JP4395817B2 - 表面サイズ剤及び塗工紙の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面サイズ剤及び塗工紙の製造方法に関し、更に詳細には、紙のサイズ性に優れ、再湿化された場合の紙表面の粘着性が低く、かつ塗工液の発泡が少ない表面サイズ剤、及び該表面サイズ剤を紙に塗工してなる塗工紙の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
紙のサイズ性、印刷適性を向上させることを目的とする表面サイズ剤としては、従来から、スチレン−無水マレイン酸系共重合体、スチレン−アクリル酸系共重合体、(ジ)イソブチレン−マレイン酸系共重合体の水溶性塩が知られている。
【0003】
しかし、これら従来の表面サイズ剤を使用して表面塗工すると塗工液の発泡が多くなり、これが泡粕になり、塗工機のロールを汚す等の操業上のトラブルを起こすので、発泡を抑えるために消泡剤を多量に使用する必要がある。その結果として、サイズ効果の低下及びハジキ(後で塗工した場合その部分が塗工されない現象)等の問題を引き起こすので、操業面で満足できなかった。
【0004】
特開昭56−63098号公報では、スチレン−メタクリル酸を有機溶剤中で溶液重合するか、又はラウリル硫酸ナトリウムを乳化剤として用いて水系で乳化重合又は懸濁重合することにより得られた共重合体のアルカリ塩からなる水溶液もしくは水分散液を含有し、塗工時の発泡が少なく、サイズ性能が良好な表面サイズ剤が提案されている。前記表面サイズ剤は、塗工時の発泡がそれまでの表面サイズ剤より少なく、かなり良好なサイズ効果も得られるものの、未だ満足できるものではなかった。
【0005】
又、一般的に、表面サイズ剤は、酸化澱粉及びアクリルアミド系樹脂等の表面紙力剤と併用して使用されるケースが多い。この場合、表面紙力剤を単独で使用する場合と比較して、サイズ性は向上するが、紙が再湿化されると紙表面の粘着性が増加してしまう。故に、湿度の高い条件下に置かれた場合に、紙同士が付着してしまうブロッキング、及び印刷時の湿し水により再湿化され、紙表面の微細繊維(紙粉)がブランケットに張り付いてしまうブランケット汚れ等の問題を起こすケースがある。
【0006】
したがって、印刷工程における紙粉発生を防止する上で、優れたサイズ性向上効果を有すると同時に、再湿化された場合における紙表面の粘着性が低い表面サイズ剤の出現が待たれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、紙のサイズ性に優れ、再湿化された場合の紙表面の粘着性が低く、かつ塗工液の発泡が少ない表面サイズ剤を提供すること、及び該表面サイズ剤を紙に塗工する塗工紙の製造方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、前記課題を解決するための本発明は、モノマー単位として、疎水性モノマー(a)35〜75重量%と、その一部又は全部が塩を形成してなるアニオン性モノマー(b)15〜55重量%と、ノニオン性N−置換(メタ)アクリルアミド(c)5〜20重量%とを含有してなる水溶性共重合体塩を含有することを特徴とする表面サイズ剤であり、
本発明の態様においては、前記ノニオン性N−置換(メタ)アクリルアミド(c)が、下記の式で示されるN−置換モノアルキル(メタ)アクリルアミドであり、
【0009】
【化2】
(ただし、式中、R1は水素原子、又はメチル基を示し、R2は炭素数4以上のアルキル基を示す。)
他の本発明は、前記表面サイズ剤を含有してなる塗工液を紙に塗工することを特徴とする塗工紙の製造方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明における水溶性共重合体塩を構成するモノマー単位としての疎水性モノマー(a)としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、及びジビニルベンゼン等のスチレン類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類、マレイン酸及びフマル酸等の不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステル類、並びに、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル等のビニルエステル類等が挙げられる。
【0011】
前記水溶性共重合体塩においては、モノマー単位として、これらの1種もしくは2種以上が含有されていても良い。
【0012】
かかる疎水性モノマー(a)のうち、スチレン類及びアルキル(メタ)アクリレート類がサイズ性向上効果の面で特に好ましい。アルキル(メタ)アクリレートの中でもアルキル基の炭素数1から6のものが好ましい。
【0013】
本発明における水溶性共重合体塩を構成するモノマー単位としてのアニオン性モノマー(b)としては、カルボキシル基、スルホン酸基、及び燐酸エステル基等のアニオン性基を有するモノマーを挙げることができる。ここでアニオン性基は、後述するアルカリ化合物と塩を形成する基であると言い換えることができる。
【0014】
前記アニオン性モノマー(b)としては、具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、及びシトラコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸類、並びにマレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノブチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、及びイタコン酸モノブチル等のα,β−不飽和ジカルボン酸半エステル類等のカルボキシル基含有モノマー、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、及びスルホン化スチレン等のスルホン酸基含有モノマー、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのリン酸エステル等のリン酸エステル基含有モノマー等、並びにこれらのアルカリ化合物による塩が挙げられる。なお、本発明における水溶性共重合体塩中のアニオン性モノマー(b)は、重合体中でその一部又は全部が、アルカリ化合物による塩となっている。
【0015】
前記水溶性共重合体塩においては、モノマー単位として、これらの1種又は2種以上が併用されていても良い。
【0016】
かかるアニオン性モノマー(b)のうち、α、β−不飽和モノカルボン酸類及びα、β−不飽和ジカルボン酸半エステル類がサイズ効果向上効果及び発泡性が低いという面で特に好ましい。
【0017】
本発明における水溶性共重合体塩を構成するモノマー単位としてのノニオン性N−置換(メタ)アクリルアミド(c)としては、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ターシャリーブチル(メタ)アクリルアミド、N−ラウリル(メタ)アクリルアミド、N−ターシャリーオクチル(メタ)アクリルアミド、及びN−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド等のN−置換モノアルキル(メタ)アクリルアミド類、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジターシャリーブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジラウリル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジターシャリーオクチル(メタ)アクリルアミド、及びN,N−ジシクロヘキシル(メタ)アクリルアミド等のN−置換ジアルキル(メタ)アクリルアミド類、並びにジアセトンアクリルアミド等を挙げることができる。
【0018】
前記水溶性共重合体塩においては、モノマー単位として、これらの1種又は2種以上が含有されていても良い。かかるノニオン性N−置換(メタ)アクリルアミド(c)のうち、アルキル基の炭素数が4以上、好ましくは4〜12のモノアルキル(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0019】
モノマー単位としての、上記疎水性モノマー(a)とアニオン性モノマー(b)とノニオン性N−置換(メタ)アクリルアミド(c)の組成比は、
(a)疎水性モノマー 35〜75重量%
(b)アニオン性モノマー 15〜55重量%
(c)ノニオン性N−置換(メタ)アクリルアミド 5〜20重量%
であり、前記組成を逸脱する場合は、サイズ効果の向上が見られなかったり、この表面サイズ剤を含有した塗工液を紙に塗工した時の発泡が多かったりする等の問題が起こることがある。
【0020】
本発明では、得られる表面サイズ剤が本発明の目的を逸脱せず、しかもその効果を保持しうる限度において、水溶性共重合体塩中に、必要により、前記疎水性モノマー(a)、アニオン性モノマー(b)及び ノニオン性N−置換(メタ)アクリルアミド(c)と共重合可能なモノマーが、モノマー単位として含有されていても良い。
【0021】
このようなモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド及びビニルピロリドン等のノニオン性モノマー、並びに(モノ−又はジ−アルキル)アミノアルキル(メタ)アクリレート、(モノ−又はジ−アルキル)アミノヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート、(モノ−又はジ−アルキル)アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール及びジアリルアミン等のカチオン性モノマーを挙げることができる。その使用量は、得られる水溶性共重合体塩含有のサイズ剤がそのサイズ性能を低下させない範囲であればよく、具体的には通常10重量%以下、好ましくは多くても5重量%である。
【0022】
本発明における水溶性共重合体塩は、従来から公知の重合方法により製造されることができ、例えば有機溶剤を使用して重合する溶液重合、溶剤を使用しないで重合するバルク重合、低分子系あるいは高分子系乳化剤を用いて水系で重合を行なう乳化重合等が適用できる。
【0023】
前記疎水性モノマー(a)、アニオン性基が塩になっているアニオン性モノマー(b)及びノニオン性N−置換(メタ)アクリルアミド(c)を重合させると水溶性共重合体塩を得ることができる。
【0024】
前記疎水性モノマー(a)、アニオン性基が塩になっていないアニオン性モノマー(b)及びノニオン性N−置換(メタ)アクリルアミド(c)を重合させると共重合体を得ることができ、前記共重合体をアルカリ化合物で中和することにより、水溶性共重合体塩を得ることができる。
【0025】
中和反応に用いるアルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、アンモニア、並びにメチルアミン及びジメチルアミン等のアミン塩基が使用可能である。
【0026】
これらのアルカリ化合物の使用量は、重合に使用するアニオン性モノマー(b)のアニオン性基の当量即ちアニオン当量に対して、0.6〜1当量が好ましい。アルカリ化合物の使用量が0.6当量未満のときは、十分な水溶性を有する共重合体塩が得られず、サイズ性向上効果に劣る場合があるので、好ましくない。1当量を越えた場合には、それ以上の水溶性の向上は見られず、効率的ではない。
【0027】
上記モノマーを添加する方法としては、全てのモノマーを反応容器に一括で仕込んで重合する一括添加重合方法、モノマーの一部又は全部を何回かに分割して反応容器に添加して重合する分割添加重合方法、及びモノマーの一部又は全部を反応容器に連続的に滴下しながら重合する連続滴下重合方法等の何れかを用いることができる。
【0028】
重合時のモノマー濃度は、通常15〜50重量%である。15重量%未満のモノマー濃度で重合し、濃縮操作により、15重量%以上の濃度の共重合体を得ることも可能であるが、経済性の点から好ましくはない。又、50重量%を超えるモノマー濃度で重合する場合は、重合熱の制御が困難となる。重合反応温度は、通常40〜120℃、好ましくは50〜100℃であり、反応時間は、1〜20時間である。又、共重合体の中和反応においては、通常、反応温度が60〜100℃、反応時間が0.5〜4時間である。
【0029】
本発明の表面サイズ剤を製造するにあたって使用する重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩、ターシャリーブチルハイドロパーオキシド等の過酸化物、これらの過硫酸塩又は過酸化物と還元剤との組合せによるレドックス系重合触媒、並びに2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジンジヒドロクロリド等のアゾ系触媒を挙げることができるが、これらに特に限定されることはなく、公知慣用のものも用いられる。これらの重合開始剤は、2種以上併用してもよい。
【0030】
重合開始剤の使用量は、本発明に使用するモノマーの合計量に対して、通常0.01〜5モル%である。又 、重合開始剤は、モノマーとともに反応容器に一括で仕込んでもよく、連続滴下してもよい。
【0031】
又 本発明の表面サイズ剤の製造にあたって、公知の連鎖移動剤が使用可能であり、その連鎖移動剤として、例えばn−オクチルメルカプタン、ターシャリードデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン系化合物、並びにチオグリコール酸誘導体、メルカプトプロピオン酸誘導体、メルカプトエタノール、チオリンゴ酸、及びチオサリチル酸等のメルカプタン誘導体等が挙げられる。
【0032】
これらの連鎖移動剤は、モノマーとともに反応容器に一括で仕込んでもよく、連続滴下してもよい。これらの連鎖移動剤は、2種以上併用してもよい。連鎖移動剤の使用量は、本発明に使用するモノマーの合計量に対して、0.01〜2重量%の範囲が好ましい。
【0033】
前記乳化重合時に使用する乳化剤は、特に限定しないが、公知の乳化剤及び分散剤が使用でき、例えば低分子界面活性剤、重合性基を有する界面活性剤及び高分子分散剤が挙げられる。
【0034】
前記低分子界面活性剤としては、通常、乳化重合に適用できるものが使用可能であり、ノニオン性、アニオン性及び両性低分子界面活性剤が使用できる。
【0035】
ノニオン性低分子界面活性剤としては、例えばポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコールグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、及びポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコール等などが挙げられる。
【0036】
本発明においては、前記ノニオン性低分子界面活性剤の1種を単独で使用することもできるし、又 、2種以上を併用することもできる。
【0037】
アニオン性低分子界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンモノスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、及びポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等の化合物のリン酸エステル塩、スルホン酸塩、コハク酸エステル塩、並びにスルホコハク酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、アルケニルコハク酸塩、ロジン塩、強化ロジン塩、並びにヘキシルジフェニルエーテルジスルホン酸、デシルジフェニルエーテルジスルホン酸、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸、及びヘキサデシルジフェニルエーテルジスルホン酸等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物、並びに前記化合物の塩を挙げることができる。前記塩としては、ナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、並びにアミン塩等を例示できる。
【0038】
本発明においては、前記アニオン性低分子界面活性剤を一種単独で使用することもできるし、又、二種以上併用することもできる。
【0039】
両性低分子界面活性剤としては、アニオン性基とカチオン性基とを有する低分子界面活性剤、及び前記低分子界面活性剤においてアニオン性基がナトリウム塩等のアルカリ金属塩又はアミン塩になっているもの等を挙げることができる。本発明においては、前記低分子界面活性剤を一種単独で使用することもでき、又、二種以上使用することもできる。
【0040】
重合性基を有する界面活性剤は、一般に反応性乳化剤と称され、分子中に疎水基、親水基及び重合性基を有する化合物を挙げることができる。
【0041】
前記重合性基は、例えば、(メタ)アリル基、1−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、イソプロペニル基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等の炭素−炭素二重結合を有する官能基を含む。
【0042】
重合性基を有する界面活性剤としては、通常乳化重合に適用できるものが使用可能であり、特に限定されるものではないが、具体例として分子中に前記重合性基を一つ以上有する、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアラルキルエーテル、及びポリオキシアルキレンフェニルエーテル等の重合性基含有ポリオキシアルキレンエーテル系化合物、並びにポリオキシアルキレンモノスチリルフェニルエーテル及びポリオキシアルキレンジスチリルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル系化合物を挙げることができる。
【0043】
重合性基を有する界面活性剤としては、他に、前記重合性基含有ポリオキシアルキレンエーテル系化合物及び前記ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル系化合物から誘導されるスルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩及びスルホコハク酸エステル塩、前記重合性基含有ポリオキシアルキレンエーテル化合物から誘導される脂肪族カルボン酸塩及び芳香族カルボン酸塩、酸性リン酸(メタ)アクリル酸エステル系化合物、並びにロジン−グリシジル(メタ)アクリレート系化合物等を例示できる。
【0044】
本発明においては、前記重合性基を有する界面活性剤を一種単独で使用することもできるし、又その二種以上を併用することもできる。
【0045】
前記高分子分散剤としては、特に限定しないが、基本的には疎水性基、非イオン性極性基及び/又はイオン性基をもつ合成高分子、並びに一般の天然高分子分散剤が使用できる。
【0046】
合成高分子の一例を挙げれば、ポリビニルアルコール及びその変成物、アニオン性スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体の部分又は完全中和物、アニオン性又はカチオン性の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、及び(メタ)アクリルアミド系共重合体を例示することができる。
【0047】
天然高分子乳化剤として、例えばカゼイン、レシチン、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、澱粉及び加工澱粉などが挙げられる。
【0048】
本発明においては、前記高分子分散剤を一種単独で使用することもできるし、又、その二種以上を併用することもできる。
【0049】
本発明においては、乳化剤として、上記低分子界面活性剤、重合性基を有する界面活性剤及び高分子分散剤の何れか又は2つ以上を使用することができる。
【0050】
前記乳化剤の中では、エマルションの安定性の観点から低分子界面活性剤が好ましく、特にノニオン性低分子界面活性剤及びアニオン性低分子界面活性剤が好ましい。そして、低発泡性に優れた表面サイズ剤が得られる点からは、重合性基を有する界面活性剤及び高分子分散剤が好ましい。
【0051】
本発明の表面サイズ剤は、前記した重合によって得られる水溶性共重合体塩を含有する水溶液、あるいは前記した重合によって得られる共重合体をアルカリ化合物で中和して得られる水溶性共重合体塩含有の水溶液として使用することができる。
【0052】
本発明の表面サイズ剤は、通常、固形分濃度が15〜50重量%、固形分濃度が15重量%における粘度(ブルックフィールド回転粘度計:25℃)が10〜1,000cps、pHが6〜10に調整されるのが好ましい。
【0053】
本発明の表面サイズ剤を紙に塗工する際の塗工液における前記表面サイズ剤の濃度は、前記水溶性共重合体塩の固形分濃度に換算して通常0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜2重量%である。又、塗工温度は、20〜80℃の範囲が好ましい。該表面サイズ剤の塗工量は、原紙のサイズ度及びその他の要素を勘案して適宜設定することができるが、通常は固形分で、0.01〜1g/m2、好ましくは、0.01〜0.1g/m2である。
【0054】
本発明の表面サイズ剤を塗工する際に、酸化澱粉、燐酸エステル化澱粉、酵素変性澱粉、及びカチオン化澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース等のセルロース類、並びにポリビニルアルコール類、ポリアクリルアミド類、及びアルギン酸ソーダ等の水溶性高分子を塗工液に混合して使用することもできる。また、他の表面サイズ剤、防滑剤、防腐剤、防錆剤、消泡剤、粘度調整剤、染料、及び顔料等の添加物を併用してもかまわない。
【0055】
本発明の表面サイズ剤の適用される原紙に使用されるパルプとしては、クラフトパルプ及びサルファイトパルプなどの晒または未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプ及びサーモメカニカルパルプなどの晒または未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、並びに段ボール古紙及び脱墨古紙などの古紙パルプを挙げることができる。
【0056】
原紙を得るために、填料、染料、酸性抄紙用ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー系またはアルケニルコハク酸無水物系中性抄紙用サイズ剤、中性抄紙用ロジン系サイズ剤等のサイズ剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、消泡剤などの添加物も、各々紙種に要求される物性を発現するために、必要に応じて使用してもよい。填料としては、クレー、タルク、酸化チタン、重質または軽質炭酸カルシウム等が挙げられる。これらを単独で使用してもよく、または2種以上併用して用いてもよい。
【0057】
前記塗工液を前記原紙に塗工するための塗工機としては、サイズプレス、フィルムプレス、ゲートロールコーター、シムサイザー、ブレードコーター、キャレンダー、バーコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、及びカーテンコーター等を用いることができる。また、前記塗工液は、又、スプレー塗工機により前記原紙表面に塗工することもできる。
【0058】
本発明の表面サイズ剤を前記原紙に塗工して得ることができるサイジング紙としては、PPC用紙、インクジェット記録用紙、レーザープリンター用紙、フォーム用紙、熱転写用紙、及び感熱記録用紙等の記録用紙、アート紙、キェストコート紙、及び上質コート紙等のコート紙、クラフト紙及び純白ロール紙等の包装用紙、ノート用紙、書籍用紙、印刷用紙、及び新聞用紙等の洋紙、マニラボール、白ボール、及びチップボール等の紙器用板紙、並びにライナー等の板紙が挙げられる。
【0059】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明する。部、%は、特に断りがない限り、いずれも重量基準による。又 、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0060】
(実施例1)
<表面サイズ剤の合成>
攪拌機、温度計、還流冷却管及び窒素導入管を付けた1リットルの四つ口フラスコに水507.5部、スチレン(疎水性モノマー(a))61.4部(50重量%)、80%メタクリル酸水溶液(アニオン性モノマー(b))61.4部(40重量%)、N−イソプロピルアクリルアミド(ノニオン性N−置換(メタ)アクリルアミド(c))12.3部(10重量%)、n−ドデシルメルカプタン0.65部、47%ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム0.68部(疎水性モノマー(a)、アニオン性モノマー(b)、及びノニオン性N−置換(メタ)アクリルアミド(c)の合計量100重量部に対し0.3重量部)を仕込み、70℃に昇温した。次いで、反応系内の酸素を充分に窒素ガスにて除去した後に、過硫酸アンモニウム2.9部を加えた。20分後、反応系内の温度が80℃まで昇温し、更に80℃の温度で2時間反応させた。その後、水286.0部と48.5%水酸化カリウム水溶液65.0部(中和当量0.9)とを加え、pH9.4、固形分濃度15.1%、粘度50cpsの表面サイズ剤を得た。
【0061】
(実施例2〜8、比較例1〜10)
表1のように、疎水性モノマー(a)(モノマー(a))成分、アニオン性モノマー(b)(モノマー(b))成分、ノニオン性N−置換(メタ)アクリルアミド(c)(モノマー(c))成分の種類、量を変えた以外は、実施例1と同様な操作を行い、表面サイズ剤を得た。表1に、各表面サイズ剤におけるモノマー成分及び物性を示す。
【0062】
【表1】
St:スチレン
MMA:メチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
Nass:スチレンスルホン酸ナトリウム
NIPAM:イソプロピルアクリルアミド
DAAM:ジアセトンアクリルアミド
Nocta:t−オクチルアクリルアミド
AAm:アクリルアミド
C12DP:ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム
DB:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
SDS:ドデシルスルホン酸ナトリウム
MS−60:アントックス MS−60(商品名)(反応性乳化剤、日本乳化剤(株)製)
当量:アニオン性モノマー(b)のアニオン性基に対する当量を示す。
【0063】
<評価>
前記実施例1〜7及び比較例1〜10で得られた表面サイズ剤2.7部、アクリルアミド系の表面紙力剤ST−481H(日本PMC(株)製:固形分濃度30%)13.3部に、水84部を加え希釈し、前記表面サイズ剤及びST−481Hの固形分濃度がそれぞれ0.4%及び4%の塗工液を調整した。
【0064】
この塗工液を未塗工の新聞用紙(坪量45g/m2)に、No.3バーコーターを用いて片面塗工し(表面サイズ剤とST−481Hの固形分塗工量は、それぞれ0.025g/m2及び0.25g/m2)、ドラムドライヤー(80℃、50秒)にて乾燥した。乾燥後、20℃、相対湿度65%の恒温恒湿室中で24時間調湿した。その後、評価試験に供した。比較として、表面紙力剤ST−481H単独(表面サイズ剤不使用)の評価を行なった(比較例11)。結果を表2に示す。
【0065】
塗工紙の評価方法を以下に示す。
<サイズ性の評価>
ドロップテスト :
J.TAPPI 33(水2μl)の試験方法に準じて行った。
ドロップテストの数値が大きい程、紙への吸水性が低く、すなわちサイズ性に優れていることを示す。
【0066】
<再湿化時の紙表面の粘着性>
接着性 :
塗工紙を横3cm、縦10cmの幅に裁断し、試験片各2枚を作成した。この2枚の試験片を水に3秒間浸漬し、塗工面同士を重ね合わせて、ろ紙に挟み、余分な水分を取り除いた後、温度60℃に調整した熱プレスを用いて、面圧100kg/cm2で2分間加熱処理し、測定サンプル紙を得た。その後、伸張型引張試験機(引張速度:30mm/分)を用いて、サンプル紙のT字型剥離試験を行い、試験片同士の接着強度を測定した。
接着強度の値が小さい程、再湿化された場合の紙表面の粘着性が低いことを示す。
【0067】
<発泡性>
評価方法:
消泡剤(アンチフォームDB−31:ダウコーニング社製、シリコン系消泡剤)を10ppm添加した各塗工液600gを、内径7cm、長さ50cmのフォームセルに入れ、温度60℃、循環ポンプ流量9リットル/分の条件で、発泡試験を行い、循環3分後の泡の高さ(mm)を測定した。
泡の高さの値が、小さい程発泡性が少ないことを示す。
【0068】
【表2】
【0069】
【発明の効果】
表2から明らかなように、本発明の表面サイズ剤は、紙のサイズ性に優れ、再湿化された場合の紙表面の粘着性が低く、かつ塗工液の発泡が少ない。本発明の表面サイズ剤を紙に塗工することにより、再湿化された時の表面の粘着性が低く、サイズ性向上効果に優れた塗工紙を得ることが可能になる。
Claims (3)
- モノマー単位として、疎水性モノマー(a)35〜75重量%と、その一部又は全部が塩を形成してなるアニオン性モノマー(b)15〜55重量%と、ノニオン性N−置換(メタ)アクリルアミド(c)5〜20重量%とを含有してなる水溶性共重合体塩を含有することを特徴とする表面サイズ剤。
- 請求項1又は2に記載の表面サイズ剤を含有してなる塗工液を紙に塗工することを特徴とする塗工紙の製造方法。
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