JP4408781B2 - 作業機の変速操作構造 - Google Patents

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Description

本発明は、田植機、コンバイン、などの農用の作業機に用いられる変速操作構造に関する。
上記変速操作構造としては、走行用の変速装置を変速操作する変速操作具とエンジンの調速機構を連係して、変速操作具を中立から増速方向に操作するに連れて前記調速機構を高速方向に操作するよう構成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−104082号公報
上記変速操作構造によると、変速操作具を中立位置に操作すると所定のアイドリング状態になり、変速操作具を増速方向に操作して走行速度を高めてゆくに連れてエンジン回転速度も高められることになり、変速操作とアクセル操作を同時に行うことで操作性を向上することができるとともに、燃費の向上にも有効となるものであるが、変速操作具を中立位置に操作した時のアイドリング回転速度が一定になるために、変速操作具を中立位置から少しだけ操作して低速で走行しながら作業を行う場合、エンジン回転速度がアイドリング回転速度より少し高い程度となり、エンジン出力の低い状態で作業することになり、作業条件によっては作業負荷あるいは走行負荷の増大によってエンジンストップが発生するおそれがあった。
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、変速操作とアクセル操作を同時に行うことで操作性を向上することができるものでありながら、任意のエンジン出力での低速走行をも行うことができるようにすることを主たる目的としている。
第1の発明は、走行用の変速装置を変速操作する変速操作具とエンジンに装備された調速機構とを連係部材を介して連係して、前記変速操作具を中立から増速方向に操作するに連れて前記調速機構を高速方向に操作するよう構成し、前記調速機構を任意に操作する人為操作具と前記調速機構とを操作ワイヤを介して連係して、前記人為操作具を高速側に操作するに連れて前記調速機構を高速方向に操作するよう構成し、前記人為操作具が高速側の操作限界位置に操作された時のエンジン回転速度を、前記変速操作具が最高速度位置に操作された時のエンジン回転速度よりも低く設定してあり、前記変速操作具を前進域と後進域とに亘って操作可能に構成し、前進域の操作および後進域の操作によって共通の前記連係部材を変位させて前記調速機構を操作するよう構成してあり、前記変速操作具の前進域への操作によって変位される前進側操作部材と、後進域への操作によって変位される後進側操作部材を備え、前記前進側操作部材を前記調速機構に前記連係部材を介して連動連結するとともに、前記後進側操作部材によって前記前進側操作部材を片当たり操作するよう構成してあるものである。
第2の発明は、走行用の変速装置を変速操作する変速操作具とエンジンに装備された調速機構とを連係部材を介して連係して、前記変速操作具を中立から増速方向に操作するに連れて前記調速機構を高速方向に操作するよう構成し、前記調速機構を任意に操作する人為操作具と前記調速機構とを操作ワイヤを介して連係して、前記人為操作具を高速側に操作するに連れて前記調速機構を高速方向に操作するよう構成し、前記人為操作具が高速側の操作限界位置に操作された時のエンジン回転速度を、前記変速操作具が最高速度位置に操作された時のエンジン回転速度よりも低く設定してあり、前記連係部材が連係ワイヤであり、前記連係ワイヤの一端側のインナワイヤを前記変速操作具に連結し、前記連係ワイヤの他端側のアウタワイヤを前記調速機構に連結し、さらに、前記連係ワイヤの他端側のインナワイヤを位置固定して、前記変速操作具を中立から増速方向に操作するに連れて前記調速機構を高速方向に操作するよう構成し、前記操作ワイヤの一端側のインナワイヤを前記人為操作具に連結し、前記操作ワイヤの他端側のアウタワイヤを前記調速機構に連結し、さらに、前記操作ワイヤの他端側のインナワイヤを位置固定して、前記人為操作具を高速側に操作するに連れて前記調速機構を高速方向に操作するよう構成してあるものである。
上記構成によると、変速操作具を中立位置に操作するとエンジンは所定の低速状態になり、変速操作具を増速方向に操作して走行速度を高めてゆくに連れてエンジン回転速度も高められて出力が高められる。また、人為操作具を操作して調速機構を任意に操作しておくことで、変速操作具を低速に操作した状態でもエンジン回転速度を適度に高くしてエンジン出力を高めることが可能となる。
また、人為操作具を高速側の操作限界位置に操作した状態からでも、変速操作具で更にエンジンを増速操作することができ、高負荷作業や高負荷走行においてもエンジンの加速性を確保して、機動性に優れた作業や走行を行うことができる。
従って、上記構成によると、変速操作とアクセル操作を同時に行うことで操作性を向上することができるものでありながら、高いエンジン出力状態での低速走行も可能となり、広範な負荷の作業や走行に好適に対応することができる。
第1の発明によると、前進変速および後進変速にかかわらず共通の連係部材を介して調速機構を操作することができ、さらに、連係部材は前進側操作部材にのみ連結して、後進側操作部材によって前進側操作部材を片当たり操作するようにすればよいので、前進操作系と後進操作系の2種の連係部材を利用する構造に比べて連係部材を節減することができ、構造の簡素化およびコスト低減に有効となる。
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、
前記人為操作具が、前記変速操作具が中立にある時の前記調速機構の操作位置を変更調節するものである。
上記構成によると、変速操作具が中立位置にして走行を停止している時に少しアクセルアップすることでエンジン始動を容易に行うことが可能となる。
第4の発明は、上記第1〜3のいずれか一つの発明において、
前記人為操作具が高速側の操作限界位置にある時にエンジンのトルク効率が最大となるよう前記調速機構のトルク特性を設定してあるものである。
上記構成によると、人為操作具を高速側の操作限界位置に操作することで、エンジン出力を効率よく使って高負荷作業や高負荷走行を行うことができる。
図1、図2に、作業機の一例として乗用型田植機が示されている。この乗用型田植機は、操向自在な左右一対の前輪1と操向不能な左右一対の後輪2とを備えた乗用型の走行機体3の後部に、6条植え仕様に構成された苗植付け装置4が油圧シリンダ5によって駆動される平行四連式のリンク機構6を介して昇降自在に連結されるとともに、機体後部に施肥装置7が装備された構造となっている。
前記走行機体3における機体フレーム8の前部には、前輪1を軸支したミッションケース9が連結固定されるとともに、機体フレーム8の後部には、後輪2を軸支した後部伝動ケース10がローリング自在に支持されている。また、ミッションケース9から前方に延出された前フレーム11にエンジン12が横向きに搭載されてボンネット13で覆われているとともに、エンジン12の後方に位置する搭乗運転部には、前輪1を操向操作するためのステアリングハンドル14、運転座席15、ステップ16などが備えられ、また、機体前部の左右には、予備の苗を複数段に載置収容する予備苗のせ台17が備えられている。
前記苗植付け装置4は、6条分の苗を載置して左右方向に設定ストロークで往復移動される苗のせ台21、苗のせ台21下端から1株分づつ苗を切り出して圃場に植付けてゆく6組の回転式の植付け機構22、植付け箇所を整地する3個の整地フロート23、等を備えて構成されている。また、前記施肥装置7は、運転座席15と苗植付け装置4との間において走行機体3上に搭載されており、粉粒状の肥料を貯留する肥料ホッパー24、この肥料ホッパー24内の肥料を設定量づつ繰り出す繰出し機構25、繰り出された肥料を供給ホース26を介して各整地フロート23に備えた作溝器27に風力搬送する電動ブロア28、などを備えており、作溝器27によって田面Tに形成した溝に肥料を送り込んで埋設してゆくよう構成されている。
図14,図15に、この田植機の伝動構造の概略が示されている。前記ミッションケース9の側面には、エンジン12にベルト連動された主変速用の変速装置として静油圧式の無段変速装置(HST)41が連結され、その出力がミッションケース9に入力されて作業系と走行系とに分岐される。
分岐された作業系の動力は、ワンウエイ・クラッチ42によってその正転動力のみが取出され、6段のギヤ変速が可能な株間変速機構43および植付けクラッチ40を経て作業用動力取出し軸(PTO軸)45から取出され、伝動軸46を介して苗植付け装置4に伝達されるようになっている。
分岐された走行系動力は、ギヤ式の副変速機構47によって高低2段に変速された後、前輪系と後輪系に再度分岐され、前輪系の動力はデフロック可能なデフ装置48を介して左右の前輪1に伝達されるとともに、後輪系の動力は伝動軸49を介して後部伝動ケース10に伝達され、多板式のサイドクラッ50を介して左右の後輪2に伝達される。後部伝動ケース10には機体停止用の多板式のブレーキ51が装備されており、このブレーキ51は、ステップ16の右側足元に配備された走行停止用の単一のペダル52に機械的に連動連結されている。
ここで、前記無段変速装置41は、ステアリングハンドル14の左脇に配備された主変速レバー(変速操作具)53で変速操作されるとともに、副変速機構47は、運転座席15の左横側に配備された副変速レバー54によって切換え操作されるようになっている。また、前輪1のデフ装置48は、足元のデフロックペダル55の踏み込みによってデフロックされて、左右の前輪1が等速で駆動されるようになっている。
詳細な構造は図示されていないが、左右のサイドクラッチ50は前輪1の操向に連動して自動操作されるものであり、ステアリングハンドル14によって前輪1を左または右に設定角度(例えば30°)以上に操向すると、旋回内側となる後輪2のサイドクラッチ50が自動的に切り操作されて、円滑で小回りの利いた旋回が行われる。
次に、前記変速装置41の変速操作構造について説明する。
図7,9に示すように、ステアリングハンドル14を支持するハンドルポスト61には支持ブラケット62が固着され、この支持ブラケット62の左側端部には、支軸63を介してデテント板64が横向き支点a周りに前後揺動可能に支持され、このデテント板64に前記主変速レバー53が前後向き支点b周りに左右揺動可能に支持されている。ハンドルポスト61を支持する支持枠65に、横向き支点c周りに回動可能に中継回動部材66が支持されており、この中継回動部材66とデテント板64とが連係ロッド67を介して連係され、さらに、この中継回動部材66と、無段変速装置41の変速操作軸68に連結された変速アーム69とが連係ロッド70を介して連係されている。
図9,11に示すように、前記支持ブラケット62にはガイド板71が固着されるとともに、このガイド板71に形成された段違い状の案内溝72に、主変速レバー53に基部から下向きに延出された案内ロッド53aが貫通されており、案内溝72と案内ロッド53aとの係合案内作用によって主変速レバー53を所定の段違い操作径路に沿って前後に揺動操作することで、デテント板64を正逆に回動させて無段変速装置41を前進域から後進域までの範囲で変速操作することが可能となっている。
図12に示すように、段違い操作径路の段違い部位が無段変速装置41の中立位置Nに相当し、その前方に前進変速操作径路Fが、また、後方に後進変操作径路Rがそれぞれ形成されるとともに、デテント板64の外周に並列形成した9つの凹部64aに、片持ちバネレバー73の遊端に支持したデテントローラ74を弾性係入させることで、主変速レバー53を前進5段(F1 〜F5 )、中立位置N、および、後進3段(R1 〜R3 )の各変速位置に保持することができるようになっている。
図8に示すように、無段変速装置41の前記変速操作軸68は、変速アーム69に連設したV形カム69aと、このV形カム69aにバネ75で押圧される位置決めローラ76とからなる中立位置決め機構77によって中立位置Nに機械的に安定保持されるようになっている。
主変速レバー53が前進変速操作径路Fに操作されている前進走行状態、あるいは、後進変速操作径路Rに操作されている後進走行状態で機体停止用の前記ペダル52を踏み込み操作すると、主変速レバー53を中立位置Nにまで強制的に復帰作動させるようになっており、その構造が図3〜図6に示されている。
つまり、上記変速装置操作部の後方には、支点e周りに前後揺動可能に牽制作動部材81が配備されている。この牽制作動部材81にはアジャストボルト81bによって支点f周りに位置微調節可能な牽制金具81aが備えられており、牽制作動部材81の前縁部が、前記中継回動部材66の支点cより上方箇所に設けた第1接当ピン82に後方から対向するよう構成されるとともに、牽制金具81aの前縁部が、中継回動部材66の支点cより下方箇所に設けた第2接当ピン83に後方から対向するよう配備されている。
他方、前記ペダル52を連結したペダル支軸84の他端部には牽制操作アーム85が固着され、この牽制操作アーム85の遊端に回動自在に枢支したボス部材86に、前記牽制作動部材81の下端から後方に向けて延出された押し引きロッド87の後端部が挿通連結されている。ここで、押し引きロッド87は、ボス部材86に対して一定範囲でのみ前後にスライド自在に挿通支持されるとともに、予め初期圧縮変形して押し引きロッド87に外嵌装着した圧縮コイルバネ88によって押し引きロッド87はボス部材86に対して前方スライド限界にスライド付勢されている。
図3は、ペダル52が踏み込み操作されないで主変速レバー53が中立位置Nにある状態を示し、図4は、ペダル52が踏み込み操作されないで主変速レバー53が前進の最高速である前進5速F5 にある状態を示し、また、図5は、ペダル52が踏み込み操作されないで主変速レバー53が後進の最高速である後進3速R3 にある状態を示している。
これによると、主変速レバー53が前進変速操作径路Fにある状態(例えば図4の状態)でペダル52を踏み込み操作すると、牽制操作アーム85が図中反時計方向に回動されることで押し引きロッド87が前方(図では左方)に突き出され、牽制作動部材81は支点e周りに時計方向に揺動操作される。これによって、牽制作動部材81は第1接当ピン82を前方に接当押圧し、中継回動部材66は支点c周り反時計方向に強制回動され、主変速レバー53が中立位置N側に向けて戻されてゆく。
そして、主変速レバー53が中立位置Nに到ると、図6に示すように、第2接当ピン83も牽制金具81aに接当することになり、支点cの上下両側に位置する第1接当ピン82および第2接当ピン83が共に牽制作動部材81に接当することで、中継回動部材66は、主変速レバー53が中立位置Nとなる一定姿勢に保持される。また、第1接当ピン82および第2接当ピン83に接当した牽制作動部材81自体も、それ以上時計周りに回動することが不能となる。なお、牽制作動部材81の牽制金具81aを位置調節することで、第1接当ピン82および第2接当ピン83を共に牽制作動部材81に接当させて中継回動部材66を正確に中立復帰させることができる。
ここで、圧縮コイルバネ88によって与えられた初期圧縮力は、主変速レバー53を強制移動させるのに必要な操作力より大きく設定されており、主変速レバー53が中立位置Nに到るまでは、圧縮コイルバネ88は操作反力で圧縮変形されることはない。そして、主変速レバー53が中立位置Nに到った後、更にペダル52が踏み込み操作されると、前方に移動不能となった押し引きロッド87に対して牽制操作アーム85が圧縮コイルバネ88を更に圧縮変形させながら図中反時計方向に回動されることで十分なブレーキ操作ストロ−クが確保される。
また、主変速レバー53が後進変速操作径路Rにある状態(例えば図5の状態)でペダル52を踏み込み操作すると、牽制操作アーム85が図中反時計方向に回動されることで押し引きロッド87が前方(図では左方)に突き出され、牽制作動部材81が支点e周りに時計方向に揺動操作される。これによって、牽制作動部材81の牽制金具81aは第2接当ピン83を前方に接当押圧し、中継回動部66は支点c周り時計方向に強制回動され、主変速レバー53が中立位置N側に向けて戻されてゆく。そして、主変速レバー53が中立位置Nに到ると、図6に示すように、第1接当ピン82も牽制動部材81の牽制金具81aに接当することになり、支点cの上下両側に位置する第1接当ピン81および第2接当ピン83が、牽制作動部材81に共に接当することで、中継回動部材66は主変速レバー53が中立位置Nとなる一定姿勢に保持される。
この場合も、主変速レバー53が中立位置Nに到るまでは、圧縮コイルバネ88は操作反力で圧縮変形されることはなく、主変速レバー53が中立位置Nに到った後、更にペダル52が踏み込み操作されることで、前方に移動不能となった押し引きロッド87に対して牽制操作アーム85が圧縮コイルバネ88を更に圧縮変形させながら図中反時計方向に回動される。
なお、ペダル52を踏み込み操作して主変速レバー53を中立位置N側に向けて強制的に戻す際に、中立位置Nに到達するまでに踏み込みを止めれば、主変速レバー53はペダル52の踏み込み位置に応じた変速位置にまで減速移動してその位置に保持されることになり、従って、両手をハンドル操作や他の操作に使いながら、足操作だけで走行速度の減速を行うことができ、操作性を向上するのに有効となっている。
また、前記主変速レバー53によって無段変速装置41を操作すると、これに連動してエンジン12の回転速度が変更されるように構成されており、以下、その構造を図10,11に基づいて説明する。
図10に示すように、主変速レバー53の案内ロッド53aを案内する案内溝62を備えたガイド板71の上面には、前進変速操作径路Fに重複するように前進側操作部材91が支点g周りに揺動可能に枢支連結されるとともに、後進変操作径路Rに重複するように後進側操作部材92が支点h周りに揺動可能に枢支連結されている。そして、前進側操作部材91の後端部に連係ワイヤ(連係部材)93のインナワイヤ後部93irが連結されるとともに、そのアウタワイヤ93oの後端が位置固定のワイヤ受け金具94に支持されている。また、前記エンジン12に装備された機械式の調速機構(メカニカルガバナ)95の調速レバー96に連設したワイヤ受け部96aが前記連係ワイヤ93におけるアウタワイヤ93oの前端が連結されるとともに、ワイヤ受け部96aから引き出されたインナワイヤ前部93ifの端部が位置固定のワイヤ受け金具98に連結支持されている。また、前進側操作部材91の後端部には、インナワイヤ後部93irをアウタワイヤ側に引き戻す方向に前進側操作部材91を揺動付勢する復帰バネ99が連結され、かつ、前進側操作部材91の付勢方向への揺動限界がガイド板71上のストッパ100によって接当規制されている。
他方、前記後進側操作部材92は支点hを越えて後方にまで延出され、その後端部に屈曲起立させた係合片92aが前進側操作部材91の後端部に前記付勢揺動方向から係合されている。また、この後進側操作部材92の復帰揺動限界がガイド板61上のストッパ101によって接当規制されている。
前記調速機構95の調速レバー96は復帰バネ102によって「低速」側に揺動付勢されており、連係ワイヤ93のインナワイヤ前部93ifが弛められると調速レバー96が「低速」側に付勢揺動され、固定されているインナワイヤ前部93ifがアウタワイヤ93oに引き込み操作されると、アウタワイヤ93oの前端を支持した調速レバー96が相対的
に復帰バネ102に抗して「高速」側に揺動されるようになっており、図10に示すように、主変速レバー53が前進側中立位置Nfにある時には、調速機構95は所定の低速位置に維持されている。
そして、図11(イ)に示すように、主変速レバー53が前進側中立位置Nfを越えて前進変速操作径路Fに操作されると、前進側操作部材91が復帰バネ99に抗して図中時計方向に接当揺動されて連係ワイヤ93のインナワイヤ後部93irが引き出され、これによってインナワイヤ前部93ifがアウタワイヤ93oに引き込み操作され、調速レバー96が「高速」側に変位してエンジン回転速度が高められる。また、図11(ロ)に示すように、主変速レバー53が前進側中立位置Nfから後進側中立位置Nfあるいは後進変速操作径路Rに操作されると、後進側操作部材92が支点h周りに図中時計方向に揺動され、係合片92aを介して後進側操作部材92に接当連係された前進側操作部材91が復帰バネ99に抗して図中時計方向に接当揺動されてインナワイヤ後部93irが引き出され、上記のように調速機構95の調速レバー96が「高速」側に変位してエンジン回転速度が高められる。
なお、主変速レバー53はねじりバネ90によって支点b周りに横方向に回動付勢されており、中立Nで放置された自由状態では、図10中に示すように、前進変速操作径路Fに臨む前進側中立Nfに安定しており、この状態では調速機構95は予め設定された所定の低回転速度(アイドリング回転速度)に維持されている。従って、上記のように、主変速レバー53を前進側中立Nfから後進側中立Nrに移動するだけでアクセルアップした状態となる。そして、主変速レバー53の変操作位置とエンジン回転速度との関係は、前進側操作部材91および後進側操作部材92における側面形状によって決められるものであり、その一例が図13に示されている。
また、主変速レバー53が後進側中立Nrを含む後進変操作径路Rに操作されて後進側操作部材92が揺動操作されると、これがガイド板71に取付けられたスイッチ103で検知されるようになっている。この後進検出用のスイッチ103は、苗植付け装置4を自動的に上限まで上昇させる制御(バックアップ制御と呼称している)を実行する起動スイッチとなっている。
このバックアップ制御は、圃場内で機体を後進移動させると自動的に機体後部の苗植付け装置4を強制上昇させて、畦などに衝突するのを回避するために導入されているものであり、速やかな上昇制御が望まれる。ここで、上記したように、主変速レバー53が後進側中立Nrに操作された時点からエンジン回転速度が高められるので、エンジン12の出力で駆動される油圧ポンプの吐出量は多くなり、速やかな上昇制御を実行することができるのである。
上記のように主変速レバー53の変速操作に連動して操作される調速機構95は、人為的に調節操作することが可能となっており、以下、その構造について説明する。
図10に示すように、ステアリングハンドル14の右脇には、前後揺動可能、かつ、任意の操作位置で摩擦保持可能なハンドアクセルレバー(人為操作具の一例)31が装備されており、このハンドアクセルレバー31に操作ワイヤ32のインナワイヤ後部32irが連結されるとともに、そのアウタワイヤ32oの後端が位置固定のワイヤ受け金具33に連結支持されている。そして、この操作ワイヤ32におけるアウタワイ32oの前端が前記調速レバー86のワイヤ受け部96aに連結支持されるとともに、アウタワイヤ32o前端から導出されたインナワイヤ前部32ifが前記連係ワイヤ93のインナワイヤ前部93ifを連結支持したワイヤ受け金具98に連結支持されている。
上記構成によると、ハンドアクセルレバー31を低速側の限界位置に操作している状態において主変速レバー53が前進側中立Nfにある時、ワイヤ受け金具98に連結された2本のインナワイヤ前部93if、32ifは共に弛みのない状態にあり、調速機構95の調速レバー96は最低速度位置にあり、エンジン12は所定のアイドリング回転速度で作動する。
ここで、主変速レバー53が前進側中立Nfに位置したままでハンドアクセルレバー31を高速側の任意の位置まで操作して摩擦保持すると、その操作量に応じて操作ワイヤ32のインナワイヤ後部32irが引き操作され、これによってインナワイヤ前部32ifが引き込み操作されて調速レバー96は復帰バネ102に抗して「高速」側に操作され、ハンドアクセルレバー31の保持位置に対応した位置で調速レバー96も保持される。これによって主変速レバー53が前進側中立Nfにある時のエンジン12の最低回転速度をアイドリング回転速度よりも任意に高くして保持することができるのである。
従って、寒冷時や寒冷地などでエンジン始動が困難な場合には、主変速レバー53を前進側中立Nfに位置させたまま、ハンドアクセルレバー31を少し高速側に操作してアクセルアップ状態をもたらし、エンジン始動を確実に行うことができるのである。
また、上記のようにハンドアクセルレバー31によって操作ワイヤ32を引き操作してアクセルアップした状態では、他方の連係ワイヤ93におけるインナワイヤ前部93ifは弛んだ状態にあり、主変速レバー53を前進変速域Fあるいは後進変速域Rに操作して連係ワイヤ93のインナワイヤ前部93ifが緊張状態になるまでは操作ワイヤ32によって調速レバー96を操作保持した状態が続き、それ以上に主変速レバー53を高速側に操作してはじめて連係ワイヤ93を介した上記したアクセルアップ操作が行われることになる。
そして、ハンドアクセルレバー31が高速側の操作限界位置まで操作された状態では調速レバー96は未だ最高速度セット位置までは操作されておらず、この状態で主変速レバー53を増速側の操作限界位置まで操作すると更に調速レバー96は高速側に操作されることになる。つまり、主変速レバー53を前進最高速まで操作した時のエンジン回転速度が、主変速レバー53を中立Nにしてハンドアクセルレバー31を最高速位置まで操作したときのエンジン回転速度よりも高くなるようになっている。また、ハンドアクセルレバー31が高速側の操作限界位置まで操作された時にエンジン12のトルク効率が最大となるよう調速機構95のトルク特性を設定されている。
〔別実施形態〕
本発明に係る変速操作構造は、以下に示すような形態にして実施することもできる。
(1)図16,17に示すように、連係ワイヤ93のインナワイヤ端金具93ieを前進側操作部材91に連結するピン91aに後進側操作部材92を片当たり係合させることで、後進側操作部材92の揺動によって前進側操作部材91を接当操作することもできる。
(2)走行用の変速装置41としては、静油圧式の無段変速装置(HST)を利用する他に、ギヤ式の多段変速装置、ベルト式無段変速装置と正逆転切換え機構を組合わせたもの、遊星ギヤを利用した無段変速装置、などを単独あるいは、組合わせて利用することができる。
(3)無段変速装置41を操作する変速操作具としては、レバーのほかペダルを利用するものであってもよい。
(4)実施例では、主変速レバー(変速操作具)53を後進側中立Nrに操作するとアクセルアップされるように後進側操作部材92の形状を設定しているが、後進側中立Nrでは未だアクセルアップせず、後進側中立Nrを越えて後進変速域Rに操作されるとアクセルアップ作動が行われるように後進側操作部材82の形状を設定して実施することもできる。
(5)前進側操作部材91と調速レバー96とを連係する連係部材としては上記のように連係ワイヤ93を利用する他に、ロッドやリンクを組み合わせたリンク機構を使用することもできる。
(6)前記デテント板64の外周形状を図18に示すように形成して、中立Nから前進2速F2までの低速域では無段に変速調節することができ、それより高速域の前進3速F3から前進5速F5までを有段に保持し、また、中立Nから後進2速R2までの低速域では無段に変速調節することができ、後進進3速R3を係合保持する仕様にすることもできる。
(7)前記デテント板64の外周形状を図19に示すように形成して、中立N、前進4速F4、および、後進2速R2のみを係合保持し、他の高速域を無段変速可能な仕様にすることもできる。
(8)前記デテント板64の外周形状を図20に示すように形成して、前進9段(F1〜F9)、中立位置N、および、後進6段(R1〜R6)の各位置で保持する仕様にすることもできる。
乗用田植機の全体側面図 乗用田植機の全体平面図 中立状態の変速操作部を示す側面図 前進変速状態の変速操作部を示す側面図 後進変速状態の変速操作部を示す側面図 強制中立復帰作動した状態の変速操作部を示す側面図 変速操作部の側面図 変速操作部における中立位置決め機構を示す平面図 変速操作部の一部を示す正面図 アクセル操作部とエンジン調速機構との連係構造を示す平面図 前進および後進変速操作によるアクセルアップ状態を示すアクセル操作部の平面図 変速操作部のデテント構造を示す側面図 変速操作位置とエンジン回転速度との関係を示す特性線図 走行系の伝動系統図 作業系の伝動系統図 別実施例のアクセル操作部を示す平面図 別実施例のアクセル操作部の要部を示す側面図 変速操作部におけるデテント構造の別実施例を示す側面図 変速操作部におけるデテント構造の別実施例を示す側面図 変速操作部におけるデテント構造の別実施例を示す側面図
12 エンジン
31 人為操作具(ハンドアクセルレバー)
32 操作ワイヤ
41 変速装置
53 変速操作具(主変速レバー)
91 前進側操作部材
92 後進側操作部材
93 連係部材(連係ワイヤ)
95 調速機構

Claims (4)

  1. 走行用の変速装置を変速操作する変速操作具とエンジンに装備された調速機構とを連係部材を介して連係して、前記変速操作具を中立から増速方向に操作するに連れて前記調速機構を高速方向に操作するよう構成し、
    前記調速機構を任意に操作する人為操作具と前記調速機構とを操作ワイヤを介して連係して、前記人為操作具を高速側に操作するに連れて前記調速機構を高速方向に操作するよう構成し、
    前記人為操作具が高速側の操作限界位置に操作された時のエンジン回転速度を、前記変速操作具が最高速度位置に操作された時のエンジン回転速度よりも低く設定してあり、
    前記変速操作具を前進域と後進域とに亘って操作可能に構成し、前進域の操作および後進域の操作によって共通の前記連係部材を変位させて前記調速機構を操作するよう構成してあり、
    前記変速操作具の前進域への操作によって変位される前進側操作部材と、後進域への操作によって変位される後進側操作部材を備え、前記前進側操作部材を前記調速機構に前記連係部材を介して連動連結するとともに、前記後進側操作部材によって前記前進側操作部材を片当たり操作するよう構成してあることを特徴とする作業機の変速操作構造。
  2. 走行用の変速装置を変速操作する変速操作具とエンジンに装備された調速機構とを連係部材を介して連係して、前記変速操作具を中立から増速方向に操作するに連れて前記調速機構を高速方向に操作するよう構成し、
    前記調速機構を任意に操作する人為操作具と前記調速機構とを操作ワイヤを介して連係して、前記人為操作具を高速側に操作するに連れて前記調速機構を高速方向に操作するよう構成し、
    前記人為操作具が高速側の操作限界位置に操作された時のエンジン回転速度を、前記変速操作具が最高速度位置に操作された時のエンジン回転速度よりも低く設定してあり、
    前記連係部材が連係ワイヤであり、
    前記連係ワイヤの一端側のインナワイヤを前記変速操作具に連結し、前記連係ワイヤの他端側のアウタワイヤを前記調速機構に連結し、さらに、前記連係ワイヤの他端側のインナワイヤを位置固定して、前記変速操作具を中立から増速方向に操作するに連れて前記調速機構を高速方向に操作するよう構成し、
    前記操作ワイヤの一端側のインナワイヤを前記人為操作具に連結し、前記操作ワイヤの他端側のアウタワイヤを前記調速機構に連結し、さらに、前記操作ワイヤの他端側のインナワイヤを位置固定して、前記人為操作具を高速側に操作するに連れて前記調速機構を高速方向に操作するよう構成してある作業機の変速操作構造。
  3. 前記人為操作具が、前記変速操作具が中立にある時の前記調速機構の操作位置を変更調節するものである請求項1又は2記載の作業機の変速操作構造。
  4. 前記人為操作具が高速側の操作限界位置にある時にエンジンのトルク効率が最大となるよう前記調速機構のトルク特性を設定してある請求項1〜3のいずれか一項に記載の作業機の変速操作構造。
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