JP4396522B2 - 重水素化方法 - Google Patents

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Description

本発明は、活性化された触媒を用いて行われる、化合物の重水素化方法に関する。
技術背景
重水素化(ジュウテリウム化及びトリチウム化)された化合物は、種々の目的に有用であるとされている。例えば、ジュウテリウム化された化合物は、反応機構及び物質代謝などの解明に非常に有用であり、標識化合物として広く利用されており、更に該化合物は、その同位体効果によって化合物自体の安定性や性質が変化することから、医薬品、農薬品、有機EL材料等としても有用であるとされている。また、トリチウム化された化合物は、医薬品等の吸収、分布、血中濃度、排泄、代謝等を動物実験等で調査する際の標識化合物として有用であるとされている。そのため、近年、これらの分野に於いても重水素化(ジュウテリウム化及びトリチウム化)された化合物を用いた研究が盛んに行われている。
従来、このような重水素化された化合物を得るために様々な方法が用いられているが、中でもその構造中にカルボニル基やヒドロキシル基を有する化合物を重水素化する技術は未だ問題が多く、重水素化された化合物を効率的且つ工業的に得ることは困難であった。
従来の技術としては、例えば、1)過酸化重水素を用い、塩基性条件下でカルボン酸を重水素化する方法(USP3849458号公報参照)、2)イリジウム錯体を触媒として用い、重水を重水素源として用いてアルコールやカルボン酸を重水素化する方法(J.Am.Chem.Soc.Vol.124,No.10,2092(2002)参照)、3)パラジウムカーボンを触媒として用い、重水素源として重水素ガスのみを用いて脂肪酸を重水素化する方法(LIPIDS,Vol.9,No.11,913(1974)参照)、4)第8族金属から選ばれる金属を触媒として用い、重水又は重水+重水素ガスを重水素源として用いてアクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチルを重水素化する方法(特公平5−19536号公報、特開昭61−277648号公報及び特開昭61−275241号公報参照)或いは5)水素で活性化されていない触媒を用い、重水を重水素源として用いて、アクリル酸やメタクリル酸メチル等を重水素化する方法(特開昭63−198638号公報参照)が挙げられる。
しかしながら、これらの方法は夫々以下の如き問題を有している。
1)過酸化重水素を用い、塩基性条件下でカルボン酸を重水素化する方法では、過酸化重水素により分解される化合物や塩基性条件により分解される化合物の重水素化を行うことは出来ないという問題点を有しており、また、たとえ酸性或いは塩基性条件下で分解しない化合物を基質として使用した場合でも、反応液の液性が中性ではないため、該方法によって重水素化された化合物を単離するためには、煩雑な精製操作が必要となる。
2)イリジウム錯体を触媒として用い、重水を重水素源として用いてアルコール化合物やカルボン酸を重水素化する方法では、アルコール化合物の水酸基が結合する炭素原子から遠い位置に結合する水素原子程重水素化率が高くなり、水酸基の側では、重水素化率が極めて低いという問題点があり、また、触媒として用いられるイリジウム錯体自体も不安定な化合物であるため、製造が難しくまた入手も困難であるという問題点を有している。
3)パラジウムカーボンを触媒として用い、KOD+DOの電気分解により発生する重水素ガスを重水素源として用いて脂肪酸を重水素化する方法では、重水素ガスの製造に特殊な装置が必要であり、その操作も非常に煩雑であり、実用的ではない。また、このように重水素ガスを重水素源として用いる方法では、水添により還元される不飽和結合を有する不飽和脂肪酸等の化合物を重水素化することが困難である。
4)第8族金属から選ばれる金属を触媒として用い、重水又は重水+重水素ガスを重水素源として用いてアクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸或いはメタクリル酸メチルを重水素化する方法では、重水素源として重水のみを用いる場合は、触媒として活性化されていないものを用いていることから重水素化率が低いという問題点を有しており、一方、重水素源として重水+重水素ガスを用いる場合には、重水素化と同時に、反応基質であるアクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸或いはメタクリル酸メチルの炭素−炭素二重結合部分が、重水素ガスにより水添(接触還元)され易く、該結合を残したまま重水素化出来ない。
5)水素により活性化されていない触媒を用い、重水素源として重水を使用してアクリル酸やメタクリル酸メチルを重水素化する方法では、触媒として活性化されていないものを用いていることから重水素化率が低いという問題点を有している。
上記した如き状況から、置換基の種類や二重結合或いは三重結合の有無に拘わらず、効率的且つ工業的にカルボニル化合物又は第2アルコール化合物を重水素化する方法の開発が望まれている。
本発明は、一般式[1]
−X−R[1]
(Rは、炭素−炭素二重結合及び/又は三重結合を有していてもよいアルキル基又はアラルキル基を表し、Rは、炭素−炭素二重結合及び/又は三重結合を有していてもよいアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基又はヒドロキシル基を表し、Xはカルボニル基又はヒドロキシメチレン基を表す。また、RとRとが結合してXに含まれる炭素原子と共に脂肪族環を形成していてもよい。但し、Xがヒドロキシメチレン基の場合には、Rは、炭素−炭素二重結合及び/又は三重結合を有していてもよいアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。)で示される化合物を、活性化された、パラジウム触媒、白金触媒、ロジウム触媒、ルテニウム触媒、ニッケル触媒及びコバルト触媒より選ばれる触媒の共存下、重水素源と反応させることを特徴とする、一般式[1]で示される化合物の重水素化方法の発明である。
また、本発明は、重水素化率60%以上のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−オールの発明である。
本発明に於いて、重水素とはジュウテリウム(D)又はトリチウム(T)のことを意味し、重水素化とはジュウテリウム化及びトリチウム化のことを意味する。また、本明細書に於いては、一般式[1]で示される化合物が有する水素原子のうち重水素原子に置換された比率を重水素化率とする。
本発明の重水素化方法に於いて、一般式[1]で示される化合物のR及びRで表される、炭素−炭素二重結合及び/又は三重結合を有していてもよいアルキル基のアルキル基としては、直鎖状、分枝状或いは環状でもよく、通常炭素数1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10、更に好ましくは1〜6のものが挙げられ、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1,2−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、シクロウンデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロヘプタデシル基、シクロオクタデシル基、シクロノナデシル基、シクロイコシル基等が挙げられる。
炭素−炭素二重結合又は三重結合を有するアルキル基としては、上記した如きアルキル基のうち炭素数が2以上のものの鎖中に二重結合或いは三重結合が1つ以上含まれているものが挙げられ、また、炭素−炭素二重結合及び三重結合を有するアルキル基としては、上記アルキル基のうち炭素数が4以上のものの鎖中に二重結合及び三重結合が夫々1つ以上含まれているものが挙げられ、このような炭素−炭素二重結合及び/又は三重結合を有するアルキル基の具体例としては、例えばビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、4−ペンテニル基、3−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ペンテニル基、1,3−ペンタジエニル基、2,4−ペンタジエニル基、1,1−ジメチル−2−プロペニル基、1−エチル−2−プロペニル基、1,2−ジメチル−1−プロペニル基、1−メチル−1−ブテニル基、5−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−ヘキセニル基、1−メチル−1−ヘキセニル基、2−メチル−2−ヘキセニル基、3−メチル−1,3−ヘキサジエニル基、1−ヘプテニル基、2−オクテニル基、3−ノネニル基、4−デセニル基、1−ドデセニル基、1−テトラデセニル基、1−ヘキサデセニル基、1−オクタデセニル基、1−イコセニル基、1−シクロプロペニル基、2−シクロペンテニル基、2,4−シクロペンタジエニル基、1−シクロヘキセニル基、2−シクロヘキセニル基、3−シクロヘキセニル基、2−シクロヘプテニル基、2−シクロノネニル基、3−シクロデセニル基、2−シクロトリデセニル基、1−シクロヘキサデセニル基、1−シクロオクタデセニル基、1−シクロイコセニル基等の炭素−炭素二重結合のみを有するアルキル基、例えばエチニル基、2−プロピニル基、1−プロピニル基、2−ペンチニル基、2−ノニル−3−ブチニル基、シクロヘキシル−3−イニル、4−オクチニル基、1−メチルデシル−5−イニル基等の炭素−炭素三重結合のみを有するアルキル基、例えば1−ブテン−3−イニル基1、2−ペンテン−4−イニル基、5−(3−ペンテニル)−3,6,8−デカトリエン−1−イニル基、6−(1,3−ペンタジエニル)−2,4,7−ドデカトリエン−9−イニル基、6−(1−ペンテン−3−イニル)−2,4,7,9−ウンデカテトラエニル基等の炭素−炭素二重結合及び三重結合を有するアルキル基が挙げられる。
及びRで表されるアラルキル基としては、直鎖状、分枝状、或いは環状でもよく、上記アルキル基に上記アリール基が置換した通常炭素数7〜34、好ましくは7〜20、より好ましくは7〜15のものが挙げられ、具体的には、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、フェニルノニル基、フェニルデシル基、フェニルドデシル基、フェニルウンデシル基、フェニルトリデシル基、フェニルテトラデシル基、フェニルペンタデシル基、フェニルヘキサデシル基、フェニルヘプタデシル基、フェニルオクタデシル基、フェニルノナデシル基、フェニルイコシル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、ナフチルブチル基、ナフチルペンチル基、ナフチルヘキシル基、ナフチルヘプチル基、ナフチルオクチル基、ナフチルノニル基、ナフチルデシル基、ナフチルドデシル基、ナフチルウンデシル基、ナフチルトリデシル基、ナフチルテトラデシル基、ナフチルペンタデシル基、ナフチルヘキサデシル基、ナフチルヘプタデシル基、ナフチルオクタデシル基、ナフチルノナデシル基、ナフチルイコシル基、アントリルエチル基、アントリルプロピル基、アントリルブチル基、アントリルペンチル基、アントリルヘキシル基、アントリルヘプチル基、アントリルオクチル基、アントリルノニル基、アントリルデシル基、アントリルドデシル基、アントリルウンデシル基、アントリルトリデシル基、アントリルテトラデシル基、アントリルペンタデシル基、アントリルヘキサデシル基、アントリルヘプタデシル基、アントリルオクタデシル基、アントリルノナデシル基、アントリルイコシル基、フェナントリルエチル基、フェナントリルプロピル基、フェナントリルブチル基、フェナントリルペンチル基、フェナントリルヘキシル基、フェナントリルヘプチル基、フェナントリルオクチル基、フェナントリルノニル基、フェナントリルデシル基、フェナントリルドデシル基、フェナントリルウンデシル基、フェナントリルトリデシル基、フェナントリルテトラデシル基、フェナントリルペンタデシル基、フェナントリルヘキサデシル基、フェナントリルヘプタデシル基、フェナントリルオクタデシル基、フェナントリルノナデシル基、フェナントリルイコシル基等が挙げられる。
で表されるアリール基としては、通常炭素数6〜14、好ましくは6〜10のものが挙げられ、具体的には、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。
で表されるアルコキシ基としては、直鎖状、分枝状或いは環状でもよく、通常炭素数1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10、更に好ましくは1〜6のものが挙げられ、具体的には、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、tert−ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、ノナデシルオキシ基、イコシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、シクロデシルオキシ基、シクロノナデシルオキシ基等が挙げられる。
で表されるアリールオキシ基としては、通常炭素数6〜14、好ましくは6〜10のものが挙げられ、具体的には、例えばフェノキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基等が挙げられる。
で表されるヒドロキシル基は、その水素原子が例えばナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属原子に置換されたものも含む。
また、RとRとが結合してXに含まれる炭素原子と共に形成する脂肪族環としては、単環でも多環でもよく、通常炭素数3〜15,好ましくは5〜10、より好ましくは6〜8のものが挙げられ、具体的には、例えばシクロプロパン環シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロノナン環、シクロデカン環、シクロドデカン環、シクロウンデカン環、シクロトリデカン環、シクロテトラデカン環、シクロペンタデカン環等の飽和単環、例えばシクロブテニル環、シクロペンテニル環、シクロヘキセニル環、シクロヘプテニル環、シクロオクテニル環、シクロノニル環等の不飽和単環、例えばトリシクロデカン環、ジシクロペンタジエン環、パーヒドロナフタレン環、パーヒドロアントラセン環、ノルボルナン環、ノルピナン環、ノルカラン環、アダマンタン環等の飽和或いは不飽和多環等が挙げられる。
本発明に係る一般式[1]で示される化合物に於いて、R及びRで表される、炭素−炭素二重結合及び/又は三重結合を有していてもよいアルキル基及びアラルキル基、Rで表されるアリール基、アルコキシ基及びアリールオキシ基は、更に、通常1〜5個、好ましくは1〜3個の種々の置換基を有していてもよく、それら置換基としては、例えば炭素−炭素二重結合/三重結合を有していてもよいアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミノアルキル基、シアノ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基等が挙げられる。
上記した如きR及び/又はRで表される基の置換基である、炭素−炭素二重結合及び/又は三重結合を有していてもよいアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基及びヒドロキシル基の具体例としては、R及び/又はRで表されるそれと同様のものが挙げられる。
また、R及び/又はRで表される基の置換基である、アルコキシカルボニル基及びアリールオキシカルボニル基の具体例としては、上記した如きR及び/又はRで表されるアルコキシ基及びアリールオキシ基の具体例の酸素原子にカルボニル基が結合したもの等が挙げられる。
及び/又はRで表される基の置換基であるアシル基としては、通常炭素数2〜20、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜4のものが挙げられ、具体的には、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基等の脂肪族飽和モノカルボン酸由来のアシル基、例えばアクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、オレオイル基等の脂肪族不飽和モノカルボン酸由来のアシル基、例えばベンゾイル基、ナフトイル基等の芳香族モノカルボン酸由来のアシル基等が挙げられる。
及び/又はRで表される基の置換基であるカルボキシル基は、その水素原子が例えばナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属原子に置換されたものも含む。
及び/又はRで表される基の置換基であるアミノ基は、その水素原子の1つ又は2つが、通常炭素数1〜6、好ましくは1〜4の直鎖、分枝又は環状のアルキル基で置換されていてもよい。
及び/又はRで表される基の置換基であるアミノアルキル基としては、R及び/又はRで表されるアルキル基の少なくとも1つの水素原子が上記した如きアミノ基に置換されたものが挙げられる。
及び/又はRで表される基の置換基であるアルキルカルバモイル基としては、カルバモイル基の水素原子の1つ又は2つが夫々独立して上記した如きアルキル基に置き換わったものが挙げられ、具体的には、例えばメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、n−プロピルカルバモイル基、イソプロピルカルバモイル基、n−ブチルカルバモイル基、イソブチルカルバモイル基、tert−ブチルカルバモイル基、ペンチルカルバモイル基、ヘキシルカルバモイル基、ヘプチルカルバモイル基、オクチルカルバモイル基、ノニルカルバモイル基、デシルカルバモイル基、ドデシルカルバモイル基、テトラデシルカルバモイル基、ペンタデシルカルバモイル基、ヘキサデシルカルバモイル基、ヘプタデシルカルバモイル基、ノナデシルカルバモイル基、イコシルカルバモイル基、シクロペンチルカルバモイル基、シクロヘキシルカルバモイル基、シクロヘプチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基、エチルメチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、メチルプロピルカルバモイル基、ジプロピルカルバモイル基、エチルヘキシルカルバモイル基、ジブチルカルバモイル基、ヘプチルメチルカルバモイル基、メチルオクチルカルバモイル基、デシルメチルカルバモイル基、ドデシルエチルカルバモイル基、メチルペンタデシルカルバモイル基、エチルオクタデシルカルバモイル基、シクロペンチルメチルカルバモイル基、シクロヘキシルメチルカルバモイル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルプロピル基、シクロヘキシルブチルカルバモイル基、ジシクロヘキシルカルバモイル基等が挙げられる。
一般式[1]で示される化合物のうち、例えばアルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基等の酸性或いは塩基性条件で分解され易い基を含んでなる化合物を重水素化する際、本発明の方法を用いることにより、これら置換基が分解されることなく、目的とする重水素化物が効率的に得られる。
本発明の重水素化方法に於いて、上記した如き一般式[1]で示される化合物と反応させる重水素源としては、例えば重水素ガス(D、T)、重水素化された溶媒等が挙げられる。尚、Xがカルボニル基である一般式[1]で示される化合物を重水素化する重水素源としては、重水素化された溶媒が特に好ましく、また、Xがヒドロキシメチレン基である場合も、重水素源としては、重水素化された溶媒が好ましい。
重水素源である重水素化された溶媒としては、重水素がジュウテリウムである場合には、例えば、重水(DO)、例えば重メタノール、重エタノール、重イソプロパノール、重ブタノール、重tert−ブタノール、重ペンタノール、重ヘキサノール、重ヘプタノール、重オクタノール、重ノナノール、重デカノール、重ウンデカノール、重ドデカノール等の重アルコール類、例えば重ギ酸、重酢酸、重プロピオン酸、重酪酸、重イソ酪酸、重吉草酸、重イソ吉草酸、重ピバル酸等の重カルボン酸類、例えば重アセトン、重メチルエチルケトン、重メチルイソブチルケトン、重ジエチルケトン、重ジプロピルケトン、重ジイソプロピルケトン、重ジブチルケトン等の重ケトン類、重ジメチルスルホキシド等の有機溶媒等が挙げられ、中でも重水、重アルコール類が好ましく、具体的には、重水、重メタノールが特に好ましいものとして挙げられる。尚、環境面や作業性を考慮すれば重水が好ましい。また、重水素がトリチウムの場合には、重水素化された溶媒としては、例えば重水(TO)等が挙げられる。
重水素化された溶媒は、分子中の一つ以上の水素原子が重水素化されているものであればよく、例えば重アルコール類ではヒドロキシル基の水素原子、重カルボン酸類ではカルボキシル基の水素原子が重水素化されていれば本発明の重水素化方法に使用し得るが、分子中の水素原子全てが重水素化されたものが特に好ましい。
重水素源の使用量は、多い程本発明の重水素化が進みやすくなるが、経済的な面を考慮すると、重水素源に含まれる重水素原子の量が、反応基質である一般式[1]で示される化合物の重水素化可能な水素原子に対して、下限として順に好ましく、等モル、10倍モル、20倍モル、30倍モル、40倍モル、上限として順に好ましく、250倍モル、150倍モルとなるような量である。
本発明の重水素化方法に於いては、必要に応じて反応溶媒を用いてもよい。反応基質が液体であれば、重水素源として重水素ガスを使用する場合でも反応溶媒を用いる必要はなく、また、反応基質が固体であっても、重水素源として重水素化された溶媒を用いる場合には、特に反応溶媒を用いる必要はないが、反応基質が固体であり且つ重水素源が重水素ガスである場合には適当な反応溶媒の使用が必要となる。
尚、炭素−炭素二重結合或いは炭素−炭素三重結合が含まれている化合物を重水素化する場合、これらの基は触媒の存在下で水素ガスや重水素ガスと接触させると、所謂水添が起こり還元されてしまうため、重水素源としては重水素化された溶媒を用いることが好ましい。
必要に応じて使用される反応溶媒としては、重水素源として使用される重水素ガスにより重水素化されないもの、或いは重水素ガスにより重水素化されてしまうものであっても、該重水素化された反応溶媒がそのまま本発明の重水素化の重水素源となり得るものが好ましい。また、本発明の重水素化は反応系が懸濁状態でもよいことから、反応溶媒として基質を溶解し難いものも使用が可能であるが、基質を溶解し易いものがより好ましい。
必要に応じて用いられる反応溶媒の具体例としては、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチルメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、オキシラン、1,4−ジオキサン、ジヒドロピラン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類等の重水素ガスにより重水素化されない有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール等のアルコール類、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸等のカルボン酸類、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジブチルケトン等のケトン類、ジメチルスルホキシド等の重水素ガスにより重水素化されても本発明の重水素源として使用し得る有機溶媒等が挙げられる。
本発明に於ける、活性化された、パラジウム触媒、白金触媒、ロジウム触媒、ルテニウム触媒、ニッケル触媒及びコバルト触媒より選ばれる触媒(以下、活性化された触媒と略記することがある。)とは、所謂パラジウム触媒、白金触媒、ロジウム触媒、ルテニウム触媒、ニッケル触媒或いはコバルト触媒(「活性化されていない触媒」或いは単に「触媒」と略記することがある。)が水素ガス或いは重水素ガスと接触することにより活性化されたものをいう。
本発明の重水素化方法においては、予め活性化させておいた触媒を使用して重水素化を行ってもよく、また、活性化されていない触媒を重水素化の反応系で水素ガス或いは重水素ガスと共存させ、触媒の活性化と反応基質の重水素化を同時に行ってもよい。しかしながら、一般式[1]で示される化合物のうち炭素−炭素二重或いは三重結合が含まれているものを重水素化する場合には、反応系に水素ガス或いは重水素ガスを存在させると水添が起こるため、そのようなことが起こらないよう触媒としては予め活性化させておいたものを使用することが好ましい。
予め水素ガス或いは重水素ガスによって活性化された触媒を用いて重水素化を行う場合、重水素化の反応容器の気層部分は、例えば窒素、アルゴン等の不活性ガスにより置換されていてもよい。
反応系に水素ガス或いは重水素ガスを存在させて本発明の重水素化反応を行うには、反応液に直接水素ガス或いは重水素ガスを通過させるか、反応容器の気層部分を水素ガス或いは重水素ガスで置換すればよい。
また、一般式[1]で示される化合物のうち炭素−炭素二重或いは三重結合が含まれていないものを重水素化する場合には、予め活性化された触媒を用いる場合であっても、重水素化反応の反応容器の気層部分を水素或いは重水素で置換して重水素化反応を行うことが出来る。
尚、本発明の重水素化方法に於いては、反応容器を密封状態或いはそれに近い状態となるようにして、反応系が結果的に加圧状態となっていることが好ましい。密封に近い状態とは、例えば所謂連続反応の様に、反応基質が連続的に反応容器に投入され、連続的に生成物が取り出されるような場合等を含む。
尚、本発明の重水素化方法は、反応容器が密封状態となっている場合には、反応系の温度を容易に上昇させることが出来、重水素化を効率よく行うことが可能となる。
また、重水素化反応の反応容器の気層部分を、水素ガス或いは重水素ガスで置換するという方法を用いて、反応基質の重水素化と触媒の活性化を同時に行えば、予め触媒を活性化するという煩雑な工程を必要としないため、炭素−炭素二重結合及び/又は三重結合を含んでいるものを除いた一般式[1]で示される化合物の重水素化を更に効率よく行うことが出来る。
更にまた、予め水素ガス或いは重水素ガスで活性化した触媒を密封状態の重水素化に用いる場合には、重水素化の反応系に水素ガス又は重水素ガスが存在しないので、炭素−炭素二重結合及び/又は三重結合を含むような基質等の一般的に水素ガス等で還元されやすい基質であっても、還元されることなく重水素化のみが進行する。
本発明に於ける、活性化された触媒としては、上記した如きパラジウム触媒、白金触媒、ロジウム触媒、ルテニウム触媒、ニッケル触媒及びコバルト触媒が挙げられ、中でもパラジウム触媒、白金触媒、ロジウム触媒が好ましく、更にはパラジウム触媒及び白金触媒が好ましく、特にパラジウム触媒が好ましい。これら触媒は、単独でも或いは適宜組み合わせて用いても本発明の重水素化方法に有効に使用し得る。
パラジウム触媒としては、パラジウム原子の原子価が通常0〜4価、好ましくは0〜2価、より好ましくは0価のものが挙げられる。
白金触媒としては、白金原子の原子価が通常0〜4価、好ましくは0〜2価、より好ましくは0価のものが挙げられる。
ロジウム触媒としては、ロジウム原子の原子価が通常0又は1価、好ましくは0価のものが挙げられる。
ルテニウム触媒としては、ルテニウム原子の原子価が通常0〜2価、好ましくは0価のものが挙げられる。
ニッケル触媒としては、ニッケル原子の原子価が通常0〜2価、好ましくは0価のものが挙げられる。
コバルト触媒としては、コバルト原子の原子価が通常0又は1価、好ましくは1価のものが挙げられる。
上記した如き触媒は、金属そのものでも、それら金属の酸化物、ハロゲン化物、酢酸塩、或いは配位子が配位しているものでもよく、またそれら金属、金属酸化物、ハロゲン化物、酢酸塩、金属錯体等が種々の担体に担持されてなるものでもよい。
以下、担体に担持されている触媒を「担体担持金属触媒」、担体に担持されていない触媒を「金属触媒」と略記することがある。
本発明の重水素化方法に係る触媒のうち、配位子が配位していてもよい金属触媒の配位子としては、例えば1,5−シクロオクタジエン(COD)、ジベンジリデンアセトン(DBA)、ビピリジン(BPY)、フェナントロリン(PHE)、ベンゾニトリル(PhCN)、イソシアニド(RNC)、トリエチルアルシン(As(Et))、アセチルアセトナト(acac)、例えばジメチルフェニルホスフィン(P(CHPh),ジフェニルホスフィノフェロセン(DPPF),トリメチルホスフィン(P(CH),トリエチルホスフィン(PEt),トリtert−ブチルホスフィン(PBu),トリシクロヘキシルホスフィン(PCy),トリメトキシホスフィン(P(OCH),トリエトキシホスフィン(P(OEt)),トリtert−ブトキシホスフィン(P(OBu)),トリフェニルホスフィン(PPh),1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE),トリフェノキシホスフィン(P(OPh))、o−トリルホスフィン(P(o−tolyl))等の有機ホスフィン配位子等が挙げられる。
パラジウム金属触媒の具体例としては、例えばPd、例えばPd(OH)等の水酸化パラジウム触媒、例えばPdO等の酸化パラジウム触媒、例えばPdBr、PdCl、PdI等のハロゲン化パラジウム触媒、例えばパラジウムアセテート(Pd(OAc)),パラジウムトリフルオロアセテート(Pd(OCOCF)等のパラジウム酢酸塩触媒、例えばPd(RNC)Cl,Pd(acac),ジアセテートビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム[Pd(OAc)(PPh],Pd(PPh,Pd(dba),Pd(NHCl,Pd(CHCN)Cl,ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム[Pd(PhCN)Cl],Pd(dppe)Cl,Pd(dppf)Cl,Pd[PCyCl,Pd(PPhCl,Pd[P(o−tolyl)Cl,Pd(cod)Cl,Pd(PPh)(CHCN)Cl等の配位子に配位されたパラジウム金属錯体触媒等が挙げられる。
白金金属触媒の具体例としては、例えばPt、例えばPtO、PtCl、PtCl、KPtCl等の白金触媒、例えばPtCl(cod)、PtCl(dba)、PtCl(PCy、PtCl(P(OEt)、PtCl(P(OBu)、PtCl(bpy)、PtCl(phe)、Pt(PPh、Pt(cod)、Pt(dba)、Pt(bpy)、Pt(phe)等の、配位子に配位された白金触媒等が挙げられる。
ロジウム金属触媒の具体例としては、例えばRh、例えばRhCl(PPh等の、配位子に配位されたロジウム触媒等が挙げられる。
ルテニウム金属触媒の具体例としては、例えばRu、例えばRuCl(PPh等の、配位子に配位されたルテニウム触媒等が挙げられる。
ニッケル金属触媒の具体例としては、例えばNi、例えばNiCl、NiO等のニッケル触媒、例えばNiCl(dppe)、NiCl(PPh、Ni(PPh、Ni(P(OPh)、Ni(cod)等の、配位子に配位されたニッケル触媒等が挙げられる。
コバルト金属触媒の具体例としては、例えばCo(C){P(OCH等の配位子に配位されたコバルト金属錯体触媒等が挙げられる。
上記した如き触媒が、担体に担持されたものである場合の担体としては、例えばカーボン、アルミナ、シリカゲル、ゼオライト、モレキュラーシーブス、イオン交換樹脂、ポリマー等が挙げられ、中でもカーボンが好ましい。
担体として用いられるイオン交換樹脂としては、本発明の重水素化に悪影響を及ぼさないものであればよく、例えば陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂が挙げられる。
陽イオン交換樹脂としては、例えば弱酸性陽イオン交換樹脂、強酸性陽イオン交換樹脂が挙げられ、陰イオン交換樹脂としては、例えば弱塩基性陰イオン交換樹脂、強塩基性陰イオン交換樹脂等が挙げられる。
イオン交換樹脂は一般に骨格ポリマーとして二官能性モノマーで架橋したポリマーを含んでおり、これに酸性基又は塩基性基が結合され、夫々種々の陽イオン又は陰イオン(対イオン)で交換されている。
弱酸性陽イオン交換樹脂の具体例としては、例えばジビニルベンゼンで架橋したアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルのポリマーを加水分解して得られるもの等が挙げられる。
強酸性陽イオン交換樹脂の具体例としては、例えばスチレン−ジビニルベンゼンのコポリマーをスルホン化したものが挙げられる。
強塩基性陰イオン交換樹脂としては、例えばスチレン−ジビニルベンゼンのコポリマーの芳香環にアミノ基が結合したものが挙げられる。
塩基性陰イオン交換樹脂の塩基性の強さは、結合しているアミノ基が、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、第4級アンモニウム塩になるに従い順に強くなる。
尚、市販のイオン交換樹脂も上記した如きイオン交換樹脂と同様に本発明の重水素化に係る触媒の担体として使用可能である。
また、担体として用いられるポリマーとしては、本発明の重水素化に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、その様なポリマーの例として、例えば下記一般式[2]で示されるモノマーが重合或いは共重合して得られるもの等が挙げられる。
一般式[2]
Figure 0004396522
(式中、Rは水素原子、低級アルキル基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、アルキルオキシカルボニル基、ヒドロキシアルキルオキシカルボニル基、シアノ基又はホルミル基を表し、Rは水素原子、低級アルキル基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、ヒドロキシアルキルオキシカルボニル基、シアノ基又はハロゲン原子をし、Rは水素原子、低級アルキル基、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、置換基を有していてもよいアリール基、脂肪族ヘテロ環基、芳香族ヘテロ環基、ハロゲン原子、アルキルオキシカルボニル基、ヒドロキシアルキルオキシカルボニル基、スルホ基、シアノ基、含シアノアルキル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、アルデヒド基、アミノ基、アミノアルキル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、ヒドロキシアルキル基、また、RとRとが結合し、隣接する−C=C−と一緒になって脂肪族環を形成していてもよい。)
一般式[2]に於いて、R〜Rで示される低級アルキル基としては、直鎖状、分枝状、環状の何れにてもよく、例えば炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
及びRで示されるカルボキシアルキル基としては、例えば上記した如き低級アルキル基の水素原子の一部がカルボキシル基に置換されたもの等が挙げられ、具体的には例えばカルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、カルボキシブチル基、カルボキシペンチル基、カルボキシヘキシル基等が挙げられる。
〜Rで示されるアルキルオキシカルボニル基としては、例えば炭素数2〜11のものが好ましく、具体的には例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ノニルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
〜Rで示されるヒドロキシアルキルオキシカルボニル基としては、上記した如き炭素数2〜11のアルキルオキシカルボニル基の水素原子の一部がヒドロキシル基に置換されたものが挙げられ、具体的には、例えばヒドロキシメチルオキシカルボニル基、ヒドロキシエチルオキシカルボニル基、ヒドロキシプロピルオキシカルボニル基、ヒドロキシブチルオキシカルボニル基、ヒドロキシペンチルオキシカルボニル基、ヒドロキシヘキシルオキシカルボニル基、ヒドロキシヘプチルオキシカルボニル基、ヒドロキシオクチルオキシカルボニル基、ヒドロキシのニルオキシカルボニル基、ヒドロキシデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
及びRで表されるハロゲン原子としては、例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
で表されるハロアルキル基としては、例えばR〜Rで表される上記低級アルキル基がハロゲン化(例えばフッ素化、塩素化、臭素化、ヨウ素化等)された、炭素数1〜6のものが挙げられ、具体的には、例えばクロロメチル基、ブロモメチル基、トリフルオロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロプロピル基、3−ブロモプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、4−クロロブチル基、5−クロロペンチル基、6−クロロヘキシル基等が挙げられる。
置換基を有していてもよいアリール基のアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられ、また、該置換基としては、例えばアミノ基、ヒドロキシル基、低級アルコキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。置換アリール基の具体例としては、例えばアミノフェニル基、トルイジノ基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基、カルボキシフェニル基等が挙げられる。
脂肪族ヘテロ環基としては、例えば5員環又は6員環であり、異性原子として1〜3個の例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいるもの等が好ましく、具体的には、例えばピロリジル−2−オン基、ピペリジル基、ピペリジノ基、ピペラジニル基、モルホリノ基等が挙げられる。
芳香族ヘテロ環基としては、例えば5員環又は6員環であり、異性原子として1〜3個の例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいるもの等が好ましく、具体的には、例えばピリジル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、フラニル基、ピラニル基等が挙げられる。
含シアノアルキル基としては、例えば上記した如き低級アルキル基の水素原子の一部がシアノ基に置換されたものが挙げられ、具体的には、例えばシアノメチル基、2−シアノエチル基、2−シアノプロピル基、3−シアノプロピル基、2−シアノブチル基、4−シアノブチル基、5−シアノペンチル基、6−シアノヘキシル基等が挙げられる。
アシルオキシ基としては、例えば炭素数2〜20のカルボン酸由来のものが挙げられ、具体的には、例えばアセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ノナノイルオキシ基、デカノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
アミノアルキル基としては、上記した如き低級アルキル基の水素原子の一部がアミノ基に置換されたものが挙げられ、具体的には、例えばアミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アミノブチル基、アミノペンチル基、アミノヘキシル基等が挙げられる。
N−アルキルカルバモイル基としては、カルバモイル基の水素原子の一部がアルキル基で置換されたものが挙げられ、具体的には、例えばN−メチルカルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、N−n−プロピルカルバモイル基、N−イソプロピルカルバモイル基、N−n−ブチルカルバモイル基、N−t−ブチルカルバモイル基等が挙げられる。
ヒドロキシアルキル基としては、上記した如き低級アルキル基の水素原子の一部がヒドロキシル基に置換されたものが挙げられ、具体的には、例えばヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基等が挙げられる。
また、RとRとが結合し、隣接する−C=C−と一緒になって脂肪族環を形成している場合の脂肪族環としては、例えば炭素数5〜10の不飽和脂肪族環が挙げられ、環は単環でも多環でもよい。これら環の具体例としては、例えばノルボルネン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロオクテン環、シクロデセン環等が挙げられる。
一般式[2]で示されるモノマーの具体例としては、例えばエチレン,プロピレン,ブチレン,イソブチレン等の炭素数2〜20のエチレン性不飽和脂肪族炭化水素類、例えばスチレン,4−メチルスチレン,4−エチルスチレン,ジビニルベンゼン等の炭素数8〜20のエチレン性不飽和芳香族炭化水素類、例えばギ酸ビニル,酢酸ビニル,プロピオン酸ビニル,酢酸イソプロペニル等の炭素数3〜20のアルケニルエステル類、例えば塩化ビニル,塩化ビニリデン,フッ化ビニリデン,テトラフルオロエチレン等の炭素数2〜20の含ハロゲンエチレン性不飽和化合物類、例えばアクリル酸,メタクリル酸,イタコン酸,マレイン酸,フマル酸,クロトン酸,ビニル酢酸,アリル酢酸,ビニル安息香酸等の炭素数3〜20のエチレン性不飽和カルボン酸類(これら酸類は、例えばナトリウム,カリウム等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等、塩の形になっているものでもよい。)、例えばメタクリル酸メチル,メタクリル酸エチル,メタクリル酸プロピル,メタクリル酸ブチル,メタクリル酸2−エチルヘキシル,アクリル酸メチル,アクリル酸エチル,アクリル酸プロピル,アクリル酸ブチル,アクリル酸2−エチルヘキシル,メタクリル酸ラウリル,アクリル酸ステアリル,イタコン酸メチル,イタコン酸エチル,マレイン酸メチル,マレイン酸エチル,フマル酸メチル,フマル酸エチル、クロトン酸メチル,クロトン酸エチル、3−ブテン酸メチル等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル類、例えばアクリロニトリル,メタクリロニトリル,シアン化アリル等の炭素数3〜20の含シアノエチレン性不飽和化合物類、例えばアクリルアミド,メタクリルアミド等の炭素数3〜20のエチレン性不飽和アミド化合物類、例えばアクロレイン,クロトンアルデヒド等の炭素数3〜20のエチレン性不飽和アルデヒド類、例えばビリルスルホン酸,4−ビニルベンゼンスルホン酸等の炭素数2〜20のエチレン性不飽和スルホン酸類(これら酸類は、例えばナトリウム,カリウム等のアルカリ金属塩等、塩の形になっていているものでもよい。)、例えばビニルアミン,アリルアミン等の炭素数2〜20のエチレン性不飽和脂肪族アミン類、例えばビニルアニリン等の炭素数8〜20のエチレン性不飽和芳香族アミン類、例えばN−ビニルピロリドン,ビニルピペリジン等の炭素数5〜20のエチレン性不飽和脂肪族ヘテロ環状アミン類、例えばアリルアルコール,クロチルアルコール等の3〜20のエチレン性不飽和アルコール類、例えば4−ビニルフェノール等の炭素数8〜20のエチレン性不飽和フェノール類等が挙げられる。
上記した如きポリマー等を担体として使用する場合には、本発明の重水素化により担体自体が重水素化され難いものを使用することが望ましいが、それ自体重水素化される担体に担持された触媒も本発明の重水素化に用いることが出来る。
本発明の重水素化方法に於いては、担体に担持された触媒の中でも、担体担持パラジウム触媒、担体担持白金触媒或いは担体担持ロジウム触媒を用いることが好ましく、その中でも担体担持パラジウム触媒が好ましく、具体的には特にパラジウムカーボンが好ましい。
担体に担持された触媒に於いて、触媒金属であるパラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、ニッケル又はコバルトの割合は、通常全体の1〜99重量%、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは1〜30重量%、更に好ましくは1〜20重量%、特に好ましくは5〜10重量%である。
本発明の重水素化方法に於いて、活性化された触媒或いは活性化されていない触媒の使用量は、それが担体等に担持されているか否かに拘わらず、反応の基質として用いられる一般式[1]で示される化合物に対して、通常所謂触媒量、次いで順に好ましく0.01〜200重量%、0.01〜100重量%、0.01〜50重量%、0.01〜20重量%、0.1〜20重量%、1〜20重量%、10〜20重量%となる量であり、また、該触媒全体に含まれる触媒金属量の上限が、順に好ましく20重量%、10重量%、5重量%、2重量%であり、下限が、順に好ましく0.0005重量%、0.005重量%、0.05重量%、0.5重量%となる量である。
尚、上記一般式[1]で示される化合物を重水素化する際、触媒として上記した如き種々の触媒を2種以上適宜組み合わせて使用することが可能であり、そのような触媒の組合せの使用によって重水素化率が向上する場合もある。例えば、一般式[1]で示される化合物の内、Xがヒドロキシメチレン基である化合物を重水素化する場合の重水素化率が向上するような触媒の組合せとしては、例えばパラジウム触媒と白金触媒、ルテニウム触媒又はロジウム触媒との組合せ、例えば白金触媒とルテニウム触媒又はロジウム触媒との組合せ、例えばルテニウム触媒とロジウム触媒との組合せが挙げられ、中でもパラジウム触媒と白金触媒の組合せが好ましく、それらの一方或いは両方が担体に担持されているものでもよい。好ましい具体例としては、例えばパラジウムカーボンと白金カーボンの組み合わせが挙げられる。
触媒を2種以上組み合わせて使用する場合の触媒使用量は、触媒の合計が上記した如き触媒の使用量となるように設定すればよい。尚、各触媒の使用量の割合は特に限定されないが、例えば上記した如きパラジウムカーボンと白金カーボンを組み合わせて使用する場合には、触媒中のパラジウムの重量が白金の重量に対して通常0.01〜100倍、好ましくは0.1〜10倍、より好ましくは0.2〜5倍となるように触媒の使用量を設定すればよい。
活性化されていない触媒を本発明の反応に用いる場合であって、触媒を活性化させる為に反応系に水素を存在させる際の該水素の使用量は、多すぎると重水素源となる重水素化された溶媒が水素化されたり、重水素源となる重水素の反応系中の割合が小さくなり本発明の重水素化反応に悪影響を及ぼすため、触媒の活性化に必要な程度の量であればよく、その量は、通常触媒に対して1〜20000当量、好ましくは10〜700当量となる量である。
また、触媒を活性化させる為に反応系に重水素を存在させる場合の重水素の使用量は、触媒の活性化に必要な程度の量であればよく、その量は、通常触媒に対して1〜20000当量、好ましくは10〜700当量となる量であるが、該重水素が本発明の重水素源としても使用し得ることから、使用量が多くても問題なく、本発明の重水素化を行うことが出来る。
本発明の重水素化方法の反応温度は、下限が通常10℃から、順により好ましく20℃、40℃、60℃、80℃、110℃、140℃、160℃であり、上限が通常300℃から、順により好ましく200℃、180℃である。
本発明の重水素化方法の反応時間は、通常30分〜72時間、好ましくは1〜48時間、より好ましくは3〜30時間、更に好ましくは6〜24時間である。
本発明の重水素化方法を、重水素源として重水を用い、活性化されていない触媒としてパラジウムカーボン(Pd/C)(Pd含有率10%)を用いた場合を例にとって具体的に説明する。
即ち、例えば、その構造中に炭素−炭素二重結合或いは炭素−炭素三重結合を含まない一般式[1]で示される化合物(基質)1モル及び該基質に対して0.01〜200重量%の活性化されていないPd/Cを、該基質の重水素化可能な水素原子に対して10〜150倍モルの重水素原子が含まれるような量の重水に加え、密封した反応容器の気層部分を水素置換した後、油浴中約110〜200℃で約1〜48時間撹拌反応させる。反応終了後、生成物が重水素化された溶媒に可溶な場合は、反応液を濾過して触媒を除き、濾液を濃縮後、生成物を単離してH−NMR、H−NMR及びMassスペクトル測定して構造解析を行う。
また、生成物が重水素化された溶媒に難溶な場合は、反応液から生成物を単離してからH−NMR、H−NMR及びMassスペクトルを測定して構造解析を行う。尚、生成物の反応液からの単離が困難な場合は、適当な内標準物質を用いて濾液をそのままH−NMRで測定し、生成物の構造解析を行えばよい。
生成物が重水素化された溶媒に難溶な場合に、反応液から生成物を単離するには、例えば生成物が溶解する有機溶媒等により反応液から生成物を抽出し、更に濾過により触媒を除くといった公知の精製方法に従って精製を行えばよい。
次ぎに、本発明の重水素化方法のうち、重水素源として重水を用い、予め活性化された触媒として、水素ガスで活性化されたパラジウムカーボン(Pd含有量10%)を用いた場合を例にとって具体的に説明する。
即ち、例えばその構造中に炭素−炭素二重結合或いは炭素−炭素三重結合を含む一般式[1]で示される化合物(基質)1モル及び該基質に対して0.01〜200重量%の予め水素ガスに接触させて活性化させておいたPd/Cを、該基質の重水素化可能な水素原子に対して10〜150倍モルの重水素原子が含まれるような量の重水に加え、反応容器を密封して気層部分を不活性ガスで置換し、油浴中約110〜200℃で約1〜48時間撹拌反応させる。反応終了後、生成物が重水素化された溶媒に可溶な場合は、反応液を濾過して触媒を除き、濾液を濃縮後、生成物を単離してH−NMR、H−NMR及びMassスペクトル測定して構造解析を行う。
また、生成物が重水素化された溶媒に難溶な場合は、反応液から生成物を単離してからH−NMR、H−NMR及びMassスペクトルを測定して構造解析を行う。尚、生成物の反応液からの単離が困難な場合は、適当な内標準物質を用いて濾液をそのままH−NMRで測定し、生成物の構造解析を行えばよい。尚、反応液から生成物を単離するには、活性化されていない触媒を用いる本発明の重水素化方法に於ける単離方法と同様にしてこれを行えばよい。また、生成物が重水素化された溶媒に難溶な場合である場合には、例えば生成物が溶解する有機溶媒等を用いて反応液から生成物を抽出し、更にこれを濾過することにより触媒を除くといった公知の精製方法に従って精製を行えばよい。
また、本発明の重水素化方法の中でも、例えばパラジウムカーボンと白金カーボンを組み合わせて使用することによって、重水素化率が通常60%以上、順に好ましく70%以上、78%以上、80%以上、85%以上、88%以上、89%以上、90%以上であるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−オールが容易に得られる。このようにして得られた重水素化トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−オールは、例えば光ファイバー用ポリマー用の重水素化メタクリル酸エステルの原料として非常に有用な化合物である。
上記した如く、活性化された触媒として、予め活性化させておいた触媒を用い、且つ重水素源として重水素化された溶媒を用いて本発明の重水素化方法を行えば、一般式[1]で示される化合物が炭素−炭素二重結合或いは炭素−炭素三重結合を有している場合でも、これら二重、三重結合が水添により還元されることなく、また、該化合物が例えばニトロ基、シアノ基等の置換基を有している場合でも、それら置換基は還元されることなく、目的とする重水素化のみが行われる。
尚、一般式[1]で示される化合物が、炭素−炭素二重或いは三重結合を有しているものであって、それら結合が本発明の重水素化反応に於いて重合し易い場合には、重合反応を抑制するために、重水素化反応の反応系に例えば重合禁止剤等を添加してもよい。
上記した如く、一般式[1]で示される化合物を、活性化された触媒の共存下、重水素源と反応させるという本発明の重水素化方法によれば、カルボニル基を有する化合物及び第2アルコール化合物を、それら化合物中の二重、三重結合の有無、置換基等の有無やその種類に拘わらず、効率よく重水素化(ジュウテリウム化及びトリチウム化)することが可能となる。
また、本発明の重水素化方法によれば、特に酸或いは塩基条件にすることなく重水素化反応を行うことができることから、作業環境が向上するだけでなく、高温や酸或いは塩基条件で分解し易い基質の重水素化にも応用が可能となった。
更にまた、本発明の重水素化方法によれば、一般式[1]で示される化合物のXがカルボニル基である化合物に於いて、カルボニル基に近い位置に存在する水素原子だけでなく、カルボニル基から遠い位置に存在する水素原子をも効率的に重水素化することが可能となる。
また、本発明の重水素化方法によれば、一般式[1]で示される化合物のXがヒドロキシメチレン基である化合物に於いて、ヒドロキシル基から遠い位置に存在する水素原子だけでなく、ヒドロキシル基に近い位置に存在する水素原子をも効率的に重水素化し得る。
また、本発明の重水素化方法によれば、一般式[1]で示される化合物の中でも特にトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−オールについては、従来法では得ることの出来なかった重水素化率の高いものを得ることが可能となる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより何等限定されるものではない。
尚、実施例ではパラジウムカーボン(Pd/C)はPd含量10%、白金カーボン(Pt/C)はPt含量5%、ルテニウムカーボン(Ru/C)はRu含量5%、ロジウムカーボン(Rh/C)はRh含量5%のものを使用した。
4−ヘプタノン(基質)500mgとパラジウムカーボン50mgとを重水(DO)17mLに懸濁させ、反応系を水素置換した後、油浴中160℃で約24時間反応させた。反応終了後、反応液をエーテルで抽出して得られた抽出液から触媒を濾去し、濾液を減圧濃縮した後、得られた化合物のH−NMR、H−NMR及びMassスペクトルを測定して構造解析を行ったところ、目的物の単離収率は46%であり、基質の重水素化率は97%であった。
アセトン(基質)500mgとパラジウムカーボン50mgとを重水17mLに懸濁させ、反応系を水素置換した後、油浴中110℃で約24時間反応させた。反応終了後、反応液を濾過し、触媒を除去後、内部標準物質としてジオキサンを加えH−NMRを測定し、構造解析を行ったところ、重水素化率は99%であった。
実施例3〜15
以下の表1に示した重水素化の対象となる基質及び触媒を用い、表1に示した反応温度で行った以外は実施例1と同様にして重水素化反応を行った。得られた化合物の単離収率及び重水素化率を表1に示す。尚、表1に於いて、2−ブタノン、2−ノルボルナノン、トリシクロ[5.2.1.02, ]デカン−8−オン、ノルボルネオール、トリシクロ[5.2.1.02,6]−3−デセン−8−オール((ヒドロキシジシクロペンタジエン)及びシクロヘキサノールの重水素化率は、下記各化学式に付した数字の位置の重水素化率を示し、それ以外の化合物の重水素化率は、重水素化され得る水素原子全体の平均重水素化率を表す。また、表1に於いて、単離収率が−となっているものは、重水素化の後、目的物を単離せずに重水素化率を測定したことを示す。
<2−ブタノン>
Figure 0004396522
<2−ノルボルナノン>
Figure 0004396522
<トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−オン>
Figure 0004396522
<ノルボルネオール>
Figure 0004396522
<トリシクロ[5.2.1.02,6]−3−デセン−8−オール(又はヒドロキシジシクロペンタジエン)>
Figure 0004396522
<シクロヘキサノール>
Figure 0004396522
Figure 0004396522
トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−オール(基質)500mgとパラジウムカーボン50mgとを重水17mLに懸濁させ、反応系を水素置換した後、油浴中180℃で約24時間反応させた。反応終了後、反応液をエーテルで抽出して触媒を濾過し、濾液を減圧濃縮した後、得られた化合物のH−NMR、H−NMR及びMassスペクトルを測定して構造解析を行ったところ、目的物の単離収率は60%であり、重水素化率は45%であった。結果を表2に示す。表2に於いて、金属量(重量%)とは、基質に対する担体担持触媒中に存在する触媒金属量の割合であり、表2の重水素化率は重水素化され得る水素原子全体の平均重水素化率を表す。但し、(1)は下記化学式の(1)を付した位置の重水素化率を示し、その他は(1)以外の部分の平均重水素化率を表す。
<トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−オール>
Figure 0004396522
実施例17〜26
表2に示した触媒を表2に示した量使用し、表2に示した反応時間反応させた以外は実施例16と同様にしてトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−オールの重水素化を行った。結果を表2に併せて示す。
Figure 0004396522
パラジウムカーボンを重水17mLに懸濁させ、水素置換した後、室温で3h撹拌し、パラジウムカーボンを活性化した。活性化終了後、メタクリル酸ナトリウム(基質)500mgを投入し、反応系を窒素置換した後、油浴中180℃で約24時間反応させた。反応終了後、反応液を濾過して触媒を除去し、減圧濃縮した後、得られた化合物のH−NMR,H−NMRを測定して構造解析を行ったところ、基質の単離収率は100%であり、重水素化率は99%以上であった。結果を表3に示す。
実施例27〜32
以下の表3に示した重水素化の対象となる基質及び触媒を用い、表3に示した反応温度で行った以外は実施例26と同様にして重水素化反応を行った。得られた化合物の単離収率及び重水素化率を表3に併せて示す。尚、表3に於いて、単離収率の−は、表1のそれと同様の意味である。
Figure 0004396522
比較例1.
メタクリル酸を基質とし、触媒として活性化されていないパラジウムカーボンを使用した以外は実施例26と同様に重水素化を行い、得られた化合物のH−NMR,H−NMRを測定して構造解析を行ったところ、基質の重水素化率は75%であった。
比較例2.
メタクリル酸を基質とし、重水素源として重水素ガスを用いた以外は実施例26と同様に重水素化を行い、得られた化合物のH−NMR,H−NMRを測定して構造解析を行ったところ、重水素化はされているものの、メタクリル酸の炭素−炭素二重結合が還元されていることが確認された。
実施例1〜32より明らかなように、本発明の重水素化方法によれば、カルボニル基を有する化合物或いはヒドロキシル基を有する化合物を効率的に重水素化し得ることが分かる。
実施例1〜25より明らかなように、炭素−炭素二重結合を含まない化合物を重水素化する場合には、反応系に於いて触媒の活性化と重水素化反応を効率よく同時に行うことが出来る。
実施例24及び25からは、触媒を組み合わせて使用しても重水素化し得ることが分かる。
実施例24では、パラジウムカーボンと白金カーボンを組合せた触媒を使用しており、これは基質に対する触媒金属量が2重量%であるにも拘わらず、実施例21及び22のようにパラジウムカーボン単独の触媒であって触媒金属量が4重量%或いは5重量%と比較的多い触媒を使用した実施例と比べても明らかに重水素化率が高いことが分かる。
更に、実施例21と25の結果を比較すると、基質に対する触媒金属量が4重量%と同じであっても、触媒としてパラジウムカーボンのみを使用して重水素化を行った実施例21よりパラジウムカーボンと白金カーボンとを組み合わせた混合触媒を用いて重水素化を行った実施例25の方が、重水素化率が高いことが判る。
また、実施例26〜32と比較例2を比較することにより、本発明の重水素化方法によれば、炭素−炭素二重結合或いは三重結合を含むカルボニル化合物又は第2アルコールでも、該二重、三重結合が還元されることなく、目的とする重水素化のみが進行することが分かる。
実施例32と比較例1とを比較すれば明らかなように、活性化された触媒を使用するという本発明の重水素化方法によれば、活性化されていない触媒を使用した場合に比べ、重水素化率が高いことが分かる。
また、実施例1〜32から明らかなように、本発明の重水素化方法によれば、反応液を塩基性条件にすることなく効率的に重水素化し得ることが分かる。
産業上の利用の可能性
活性化された触媒の共存下、一般式[1]で示される化合物を重水素源と反応させるという本発明の重水素化(ジュウテリウム化及びトリチウム化)方法によれば、従来塩基条件下等の過酷な条件下で行われていた重水素化を中性条件で行うことが出来ることから、作業環境が著しく向上する。また、本発明の重水素化方法によれば、一般式[1]で示される化合物が炭素−炭素二重結合或いは炭素−炭素三重結合を含むものであっても、該二重結合、三重結合を還元することなく目的とする重水素化を効率的に行うことが可能となる。

Claims (12)

  1. 一般式[1]
    Figure 0004396522
    (Rは、炭素−炭素二重結合及び/又は三重結合を有していてもよいアルキル基又はアラルキル基を表し、Rは、炭素−炭素二重結合及び/又は三重結合を有していてもよいアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基又はヒドロキシル基を表し、Xはカルボニル基又はヒドロキシメチレン基を表す。また、RとRとが結合してXに含まれる炭素原子と共に脂肪族環を形成していてもよい。但し、Xがヒドロキシメチレン基の場合には、Rは、炭素−炭素二重結合及び/又は三重結合を有していてもよいアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。)で示される化合物を、活性化された、パラジウム触媒、白金触媒、ロジウム触媒、ルテニウム触媒、ニッケル触媒及びコバルト触媒より選ばれる触媒の共存下、中性条件下で、重水素化された溶媒(過酸化重水素(D )を除く)と反応させることを特徴とする、一般式[1]で示される化合物の重水素化方法(但し、一般式[1]で示される化合物が少なくとも1つの炭素−炭素二重結合又は/及び三重結合を有する場合は、上記活性化された触媒は予め活性化されたものである。)。
  2. 一般式[1]に於いて、Xがカルボニル基である請求項1に記載の重水素化方法。
  3. 一般式[1]に於いて、Xがヒドロキシメチレン基である請求項1に記載の重水素化方法。
  4. 重水素化された溶媒が、重水(D O)、重アルコール類、重カルボン酸類、重ケトン類、重ジメチルスルホキシド及びトリチウム水(T O)から選ばれるものである、請求項1に記載の重水素化方法。
  5. 重水素化された溶媒が、重水(DO)である請求項1に記載の重水素化方法。
  6. 活性化された、パラジウム触媒、白金触媒、ロジウム触媒、ルテニウム触媒、ニッケル触媒及びコバルト触媒より選ばれる触媒が、活性化されていない、パラジウム触媒、白金触媒、ロジウム触媒、ルテニウム触媒、ニッケル触媒及びコバルト触媒より選ばれる触媒を水素ガス又は重水素ガスと接触させて活性化させたものである請求項1〜5の何れかに記載の重水素化方法。
  7. 活性化されていない、パラジウム触媒、白金触媒、ロジウム触媒、ルテニウム触媒、ニッケル触媒及びコバルト触媒より選ばれる触媒と水素ガス又は重水素ガスとの接触を、重水素化の反応系内で行うことを特徴とする請求項6に記載の重水素化方法。
  8. 活性化された、パラジウム触媒、白金触媒、ロジウム触媒、ルテニウム触媒、ニッケル触媒及びコバルト触媒より選ばれる触媒が、活性化されたパラジウム触媒を含んで成る触媒である請求項1〜7の何れかに記載の重水素化方法。
  9. 活性化されたパラジウム触媒が、活性化されたパラジウムカーボンである請求項8に記載の重水素化方法。
  10. 活性化されたパラジウム触媒を含んで成る触媒が、活性化されたパラジウム触媒と活性化された白金触媒とから成る触媒である請求項8に記載の重水素化方法。
  11. 一般式[1]で示される化合物がトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-オールであり、活性化された、パラジウム触媒、白金触媒、ロジウム触媒、ルテニウム触媒、ニッケル触媒及びコバルト触媒より選ばれる触媒がパラジウムカーボンと白金カーボンとから成る触媒である請求項1に記載の重水素化方法。
  12. 重水素化率が60%以上であるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-オール。
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