JP4397104B2 - 特性値同定方法及び装置 - Google Patents

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    • G05BCONTROL OR REGULATING SYSTEMS IN GENERAL; FUNCTIONAL ELEMENTS OF SUCH SYSTEMS; MONITORING OR TESTING ARRANGEMENTS FOR SUCH SYSTEMS OR ELEMENTS
    • G05B17/00Systems involving the use of models or simulators of said systems
    • G05B17/02Systems involving the use of models or simulators of said systems electric

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特性値同定方法及び装置に関し、特に製品を構成する部品の特性値同定方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の特性値同定方法及び装置としては、以下の二通りのものが知られている。
まず、特願平6-140081号、同8-18946号、同9-287161号等に開示されたものがある。これらの従来技術においては、被試験物(部品)の振動試験により得られた周波数応答関数(FRF)の測定データから、固有振動数、固有モード、及びモード減衰比を同定するという手段を採用している。
【0003】
次に、特性行列同定法と呼ばれるものがある。この方法は、被試験物(部品)の振動試験により得られた加振力と応答の時刻暦測定データから、力学系における「力のつり合い」則に基づいて定式化された運動方程式の係数である3種類の特性行列、すなわち質量行列、減衰行列、剛性行列を同定するという手段を採用している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一般的に、機械には、何らかの形で運動エネルギーを生成する動力源があり、この動力を伝達する機構・動力を利用して仕事を行なう機構など、多くの部品で構成されている。また、これらの機械を構成する部品には、電気系・機械系・流体系等の物理単位系を根拠とする部品が有機的に結合されている。
【0005】
このように多くの理論的背景が異なる多くの部品を再現するモデルは、個々の部品や機構の汎用性の高さにも関わらず、互いの理論的な関連性を無視して、各々がそれらを包含する物理的単位系やそれらの用途に従って個別にモデル化し同定しているのが実状である。このため、機械系特有の手法に基づく上記の二通りの従来技術は、機械系の振動という特定の現象にしか適用できないという問題があった。
【0006】
また、これらの従来技術では、エネルギーを規定する「量(位差量)」と「強さ(流動量)」という二次元量に対して「強さ」という一次元でしかモデル(部品)の同定を行っていない。すなわち、エネルギーを構成するこれらの2種類の量の各々を支配する法則の両方を当て嵌めていないため、速度や加速度の連続性が同定されたモデル上に表現されておらず、部品同士の結合が困難であるという問題があった。
【0007】
さらに、従来技術では、モデルの構造すなわちモデルを構成する各特性の位置関係を示しているだけで、各特性の機能を表現していないため、同定により、各特性が複合して発現する構造上の現象、例えば固有振動数と固有モード形状、あるいは構造全体の特性行列を明らかにできるだけであり、対象物の機能を支配する各特性値を直接明らかにすることはできなかった。
【0008】
従って本発明は、個々の部品を組み合わせた製品と同じように、異なる物理単位系に跨って各モデルを展開して全体モデルに統合できる特性値同定方法及び装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明において、製品・部品(以下、単に部品と称する。)に関する機能モデルの内部特性値を同定する基本的な手順は、図1に示すようになる。この図は、機能モデルが定常特性値と過渡特性値とを包含したモデル化手法であることを生かした同定手法を示している。
【0010】
まず、手順1でモデル化された機能モデルの内部には、元々定常特性値と過渡特性値が含まれている。従って、請求項1に係る本発明における機能モデルの同定は、これらの内部特性値を定常同定手順2と過渡同定手順3に分けて同定する。すなわち、同定の基本手順としては、定常特性値は過渡状態の干渉が無く、過渡状態には定常特性値が干渉するので、定常同定手順2の後に過渡同定手順3を実行する。
【0011】
定常同定手順2では、さらに請求項2〜5により以下の手順を含んでいる。まず、手順21では、部品の機能モデルから定常状態の機能・性能・特性を再現する定常機能モデルを求める。この定常機能モデルは、過渡特性を除いた定常特性のみを包含したモデルとなる。手順22では、同定対象となる部品の定常試験を行なって、定常試験データを収集する。手順23では、この試験データを使って定常内部特性値を同定し、手順24により機能モデルに与える。
【0012】
次に、過渡同定手順3は、請求項6〜9により以下の手順を含んでいる。まず、手順31では、同定対象となる部品の過渡試験モデルを作成して試験を行い、過渡試験データを収集する。手順32では、この試験データを使って機能モデルの過渡内部特性値を同定する。この過渡同定手順3には、手順4に示す如く、手順24で同定した定常内部特性値を反映させる。
【0013】
以下、この手順に沿って、機能モデルを同定するための試験モデルと同定手法についてこれを簡単に説明できるモータを例にとって述べる。
まず、各請求項に共通な手順1の機能モデルについて、直流モータを例にとって以下に説明する。
【0014】
<モータのモデル化>
(1)モータの基本機能
モータは、電気エネルギを入力し、これを回転エネルギに変換して出力することを基本機能とする。このときのエネルギー変換は、モータの電気系に電圧VMと電流IMが加えられて回転系から角速度ωMとトルクTMが出力される。また、モータ内部には損失特性・蓄積特性・側負荷が内部負荷として包含され、これらがモータ固有の挙動と損失などを決定している。
【0015】
直流モータの電気系と回転系の間には、電流とトルクの比で表わすトルク係数χT[Nm/A]と、角速度と誘起電圧の比で表わす速度係数χω[V/(rad/sec)]が知られている。そこで、これらの係数を基本機能にして入出力状態量を直接変換する理想的なモータモデルは、次式で表わすことができる。
【0016】
【数1】
Figure 0004397104
【0017】
この式(1)は、Pが電機子の極数、aが電機子並列回路数、Zが全導体数、φが1極当たりの全磁束で、これらはモータ構造で決まる特性である。また、磁束φは、界磁に永久磁石を使用する他励式モータでは前者と同様に構造で決まり、界磁巻線を持つ自励式モータでは電気系の状態量に影響される。この式(1)は、直流発電機にも適用できる直流回転機共通の基本式である。
【0018】
式(1)のトルク係数χTと速度係数χωは、電流からトルク、または角速度から電圧に物理単位系変換を同じ式で行なう。そこで、この係数をここではモータ定数と呼び、MMで表わす。このモータ定数と内部負荷の関係は、この係数を境に電気系と回転系をモータの内部負荷と考えることができる。このモータ定数MMの基本機能と内部負荷の関係を組み合わせた、モータモデルの基本形を図2に示す。
【0019】
この図2は、電気系の入出力状態量が電源に接続され、機械系の入出力状態量が外部の機械負荷と結合される。また状態量の流れは、下側が電源の電流IMをMMで変換して外部負荷を駆動する出力トルクTMの流れとなる流動系を表わし、上側が外部負荷から受けた角速度ωMをMMでモータの誘起電圧に変換して電源に返す電圧VMの流れとなる位差系を表わしている。
【0020】
これにより、機械系と電気系が、位差量というエネルギーの強さと、流動量というエネルギーの量で結合されたことになり、力のつり合いと速度の連続性という二次元のエネルギー則を満たすことができる。
(2)モータの機能モデル
モータモデルの電気回路図は、図3で表わされる。
【0021】
同図の電気系は、RMが巻線抵抗、LMがインダクタンス、RCが巻線の絶縁抵抗である。また、回転系には、JMの慣性モーメント、DMの粘性抵抗、及びTMFの摩擦トルクを持っている。これらの関係を表わした機能モデルは図4(1)及び(2)で表わされる。尚、このような機能モデル自体については、特開平9−91334号公報に既に開示されている。
【0022】
図4(1)は、モータ定数MMの右側が回転系内部負荷となり、左側が電気系内部負荷となる。このモデルは、電機子に電流IMを供給するブラシの電圧降下EMBと回転系の摩擦トルクTMFを側負荷として持つ。両者の影響を無視するときは、TMF=0およびEMB=0とすれば良い。尚、同図のxMとxLは内部状態量である。また、モータ定数MMには、トルク係数χTと速度係数χωのバラツキを考慮して、次の速度補正係数δMが追加されている。
【0023】
【数2】
Figure 0004397104
【0024】
このような図4(1)のモータの機能モデルの支配方程式は、次式で表される。
【0025】
【数3】
Figure 0004397104
【0026】
この式(3)は、1〜2行目が状態方程式、2〜4行目が出力方程式になっている。
尚、式(3)は、図4(2)に示す以下の手順で導出することができる。
・白丸は、入力される状態量を加算して出力状態量とする。
【0027】
・黒丸は、出力される状態量は入力する状態量に等しい。
・四角で表わした特性は、入力状態量との特性の積を出力状態量とする。
・×印の付いた白丸は、入力状態量又は入力信号の積を出力する。
・−印の付いた白丸は、状態量を負にする。
【0028】
・三角は、入力される状態量の微分量を積分して出力状態量にする。
・変数名が書かれた大きな白丸は、機能モデル内部で生成される状態量を側負荷として表わしている。
(3)モータ電源との結合
次に、モータの電源となる電池についてモデル化する。電池の回路図を図5に示し、この機能モデルを図6に示す。図6の電池は、電圧VB・電流IBが図4(1)で示すモータの電圧VM・電流IMに接続される。また、同図の特性は、E0が電池の誘起起電力、REが電池の内部抵抗である。
【0029】
図5の電池の支配方程式は、次式のようになる。
【0030】
【数4】
Figure 0004397104
【0031】
次に、モータモデルと電池モデルの結合は、式(3)に式(4)を代入することにより次式で与えられる。
【0032】
【数5】
Figure 0004397104
【0033】
この式(5)は、1〜2行目が状態方程式、3〜5行目が出力方程式を示している。同式の抽象化された等価アドミタンスY0と電流源I0は、次式で表わされる。
【0034】
【数6】
Figure 0004397104
【0035】
【数7】
Figure 0004397104
【0036】
このように本発明に係る特性値同定方法では、部品に加わるエネルギーを表わす位差量及び流動量に基づく該部品の機能モデルを用いており、この機能モデルの作成を第1の手順として、該機能モデルから定常状態における定常機能モデルへ変換して定常内部特性値を同定する第2の手順と、該定常内部特性値を用いて該機能モデルの過渡状態における過渡内部特性値を同定する第3の手順とを備えたことを特徴としている(請求項1)。
【0037】
このようにして本発明の特性値同定方法では、位差量と流動量というエネルギー則で部品の機能モデルを作成し、その内部特性値を定常同定してから過渡同定したので、全ての部品の特性値を正確に同定でき、統合した製品のモデル化を可能にしている。
【0038】
上記の第2の手順は、該定常機能モデルから少なくとも1つの定常試験モデルの内部特性値を求める第1のステップと、該定常試験モデルに対応した試験を行って定常試験データを収集する第2のステップと、該定常試験データに基づいて該内部特性値の定常内部特性値を同定する第3のステップとで構成することができる(請求項2)。
【0039】
上記の第1のステップでは、該内部特性値を、該機能モデルの該定常状態における支配方程式から求めてもよい(請求項3)。
該また、上記の第3のステップでは、該支配方程式を回帰式に変換し、該回帰式の回帰係数から該定常内部特性値を求めてもよく(請求項4)、該定常内部特性値を既知の要因と未知の要因とに分け、該未知の要因の定常内部特性値を同定してもよい。
【0040】
さらに、上記の第3の手順は、該機能モデルの過渡状態における少なくとも1つの過渡試験モデルの内部特性値を求める第1のステップと、該過渡試験モデルに対応した試験を行い過渡試験データを収集する第2のステップと、該過渡試験モデルの内部特性値に該定常内部特性値を代入して過渡再現データを生成する第3のステップと、該過渡再現データと該過渡試験データとの誤差に基づいて該過渡再現データを補正し、以って過渡内部特性値を同定する第4のステップとで構成することができる(請求項6)。
【0041】
上記の第4のステップでは、該誤差が許容範囲内にないとき、該誤差が許容範囲内になるまで該過渡再現データ内の所定の過渡内部特性値を繰り返し補正し、該許容範囲内になったとき該過渡内部特性値が同定されたものとすることができる(請求項7)。
【0042】
また、上記の第4のステップでは、予め各過渡内部特性値を一定の割合で増減した時の初期値に対する変動偏差を時刻暦感度として計算しておき、該時刻暦感度の内、最大感度を有する過渡内部特性値を該所定の過渡内部特性値として選択する(請求項8)か、該誤差と類似した該時刻暦感度を有する過渡内部特性値を該所定の過渡内部特性値として選択することができる(請求項9)。
【0043】
なお、この第4のステップでは、該最大感度の時刻が異なる複数の過渡内部特性値を、該所定の過渡内部特性値として同時に選択してもよい(請求項10)。
また、本発明に係る特性値同定装置は、該部品の機能モデルの入子手段と、該機能モデルの定常状態における少なくとも1つの定常試験モデル及び過渡状態における少なくとも1つの過渡試験モデルを再現する試験再現手段と、該定常試験モデル及び過渡試験モデルにそれぞれ対応した定常試験及び過渡試験を行う該部品の試験装置と、該試験装置により該部品の定常試験及び過渡試験を行ったときの定常試験データ及び過渡試験データを収集する計測器と、該定常試験データを用いて該定常試験モデルの定常内部特性値を同定し、該定常内部特性値を該過渡試験モデルに挿入して過渡再現データを生成すると共に該過渡再現データと該過渡試験データとの誤差に基づいて該過渡再現データを補正し、以って過渡内部特性値を同定する演算装置とを備えることができる(請求項11)。
【0044】
これにより、同種類の機能モデルの同定を迅速に行うことが可能となる。
上記の演算装置は、該誤差が許容範囲内にないとき、該誤差が許容範囲内になるまで該過渡再現データ内の所定の過渡内部特性値を繰り返し補正し、該許容範囲内になったとき該過渡内部特性値が同定されたものとすることができる(請求項12)。
【0045】
また、上記の演算装置は、予め各過渡内部特性値を一定の割合で増減した時の初期値に対する変動偏差を時刻暦感度として計算しておき、該時刻暦感度の内、最大感度を有する過渡内部特性値を該所定の過渡内部特性値として選択する(請求項13)か、該誤差と類似した該時刻暦感度を有する過渡内部特性値を該所定の過渡内部特性値として選択することができる(請求項14)。
【0046】
なお、該演算装置は、該最大感度の時刻が異なる複数の過渡内部特性値を、該所定の過渡内部特性値として同時に選択してもよい(請求項15)。
さらに本発明に係る仮想試験装置では、請求項10に記載の特性値同定装置で同定した内部特性値を有する機能モデルを仮想原型として組み込むと共に、該特性値同定装置に運転操作条件及び環境条件を与える条件付与手段と、該運転操作条件及び環境条件を与えたときに該仮想原型により得られる再現データを観測する観測手段と、該観測手段の観測結果を評価する評価手段とを備えたことを特徴としている(請求項16)。
【0047】
すなわち、本発明による内部特性値の同定は、実機試験で行なう部品から製品までの機能・性能・特性などの評価を、コンピュータ上で行なう仮想試験と見ることができ、従来の設計・試作・試験の開発過程で行なわれている実機試験を省き、仮想試験による期間短縮と開発費用の削減が可能となる。
【0048】
上記の仮想試験装置は、該運転操作条件及び環境条件を、該仮想原型の対象となる実機に与えた時の実機試験データを計測する別の計測器と、該仮想原型の再同定手段とをさらに備え、該評価手段が、該計測器の出力と該観測結果とを比較し、比較結果に応じて該再同定手段により該仮想原型を再同定させることができる(請求項17)。
【0049】
そして上記の仮想原型として、該部品に接続される駆動系及び負荷系の部品について固定仮想原型を組み込み、該試験装置が、各固定仮想原型に対応した試験を行い、このとき該評価手段が、該比較結果により該再同定手段による再同定を行わせることも可能である(請求項18)。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下に、図1に概略的に示した本発明に係るモデル同定方法及び装置の実施例について説明する。
1.定常状態の機能モデル
図1に示した定常同定手順2を行なうには、手順21で示したように定常機能モデル変換を必要とする。この定常機能モデル変換は、以下に述べるように機能モデルから部品の定常状態を再現する定常機能モデルに変換し、更に定常機能モデルを部品の各定常試験に応じて定常試験モデルに変換する(手順210)ことが必要である。
【0051】
この定常試験モデルは、定常同定が定常試験データを利用することから、試験データを生成する定常試験の条件及び内容に応じた被試験品のモデル化によって、同定対象の定常機能モデルを実機試験する被試験品と一致させることができる。この一連のモデル変換の流れを図7に示す。
【0052】
1.1 機能モデルから定常機能モデルへの変換
モータの定常状態は過渡的な変動がないので、図4(1)で示すインダクタンスLMと慣性モーメントJMは定常内部特性値に影響を与えない。また、同図の絶縁抵抗RCは、非常に大きな値を持つのでモータ電流IMに対する影響を無視できる。以上の点から同図のLM・JM・RCを消去した定常状態のモータモデルは、図8で示す機能モデルとなる。
【0053】
この図8は、左側が図6の電源系の操作スイッチが省略した電池のモデルであり、右側が定常状態のモータモデルである。同図から定常状態のモータモデルは、次の支配方程式で表わすことができる。
【0054】
【数8】
Figure 0004397104
【0055】
定常支配方程式の別の導出法として図4(1)の機能モデルの支配方程式(3)から、LM・JM・RCを消去した定常状態の支配方程式は、以下の手順で求めることができる。
▲1▼式(3)から、LM・JMを零とおいて、x・Mと x・Lの微分状態量を消去した式は、次式のようになる。(尚、ドットx は本文中のみx・として以下同様に示す。)
【0056】
【数9】
Figure 0004397104
【0057】
▲2▼式(9)から、xMとxLの内部状態量を消去した式は、次式のようになる。
【0058】
【数10】
Figure 0004397104
【0059】
ここで、式(10)の中にあるDは次式とする。
【0060】
【数11】
Figure 0004397104
【0061】
▲3▼式(10)から、絶縁抵抗をRC=∞にして消去した式は、次のようになる。
【0062】
【数12】
Figure 0004397104
【0063】
機能モデルの支配方程式(3)から導いた定常状態の支配方程式(12)は、図8の定常状態の機能モデルから導いた支配方程式(8)と同一である。
従って、部品の定常状態を再現する定常支配方程式は、部品の過渡状態を再現する機能モデルを定常機能モデルに変換して求める方法と、該機能モデルの支配方程式から定常支配方程式を導く方法の2通りがある。このことは、導出した定常支配方程式から逆に定常状態の機能モデルが描けることを示し、定常機能モデルと定常支配方程式の間には可逆性があることを示している。
【0064】
1.2 定常機能モデルから試験モデルへの変換
次に、定常機能モデルによる実態の定常状態を考察し、試験用のモデルを検討する。定常状態における試験モデルは、定常機能モデルとその支配方程式から、被試験品の入出力系に特定条件を与える実態の試験をモデル化するものである。そして、この特定条件を被試験品に与えた試験データと支配方程式を関連付けて定常内部特性値を同定する。
【0065】
これをモータモデルに与える特定条件と試験の関係は、以下のようになる。
▲1▼電源を接続した状態でモータに一定のトルクを与えた場合は、モータに加わる負荷と定常内部特性値の関係を再現するモデルとなり、モータ電流・角加速度と負荷トルクの関係が観測できる(定常負荷試験:図9)。
【0066】
▲2▼入力トルクTMを零にした場合は、モータを無負荷状態で回転させることに対応し、無負荷角速度と無負荷電流が観測できる(無負荷試験:図10)。
▲3▼出力角速度ωMを零にした場合は、モータの回転を強制的に停止させたロック状態または起動瞬間の状態に対応し、ロック電流とロックトルクが観測できる
(モータのロック試験:図11)。
【0067】
▲4▼入力電流IMを零にして入力トルクTMを与えた場合は、モータの発電機作用を再現するモデルとなり、誘起電圧と角加速度が観測できる(誘起電圧試験:図12)。
▲5▼電気系の入出力状態量に抵抗器を接続して一定のトルクを与えた場合は、モータの回生制動力を再現するモデルとなり、モータ電流・角加速度と制動トルクの関係が観測できる(定常制動試験:図13)。
【0068】
これらの試験モデルは、各特定条件の与え方によってモデルが異なる。しかし、実際のモデル化では、定常機能モデル又は定常負荷試験モデルなどの定常特性と入力状態量の値を零又は無限大値(再現結果に影響を与えない範囲の大きな値)にして、等価的に各試験モデルを実現することができる。尚、これらの定常試験は少なくとも1つは行う必要がある。
【0069】
以上のことを踏まえて、図8の定常機能モデルから特定条件下で行なうモータの試験モデルは、以下のようになる。
1.2.1 モータの定常負荷試験
モータに負荷トルクを与えて性能・特性を観測する定常負荷試験は、図9で表わされる。
【0070】
この図9は、図8の定常機能モデルから入力トルクTMを駆動トルクとして側負荷で与え、出力角速度ωMを観測量として表現されている。従って、式(8)のモータの支配方程式は、次式のように変形される。
【0071】
【数13】
Figure 0004397104
【0072】
この式(13)に電池の支配方程式(4)を互いに代入した、定常負荷試験の支配方程式は次のようになる。
【0073】
【数14】
Figure 0004397104
【0074】
この式(14)は、モータの定格負荷試験を再現する支配方程式で、全ての方程式が定常状態の状態量を再現する出力状態量となる。
1.2.2 モータの無負荷試験
モータの無負荷状態は、図9の定常負荷試験モデルの入力トルクがTM=0となったものである。同図から入力トルクTMを消去した無負荷試験モデルは、図10で表わされる。
【0075】
この図10のモータの支配方程式は、定常負荷試験の支配方程式(13)から負荷トルクTMを除いた次式となる。
【0076】
【数15】
Figure 0004397104
【0077】
この式(15)に電池の支配方程式(4)を互いに代入した無負荷試験の支配方程式は、次のようになる。
【0078】
【数16】
Figure 0004397104
【0079】
1.2.3 モータのロック試験
モータの起動瞬間は角速度ωM=0となり、モータの回転を強制的に停止させるモータのロック状態と見なせる。従って、モータロックを再現するロック試験の機能モデルは、図8の定常機能モデルの出力角速度ωMを零とした図11で表わすことができる。尚、モータロックの回転が停止状態で発生するブラシ電圧降下EMBは、定電圧降下を発生せず、単にブラシ抵抗による微小電圧降下となるため無視し省略されている。
【0080】
図11は、図8の定常機能モデルから出力角速度ωMの関係する各定常内部特性値を消去し、入力トルクTMをロックトルクの観測量で表現してある。図11の支配方程式は、次のようになる。
【0081】
【数17】
Figure 0004397104
【0082】
この式(17)に電池の支配方程式(4)を代入して統合したロック試験の支配方程式は、次のようになる。
【0083】
【数18】
Figure 0004397104
【0084】
1.2.4 モータの誘起電圧試験
モータにトルクを与えて電機子から誘起される逆起電力VMと角速度ωMを観測する誘起電圧試験のモデルは、図12で表わされる。
この図12は、図8の定常機能モデルから入力電流IMの関係する定常内部特性値が消去され、出力角速度ωMが観測量で表現してある。図12の支配方程式は、次のようになる。
【0085】
【数19】
Figure 0004397104
【0086】
1.2.5 モータの定常制動試験
モータにトルクを与えて電機子から誘起される逆起電力VMを制動抵抗RLを介して逆にモータに返して制動力を与える回生制動の定常モデルは、図13で表わされる。
【0087】
この図13は、図8の定常機能モデルから電池を消去して制動抵抗RLが接続され、モータの入力トルクTMが駆動トルクとして与えられたものである。また、出力角速度ωMは観測量として表現されている。図13のモータの支配方程式は、次のようになる。
【0088】
【数20】
Figure 0004397104
【0089】
以上の各試験モデルは、図9で示す定常負荷試験モデルの特性又は入力状態量に以下の値を設定して、等価的にモデル化することができる。
▲1▼無負荷試験モデルは、入力トルクをTM=0とすることで等価となる。
▲2▼ロック試験モデルは、粘性抵抗係数とブラシ電圧降下をそれぞれDM=∞・EMB=0とすることで等価となる。
【0090】
▲3▼誘起電圧試験モデルは、モータ電流とブラシ電圧降下をそれぞれIM=0・EMB=0とすることで等価となる。
▲4▼制動試験モデルは、電池の内部起電力をE0=0とし、内部抵抗のRBを制動抵抗RLにすることで等価モデルにできる。
【0091】
2.定常状態の同定
図1について述べた定常機能モデルが包含する定常内部特性値の同定手順2は、図14で表わされる。定常同定手順では、設計値・類似品の特性値・特性の計測値などから事前に定常内部特性値が判るものは既定値として確定することができる(手順26)ので、残った未定値についてのみ同定すればよい(手順27)。
【0092】
これに適用する解析手法は、定常試験モデルの支配方程式を正準相関分析または重回帰分析(単回帰分析)などの統計モデルに変換して定常試験データから偏回帰係数を求め、この偏回帰係数と支配方程式の関係から定常内部特性値を導く(手順28)。また多くの要因で形成される定常特性に付いては、要因分析を行ない、定常内部特性値の形成過程を理論式・実験式などでモデル化して定量可能な要因と困難な要因に分け、定量化が困難な要因について同定する(手順29)。
【0093】
2.1 定常同定の試験計画
図8に示した定常機能モデルから定常同定の対象となる定常内部特性値は、MM・RM・DM・δM・TMF・EMBの6種類である。これらの定常内部特性値を求めるには、まず図8の定常モデルの働きと各定常内部特性値の特徴を明らかにして、試験法との関係を明らかにしておくことが必要である。
【0094】
2.1.1 既知または実測可能な定常内部特性値の検討(手順 26
まず、定常機能モデルが包含する定常内部特性値の中で、既知の特性値及び単独測定が可能な特性値を明らかにする。一般の製品や部品の定常状態を支配する特性値には、文献などで明らかにされている特性値、設計値を直接利用できる特性、直接計測可能な特性値など、定常試験を行なわないでも明らかにできるものが多くある。従って、定常同定を行なう際は、これらの特性値を事前調査または測定して確定することが大切である。
【0095】
ここで使用するモータについて考察すると、ブラシ電圧降下EMB、図8の定常機能モデルをモデル化する際に省略した絶縁抵抗RC、モータの巻線抵抗RMなどが該当する。これらの定常特性は以下のとおりである。
▲1▼ブラシ電圧降下EMBは、黒鉛系ブラシ電圧降なのでモータ回転中は電流IMに関係なく一定となり、停止状態では微小な直流抵抗となる。従って、モータ回転中には文献で示されている0.7[V]を適用し、停止状態では無視することができる。
【0096】
▲2▼絶縁抵抗RCについては、結果に影響を与えない数[MΩ]の値となる。
▲3▼モータの巻線抵抗RMについては、抵抗計や図11で示すモータロック状態のモータ電圧と電流から計算で求めることができる。
2.1.2 定常機能モデルと統計モデル(手順 28
製品開発の中で多用されている分析手法に重回帰分析と単回帰分析などの多変量解析がある。これに適用される重回帰モデルの回帰式は、次のようになる。
【0097】
【数21】
Figure 0004397104
【0098】
ここでは、式(21)で示す重回帰式を複数の未知の定常内部特性値を包含する定常機能モデルに適用することを検討する。適用の方法は、定常支配方程式(8)の従属変数と独立変数を重回帰式の目的変数yと説明変数x1〜xnに対応させて、定常試験データから求める。
【0099】
また、偏回帰係数b0〜bnは、既知と未知の定常内部特性値を組み合わせたものとなる。従って、未知の定常内部特性値は、この偏回帰係数と定常内部特性値を関係付けて導くことができる。式(21)中のerrは、残差である。また、重回帰式が複数の異なる目的変数を持つ場合は、これを連立方程式で表わして正準相関分析を適用する。当然のことであるが、複数の異なる試験法で求めた試験データと回帰モデルの偏回帰係数と定常内部特性値を関係付けることができる。
【0100】
モータの重回帰分析は、図9に示す定常負荷試験のデータから、次の手順で定常内部特性値を明らかにすることができる。
まず、重回帰モデルは,図9の定常負荷試験モデルの支配方程式(13)から次の重回帰式が導ける。
【0101】
【数22】
Figure 0004397104
【0102】
【数23】
Figure 0004397104
【0103】
尚、式(22)は式(13)の1行目に対応し、式(23)は同2行目に対応している。ここで、電池の内部抵抗RBは非常に小さいので、電池の内部起電力E0とモータ出力電圧Vmは近似的に等しいと見なされるから、式(23)の中のE0は、式(13)の従属変数のVM(モータの出力電圧)を置き替えたものである。
【0104】
これらの式のトルクTMは目的変数とし、モータ電流IMと角速度ωMを説明変数として表わした回帰式は、次式のようになる(手順281)。尚、下記の式(24)の上側の式は2個の説明変数を持つ重回帰式となり、下側は説明変数が1個なので単回帰式となる。
【0105】
【数24】
Figure 0004397104
【0106】
また、定数(切片)B10とB20と偏回帰係数B11・B12・B21は、次式で表わすことができる。
【0107】
【数25】
Figure 0004397104
【0108】
式(25)で示す偏回帰係数から各定常内部特性値を導くと以下のようになる(手順282)。
まず、式(25)の上4行からTMF・DM・MMは、次式のようにそれぞれの偏回帰係数が対応する。
【0109】
【数26】
Figure 0004397104
【0110】
次に、式(25)の4行に式(26)を代入して、δMを導くことができる。
【0111】
【数27】
Figure 0004397104
【0112】
尚、この式(27)の中にある電池の誘起電圧E0とブラシ電圧降下EMBは、既知の定常内部特性値とする。
更に、式(25)の5行に式(26)と式(27)を代入して、次式によりRMを導くことができる。
【0113】
【数28】
Figure 0004397104
【0114】
ここで述べた事例では、式(8)の支配方程式から回帰分析によって、全ての定常内部特性値を求めたが、実際の定常同定では、複数の試験法を組み合わせて定常内部特性値を導くことが多い。例えば、この事例でもモータ定数MMを導く式(26)の3行目と、巻線抵抗RMを求める式(28)については、ロック試験モデルの式(17)と試験データからもMMとRMを求めることができる。
【0115】
2.1.3 定常特性の要因分析(手順 29
定常機能モデルの定常内部特性値には、この特性を形成する内部要因を多く含んでいる。従って、各特性値は、要因分析を行なって構成する要因を明らかにし、その結果を定式化しておく必要がある。そして、その結果を元に既知の要因と未知の要因に分け、未知または不明な要因については、モデル上又は試験データによって影響度合いを明らかにするための定常同定を行なうことが必要である。
【0116】
この定常同定法には,支配要因の変動と定常内部特性値の関係を感度として捉える感度解析などが有効である。特に、定常内部特性値が他の状態量の影響を受ける非線形性を持つ場合には重要となる。
例えば、モータ定数について考察すると、式(1)からP・a・Zは、モータ構造で決まる設計定数なので既値となるが、1極当たりの全磁束φは、界磁と電機子間の空隙に分布するので確定が困難である。従って、モータ定数を同定することは、この磁束φを実験データで同定することとなる。同定したモータ定数MMから求める1極当たりの全磁束φは、次式となる。
【0117】
【数29】
Figure 0004397104
【0118】
また、簡単な例としてモータの巻線抵抗RMは、線の長さl・断面積S・固有抵抗ρ・温度係数αによって決まる次の式となり、温度tに支配される。
【0119】
【数30】
Figure 0004397104
【0120】
式(30)から、l・S・ρ・αは構造と材料から決まる設計値となるが温度tは、試験環境の温度とモータの自己加熱による温度上昇に支配される。従って、同定を行なうための試験には、モータ温度が特性値を支配する重要な要因となる。また、高温や低温環境について検討する際には、支配方程式(3)及び式(8)以降の定常支配方程式のRMを式(30)で温度補正する必要がある。
【0121】
2.1.4 モータの定常特性
モータの定常内部特性値は、前に述べた定常負荷試験(図9)で測定された結果を元に、出力トルクTM[Nm]とモータ電流IM[A]の関係を表わすトルク−電流特性と、角速度ωM[rad/sec]との関係を表わしたトルク−速度特性によって表わされる。まず、トルク−速度特性は、式(22)と式(23)のモータ電流IMを代入した次の式で表わすことができる。また、トルク−電流特性は、式(23)そのものである。
【0122】
【数31】
Figure 0004397104
【0123】
モータのトルク−電流特性とトルク−速度特性がカタログ又は技術資料などで提供される場合は,これらの特性図から定常内部特性値を求めてもよい。このモータ特性を図15に示す。
同図の2本の回帰直線間の関係を式(22)が表わしている。同図は、X軸とトルクー角速度特性の交点がモータのロック状態を表わし、Y軸との交点が無負荷状態を表わしている。従って、モータ定数MMと巻線抵抗RMは、式(17)にロック状態のモータ電流IM・トルクTM・電圧VMを代入して近似値を求めることができる。また、この結果を式(22)に代入して無負荷時の粘性抵抗係数δMの近似値が判る。但し、摩擦トルクTMFは無視する。
【0124】
2.2 モータの定常試験と定常同定結果
ここでは、図4に示すモータの機能モデルから定常状態の特性値を同定する。尚、この同定で使用するモータは、自動車用電動アクチェータに広く利用されている、他励式小型直流モータで界磁に永久磁石を使用している。
【0125】
定常同定のための定常試験は、無負荷試験・ロック試験・定常負荷試験について行なった。無負荷試験とロック試験は、モータの特定条件下における試験として、前者はモ−タの出力軸を開放して入力トルクTM=0の状態とし、後者は出力軸を固定して出力角速度ωM=0の状態で行なった。
【0126】
また、定常負荷試験は、錘の付いた糸を巻きつけたドラムをモータ出力軸に取りつけて、錘の質量とドラム半径から負荷トルクを算出した。また、試験条件は、下記の表3の中で定常同定の結果と一緒に示してある。
図16のモータについて行なった定常試験の結果と回帰式を図17に示す。尚、同図は、図15に対しX軸とY軸が入れ替わっている。
【0127】
図17は、定常状態における出力トルクTM[Nm]とモータ電流IM[A]の関係を表わしたトルク−電流特性、および角速度ωM[rad/sec]の関係を表わしたトルク−速度特性の測定値とその回帰式を表わした図である。同図のX軸上の特性値は前述の如くモータの無負荷状態(TM=0)を表わし、Y軸上のトルク−速度特性との交点が角速度ωM=0のモータのロック状態または起動瞬間を示している。同図中の各変数名で示す点は表1の基本特性と定格特性(点線)を示している。また、同図中の黒丸は測定値を示している。
【0128】
また、図17から求めた起動時と無負荷時の基本性能を表1に示し、参考データとしてモータメーカが公表わしているカタログ仕様を表2に示す。
【0129】
【表1】
Figure 0004397104
【0130】
【表2】
Figure 0004397104
【0131】
図17の試験データで行なった定常同定の結果を表3に示す。
【0132】
【表3】
Figure 0004397104
【0133】
表3は、これまでの検討した定常同定の手順に従ってまとめた結果である。同定した定常内部特性値の内、EMBは文献から求め規定値とした。また、RCは絶縁抵抗計の測定結果である。その他の定常内部特性値MM・RM・DM・dM・TMFは、上記の式(24)〜(27)により重回帰分析と単回帰分析から求めたものである。また、電池の内部抵抗RBは、電池の内部抵抗が非常に小さいので電流計測用分流器の抵抗値を適用した。
【0134】
尚、式(24)で5つの係数B10,B20,B11,B12,B21を求めるには5つの連立方程式が必要であるが、TM,IMMは図17の特性で得られる値が5つ以上存在するベクトルである。
次に、このように同定した定常内部特性値をモータの定常状態の式(8)に電池モデルの式(4)を代入した定常支配方程式を使って、シミュレーションした結果を図18に示す。
【0135】
この図18中の太い実線は角速度ωMとモータ電流IMの定常状態の結果を示し、細い点線は後で述べる同定前の過渡内部特性値を使って式(5)で行なったシミュレーション結果である。同図から定常状態の結果は、過渡状態が安定する定常域で一致していることがわかる。
【0136】
3.過渡状態の同定(手順 32
上記の表3に示すモータの定常内部特性値が明らかとなったので、次に、図19に示す過渡同定手順32により、モータの過渡機能を支配する過渡内部特性値としての慣性モーメントJM・インダクタンスLMをモータ電流IMの測定値によって同定する。
【0137】
同定法としては、最初に各過渡内部特性値に概略値を与えてシミュレーションを行い、初期値を決め(手順36)、次にモータ電流IMに対する各過渡内部特性値の時刻暦感度を求め(手順38)、その感度を指標にモータ電流IMの測定値(手順35)とシミュレーション値との偏差(手順37)が最小となるようにした。
【0138】
また、定常同定済みの粘性抵抗係数δMと動摩擦トルクFMFについては、確認のため再度過渡同定の中で行なう。また、同定する場合には、モータの電源系と回転系に接続される操作系と負荷のモデルの組み付け・取り外し及び入子方式による組み替えを行なうことができる。
【0139】
3.1 機能モデルから過渡試験モデルへの変換(手順 33
過渡状態における試験モデルは、定常同定と同じように被試験品の入出力系に特定条件を与える実態試験を機能モデルとその支配方程式で再現する。過渡同定は、この特定条件を被試験品に与えた試験データと、試験モデルによるシミュレーション結果とを関連付けて、支配方程式が包含する特性値群を同定する。また、過渡同定の試験モデルは、以下のような方法で駆動または負荷をモデル化して組み込む。
【0140】
▲1▼駆動用の入出力モデル
駆動用の入出力モデルは、被試験品を駆動するための電源やトルクなどの駆動エネルギーを供給するためのモデルである。このモデルは、駆動エネルギーの供給方法を操作する操作系又は制御系を持つ場合がある。例えば、モータの電気系に接続される系がこれに対応し、電源の電池、モータの操作スイッチ、制御装置などがある。特殊な例では、前に述べた回生制動の制動抵抗などがある。
【0141】
▲2▼負荷用の入出力モデル
負荷用の入出力モデルは、被試験品の負荷となる特性や実負荷などエネルギーの蓄積又は消費させるためのモデルである。このモデルは、負荷エネルギーの与え方を操作する操作系又は制御系を持つ場合がある。モータの回転系又は機械系では、剛性(バネこわさ)・慣性モーメント・粘性抵抗係数などを接続する方法がある。
【0142】
尚、値の大きな特性を接続した場合は、出力軸の固定と見なすことができる。また、定負荷を与える便法としては、電流やトルクなどを側負荷として与え、対となる電圧や角速度を観測量にする方法がある。機械負荷の操作には、クラッチやブレーキなどモデルを併用して、負荷の切り替えを行なう。
【0143】
3.1.1 モータの実負荷過渡試験モデル(手順 34
実用状態を再現する過渡試験モデルは、図6の電池モデルを図4のモータモデルの電気系に結合し、更に、回転系に実際の負荷モデル又は等価負荷モデルを結合して、外部から閉鎖された実行用のモデルに変換する。
【0144】
(1)電動アーム機構の実負荷モデル
実用負荷の一例として、図20に、ウオームギヤーのラック側に動作範囲がθmaxで規制された操作アームを持つ電動アーム機構の負荷モデルを示す。
図21は、電池とモータモデルに図20の電動アーム機構を組み込んだ実行用の機能モデルを示している。同図の電動アーム機構は、スットパーの剛性KC 、減速機の減速比NG 、ストッパの接触半径LCを有する。内部には、アームの推定回転角θ^R (以下、本文中のみハットθをθ^として以下同様に記述する。)と内部状態xCがある。
【0145】
また、同図の6角形の枠で示す条件判定は、アーム動作範囲を判断してスイッチ変数SWCを操作するモデルである。この機能モデルは、外部負荷としてトルクTLの側負荷を持っている。
この電動アーム機構の支配方程式は、次のようになる。
【0146】
【数32】
Figure 0004397104
【0147】
この式(32)は、上側が図21の右端に示す電動アーム機構の支配方程式、下側がアームの推定回転角θ^Lを示している。また、アームの回転範囲を決めるモデルは次式となる。
【0148】
【数33】
Figure 0004397104
【0149】
この式(33)は、アームの推定回転角θ^Rが回転範囲θmax内の時SWC=0、回転範囲外の時SWC=1とする、条件判定SWCの式になっている。
次に、電池とモータを統合した上記の式(5)と電動アーム機構の支配方程式(32)を統合すると次式のようになる。
【0150】
【数34】
Figure 0004397104
【0151】
この式(34)は、1〜3行目が状態方程式、4行目以降が内部の過渡的な状態量を観測する出力方程式になっている。尚、式中のI0とY0は、それぞれ式(6)と(7)で示す等価アドミタンスと電流源である。
(2)モータの軸固定モデル
ここで、モータの出力軸を固定したモデルは、次に示す図22で表わすことができる。このモデルは、図21のモータ実負荷過渡試験モデル右側のアーム機構と組み替えることができる。
【0152】
図22は、図21の実負荷過渡試験モデルの電動アーム機構のモデルをモータ出力軸を固定する剛性KCに置き換えたモデルである。同図のモータトルクTMは、モータの出力軸を固定した状態のロックトルクを再現する。尚、この場合の支配方程式は省略する。
【0153】
3.1.1.1 モータの定トルク過渡試験モデル
実機試験で行なわれている負荷試験には、定トルクを負荷として与える定トルク試験がある。この試験モデルは、図6の電池モデルと図4のモータモデルを結合して、外部から閉鎖された実行用モデルとして変換を行う。変換した実行用機能モデルを図23に示す。
【0154】
同図は、電池とモータの結合によって、モータ電圧VMと電流IMが観測量となる。また、モータの入力トルクTMは、モデル内部で生成する負荷トルクとなるので側負荷TMになり、出力角速度ωMが観測量となる。尚、モータの無負荷試験は、側負荷TM=0とすれば良い。
【0155】
図23で示す実行用機能モデルの実行支配方程式は、次のようになる。
【0156】
【数35】
Figure 0004397104
【0157】
この式(35)は、1〜2行目が状態方程式、3行〜5行目が出力方程式である。尚、等価アドミタンスY0と電流源I0は、前に述べた式(6)と(7)である。
また、式(35)を前に述べた式(5)から導く手順は以下のようになる。まず、式(5)の慣性モーメントJMとインダクタンスLMを含む1列と2列を消去して、1行と2行の従属変数をx・Mとx・Lにする。そして、式(5)の独立変数の入力トルクTMを同式の1行3列の側負荷に組み込めばよい。
3.1.1.2 モータの惰性回転試験モデル
モータで測定できるのは、モータ電圧VM・電流IMと回転系の角速度ωM・トルクTMである。その中で特に電気系は簡単に高精度のデータが測定できる特長を持つが、図23で示す機能モデルは、モータ電圧VMが電池の起電力E0とほぼ等しくなるので、同定用のデータとしては利用できない。
【0158】
しかしながら、モータ電源を切ったときに発生する誘起電圧VMは、惰性回転試験によって同定用の試験データが測定できる。この惰性回転試験のモデルを、図24に示す。
図24は、無負荷状態のモータ電源を切った瞬間から停止するまでの惰性回転試験のモデルである。尚、絶縁抵抗RCは微小電流なので省略されている。図24で示す惰性回転試験のモータモデルは、次式となる。
【0159】
【数36】
Figure 0004397104
【0160】
この式(36)は、1行目と2行目が状態方程式、3行目〜5行目が出力方程式である。尚、ここで行なう過渡内部特性値の同定事例には、図23の過渡試験モデルを使用し、この惰性回転試験のモデルは使用しない。
3.1.1.3 操作系を持つモータの実負荷過渡試験モデル
(1)操作スイッチ
モータの起動・停止、正転・逆転、電気ブレーキの基本操作は、図25で示すスイッチ回路で行なうことができる。図21の実負荷過渡試験モデルに、このスイッチ回路をモデル化して組み込んだ試験モデルについて検討する。
【0161】
このモータの操作モデルは、図21で示すモータ実負荷過渡試験モデルで電池とモータを接続している電圧VMと電流IMとの間に組み込むことができる。この操作スイッチを組み込むことで、同図の実負荷過渡試験モデルは、スイッチ操作によってモータの起動・停止、正転・逆転、電気ブレーキの運転状態が再現できる。尚、このモデルのシミュレーション結果は、過渡状態の同定後に述べる。
【0162】
図25は、電池とモータの間に組み込む操作用スイッチの回路図である。このスイッチ回路の機能モデルは、次の図26となる。
図26の中の抵抗RLは、電気ブレーキ用の制動抵抗である。また、スイッチの接触抵抗と絶縁抵抗は考慮されていない。
【0163】
図26の操作スイッチは、モータを起動・停止するSWS、正逆回転操作をするSWL、電気ブレーキの要否を選択するSWBで構成されている。これらを操作する操作信号は、スイッチのON/OFFを“1”と“0”で表わす。各スイッチの働きは、次のようになる。
【0164】
▲1▼モータに電源を供給するSWSは、SWS=1でモータに電力を供給し、SWS=0で供給を停止する。
▲2▼正逆転操作をするSWLは、SWL=0で切替スイッチ変数SWL_0が“1”となり、図23の電気回路の電流IMが矢印方向に流れてモータが正回転し、SWL=1でSWL_1が“1”となって逆流し逆回転する。またSWL_0とSWL_1は、同時に“1”または“0”の状態になることを禁止した切替スイッチ変数である。機能モデル上は、この操作によって電流側のSWLが出力電流ISの符号を切り替え、電圧側のSWLが帰って来た入力電圧VSを元の符号に戻す。
【0165】
▲3▼電気ブレーキによる制動は、電源OFFのSWS=0を条件にして、SWB=1で電気ブレーキをONにし、SWB=0でOFFにする。電気ブレーキは、電源がOFFされた時のモータ空転による誘起起電力を制動抵抗RLで消費して制動トルクを発生させる。このときの制動トルクは制動抵抗RLで決まり、抵抗値が0[Ω]のとき最大の制動トルクを発生する。
【0166】
図26から求めた支配方程式は、次のようになる。
【0167】
【数37】
Figure 0004397104
【0168】
この式(37)のSWEは、モータの起動・停止と電流の流れを正逆方向に切り替える電源スイッチ変数で、次式のように表わされる。
【0169】
【数38】
Figure 0004397104
【0170】
次に、式(4)と式(37)の電池と操作スイッチの支配方程式の電圧VBと電流IBを互いに代入して統合した電源系の支配方程式は、次式のようになる。
【0171】
【数39】
Figure 0004397104
【0172】
この式(39)中のSWAは、電源のON/OFFと電気ブレーキ要否を選択する制動スイッチ変数とし、次式となる。
【0173】
【数40】
Figure 0004397104
【0174】
この式(40)において、上側のSWE 2は式(38)から正逆回転の切替スイッチ変数項が(SWL_0−SWL_1)2=1となり、SWS 2は“0”または“1”となることから、SWE 2=SWSとして整理した、下側の式で表わすことができる。
最後に、式(32)の実負荷過渡試験モデルのモータモデルと式(39)の電源系の電圧VMと電流IMを互いに代入して統合した支配方程式は、次式で表わされる。
【0175】
【数41】
Figure 0004397104
【0176】
この式(41)は、1〜3行目が状態方程式、4行目以降が出力方程式となっている。同式の抽象化された等価アドミタンスY0と電流源I0は、次式で表わされる。
【0177】
【数42】
Figure 0004397104
【0178】
【数43】
Figure 0004397104
【0179】
尚、制御ユニットなどに組み込まれる電子回路でモータを操作する応用事例としては、図25のモータの操作用スイッチ回路と同様に、図21の実負荷過渡試験モデルに組み込むことが可能である。
また、前に述べたスイッチ機構も含めてモータの操作系を入子方式にして組み替えることができる。尚、電子回路は、高度な回路技術を使用して行う方法もあるが、ここではモータを駆動するために必要な最低限の機能についてモデル化している。従って、半導体の持つ非線形特性と電子回路の過渡応答などは除外して考える。
【0180】
(2)スイッチング方式
スイッチング方式は、モータ速度に影響を与えない周期で電力の供給するON/OFF比を変えて制御する。スイッチング方式は、図26のSWSを周期的に切り替えることで実現できる。この方法に近い電子回路図を図27に示し、その機能モデルを図28に示す。各図は、電池を含めたモデルとなっている。
【0181】
図27は、外部から加えた矩形波の信号電圧ECNTをトランジスタTRの抵抗RAでベース電流に変換してトランジスタTRをON/OFF動作させる。その時、E0とRBは電池電圧と内部抵抗である。図中のDIはホイーリングダイオードで、トランジスタをOFFにしたときに発生するモータ巻線のインダクタンスが貯えたエネルギーをモータに返す働きと、インダクタンスが誘起する高電圧からトランジスタを保護する働きの、2つがある。尚、スイッチング信号発生器の機構モデルについては割愛する。
【0182】
図28のスイッチング操作は、ONの導通状態を低い抵抗RON、OFFの遮断状態を高い抵抗ROFFで表わし、この両者を切り替える。また、ホイーリングダイオードの働きは、6角枠で示す条件判定SWDと導通状態の抵抗RDで表わしてある。この両者は、条件判定SWEが信号発生器の電圧ECNTを検出電圧ETHで判定し、SWE=1が導通抵抗RONを選択、SWE=0が遮断抵抗ROFFを選択する。選択は、切替えスイッチ変数SWE_1・SWE_0で行なう。
【0183】
また、インダクタンスの蓄積エネルギは、その放出時期をインダクタンスの逆起電力が負になることで判定し、ホイーリングダイオードの導通抵抗RDを介してモータに還元する。図26で示す制動抵抗RLと図28の抵抗RDは、一見同じ働きに見えるが、前者は正のモータ誘起電圧で働き、後者はインダクタンスによる負の逆起電力で働く。これらの点を考慮したスイッチング方式の支配方程式は、次のようになる。
【0184】
【数44】
Figure 0004397104
【0185】
尚、スイッチング信号発生器については除外して考える。
(3)定電流制御方式
次に、モータ電流又は電圧を連続的に変化させてモータを制御する電子回路は、以下のようになる。モータの基本機能は、与えられた電流をトルク係数χTによって駆動トルクに変換される。従って、モータを電子制御する際は、目標とする電流を自由に設定し、これを維持する定電流制御の機能が基本となる。図29は、指定電流ICNTの値に比例した出力電流ISを維持する制御回路の一つである。
【0186】
この図29は、三角形の記号が内部に高い増幅率を持つ演算増幅器などを示している。目標となる電流ICNTは、抵抗RSで電圧に変換して増幅器の+側に入力されている。また、制御される電流IMは、電流検出抵抗REで電圧に変換して増幅器の−側に返すフィードバック制御となっている。尚、E0とRBは電池の誘起電圧と内部抵抗である。
【0187】
定電流制御について簡単に検討を加えると以下のようになる。
増幅器の+と−入力に加わる電圧は、図29からそれぞれVA_INP1=RSICNTとVA_INP2=REIMとなる。また、増幅器の増幅率をAMPとすると、出力電圧VA_OUTは、次式となる。
【0188】
【数45】
Figure 0004397104
【0189】
また、図29の増幅器は高い増幅率を持つことから、1/AMP=0と置いて、式(45)を整理すると出力電流IMは次式となり、式中のRS/RBが電流増幅率を表わす。
【0190】
【数46】
Figure 0004397104
【0191】
次に、式(45)のVA_OUTは、図29で示す供給電圧VB以上の電圧を発生できない。また、増幅器の出力電圧上限値と電源電圧間には、オフセット電圧VOFSの電圧差が必要である。この関係は、次の不等式となる。
【0192】
【数47】
Figure 0004397104
【0193】
この式(47)の出力電圧VA_OUTは、出力電流IMの上限値を規制し定電流制御の限界を示すものである。この限界を超えた出力電流ISLは、図29で示す電池誘起電圧E0・オフセット電圧EOFSの電圧と、モータ巻線抵抗RM・電流検出抵抗RE・電池内部抵抗RBによる電圧降下の閉回路で決まる。しかし、定電流制御の機能要素には、E0が含まれないので、機能要素に加えられる供給電圧VBに置き換える必要がある。この点を考慮した電流ISLは、次式となる。
【0194】
【数48】
Figure 0004397104
【0195】
この式(48)は、増幅器の内部回路が消費する電流は非常に少ないので、これを無視すると、電池から供給される電流IBの近似式となる。
以上から図29の定電流制御回路は、式(46)で示す制御された電流IMと式(48)で示す制御されない電流ISLを切り替えて供給する機能となる。これまでの内容を整理してモデル化した定電流制御の機能モデルは、図30で表わすことができる。
【0196】
まず、図30から定電流制御の支配方程式を求めると、次のようになる。
【0197】
【数49】
Figure 0004397104
【0198】
この式(49)は、SWAMP_1・SWAMP_0が定電流制御の限界を判定する条件判定で切替えるスイッチ要素である。
最後に定電流制御の限界は、式(46)の制御領域内の電流IBが式(48)の制御限界を超えた電流ISL以下の状態が制御中となり、これを超えると非制御状態となる。この条件判定SWAMPは、次式となる。尚、式中のI^BとISLは推定状態量である(式は省略)。
【0199】
【数50】
Figure 0004397104
【0200】
この式(50)は、SWAMP=1が条件成立で電池から直接電流を供給、SWAMP=0が条件不成立で定電流制御を行なう。
3.2 特性値の初期値を決定
これまで明らかにされていない特性は、モータ内部の過渡的な特性値が中心である。ここでは、モータ機能と機能モデルの関係を理解する意味で、下記の表4で示す設計値または類似部品から求めた初期特性値を与えて無負荷状態のモータにステップ状の電圧を加え、順次特性値を試行的に更新しながら特性値の初期化を行なう。当然ここで行った手順と方法は、コンピュータ上でシュミレーションすることが可能である。
【0201】
【表4】
Figure 0004397104
【0202】
同定するに当たり、式(35)に表4に示す特性を与えて無負荷状態の機能モデル(図23においてTM =0としたモデルに相当)を初期化した際のシミュレーション結果を図31に示す。尚、表4で示す以外の定常内部特性値と試験条件は、前に述べた表3で示す定常状態の同定結果を用いる。また、側負荷TMは無負荷なので零とする。
【0203】
図31(1)の上側は、モータ電流IM[A]と角速度ωM[rad/sec]を示す。同図は、細い点線が測定した電流の生データ、太い点線が後で述べる測定結果をディジタルフィルターで信号処理した電流IM_MEG[A]、太い実線がシミュレーション結果の電流IM_SIM[A]、細い実線がモータの角速度ωM[rad/sec]を示す。
【0204】
また、同図(2)では、太い実線がシミュレーションで求めた電流IM_SIMからフィルターで処理した後の電流IM_MEGを減算した初期値の電流偏差ΔIERR[A]を示し、細い点線は、後で述べる慣性モーメントJMを同定したときの電流偏差ΔIP#err[A]を示す。
【0205】
同図から、電流IMは、電源ON直後の立ち上がりに大きな起動電流が流れ、これが時間の経過と共に減少して無負荷電流に安定する。逆に、角速度ωMは時間経過と共に上昇し無負荷回転数で安定する。このモータ電流の変化は、モータの誘起電圧VMがモータ定数MMを介して角速度ωMに支配されていることを示している。
【0206】
3.2.1 測定電流のノイズ処理
モータ電流IMは、モータと電源の間に50[mΩ]の分流抵抗RSを接続して測定した。この時測定した起動電流が、図31(1)に示す変動の激しい細い点線である。実測値で示す激しい変動はモータのブラシと整流子によるもので、起動直後の低回転域で顕著に表われている。特に回転の立ち上がりで発生する激しい変動は、ブラシに対する整流子の回転角に依存し、整流子の接触片が少ない小型モータで顕著に表われる。
【0207】
この激しい電流変動を除去する為に、測定データをディジタルフィルターで信号処理した結果が同図に示す太い点線である。フィルター特性は、カットオフ周波数を100[Hz]のローパスフィルターとした。尚、フィルターを通したことで測定データとの間に約72[msec]の位相遅れが発生したので、同図の信号処理結果は、位相差だけ立ち上がり点を進ませて一致させた。これにより、同図に示す0[sec]の前に移動した斜めに上昇する成分は、無視する。
【0208】
同定手順は、このフィルター処理したデータを使って行うことにする。しかしながら、フィルター処理では、モータ回転の立ち上がりに発生する電流変動が除き切れていないので、この誤差が同定結果に大きく影響することが予想されるが、この誤差は前に述べた起動時のブラシと整流子の位置関係に依存する不確定な変動なので、この点を考慮して同定を行うこととする。
【0209】
3.2.2 特性の時刻暦感度(手順 38
式(36)の5行目の出力方程式の出力状態量から求めたモータ電流IMには、同定の対象となる特性値が全て含まれることが明らかとなった。そこで同定するに当たっては、対象となる各特性値とモータ電流との関係を良く把握して仮説を立て、同定結果の解釈を通して検証することが必要である。そこで、モータ電流に対する各特性の影響は、以下の仮説とする。
【0210】
▲1▼慣性モーメントJMは角速度変化(角加速度)に比例し角速度の変化が大きい加速途中に強く影響し、変化が少ない定常状態では影響しないものと考えられる。
▲2▼インダクタンスLMはモータ電流の変化に対して比例し、起動瞬間の電流変動が大きいときの影響を与え、電流が安定する定常状態では影響しないものと考えられる。
【0211】
▲3▼粘性抵抗係数δMは角速度に比例し、角速度の上昇と共に内部損失の負荷として影響を与え、定常状態では一定負荷となることが考えられる。
▲4▼動摩擦トルクFMFは定数なので状態量変化に影響されない特性と考えられるが、モータは可能な限り摩擦トルクを削減する構造となっているため影響は少ない。
【0212】
以上の内容から、各特性値は起動瞬間から定常状態に移るまでの時間的な推移の過程で、それぞれ寄与の仕方が異なることが判る。従って、モータ電流IMの変化に対する各特性値の感度を同定の指標とすれば、容易に同定可能なことが推察できる。尚、上記▲3▼と▲4▼は、定常内部特性値の時刻暦感度を検討するために追加されたものである。
【0213】
以上の結果を踏まえて、各特性値の感度について検討すると以下のようになる(図32のフローチャート参照)。
図31(1)のシミュレーション結果は、各特性値の初期値で行ったことを述べ、その時の電流偏差ΔIERRを同図(2)に示した。これを同定の指標とするには、特性値変動が電流偏差ΔIERRに与える影響を明らかにして、特性値とモータ電流の関係が把握できる。この電流偏差ΔIERRは、電流測定値IM_MEG(図33のステップS1)とシミュレーション値IM_SIM(同S2)の偏差として、次式で表わせる(同S3)。
【0214】
【数51】
Figure 0004397104
【0215】
この偏差ΔIERRが許容範囲内であれば後述するシミュレーションによる同定結果の検証を行って過渡同定を完了する(同S4,S10)。
式(51)から図31(2)の電流偏差ΔIERRは、偏差が正側の時は測定値に対しシミュレーションの値が高く、負の時はその逆となる。また起動瞬間には、激しい変動が含まれている。従って、この電流偏差ΔIERRを特性変化に対するモータ電流IMの感度として使用するには、この変動を除去する必要があり、またこの電流偏差ΔIERRによるオフセット量も感度に含まれる。
【0216】
そこで感度を表わす特性の変動電流偏差ΔIP_ERRは、次の式で表わし、偏差の変動分を除去する。
【0217】
【数52】
Figure 0004397104
【0218】
この式(52)の上側において、IP_SIM(同S5)が過渡内部特性値を変化させたときのシミュレーション値を示し、初期値電流偏差ΔIERRが式(51)による初期値のシミュレーション値IM_SIMに対する測定値IM_MEGの電流偏差を示している。
この式から特性値の変動電流偏差ΔIP_ERRは、式(52)の下側で示すように初期値のシミュレーション値IM_SIMに対する各特性値変動のシミュレーション値IP_SIMの偏差を感度として使うことができる。但し、同定精度は、あくまでも初期値電流偏差ΔIERRで評価するので、このΔIERRを同定途上で随時妥当な範囲に収めながら進める必要がある。
【0219】
3.2.3 時刻暦感度変化による同定法
まず、各特性値を+10[%]及び−10[%]変化させたときの電流偏差ΔIP_ERRを時刻暦で求めた結果(同S6)を、図33(2)〜(5)に示す。同図に示す4つの図は、各特性値を変化させたときの時刻暦で見た感度で、同図(1)は、同図(2)〜(5)に示す下側の4つの図に対して細い点線で示された時刻における各感度を比較した図となっており、これらの各時刻暦データは記憶しておく。
【0220】
また、同図(2)〜(5)の各電流偏差は、それぞれ、Jが慣性モーメント、Lがインダクタンス、Dが粘性抵抗係数、Fが動摩擦トルクを指しており、これらを総称して上記のとおり“P”(パラメータ)で示している。但し、各図の縦軸目盛りは、下側の図と同じ目盛りになっているので、4つの図を横並びで比較することはできない。また、実線は表4の特性を+10[%]だけ増加させた結果を示し、点線は-10[%]だけ減少させた結果を示す。この計算を同定対象の全特性値について実行する(同S7)。
【0221】
図33(1)には、特性を±10[%]変化させた結果が正負対称になっていることから特性は線形になることが判る。そして、慣性モーメントJMと粘性抵抗係数δMはモータ電流と正比例の関係となり、インダクタンスLMは正負が反転した比例関係となる。また、前に述べたモータ電流IMと特性の関係の仮説ともほぼ一致し、偏差の変動も除去されている。
【0222】
次に、図33の特性を変化させたときの電流偏差ΔIP_ERRを時刻暦感度として、同定を行なう。同定は、以下の手順で許容できる範囲の電流偏差に収まるように試行を繰り返す(同S4)。
まず、各特性値の同定は、図31(2)の初期値電流偏差ΔIERRから、0.02〜0.06[sec]の領域において正の電流偏差が大きいので、この領域で図33(1)に示すように感度が高い同図(2)の慣性モーメントJMを選択し(同S8)小さくする(同S9)。次に、図31(2)に示すように起動瞬間の変動値DIERRが上側に寄っているので、図33(4)のインダクタンスLMを大きくする。
【0223】
これらの特性値を同定する順序は、初期値電流偏差ΔIERRと各変動電流偏差ΔIP_ERRの相関係数を指標にして係数の高いものから順次上記のステップS2〜S9を実行する。あるいは、同図(2)及び(4)に示す如く変動が時刻の差で互いに干渉していないと思われる場合には、ステップS2〜S9で同時に行ってもよい。
【0224】
尚、同図(1)に示すように慣性モーメントJMの特性曲線は図31(2)に示す電流偏差ΔIERRと時刻暦変化の曲線が類似(相似)しているので、電流偏差ΔIERRは慣性モーメントJMの影響を最も受けていると判断し、慣性モーメントJMのみを変化させて同定してもよい。
【0225】
以上の手順の内、最初に行った慣性モーメントJMの更新値を決定した過程について、その手順を図示すると図34のようになる。
図34(1)は、図31(2)に示した電流偏差ΔIERRを0.06[sec]まで表わした図である。図中のA点は、少なくしたい偏差量αとその位置(0.03[sec]の点)を示している。図34(2)は、図33(1)に示す0.03[sec]の点における慣性モーメントJMの感度を示しており、図34(1)のA点に感度0の点(横軸)を合わせた図である。
【0226】
尚、両者の縦軸で示す電流偏差は同じ目盛り幅に合わせてある。同図(1)から除きたい偏差量α=0.2[A]は、同図(2)から感度が負になることが判る。
従って、同図(1)の偏差0の横軸と同図(2)の負の感度を延長した交点Bから慣性モーメントJMの補正率β=16.8[%]が求められる。表4から更新する慣性モーメントJMは、0.4×10-6×(1-0.168)=0.3328×10-6となる。
【0227】
この慣性モーメントJMを更新した結果が図31(2)の変動電流偏差ΔIP_ERRで示される細い点線である。以上の手順を式で表わすと次式のようになる(同S9)。
【0228】
【数53】
Figure 0004397104
【0229】
この式(53)は、上側が特性値の補正率β、下側は更新後の特性値の式になっている。式中の変数は、α(t)[A]が初期値電流偏差ΔIERRの時間tにおける電流偏差量、λ(t)[A/%]も同様に時間tにおける特性値の感度、PM_NEWが更新後の特性値、PM_OLDが更新前の特性値である。
【0230】
尚、モータ電流と特性値が比例しない非線形特性(時刻暦感度が非対称となる時)、特性値の変更範囲が±10[%]を大幅に越える時は、再度、式(52)から感度を求めて同定を繰り返す必要がある。
3.3 過渡同定とシミュレーションの結果( S10
(1)同定結果とそのシミュレーション
以上の過渡同定の手順で行なった各特性値を、表5に示す。同定用の試験データは、定トルク過渡試験の設定トルクを零にした無負荷試験の結果を使用した。
【0231】
【表5】
Figure 0004397104
【0232】
過渡同定結果を反映させたシミュレーション結果を、図35に示す。シミュレーションは、図23で示した定トルク過渡試験モデルの実行支配方程式(35)に、表5の過渡同定結果と表3の定常同定結果の特性値を与えて行なった。
図35(1)には、インダクタンスLMが考慮されていない結果を細い点線で追加し、モータ電流の生データが省かれている。その他は、図31と同じである。尚、インダクタンスLMを考慮しない場合のシミュレーションは、LM=10-12[H]にして影響を与えない微小な値にして同じ式(35)で行なった。
【0233】
両者を比較すると、インダクタンスLMによる影響は、起動瞬間の急峻に立ち上がる起動電流をエネルギとして貯え、電流の低下と共に放出していることが判る。
その結果、細い点線(LM≒0)に対し実線(LM>0)ではモータ電流の立ち上がりと先頭値が抑えられ、立ち下がり部分が右側に移動している。また、同定結果は、図35(2)の電流偏差ΔIERRで示すようにほぼ一致しているが、前に述べたように起動瞬間の変動については、そのまま電流偏差として現れている。
【0234】
(2)モータの実負荷過渡試験モデルのシミュレーション
次に、この同定されたモータモデルは、モータ単品を正確に再現する仮想原型となるので、図21に示した実負荷過渡試験モデルに図26の操作用機能モデルを組み込んで実機の運転状態を再現する仮想試験のモデルとすることができる(後述の図42参照)。そのシミュレーション結果を示す。シミュレーションは、式(41)に下記の表6の電動アームの特性値を与えて行なった。
【0235】
【表6】
Figure 0004397104
【0236】
尚、表6以外の特性値は、同定後のモータモデルと同じである。また、モータ操作は、図26で示す電源スイッチSWS、正逆転スイッチSWL、制動スイッチSWBで行う。
まず、モータの起動・停止のシミュレーション結果は、以下のようになる。
【0237】
正逆転スイッチSWLがOFF、制動スイッチSWBがOFFの状態で、電源スイッチSWSをONにしてモータを起動し120[msec]後に2[N・m]の負荷を与え、この負荷を与えた状態で280[msec]後に電源スイッチSWSをOFFする。そのシミュレーション結果を図36に示す。
【0238】
図36(1)〜(4)は順に、モータ電流IM[A]、負荷トルクTL[Nm]及びモータ電圧VM[V]、モータ角速度ωM[rad/sec]、アームの動作角θR[deg]を示している。負荷を加えた時点からモータ電流IMが増加し、角速度ωMが低下する。この時、動作角θRの変化はやや遅くなっている。
【0239】
また、電源OFFでは、モータ電流IMが0[A]となり、角速度ωMが低下して310[msec]付近から負荷がモータを駆動し、逆回転を起こす。また、電源OFF後のモータ電圧VMには、OFFの瞬間にインダクタンスLMがスパイク状の電圧を発生し、その後はモータの角速度ωMによる誘起電圧Vwが発生し、モータから発電機に変わる様子が示されている。
【0240】
次に、モータの正転・逆転・制動のシミュレーション結果は、以下のようになる。
図37は、制動スイッチSWBのOFF/ONによる電気ブレーキの有りと無しで停止させた例である。同図は、正逆転スイッチSWLがOFFで電源スイッチSWSをONにして起動し強制的にスットパーで停止させ、0.6[sec]後に正逆転スイッチSWLをONにして逆転させ、再び反対側のスットパーで強制停止させ、その後、1.4[sec]経過した時点で電源スイッチSWSをOFFにしてモータを停止させた状態を示している。
【0241】
同図(1)〜(4)は、順に、モータ電流IM[A]、アームの動作角θR[deg]、モータ角速度ωM[rad/sec]、モータトルクTM[Nm]を示している。また、同図の実線はRL=1[mΩ]の制動抵抗による電気ブレーキを掛けた状態を示し、点線は掛けない状態を示す。正回転・逆回転共にスットパーに衝突時に減衰振動を起こしている。
【0242】
また、ストッパで強制的に停止したときは、スットパーゴムの柔軟構造でモータの最大トルクを吸収して圧縮されている。この状態で電源を切ると、スットパーのたわみによる圧縮力でアームが押し返される。電気ブレーキの効果は1.4[sec]後の停止状態で現れ、実線で示すようにスットパー反力によるモータの空転を良く吸収していることが、モータ角速度ωMとアームの動作角θRから判る。
【0243】
4.モータ同定装置
これまで述べた機能部品の定常と過渡状態の試験モデルを同定するために必要な装置について以下に説明する。
製品の中に組み込まれている機能部品は、その入出力部に機能部品を組み付けて互いに連携させながら働く構造となっている。図21に示したように、例えばモータの試験には、駆動用の電池と負荷となる電動アームなどが必要である。また、モータを制御するには、図25、図27、図29などで示す操作系も必要となる。
【0244】
このように実機の試験データを使って同定する試験モデルには、被試験品の駆動源及び負荷となる機能部品のモデル化を必要とする。このように他の機能部品の影響を受ける場合は、その働きと挙動を被試験品の仕様及び試験規格として標準化することが可能である。この標準化された通りに動作し挙動を再現するものがあれば、各試験法に共通の代替品として利用できる。
【0245】
試験モデルには、この駆動源及び負荷の代替品となる機能部品をモデル化して同定済みモデルとして組み込めば、被試験品の内部特性値に絞った同定を行なうことができる。また、この試験装置と試験モデルは、部品仕様が異なる被試験品群を入子方式で組み替ることもできる。
【0246】
これらの概念をモータの同定装置に適用した例が、図38に示されている。同図の同定装置は、モータモデル1が試験再現モデル22に対して入子構造になっており、再現モデル2は電池や操作モデルなどの駆動モデル21と、負荷発電機モデルなどの負荷モデル22と、モータモデル1の状態量を観測する観測モデル23と、該内部特性値を更新する特性更新モデル24とで構成されている。
【0247】
また、被試験モータ3の駆動源となる電池と操作系を駆動回路装置4が受持ち、モータ3の機械的な負荷を負荷発電機5と電気負荷6が受持ち、駆動モデル21と負荷モデル22としてモデル化され同定済みとなっている。
さらに、実機試験装置と各モデルとの関係は、前者の駆動モデル21が駆動系制御装置71を介して駆動回路装置4を制御し、後者の負荷モデル22が負荷系制御装置72を介して負荷発電機5を制御する構造となっている。
【0248】
そして、モータ3の測定値が計測器8で計測されて演算装置9へ与えられる。演算装置9は観測モデル23の観測値と計測器8からの計測を受けて特性更新モデル24を更新する。
図38に示すモータ駆動モデル21が、図21左側の電池と図26、図28、図30の操作系の回路とを結合したモデルに対応し、負荷発電機モデル22が、図21右側のアーム機構や図23の定トルク発生モデルなどに対応している。
【0249】
そして、前者のモデル上で再現する動作・振る舞いは、駆動系制御装置71によって駆動回路装置4が再現して被試験品のモータ3に与える。同様に、モータ3に与える負荷状態は、負荷系制御装置72によって電気負荷6を制御し、負荷発電機5上に再現している。
【0250】
従って、図4(1)に示すモータ機能モデル1を再現モデル2に接続すると、駆動系及び負荷系に対応して予め与えられている駆動モデル21及び負荷モデル22が所定の定常試験モデルとなって、駆動回路装置4及び電気負荷6を制御する。
これに伴って、モータ3から発生される定常試験データが計測器8で計測されることとなり、このデータを受けた演算装置9は定常機能モデルの支配方程式、すなわち定常内部特性値をモータモデル1に与える。これにより定常同定が完了する。
【0251】
この後、再現モデル2は過渡同定を行うために、駆動モデル21及び負荷モデル22を過渡試験モデルに変更する。これに伴い、過渡試験が実行されることとなり過渡試験データが計測器8から演算装置9に与えられる。演算装置9は観測モデル23から入力している内部特性値に既に演算した定常内部特性値を代入した値と計測器8からの計測データとを比較し、両者の誤差が許容範囲まで小さくなるように特性更新モデル24によりモータモデル1の内部特性値を上記の如く適宜更新する。これにより過渡同定が終了し、全ての同定作業が完了する。
【0252】
5.仮想試験
部品又は部品で構成された製品の機能・性能・特性値を再現するモデルは、その実態の試験データで同定し、内部特性値と再現性が検証されたことで、実機の代りに各種評価試験をコンピュータ上で代行する仮想原型(バーチャルプロトタイプ)として、利用することができる。ここでは、この仮想原型を製品開発に応用する例について述べる。
【0253】
5.1 製品開発とモデル化の関係
製品の開発過程とモデルの育成過程は、図39で示す関係で表わされる。
同図は、企画段階・設計段階・試作・試験段階までの開発過程と、これに並行して行なわれるモデル化及び同定の関係を表わしたものである。同図は、製品の各開発過程を並行して行なう同時並行開発(コンカレントエンジニアリング)の概念が織り込まれた過程となっている。
【0254】
これに対し、モデル化の過程は、企画段階の抽象的な製品目標のモデル化から始まり、これを開発過程に沿って順次モデルの詳細化を進めながら、モデルによる企画・設計内容の妥当性を検証し、最後に試作品の試験データで同定を行ない、この同定モデルを利用して各種評価試験を、コンピュータによるシミュレーションで代行する仮想試験を行なう流れになっている。
【0255】
(1)製品開発とモデル化の関係
例えば、これを車の開発に適用すると以下のような手順となる。
企画段階の抽象的なモデルは、0〜400[m]の加速時間、定置燃費性能、加速性能など、企画された車の目標特性となる車両性能を再現するモデルを、重量・抵抗・動力特性・変速比などの特性を組み立てたモデルで、目標特性の実現可能性の検証を行なう。
【0256】
次の製品の部品構成と基礎設計では、この目標特性を実現するエンジン・変速機・車体などの基本的な機能部品の構成法に沿ってモデルを分解し、各機能部品の内部特性値を明らかにしながらモデル化を行ない、各機能部品に要求される機能・性能の検証と目標特性値の達成可能性を検証する。
【0257】
同様に、詳細設計では、エンジン・クラッチ・ブレーキ・変速機・制御装置などの詳細設計の内容に従ってモデル化を詳細化し、トルク変動・変速ショック・振動騒音・制御アルゴリズムなどの細部について、設計内容の妥当性をモデルで検証する。
【0258】
以上の過程で作られたモデルは、企画段階の抽象的なモデルから、部品構成に沿って順次下位モデルに分解され、製品から部品及びその細部まで階層化した体系的なモデルとなっている。
また、これまでの企画・設計及びモデル化の過程は、目標特性を実現する実態の設計図とこれを検証するモデルによって開発が進められるが、両者共、あくまでも仮説である。従って、この両者は、設計図を元に作られた試作車などで、試験を行ない、これらのモデルを同定して、仮説の妥当性を検証しておくことが必要である。
【0259】
(2)製品開発と同定の関係
以上の理由から、図39の下側に示す、機能部品及び車両試験のデータを元に同定が行なわれる。同定とそのために必要な試験は、前に述べた定常・過渡状態に分けて行ない、定常試験が図9〜図13、過渡試験が図21〜30で示すように試験法に合わせてモデル変換を行い、その試験データによって試験モデルの同定を行なう。ここで行なう同定は、まず機能部品単位に行なった各試験モデルの同定結果を、部品構成に沿って統合し、製品モデルの同定とすることが可能である。
【0260】
例えば、図21の電池・モータ・電動アームの各機能部品が個別にモデル化され、これを互いに接続したものが電動アクチュエータの製品であると仮定する。この電動アクチュエータのモデルは、電池・モータ・電動アームのモデルを下位とする階層化されたモデルで表わすことができる。また、これを統合した方程式は、式(34)となることが判る。
【0261】
従って、図21の中央のモータと右端の電動アームを個別に同定して、同図の特性値とすれば、自然に上位階層の電動アクチュエータを同定したこととなる。このように、実態の形態に沿って製品の特性値・性能を忠実に再現できるモデルを「仮想原型」と呼ぶことにする。
【0262】
この階層化されたモデルの応用法としては、図21で電池と電動アームが、既に同定済みの時は、電動アクチュエータモデルを試験モデルに変換し、同定済みの内部特性値を既値とし、モータモデルの未値の内部特性値に絞った部分同定が可能である。
【0263】
5.2 仮想原型による仮想試験
次に、このようにして同定された部品モデルは、各部品が有する機能・性能を再現する部品の仮想原型として確定される。同様に、同定済み部品モデルを互いに接続して統合した製品モデルは、製品を再現する仮想原型として確定されることを意味する。また、これらのモデルは、前に述べたように試験法に合わせた試験モデルに変換し、再現性と実態の試験結果を比較評価して、両者の差異を検討しながら同定された結果である。
【0264】
従って、ここで同定された製品及び部品の仮想原型は、試作品などの各種試験をコンピュータによるシミュレーションで代行して、その妥当性を評価することが可能となる。この仮想原型を利用して、実態の評価試験をコンピュータ上で行なうことを、部品又は製品の「仮想試験」と呼び、図37〜図38で得られた同定結果の妥当性を検証したシミュレーションもその一例である。
【0265】
(1)仮想試験モデルの内部構成
仮想試験は、実態の評価試験と同じ環境条件・運転操作などの試験条件、及び性能・挙動の再現データによる合否判定・性能予測・異常現象の有無などの評価基準を定めた試験規格を適用するのが普通である。これを模式的に表わすと、図40のようになる。
【0266】
同図は、仮想原型11とこれに適用する試験規格群12をモデル化して組み込んだ、仮想試験用モデル10の基本的な構成例である。この中の仮想原型は、同定済み機能部品モデルと、仮想試験に際して設計値及び類似部品の特性値を与える機能部品モデルの2種類で構成されている。
【0267】
この両者の使い分けは、前者が製品の機能・性能を支配する基本機能を有する部品のモデルとなり、後者が製品の用途・構造・形状などで特性値が異なる多品種の製品に拡大するためのモデルとなる。この両者を併せた製品モデルは、多品種に渡る製品の評価試験を、前者の同定済み基本機能のモデルに、後者の異なる特性値の派生機能のモデルを組み合わせた、多様化する製品群の試験評価を仮想試験で代行できることを示している。
【0268】
(2)仮想試験用車両の仮想原型例
例えば、図40の車両用仮想原型の簡単なモデルは、図41で表わすことができる。同図は、エンジン・変速機の機能部品をモデル化して、パワートレイン(P/T)として統合した機能モデルと、構造などで異なる車の種類を車体としてモデル化し、両者を車両として統合した機能モデルを表わした仮想原型の例である。各機能部品のモデル間は、エンジン・変速機及び変速機・車体間が位差量である角速度ωe・vbと流動量であるトルクTe・fbで関係付けられている。
【0269】
各モデル内の特性は、以下のようになっている。エンジンの各特性は、慣性モーメントJe・粘性抵抗係数δe・内部トルクTeである。その中のDe・Teは、スロットル開度αe・大気圧pe・外気温teを入力とする回転−トルク特性を、部分線形化した勾配をDe、エンジン回転数が“0”の時の発生トルクをTeとして表わしている。
【0270】
変速機の各特性は、変速比Nm・ファイナルギヤー比Nd・出力軸の剛性Cpである。最後の車体は、タイヤ半径RT・車体質量Mb・走行抵抗Db・走行路の勾配θである。この車体特性のRT・Mb・Dbは、車体構造などの違いで特性が異なるので、車の種類毎に組み替える必要がある。
【0271】
また、エンジンと変速機を制御するエンジン制御装置と変速機制御装置の制御特性値は、試験データで事前に同定が済まされている。
図41の仮想原型を使って、車の運転状態と同じ条件で仮想試験を行なうには、更に次のモデルが必要となる。まず、同図の勾配θ・大気圧pe・外気温度te などには、車の使用環境条件として与える環境条件モデルが必要である。さらに、スロットル開度ae・変速機の歯車比Ngなどには、車の運転操作を条件として与える操作モデルが必要である。
【0272】
最後に、仮想試験を行なった仮想原型の再現結果を評価するには、ωe・vb・Te・fbなどを観測する観測モデルが必要である。これらの条件と評価を行なうためのモデルは、図40で示した試験規格モデルの各評価試験法を元にしてモデル化する。
【0273】
このモデルで行なう仮想試験は、実機の特性値・性能・振る舞いを忠実に再現するP/Tの機能部品の仮想原型に、車の種類で異なる車体モデルの特性値を組み替えて、各車種に対応させることができる。そして、同じP/Tが搭載された各車種毎に行う各種試験は、この車両モデルの仮想原型を使った仮想試験による代行が可能となる。
【0274】
これまでの車の開発では、多くの車体構造を持つ車両に対して、多岐に渡る評価試験を行なって、商品としての妥当性が検証されている。これらの膨大な試験は、仮想原型の中の車体特性値を組み替えながら、モデル化された試験規格群を組み合わせて行なう仮想試験によって、試作車の削減及び試験に要する開発期間の短縮を可能とし、その結果として開発費の低減を図ることができる。
【0275】
5.3 仮想試験装置(モデル)
これまで述べた実機試験と同定、及び仮想原型による仮想試験は、その基本構成を図42で示すことができる。
仮想原型の仮想試験では、実機試験の対象となる被試験品モデルを試験モデルに変換可能なことと、試験規格が運転操作モデル・環境条件モデル、及び仮想原型の実行結果を観測モデルとしてモデル化できることを、前に述べた。
【0276】
この仮想試験で再現した観測データと実機試験の試験データは、両者を比較評価して同定することが可能である。このことは、仮想試験のモデルと同定のための試験モデルが共通化可能であることを示している。
すなわち、この仮想試験装置(モデル)は、同定の手法と手順をモデル化して仮想原型の内部特性値を更新する同定モデル9(図38の演算装置に対応)と、仮想試験が再現データの妥当性を検証する評価モデル35を組み込むことで、実機試験・同定・仮想試験に一貫性を持たすことができる。
【0277】
図42は、これらを実機試験データと評価モデル、及び評価モデルの結果を同定モデルに入力して関係付けられている。この両者は、前者が仮想試験の合否判定結果に問題を生じた場合に、点線で示すように実機試験を行なって再評価し、もし、仮想原型の同定結果に問題があれば後者で再同定が行なえる手順となっている。
【0278】
同図に示す仮想試験装置各部の主な内容は、次のようになる。
▲1▼仮想原型1は図38のモータモデルに対応するものであり、製品・部品の機能・性能・特性値を再現するモデルで、機構・構造に関するメカ系とこれを制御する制御系のモデルで構成される。
【0279】
▲2▼運転操作モデル31は、仮想原型1を実機と同じ運転条件で操作するモデルである。例えば、車のアクセル操作・変速操作・ブレーキングなどがある。
▲3▼環境条件モデル32は、仮想原型1を実機の使用環境と同一条件にして、その影響を再現させるモデルである。例えば、車が市場走行する時の走行路・温度・湿度・気圧などがある。
【0280】
▲4▼観測モデル23は、図38にも示されているとおり、実機試験で計測する各計測点のデータをモデル上で再現させるモデルで、実機で測定困難なデータもモデル上で観測可能である。
▲5▼内部特性更新モデル24は、図38にも示されているとおり、同定結果を元に仮想原型の内部特性値を更新するモデルである。
【0281】
▲6▼実機試験部33は、従来から行なわれている試験を示し、その中の計測器34が試験データをリアルタイムでコンピュータに取り込む装置を示している。
以上の動作をまとめると、仮想原型1に対してモデル31および32からそれぞれ運転操作条件及び環境条件を与えると、仮想原型1はこの時にシミュレーションした結果得られる再現データを観測モデル23から評価モデル35へ与える。評価モデル35では、実機試験の代わりにシミュレーション結果の再現データが妥当であるか否か(製品・部品の妥当性)を試験規格で定めてある評価基準と再現データとを比較することにより評価する。
【0282】
この評価で不合格となった場合は、実機試験データと再現データとの偏差が大きければ、評価モデル35が仮想試験部30に対して運転操作条件及び環境条件を変更して同定のやり直しを指示する。これにより図42の点線で示す如く、実機試験部33に対してモデル31及び32から運転操作条件及び環境条件がそれぞれ与えられる。
【0283】
従って、評価モデル35は計測器34を経由して実機試験部33からの実機試験データと再現データとの偏差が大きければ同定モデル9に再同定を指示する。同定モデル9は実機試験データを受けて内部特性更新モデル34により仮想原型1の内部特性値を補正するので、観測モデル23を介して再び評価モデル35で評価が行われる。この結果、実機試験データと再現データとの偏差が最小となるように同定モデル9は仮想原型1の内部特性値を更新することになる。
【0284】
評価が終了したときには、別の仮想原型1中の変形例(例えば車種による変形例)についての評価を行う。特に、仮想原型の中の制御モデルの内部特性値(制御パラメータ)に対して、この同定を行うことで仮想原型1を車種別に最適状態にチューニングすることができる。
【0285】
5.4 仮想試験を応用した変速機の実機試験
被試験品の機能部品を単品で実機試験する場合には、これを駆動する駆動系とその負荷となる負荷系の機能部品が必要となる。ここでは、このような駆動系と負荷系の機能部品を同定した仮想原型を試験装置に組み込んで、被試験品の実機試験を行なう方法について検討する。
【0286】
この仮想原型を内部に包含した変速機の試験装置例を図43に示す。
同図は、エンジンの駆動特性と車両の負荷特性を駆動モータと負荷発電機で再現して、変速機単体を実際の使用状態に沿って実機試験を行なうための装置である。この装置は、車両の走行に必要な性能を駆動源となるエンジンン性能から引き出し、変速に関する、加減速性能・変速ショックなどの速各種性能について実機で評価試験を行なうものである。
【0287】
同図において、変速機を駆動する駆動モータ4、その負荷となる負荷発電機5、電気負荷6、その運転状態を測定する計測器8とで試験装置33が構成されている。また、この試験装置33には、駆動モータ4と負荷発電機5及び変速機50の仮想原型11が接続されており、これで車両の運転状態を再現し、その結果を駆動モータ4と負荷発電機5で忠実に再現させる駆動系制御装置71と負荷系制御装置72を備えている。
【0288】
これらの制御装置71、72は、駆動モータ4によってエンジンの駆動トルクを変速機50に与え、車体が変速機50に与える負荷トルクを負荷発電機5と電気負荷6で再現している。これらの駆動モータ4と負荷発電機5のモデルは、共に同定済みの仮想原型11で、エンジンと車体の機能・性能・挙動を試験装置33の中で再現できるようになっている。
【0289】
これらの駆動モータ4・変速機50・負荷発電機5をモデル化した仮想原型は、図44で表わされる。尚、図43の変速機モデル1に入力される、操作系モデル31,38,39及び環境系モデル32は、前に述べた試験規格のモデルで、前者がドライバーの運転操作条件を入力するモデルを表わし、後者が変速機の内部特性値に影響を与える外気温度などの環境条件を入力する。また、各観測系モデル23,37,40は、各仮想原型内部の状態量を観測するモデルである。
【0290】
図44の駆動系のモータモデル13は、図6、図4、図30のモータ・電池・定電流制御のモデルで構成されている。尚、モータモデル13の一部の内部特性値は、モデルを簡略的に表現するために省略されている。同様に、負荷側は、負荷発電機モデル14が図4、電気負荷が図13左側の制動抵抗で構成し、一部の内部特性値を省略している。
【0291】
図44は、駆動系モータモデル13と変速機モデル1を接続している角速度ωe・入力トルクTeが駆動系制御装置71の目標値とし、同様に、負荷発電機モデル14の速度vbと駆動力fbを負荷系制御装置72の目標値として与えている。また、駆動モータ4の駆動トルクTeは、図30の定電流制御モデルから、制御電流ICNTを操作系で制御して駆動モータの電流を調整することで再現できる。
【0292】
また、負荷発電機5の負荷トルクは、図13の制動試験のモータモデルから、操作系を介して制動抵抗値に変えることで再現できる。また、この負荷トルクは、制動抵抗の代わりに、駆動モータと同じ図30の定電流制御モデルとその装置を組み込んでも良い。
【0293】
また、図43に示す試験装置33には、変速機50の試験結果と仮想原型11の再現結果に差異が生じた場合に、演算装置9内に設けられた評価モデル(図42参照)がこれを評価し、同じく演算装置9内に設けられた同定モデル(図42参照)により変速機モデル(仮想原型)1の内部特性値を同定して更新する内部特性更新モデル24が組み込まれている。
【0294】
5.5 仮想試験を応用したパワートレイン(P/T)の実機試験例
次に、図43に示した実機試験装置において、駆動側のモータ4とこれに連なる仮想原型13及び駆動系制御装置71を除いて、エンジンと変速機を一体にしたP/Tの実機試験を行なう例について検討する。
【0295】
このP/Tと負荷発電機を持つ実機試験装置の例は、図45で表わされる。
この例では、図41に示した構造が異なる車体に、同じP/T51を搭載して多品種の車を実機試験し、異なる車体特性値を持つ車両に対するP/T51の適合性を検証するものである。
【0296】
P/T51の仮想原型1は、モータ・ガソリン機関・ディーゼル機関などの原動機の種類に加えて、自動変速機・手動変速機・無段変速機などの変速機が組み合わされた、多種類を必要とする。従って、これらの各仮想原型1は、モデル組替装置25によって組み替えるようになっている。
【0297】
また、このP/T51の仮想原型1は、エンジン及び変速機の制御ユニットのソフトウエアを再現する制御モデルを持ち、仮想原型1のモデルを制御すると同時に、制御入出力装置36を介して、エンジンと変速機の実機が直接制御できるようになっている。
【0298】
従って、実機のP/T51と負荷発電機5で再現した車体性能の適合性が悪化した場合には、内部特性更新装置24を介して制御モデルの内部特性値を変更し、最初に、仮想原型1の中で対策効果の確認を行ない、次に、実機試験で再度評価して確認できるようになっている。
【0299】
例えば、車体重量又は走行抵抗が大きい車両に搭載したエンジンの低速域トルクが不足気味で発進加速力の不足が生じる不具合などの場合には、加速性能の向上を図るために、加速開始時の燃料増量を行なうように、内部特性更新装置24を通して制御モデルの制御特性値を更新する。そして、最初に仮想原型によるシミュレーションによって、制御量変更の対策効果と、増量で懸念される燃費や排ガスなどへの悪影響を仮想試験で確認し、最後に、仮想試験装置を使ってP/T51の実機評価試験を行なう。
【0300】
この手順を踏むことで、対策の効果と多くの試験項目について検討する悪影響の再現試験を、短時間に仮想原型のシミュレーションで検証し、この検証結果を元に、長時間を要する実機試験項目を少数に絞り込んで効率的な試験運用が可能となる。
【0301】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る特性値同定方法及び装置によれば、部品に加わるエネルギーの強さ及び量を表わす位差量および流動量に基づいて該部品の機能モデルを作成し、該機能モデルの定常状態における定常内部特性値を同定し、この同定した定常内部特性値を用いて該機能モデルの過渡状態における過渡内部特性値を同定するように構成したので、エネルギーを規定する位差量及び流動量という二次元量を支配する全ての物品の機能をモデル化することができる。
【0302】
さらにこのモデルの内部特性値を定常同定を経て過渡同定しているので、過渡状態の干渉を受けない定常同定が可能となり、これに基づいて過渡同定が行われるので、簡素化された同定手順で正確な内部特性値が得られるという効果がある。そして、これらの結果から、製品・部品の定常状態から過渡状態までを忠実に再現することができる。
【0303】
また、このような特性値同定方法を用いた装置を作ることにより、同種類の機能モデルの同定を迅速に行うことが可能となる。
さらに、このような同定装置によって同定された特性値を有する機能モデルを仮想原型として仮想試験装置に組み込んでおき、運転操作条件や環境条件を与えて該仮想原型から再現データを取得し、その運転操作条件や環境条件に伴う実機試験データと再現データとを比較してその比較結果に応じて必要に応じ再同定するように構成すれば、設計・試作・試験の開発過程で行われている実機試験を省き、期間の短縮と開発費用の削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る特性値同定方法及び装置の基本概念を示したブロック図である。
【図2】モータモデルの基本系をエネルギーの位差量及び流動量と関連付けて示したブロック図である。
【図3】モータの一般的な電気回路図である。
【図4】本発明に係る特性値同定方法及び装置に用いるモータの機能モデルとその記号を示した図である。
【図5】電池の一般的な電気回路図である。
【図6】電池の機能モデル図である。
【図7】本発明に係る特性値同定方法及び装置に関してモータの定常機能モデルから定常試験モデル群を作成する手順を示したブロック図である。
【図8】モータの定常機能モデル図である。
【図9】定常負荷試験時のモータモデル図である。
【図10】負荷試験時のモータモデル図である。
【図11】ロック試験時のモータモデル図である。
【図12】誘起電圧試験時のモータモデル図である。
【図13】制動試験時のモータモデル図である。
【図14】本発明に係る特性値同定方法及び装置における定常試験モデル群から定常機能モデルの同定手順を示したブロック図である。
【図15】定常状態のモータ特性を示したグラフ図である。
【図16】モータの外観形状をを示した図である。
【図17】図15の縦軸と横軸を逆にしてモータの定常内部特性値を示したグラフ図である。
【図18】モータの定常内部特性値を示したグラフ図である。
【図19】本発明に係る特性値同定方法及び装置における機能モデルの過渡同定手順を示したブロック図である。
【図20】電動アーム機構の構造図である。
【図21】モータの実負荷過渡試験時のモデル図である。
【図22】モータ軸を固定したときの過渡試験モデル図である。
【図23】モータの定トルク過渡試験モデル図である。
【図24】モータの惰性回転試験時のモデル図である。
【図25】モータの操作用スイッチ回路図である。
【図26】モータの操作スイッチの機能モデル図である。
【図27】スイッチング方式の電気回路図である。
【図28】スイッチング方式の電気回路の機能モデル図である。
【図29】定電流制御の電気回路図である。
【図30】定電流制御回路の機能モデル図である。
【図31】本発明に係る特性値同定方法及び装置において過渡同定を行う前の試行シミュレーション結果を示したグラフ図である。
【図32】本発明に係る特性値同定方法及び装置における過渡同定の動作を説明したフローチャート図である。
【図33】本発明に係る特性値同定方法及び装置における特性値の感度を示したグラフ図である。
【図34】本発明に係る特性値同定方法及び装置における電流偏差と特性値時刻暦感度との関係を示したグラフ図である。
【図35】本発明に係る特性値同定方法及び装置における同定を行った後のシミュレーション結果を示したグラフ図である。
【図36】本発明に係る特性値同定方法及び装置における起動と停止のシミュレーション結果を示したグラフ図である。
【図37】本発明に係る特性値同定方法及び装置における正逆転・制動のシミュレーション結果を示したグラフ図である。
【図38】本発明に係る特性値同定装置をモータを例に採って説明したブロック図である。
【図39】製品開発とモデルとの関係をを示したブロック図である。
【図40】本発明に係る仮想試験の概念を示したブロック図である。
【図41】本発明に係る仮想試験装置を車両に適用したときのモデル図である。
【図42】本発明に係る仮想試験装置の実施例を示したブロック図である。
【図43】本発明に係る仮想試験装置を変速機の実機試験に応用した例を示したブロック図である。
【図44】駆動系・変速機・負荷系の仮想試験装置を示したモデル図である。
【図45】本発明に係る仮想試験装置をパワートレインの実機試験に応用した例を示したブロック図である。
【符号の説明】
1 モータモデル(入子構造)
2 試験再現モデル
3 被試験モータ
4 駆動回路装置
5 負荷発電機
6 電気負荷
8,34 計測器
9 演算装置
10 仮想試験モデル
11 仮想原型
12 試験規格モデル
13 エンジンモデル(モータモデル)
14 車体モデル(発電機モデル)
21 駆動モデル(電池・操作モデル)
22 負荷モデル(負荷発電機モデル)
23,37,40 観測モデル、観測系
24 特性値更新モデル
25 モデル組み替え装置
30 仮想試験部
31,38,39 運転操作モデル、操作系
32,41 環境条件モデル、環境系
33 実機試験部
35 評価モデル
36 制御系入出力装置
50 被試験変速機
51 被試験パワートレイン(P/T)
71 駆動系制御装置
72 負荷系制御装置
図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。

Claims (18)

  1. 部品に加わるエネルギーを表わす位差量及び流動量に基づいて部品の機能モデルを作成する第1の手順と、
    該機能モデルから定常状態における定常機能モデルへ変換して定常内部特性値を同定する第2の手順と、
    該定常内部特性値を用いて該機能モデルの過渡状態における過渡内部特性値を同定する第3の手順と、
    を備えたことを特徴とする特性値同定方法。
  2. 請求項1において、
    該第2の手順が、
    該定常機能モデルから少なくとも1つの定常試験モデルの内部特性値を求める第1のステップと、
    該定常試験モデルに対応した試験を行って定常試験データを収集する第2のステップと、
    該定常試験データに基づいて該内部特性値の定常内部特性値を同定する第3のステップと、
    を備えたことを特徴とする特性値同定方法。
  3. 請求項2において、
    該第1のステップが、該内部特性値を、該機能モデルの該定常状態における支配方程式から求めることを特徴とした特性値同定方法。
  4. 請求項3において、
    該第3のステップが、該支配方程式を回帰式に変換し、該回帰式の回帰係数から該定常内部特性値を求めることを特徴とした特性値同定方法。
  5. 請求項1において、
    該第3のステップが、該定常内部特性値を既知の要因と未知の要因とに分け、該未知の要因の該定常内部特性値を同定することを特徴とした特性値同定方法。
  6. 請求項1乃至5のいずれかにおいて、
    該第3の手順が、
    該機能モデルの過渡状態における少なくとも1つの過渡試験モデルの内部特性値を求める第1のステップと、
    該過渡試験モデルに対応した試験を行い過渡試験データを収集する第2のステップと、
    該過渡試験モデルの内部特性値に該定常内部特性値を代入して過渡再現データを生成する第3のステップと、
    該過渡再現データと該過渡試験データとの誤差に基づいて該過渡再現データを補正し、以って過渡内部特性値を同定する第4のステップと、
    を備えたことを特徴とする特性値同定方法。
  7. 請求項6において、
    該第4のステップは、該誤差が許容範囲内にないとき、該誤差が許容範囲内になるまで該過渡再現データ内の所定の過渡内部特性値を繰り返し補正し、該許容範囲内になったとき該過渡内部特性値が同定されたものとすることを特徴とした特性値同定方法。
  8. 請求項7において、
    該第4のステップは、予め各過渡内部特性値を一定の割合で増減した時の初期値に対する変動偏差を時刻暦感度として計算しておき、該時刻暦感度の内、最大感度を有する過渡内部特性値を該所定の過渡内部特性値として選択することを特徴とした特性値同定方法。
  9. 請求項7において、
    該第4のステップは、予め各過渡内部特性値を一定の割合で増減した時の初期値に対する変動偏差を時刻暦感度として計算しておき、該誤差と類似した該時刻暦感度を有する過渡内部特性値を該所定の過渡内部特性値として選択することを特徴とした特性値同定方法。
  10. 請求項において、
    該第4のステップは、該最大感度の時刻が異なる複数の過渡内部特性値を、該所定の過渡内部特性値として同時に選択することを特徴とした特性値同定方法。
  11. 部品に加わるエネルギーの強さ及び量を表わす位差量及び流動量によって作成した該部品の機能モデルの入子手段と、
    該機能モデルの定常状態における少なくとも1つの定常試験モデル及び過渡状態における少なくとも1つの過渡試験モデルを再現する試験再現手段と、
    該定常試験モデル及び過渡試験モデルにそれぞれ対応した定常試験及び過渡試験を行う該部品の試験装置と、
    該試験装置により該部品の定常試験及び過渡試験を行ったときの定常試験データ及び過渡試験データを収集する計測器と、
    該定常試験データを用いて該定常試験モデルの定常内部特性値を同定し、該定常内部特性値を該過渡試験モデルに代入して過渡再現データを生成すると共に該過渡再現データと該過渡試験データとの誤差に基づいて該過渡再現データを補正し、以って過渡内部特性値を同定する演算装置と、
    を備えたことを特徴とする特性値同定装置。
  12. 請求項11において
    該演算装置は、該誤差が許容範囲内にないとき、該誤差が許容範囲内になるまで該過渡再現データ内の所定の過渡内部特性値を繰り返し補正し、該許容範囲内になったとき該過渡内部特性値が同定されたものとすることを特徴とした特性値同定装置。
  13. 請求項11において、
    該演算装置は、予め各過渡内部特性値を一定の割合で増減した時の初期値に対する変動偏差を時刻暦感度として計算しておき、該時刻暦感度の内、最大感度を有する過渡内部特性値を該所定の過渡内部特性値として選択することを特徴とした特性値同定装置。
  14. 請求項11において、
    該演算装置は、予め各過渡特性値を一定の割合で増減した時の初期値に対する変動偏差を時刻暦感度として計算しておき、該誤差と類似した該時刻暦感度を有する過渡内部特性値を該所定の過渡内部特性値として選択することを特徴とした特性値同定装置。
  15. 請求項13において、
    該演算装置は、該最大感度の時刻が異なる複数の過渡内部特性値を、該所定の過渡内部特性値として同時に選択することを特徴とした特性値同定装置。
  16. 請求項11に記載の特性値同定装置で同定した内部特性値を有する機能モデルを仮想原型として組み込む仮想試験装置であって、
    該特性値同定装置に運転操作条件及び環境条件を与える条件付与手段と、
    該運転操作条件及び環境条件を与えたときに該仮想原型により得られる再現データを観測する観測手段と、
    該観測手段の観測結果を評価する評価手段と、
    を備えたことを特徴とする仮想試験装置。
  17. 請求項16において、
    該運転操作条件及び環境条件を、該仮想原型の対象となる実機に与えた時の実機試験データを計測する別の計測器と、
    該仮想原型の再同定手段とをさらに備え、
    該評価手段が、該計測器の出力と該観測結果とを比較し、比較結果に応じて該再同定手段により該仮想原型を再同定させることを特徴とする仮想試験装置。
  18. 請求項17において、
    該仮想原型として、該部品に接続される駆動系及び負荷系の部品について固定仮想原型を組み込み、該試験装置が、各固定仮想原型に対応した試験を行い、このとき該評価手段が、該比較結果により該再同定手段による再同定を行わせることを特徴とした仮想試験装置。
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