JP4400905B2 - 鋼管杭構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は鋼管杭の頭部構造に関し、特に補強用鉄筋の接合構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
建物等の構造物を構築する場合、地中に埋設した鋼管杭の頭部に、鋼管杭頭部とフーチングのコンクリートを結合するために補強筋が鋼管杭頭部に接合される。この補強筋は通常異形鉄筋からなり、鋼管杭頭部に現場で溶接される。
【0003】
従来このような補強筋は、鋼管端部の内面または外面の周縁に沿って、鋼管端面から突出させて鋼管側面にフレアー溶接により接合されていた。
【0004】
しかしながら、異形鉄筋を鋼管側面に溶接する作業は、溶接位置が低く且つ縦方向の溶接となって溶接姿勢も取りずらく、作業性が悪いものであった。また曲面である鋼管側面に所定長さにわたって一定の溶け込み深さで一様に溶接する作業は、技術的にも難しいものであって、溶接の信頼性の面で問題が生じるおそれがあった。
【0005】
一方、このような鋼管側面に鉄筋をフレアー溶接により接合する構成に代えて、鋼管杭の上端面に円環状のリングプレートまたは座板を接合して、このリングプレートまたは座板上に鉄筋を突き当てて溶接する鋼管杭構造が知られている(特許第2732238号公報、特開2000−64274公報)。
【0006】
このようなリングプレートまたは座板を介して鉄筋を例えばスタッド溶接により接合する。スタッド溶接は、リングプレートまたは座板に対向させて所定間隔で鉄筋を保持し、対向部間にアークを発生させてその熱で対向する接合部を溶融し、鉄筋を相手側の溶融金属池中に押付けて接合する。
【0007】
このとき、鉄筋端部に通常カートリッジと呼ばれるフラックス材等からなるアークシールドを装着し、このアークシールドにより鉄筋端部周囲を外気から遮断するとともにアークを集中して安定させる。溶接湯となる溶融金属はこのアークシールド内に生成され凝固して溶接の肉盛り部を形成する。したがって、溶接すべきリングプレートや座板は溶接湯の湯漏れを防ぐために、この肉盛り部を形成するアークシールドの内径より広い接合面積をもっていなければならない。アークシールドは溶接後凝固してスラグとなり除去される。
【0008】
このようなスタッド溶接方法を用いることにより、鋼管側面へのフレアー溶接に比べ、溶接の作業性が向上し、また溶接時間も0.6〜1.6秒程度となり極めて短時間で溶接できる。また、鋼管の板厚が薄い場合に、このようなリングプレートまたは座板を介装することにより、鋼管板厚より太い径の鉄筋を溶接することができフーチングでの結合強度を高めることができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記リングプレートまたは座板を介して鉄筋を溶接する施工方法では、平板状の鋼鈑を円環状に加工してリングプレートや座板を形成するため、材料の無駄が大きくなる。また現場で鋼管杭の高さを揃えるためにその上端部を切断した場合、リングプレートまたは座板は現場で鋼管杭頭部端面に溶接しなければならず、鋼管全周に沿ってこのような溶接をすることは面倒で手間がかかり作業効率を低下させる原因となる。
【0010】
本発明は上記従来技術を考慮したものであって、現場での鋼管杭頭部への補強筋溶接の作業性を向上させるとともに、大きな鉄筋径にも対応可能な鋼管杭構造を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明では、鋼管杭の頭部端面にスタッド溶接により鉄筋が接合される鋼管杭構造において、前記鉄筋の径が前記鋼管杭の板厚より大きく、その鉄筋の溶接部の鋼管杭の両側又は片側には端面を揃えて補強板が溶接され、前記鉄筋は鋼管杭の頭部端面に直接溶接されていることを特徴とする鋼管杭構造を採用した。
【0012】
この構成によれば、鋼管杭頭部の補強筋を構成する異形鉄筋等は、リングプレートや座板を介することなく、鋼管杭端面に直接スタッド溶接されるため、現場での溶接の作業性が高められ、作業時間の短縮が図られる。しかも、鉄筋の径が鋼管杭の板厚より大きく(肉盛り部の径はさらに大きい)、鋼管杭端部の管壁の両側または片側には端面を同一面に揃えて補強板を溶接するようにしたので、鉄筋端面全面を支えるより大きな面積が形成され、鉄筋に作用する上の構造物からの応力を確実に鋼管杭に伝えることができる。
【0013】
図1〜図3はスタッド溶接の適用の仕方に関する説明図であり、図1は鋼管杭頭部の管壁部の断面構成図、図2及び図3はそれぞれ、そのII−II方向及びIII−III方向からの矢視図である。これらの説明図は、軸心をCとする鋼管杭1の上端面1aに直接異形鉄筋2をスタッド溶接している状態を示す。異形鉄筋2の端部にアークシールドとなるカートリッジ3が装着される。カートリッジ3は例えばセラミック等からなるフラックス材を固めた材料からなり、異形鉄筋2の端部を囲んでこれを覆う。カートリッジ3内には例えばアルミニウムからなるアークキャップ5が備わり、異形鉄筋2と鋼管杭1の対向面間に所定の間隔を形成する。このカートリッジ3の内径は鋼管杭1の管壁の板厚より大きい。したがって、鋼管杭1の両側に端面を揃えて添板4を取付け、この添板4の上面に鋼管杭1からはみ出した部分のカートリッジ3を支持する。これにより、カートリッジ3内に生じた溶接湯が下に漏れることが防止される。
【0014】
通電によりアークキャップ5が溶融して異形鉄筋2と鋼管杭1間にアークが発生し、その熱により、異形鉄筋2および鋼管杭1の母材が溶融してカートリッジ3内に溶融金属池(溶接湯)が形成される。この溶融金属池中に異形鉄筋2を押付けることにより異形鉄筋2と鋼管杭1が溶接接合される。溶接後溶融金属が凝固して図1(B)に示すように、溶接部に肉盛り部6が形成される。この肉盛り部6の径aは、鋼管杭1の板厚bより大きい。
【0015】
添板4は、例えば従来溶接エンドタブ等として用いられていたものと同様のセラミック(特開平9−277093、特許第2830980号参照)からなり、現場で管壁に擦り付けることにより、容易に研磨されて管壁に密着した形状に加工できる。この添板4を適当なバネ式のクリップ(不図示)で鋼管杭1の管壁に斜め上から挟んで保持する。この場合、最初は添板4の端面が鋼管杭1の端面より少し上に突出するようにクリップで添板4を保持する。
【0016】
カートリッジ3と異形鉄筋2を装着したスタッド溶接ガンを押付けると、その自重で添板4が押し下げられて、その上端面が鋼管杭1の端面とほぼ一致して湯漏れを防止する。このようにして添板4を用いることにより、肉盛り部6の径aが鋼管杭1の板厚bより大きくなる場合であっても、湯漏れを起こすことなく異形鉄筋2を鋼管杭1の端面に直接スタッド溶接することが可能になる。溶接後添板4は取外される。
【0017】
なお、添板4はセラミック製に限らず鋼板やL形アングル材等の鋼管杭1と同じ鉄系材料を用いてもよい。この場合には添板は溶接等により鋼管杭に固着してそのままフーチング内に埋設してもよい。鋼材以外の軽量のセラミック等を用いた場合,前述のクリップで保持する代わりに接着剤等で接合し溶接後ハンマー等で叩いて除去してもよい。
【0018】
肉盛り部6は鋼管杭1の管壁からはみ出して外側に膨らんでも強度的に問題ない。また、補強筋となる異形鉄筋2についても、上部構築物の荷重を鋼管杭1に確実に支持させるためには、必ずしもその接合端面全体が鋼管杭1の管壁の端面の範囲内に収まる必要はない。このことは実験により確認された。すなわち、異形鉄筋2の径が鋼管杭1の板厚より大きい場合であっても、杭の管壁よりはみ出した部分の鉄筋の下側に添板をあてがってスタッド溶接することにより、添板の一部が溶けて溶接湯が鉄筋下側の管壁側面に流れて管壁と一体化する。この溶接湯が肉盛り部となって、鉄筋および鋼管杭を一体化し、鉄筋からの応力を鋼管杭に伝達するのに充分な溶接強度が得られる。
【0019】
鉄筋径が管壁の板厚より大きい場合には、鉄筋の中心が管壁の中心と一致していることが応力伝達の信頼性の点で望ましい。この場合には、適当な治具を用いて鉄筋を杭の管壁の中心に位置合わせする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図4〜図6は本発明に係る実施形態を示したものであり、図4はその鋼管杭頭部の管壁部の断面構成図、図5及び図6はそれぞれ、V−V方向及びVI−VI方向からの矢視図である。この実施形態は、鋼管杭の板厚bより太い径dの異形鉄筋2を鋼管杭1の端面に直接スタッド溶接するものである。図示したように、鋼管杭1の端部の外側面に鋼板からなる補強板7が鋼管杭1と端面を揃えて接合される。この補強板7は、鋼管杭1の端面からはみ出した部分の異形鉄筋2を受けるためのものであり、鋼管杭1の曲面に沿って湾曲させてもよいし、平板のままでもよい。平板のままであっても、通常鋼管杭1の径は大きいため、湾曲面との間の隙間は僅かであって湯漏れの問題や強度上の問題は生じない。
【0021】
補強板7を溶接する場合、中央部に円形または適当な形状の孔8を形成し、この孔8の内周下縁部に沿って溶接する。9は溶接肉盛り部を示す。このように孔8の下縁部を溶接する作業は、孔8の斜め上方からできるため、安定した溶接姿勢がとりやすく溶接の作業性が向上する。ただし、溶接形態はこのような孔8を設ける形態に限らず、補強板7の上下左右の各辺の縁部に沿って、全周あるいは一部を溶接してもよい。上辺を溶接した場合には湯漏れを防止するために溶接肉盛り部を研磨して除去する必要がある。このような補強板7は、鉄筋の溶接位置に対応して鋼管杭1の管壁の内側に設けてもよく、あるいは必要に応じて両側に設けてもよい。
【0022】
このように補強板7を溶接した部分の鋼管杭1の両側または片側に、前述の図1〜図3の説明図に示した場合と同様に、添板4を取付けてスタッド溶接を行う。この場合、補強板7により鋼管杭1の端面の板厚が充分に広がって湯漏れのおそれがなければ添板4は不要である。その他の構成および作用効果は前述の図1〜図3の説明図に示した場合と同様である。なお、各実施形態において、鋼管杭1は、杭全長が鋼管で構成されているものに限らず、場所打ちコンクリート杭の頭部に鋼管を連続させて設けた杭等を含む。
【0023】
図7は本発明の別の実施形態の説明図である。この実施形態は、SC杭(鋼管コンクリート杭)に適用したものである。(A)は従来の場合、(B)は本発明の場合を示す。SC杭10は、鋼管11の端部にリング状の端板13を溶接し、その内側に遠心成形機等によりコンクリートを投入して円筒状のコンクリート12を形成したものである。端板13の外径はこのSC杭10の外径とほぼ等しい。このようなSC杭10に異形鉄筋2をスタッド溶接する場合、従来は(A)に示すように、端板13上にスタッド溶接のカートリッジ3がバランスよく載るように、ほぼ中央に溶接されていた。したがって、異形鉄筋2は鋼管11の管壁とずれた位置に溶接される。このため、鉄筋からの応力が鋼管11に鉛直に伝わらず、端板13の曲げ強度に影響されるため、この端板13を厚くして強度を高める必要がある。また、鉄筋2に引張り力が作用した場合、モーメントが作用して端板13が浮いてしまい、その後の杭の耐力の信頼性を低下させるおそれがある。
【0024】
これに対し、(B)に示すように、異形鉄筋2を鋼管11の管壁の直上にスタッド溶接すれば、鉄筋から鋼管に伝わる応力を鉛直に伝えることができ、端板の曲げ強度に係わらず応力を確実に伝達することができ、肉厚の薄い端板を用いることができる。また、鉄筋に引張り力が作用しても端板13が浮くことはなく、杭の耐力の信頼性が維持される。この場合、図示のように、添板4の適用も可能であるが、添板4を用いることなく、前述の図4〜図6に示した補強板7を用いてもよい。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、補強板を用いることにより、溶接する鉄筋径より薄い板厚の鋼管杭端面に直接鉄筋をスタッド溶接することができるため、鉄筋からの応力を杭の端面と補強板の両方を介して鋼管杭に伝達することができる。これにより、鋼管の板厚より太い径の鉄筋であっても接合できるので、現場で鋼管の側面にフレアー溶接したり座板等を溶接する必要がなくなり、作業性が向上し工期の短縮が図られる。
【0026】
また、鋼管の下端部に螺旋状の切削羽根を備えた回転式の鋼管杭を用いた場合、鋼管杭が地盤の硬い部分に到達した後、地上の突出部を揃えるために切断するが、その切断後に、本発明によれば、座板等を切断面に溶接する必要がなく、作業が効率よく行われ工期の短縮が図られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 スタッド溶接の適用の仕方に関する説明のための鋼管杭頭部の構成図。
【図2】 図1のII−II方向の矢視図。
【図3】 図1のIII−III方向の矢視図。
【図4】 本発明の実施の形態に係る鋼管杭頭部の構成図。
【図5】 図4のV−V方向の矢視図。
【図6】 図4のVI−VI方向の矢視図。
【図7】 本発明の別の実施形態の説明図。
【符号の説明】
1:鋼管杭、2:異形鉄筋、3:カートリッジ、4:添板、5:アークキャップ、6,6a:肉盛り部、7:補強板、8:孔、9:肉盛り部、10:SC杭、11:鋼管、12:コンクリート、13:端板
Claims (1)
- 鋼管杭の頭部端面にスタッド溶接により鉄筋が接合される鋼管杭構造において、前記鉄筋の径が前記鋼管杭の板厚より大きく、その鉄筋の溶接部の鋼管杭の両側又は片側には端面を揃えて補強板が溶接され、前記鉄筋は鋼管杭の頭部端面に直接溶接されていることを特徴とする鋼管杭構造。
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JP2000203881A JP4400905B2 (ja) | 2000-07-05 | 2000-07-05 | 鋼管杭構造 |
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