】
上記不活性ガスによるガスカーテン機構としては、プラズマと基材との接触部近傍の周囲にガス排気機構を有し、その周囲に不活性ガスによるガスカーテン機構を有することにより、プラズマと基材との接触部近傍を不活性ガス雰囲気に保つようにすることができる。
【0062】
図で本発明の方法及び装置を具体的に説明する。図2は、同軸型円筒ノズルを用い、ガスカーテン機構によりプラズマと基材との接触部近傍を不活性ガス雰囲気に保つ装置であって、該接触部の周囲にガス排気機構を有し、さらに該ガス排気機構の周囲にはガスカーテン機構を配設した不活性ガスシャワー機能を付加した装置を用いてプラズマを基材に吹き付ける装置と基材の搬送機構を備えた装置の一例を示す図である。図2において、1は電源、2は外側電極、3は内側電極、4は固体誘電体、5はガス吹き出し口、6は同軸型円筒ノズルを有するノズル体、7は処理ガス導入口、10は内周排気ガス筒、11は外周排気ガス筒、12は不活性ガス導入口、13は不活性ガス吹き出し細孔、14は基材、41は搬入ベルト、42は処理部ベルト、43は搬出ベルトをそれぞれ表す。
【0063】
例えば、処理ガスは、白抜き矢印方向にガス導入口7から筒状の固体誘電体容器内に導入され、筒状固体誘電体容器の外側に配置された電極2と筒状固体誘電体容器内部に配置された内側電極3との間にパルス状電界を印加することによってプラズマガスとして吹き出し口5から吹き出され、内周排気ガス筒10から主に吸引回収される。一方、基材14は、最初は搬入ベルト41により運ばれ、次に処理部ベルト42により搬送されガス吹き出し口からのプラズマガスが吹き付けられ、窒化膜が形成され、次いで搬出ベルト43で運び出されるという3工程の搬送工程を経て搬送される。また、不活性ガスは、不活性ガス導入口12から導入され、下部にある不活性ガス吹き出し細孔13から搬送される基材14に向けて吹き出され、ガスカーテンの役割をして基材14の雰囲気を不活性ガス雰囲気に保つ。不活性ガスは、主に外周排気ガス筒11から回収される。なお、搬送ベルトは、送りスピードを任意に調整できるものを用いることにより被着膜厚の制御が可能となる。さらに、処理部ベルトには加熱機構を有するものが好ましい。
【0064】
図3は、平行平板対向型長尺ノズルを用い、ガスカーテン機構によりプラズマと基材との接触部近傍を不活性ガス雰囲気に保つ装置であって、該接触部の周囲にガス排気機構を有し、さらに該ガス排気機構の周囲にはガスカーテン機構を配設した不活性ガスシャワー機能を付加した装置を用いてプラズマを基材に吹き付ける装置と基材の搬送機構を備えた装置の一例を示す図である。1は電源、2は電極、3は電極、4は固体誘電体、5はガス吹き出し口、7は処理ガス導入口、10は内周排気ガス筒、11は外周排気ガス筒、12は不活性ガス導入口、13は不活性ガス吹き出し細孔、14は基材、41は搬入ベルト、42は処理部ベルト、43は搬出ベルトをそれぞれ表す。
【0065】
図3において、例えば、処理ガスは、白抜き矢印方向にガス導入口7から箱状の固体誘電体容器内に導入され、箱状固体誘電体容器の外側に配置された電極2及び3との間にパルス電界を印加することによってプラズマガスとして吹き出し口5から吹き出され、内周排気ガス筒10から主に吸引回収される。一方、基材14は、最初は搬入ベルト41により運ばれ、次に処理部ベルト42により搬送されガス吹き出し口からのプラズマガスが吹き付けられ、窒化膜が形成され、次いで搬出ベルト43で運び出されるという3工程の搬送工程を経て搬送される。また、不活性ガスは、不活性ガス導入口12から導入され、下部にある不活性ガス吹き出し細孔13から搬送される基材14に向けて吹き出され、ガスカーテンの役割をして基材14の雰囲気を不活性ガス雰囲気に保つ。不活性ガスは、主に外周排気ガス筒11から回収される。なお、搬送ベルトは、送りスピードを任意に調整できるものを用いることにより被着膜厚の制御が可能となる。さらに処理部ベルトには加熱機構を有するものが好ましい。
【0066】
なお、上記不活性ガスシャワー機能を果たす装置としては、その底面が図4、図5のようになされているものが好ましい。
【0067】
図4は同軸型円筒ノズルを用いる場合の不活性ガスシャワー装置であって、図2のノズル部分の底面に該当する。プラズマガスは、ガス吹き出し口5から吹き出され、基材に窒化膜を形成した後、主に内周排気ガス筒10から排出される。また、不活性ガスは、不活性ガスシャワー領域に存在する吹き出し細孔13から吹き出され、主に外周排気ガス筒11から排出される。
【0068】
図5は垂直平板型長尺ノズルを用いる場合の不活性ガスシャワー装置であって、図3のノズル部分の底面に該当する。プラズマガスは、ガス吹き出し口5から吹き出され、基材に窒化膜を形成した後、主に内周排気ガス筒10から排出される。また、不活性ガスは、主に不活性ガスシャワー領域に存在する不活性ガス吹き出し細孔13から吹き出され、主に外周排気ガス筒11から排出される。
【0069】
本発明において、プラズマと基材との接触部近傍が不活性ガス雰囲気に保たれているようにする機構として、不活性ガスで満たされた容器中で処理を行う方法としては、図6に示す装置を挙げることができる。
【0070】
図6の装置において、不活性ガスで満たされた容器30中で窒化膜の形成を行う。例えば、基材の搬送ロボット20を用いるための搬出入室31及びそのためのシャッター32を備えた不活性ガス容器30に、上記のプラズマと基材との接触部近傍の主要部を収納した装置を用いるのが好ましい。図6において、不活性ガス容器には、矢印方向に不活性ガスを常時供給させるだけで良く、気密性は必要なく、真空ポンプは不要であり、簡単なブロワー型排風機でよく、不活性ガス容器30自体の耐圧性は不要であり、簡単なチャンバーで良い。不活性ガス容器30内に収納した膜形成装置では、X−Y−Z移動機構を備えたプラズマガスノズル体6に白抜き矢印方向から処理ガスを導入させ、基材14に吹き付け、窒化膜を形成させる。また、排ガスは排ガス筒10から排気する。また、基材14は、搬送ロボット20により搬出入室31内にあるカセット21から出し入れされる。また、窒化膜形成後の製品はシャッター32を通して出し入れされる。ここで、ノズル体6の細部は、図2に示すノズル体と同様である。
【0071】
さらに、固体誘電体がガス吹き出し口ノズルを有するガン型プラズマ発生装置を用いる場合には、電極に電圧印加開始から放電状態が安定するまで予備放電を行った後、ガス吹き出し口ノズルを基材表面に移動させるノズル体待機機構を有するプラズマ発生機構を用いることにより不良品の発生を抑えることができる。
その装置の概略を図7に示す。
【0072】
図7において、処理ガスをノズル体6に導入しプラズマを基材14上に吹き付ける装置であるが、ノズル体6は、放電状態が安定するまでの予備放電時にはAの位置で待機し、放電状態が安定した後に基材14表面の窒化膜を形成すべき箇所Bに移動させて窒化膜の被着を開始する。また、この装置においては、支持台17を取り巻くリング状フード10を設けることにより、処理ガスの排気を行うことができ、さらに、搬送ロボット20を併設することにより、ウェーハカセット21からウェーハ基材14の出し入れを行い、効率的に基材上に窒化膜形成を行うことができる。上記ノズル体待機機構は、ノズル体を掃引するためのX−Y−Z移動装置と併用することができる。また、上記図6に示すように不活性ガスで満たされた容器30に収納することができる。
【0073】
本発明のパルス電界を用いた大気圧放電では、全くガス種に依存せず、電極間において直接大気圧下で放電を生じせしめることが可能であり、より単純化された電極構造、放電手順による大気圧プラズマ装置、及び処理手法でかつ高速処理を実現することができる。また、パルス周波数、電圧、電極間隔等のパラメータにより窒化膜の形成に関するパラメータも調整できる。
【0074】
本発明の窒化膜の製造方法は、IC回路、太陽電池、液晶ディスプレーのスイッチ素子等、その他の半導体素子の製造にも適用できる。
【0075】
【実施例】
本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0076】
実施例1
不活性ガスを満たした容器中でプラズマを基材に接触させる方法を行う図8の装置を用いて基材上に窒化珪素膜の形成を行った。図8の装置において、上部電極2及び下部電極3として、幅300mm×長さ100mm×厚み20mmのSUS304製ステンレス平行平板型電極を用い、固体誘電体4としてアルミナを1mmの厚さに溶射したものを用いた。電極間距離2mmの空間中にポリイミドフィルム14(大きさ:100×100mm、厚み:50μm)を被成膜基材として、繰り出しロール15と巻き取りロール16で搬送するようにした。
【0077】
処理ガスとして、テトラメチルシラン0.16%、アンモニア16%をアルゴンガスにより希釈したガスを用い、白抜き矢印方向に供給し、上部電極2、下部電極間3の間に図1(a)のパルス波形、パルス立ちあがり速度5μs、電圧10kVのパルス電界を印加し、95kPa下(大気圧下)でポリイミドフィルム上に窒化珪素膜の成膜を行った。また、不活性ガスとして、窒素ガスを容器30内に矢印方向に供給し、不活性ガス雰囲気を保った。処理されたフィルム上に窒化珪素膜の生成を確認した。このときの成膜速度は、0.42μm/secであった。
【0078】
比較例1
実施例1において、印加電界として、150MHzのsin波を使用し、処理ガスとしてテトラメチルシラン0.16%とアンモニア16%を混合して用い、希釈ガスとしてヘリウムを使用した以外は、実施例1と同様にして、ポリイミドフィルム上に窒化珪素膜の生成を行った。窒化珪素膜の生成は、確認できたものの、成膜速度は、0.083μm/secであった。
【0079】
比較例2
実施例1と同じ装置を使用し、印加電界として、13.56MHz、200Wのsin波の電界条件を使用し、13Paの環境下で行った以外は、実施例1と同様にして、ポリイミドフィルム上に窒化珪素膜の生成を行った。窒化珪素膜の生成は、確認できたものの、成膜速度は、0.040μm/secであった。
【0080】
実施例2
図2の装置を用い、処理ガスとして、シランガス5%、アンモニアガス95%を使用し、実施例1と同じパルス波形を用い、パルス立ち上がり速度5μs、電圧10kVのパルス電界を印加し、大気圧下で成膜を行ったところ、プラズマ生成空間からウェーハ基材にプラズマ状ガスが誘導されa−SiN薄膜が形成された。
【0081】
【発明の効果】
本発明のパルス電界を印加する窒化膜を形成する半導体素子の製造方法によれば、大気圧近傍で、処理ガスのプラズマを基材に接触させて基材の表面に窒化膜の形成を不活性ガス雰囲気下で行うので、膜形成工程をより効率的なシステムとすることができ、歩留まり向上に寄与できる。また、本発明の方法は、大気圧下での実施が可能であるので、容易にインライン化でき、本発明の方法を用いることにより処理工程全体の速度低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のパルス電界の例を示す電圧波形図である。
【図2】本発明の窒化膜形成装置の例を示す図である。
【図3】本発明の窒化膜形成装置の例を示す図である。
【図4】本発明で用いる不活性ガスシャワー機能装置の一例の底面図である。
【図5】本発明で用いる不活性ガスシャワー機能装置の一例の底面図である。
【図6】本発明の窒化膜形成装置の例を示す図である。
【図7】本発明の窒化膜形成装置の例を示す図である。
【図8】実施例1で用いた窒化膜の形成装置を示す図である。
【符号の説明】
1 電源(高電圧パルス電源)
2、3 電極
4 固体誘電体
5 ガス吹き出し口
6 ノズル体
7 ガス導入口
10、11 排気ガス筒
12 不活性ガス導入口
13 不活性ガス吹き出し細孔
14 基材
15 繰り出しロール
16 巻き取りロール
17 支持台
20 搬送ロボット
21 カセット
22 アーム
30 容器
31 搬出入室
32 シャッター
41 搬入ベルト
42 処理部ベルト
43 搬出ベルト

Claims (1)

  1. プラズマCVD法による半導体素子における窒化膜の形成装置において、少なくとも一方の対向面に固体誘電体が設置された一対の対向電極と、当該一対の対向電極間に処理ガスを導入する機構、該電極間にパルス状の電界を印加する機構、該パルス電界により得られるプラズマを基材に接触させる機構、及び該プラズマと基材との接触部近傍を窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノンからなる群から選ばれるいずれか一種以上の雰囲気に保つ機構を備え、
    該プラズマを基材に接触させる機構が、ガス吹き出し口ノズルを有する固体誘電体を通して対向電極間で発生したプラズマを基材に向かって導くようになされ、
    さらに、予備放電後に該ガス吹き出し口ノズルを基材表面上に移動させるノズル体待機機構を有することを特徴とする半導体素子の製造装置。
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