JP4404392B2 - 水性塗料組成物および耐汚染性改善剤 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、水性塗料組成物および耐汚染性改善剤に関し、特に耐汚染性に優れる水性塗料組成物および水性塗料組成物に用いる耐汚染性改善剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、建築物の外壁に付着する汚れ、特に降雨時に汚れが流れ、その跡が残ることにより外観を損なう、いわゆる雨すじ汚染が問題になってきている。このような雨すじ汚染を含めた広い意味での耐汚染性が建築外装用水性塗料に求められている。
【0003】
塗膜の耐汚染性を向上させる手段としては、塗膜表面を親水化することがよく知られている。塗膜表面の親水化は、添加剤を加えて行われることが多い。このような添加剤の一つとして、シリケート化合物などが挙げられる。しかし、その耐汚染性、特に雨すじ汚染について、十分な性能を有するものはこれまで得られていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、優れた耐汚染性を有する塗膜が得られる水性塗料組成物ならびに、水性塗料に添加することで上記の機能を付与できる耐汚染性改善剤を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
(a)3級アミノ基およびカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂
(b)カルボニル基含有アクリルエマルション
(c)ヒドラジド化合物
を含む水性塗料組成物を提供するものである。
【0006】
また、本発明は、3級アミノ基含有アクリルモノマー0.5〜90重量%、
カルボニル基含有アクリルモノマー0.5〜80重量%および
水溶性基含有アクリルモノマー10〜80重量%を含むアクリルモノマー混合物を重合して得られる耐汚染性改善剤を提供するものである。
【0007】
水性塗料組成物
(a)3級アミノ基およびカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂
本発明の水性塗料組成物は3級アミノ基およびカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂を含んでいる。本明細書における「カルボニル基」は、C=O基の両端にアルキル基および/またはアルキレン基が結合したものを意味する。3級アミノ基およびカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂が含まれていることにより、塗膜表面の親水性が増加し、耐汚染性が向上するものと考えられる。
【0008】
この水溶性アクリル樹脂に含まれる3級アミノ基の量は、樹脂製造時に用いられるモノマー中の3級アミノ基含有アクリルモノマーの量によって決定される。本発明の水性塗料組成物に含まれる3級アミノ基およびカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂を製造する際の3級アミノ基含有アクリルモノマーの量は、使用するアクリルモノマーの全量に対して、0.5〜90重量%、好ましくは3〜75重量%である。0.5重量%を下回ると、得られる塗膜の耐汚染性が十分でなく、90重量%を上回っても増分に対する効果が得られない。
【0009】
3級アミノ基含有アクリルモノマーの具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどを挙げることができる。
【0010】
一方、この水溶性アクリル樹脂に含まれるカルボニル基の量は、樹脂製造時に用いられるモノマー中のカルボニル基含有アクリルモノマーの量によって決定される。本発明の水性塗料組成物に含まれるカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂を製造する際のカルボニル基含有アクリルモノマーの量は、使用するアクリルモノマーの全量に対して、0.5〜80重量%、好ましくは1〜15重量%である。0.5重量%を下回ると、得られる塗膜の耐汚染性を維持することが難しく、80重量%を上回っても贈分に対する効果が得られない。
【0011】
カルボニル基含有アクリルモノマーの具体例としては、アクロレイン、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、ホルミルスチロール、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)、アセトアセトキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。好ましいのは、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドである。
【0012】
また上記水溶性アクリル樹脂は、水溶性基を有している。水溶性基としては、水酸基、カルボキシル基、アミド基およびポリアルキレンオキサイドユニットなどを挙げることができ、この中から適宜選択および混合して用いることが好ましい。塗料中での安定性の点でポリアルキレンオキサイドユニットであることが好ましい。
【0013】
この水溶性アクリル樹脂に含まれる水溶性基の量は、樹脂製造時に用いられるモノマー中の水溶性基含有アクリルモノマーの量によって決定される。本発明の水性塗料組成物に含まれるカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂を製造する際の水溶性基含有アクリルモノマーの量は、使用するアクリルモノマーの全量に対して、10〜80重量%、好ましくは20〜60重量%である。10重量%を下回ると、塗料の安定性に問題が出る恐れがあり、80重量%を上回ると、得られる塗膜の物性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0014】
水溶性基含有アクリルモノマーの具体例としては、水酸基を有しているものとして、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなど、カルボキシル基を有しているものとして、(メタ)アクリル酸など、アミド基を有しているものとして、(メタ)アクリルアミドなど、ポリアルキレンオキサイドユニットを有しているものとして、M90G、M230G(ともに新中村化学社製)、ブレンマーAE−350、ブレンマーPE−90、ブレンマーPE−200、ブレンマーPE−350(いずれも日本油脂社製)などが挙げられる。
【0015】
本発明の水性塗料組成物に含まれるカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂は、上記の3級アミノ基含有アクリルモノマー、カルボニル基含有アクリルモノマーおよび水溶性基含有アクリルモノマーを共重合することにより得られるが、共重合成分として、その他のモノマー成分を含んでいてもよい。その他のモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、グリシジル(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらのモノマーは、2種以上のモノマーを併用することができる。グリシジル(メタ)アクリレートのような反応性モノマーを用いた場合には、カルボニル基以外の反応点を有することになり、バインダー成分に存在する官能基との反応が期待できる。
その他のモノマーの量は、使用するアクリルモノマーの全量に対して、0〜80重量%、好ましくは0〜60重量%である。なお、共重合に用いられる3級アミノ基含有アクリルモノマー、カルボニル基含有アクリルモノマー、水溶性基含有アクリルモノマーおよびその他のモノマーは、その合計量が100重量%になり、かつ上記の条件を満たす範囲になるように適宜調整される。
【0016】
本発明の水性塗料組成物に含まれるカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂を得るための共重合は、特に限定されるものではなく、当業者に一般的に知られている方法により行うことができる。例えば、重合開始剤を、使用するアクリルモノマーの全量に対して0.5〜5重量用いて、樹脂中の固形分が30〜60重量%になるように溶媒を用いて実施できる。このとき重合に用いる溶媒は、水性塗料への添加を考慮すると、水混和性有機溶媒であることが好ましい。このようにして得られた水溶性アクリル樹脂はそのまま、または適宜不揮発分を調整して使用することができる。
【0017】
このようにして得られる、本発明の水性塗料組成物に含まれるカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂は、水溶性を有している。ここでいう「水溶性」とは、樹脂70gを室温で水30gに加えて撹拌したときに、透明になることをいうが、ここでいう「透明」は、若干の濁りが生じるものを含むものとする。なお、水溶性アクリル樹脂は3級アミノ基および水溶性基といった極性の高い官能基を有しているため、樹脂の分子量を測定するためのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定では測定が困難である。しかし、通常の重合条件下で共重合体を得ていることから、この水溶性アクリル樹脂の分子量は数平均分子量が2000〜15000、重量平均分子量が3500〜150000の範囲にあると思われる。
【0018】
(b)カルボニル基含有アクリルエマルション
本発明の水性塗料組成物はカルボニル基含有アクリルエマルションを含んでいる。このカルボニル基含有アクリルエマルションは、膜形成性成分、いわゆるバインダー成分である。このアクリルエマルションが有するカルボニル基の量は、エマルション製造時に用いられるモノマー中のカルボニル基含有アクリルモノマーの量によって決定される。本発明の水性塗料組成物に含まれるカルボニル基含有アクリルエマルションを製造する際のカルボニル基含有アクリルモノマーの量は、使用するアクリルモノマーの全量に対して、0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜10重量%、さらに好ましくは1〜10重量%である。0.1重量%を下回ると、得られる塗膜の架橋度が不十分になる恐れがあり、30重量%を上回ると、塗膜物性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0019】
また、本発明の水性塗料組成物に含まれるカルボニル基含有アクリルエマルションは、酸価が1〜50、好ましくは1〜10であることが好ましい。酸価が1を下回る場合には、エマルションの安定性に問題があり、50を上回る場合には、得られる塗膜の物性に悪影響を及ぼす恐れがある。この酸価は、カルボニル基含有アクリルエマルション製造の際に用いる(メタ)アクリル酸などの酸基含有モノマーの配合量を調整することにより設定される。
【0020】
本発明の水性塗料組成物に含まれるカルボニル基含有アクリルエマルションは、カルボニル基含有アクリルモノマー、酸基含有モノマーおよびその他のモノマーを乳化重合することにより得ることができる。アクリルエマルションを得るための乳化重合は、特に限定されるものではなく、当業者に一般的に知られている方法が利用できる。
なお、上記のカルボニル基含有アクリルモノマーおよびその他のモノマーは、(a)3級アミノ基およびカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂のところで述べた内容のものを用いることができる。
【0021】
(c)ヒドラジド化合物
本発明の水性塗料組成物はヒドラジド化合物を含んでいる。ヒドラジド化合物は、分子内に2個のヒドラジド基を有するものであり、架橋剤として作用する。ヒドラジド基は(a)3級アミノ基およびカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂および(b)カルボニル基含有アクリルエマルションに含まれるカルボニル基と反応するため、塗膜の架橋および耐汚染性を向上させる成分である(b)カルボニル基含有水溶性アクリル樹脂を塗膜中に保持する働きをしていると考えられる。
【0022】
ヒドラジド化合物の具体例として、例えば蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、炭酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、ピロメリット酸ジヒドラジド、20〜100個のヒドラジド基を有するポリアクリル酸のポリヒドラジド、ニトリロトリ酢酸トリヒドラジド、エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、ジ−もしくはトリヒドラジン−トリアジン、チオカルボヒドラジド又はN,N’−ジアミノグアニジン、2−ヒドラジノピリジン−5−カルボン酸ヒドラジド、3−クロル−2−ヒドラジノピリジン−5−カルボン酸ヒドラジド、6−クロル−2−ヒドラジノピリジン−4−カルボン酸ヒドラジド、2,5−ジヒドラジノピリジン−4−カルボン酸、1,4−ジヒドラジノベンゾール、1,3−ジヒドラジノベンゾール、2,3−ジヒドラジンナフタリン、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド及びイタコン酸ジヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントインなどを挙げることができる。この中で入手容易性の点でアジピン酸ジヒドラジドが、また水溶性が高い点で1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントインが好ましい。
【0023】
本発明の水性塗料組成物における、上記(a)3級アミノ基およびカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂、(b)カルボニル基含有アクリルエマルションおよび(c)ヒドラジド化合物の割合は、以下のようにして決定される。すなわち、(b)カルボニル基含有アクリルエマルション100重量部に対して、(a)3級アミノ基およびカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂3〜20重量部であることが好ましく、5〜15重量部であることが更に好ましい。(a)3級アミノ基およびカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂の量が3重量部を下回ると、得られる塗膜の耐汚染性が向上せず、20重量部を上回ると、塗膜物性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0024】
一方、(c)ヒドラジド化合物は、上記(a)3級アミノ基およびカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂と(b)カルボニル基含有アクリルエマルションとが有するカルボニル基の当量の合計量に対して、ヒドラジド基の当量が20〜200%であることが好ましく、40〜120%であることがさらに好ましい。20%を下回る場合は、カルボニル基との反応が十分に進行しない恐れがあり、得られる塗膜の物性に悪影響を及ぼす恐れがあり、200%を上回る場合は、過剰量のヒドラジド化合物が塗膜中に存在し、塗膜の耐水性が低下する恐れがある。
【0025】
本発明の水性塗料組成物は、上記所定量の(a)3級アミノ基およびカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂、(b)カルボニル基含有アクリルエマルションおよび(c)ヒドラジド化合物、ならびに必要に応じて、通常の水性塗料に含まれる成分である添加剤および顔料などを混合し、固形分が30〜65重量%になるよう水で希釈することにより得ることができる。
【0026】
このようにして得られた本発明の水性塗料組成物は、基材に対して、種々の塗装方法、例えば刷毛、ローラー、スプレー、エアレススプレーなどを用いて行うことができる。なお、その際に必要に応じて、水で希釈して目的の粘度にすることができる。塗布量は、特に限定されないが、0.1〜0.2Kg/m2が好ましい。塗装後は、常温での乾燥または強制的に乾燥を行うことにより、塗膜を得ることができる。乾燥時間は塗装環境条件などによって異なるが、常温で3日以上行われることが好ましい。
本発明の水性塗料組成物が適用される基材は特に限定されないが、耐汚染性が問題になる建築外装材であることが好ましい。
【0027】
耐汚染性改善剤
もうひとつの本発明は、耐汚染性改善剤を提供するものである。耐汚染性改善剤は水性塗料に添加することにより、それから得られる塗膜の耐汚染性を向上させる働きを持つ。
このような耐汚染性改善剤としては、本発明の水性塗料組成物のところで述べた(a)3級アミノ基およびカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂をそのまま用いることができる。
【0028】
本発明の耐汚染性改善剤を水性塗料に用いた場合、添加後の水性塗料中におけるカルボニル基の当量に対するヒドラジド基の当量比率が20〜200%になるように調製されることが好ましく、40〜120%であることがさらに好ましい。20%を下回る場合は、カルボニル基との反応が十分に進行しない恐れがあり、得られる塗膜の物性に悪影響を及ぼす恐れがあり、200%を上回る場合は、過剰量のヒドラジド化合物が塗膜中に存在し、塗膜の耐水性が低下する恐れがある。この調製は、上記のヒドラジド化合物を水性塗料に添加することにより行うことができる。
【0029】
本発明の耐汚染性改善剤を添加するのに適した水性塗料は、水溶性タイプまたはエマルションタイプのいずれであっても構わないが、バインダー成分がカルボニル基を有していることが好ましい。カルボニル基を有していることにより、ヒドラジド化合物を硬化剤として、耐汚染性改善剤とバインダー成分とが結合することが期待され、結果として耐汚染性が長期にわたり維持できるものと考えられる。
【0030】
【実施例】
製造例1〜3 (a)3級アミノ基およびカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂の製造
表1に示す配合に基づき、開始剤としてカヤエステルO(化薬アクゾ社製)2.5重量%の存在下、ブチルセロソルブ中において115℃で溶液重合して樹脂を得た。このようにして得られた3種類の樹脂を70g取り水30gに投入したところ、透明溶液が得られたことから、水溶性であることを確認した。
【0031】
製造例4〜5 比較用水溶性アクリル樹脂の製造
表1に示す配合に基づき、製造例1〜3と同様にして樹脂を得た。この2種類の樹脂について、製造例1と同様の操作を行い、水溶性であることを確認した。
【0032】
【表1】
【0033】
各配合の単位は重量部
*1 ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド
*2 ジメチルアミノプロピルアクリルアミド
*3 ダイアセトンアクリルアミド
*4 日本油脂社製のポリエチレンオキサイドユニットを有するモノマー
*5 エチルアクリレート
*6 グリシジルメタクリレート
【0034】
実施例1〜5 水性塗料組成物の調製および耐汚染性評価
<水性塗料組成物の調製>
カルボニル基含有アクリルエマルション(サイデン化学社製、原料アクリルモノマー中のダイアセトンアクリルアミド含有量3重量%、酸価4、樹脂固形分49.5重量%)100重量部に、二酸化チタン44重量部、添加剤(顔料分散剤、増粘剤、消泡剤、pH調製剤など)21.9重量部および水23.4重量部を加えて混合した。ここに、表2に示した量に基づき、製造例1〜3で得られた水溶性アクリル樹脂ならびにヒドラジド化合物を添加することにより、水性塗料組成物を調製した。
【0035】
<耐汚染性の評価>
ニッペウルトラシーラーII透明(日本ペイント社製のシーラー剤)が塗布されたスレート板(90×300×4mm)に、上で調製した水性塗料組成物を塗布量が0.15kg/m2となるようスプレー塗装し、相対湿度70%の室温下で3日間乾燥し、試験板を得た。
この試験板を約3mm間隔の溝を有する屋根を備えた暴露架台に、雨水が屋根を伝って試験板の塗装面に流れ落ちるよう、垂直に配置した。3ヶ月経過後の試験板の状態を以下の基準により評価した。結果を表2に示す。
【0036】
評価基準
5:スジ状の汚れがほとんど認められない
4:スジ状の汚れが1〜2本うすく認められる
3:スジ状の汚れが1〜2本はっきりと認められる、
あるいは3本うすく認められる
2:スジ状の汚れが4本以上うすく認められる
1:スジ状の汚れが3本以上はっきりと認められる、
あるいはスジ状の汚れが多数重なって塗膜全体が黒く見える
【0037】
比較例1〜4
製造例1〜3で得られた水溶性アクリル樹脂の代わりに、製造例4および5で得られた水溶性アクリル樹脂を用いた他は実施例1〜5と同様の手順で水性塗料組成物の調製ならびに耐汚染性の評価を行った(比較例1および2)。また、表2に示す配合に基づき、実施例1〜5と同様の手順で水性塗料組成物の調製ならびに耐汚染性の評価を行った(比較例3および4)。それらの結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
各配合の単位は重量部
*1 A:アジピン酸ジヒドラジド
B:1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン
【0040】
実施例6〜12 水性塗料への耐汚染性改善剤の添加および耐汚染性評価
下記の7種類の水性塗料(いずれの塗料もバインダー成分がカルボニル基を有さない)に、塗料100重量部に対して、製造例1で得られた水溶性アクリル樹脂4.26重量部を耐汚染性改善剤として添加するとともに、ヒドラジド化合物としてアジピン酸ジヒドラジド0.5重量部を添加し、添加後の塗料中のカルボニル基の当量に対するヒドラジド基の当量比率が100%になるようにした。このようにして得られた耐汚染性改善剤を含む水性塗料を用いて、実施例1〜5と同様の手順で耐汚染性の評価を行った。なお、比較例5〜11として、耐汚染性改善剤およびヒドラジド化合物を添加する前の水性塗料についても同様の手順で耐汚染性の評価を行った。結果を表3に示す。
使用した水性塗料(いずれも日本ペイント社製)
P1:オーデコートG
P2:Nタイルラック水性トップスーパーホワイト
P3:オーデフレッシュU−100
P4:オーデフレッシュSi−100
P5:メディコGP
P6:メディコEP
P7:オーデパティオ(白)
【0041】
【表3】
【0042】
各配合の単位は重量部
【0043】
【発明の効果】
本発明の水性塗料組成物は、3級アミノ基およびカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂を含んでいるので、得られる塗膜表面が親水化され、耐汚染性に優れている。また、3級アミノ基およびカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂は硬化剤であるヒドラジド化合物により、バインダー成分であるカルボニル基含有アクリルエマルションと反応するため、その優れた耐汚染性を長期間維持できる。
また、本発明の耐汚染性改善剤は、水性塗料に添加することにより、それから得られる塗膜に優れた耐汚染性を付与することが可能である。
Claims (4)
- (a)水溶性基としてポリアルキレンオキサイドユニットを有する3級アミノ基およびカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂
(b)カルボニル基含有アクリルエマルション
(c)ヒドラジド化合物
を含む水性塗料組成物であって、
該(a)3級アミノ基およびカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂が、
ポリエチレンオキサイドユニット含有アクリルモノマー10〜80重量%、
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドおよびジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドから選択される3級アミノ基含有アクリルモノマー0.5〜90重量%、
ダイアセトン(メタ)アクリルアミド0.5〜80重量%、および、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、グリシジル(メタ)アクリレートから選ばれる1種または2種以上のモノマー0〜80重量%からなるアクリルモノマー混合物を重合して得られるものであり、
該(b)カルボニル基含有アクリルエマルションが、カルボニル基含有アクリルモノマー0.1〜30重量%を含むアクリルモノマー混合物を重合して得られるものであって、
該(b)カルボニル基含有アクリルエマルション100重量部に対して、該(a)3級アミノ基およびカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂3〜20重量部を含む、耐汚染性水性塗料組成物。 - 前記(b)カルボニル基含有アクリルエマルションの酸価が1〜50である、請求項1に記載の耐汚染性水性塗料組成物。
- 前記(a)3級アミノ基およびカルボニル基含有水溶性アクリル樹脂と前記(b)カルボニル基含有アクリルエマルションとが有するカルボニル基の当量の合計量に対する、前記(c)ヒドラジド化合物のヒドラジド基の当量が20〜200%である、請求項1または2に記載の耐汚染性水性塗料組成物。
- ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドまたはジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド0.5〜90重量%、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド0.5〜80重量%、ポリエチレンオキサイドユニット含有アクリルモノマー10〜80重量%およびメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、グリシジル(メタ)アクリレートから選ばれる1種または2種以上のモノマー0〜80重量%からなるアクリルモノマー混合物を重合して得られる耐汚染性改善剤。
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