JP4408307B2 - 瞬間硬化水性接着剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、接着強度および耐水接着強度に優れた2液別塗布型の瞬間硬化水性接着剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
木材やスレート板などの接着剤には、酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、尿素樹脂、ゴムのり、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物などが用いられてきたが、これらの従来の接着剤は、一部の有機溶剤系接着剤を除き、初期接着力が低いという問題がある。一方、初期接着力の比較的高い有機溶剤系接着剤も工場などの密閉された場所で使用する場合には、有機溶剤による毒性と火災の危険があり、用途が限定されるという問題がある。また、水性の接着剤の中でも近年環境問題への関心が高まるとともに、ホルマリン等の有害成分を放出する尿素樹脂等の使用は減少し、それらの問題のない酢酸ビニル系樹脂エマルジョンは耐水接着強度が低く、初期接着力、耐水接着強度、安全性の観点から、すべてのレベルを満足させる接着剤がないというのが現状である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この問題を解決する手段として、2液別塗布型の瞬間硬化水性接着剤が提案されており、この接着剤は、第1液と第2液を別々に調整し、保管しておき、接着に際しては、第1液を一方の被着面に塗布し、第2液を他方の被着面に塗布し、塗布面同士を接触、反応させて接着するものであって、特公平1−60192号公報には分子内にアセトアセチル基を有する高分子化合物の水溶液および/または水性エマルジョンからなる第1液とヒドラジン化合物の水溶液からなる第2液とからなる2液別塗布型の瞬間硬化水性接着剤が提案されている。この接着剤は、調製直後に使用した場合には、初期接着力は比較的高いが、アセトアセチル基がヒドラジン化合物以外にもアルデヒド化合物とも架橋反応をするため、第1液として保管中に大気中あるいはエマルジョン中に存在するアルデヒド化合物と架橋反応することにより第1液の保存安定性が劣り、水溶液、エマルジョンの状態で保存した場合、経時的な粘度上昇が見られると同時に、第2液と接触した場合の架橋反応性が保存時間の経過とともに低下するという問題がある。また、上記のアセトアセチル基を有する高分子化合物として、アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する)を製造する場合には、固体状のPVAと液体状のジケテンを不均一系で反応させるため、アセトアセチル基の導入にむらが生じ、耐水接着強度等の性能が良くないという問題がある。
【0004】
本発明は、このような従来の欠点を解決し、第1液と第2液を別々の状態で長期間保管してもそれぞれは安定であり、しかも接着に際して、別々に被接着面に塗布された第1液と第2液を接触させた場合、急速に架橋反応して高度な耐水接着強度、初期接着力を発現する2液別塗布型の瞬間硬化水性接着剤を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述の目的を達成するものであって、(A)ジアセトンアクリルアミド−脂肪酸ビニルエステルの共重合体のケン化物を乳化・分散剤とし、エチレン性不飽和単量体の重合体を分散質とする水性エマルジョンを含有する第1液と(B)ヒドラジン系化合物を含有する水性液からなる第2液とからなることを特徴とする2液別塗布型の瞬間硬化水性接着剤、および第1液(A)、第2液(B)の少なくとも一方に(C)酸性化合物を配合してなることを特徴とする2液別塗布型の瞬間硬化水性接着剤である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の2液別塗布型の瞬間硬化水性接着剤は、第1液(A)と第2液(B)とからなるものであって、第1液(A)は、ジアセトンアクリルアミド−脂肪酸ビニルエステルの共重合体のケン化物を乳化・分散剤とし、エチレン性不飽和単量体の重合体を分散質とする水性エマルジョンを含有する水性液であり、第2液(B)は、ヒドラジン系化合物を含有する水性液からなるものである。
【0007】
第1液(A)において用いられるジアセトンアクリルアミド−脂肪酸ビニルエステル共重合体のケン化物 (以下、DAVESと略記する) は、脂肪酸ビニルエステルとジアセトンアクリルアミドとを共重合して得た重合体をケン化するなどの公知の方法により製造することができる。
【0008】
上記の共重合に使用する脂肪酸ビニルエステルとしては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルが挙げられ、中でも酢酸ビニルが工業的に好ましい。
【0009】
上記の脂肪酸ビニルエステルとジアセトンアクリルアミドとの共重合方法は、従来から公知の塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などの各種の方法を採用することができ、中でもメタノールを溶剤として用いる溶液重合が工業的に好ましい。
【0010】
脂肪酸ビニルエステルとジアセトンアクリルアミドとを共重合して得た重合体のケン化方法は、従来から公知のアルカリケン化および酸ケン化を適用することができ、中でも重合体のメタノール溶液またはメタノールと水、酢酸メチル、ベンゼン等の混合溶液に水酸化アルカリを添加して加アルコール分解する方法が工業的に好ましい。
【0011】
上記のDAVESは、本発明の効果を阻害しない範囲で、脂肪酸ビニルエステルまたはジアセトンアクリルアミドと共重合可能な、例えばクロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和モノカルボン酸およびそのエステル・塩・無水物・アミド・ニトリル類、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等の不飽和二塩基酸モノアルキルエステル類、炭素数2〜30のα−オレフィン類、アルキルビニルエーテル類、ビニルピロリドン類とともに共重合したものであっても良い。この他、得られたDAVESを本発明の効果を阻害しない範囲で、アセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化、アセトアセチル化などの反応によって後変性したものでも良い。
【0012】
上記のDAVESのジアセトンアクリルアミド単位の含有量は特に制限はないが、0.1〜15モル%が望ましく、より好ましくは0.5〜10モル%である。ジアセトンアクリルアミド単位の含有量が少なすぎると、耐水接着強度および初期接着力が小さく、またDAVESは水溶性ポリマーであるが、含有量が多くなりすぎると、水溶性が低下し、作業性に問題を生じるおそれがある。
【0013】
また、上記のDAVESの重合度、ケン化度は特に制限されないが、20℃における4%水溶液粘度が3mPa.s以上、ケン化度85モル%以上が好ましい。
【0014】
第1液(A)の水性エマルジョンの分散質に使用されるエチレン性不飽和単量体の例としては、エチレン、プロピレン、イソプレンなどのオレフィン、塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化オレフィン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどのビニルエステル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2ーエチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2ーヒドロキシエチルなどのメタクリル酸エステル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルおよびこれらの4級化物、さらには、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,Nージメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド系単量体、その他Nービニルピロリドン、ブタジエン、イソブチレン、クロロプレンなどのジエン系単量体などが挙げられ、これらは単独あるいは2種以上を混合して用いられる。
【0015】
また、上記水性エマルジョンの製造方法としては、DAVESの水溶液を乳化・分散剤に用いて重合開始剤の存在下に前記エチレン性不飽和単量体を一時または連続的に添加して乳化重合させる方法、またエチレン性不飽和単量体をDAVESの水溶液を用いて乳化した混合物を、連続的に反応系に添加して乳化重合させる方法などがあり、その他にも、界面活性剤およびPVA等の水溶性高分子を用いて従来公知の方法で得られた水性エマルジョンにDAVESを後添加する方法などが挙げられる。
【0016】
なお、前記水性液中のDAVESの含有量については、水性液100重量部に対して、DAVES0.5重量部以上が好ましく、より好ましくは2重量部以上である。DAVESの含有量が少なすぎる場合は耐水接着強度、初期接着力の改良効果が小さくなる恐れがある。
【0017】
また、第1液(A)のDAVESを含有する水性液には、DAVES以外の水溶性樹脂、例えばPVA、変性PVA、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸誘導体、ゼラチン等の天然高分子、合成高分子、クレー、カオリン、タルク、シリカ、炭酸カルシウム等の無機充填剤、グリセリン、ソルビトール等の可塑剤、界面活性剤、消泡剤、キレート剤等を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0018】
第2液(B)において用いられるヒドラジン系化合物としては、例えばヒドラジン、ヒドラジンヒドラート、ヒドラジンの1水和物もしくは塩、カルボヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジオヒドラジド、ヘキサデカンジオヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、4,4′−ビスベンゼンジヒドラジド、1,4−ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、N,N′−ヘキサメチレンビスセミカルバジド、イタコン酸ジヒドラジド、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,3−ベンゼントリヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド、およびN−アミノポリアクリルアミドなどのヒドラジノ基を有する高分子化合物およびこれらのヒドラジン系化合物にケトン基を有するアセトン、メチルエチルケトンを反応させた例えばアジピン酸ジヒドラジドジアセトンヒドラゾン、アジピン酸ジヒドラジドジメチルエチルケトンヒドラゾンなどのヒドラジン系化合物の誘導体などが挙げられるが、これらに限らない。
【0019】
第2液(B)において用いられるヒドラジン系化合物の水性液は、ヒドラジン系化合物を含有する水溶液または水分散液であって、その濃度は特に制限は無いが、1〜50重量%が好ましく、より好ましくは3〜25重量%である。
【0020】
第1液(A)、第2液(B)の少なくとも一方に(C)酸性化合物を配合することができる。ここで(C)として用いられる酸性化合物としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、ギ酸、リン酸、クエン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アスコルビン酸、スルホン酸、シュウ酸、乳酸、グルコン酸、硫酸アルミニウム、塩化アンモニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウムなどが挙げられるが、これらに限られない。また、酸性化合物の添加量には、特に制限は無いが、第1液(A)、第2液(B)の少なくとも一方に混合した際の溶液、または分散液のpHが2.0〜6.0になることが好ましい。
【0021】
本発明の2液別塗布型の瞬間硬化水性接着剤は、接着に際しては、DAVESを含む水性液からなる第1液を一方の被着面に塗布し、ヒドラジン系化合物の水性液からなる第2液を他方の被着面に塗布し、両被着面を密着、貼り合わせるのであるが、その際の塗布量については特に制限は無いが、第1液が5〜300g/m2(固形分として)であり、第2液が0.1〜50g/m2(ヒドラジン系化合物として)であることが好ましい。
【0022】
本発明の2液別塗布型の瞬間硬化水性接着剤の作用機構については十分解明されたわけではないが、DAVESの水性液からなる第1液とヒドラジン系化合物の水性液からなる第2液がそれぞれ別々に塗布された被着面を貼り合わせる際に、DAVES分子中のカルボニル基とヒドラジン系化合物のヒドラジド基が急速に架橋反応を生ずるため、初期接着力が高く、高度な耐水接着強度が得られると考えられる。また、これらの第1液、第2液の少なくとも一方に酸性化合物を添加すると、反応時のpHが低下し、カルボニル基とヒドラジド基の反応速度が高くなるため、初期接着力がより高くなると考えられる。
【0023】
本発明の2液別塗布型の瞬間硬化水性接着剤は、短時間の圧締で十分な初期接着力が得られ、比較的低温で乾燥しても優れた耐水性を示すことから、木材、合板、パーティクルボード、ハードボード等の繊維質材料、スレート板、珪カル板、モルタル、タイル等の無機質材料、メラミン化粧板、ベークライト、発泡スチロール等のプラスチック材料、段ボール、板紙、クラフト紙等の紙質材料などの高速接着に有用である。
【0024】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
同実施例中、特にことわりのないかぎり、「%」および「部」は重量基準を表す。なお、実施例中の諸物性の測定方法を以下に示す。
【0025】
(1).初期接着力(セットタイム)
25mm×30mm×10mmの2片の木材試験片のうちの一方の試験片の接着面(25mm×30mm)に第1液を100g/m2塗布し、他方の試験片の接着面に第2液を50g/m2塗布し、その後、塗布面同士を密着し、直ちに2kgf の荷重で圧締した。各種圧締時間後に解圧して、2片の試験片の一方を固定し、他方に5kgf の荷重をかけて両試験片が剥離しないかどうかを調べ、両試験片が剥離しなくなった最短の圧締時間(秒)をセットタイムとした。このセットタイムは実用上の初期接着力が得られる最短の時間(秒)を意味する。
【0026】
(2).耐水接着強度
JISK−6852に基づき、25mm×30mm×10mmの2片の試験片の一方の接着面(25mm×30mm)に第1液を100g/m2塗布し、他方の試験片の接着面に第2液を50g/m2塗布し、その後、塗布面同士を密着し直ちに5kgf の荷重で4分間圧締した。解圧後、20℃×65%RHで72時間養生し、接着試験片を20℃の水に3時間浸漬した後、取り出して直ちに圧縮剪断接着強度(kgf/cm2 ) を測定した。
【0027】
(3).保存安定性(粘度上昇率)
第1液として用いた水溶液またはエマルジョンの作成直後の30℃での粘度と30℃で1ケ月放置した後の粘度を測定し、その粘度上昇率 (倍) を求めた。粘度上昇が見られない場合は1.0とし、その数値が大きいほど、保存安定性が良くないことを意味する。
【0028】
(4).総合評価
セットタイムが60秒以下で、耐水接着強度が50kgf /cm2 以上で、1ケ月放置後の粘度上昇率が1.2倍以下である場合を○、いずれかが前記目標レベルに達していない場合を×として評価を行った。
【0029】
実施例1
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えたガラス製重合容器に、イオン交換水500重量部、ジアセトンアクリルアミド単位を6.0モル%含有するDAVES(重合度1,700、ケン化度98.5モル%)39重量部を仕込み、95℃で完全に溶解した。これを70℃まで冷却し、過硫酸アンモニウム0.5重量部を添加し、窒素雰囲気下で攪拌しながら、酢酸ビニル460重量部を2時間かけて連続的に添加した後、80℃に昇温し、さらに2時間熟成反応を行い、乳化重合を完結させ、酢酸ビニル系樹脂エマルジョンを得た。
【0030】
第1液として上記の酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、第2液としてアシピン酸ジヒドラジドの10%水溶液を使用し、木材の接着を行い、セットタイム、耐水接着強度および第1液の保存安定性を測定した。結果を表1に示す。表1より明らかなように、セットタイムは短く、耐水接着強度も高く、また第1液の保存安定性も良好であった。
【0031】
実施例2
第2液としてカルボヒドラジドの10%水溶液を使用した以外は実施例1と同様にして、木材の接着を行い、セットタイム、耐水接着強度および第1液の保存安定性を測定した。結果を表1に示す。表1より明らかなように、セットタイムは短く、耐水接着強度も高く、また第1液の保存安定性も良好であった。
【0032】
実施例3
第2液としてアジピン酸ジヒドラジドの10%水溶液100部に塩化アルミニウム5部を添加した混合水溶液を使用した以外は実施例1と同様にして、木材の接着を行い、セットタイム、耐水接着強度および第1液の保存安定性を測定した。結果を表1に示す。表1より明らかなように、セットタイムは短く、耐水接着強度も高く、また第1液の保存安定性も良好であった。
【0033】
実施例4
第1液として実施例1で使用した酢酸ビニル系樹脂エマルジョン100重量部とジアセトンアクリルアミド単位を6.0モル%含有するDAVES(重合度1,700、ケン化度98.5モル%)の15%水溶液10部とを混合した混合液を使用した以外は実施例1と同様にして、木材の接着を行い、セットタイム、耐水接着強度および第1液の保存安定性を測定した。結果を表1に示す。表1より明らかなように、セットタイムは短く、耐水接着強度も高く、また第1液の保存安定性も良好であった。
【0034】
実施例5
第2液としてアジピン酸ジヒドラジドの10%水溶液100部に50%リン酸水溶液2部を添加した混合水溶液を使用した以外は実施例1と同様にして、木材の接着を行い、セットタイム、耐水接着強度および第1液の保存安定性を測定した。結果を表1に示す。表1より明らかなように、セットタイムは短く、耐水接着強度も高く、また第1液の保存安定性も良好であった。
【0035】
実施例6
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えたガラス製重合容器に、イオン交換水500重量部、ジアセトンアクリルアミド単位を4.5モル%含有するDAVES(重合度600、ケン化度98.6モル%)39重量部を仕込み、95℃で完全に溶解した。これを70℃まで冷却し、過硫酸アンモニウム0.5重量部を添加し、窒素雰囲気下で攪拌しながら、酢酸ビニル460重量部を2時間かけて連続的に添加した後、80℃に昇温し、さらに2時間熟成反応を行い、乳化重合を完結させ、酢酸ビニル系樹脂エマルジョンを得た。
【0036】
第1液として上記の酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、第2液としてアジピン酸ジヒドラジドの10%水溶液を使用し、木材の接着を行い、セットタイム、耐水接着強度および第1液の保存安定性を測定した。結果を表1に示す。表1より明らかなように、セットタイムは短く、耐水接着強度も高く、また第1液の保存安定性も良好であった。
【0037】
実施例7
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えたガラス製重合容器に、イオン交換水500重量部、重合度1,700、ケン化度98.5モル%の未変性PVA39重量部を仕込み、95℃で完全に溶解した。これを70℃まで冷却し、過硫酸アンモニウム0.5重量部を添加し、窒素雰囲気下で攪拌しながら、酢酸ビニル460重量部を2時間かけて連続的に添加した後、80℃に昇温し、さらに2時間熟成反応を行い、乳化重合を完結させ、酢酸ビニル系樹脂エマルジョンを得た。
【0038】
第1液として上記の酢酸ビニル系樹脂エマルジョン100重量部とジアセトンアクリルアミド単位を6.0モル%含有するDAVES(重合度1,700、ケン化度98.5モル%)の15%水溶液10部とを混合した混合液を使用した以外は実施例1と同様にして、木材の接着を行い、セットタイム、耐水接着強度および第1液の保存安定性を測定した。結果を表1に示す。表1より明らかなように、セットタイムは短く、耐水接着強度も高く、また第1液の保存安定性も良好であった。
【0039】
比較例1
第1液として実施例1で作製した酢酸ビニル系樹脂エマルジョンを使用し、第2液を使用せず、2片の木材の一方に第1液だけを塗布し、木材の接着を行い、セットタイム、耐水接着強度および第1液の保存安定性を測定した。結果を表1に示す。表1より明らかなように、セットタイムは長く、耐水接着強度も低く、実用レベルに達しなかった。
【0040】
比較例2
第1液として実施例7で作製した酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、第2液としてアジピン酸ジヒドラジドの10%水溶液を使用し、木材の接着を行い、セットタイム、耐水接着強度および第1液の保存安定性を測定した。結果を表1に示す。表1より明らかなように、セットタイムは長く、耐水接着強度も低く、実用レベルに達しなかった。
【0041】
比較例3
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えたガラス製重合容器に、イオン交換水500重量部、アセトアセチル基を6モル%含有するアセトアセチル化PVA(重合度1700、ケン化度98.5モル%)39重量部を仕込み、95℃で完全に溶解した。これを70℃まで冷却し、過硫酸アンモニウム0.5重量部を添加し、窒素雰囲気下で攪拌しながら、酢酸ビニル460重量部を2時間かけて連続的に添加した後、80℃に昇温し、さらに2時間熟成反応を行い、乳化重合を完結させ、酢酸ビニル系樹脂エマルジョンを得た。
【0042】
第1液として上記の酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、第2液としてアジピン酸ジヒドラジドの10%を使用し、木材の接着を行い、セットタイム、耐水接着強度および第1液の保存安定性を測定した。結果を表1に示す。表1より明らかなように、セットタイムは短かったものの、耐水接着強度は低く、第1液の保存安定性も実用レベルに達しなかった。
【0043】
【表1】
【0044】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、第1液と第2液を別々の状態で長期間保管してもそれぞれは安定であり、しかも接着に際して、それぞれ被接着面に別々に塗布した第1液と第2液を接触させた場合、急速に反応し、短い圧締時間で十分な初期接着力を有し、比較的低温で乾燥しても高い耐水接着強度を発現する2液別塗布型の瞬間硬化水性接着剤を提供することができる。
【0045】
本発明の2液別塗布型の瞬間硬化水性接着剤は、木材、合板、パーティクルボード、ハードボード等の繊維質材料、スレート板、珪カル板、モルタル、タイル等の無機質材料、メラミン化粧板、ベークライト、発泡スチロール等のプラスチック材料、段ボール、板紙、クラフト紙等の紙質材料などの高速接着に特に有用である。
Claims (1)
- (A)ジアセトンアクリルアミド−脂肪酸ビニルエステルの共重合体のケン化物を乳化・分散剤とし、酢酸ビニルの重合体を分散質とする水性エマルジョンを含有する第1液と(B)ヒドラジン系化合物を含有する水性液からなる第2液とからなり、第1液(A)と第2液(B)の少なくとも一方に(C)酸性化合物を配合してなることを特徴とする2液別塗布型の瞬間硬化水性接着剤。
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