JP7178531B2 - 回転摩擦溶接における溶融金属閉じ込めリングによる溶融金属の閉じ込め方法 - Google Patents
回転摩擦溶接における溶融金属閉じ込めリングによる溶融金属の閉じ込め方法 Download PDFInfo
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Description
さらに、特許文献5で提示した回転摩擦溶接では、空所の底部で摩擦により生成された溶融金属を、空所と接合金属の側周面間の空間に隙間なく充填させる必要がある。静止面で囲まれた空隙に溶融金属が侵入すると、温度低下によって急激に凝固する。一方、空所と接合金属の側周面間の空隙のように壁面が大きな相対速度を持つ場合、ここに侵入した溶融金属は粘性流動を強いられ、エネルギーが供給され続けて容易に凝固せず、流体を保持して空隙に侵入していくことが可能になる。しかし、活発に流動する溶融金属が挿入体の回転運動によって、空所と接合金属の側周面間の空隙から吐出してバリを形成したり飛沫となって飛散する。溶融金属の吐出は空所内部に空隙を残し、材料欠陥となり接合強度を低下させる原因となる。
なお、「表面」とは、挿入される接合金属の基端部側の面とし、「裏面」とは、挿入される接合金属の先端部側の面とする。「側周面」とは、回転対称体における母線の生成する面を意味する。「容易に空所に挿入されうる」とは、接合金属の側周面と空所の側周面との間に適度の隙間を有して挿入が容易なことを意味する。
回転摩擦によって第1の鋼材と第2の鋼材とを接合金属を介して接合する接合方法であって、前記第1の鋼材と前記第2の鋼材とを隣接した位置に配置すると共に前記第1の鋼材の端面と前記第2の鋼材の端面とを対向させて配置し、前記第1の鋼材の端面と前記第2の鋼材の端面とに跨り前記第1の鋼材の表面と前記第2の鋼材の表面とに垂直もしくは略垂直な直線を回転軸とする回転対称形状で側周面と底部を有する空所を加工し、前記接合金属は容易に前記空所に挿入されうる形状の回転対称体であって、前記接合金属を前記空所に挿入し、前記接合金属の先端部と前記空所の前記底部との接触部に押圧力を加えた状態で前記接合金属を回転軸周りに回転させて摩擦を生ぜしめ、前記摩擦による摩擦熱を利用して前記接触部近傍の材料組織を溶融させて溶融金属を生成し、液体化した前記溶融金属を前記接合金属の先端部に生じる押圧力と回転運動を利用して前記接合金属の前記側周面と前記空所の前記側周面との隙間に充填させ、ついで回転運動を停止させて前記溶融金属を凝固させ前記隙間近傍の組織と一体化させることによる前記接合金属を介しての前記第1の鋼材と前記第2の鋼材との接合において、溶融金属閉じ込めリングをリング部内側面と前記接合金属の前記側周面との間に僅かな隙間を介して装着し、リング部裏面を前記第1の鋼材の表面と前記第2の鋼材の表面とに載置することにより、前記溶融金属が前記空所から吐出することを防止し前記空所内に閉じ込めて密実に充填する。
ここで、第1の鋼材および第2の鋼材の材質は、任意の構造用鋼材であって、接合金属の材質は、摩擦により溶融し、第1の鋼材と接合金属および第2の鋼材と接合金属とを一体化することが可能な金属である限り任意である。例えば、鋼材、合金鋼材、アルミニウム材、アルミニウム合金材などが挙げられる。空所の形状および接合金属の形状は、接合金属を空所に押し付けつつ回転することが容易な回転対称形状とする。
回転摩擦によって第1の鋼材と第2の鋼材とを接合金属を介して接合する接合方法であって、前記第1の鋼材と前記第2の鋼材とを重ねた位置に配置すると共に前記第1の鋼材の裏面と前記第2の鋼材の表面を対向させて配置し、前記第1の鋼材の裏面と前記第2の鋼材の表面とを貫く直線を回転軸とする回転対称形状で側周面と底部を有する空所を加工し、前記接合金属は、容易に前記空所に挿入されうる形状の回転対称体であって、前記接合金属を前記空所に挿入し、前記接合金属の先端部と前記空所の前記底部との接触部に押圧力を加えた状態で前記接合金属を回転軸周りに回転させて摩擦を生ぜしめ、前記摩擦による摩擦熱を利用して前記接触部近傍の材料組織を溶融させて溶融金属を生成し、液体化した前記溶融金属を前記接合金属の先端部に生じる押圧力と回転運動を利用して前記接合金属の前記側周面と前記空所の前記側周面との隙間に充填させ、ついで回転運動を停止させて前記溶融金属を凝固させ前記隙間近傍の組織と一体化させることによる前記接合金属を介しての前記第1の鋼材と前記第2の鋼材との接合において、溶融金属閉じ込めリングをリング部内側面と前記接合金属の前記側周面との間に僅かな隙間を介して装着し、リング部裏面を前記第1の鋼材の表面に載置することにより、前記溶融金属が前記空所から吐出することを防止し前記空所内に閉じ込めて密実に充填する。
ここで、第1の鋼材および第2の鋼材の材質は、任意の構造用鋼材であって、接合金属の材質は、摩擦により溶融し、第1の鋼材と接合金属および第2の鋼材と接合金属とを一体化することが可能な金属である限り任意である。例えば、鋼材、合金鋼材、アルミニウム材、アルミニウム合金材などが挙げられる。空所の形状および接合金属の形状は、接合金属を空所に押し付けつつ回転することが容易な回転対称形状とする。
前記溶融金属閉じ込めリングは、前記リング部内側面が前記接合金属の側周面との間に僅かな隙間を介して対向する形状であり、前記リング部裏面が前記第1の鋼材および/または前記第2の鋼材の表面に重なり合う形状である。すなわち、第1の鋼材および/または第2の鋼材の表面が鋼管のような曲面であれば、リング部裏面もそれらに沿って重なり合う曲面形状である。なお、リング部外側面の形状およびリング部表面の形状は任意であるが、それぞれリング部内側面の形状およびリング部裏面の形状と同種であることが望ましい。
前記溶融金属閉じ込めリングは、鋼材、非鉄金属、セラミックス、合成樹脂または木材のいずれかからなる。
前記溶融金属閉じ込めリングには、前記溶融金属の吐出の防止効果を確実にするとともに前記接合金属の回転に共回りしないように、前記第1の鋼材および/または前記第2の鋼材の表面に定着させる手段を用いる。定着させる手段としては、ネジ等の機械的な締結による締着の手段、接着剤等の湿式充填による接着の手段、磁力による磁着の手段などが考えられる。
前記溶融金属閉じ込めリングは、永久磁石であって、前記第1の鋼材および/または前記第2の鋼材の表面に磁力により定着させる。ここで、溶融金属閉じ込めリングは、フェライトを主成分としたセラミックス磁石、または希土類金属やニッケル、コバルトを主成分とした金属磁石、またはそれらとゴムまたはプラスチックスとの合成物であるボンド磁石から構成される。
前記第1の鋼材と前記第2の鋼材とが請求項1乃至6のいずれかに記載の方法により接合される回転摩擦による鋼材の接合構造であって、鋼構造骨組の接合構造、特に、建築鋼構造に用いられる柱や梁など鋼構造骨組を構成する鋼材の接合構造に用いられる。
本発明では、接合金属の先端部と空所の底部との接触部での摩擦により発生させた溶融金属を溶融金属閉じ込めリングの働きによって空所内に密実に充填させることにより次の効果が生じ技術的に有用なものとなる。
(1) 接合組織内に欠陥となる空隙が残ることを防止し、所要の接合部強度を安定して得られる。
(2) 溶融金属の吐出によるエネルギー浪費を除去することにより接合のエネルギー効率が大幅に高まり、回転を与えるモーターのトルクや仕事率を大きく低減できる。
(3) 装置が小型化でき、操作性や仕事効率を高められる。
(4) 接合金属と空所の形状は「円筒」でも成立するため、加工が容易になる。これによってもたらされる量産化、コスト・メリットは、実用化にとって極めて重要である。
なお、上記方法では、従来の摩擦圧接法のように接合部材の接触部界面で発生した溶融金属を無用な凝固物であるバリとして吐出するものではなく、被接合鋼材と接合金属とを接合する溶接金属として有効に利用する新しい技術である。溶融金属が溶鋼の場合、粘性抵抗が極めて小さい流体であるため押し付け力と接合金属の回転運動によって容易に空隙に浸透せしめることが可能である。さらに摩擦は接合金属の先端部と空所の底部との接触部のみで生じさせるため、接合金属に加える押し付け力、及び、回転を与えるモーターのトルクは共に小さくて済む。すなわち、簡易な機構を用いた回転摩擦による接合が可能となる。
本発明の第1実施形態を、図2、図3を参照して説明する。第1の鋼材10および第2の鋼材20は、端面を持つ鋼材である。端面を持つ鋼材とは、例えば鋼板、H形鋼を構成するフランジおよびウェブ、角形鋼管や円形鋼管など閉鎖断面部材の管鋼板本体などが挙げられる。端面同士を対向させて配置した接合とは、具体的には突き合わせ接合である。第1の鋼材10と第2の鋼材20とを隣接した位置に配置すると共に第1の鋼材10の端面11と第2の鋼材20の端面21とを対向させて配置する。このとき、第1の鋼材10の端面11と第2の鋼材20の端面21とは、面接触(メタルタッチ)状に配置されることが望ましいが、不可避の建方誤差等に伴う微小のズレは許容される。空所50として、第1の鋼材10の端面11と第2の鋼材20の端面21とに跨り、第1の鋼材10の表面12と前記第2の鋼材20の表面22とに垂直な直線を回転軸71とし単調変化する曲線を母線とする回転対称形状の側周面52と、側周面52に連続する円錐体形状の底部51を加工する。
一方、接合金属40は、回転軸71からの距離が基端部48から先端部47に向かって単調減少する母線によって形成される回転対称形状の側周面42を有する接合金属本体41と、接合金属本体41に連続する円錐体形状の先端面47aを有する先端部47とからなり、空所50に容易に挿入されうる大きさとする。接合金属本体41は基端部48側に半径が一定である円筒形の側周面42aを有し、溶融金属閉じ込めリング90を接合金属本体41の円筒形側周面42aに僅かな隙間を介して装着し、接合金属40をその先端60が空所50の底部に達するまで挿入する。この挿入過程で溶融金属閉じ込めリング90のリング部裏面93は第1の鋼材10の表面12と第2の鋼材20の表面22とに載置する。載置された溶融金属閉じ込めリング90には、溶融金属の吐出の防止効果を確実にするとともに接合金属40の回転に共回りしないように、溶融金属閉じ込めリング90を鋼材の表面12、22に定着させる手段を用いることが望ましい。定着させる手段としては、ネジ等の機械的な締結による締着の手段、接着剤等の湿式充填による接着の手段、磁力による磁着の手段などが考えられる。本実施形態では、溶融金属閉じ込めリング90を永久磁石とし、永久磁石の磁力により定着させる手段を採用する。
次いで、図3bに示すように、接合金属40に押し付け力Pを作用させながら回転軸71回りに回転ωを与えることにより接合金属40の先端部47と空所50の底部51との間の回転摩擦面62に摩擦を生じさせる。このとき溶融金属閉じ込めリング90のリング部裏面93と鋼材の表面12、22との間には磁石の吸着力が働いているため、溶融金属閉じ込めリング90は接合金属40に対して共回りしない。摩擦熱によって液体化した溶融金属80は、押し付け力Pによる押圧力と溶融金属80に作用する浮力と接合金属40の回転運動による遠心力の作用によって接合金属40の側周面42と空所50の側周面52との隙間61に侵入して行く。溶融金属80は溶融金属閉じ込めリング90によって空所50からの吐出が防止されているため、空所50の全域を密実に充填させることができる。溶融金属80の充填が完了したとき接合金属40の回転運動を停止させる。その後生じる温度低下によって溶融金属80は凝固し、隙間61近傍の組織と一体化することにより接合が完了する。
接合金属40の先端部47と空所50の底部51との間での摩擦によって生成された溶融金属80は、押し付け力Pによる押圧力と溶融金属80に作用する浮力と接合金属40の回転運動による遠心力の作用によって接合金属40の側周面42と空所50の側周面52との隙間61に侵入して行く。図4に示すように溶融金属閉じ込めリング90が無ければ、溶融金属80は前記隙間61の外部空間へ通じる出口61aから吐出し、周囲への熱伝導で熱が失われることにより凝固してバリ81となるかまたは接合金属40の回転による遠心力が働いて飛散する。吐出した溶融金属が吐出前に空所内に存在していた箇所には空隙99が形成され、前記空隙99は接合部の強度を低下させる。一方、図5に示すように溶融金属閉じ込めリング90が溶融金属80の吐出を防止すれば、溶融金属80は前記空隙99を形成することなく前記隙間61の全域を密実に充填でき良好な接合が実現できる。
図5bに示すように溶融金属が空所の外部に吐出する可能性がある経路は、溶融金属閉じ込めリング90のリング部内側面94と接合金属40の側周面42との間の境界97と、溶融金属閉じ込めリング90の裏面93と鋼材の表面12および/または22との間の境界98の2か所である。
前者の吐出経路である境界97には、接合金属に押付力Pを作用させ軸回りの回転ωを生ぜしめる回転摩擦溶接の過程において有意な圧力は生じない。よって、境界97を経由して溶融金属80が吐出しない程度に溶融金属閉じ込めリング90のリング部内側面94と接合金属40の側周面42との間の間隔を十分に小さく保てば、溶融金属40がその粘性作用により境界97を通過することは無く溶融金属80の吐出は防止される。さらに、前記境界97に有意な圧力は生じないので接触部での摩擦力は小さく接合金属40の回転を妨げることは無く、また摩擦熱によって境界97の近傍組織が溶解して新たな溶融金属吐出経路が形成されることは無い。
一方、後者の吐出経路である境界98においては、溶融金属80による圧力が溶融金属閉じ込めリング90のリング部裏面93を鋼材の表面12および/または22から離反させるように作用する。接触面が離反すればその隙間から溶融金属80が吐出する可能性が生じるため、溶融金属80の圧力を打ち消して離反を生じさせない大きさの押付圧または吸着力が必要である。溶融金属閉じ込めリング90が永久磁石であるとリング部裏面93と鋼材の表面12および/または22との間には磁気による吸着力が働いており、溶融金属80の内圧による溶融金属閉じ込めリング90のリング部裏面93が鋼材の表面12および/または22からの離反が防止される。また、溶融金属80が境界98の隙間に侵入しても、その隙間は静止した溶融金属閉じ込めリング90のリング部裏面93と静止した第1の鋼材の表面12および/または第2の鋼材の22で囲まれているため熱伝導によって溶融金属80の温度は急激に低下して凝固するため外部への吐出は防止される。
溶融金属閉じ込めリング90を装着した接合金属40を回転装置70に取り付け、空所50に挿入する。挿入の過程で溶融金属閉じ込めリング90のリング部裏面93は第1の鋼材10の表面12と第2の鋼材20の表面22に載置され、溶融金属閉じ込めリング90の磁力によって定着させられる。次いで、図6bに示すように、接合金属40に押し付け力Pを作用させながら回転軸71回りに回転ωを与えることにより接合金属40の先端部47と空所50の底部51との間の回転摩擦面62にて摩擦を生ぜしめる。回転数は3000rpmで押し付け力は7000Nである。このとき溶融金属閉じ込めリング90のリング部裏面93と鋼材の表面12、22との間には磁石の吸着力が働いているため、溶融金属閉じ込めリング90は接合金属40に対して共回りしない。摩擦熱によって液体化した溶融金属80は押し付け力Pによる押圧力と溶融金属80に作用する浮力と接合金属40の回転運動による遠心力の作用によって接合金属40の側周面42と空所50の側周面52との隙間61に侵入していく。溶融金属80は溶融金属閉じ込めリング90によって空所50からの吐出が防止されているため、空所50の全域を密実に充填させることができる。溶融金属80が隙間61の全域にわたって密実に充填されたとき回転運動を停止させる。その後の温度低下に伴って溶融金属80は凝固し、隙間61近傍の組織と一体化することにより接合が完了する。ところで、本実施形態では、空所の底部51および接合金属40の先端部47をそれぞれ円錐体形状としたが、それぞれ平坦面形状であってもよい。
(手順1)図7aは、隣接した位置に配置した鋼板である第1の鋼材10と第2の鋼材20の突き合わせ面に跨る円筒形状の空所50に、溶融金属閉じ込めリング90を円柱形状の接合金属本体41に装着した接合金属40を回転装置70に取り付けて挿入し、接合金属40の先端部47と空所50の底部51との間に接触部60が生じた状態を示す。
(手順2)図7bは、接合中の状態を示す。接合金属40に押し付け力Pを作用させ、押し付け力Pを一定に保持しながら接合金属40を回転軸71回りに回転速度ωで回転を与えることにより接合金属40の先端部47と空所50の底部51との間の回転摩擦面62にて摩擦を生じさせる。摩擦熱によって液体化した溶融金属80は、押し付け力Pによる押圧力と溶融金属80に作用する浮力と接合金属40の回転運動による遠心力の作用によって接合金属40の側周面42と空所50の側周面52との隙間61に侵入していく。このとき溶融金属閉じ込めリング90は、溶融金属80が空所50から外部に吐出することを防止する。
(手順3)図7cは、接合後の状態を示す。接合金属40の先端部47と空所50の底部51との間の回転摩擦面62(図7b参照)における摩擦によって生成された溶融金属80(図7b参照)が、接合金属40の側周面42と空所50の側周面52との隙間61の全域に充填されたときに接合金属40の回転運動を停止させ、その後の温度低下に伴って隙間内部に残留して凝固した溶融金属80aが近傍の組織と一体化することにより接合が完了する。なお、図7c中の62aは、接合完了時における接合金属の先端部47と空所の底部51との間の回転摩擦面を表す。
本実施形態では、第1の鋼材10および第2の鋼材20は、それぞれSN400厚さ22mmの鋼板であり、第1の鋼材10には表面12から裏面13に貫く直径30mmの円筒形状の空所50cを加工し、第2の鋼材20には表面22から裏面23に貫く直径30mmの円筒形状の空所50dを加工し、第1の鋼材10と第2の鋼材20とを重ねた位置に配置すると共に第1の鋼材10の裏面13と第2の鋼材20の表面22を対向させ、且つ第1の鋼材10に加工した円筒形状の空所50cの中心と、第2の鋼材20に加工した円筒形状の空所50dの中心が回転軸71として一致するように配置すると、第1の鋼材10と第2の鋼材20とを貫く直線を回転軸71とする回転対称形状の空所50が形成される。さらに、第2の鋼材20の裏面23に空所50を塞ぐように裏当板55を付接して空所50の底部51を形成する。このとき、第1の鋼材10の裏面13と第2の鋼材20の表面22とは、面接触(メタルタッチ)状に配置されることが望ましいが、不可避の建方誤差等に伴う微小のズレは許容される。一方、接合金属40は、SN400鋼材であり接合金属本体41が直径29.5mmの円柱体であり、先端部47は先端直径29mm、開き角120°の円錐形テーパ部である。直径29.6mmの円筒形の孔部96を有する厚さ5mmのリング形状を持つ溶融金属閉じ込めリング90を接合金属40の円筒形状を持つ接合金属本体41に通して取り付ける。溶融金属閉じ込めリング90はフェライトを磁化させた永久磁石であり、磁界の向きは溶融金属閉じ込めリング90の厚さ方向、磁束密度は300mT(ミリテスラ)である。
溶融金属閉じ込めリング90を装着した接合金属40を回転装置70に取り付け、空所50に挿入する。挿入の過程で溶融金属閉じ込めリング90のリング部裏面93は第1の鋼材10の表面12に載置され、溶融金属閉じ込めリング90の磁力によって定着させられる。接合金属40に押し付け力を作用させながら回転軸71回りに回転を与えて摩擦を生じさせる。ここで回転数は3000rpmで押し付け力は7000Nである。このとき溶融金属閉じ込めリング90のリング部裏面93と鋼材の表面12との間には磁石の吸着力が働いているため、溶融金属閉じ込めリング90は接合金属40に対して共回りしない。摩擦熱によって液体化した溶融金属80は押し付け力Pによる押圧力と溶融金属80に作用する浮力と接合金属40の回転運動による遠心力の作用によって接合金属40の側周面42と空所50の側周面52との隙間61に侵入していく。溶融金属80は溶融金属閉じ込めリング90によって空所50からの吐出が防止されているため、空所50の全域を密実に充填させることができる。溶融金属80が隙間61の全域にわたって密実に充填されたとき回転運動を停止させる。その後の温度低下に伴って溶融金属80は凝固して組織が一体化し、接合金属40を介して第1の鋼材10と第2の鋼材20とを接合する。ところで、本実施形態では、空所50および接合金属40をそれぞれ円筒形状、円柱体としたが、図2、図3に示した第1実施形態のように、単調変化する曲線部を持つ母線によって形成される回転対称形状の側周面52、42を有するものとしてもよい。
11:第1の鋼材の端面
12:第1の鋼材の表面
13:第1の鋼材の裏面
20:第2の鋼材(被接合鋼材)
21:第2の鋼材の端面
22:第2の鋼材の表面
23:第2の鋼材の裏面
30:第3の鋼材(被接合鋼材)
32:第3の鋼材の表面
33:第3の鋼材の裏面
34:上スプライスプレート
35:フランジプレート
36:下スプライスプレート
37:第1のH形鋼
38:第2のH形鋼
40:接合金属
41:接合金属本体
42:接合金属の側周面
42a:接合金属の基端部にある円筒形側周面
47:接合金属の先端部
47a:接合金属の先端面
48:接合金属の基端部
50:空所
50a:第1の鋼材に設けられる半円筒形状の空所
50b:第2の鋼材に設けられる半円筒形状の空所
50c:第1の鋼材に設けられる円筒形状の空所
50d:第2の鋼材に設けられる円筒形状の空所
51:空所の底部
51a:第1の鋼材に設けられる空所の底部
51b:第2の鋼材に設けられる空所の底部
52:空所の側周面
55:裏当板
60:接合金属の先端部と空所の底部との接触部
61:接合金属の側周面と空所の側周面との隙間
61a:接合金属の側周面と空所の側周面との隙間の出口
62:接合金属の先端部と空所の底部との間の回転摩擦面
62a:接合完了時における接合金属の先端部と空所の底部との間の回転摩擦面
70:回転装置
71:回転対称体の回転軸
72:接合ユニット
80:溶融金属
80a:隙間に充填され凝固した溶融金属
81:バリ
90:溶融金属閉じ込めリング
91:リング部
92:リング部表面(リング部表裏面のうち接合金属の基端部側の面)
93:リング部裏面(リング部表裏面のうち接合金属の先端部側の面)
94:リング部内側面(=孔部外側面)
95:リング部外側面
96:孔部
97:リング部内側面と接合金属の側周面との間の境界
98:リング部裏面と鋼材の表面との間の境界
99:溶融金属の吐出によって空所内に形成された空隙
110:従来技術における第1の鋼材
120:従来技術における第2の鋼材
160:従来技術における接触部
181:従来技術におけるバリ
210:従前出願における第1の鋼材
211:従前出願における第1の鋼材の端面
212:従前出願における第1の鋼材の表面
220:従前出願における第2の鋼材
221:従前出願における第2の鋼材の端面
222:従前出願における第2の鋼材の表面
240:従前出願における接合金属
241:従前出願における接合金属本体
242:従前出願における接合金属の側周面
247:従前出願における接合金属の先端部
247a:従前出願における接合金属の先端面
248:従前出願における接合金属の基端部
250:従前出願における空所
251:従前出願における空所の底部
252:従前出願における空所の側周面
260:従前出願における接合金属の側周面と空所の側周面との接触面
261:従前出願における接合金属の側周面と空所の側周面との隙間
271:従前出願における回転対称体の回転軸
Claims (7)
- 回転摩擦によって第1の鋼材と第2の鋼材とを接合金属を介して接合する接合方法であって、前記第1の鋼材と前記第2の鋼材とを隣接した位置に配置すると共に前記第1の鋼材の端面と前記第2の鋼材の端面とを対向させて配置し、前記第1の鋼材の端面と前記第2の鋼材の端面とに跨り前記第1の鋼材の表面と前記第2の鋼材の表面とに垂直もしくは略垂直な直線を回転軸とする回転対称形状で側周面と底部を有する空所を加工し、前記接合金属は容易に前記空所に挿入されうる形状の回転対称体であって、前記接合金属を前記空所に挿入し、前記接合金属の先端部と前記空所の前記底部との接触部に押圧力を加えた状態で前記接合金属を回転軸周りに回転させて摩擦を生ぜしめ、前記摩擦による摩擦熱を利用して前記接触部近傍の材料組織を溶融させて溶融金属を生成し、液体化した前記溶融金属を前記接合金属の先端部に生じる押圧力と回転運動を利用して前記接合金属の前記側周面と前記空所の前記側周面との隙間に充填させ、ついで回転運動を停止させて前記溶融金属を凝固させ前記隙間近傍の組織と一体化させることによる前記接合金属を介しての前記第1の鋼材と前記第2の鋼材との接合において、溶融金属閉じ込めリングをリング部内側面と前記接合金属の前記側周面との間に僅かな隙間を介して装着し、リング部裏面を前記第1の鋼材の表面と前記第2の鋼材の表面とに載置することにより、前記溶融金属が前記空所から吐出することを防止し前記空所内に閉じ込めて密実に充填することを特徴とする回転摩擦による鋼材の接合方法。
- 回転摩擦によって第1の鋼材と第2の鋼材とを接合金属を介して接合する接合方法であって、前記第1の鋼材と前記第2の鋼材とを重ねた位置に配置すると共に前記第1の鋼材の裏面と前記第2の鋼材の表面を対向させて配置し、前記第1の鋼材の裏面と前記第2の鋼材の表面とを貫く直線を回転軸とする回転対称形状で側周面と底部を有する空所を加工し、前記接合金属は、容易に前記空所に挿入されうる形状の回転対称体であって、前記接合金属を前記空所に挿入し、前記接合金属の先端部と前記空所の前記底部との接触部に押圧力を加えた状態で前記接合金属を回転軸周りに回転させて摩擦を生ぜしめ、前記摩擦による摩擦熱を利用して前記接触部近傍の材料組織を溶融させて溶融金属を生成し、液体化した前記溶融金属を前記接合金属の先端部に生じる押圧力と回転運動を利用して前記接合金属の前記側周面と前記空所の前記側周面との隙間に充填させ、ついで回転運動を停止させて前記溶融金属を凝固させ前記隙間近傍の組織と一体化させることによる前記接合金属を介しての前記第1の鋼材と前記第2の鋼材との接合において、溶融金属閉じ込めリングをリング部内側面と前記接合金属の前記側周面との間に僅かな隙間を介して装着し、リング部裏面を前記第1の鋼材の表面に載置することにより、前記溶融金属が前記空所から吐出することを防止し前記空所内に閉じ込めて密実に充填することを特徴とする回転摩擦による鋼材の接合方法。
- 前記溶融金属閉じ込めリングは、前記リング部内側面が前記接合金属の側周面との間に僅かな隙間を介して対向する形状であり、前記リング部裏面が前記第1の鋼材および/または前記第2の鋼材の表面に重なり合う形状であることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の回転摩擦による鋼材の接合方法。
- 前記溶融金属閉じ込めリングは、鋼材、非鉄金属、セラミックス、合成樹脂または木材のいずれかからなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の回転摩擦による鋼材の接合方法。
- 前記溶融金属閉じ込めリングには、前記溶融金属の吐出の防止効果を確実にするとともに前記接合金属の回転に共回りしないように、前記第1の鋼材および/または前記第2の鋼材の表面に定着させる手段を用いることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の回転摩擦による鋼材の接合方法。
- 前記溶融金属閉じ込めリングは、永久磁石であって、前記第1の鋼材および/または前記第2の鋼材の表面に磁力により定着させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の回転摩擦による鋼材の接合方法。
- 前記第1の鋼材と前記第2の鋼材とが請求項1乃至6のいずれかに記載の方法により接合されることを特徴とする回転摩擦による鋼材の接合構造。
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