JP3907183B2 - 木質用耐水接着剤組成物 - Google Patents
木質用耐水接着剤組成物 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、木材、特に合板の製造に用いられる木質用耐水接着剤組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、木材用耐水接着剤として、ユリア−ホルムアルデヒド樹脂接着剤、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂接着剤、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂接着剤、レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂接着剤等のホルムアルデヒド樹脂系接着剤が知られている。
【0003】
ところが、前記ホルムアルデヒド樹脂系接着剤は、遊離のホルムアルデヒドが残存しているために、該ホルムアルデヒド樹脂系接着剤を用いて接着した製品からはホルムアルデヒドが放出される。前記ホルムアルデヒドは、シックハウス症候群、化学物質過敏症等の原因物質となるため、人体への影響が問題になっている。
【0004】
前記ホルムアルデヒド樹脂系接着剤の問題を解決するために、ホルムアルデヒドを使用することなく耐水性、耐熱性を備える接着剤として、水性高分子−イソシアネート系接着剤組成物が知られている。前記水性高分子−イソシアネート系接着剤組成物は、水性エマルジョン樹脂、水性ラテックス樹脂等を主剤として、該主剤に架橋剤としてイソシアネート化合物を配合したものである。
【0005】
ところが、前記水性高分子−イソシアネート系接着剤組成物において、前記主剤に前記架橋剤を直接配合して両者を混合すると、前記イソシアネート化合物が該組成物に含まれる水分と激しく反応して発泡する一方、粘度が上昇して塗布作業が困難になることがある。また、前記主剤に前記架橋剤を直接配合するタイプの水性高分子−イソシアネート系接着剤組成物は、時間の経過とともに耐水性、耐熱性が著しく低下するので、使用可能な時間(可使時間)が短いという問題がある。
【0006】
そこで、特公昭51−30577号公報には、イソシアネート系化合物またはイソシアネート系重合物を疎水性有機溶剤に溶解したものを、ポリビニルアルコールを含む水溶液または水性エマルジョンに分散させた耐水性接着剤が記載されている。前記公報記載の耐水性接着剤によれば、イソシアネート系化合物またはイソシアネート系重合物と水分との急激な反応を防止することができるので、前記発泡、粘度上昇等の問題がない。
【0007】
しかしながら、前記公報記載の耐水性接着剤は前記疎水性有機溶剤が強い刺激臭を有するので、塗布作業中に、あるいは該耐水性接着剤を用いて接着した製品から放出される該疎水性有機溶剤により環境が汚染され、シックハウス症候群、化学物質過敏症等の原因となる虞があるという不都合がある。
【0008】
また、前記ホルムアルデヒド樹脂系接着剤の問題を解決するために、特公昭51−28655号公報には、カルボキシル基を含む重合体と、多価金属水酸化物または多価金属酸化物と、エポキシ基を分子中に2個以上含む水溶性化合物との混合物からなる接着剤組成物が記載されている。前記公報記載の接着剤組成物によれば、ホルムアルデヒドを含まないので、シックハウス症候群、化学物質過敏症等の原因となることがない。
【0009】
しかしながら、前記公報記載の接着剤組成物は、前記多価金属水酸化物を用いると強アルカリ性を示すため、接着剤を用いて接着した木材がアルカリ汚染のために変色したり、塗布作業中に該接着剤が皮膚に付着するとカブレを起こすという不都合がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる不都合を解消して、ホルマリンや有機溶剤による刺激臭、アルカリ汚染による変色、カブレ、発泡、粘度上昇等の問題がなく、しかも可使時間が長く、耐水性、耐熱性に優れた木質用耐水接着剤組成物を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本発明の木質用耐水接着剤組成物の第1の態様は、(A)酢酸ビニルモノマー100重量部とエチレン性不飽和カルボン酸0.1〜10重量部とを、カルボキシル基変性ポリビニルアルコールを保護コロイドとして乳化共重合して得られる酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤100重量部と、(B)第3級アミノ窒素原子をもつ4官能エポキシ化合物としての一般式(1)で表されるN,N−ジグリシジルアミノ基含有化合物0.05〜60重量部とからなることを特徴とする。
【0012】
【化3】
(式中、Dは、炭素数1〜12の直鎖アルキレン基、炭素数1〜12の分岐アルキレン基、フェニレン基、アルキル基置換フェニレン基、ハロゲン置換フェニレン基からなる群から選択される1種の2価の基を示す)
本発明の第1の態様の接着剤組成物は、比較的安価であって、それ自体常態接着力、耐老化性に優れている酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤を主剤とし、該主剤に架橋剤として前記第3級アミノ窒素原子をもつ4官能エポキシ化合物を配合したものである。
【0013】
本発明の第1の態様の接着剤組成物は、酢酸ビニルモノマーとエチレン性不飽和カルボン酸とを、カルボキシル基変性ポリビニルアルコールを保護コロイドとして乳化共重合した前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤を主剤とすることにより、耐水性と、耐温水性、耐煮沸性等の耐熱性とに優れた接着性能を得ることができる。また、前記主剤に前記第3級アミノ窒素原子をもつ4官能エポキシ化合物を配合することにより、ホルムアルデヒドや有機溶剤を含まないので、シックハウス症候群、化学物質過敏症等の原因となる虞がない。また、前記配合はイソシアネート化合物を含まないので、該イソシアネート化合物と水分との反応による発泡、粘度上昇を防止することができる。また、前記配合は多価金属水酸化物を含まないのでpHが上昇せず、アルカリ汚染による変色、あるいは皮膚のカブレを起こすことを防止することができる。
【0014】
前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤において、前記酢酸ビニルモノマー100重量部に対し、前記エチレン性不飽和カルボン酸が0.1重量部未満では十分な架橋密度が得られず、前記接着剤組成物としたときに、十分な耐水性、耐熱性が得られない。また、前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤は、前記酢酸ビニルモノマー100重量部に対し、前記エチレン性不飽和カルボン酸が10重量部を超えると安定なエマルジョンを得ることが難しい。また、安定なエマルジョンが得られたとしても重合度が低下し、前記接着剤組成物としたときに、十分な接着性能が得られない。
【0015】
本発明の第1の態様の接着剤組成物において、前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤100重量部に対して、前記第3級アミノ窒素原子をもつ4官能エポキシ化合物の配合量が0.05重量部未満では、該接着剤組成物の硬化が不十分となり、耐水性、耐熱性、耐久性、木材との密着性等において十分な接着性能を得ることができない。また、前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤100重量部に対して、前記第3級アミノ窒素原子をもつ4官能エポキシ化合物の配合量が60重量部を超えると、該接着剤組成物の粘度が著しく高くなり塗布性が低下するため作業性に支障を来す上、耐水性、耐熱性、耐久性、木材との密着性等において十分な接着性能を得ることができない。また、該接着剤組成物の価格が上昇する。
【0016】
次に、本発明の第2の態様の木質用耐水接着剤は、前記第1の態様における主剤を、(a)前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤と、(b)ブタジエンまたはイソプレンから選択される共役ジエンと、該共役ジエンと共重合可能なビニルモノマーと、該共役ジエンとビニルモノマーとの合計量に対して0.1〜20重量%のエチレン性不飽和カルボン酸とを共重合した変性合成ゴムラテックスとからなる配合物であって、該配合物の全量に対して該酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤を5重量%以上100重量%未満の範囲で含み、該変性合成ゴムラテックスを95重量%未満の範囲で含む配合物としたものである。
【0017】
本発明の第2の態様の接着剤組成物は、前記主剤に前記変性合成ゴムラテックスを前記範囲で含むことにより、さらに優れた耐熱性を得ることができる。前記変性合成ゴムラテックスは、僅かでも前記主剤に含まれていれば、前記接着剤組成物の耐熱性を向上させる効果を得ることができる。しかし、前記変性合成ゴムラテックスは、前記主剤の全量に対して95重量%を超えると、該接着剤組成物の木材との密着性が著しく低下し、十分な接着性能を得ることができなくなる。
【0018】
また、前記変性合成ゴムラテックスは、前記エチレン性不飽和カルボン酸が前記共役ジエンとビニルモノマーとの合計量に対して0.1重量%未満では、前記接着剤組成物において、十分な耐水性、耐熱性を得ることができない。一方、前記エチレン性不飽和カルボン酸が前記共役ジエンとビニルモノマーとの合計量に対して20重量%を超えると、ラテックスの重合時の安定性が不良となり、良好なラテックスを得ることができない。前記重合時の安定性を良好にするためには、特殊な装置、操作等を必要とし、価格の上昇が避けられない。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0020】
本発明の第1の実施形態の接着剤組成物は、(A)酢酸ビニルモノマー100重量部とエチレン性不飽和カルボン酸0.1〜10重量部とを、カルボキシル基変性ポリビニルアルコールを保護コロイドとして乳化共重合して得られる酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤100重量部と、(B)第3級アミノ窒素原子をもつ4官能エポキシ化合物としての一般式(1)で表されるN,N−ジグリシジルアミノ基含有化合物0.05〜60重量部とからなる。
【0021】
【化4】
(式中、Dは、炭素数1〜12の直鎖アルキレン基、炭素数1〜12の分岐アルキレン基、フェニレン基、アルキル基置換フェニレン基、ハロゲン置換フェニレン基からなる群から選択される1種の2価の基を示す)
前記酢酸ビニルモノマーと乳化共重合するエチレン性不飽和カルボン酸は、特に限定されるものではないが、アクリル酸、メタクリル酸、フタル酸、マレイン酸、イタコン酸等を好適に用いることができる。前記エチレン性不飽和カルボン酸は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記酢酸ビニルモノマーと前記エチレン性不飽和カルボン酸との乳化共重合に用いる前記保護コロイドは、カルボキシル基変性ポリビニルアルコールであれば特に限定されるものではない。前記保護コロイドとして、通常は、酢酸ビニルに代表されるビニルエステル系単量体を、アクリル酸、メタクリル酸、フタル酸、マレイン酸、イタコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸(フタル酸、マレイン酸、イタコン酸は無水物であってもよい)と共重合した後、ケン化したランダム共重合体か、末端にチオール基を有するポリビニルアルコール系重合体の存在下に前記エチレン性不飽和カルボン酸をラジカル重合したブロック共重合体を好適に用いることができる。前記ビニルエステル系単量体として、酢酸ビニルに代えて、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ビバリン酸ビニル等を用いてもよい。
【0023】
前記カルボキシル基変性ポリビニルアルコールの重合度は特に限定されるものではないが、前記保護コロイドとして作用するために、50〜4000の範囲にあることが好ましく、100〜3000の範囲にあることが特に好ましい。
【0024】
前記カルボキシル基変性ポリビニルアルコールの前記カルボキシル基による変性量もまた特に限定されるものではないが、前記保護コロイドとして作用するために、0.1〜50モル%の範囲とすることが好ましく、特に0.5〜10モル%の範囲とすることが好ましい。前記カルボキシル基による変性量が0.1モル%未満では前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤において十分な架橋密度が得られず、前記接着剤組成物としたときに、十分な耐水性、耐熱性が得られない。また、前記カルボキシル基による変性量が10モル%を超えると、前記接着剤組成物としたときに粘度が上昇しやすく、可使時間が短くなる。
【0025】
また、前記カルボキシル基変性ポリビニルアルコールは、前記保護コロイドとしての性能を損なわない範囲で、共重合可能なエチレン性不飽和単量体と共重合したものであってもよい。前記共重合可能なエチレン性不飽和単量体として、エチレン、イソブチレン、アクリロニトリル、メタクロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0026】
また、前記カルボキシル基変性ポリビニルアルコールは、前記保護コロイドとしての性能を損なわない範囲で、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸等のチオール化合物存在下で、酢酸ビニル等のビニルエステル系単量体をエチレン性不飽和カルボン酸と共重合し、共重合体をケン化することによって得られる末端変性物を用いることもできる。
【0027】
前記酢酸ビニルモノマーと前記エチレン性不飽和カルボン酸との乳化共重合の際には、前記カルボキシル基変性ポリビニルアルコールと共に界面活性剤を併用してもよい。前記界面活性剤の種類は、特に限定されるものではないが、ノニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。
【0028】
前記酢酸ビニルモノマーと前記エチレン性不飽和カルボン酸との乳化共重合の際に用いられる重合触媒は、特に限定されるものではないが、過酸化水素等の過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、酒石酸、ギ酸、シュウ酸等の還元剤等を好適に用いることができる。前記重合触媒は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
前記重合触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、前記酢酸ビニルモノマーと前記エチレン性不飽和カルボン酸との合計量100重量部に対して、0.01〜2重量部の範囲で用いることが好ましい。また、前記乳化共重合により得られる酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤の樹脂分は、特に限定されるものではないが、35〜65重量%であることが好ましい。
【0030】
前記一般式(1)で表されるN,N−ジグリシジルアミノ基含有化合物としては、N,N,N’,N’−テトラグリシジルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルヘキサメチレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1−(N,N−ジグリシジルアミノメチル)−1,5,5−トリメチル−3−(N,N−ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,4−フェニレンジアミン、(N,N,N’,N’−テトラグリシジル)ジアミノトルエン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−キシレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノトリフェニルメタン、ビス(N,N−ジグリシジルアミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(N,N−ジグリシジルアミノトリメチレン)−ノナ(ブチレングリコール)、ビス(N,N−ジグリシジルアミノフェノール)スルホン、4’−(N,N−ジグリシジルアミノ)ベンゼンスルホン酸の4’−(N,N−ジグリシジルアミノ)フェニルエステル、ビス(N,N−ジグリシジルアミノトリメチレン)アルキレングリコール等を挙げることができる。これらのうちでも、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等を好適に用いることができる。
【0031】
また、前記一般式(1)で表されるN,N−ジグリシジルアミノ基含有化合物に代えて、N,N−ジグリシジルアミノ−2,4−ビス(グリシジルオキシ)アニリンを用いてもよい。
【0032】
次に、本発明の第2の実施形態の接着剤組成物は、前記第1の実施形態の前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤を単独で主剤としている形態に代えて、(a)該酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤と、(b)ブタジエンまたはイソプレンである共役ジエンと、該共役ジエンと共重合可能なビニルモノマーと、該共役ジエンとビニルモノマーとの合計量に対して0.1〜20重量%のエチレン性不飽和カルボン酸とを共重合した変性合成ゴムラテックスとからなる配合物であって、該配合物の全量に対して該酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤を5重量%以上100重量%未満の範囲で含み、該変性合成ゴムラテックスを95重量%未満の範囲で含む配合物を用いる。そして、第2の実施形態の接着剤組成物は、該配合物100重量部と、前記第3級アミノ窒素原子をもつ4官能エポキシ化合物としての一般式(1)で表されるN,N−ジグリシジルアミノ基含有化合物0.05〜60重量部とからなる。
【0033】
第2の実施形態において、前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤と、前記一般式(1)で表されるN,N−ジグリシジルアミノ基含有化合物とは、第1の実施形態で用いたものと全く同一のものを用いることができる。
【0034】
前記変性合成ゴムラテックスは、第1成分としてのブタジエンまたはイソプレンから選択される共役ジエンと、第2成分としての該共役ジエンと共重合可能なビニルモノマーと、第3成分としてのエチレン性不飽和カルボン酸とからなる三元共重合化合物であり、前記第3成分によりカルボキシル基変性されている。
【0035】
前記第2成分のビニルモノマーとしては、スチレン、スチレン誘導体、アクリロニトリル、クロロプレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、エチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、エチレンビニルエーテル等を挙げることができる。前記ビニルモノマーは、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0036】
前記第3成分のエチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマール酸、メサコン酸等を挙げることができる。また、前記第3成分としてイタコン酸モノエステル、フマール酸モノエステル、メサコン酸モノエステル等も用いることができる。前記第3成分は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0037】
前記変性合成ゴムラテックスは、カルボキシル基変性のために、前記共役ジエンとビニルモノマーとの合計量に対して0.1〜20重量%のエチレン性不飽和カルボン酸を含み、さらに0.2〜10重量%のエチレン性不飽和カルボン酸を含むことが好ましい。
【0038】
前記各実施形態の接着剤組成物は、必要に応じて、他の水性ラテックス、水性エマルジョン樹脂を配合してもよい。前記水性ラテックス、水性エマルジョン樹脂としては、スチレン、ブタジエン、クロロプレン、1,3−ヘキサンジエンイソプレン、イソブテン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、エチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、臭化ビニリデン、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルからなる群から選択される1種のラテックスまたはエマルジョン樹脂を挙げることができる。前記水性ラテックス、水性エマルジョン樹脂は、前記群から選択される共重合可能な2種以上の樹脂からなる共重合ラテックスまたはエマルジョン樹脂であってもよい。
【0039】
また、前記各実施形態の接着剤組成物は、前記目的を妨げない範囲で、有機溶剤、可塑剤、造膜剤、体質顔料、充填剤、増量剤、顔料、染料、糊剤、増粘剤、分散剤、乳化剤、湿潤剤、消泡剤、凍結防止剤、防腐剤、防カビ剤、防錆剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。前記有機溶剤としては、トルエン、キシレン、酢酸ブチル、カルビトール等を挙げることができる。また、前記可塑剤としては、フタル酸エステル、ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル等を挙げることができる。また、前記体質顔料または充填剤としては、クレー、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ケイ酸粉末、木粉等を挙げることができる。また、前記増量剤としては、小麦粉、コーンスターチ等を挙げることができる。また、前記顔料としては、酸化チタン等の白色顔料または着色顔料を挙げることができる。また、前記糊剤または増粘剤としては、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルローズ、メチルセルローズ、カルボキシメチルセルローズ、澱粉、デキストリン等を挙げることができる。また、前記凍結防止剤としては、エチレングリコール等を挙げることができる。
【0040】
前記各実施形態の接着剤組成物は、合板、単板積層材(LVL)、突き板化粧板、集成材、パーティクルボード等の木質繊維板、家具、建具、運動具等の木工製品製造用の木材用接着剤として好適に用いることができ、合板用接着剤として特に好適に用いることができる。
【0041】
前記接着剤組成物は、前記木材の他、段ボール、紙、布、金属、ガラス、木毛板、プラスチック板、無機板、セメント系無機板等を同一素材同士または異種の素材と接着する場合にも適用することができる。前記プラスチック板としては、塩化ビニル樹脂板、ABS板、FRP板、スチレン樹脂板等を挙げることができる。また、前記無機板としては、ロックウール等の鉱物質繊維板、石膏ボード、ケイ酸カルシウム板等を挙げることができ、セメント系無機板としては、石綿スレート板、パルプセメント板、コンクリート板等を挙げることができる。
【0042】
さらに、前記接着剤組成物は、コーティング用組成物、塗料用組成物としても用いることができる。
【0043】
次に、本発明の実施例及び比較例を示す。
【0044】
【実施例1】
本実施例では、まず、攪拌機、還流冷却管、温度計及び滴下漏斗を備えた反応容器に、純水566gと、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール(以下、c−PVAと略記する)35gとを仕込み、撹拌しながら90℃で1時間加熱して、c−PVA水溶液を得た。前記c−PVAは、重合度1700、ケン化度98モル%であり、マレイン酸2モル%を含むランダム共重合変性ビニルアルコールである。
【0045】
次に、65℃に水冷した前記c−PVA水溶液に、酢酸ビニルモノマー387gとアクリル酸8gとからなる混合物の10重量%(酢酸ビニルモノマー38.7g、アクリル酸0.8g)と、過酸化水素2.9gと酒石酸1gとからなる重合触媒の20重量%(過酸化水素0.58g、酒石酸0.2g)とを加えた後、70℃まで昇温して初期重合を行わせた。次に、前記初期重合を行わせた反応溶液に、前記混合物の残部全量を3時間かけて連続滴下すると同時に、前記重合触媒の残部全量を3.5時間かけて連続滴下して乳化重合を行った。そして、前記乳化重合後、80℃で1時間熟成し、カルボキシル基変性ポリビニルアルコールを保護コロイドとして、カルボキシル基変性された酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤を合成した。前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤は、樹脂分43重量%、粘度22000mPa・s/23℃であった。
【0046】
次に、予め35℃に加温した前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤100重量部に、第3級アミノ窒素原子を持つ4官能エポキシ化合物として、次式(2)に示すN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(三菱ガス化学株式会社製、商品名:TETRAD−X)1.5重量部を予め35℃に加温して添加、撹拌して接着剤組成物を調製、製糊した。
【0047】
【化5】
次に、含水率5〜8重量%のラワン材で、それぞれ0.7mm、1.7mm、0.7mmの厚さの単板をこの順に重ね、接着面の両面に本実施例で得られた接着剤組成物を330g/m2(両面)の塗布量で塗布し、20℃で10分以内の閉鎖堆積、20℃で10kg/cm2の冷圧下に20分、110℃で8kg/cm2の熱圧下に60秒の条件で接着し、接着性能を評価するための試験片とした。
【0048】
次に、前記試験片について、製糊から5分経過後と、120分経過後との接着性能を評価した。前記接着性能は、JIS K 6851に基づく接着剤の木材引張せん断接着強さとして、常態強度、耐水強度、耐温水強度、耐煮沸繰り返し強度について評価した。
【0049】
前記常態強度は、試験片を測定室内温度20℃の条件で測定したものである。また、前記耐水強度は、試験片を20℃の水中に3日間浸漬した後、引き上げ、濡れたままの状態で、測定室内温度20℃の条件で測定したものである。また、前記耐温水強度は、試験片を60℃の水中に3時間浸漬した後、20℃の水中に冷えるまで浸漬した後、引き上げ、濡れたままの状態で、測定室内温度20℃の条件で測定したものである。また、耐煮沸繰り返し強度は、試験片を沸騰水中に4時間浸漬した後、引き上げて60℃の空気中で24時間乾燥し、再び沸騰水中に4時間浸漬した後、20℃の水中に冷えるまで浸漬した後、引き上げ、濡れたままの状態で、測定室内温度20℃の条件で測定したものである。
【0050】
製糊から5分経過後の評価結果を表1に、製糊から120分経過後の評価結果を表2に示す。表中の単位は接着強さ(kgf/cm2)である。また、このとき木部において破断した面積の剪断面積に対する百分率を木部破断率(%)として、カッコ内に示す。
【0051】
【比較例1】
本比較例では、まず、攪拌機、還流冷却管、温度計及び滴下漏斗を備えた反応容器に、純水498gと、実施例1で用いたものと同一のc−PVA35gとを仕込み、撹拌しながら90℃で1時間加熱して、c−PVA水溶液を得た。
【0052】
次に、65℃に水冷した前記c−PVA水溶液に、酢酸ビニルモノマー39.5gと、重合触媒としての過硫酸カリウム0.08gとを加えた後、70℃まで昇温して初期重合を行わせた。次に、前記初期重合を行わせた反応溶液に、酢酸ビニルモノマー355.5gと、重合触媒としての1%過酸化カリウム溶液72gとを3時間かけて連続滴下して乳化重合を行ったのち、80℃で1時間熟成し、カルボキシル基変性ポリビニルアルコールを保護コロイドとして、カルボキシル基変性されていない酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤を合成した。前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤は、樹脂分43重量%、粘度32000mPa・s/23℃であった。
【0053】
次に、予め35℃に加温した前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤100重量部に、予め35℃に加温した実施例1で用いたものと同一の第3級アミノ窒素原子を持つ4官能エポキシ化合物1.5重量部を添加、撹拌して接着剤組成物を調製、製糊した。
【0054】
次に、本比較例で得られた接着剤組成物について、実施例1と全く同一にして、製糊から5分経過後と、120分経過後との接着性能を評価した。製糊から5分経過後の評価結果を表1に、120分経過後の評価結果を表2に示す。
【0055】
【比較例2】
c−PVAに代えて、重合度1700、ケン化度98モル%の未変性ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、商品名:PVA117)を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、カルボキシル基変性されていないポリビニルアルコールを保護コロイドとしてカルボキシル基変性された酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤を合成した。前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤は、樹脂分43重量%、粘度2000mPa・s/23℃であった。
【0056】
次に、本比較例で得られた前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤を用いた以外は、比較例1と全く同一にして、接着剤組成物を調製、製糊した。
【0057】
次に、本比較例で得られた接着剤組成物について、実施例1と全く同一にして、製糊から5分経過後と、120分経過後との接着性能を評価した。製糊から5分経過後の評価結果を表1に、120分経過後の評価結果を表2に示す。
【0058】
【比較例3】
c−PVAに代えて、重合度1700、ケン化度98モル%の未変性ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、商品名:PVA117)を用いた以外は、比較例1と全く同一にして、カルボキシル基変性されていない酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤を合成した。前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤は、樹脂分43重量%、粘度29000mPa・s/23℃であった。
【0059】
次に、本比較例で得られた前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤を用いた以外は、比較例1と全く同一にして、接着剤組成物を調製、製糊した。
【0060】
次に、本比較例で得られた接着剤組成物について、実施例1と全く同一にして、製糊から5分経過後と、120分経過後との接着性能を評価した。製糊から5分経過後の評価結果を表1に、120分経過後の評価結果を表2に示す。
【0061】
【比較例4】
本比較例では、まず、15%ポリビニルアルコール水溶液(株式会社クラレ製、商品名:PVA217)100重量部と、炭酸カルシウム(日東粉化工業株式会社製、商品名:NS100)60重量部と、スチレン−ブタジエン共重合ラテックス(旭化成工業株式会社製、商品名:DL−612)100重量部とを混合して主剤を調製した。
【0062】
次に、予め35℃に加温した前記主剤100重量部に、予め35℃に加温した架橋剤としてのポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(住友バイエル株式会社製、商品名:スミジュール44V−20)85重量部とフタル酸ジ−n−ブチル15重量部とを添加、撹拌して接着剤組成物を調製、製糊した。
【0063】
次に、本比較例で得られた接着剤組成物について、実施例1と全く同一にして、製糊から5分経過後と、120分経過後との接着性能を評価した。製糊から5分経過後の評価結果を表1に、120分経過後の評価結果を表2に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
表1,2から、本発明に係る実施例1の接着剤組成物は、耐水性、耐熱性に優れた接着性能を備えており、該接着性能は製糊から120分経過後にも劣化しておらず、長い可使時間を備えていることが明らかである。
【0066】
前記実施例1に対して、カルボキシル基変性されていない酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤を用いる比較例1の接着剤組成物、カルボキシル基変性されていないポリビニルアルコールを保護コロイドとして乳化重合されていてカルボキシル基変性されている酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤を用いる比較例2の接着剤組成物、カルボキシル基変性されていないポリビニルアルコールを保護コロイドとして乳化重合されていてカルボキシル基変性されていない酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤を用いる比較例3の接着剤組成物によれば、耐水性、耐熱性において十分な接着性能が得られないことが明らかである。
【0067】
また、架橋剤にイソシアネート系化合物を用いる比較例4の接着剤組成物によれば、製糊から5分経過後では耐水性、耐熱性に優れた接着性能を備えているが、製糊から120分経過後には耐水性、耐熱性における接着性能が低下しており、可使時間が短いことが明らかである。
【0068】
【実施例2】
本実施例では、前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤100重量部に、第3級アミノ窒素原子を持つ4官能エポキシ化合物3重量部を添加した以外は、実施例1と全く同一にして接着剤組成物を調製、製糊した
次に、本実施例で得られた接着剤組成物について、実施例1と全く同一にして、製糊から5分経過後の接着性能を評価した。結果を表3に示す。
【0069】
【実施例3】
実施例1で用いた第3級アミノ窒素原子を持つ4官能エポキシ化合物に代えて、次式(3)で示される1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学株式会社製、商品名:TETRAD−C)を用い、前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤100重量部に、該4官能エポキシ化合物3重量部を添加した以外は、実施例1と全く同一にして接着剤組成物を調製、製糊した。
【0070】
【化6】
次に、本実施例で得られた接着剤組成物について、実施例1と全く同一にして、製糊から5分経過後の接着性能を評価した。結果を表3に示す。
【0071】
【比較例5】
実施例1で用いた第3級アミノ窒素原子を持つ4官能エポキシ化合物に代えて、ビスフェノールAジグリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂(旭電化工業株式会社製、商品名:アデカレジンEP−4100)を用い、前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤100重量部に、該エポキシ樹脂3重量部を添加した以外は、実施例1と全く同一にして接着剤組成物を調製、製糊した。
【0072】
次に、本比較例で得られた接着剤組成物について、実施例1と全く同一にして、製糊から5分経過後の接着性能を評価した。結果を表3に示す。
【0073】
【比較例6】
実施例1で用いた第3級アミノ窒素原子を持つ4官能エポキシ化合物に代えて、次式(4)で示されるポリグリシジルアミンタイプのエポキシ樹脂(東都化成株式会社製、商品名:EPO TOHTO YH−434)を用い、前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤100重量部に、該エポキシ樹脂3重量部を添加した以外は、実施例1と全く同一にして接着剤組成物を調製、製糊した。
【0074】
【化7】
次に、本比較例で得られた接着剤組成物について、実施例1と全く同一にして、製糊から5分経過後の接着性能を評価した。結果を表3に示す。
【0075】
【比較例7】
実施例1で用いた第3級アミノ窒素原子を持つ4官能エポキシ化合物に代えて、グリセリントリグリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂(ナガセケムテック株式会社製、商品名:デナコールEX−314)を用い、前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤100重量部に、該エポキシ樹脂3重量部を添加した以外は、実施例1と全く同一にして接着剤組成物を調製、製糊した。
【0076】
次に、本比較例で得られた接着剤組成物について、実施例1と全く同一にして、製糊から5分経過後の接着性能を評価した。結果を表3に示す。
【0077】
【比較例8】
実施例1で用いた第3級アミノ窒素原子を持つ4官能エポキシ化合物に代えて、フェノールノボラックグリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂(東都化成株式会社製、商品名:EPO TOHTO YDPN−638)を用い、前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤100重量部に、該エポキシ樹脂3重量部を添加した以外は、実施例1と全く同一にして接着剤組成物を調製、製糊した。
【0078】
次に、本比較例で得られた接着剤組成物について、実施例1と全く同一にして、製糊から5分経過後の接着性能を評価した。結果を表3に示す。
【0079】
【比較例9】
実施例1で用いた第3級アミノ窒素原子を持つ4官能エポキシ化合物に代えて、ビスフェノールFジグリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂(東都化成株式会社製、商品名:EPO TOHTO YDF−170)を用い、前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤100重量部に、該エポキシ樹脂3重量部を添加した以外は、実施例1と全く同一にして接着剤組成物を調製、製糊した。
【0080】
次に、本比較例で得られた接着剤組成物について、実施例1と全く同一にして、製糊から5分経過後の接着性能を評価した。結果を表3に示す。
【0081】
【表3】
表3から、本発明に係る実施例2,3の接着剤組成物は、耐水性、耐熱性に優れた接着性能を備えていることが明らかである。
【0082】
前記実施例2,3に対して、一般式(1)で表される以外のエポキシ樹脂を用いる比較例5〜9の接着剤組成物では、耐水性、耐熱性において、十分な接着性能が得られないことが明らかである。
【0083】
【実施例4】
本実施例では、前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤100重量部に、第3級アミノ窒素原子を持つ4官能エポキシ化合物5重量部を添加した以外は、実施例1と全く同一にして接着剤組成物を調製、製糊した。
【0084】
次に、本実施例で得られた接着剤組成物について、実施例1と全く同一にして、製糊から5分経過後の接着性能を評価した。結果を表4に示す。尚、表4には、実施例1,2の接着剤組成物に関する製糊から5分経過後の接着性能の評価を再掲する。
【0085】
【実施例5】
本実施例では、前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤100重量部に、第3級アミノ窒素原子を持つ4官能エポキシ化合物0.5重量部を添加した以外は、実施例1と全く同一にして接着剤組成物を調製、製糊した。
【0086】
次に、本実施例で得られた接着剤組成物について、実施例1と全く同一にして、製糊から5分経過後の接着性能を評価した。結果を表4に示す。
【0087】
【実施例6】
本実施例では、前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤100重量部に、第3級アミノ窒素原子を持つ4官能エポキシ化合物60重量部を添加した以外は、実施例1と全く同一にして接着剤組成物を調製、製糊した。
【0088】
次に、本実施例で得られた接着剤組成物について、実施例1と全く同一にして、製糊から5分経過後の接着性能を評価した。また、前記試験片上に、製糊から5分経過後の本実施例で得られた接着剤組成物の塗布量330g/m2(両面)を秤取り、ゴム付きハンドローラーで均一に塗布して塗布性を判定したところ、糸引きも無く、塗布性は良好であった。結果を表4に示す。
【0089】
【比較例10】
本比較例では、前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤のみを用い、第3級アミノ窒素原子を持つ4官能エポキシ化合物を全く用いなかった以外は、実施例1と全く同一にして接着剤組成物を調製、製糊した。
【0090】
次に、本比較例で得られた接着剤組成物について、実施例1と全く同一にして、製糊から5分経過後の接着性能を評価した。結果を表4に示す。
【0091】
【比較例11】
本比較例では、前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤100重量部に、第3級アミノ窒素原子を持つ4官能エポキシ化合物80重量部を添加した以外は、実施例1と全く同一にして接着剤組成物を調製、製糊した。
【0092】
次に、本比較例で得られた接着剤組成物について、実施例1と全く同一にして、製糊から5分経過後の接着性能を評価した。また、前記試験片上に、製糊から5分経過後の本比較例で得られた接着剤組成物の塗布量330g/m2(両面)を秤取り、ゴム付きハンドローラーで均一に塗布して塗布性を判定したところ、粘度が高く、糸引きも発生して、塗布性は不良であった。結果を表4に示す。
【0093】
【表4】
表4から、本発明に係る実施例1,2,4〜6の接着剤組成物は、塗布性が良好であり、耐水性、耐熱性に優れた接着性能を備えていることが明らかである。
【0094】
前記各実施例に対して、4官能エポキシ化合物を全く含まない比較例10の接着剤組成物は、耐水性、耐熱性において、十分な接着性能が得られないことが明らかである。また、前記各実施例に対して、4官能エポキシ化合物の添加量が本発明の範囲を超えている比較例11の接着剤組成物は、粘度が著しく高く、塗布する際に糸引きも発生して、塗布が困難である上、十分な接着性能が得られないことが明らかである。
【0095】
【実施例7】
本実施例では、実施例1で用いた酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤に代えて、該酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤80重量部と、カルボキシル基変性したスチレン−ブタジエン合成ゴムラテックス(以下、c−SBRと略記する)20重量部とからなる混合物を用いた以外は、実施例1と全く同一にして接着剤組成物を調製、製糊した。前記c−SBRは、ブタジエン43重量%と、スチレン52重量%と、アクリル酸5重量%との三元共重合体であり、固形分は50重量%である。
【0096】
次に、本実施例で得られた接着剤組成物について、実施例1と全く同一にして、製糊から5分経過後の接着性能を評価した。結果を表5に示す。
【0097】
【実施例8】
本実施例では、実施例1で用いた酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤に代えて、該酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤50重量部と、実施例7で用いたものと同一のc−SBR50重量部とからなる混合物を用いた以外は、実施例1と全く同一にして接着剤組成物を調製、製糊した。
【0098】
次に、本実施例で得られた接着剤組成物について、実施例1と全く同一にして、製糊から5分経過後の接着性能を評価した。結果を表5に示す。
【0099】
【実施例9】
本実施例では、実施例1で用いた酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤に代えて、該酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤20重量部と、実施例7で用いたものと同一のc−SBR80重量部とからなる混合物を用いた以外は、実施例1と全く同一にして接着剤組成物を調製、製糊した。
【0100】
次に、本実施例で得られた接着剤組成物について、実施例1と全く同一にして、製糊から5分経過後の接着性能を評価した。結果を表5に示す。
【0101】
【比較例12】
本比較例では、実施例1で用いた酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤に代えて、実施例7で用いたものと同一のc−SBRを用い、該酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤を全く用いなかった以外は、実施例1と全く同一にして接着剤組成物を調製、製糊した。
【0102】
本比較例で得られた接着剤組成物は、前記酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤を全く用いなかったため、粘度が著しく低く、前記単板に塗布することができず、実施例1と同一の方法では接着性能を評価することができなかった。結果を表5に示す。
【0103】
【比較例13】
実施例7で用いたc−SBRに代えて、カルボキシル基で変性していないスチレン−ブタジエン合成ゴムラテックス(旭化成工業株式会社製、商品名:DL612)を用いた以外は、実施例7と全く同一にして接着剤組成物を調製、製糊した。
【0104】
次に、本比較例で得られた接着剤組成物について、実施例1と全く同一にして、製糊から5分経過後の接着性能を評価した。結果を表5に示す。
【0105】
【表5】
表5から、本発明に係る実施例7〜9の接着剤組成物は、耐水性、耐熱性に優れ、特に耐煮沸繰り返し強度に見られる耐熱性に優れた接着性能を備えていることが明らかである。
【0106】
前記実施例6〜8の接着剤組成物に対して、比較例12の接着剤組成物は、粘度が著しく低く、塗布すること自体が困難であり、接着剤として適していないことが明らかである。また、カルボキシル基で変性していないスチレン−ブタジエン合成ゴムラテックスを用いる比較例13の接着剤組成物は、耐水性、耐熱性において十分な接着性能が得られないことが明らかである。
【0107】
【実施例10】
本実施例では、実施例1で用いた酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤に代えて、該酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤50重量部と、実施例7で用いたものと同一のc−SBR50重量部とからなる混合物を用い、該混合物100重量部に、第3級アミノ窒素原子を持つ4官能エポキシ化合物60重量部を添加した以外は、実施例1と全く同一にして接着剤組成物を調製、製糊した。
【0108】
次に、本実施例で得られた接着剤組成物について、実施例1と全く同一にして、製糊から5分経過後の接着性能を評価した。また、本実施例で得られた接着剤組成物について、実施例6と全く同一にして塗布性を判定したところ、糸引きも無く、塗布性は良好であった。結果を表6に示す。
【0109】
尚、表6には、実施例8の接着剤組成物に関する製糊から5分経過後の接着性能の評価を再掲する。
【0110】
【比較例14】
本比較例では、実施例10で用いたものと同一の酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤とc−SBRとからなる混合物100重量部に、第3級アミノ窒素原子を持つ4官能エポキシ化合物80重量部を添加した以外は、実施例1と全く同一にして接着剤組成物を調製、製糊した。
【0111】
次に、本比較例で得られた接着剤組成物について、実施例1と全く同一にして、製糊から5分経過後の接着性能を評価した。また、本比較例で得られた接着剤組成物について、実施例6と全く同一にして塗布性を判定したところ、粘度が高く、糸引きも発生して、塗布性は不良であった。結果を表6に示す。
【0112】
【表6】
表6から、本発明に係る実施例8,10の接着剤組成物は、塗布性が良好であり、耐水性、耐熱性に優れた接着性能を備えていることが明らかである。
【0113】
前記各実施例に対して、4官能エポキシ化合物の添加量が本発明の範囲を超えている比較例14の接着剤組成物は、粘度が著しく高く、塗布する際に糸引きも発生して、塗布が困難である上、十分な接着性能が得られないことが明らかである。
【0114】
【実施例11】
本実施例では、実施例1の接着剤組成物を用い、実施例1と同一にして調製し、9cm×28cmのサイズとした試験片を2枚合わせにし、該試験片の両外側にそれぞれ5gの純水を均一に塗布した後、ビニールにて包み、40℃、相対湿度90%の雰囲気に14日間放置した。前記処理後、該処理を行った試験片と、未処理の試験片との変色の差を肉眼にて判定した。結果を表7に示す。
【0115】
【実施例12】
本実施例では、実施例7の接着剤組成物を用いた以外は、実施例11と全く同一にして処理し、該処理を行った試験片と、未処理の試験片との変色の差を肉眼にて判定した。結果を表7に示す。
【0116】
【比較例15】
本比較例では、まず、イソブチレン−無水マレイン酸−マレインイミド(株式会社クラレ製、商品名:イソバン304、モル比1:0.5:0.5)50重量部と、25%アンモニア水20重量部と、純水70重量部とを混合し、85〜90℃で2時間撹拌して溶解した。次に、前記混合物を50℃以下に冷却し、重炭酸カルシウム(日東粉化工業株式会社製、商品名:NS100)140重量部、スチレン−ブタジエン合成ゴムラテックス(日本ゼオン株式会社製、商品名:NipolLX430、樹脂分49重量%)140重量部、純水60重量部を添加し、十分に撹拌して、主剤を調製した。
【0117】
次に、前記主剤100重量部に対して、架橋剤としてグリセリントリグリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂(ナガセケムテック株式会社製、商品名:デナコールEX−314)5重量部を添加、撹拌して、接着剤組成物を調製、製糊した。
【0118】
次に、本比較例で得られた接着剤組成物を用いた以外は、実施例11と全く同一にして処理し、該処理を行った試験片と、未処理の試験片との変色の差を肉眼にて判定した。結果を表7に示す。
【0119】
【比較例16】
本比較例では、比較例15と全く同一にして調製した主剤100重量部に対して、架橋剤として実施例で用いたものと全く同一の第3級アミノ窒素原子を持つ4官能エポキシ化合物1.5重量部を添加、撹拌して、接着剤組成物を調製、製糊した。
【0120】
次に、本比較例で得られた接着剤組成物を用いた以外は、実施例11と全く同一にして処理し、該処理を行った試験片と、未処理の試験片との変色の差を肉眼にて判定した。結果を表7に示す。
【0121】
【比較例17】
本比較例では、まず、イソブチレン−無水マレイン酸(株式会社クラレ製、商品名:イソバン06、モル比1:1)50重量部と、純水85重量部と、苛性ソーダ20重量部とを混合し、85〜90℃で2時間撹拌して溶解した。次に、前記混合物を50℃以下に冷却し、消石灰70重量部、スチレン−ブタジエン合成ゴムラテックス(日本ゼオン株式会社製、商品名:NipolLX430、樹脂分49重量%)150重量部、純水60重量部を添加し、十分に撹拌して、主剤を調製した。次に、前記主剤を用いた以外は、比較例15と全く同一にして、接着剤組成物を調製、製糊した。
【0122】
次に、本比較例で得られた接着剤組成物を用いた以外は、実施例11と全く同一にして処理し、該処理を行った試験片と、未処理の試験片との変色の差を肉眼にて判定した。結果を表7に示す。
【0123】
【比較例18】
本比較例では、比較例17と全く同一にして調製した主剤100重量部に対して、架橋剤として実施例で用いたものと全く同一の第3級アミノ窒素原子を持つ4官能エポキシ化合物1.5重量部を添加、撹拌して、接着剤組成物を調製、製糊した。
【0124】
次に、本比較例で得られた接着剤組成物を用いた以外は、実施例11と全く同一にして処理し、該処理を行った試験片と、未処理の試験片との変色の差を肉眼にて判定した。結果を表7に示す。
【0125】
【表7】
表7から、本発明に係る実施例11,12(実施例1,7)の接着剤組成物は、試験片に変色を生じないことが明らかである。
【0126】
前記実施例11,12(実施例1,7)の接着剤組成物に対し、主剤に強アルカリ性となる材料を含む比較例15〜18の接着剤組成物は、試験片にアルカリ汚染による変色を生じることが明らかである。
Claims (2)
- (A)酢酸ビニルモノマー100重量部とエチレン性不飽和カルボン酸0.1〜10重量部とを、カルボキシル基変性ポリビニルアルコールを保護コロイドとして乳化共重合して得られる酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤100重量部と、
(B)第3級アミノ窒素原子をもつ4官能エポキシ化合物としての一般式(1)で表されるN,N−ジグリシジルアミノ基含有化合物0.05〜60重量部とからなることを特徴とする木質用耐水接着剤組成物。
- (A)(a)酢酸ビニルモノマー100重量部とエチレン性不飽和カルボン酸0.1〜10重量部とを、カルボキシル基変性ポリビニルアルコールを保護コロイドとして乳化共重合して得られる酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤と、
(b)ブタジエンまたはイソプレンから選択される共役ジエンと、該共役ジエンと共重合可能なビニルモノマーと、該共役ジエンとビニルモノマーとの合計量に対して0.1〜20重量%のエチレン性不飽和カルボン酸とを共重合した変性合成ゴムラテックスとからなる配合物であって、
該配合物の全量に対して該酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤を5重量%以上100重量%未満の範囲で含み、該変性合成ゴムラテックスを95重量%未満の範囲で含む配合物100重量部と、
(B)第3級アミノ窒素原子をもつ4官能エポキシ化合物としての一般式(1)で表されるN,N−ジグリシジルアミノ基含有化合物0.05〜60重量部とからなることを特徴とする木質用耐水接着剤組成物。
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