JP4397575B2 - 新規ホスホニウム化合物およびそれを含有する熱硬化性樹脂組成物 - Google Patents

新規ホスホニウム化合物およびそれを含有する熱硬化性樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は新規なホスホニウム化合物に関する。さらに詳しくは、本発明は新規なホスホニウム化合物に関するとともにこの化合物からなる重合触媒、この化合物を含む熱硬化性樹脂組成物ならびにそれを熱硬化させた樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂と重合触媒とからなる一液性の熱硬化性樹脂組成物は作業性などに優れているため従来から広く用いられている。一液性の熱硬化性樹脂組成物用重合触媒としては、低温では重合反応は開始せず、ある一定の温度以上に加熱した時に速やかに重合反応が進行するとともに、得られた熱硬化性樹脂硬化物に着色や臭気を付与せず、しかも硬化物の安定性に影響を与えないという性質が要求される。
このような一液性の熱硬化性樹脂組成物における重合触媒として、従来からベンジルホスホニウム化合物やホスホニウム塩が使用されている(例えば、特許文献1および2参照)。しかし、これらのホスホニウム塩は、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂に対する重合活性が低く、硬化に120℃以上の温度を必要とするため使用範囲が制限されてしまう問題点がある。さらに、これらのホスホニウム化合物では、得られる熱硬化性樹脂硬化物の安定性が十分ではないという問題点もある。
【0003】
【特許文献1】
特開平5−105692号公報
【特許文献2】
特開平6−157624号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明の目的は、上記した問題点を解決することにあり、硬化反応に高温を必要とせず、しかも重合活性の高い硬化触媒となる新規化合物およびそれを含有する保存安定性に優れた熱硬化性樹脂組成物ならびにその硬化物を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記一般式(I)で示されるホスホニウム化合物が熱硬化性樹脂の硬化触媒として使用すると、120℃以下の低温で硬化反応が進行し、かつ高活性であることを見出し、この知見に基づき本発明を完成した。
すなわち本発明は、
(1)一般式(I):
【化3】
Figure 0004397575
(式中、R〜Rは、同一または異なって、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいジアリールメチル基または式(II):
【化4】
Figure 0004397575
(式中、R〜Rは、同一または異なって、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいジアリールメチル基を示し、R〜R11は、同一または異なって水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基であり、Aは置換されていてもよい芳香族炭化水素環であり、nは1〜5の整数、mは0または1であり、Xはハロゲン原子、SbF、AsF、PF、BFまたはBPhを表す。)で表される基を示し(ただし、R〜Rのうち少なくとも1つは式(II)で表される基である。)、または、R〜Rのうちのいずれか1つと、R〜Rのうちのいずれか1つとが一緒になって低級アルキレン基を形成してリン原子2個を含む複素環を形成してもよく、Xは式(II)における定義と同義である。)で示されるホスホニウム化合物、
(2)R〜Rのうち少なくとも1つは、上記式(II)で表される基であって、R〜Rが同一または異なってフェニル基、置換されていてもよいベンジル基、ナフチルメチル基、置換されていてもよいジフェニルメチル基または置換されていてもよいアルキル基であり、Rが水素原子、Rが水素原子またはフェニル基、nが1〜4の整数、mが0であり、R〜Rのうちの残りはフェニル基、置換されていてもよいベンジル基、ナフチルメチル基、置換されていてもよいジフェニルメチル基または置換されていてもよいアルキル基である上記(1)記載のホスホニウム化合物、
(3)Rは、上記式(II)で表される基であって、R、RおよびRがフェニル基であり、Rが水素原子であり、mが0、nが2であり、RはRと一緒になって炭素数1〜4のアルキレン基を形成し、RおよびRはフェニル基である上記(1)記載のホスホニウム化合物、
(4)Rは、上記式(II)で表される基であって、R〜Rがフェニル基または式:−(CH)-PPh(式中、pは1〜4の整数を示す)で表される基、R〜R11が水素原子、Aが置換されていてもよいベンゼン環であり、mおよびnが1であり、R〜Rはフェニル基または式:−(CH)-PPh(式中、pは1〜4の整数を示す)で表される基である上記(1)記載のホスホニウム化合物、
(5)Rは、上記式(II)で表される基であって、RおよびRがフェニル基、R〜R11が水素原子、Aが置換されていてもよいベンゼン環であり、mおよびnが1であり、RはRと一緒になって炭素数1〜8のアルキレン基を形成し、RおよびRはフェニル基である上記(1)記載のホスホニウム化合物、
(6)上記(1)〜(5)のいずれか1に記載のホスホニウム化合物からなる重合触媒、
(7)熱硬化性樹脂に、上記(1)〜(5)のいずれか1に記載のホスホニウム化合物を配合してなる熱硬化性樹脂組成物、
(8)熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂である上記(7)記載の熱硬化性樹脂組成物、
(9)エポキシ樹脂100重量部に対し、上記(2)〜(5)のいずれか1に記載のホスホニウム化合物を0.01〜10重量部含有してなる上記(8)記載の熱硬化性樹脂組成物、
(10)ホスホニウム化合物の対イオンX-がSbF -である上記(9)記載の熱硬化性樹脂組成物、および
(11)上記(7)〜(9)のいずれか1に記載の熱硬化性樹脂組成物を加熱・硬化させて得られる硬化物を提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に係る新規なホスホニウム化合物および重合触媒は下記一般式(I)で示されることを特徴としている。
【化5】
Figure 0004397575
ここで、R〜Rのうち少なくとも1つは式(II):
【化6】
Figure 0004397575
で表される基である。
式(II)中、R〜Rは、同一または異なって、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいジアリールメチル基を示し、R〜R11は、同一または異なって水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基であり、Aは置換されていてもよい芳香族炭化水素環であり、nは1〜5の整数、mは0または1であり、Xはハロゲン原子、SbF、AsF、PF、BFまたはBPhを表す。
式(I)におけるR〜Rのうち式(II)で表される基以外のものは、同一または異なって、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいジアリールメチル基である。またはR〜Rのうちのいずれか1つと、R〜Rのうちのいずれか1つとが一緒になって低級アルキレン基を形成してリン原子2個を含む複素環を形成してもよい。
また、式(I)におけるXは、式(II)における定義と同義である。
〜Rの置換されていてもよいアルキル基の置換アルキル基としては、たとえば式:−(CH)-PPh(式中、pは1〜4の整数を示す)で表される基などが挙げられる。
〜Rの置換されていてもよいアリール基のアリール基としては、たとえばフェニル基、ナフチル基などが挙げられ、該置換基としては、たとえばフッ素、塩素、臭素などのハロゲン原子、シアノ基、ベンゾイル基、アルキル基などが挙げられる。
〜Rの置換されていてもよいアラルキル基としては、たとえばベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ピレニルメチル基およびアントラセニルメチル基などが挙げられ、該置換基としては、たとえばフッ素、塩素、臭素などのハロゲン原子、シアノ基、ベンゾイル基、アルキル基、トリフルオロメチルなどのハロゲン化アルキル基、置換されていてもよいフェニル基(該置換基としては、たとえばフッ素、塩素などのハロゲン原子、トリフルオロメチルなどのハロゲン化アルキル基等)などが挙げられ、置換基の数は1または2が好ましい。
〜Rの置換されていてもよいジアリールメチル基としては、たとえばジフェニルメチル基などが挙げられ、置換基としてはフッ素、塩素などのハロゲン原子等が挙げられる。
また、式(II)におけるR〜Rの置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基および置換されていてもよいジアリールメチル基は、それぞれ、上記R〜Rにおける置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアラルキル基および置換されていてもよいジアリールメチル基の定義と同義である。
また、R〜Rのうちのいずれか1つと、R〜Rのうちのいずれか1つとが一緒になって低級アルキレン基を形成してリン原子2個を含む複素環を形成する場合の該低級アルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレンなどの炭素数1〜4のアルキレン基が好ましい。
【0007】
本発明に係る一般式(I)で表されるホスホニウム化合物としては、具体的には以下の4つのタイプの化合物を挙げることができる。
第1のタイプの化合物としては、上記式(I)において、R〜Rのうち少なくとも1つは、上記式(II)で表される基であって、R〜Rが同一または異なってフェニル基、置換されていてもよいベンジル基、ナフチルメチル基、置換されていてもよいジフェニルメチル基または置換されていてもよいアルキル基であり、Rが水素原子、Rが水素原子またはフェニル基、nが1〜4の整数、mが0であり、R〜Rのうちの残りの基はフェニル基、置換されていてもよいベンジル基、ナフチルメチル基、置換されていてもよいジフェニルメチル基または置換されていてもよいアルキル基であるホスホニウム化合物が挙げられる。
ここで、R〜Rの置換されていてもよいベンジル基の置換基としては、たとえばフッ素、塩素、臭素などのハロゲン原子、シアノ基、ベンゾイル基、アルキル基、トリフルオロメチルなどのハロゲン化アルキル基、置換されていてもよいフェニル基(該置換基としては、たとえばフッ素、塩素などのハロゲン原子、トリフルオロメチルなどのハロゲン化アルキル基等)などが挙げられ、置換基の数は1または2が好ましい。
〜Rの置換されていてもよいジフェニルメチル基の置換基としては、フッ素、塩素などのハロゲン原子等が挙げられる。
〜Rの置換されていてもよいアルキル基の置換アルキル基としては、たとえば式:−(CH)-PPh(式中、pは1〜4の整数を示す)で表される基などが挙げられる。
また、R〜Rの置換されていてもよいベンジル基、置換されていてもよいジフェニルメチル基および置換されていてもよいアルキル基の具体例としては、各々上記R〜Rにおけると同様のものが挙げられる。
【0008】
第2のタイプの化合物としては、例えば、上記式(I)において、Rは、上記式(II)で表される基であって、R、RおよびRがフェニル基であり、Rが水素原子であり、mが0、nが2であり、RはRと一緒になって炭素数1〜4のアルキレン基を形成し、RおよびRはフェニル基である下記式(III)で示されるホスホニウム化合物が挙げられる。
【化7】
Figure 0004397575
式中、qは1〜4の整数であり、Xはハロゲン原子、SbF、AsF、PF、BFまたはBPhを表す。
【0009】
第3のタイプの化合物としては、上記式(I)において、Rは、上記式(II)で表される基であって、R〜Rがフェニル基または式:−(CH)-PPh(式中、pは1〜4の整数を示す)で表される基、R〜R11が水素原子、Aが置換されていてもよいベンゼン環であり、mおよびnが1であり、R〜Rはフェニル基または式:−(CH)-PPh(式中、pは1〜4の整数を示す)で表される基である、下式(IV)で示されるホスホニウム化合物が挙げられ
る。
【化8】
Figure 0004397575
ここで、R12およびR13は、式(II)におけるAの置換されていてもよいベンゼン環の置換基であり、たとえばアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基などが挙げられる。また、置換基:−CH-P・X-の置換位置は、o、mおよびp位のいずれであってもよい。Xはハロゲン原子、SbF、AsF、PF、BFまたはBPhを表す。
【0010】
第4のタイプの化合物としては、例えば、上記式(I)において、Rは、上記式(II)で表される基であって、RおよびRがフェニル基、R〜R11が水素原子、Aが置換されていてもよいベンゼン環であり、mおよびnが1であり、RはRと一緒になって炭素数1〜8のアルキレン基を形成し、RおよびRはフェニル基である、下記式(V)で示されるホスホニウム化合物が挙げられる。
【化9】
Figure 0004397575
ここで、R14およびR15は、式(II)におけるAの置換されていてもよいベンゼン環の置換基であり、式(IV)のR12およびR13と同様のものが挙げられる。また、rは1〜8の整数であるが、式(V)におけるベンゼン環上のリン原子が結合したメチレン基が相互にo位にある場合は、rは1〜4の整数であり、前記メチレン基が相互にm位またはp位にある場合は、rは4〜8の整数を示す。Xはハロゲン原子、SbF、AsF、PF、BFまたはBPhを表す。
【0011】
本発明における一般式(I)で示されるホスホニウム化合物は、自体公知の方法により、たとえば、有機3級ホスフィン化合物とベンジルハライド等の有機ハロゲン化物とを反応させて有機ホスホニウムハライドを調製し、次いで塩交換を行うことにより製造することができる。
このような有機ホスホニウムハライドの調製は、有機溶媒中で行うことができる。有機溶媒としては例えば、メタノール、アセトン、アセトニトリル、N,N-ジメチルアセトアミドなどを用いることができる。
また反応温度は室温〜110℃、好ましくは30〜80℃程度である。反応終了後、反応液を濃縮し、次いで再結晶させるなど常法により精製を行うことにより上記のような本発明に係る新規な有機ホスホニウムハライドが得られる。
さらに、得られた有機ホスホニウムハライドの対イオンを常法により、例えばKSbF6、NaSbF6などを用いてSbF6 -に塩変換することによって目的とする新規なホスホニウム塩を製造することができる。
このような対イオン交換反応は水、あるいは水−メタノール、水−アセトン、水−アセトニトリルなどの水性溶媒中で行うことができる。
【0012】
本発明に係るホスホニウム化合物は重合触媒として優れた特性を有する。すなわち、カチオン重合あるいはラジカル重合に対して高い触媒活性を示す。これらの触媒をエポキシ樹脂に使用する場合は、ホスホニウム化合物の対イオンX-はSbF -、AsF -、PF -、BF -またはBPh -であるものが好ましく、特にSbF -であるものが重合活性が高く、少量の触媒使用量で硬化反応が進行するので熱潜在性カチオン重合触媒として好ましく使用される。例えばこれらをエポキシ化合物からなる熱硬化性樹脂組成物の重合触媒として用いると、80℃以下では殆ど重合活性を示さないが、90〜120℃で顕著な重合活性を示し、速やかに硬化反応が進行する。また、得られた熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、着色したり、臭気を有することもなく、安定性にも優れている。さらに、本発明に係るホスホニウム化合物を含む熱硬化性樹脂組成物は、スルホニウム化合物を含む熱硬化性樹脂組成物に比べ非常にポットライフが長く、潜在性に優れているという特徴を有する。従って、本発明に係るホスホニウム化合物は一液性の重合触媒として優れた特性を有している。なお、これらのホスホニウム化合物は1種単独で使用してもよいし、2種以上併用するものであってもよい。
【0013】
本発明に係るホスホニウム化合物を熱硬化性樹脂に配合することによって一液性の熱硬化性樹脂組成物が得られる。熱硬化性樹脂としては、カチオン重合性化合物またはラジカル重合性化合物を用いることができる。
カチオン重合性化合物としては、まず、エポキシ樹脂が挙げられる。本発明で用いられるエポキシ樹脂としては、特に限定されず、分子中に1個以上のエポキシ基を有するものであればモノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれであっても使用することができる。エポキシ樹脂としては、たとえば、従来公知の脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂および芳香族エポキシ樹脂が挙げられる。これらのエポキシ樹脂としては、たとえば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリグリシジルエステル、エポキシ化フェノールノボラック樹脂、エポキシ化ポリオレフィン、脂環式エポキシ化合物などのエポキシ化合物が代表例として挙げられる。具体的には、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−エポキシブタン、ブタジエンモノオキサイド、エポキシヘキサン、エポキシオクタン、エポキシデカン、エポキシヘキサデカン、エポキシオクタデカンなどのアルキレンオキサイド、エポキシヘキセン、エポキシオクテン等のエポキシ基と2重結合不飽和基を有する化合物、グリシジルメチルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテル、グリシジルブチルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル等のグリシジル基を有する化合物などの分子内に1個のエポキシ基を含む化合物、および脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテルなどの分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられる。この分子内に2個以上のエポキシ基を有するオキシラン化合物の代表例としては、ジエポキシブタン、ジエポキシオクタン、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルなどのアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテルなどの多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルなどのポリアルキレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルなどが挙げられる。ここでアルキレンオキサイド付加体におけるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドのほか上述のアルキレンオキサイドを好適に挙げることができる。
脂環式エポキシ樹脂としては少なくとも1個のシクロヘキセンまたはシクロペンテン環などのシクロアルケン環を有する化合物を過酸化水素、過酸などの適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく、具体例としては3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートなどが挙げられる。
また芳香族エポキシ樹脂として好ましいものは、フェノールのモノグリシジルエーテル、クレゾールのモノグリシジルエーテル、エポキシプロピルベンゼンおよびスチレンオキシドなどの分子内に1個のエポキシ基を含む芳香族オキシラン化合物、および、少なくとも1個の芳香核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジまたはポリグリシジルエーテルなどの分子内に2個以上のエポキシ基を有する芳香族オキシラン化合物である。この分子内に2個以上のエポキシ基を有する芳香族オキシラン化合物としては、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、およびノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。ここでアルキレンオキサイド付加体におけるアルキレンオキサイドとしては前記脂肪族エポキシ樹脂の場合と同様、前述したアルキレンオキサイドを好適に挙げることができる。
その他のカチオン重合性化合物としてはスチレン、α−メチルスチレン、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル、メチルアクリレートやエチルアクリレート等のアクリル酸エステル、ラクトン、環状カーボネート等が挙げられる。
これらの熱硬化性樹脂は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0014】
本発明に係るホスホニウム化合物を熱硬化性樹脂に配合して熱硬化性樹脂組成物を調製する場合、ホスホニウム化合物の配合量としては、熱硬化性樹脂組成物100重量部当り、0.01〜10重量部程度であり、好ましくは0.05〜5重量部である。触媒の配合量が0.01重量部より少ない場合は、十分な硬化反応が進行せず、架橋密度の高い硬化物を高収率で得ることができない。また10重量部より多い場合は、触媒を多量に用いることによる好ましいカチオン重合反応促進効果の向上はほとんど認められないので経済面から好ましくない。
【0015】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、加熱することによって熱カチオン重合を開始・進行させて速やかに硬化させることができる。以下、エポキシ樹脂組成物を例にとって説明する。加熱によって熱潜在性カチオン重合触媒から生成するカチオン種またはルイス酸が、エポキシ化合物中のオキシラン環の酸素原子を攻撃してこれらを開環せしめ、次いでこの開環反応が連続的に進行することにより一気に自己重合して3次元網目構造を有する硬化物を形成する。エポキシ樹脂組成物の硬化反応は、通常無溶媒状態下で行われるが、溶媒中で行ってもよい。
硬化反応を無溶媒状態下で行う場合は、エポキシ化合物は熔融した状態で硬化反応を行うのが望ましい。従って、硬化反応はエポキシ化合物の融点より高い温度で行うのが望ましい。
また、硬化反応を溶媒中で行う場合、エポキシ化合物を反応溶媒中に溶解させた状態、または、膨潤させた状態で硬化反応を行う必要があり、そのためには、反応液が液体状態になるような反応温度にすることが望ましい。したがって、本発明における加熱温度はこのような温度として少なくとも40℃以上である必要がある。しかしながら、加熱温度が200℃を越えると硬化物の品質に悪影響を及ぼすようになるので、本発明の硬化反応における加熱温度は40〜200℃、好ましくは60〜150℃の範囲である。
本発明に係るエポキシ樹脂組成物の硬化反応における反応時間、すなわち、加熱時間については、エポキシ化合物の仕込量、熱潜在性カチオン重合触媒の種類および使用量、溶媒の有無、反応溶媒の種類および使用量および加熱温度などの硬化反応の条件によって異なるが、通常1分〜24時間であり、好ましくは5分〜10時間、より好ましくは10分〜5時間である。
また、本発明に係るエポキシ樹脂組成物の硬化反応においては、得られる硬化物の望ましくない酸化などによる劣化を防止するために、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス雰囲気下で行われることが望ましい。
【0016】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は使用に際し、本発明の硬化反応を損なわない範囲内であれば、公知の各種添加剤、例えば、無機充填剤、強化材、着色剤、安定剤(熱安定剤、耐候性改良材など)、増量剤、粘度調節剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、変色防止剤、抗菌剤、防黴剤、老化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、発泡剤、離型剤などを添加・混合することができる。上記着色剤としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、金属錯塩染料などの染料、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、マイカなどの無機顔料およびカップリングアゾ系、縮合アゾ系、アンスラキノン系、チオインジゴ系、ジオキサゾリン系、フタロシアニン系などの有機顔料などが挙げられる。また、上記安定化剤としては、ヒンダードフェノール系、ヒドラジン系、リン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、オキザリックアシッドアニリド系などの化合物が挙げられる。さらにまた、上記無機充填剤としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、塩基性硫酸マグネシウム繊維、ホウ素繊維、ステンレス鋼繊維、アルミニウム、チタン、銅、真鍮、マグネシウムなどの無機質および金属繊維、銅、鉄、ニッケル、亜鉛、スズ、鉛、ステンレス鋼、アルミニウム、金および銀などの金属粉末、木粉、マグネシア、カルシアなどの酸化物、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、石英粉末、タルク、クレイ、各種金属の水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、ホウ珪酸塩、アルミノ珪酸塩、チタン酸塩、塩基性硫酸塩、塩基性炭酸塩およびその他の塩基性塩、ガラス中空球、ガラスフレークなどのガラス材料、炭化ケイ素、窒化アルミ、ムライト、コージェライトなどのセラミック、およびフライアッシュやミクロシリカなどの廃棄物などが挙げられる。
【0017】
また、本発明に係る有機ホスホニウムハライドは熱硬化性樹脂に配合することにより硬化促進剤として作用する。例えばエポキシ化合物の硬化剤として酸無水物を用いる場合に本発明に係る有機ホスホニウムハライドを添加すると、これらは80℃前後で硬化反応を促進させることができる。従って、一般的に揮発性が高く、不向きとされる酸無水物系硬化剤による薄膜硬化においても、本発明に係る有機ホスホニウムハライドを添加することにより機械特性等を低下させることなく硬化することができる。
【0018】
【実施例】
以下、実施例および試験例により本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
1,2-ビス(ベンジルジフェニルホスホニア)エタンジヘキサフルオロアンチモネートの合成
攪拌装置、還流冷却器、温度計を備え付けた100ml容量の3ッ口フラスコを窒素置換した後、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン2.4g(6.0mmol)、トルエン40mlを取り、35℃に加温して溶解させた。そこにベンジルクロライド1.5g(12.0mmol)を加え80℃で10時間、攪拌しながら反応を続けたところ白色の結晶を得た。これを室温まで冷却し、析出した結晶を濾別し、乾燥したところ1,2-ビス(ベンジルジフェニルホスホニア)エタンジクロライド2.9g(74.4%)が得られた。
このようにして得られた1,2-ビス(ベンジルジフェニルホスホニア)エタンジクロライド1.1g(1.6mmol)を三角フラスコに取り、メタノール20mlに溶解させた。その後、水40mlに溶解されたポタシウムヘキサフルオロアンチモナート1.1g(4.0mmol)を攪拌しながら滴下したところ、すぐに白濁しスラリー状の沈殿が生じた。滴下終了後、室温で3時間、攪拌を続け、次いで結晶を濾別した後、メタノールで再結晶したところ、1,2-ビス(ベンジルジフェニルホスホニア)エタンジヘキサフルオロアンチモネート0.75g(44.1%)が得られた。この化合物の融点は252〜3℃であり、NMRスペクトルは次ぎの通りであった。
1H-NMR;500MHz(Acetone-d6、δ) 3.44 ( 4H, d )、4.73 (2H, d )、4.74 (2H, d )、6.88 (4H, d )、7.17 (4H, dd )、7.29 (2H, dd )、7.67〜7.88 (16H, m )、7.97 (4H, dd )
【0019】
(実施例2〜38)
実施例1と同様の方法により、表1に示す化合物を用いてホスホニウム化合物の合成を行った。
【表1】
Figure 0004397575
表1中、有機ホスフィン欄の記号は次ぎのものを示す。
DPPM:ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン
DPPE: 1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン
DPPP: 1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン
DPPB: 1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン
TRIPHOS:ビス(2−ジフェニルホスフィノエチル)フェニルホスフィン
TETRAPHOS−II:トリス(2−ジフェニルホスフィノエチル)ホスフィン
TPP:トリフェニルホスフィン
【0020】
実施例1〜38で得られた生成物の構造および融点を表2および表3に示す。なお、表中、Bzlはベンジル基を、Napはナフチル基を示す。
【表2】
Figure 0004397575
【0021】
【表3】
Figure 0004397575
【0022】
(重合試験例1)
実施例1で得られたホスホニウム化合物(以下、化合物1と称す)を脂環式エポキシ樹脂であるセロキサイド2021p(ダイセル化学工業(株)製)100重量部に対し、各々、0.25重量部および1.0重量部添加して2つの均一なエポキシ樹脂組成物を得た。
これらのエポキシ樹脂組成物をそれぞれ板状の型(60mm×50mm×3mm)に入れ、140℃で4時間加熱して硬化した。
【0023】
(重合試験例2)
実施例8で得られたホスホニウム化合物(以下、化合物8と称す)をセロキサイド2021p(ダイセル化学工業(株)製)100重量部に対し、各々、0.5重量部および1.0重量部添加して2つの均一なエポキシ樹脂組成物を得た。
これらのエポキシ樹脂組成物をそれぞれ板状の型(60mm×50mm×3mm)に入れ、140℃で4時間加熱して硬化した。
【0024】
(比較例1)
従来のホスホニウム化合物であるベンジルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート(Ref.1)をセロキサイド2021p(ダイセル化学工業(株)製)100重量部に対し、各々、0.5重量部、1.0重量部および2.5重量部を添加して3つの均一なエポキシ樹脂組成物を得た。
これらのエポキシ樹脂組成物をそれぞれ板状の型(60mm×50mm×3mm)に入れ、140℃で4時間加熱して硬化した。
【0025】
(比較例2)
従来のホスホニウム化合物であるp-クロロベンジルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート(Ref.2)をセロキサイド2021p(ダイセル化学工業(株)製)100重量部に対し、各々、0.5重量部および1.0重量部を添加して2つの均一なエポキシ樹脂組成物を得た。
これらのエポキシ樹脂組成物をそれぞれ板状の型(60mm×50mm×3mm)に入れ、140℃で4時間加熱して硬化した。
【0026】
(比較例3)
従来のホスホニウム化合物であるベンジルメチルジフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート(Ref.3)をセロキサイド2021p(ダイセル化学工業(株)製)100重量部に対し、各々、0.5重量部および1.0重量部を添加して2つの均一なエポキシ樹脂組成物を得た。
これらのエポキシ樹脂組成物を板状の型(60mm×50mm×3mm)に入れ、140℃で4時間加熱して硬化した。
【0027】
(比較例4)
従来のホスホニウム化合物であるp-クロロベンジルメチルジフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート(Ref.4)をセロキサイド2021p(ダイセル化学工業(株)製)100重量部に対し、各々、0.5重量部および1.0重量部を添加して2つの均一なエポキシ樹脂組成物を得た。
これらのエポキシ樹脂組成物を板状の型(60mm×50mm×3mm)に入れ、140℃で4時間加熱して硬化した。
【0028】
重合試験例1〜2および比較例1〜4で得られた硬化物のガラス転移温度Tg(℃)と添加した触媒(ホスホニウム化合物)量との関係を図1に示す。図1より明らかなように、重合試験例1および2で得られた硬化物のガラス転移温度Tgは比較例1〜4で得られた硬化物のガラス転移温度Tgより高く、このことから化合物1および化合物8のホスホニウム化合物は、従来のホスホニウム化合物(Ref.1〜4)に比べ高い重合活性を有しており、しかも少ない触媒量で優れた触媒作用を発揮することが判る。
【0029】
(重合試験例3)
実施例20および33で得られたホスホニウム化合物(以下、各々化合物20および化合物33と称す)を各々、脂環式エポキシモノマーであるセロキサイド2021p(ダイセル化学工業(株)製)1エポキシ当量に対し、0.042mol%を添加して均一なエポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をそれぞれサンプル瓶に1gとり、ホットプレート(60,80,100,120℃)上での発熱挙動についてIRカメラを用いて観察した。
【0030】
図2に化合物20を重合触媒とした場合の、図3に化合物33を重合触媒とした場合の、エポキシ樹脂組成物の発熱挙動の観測結果を示す。図2より、化合物20の場合は80℃では硬化反応に伴う発熱は観測されなかったが、100℃では発熱が観測され、約200分程度でエポキシ樹脂組成物が硬化したことが判る。同様に図3より、化合物33の場合は、60℃では硬化反応は起こらないが、80℃では短時間で硬化反応が進行して発熱し、反応終了とともに温度が下がっていることがわかる。このように、本発明に係るホスホニウム化合物は従来のホスホニウム化合物より低温から重合活性を示すことが判った(図4,5参照)。すなわち、本発明のホスホニウム化合物の種類を選択することにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化温度を好ましい温度に設定することも可能である。
【0031】
(比較例5)
従来のホスホニウム化合物であるベンジルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート(Ref.1)、p-クロロベンジルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート(Ref.2)を各々、脂環式エポキシモノマーであるセロキサイド2021p(ダイセル化学工業(株)製)1エポキシ当量に0.083mol%を添加して均一なエポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をサンプル瓶に1gとり、ホットプレート(120,140℃)上での発熱挙動についてIRカメラを用いて観察した(図4、5参照)。
【0032】
従来のホスホニウム塩であるRef.1およびRef.2の場合、120℃では硬化反応に伴う発熱は観測されず、140℃で各々約300分、約200分で熱硬化性樹脂組成物が硬化したことが判る。このように従来のホスホニウム塩を用いると120℃以上の高温で硬化させる必要がある。
【0033】
(重合試験例4)
化合物8をセロキサイド2021p(ダイセル化学工業(株)製)100重量部に対し0.5重量部添加して均一なエポキシ樹脂組成物を得た。次いで、得られたエポキシ樹脂組成物を板状の型(60mm×50mm×3mm)に入れ、140℃で4時間加熱して硬化した。得られた硬化物のガラス転移温度Tgは145℃であった。
得られた硬化物は、表面研磨し、耐熱性および耐光性試験を行った。尚、耐熱性試験は150℃で100時間保管、耐光性試験は120℃の雰囲気下で主波長300〜450nm、460〜570nmのメタルハライドランプ100時間照射という条件で行った。
【0034】
(比較例6)
p-クロロベンジルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート(Ref.2)をセロキサイド2021p(ダイセル化学工業(株)製)100重量部に対し、1.3重量部添加して均一なエポキシ樹脂組成物を得た。次いで、得られたエポキシ樹脂組成物を板状の型(60mm×50mm×3mm)に入れ、140℃で4時間加熱して硬化した。得られた硬化物のガラス転移温度Tgは147℃であった。
得られた硬化物について重合試験例4と同様にして耐熱性および耐光性試験を行った。
【0035】
(比較例7)
p-クロロベンジルメチルジフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート(Ref.4)をセロキサイド2021p(ダイセル化学工業(株)製)100重量部に対し、2.5重量部添加して均一なエポキシ樹脂組成物を得た。次いで、得られたエポキシ樹脂組成物を板状の型(60mm×50mm×3mm)に入れ、140℃で4時間加熱して硬化した。得られた硬化物のガラス転移温度Tgは142℃であった。
得られた硬化物について重合試験例4と同様にして耐熱性および耐光性試験を行った。
【0036】
耐熱性および耐光性試験前後の試験片の470nmにおける透過率を表4に示す。( )内は試験前後の変化率である。
【表4】
Figure 0004397575
表4より、化合物8を用いて重合試験例4で得られた硬化物は、従来のホスホニウム化合物触媒(Ref.2、4)を用いて得られた硬化物(比較例6、7)に比べ耐熱性、耐光性とも優れていることが判る。
【0037】
(重合例1〜30)
エポキシ樹脂100重量部に対して表2および3に示した触媒0.4重量部を用い、それぞれ表5に示した条件下で3時間重合反応を行い、硬化物を得た。なお表5中、エポキシ樹脂として、Aはセロキサイド2021p(ダイセル化学工業(株)製)のみを含む樹脂組成物を示し、Bはセロキサイド2021p/YX8000(ジャパンエポキシレジン(株)製)=80/20(wt%)の混合物である樹脂組成物を示す。
【表5】
Figure 0004397575
【0038】
【発明の効果】
本発明に係るホスホニウム化合物は、2つ以上のリン原子を含む構造を有しており、従来のホスホニウム化合物に比べて熱硬化性樹脂に対する重合活性が高く、低温かつ少量の添加で熱硬化性樹脂を硬化させることができ、これを熱潜在性カチオン重合触媒として含有させた一液性熱硬化性樹脂組成物は保存安定性にも優れ、しかも加熱硬化させて得られた硬化物は着色、臭気もなく、耐熱性、耐光性等の安定性に優れるという特性を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1〜2および比較例1〜4で得られた硬化物のガラス転移温度Tg(℃)と添加した触媒量との関係を示す図である。
【図2】 化合物20を重合触媒とした場合の、エポキシ樹脂組成物の発熱挙動の観測結果である。
【図3】 化合物33を重合触媒とした場合の、エポキシ樹脂組成物の発熱挙動の観測結果である。
【図4】 Ref.1を重合触媒とした場合の、エポキシ樹脂組成物の発熱挙動の観測結果である。
【図5】 Ref.2を重合触媒とした場合の、エポキシ樹脂組成物の発熱挙動の観測結果である。

Claims (8)

  1. 一般式(I):
    Figure 0004397575
    (式中、 式(II):
    Figure 0004397575
    (式中、 およびR はフェニル基、R はハロゲン原子、シアノおよびトリフルオロメチルから選択される置換基で置換されていてもよいベンジル基、ナフチルメチル基またはハロゲン原子で置換されていてもよいジフェニルメチル基、R は水素原子、R は水素原子またはフェニル、R 10 およびR 11 は水素原子、Aは1,2−フェニレン、nは1〜の整数、mは0または1、およびXはSbF を表す。)で表される基、 およびR はフェニル基、R はハロゲン原子、シアノおよびトリフルオロメチルから選択される置換基で置換されていてもよいベンジル基、ナフチルメチル基またはハロゲン原子で置換されていてもよいジフェニルメチル基を示し、または、 とR が一緒になってメチレンまたはエチレン鎖を形成してリン原子2個を含む複素環を形成してもよく、Xは式(II)における定義と同義である。)で示されるホスホニウム化合物からなる一液性熱硬化性樹脂組成物用重合触媒
  2. およびR がハロゲン原子、シアノおよびトリフルオロメチルから選択される置換基で置換されていてもよいベンジル基、ナフチルメチル基またはハロゲン原子で置換されていてもよいジフェニルメチル基、R が水素原子、およびmが0であるホスホニウム化合物からなる請求項1記載の重合触媒
  3. がフェニル、mが0、nが2であり、 とR が一緒になってエチレン鎖を形成しているホスホニウム化合物からなる請求項1記載の重合触媒
  4. が水素原子、mおよびnは1であり、 とR が一緒になってメチレンまたはエチレン鎖を形成しているホスホニウム化合物からなる請求項1記載の重合触媒
  5. 熱硬化性樹脂に、請求項1〜4のいずれか1項に記載の重合触媒を配合してなる一液性熱硬化性樹脂組成物。
  6. 熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂である請求項5記載の一液性熱硬化性樹脂組成物。
  7. エポキシ樹脂100重量部に対し、請求項1〜4のいずれか1項に記載の重合触媒を0.01〜10重量部含有してなる請求項6記載の一液性熱硬化性樹脂組成物。
  8. 請求項5〜7のいずれか1項に記載の一液性熱硬化性樹脂組成物を加熱・硬化させて得られる硬化物。
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