JP4418100B2 - 鉄道車両の左右動減衰装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、台車に対する車体の左右方向の動きを抑える鉄道車両の左右動減衰装置の改良に関するものである。
【0002】
従来、鉄道車両は、図6に示すように、軌道4を転動する左右の車輪3と、この各車輪3を図示しない金属バネおよび油圧ダンパを介して支持する台車2と、この台車2に対して車体1を支持する図示しない空気バネとヨーダンパおよび左右動ダンパ10を備える。
【0003】
車体1からは中心ピン5が下方に突出し、この中心ピン5を挟むようにして一対の左右動ダンパ10が台車2との間に連結される。軌道4の歪み等に起因して台車2が左右方向に動かされると、各左右動ダンパ10は台車2の動きに連動して伸縮し、車体1の振動を抑える減衰力を発生する。
【0004】
台車2には中心ピン5を挟むように対峙する一対のストッパゴム6が取り付けられる。各ストッパゴム6が中心ピン5に当接することにより、車体1の動きを制限する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の鉄道車両の左右動減衰装置にあっては、左右動ダンパ10の減衰力が低いと、台車2への入力が大きい車両のカーブ走行時やポイント通過時あるいはカント時等に中心ピン5がストッパゴム6に当接するが、その際の衝撃が大きく、衝突音が発生するという問題点があった。また、これに対処して左右動ダンパ10の減衰力を高めると、台車2への入力が小さい走行時に車体1の振動を十分に抑えられず、乗り心地が悪化するという問題点が生じた。
【0006】
また、従来、減衰力が可変制御されるセミアクティブタイプのダンパを用いる装置があったが、ストロークを検出するセンサやその検出信号に応じて減衰力を制御する回路が必要であり、構造の複雑化を招くという問題点があった。
【0007】
本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、乗り心地を損なわずに車体の大きな左右動を抑えられる鉄道車両の左右動減衰装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、鉄道車両の左右動減衰装置において、台車に対する車体の左右方向の動きに応じてシリンダの内側でピストンロッドが相対的に移動して伸縮する左右動ダンパを設け、ピストンロッド内にストロークに応じて作動流体が流れるロッド内流路を形成し、シリンダ側に固定されストロークに応じてピストンロッドの内側で相対的に移動する位置検出ロッドを備え、ストロークエンド領域で位置検出ロッドがロッド内流路を閉じて減衰力を高める構成とし、ピストンロッドの内側に環状のランド部を形成し、位置検出ロッドにこのランド部との間でロッド内流路を画成するスプール溝とを形成し、このスプール溝にその軸方向の端部に向けてロッド内流路の断面積を次第に縮小する傾斜部を形成し、作動流体を伸側作動時に縮小するロッド側室からロッド内流路へと流出させる伸側流路をピストンロッドの途中に形成し、この伸側流路を流れる作動流体に抵抗を付与する絞りを設け、作動流体を圧側作動時に縮小するエンド側室からロッド内流路を介してタンク室へと導く圧側流路を中空の位置検出ロッドの内側に形成し、この圧側流路を流れる作動流体に抵抗を付与する絞りを設け、伸側作動時に縮小するロッド側室の作動流体をタンク室へと導くリリーフ弁を備え伸側行程と圧側行程の両方で中間ストローク範囲を超えたストロークエンド範囲で位置検出ロッドによってロッド内流路が閉塞されるのに伴って、ロッド側室の作動流体がリリーフ弁を開いてタンク室へと流入する構成としたことを特徴とするものとした。
【0013】
【発明の作用および効果】
第1の発明によると、台車への入力が小さい走行時に左右動ダンパは中間ストローク範囲で作動して適正な減衰力を発生し、車両の乗り心地を損なわない。
【0014】
そして、例えば車両のカーブ走行時やポイント通過時あるいはカント時等のように台車への入力が大きい走行時に台車に大きな入力が加わった場合、左右動ダンパは中間ストローク範囲を超えたストロークエンド範囲で作動し、位置検出ロッドがロッド内流路を閉じて減衰力を大幅に高める。これにより、車体の中心ピンがストッパゴムに衝突する際の衝撃を小さくし、衝突音の発生を抑えられる。
【0015】
そして、中間ストローク範囲を超えてストロークエンド範囲に入る行程で、スプール溝の傾斜部によってロッド内流路を流れる作動流体の流量がストロークに応じて強く絞られるため、減衰力の立ち上がりが滑らかになり、円滑な作動性が得られる。
【0016】
そして、中間ストローク範囲における伸側行程で、ロッド側室の作動流体が伸側流路、ロッド内流路を通ってエンド側室へと流入し、絞りは伸側流路を流れる作動流体に抵抗を付与し、減衰力が発生する。
【0017】
そして、、中間ストローク範囲における圧側行程で、ピストンロッドの侵入体積分の作動流体がエンド側室からロッド内流路、圧側流路を通ってタンク室へと流入し、絞りはこの圧側流路を流れる作動流体に抵抗を付与し、減衰力が発生する。
【0018】
そして、中間ストローク範囲を超えたストロークエンド範囲で位置検出ロッドによってロッド内流路が閉塞されるのに伴って、ロッド側室の作動流体がリリーフ弁を開いてタンク室へと流入する。このとき作動流体がリリーフ弁を通過する過程で付与される抵抗によって発生する減衰力が0より大きい値から立ち上がり、減衰力が段階的に高められる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
図1に示すように、左右動ダンパ10は、ピストンロッド30の先端部がアイ部材7を介して車体の中心ピン側に連結される一方、インナチューブ(シリンダ)13およびアウタチューブ14の基端部がエンド部材8を介して台車側に連結される。一対の左右動ダンパ10が中心ピンを挟むようにして左右方向に並んで設けられ、車体に対して台車が左右方向に移動すると、一方の左右動ダンパ10が伸張するとともに、他方の左右動ダンパ10が収縮するようになっている。
【0021】
アイ部材7にはスリーブ51が取り付けられ、スリーブ51とアウタチューブ14に渡って伸縮可能な筒状のダストカバー52が取り付けられる。これによって、左右動ダンパ10の内部に塵埃や異物等が侵入しないようになっている。
【0022】
ピストンロッド30はその途中がインナチューブ13とアウタチューブ14に対してロッドガイド11を介して摺動可能に支持される。ピストンロッド30の基端部にピストン15が連結され、ピストン15はインナチューブ13に摺動自在に収装される。インナチューブ13の内部はピストン15によりロッド側室17とエンド側室18に仕切られる。インナチューブ13とアウタチューブ14の間には一部にガスを封入したタンク室19が画成される。
【0023】
ピストン15には左右動ダンパ10が収縮する圧側行程でエンド側室18からロッド側室17へと流れる作動油(作動流体)に対して開弁する圧側のチェック弁20が設けられる。
【0024】
インナチューブ13の基端部を嵌合させる底板16が設けられ、底板16には左右動ダンパ10が伸張する伸側行程で、タンク室19からエンド側室18へと流れる作動油に対して開弁する伸側のチェック弁21が設けられる。
【0025】
ピストンロッド30はこれを貫通する軸孔31が形成される中空構造とする。ピストンロッド30の内側にストロークに応じて作動油が流れるロッド内流路29が設けられる。ピストンロッド30の途中にはロッド側室17とロッド内流路29を連通する伸側流路36が形成される。伸側流路36の途中にオリフィス(絞り)23が介装される。伸側作動時に作動油はロッド側室17から伸側流路36、ロッド内流路29を通ってエンド側室18へと流れ、オリフィス23はこの作動油の流れに抵抗を付与する。
【0026】
ピストンロッド30の内側に環状のランド部35が形成される。伸側流路36はランド部35の途中に開口している。
【0027】
ピストンロッド30の内側にランド部35を挟んで軸方向に延びる複数条のロッド溝33,34が形成され、このロッド溝33,34は後述する位置検出ロッド40との間にロッド内流路29を画成する。図2に示すように、各ロッド溝33はその断面が半月状に窪むように機械加工によって形成される。同様に、各ロッド溝34もその断面が半月状に窪んでいる。各ロッド溝33,34の断面形状を半月状にすることで、それぞれの機械加工を容易にしている。
【0028】
ストロークに応じてピストンロッド30の内側で移動する位置検出ロッド40を備える。位置検出ロッド40は底板16を介してインナチューブ13の内側に同心上に立設される。位置検出ロッド40は所定の中間ストローク範囲でランド部35との間でロッド内流路29を画成するスプール溝43と、中間ストローク範囲を超えた両端ストロークエンド範囲でランド部35に摺接するスプール外周面47,48とを有する。ランド部35にスプール外周面47,48が摺接すると、ロッド溝33,34間の連通を遮断してロッド内流路29を閉じる。
【0029】
スプール溝43は円筒面状の縮径部44と、この縮径部44の両端からスプール外周面47,48へと次第に拡径する円錐面状の傾斜部45,46によって形成される。各傾斜部45,46はロッド内流路29の断面積を軸方向について次第に縮小する。本実施の形態では、各傾斜部45,46の断面は直線状に形成されているが、これに限らず要求される減衰特性に応じて各傾斜部45,46の断面を円弧状に湾曲させてもよい。
【0030】
位置検出ロッド40はこれを貫通する軸孔41が形成される中空構造とする。位置検出ロッド40の内側に圧側流路49が設けられ、圧側流路49の途中にオリフィス(絞り)24が介装される。圧側作動時に作動油はエンド側室18からロッド内流路29、圧側流路49を通ってタンク室19へと流れる。オリフィス24はこの作動油の流れに抵抗を付与する。
【0031】
ロッドガイド11にはロッド側室17とタンク室19を連通するリリーフ流路37が形成され、このリリーフ流路37の途中にリリーフ弁25が設けられる。リリーフ弁25はロッド側室17の圧力が所定値を超えると開弁し、ロッド側室17からタンク室19へと流れる作動油に抵抗を付与する。
【0032】
以上のように構成される本発明の実施の形態につき、次に作用を説明する。
【0033】
台車への入力が小さい走行時、左右動ダンパ10は中間ストローク範囲で伸縮作動し、位置検出ロッド40のスプール溝43が各ロッド溝33,34に渡って対峙してロッド内流路29を開通させる。
【0034】
この中間ストローク範囲において左右動ダンパ10が伸張する伸側行程で、ロッド側室17の作動油が伸側流路36、ロッド内流路29を通ってエンド側室18へと流入し、ピストンロッド30の退出体積分の作動油がタンク室19からチェック弁21を開いてエンド側室18へと流入する。このとき、オリフィス23は伸側流路36を流れる作動油に抵抗を付与し、減衰力が発生する。
【0035】
同じく中間ストローク範囲において左右動ダンパ10が収縮する圧側行程で、エンド側室18の作動油がピストン15のチェック弁20を開いてロッド側室17へと流入し、ピストンロッド30の侵入体積分の作動油がエンド側室18からロッド内流路29、圧側流路49を通ってタンク室19へと流入する。このとき、オリフィス24は圧側流路49を流れる作動油に抵抗を付与し、減衰力が発生する。
【0036】
作動油が各オリフィス23,24を通過する過程で付与される抵抗によって発生する中間ストローク範囲の減衰力は、図5に示すように、ピストン15の速度が高まるのに応じて0から次第に大きくなり、車体の左右方向の振動が有効に減衰される。
【0037】
例えば車両のカーブ走行時やポイント通過時あるいはカント時等の台車への入力が大きい走行時に、中心ピンがストッパゴムに当接する前に、左右動ダンパ10は中間ストローク範囲を超えて両端ストロークエンド範囲に入り、検出ロッド40のスプール外周面47,48がピストンロッド30のランド部35に摺接し、ロッド内流路29を閉塞する。
【0038】
ストロークエンド範囲における伸側行程で、図3に示すように、スプール外周面47がランド部35に摺接し、ロッド内流路29を閉塞する。これにより、ロッド側室17の作動油がリリーフ弁25を開いてタンク室19へと流入し、タンク室19の作動油がチェック弁21を開いてエンド側室18へと流入する。
【0039】
ストロークエンド範囲における圧側行程で、図4に示すように、スプール外周面48がランド部35に摺接し、ロッド内流路29を閉塞する。これにより、エンド側室18の作動油がチェック弁20を開いてロッド側室17へと流入し、ピストンロッド30の侵入体積分の作動油がロッド側室17からリリーフ弁25を開いてタンク室19へと流入する。
【0040】
両端ストロークエンド範囲における伸側、圧側の作動時に作動油がを通過する過程で付与される抵抗によって発生する減衰力は、図5に示すように、0より大きい値から立ち上がり、ピストン15の速度に応じて次第に大きくなる。
【0041】
したがって、左右動ダンパ10が中間ストローク範囲を超えてストロークエンド範囲に移るのに伴って減衰力が段階的に高まる。これによって、台車への入力が小さい走行時に左右動ダンパ10は中間ストローク範囲で作動して適正な減衰力を発生し、車両の乗り心地を損なわないで済む。そして、台車への入力が大きい走行時、左右動ダンパ10は中間ストローク範囲を超えて両端ストロークエンド範囲で作動して減衰力を大幅に高め、車体の中心ピンがストッパゴムに衝突する際の衝撃を小さくし、衝突音の発生を抑えられる。
【0042】
スプール溝43はその両端部にロッド内流路29の断面積を軸方向について次第に縮小する傾斜部45,46を有しているため、スプール外周面47,48がランド部35に摺接してロッド内流路29を閉塞する前に、ストロークに応じてロッド内流路29を流れる作動油流量を絞る。このため、図5に領域aとして示すように両端ストロークエンド範囲における減衰力の立ち上がりが滑らかになり、円滑な作動性が得られる。
【0043】
他の実施の形態として、要求される減衰特性によってはリリーフ弁25に代えて固定オリフィスを用いてもよい。
【0044】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す左右動ダンパの断面図。
【図2】同じくピストンロッドの断面図。
【図3】同じく伸側ストロークエンド範囲における左右動ダンパの断面図。
【図4】同じく圧側ストロークエンド範囲における左右動ダンパの断面図。
【図5】同じく減衰力特性を示す線図。
【図6】従来例を示す構成図。
【符号の説明】
10 左右動ダンパ
13 インナチューブ(シリンダ)
17 ロッド側室
18 エンド側室
19 タンク室
23 オリフィス(絞り)
24 オリフィス(絞り)
25 リリーフ弁
29 ロッド内流路
30 ピストンロッド
36 伸側流路
40 位置検出ロッド
45 傾斜部
46 傾斜部
49 圧側流路
Claims (1)
- 台車に対する車体の左右方向の動きに応じてシリンダの内側でピストンロッドが相対的に移動して伸縮する左右動ダンパを設け、前記ピストンロッド内にストロークに応じて作動流体が流れるロッド内流路を形成し、前記シリンダ側に固定されストロークに応じて前記ピストンロッドの内側で相対的に移動する位置検出ロッドを備え、ストロークエンド領域で前記位置検出ロッドが前記ロッド内流路を閉塞して減衰力を高める構成とし、前記ピストンロッドの内側に環状のランド部を形成し、前記位置検出ロッドにこのランド部との間で前記ロッド内流路を画成するスプール溝とを形成し、このスプール溝にその軸方向の端部に向けて前記ロッド内流路の断面積を次第に縮小する傾斜部を形成し、作動流体を伸側作動時に縮小するロッド側室から前記ロッド内流路へと流出させる伸側流路を前記ピストンロッドの途中に形成し、この伸側流路を流れる作動流体に抵抗を付与する絞りを設け、作動流体を圧側作動時に縮小するエンド側室から前記ロッド内流路を介してタンク室へと導く圧側流路を中空の前記位置検出ロッドの内側に形成し、この圧側流路を流れる作動流体に抵抗を付与する絞りを設け、伸側作動時に縮小するロッド側室の作動流体をタンク室へと導くリリーフ弁を備え伸側行程と圧側行程の両方で中間ストローク範囲を超えたストロークエンド範囲で前記位置検出ロッドによって前記ロッド内流路が閉塞されるのに伴って、前記ロッド側室の作動流体が前記リリーフ弁を開いて前記タンク室へと流入する構成としたことを特徴とする鉄道車両の左右動減衰装置。
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