JP5115087B2 - 塗工液組成物並びに紙及び板紙 - Google Patents

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Description

本発明は、塗工液組成物に関し、さらに詳細には、紙及び板紙に優れたサイズ性、インクジェット印刷適性及びロール適性を付与し、良好な低発泡性である塗工液組成物に関する。
従来より、表面に印刷を施す紙及び板紙においてはサイズ度向上やその他の印刷適性を向上させる目的でα−オレフィン−マレイン酸系共重合体等の表面サイズ剤を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平03−14698号公報
(ジ)イソブチレン−マレイン酸のようなα−オレフィン−マレイン酸系共重合体とアクリルアミド系樹脂組成物を用いる表面紙質向上剤が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開平09−13296号公報
また、セラックとジイソブチレンと無水マレイン酸のアルカリ塩などのアニオン性高分子化合物のアルカリ塩共存下で、疎水性モノマーを重合することにより得られる表面サイズ剤が提案され、表面サイズ剤を塗工する際に、ポリアクリルアミド類等の水溶性高分子を塗工液に混合して使用することもできることが記載されている(例えば、特許文献3参照)。
特開2002−220797号公報
また、α−オレフィンおよびα,β−不飽和ポリカルボン酸を主構成成分としてなる共重合体中和塩とアルキル又はアルケニル置換コハク酸中和塩とを含有してなる製紙用表面サイズ剤が提案され、製紙用表面サイズ剤には、本発明の奏する前記効果を阻害しない限りにおいて、ポリアクリルアミド系ポリマー類等の表面加工剤を適量併用することができることが記載されている(例えば、特許文献4参照)。
特開2006−022427号公報
さらに、尿素類の存在下にアクリルアミド類と、イタコン酸またはその塩類を特定の重量比で重合して得られるアクリルアミド系樹脂からなる中性紙用表面紙質向上剤が提案され、表面サイズ剤が使用できることが記載されている(例えば、特許文献5参照)。
特開平09−170194号公報
しかし、これらの改良技術は、サイズ性能および印刷適性において満足できるものではなかった。
本発明は、紙及び板紙に優れたサイズ性、インクジェット印刷適性を付与する塗工液組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、前記問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の水性樹脂分散体〔A〕と、特定のアニオン性アクリルアミド系樹脂〔B〕とを含有する塗工液組成物が、前記問題を克服できることを見いだし、本願発明を完成するに至った。
すなわち前記課題を解決するための手段である本発明は、
(1)オレフィンとマレイン酸類を反応して得られる共重合体のアルカリ塩を含有するアニオン性高分子分散剤(a)水溶液中で疎水性ビニル系単量体(b)を乳化重合して得られる水性樹脂分散体〔A〕と、
不飽和ジカルボン酸(塩)(c)とアクリルアミド類(d)を反応して得られるアニオン性アクリルアミド系樹脂〔B〕
とを含有することを特徴とする紙および板紙用の塗工液組成物、
(2)有効分重量比がアニオン性アクリルアミド系樹脂〔B〕100に対して、水性樹脂分散体〔A〕が5〜200である前記(1)の紙および板紙用の塗工液組成物、
(3)水性樹脂分散体〔A〕における有効分重量比が、アニオン性高分子分散剤(a)/疎水性ビニル系単量体(b)=(50〜90)/(50〜10)である前記(1)又は(2)の紙および板紙用の塗工液組成物、
(4)アニオン性アクリルアミド系樹脂〔B〕の反応の際に用いる不飽和ジカルボン酸がイタコン酸である前記(1)〜(3)の紙および板紙用の塗工液組成物、
(5)前記(1)〜(4)の塗工液組成物を用いる紙及び板紙、
(6)中性ライナーである前記(5)の紙及び板紙、
を提供するものである。
本発明は、紙及び板紙に優れたサイズ性、インクジェット印刷適性を付与する塗工液組成物並びに優れたサイズ性、インクジェット印刷適性及びロール適性を有する紙及び板紙を提供することができる。
本発明の塗工液組成物は、
オレフィンとマレイン酸類を反応して得られる共重合体のアルカリ塩を含有するアニオン性高分子分散剤(a)水溶液中で疎水性ビニル系単量体(b)を乳化重合して得られる水性樹脂分散体〔A〕と、
少なくとも不飽和ジカルボン酸(塩)(c)とアクリルアミド類(d)を反応して得られるアニオン性アクリルアミド系樹脂〔B〕
とを含有することを特徴とする紙および板紙用の塗工液組成物である。
本発明の塗工液組成物は、水性樹脂分散体〔A〕とアニオン性アクリルアミド系樹脂〔B〕とを通常の方法により混合することで得ることができ、好ましくは、有効分重量比がアニオン性アクリルアミド系樹脂〔B〕100に対して、水性樹脂分散体〔A〕が5〜200である。
<水性樹脂分散体〔A〕>
水性樹脂分散体は、分散剤を含む水性媒体中に単量体を乳化分散させ、重合触媒により重合を行なう周知の乳化重合法によって製造されるものをいう。分散剤は水性媒体中で単量体に重合の場を与えるとともに、保護コロイドとして単量体重合物の乳化分散状態を安定に保つという重要な働きをする。
前記水性樹脂分散体〔A〕は、アニオン性高分子分散剤(a)の水溶液中で少なくとも疎水性ビニル系単量体(b)を乳化重合して得られる。
水性樹脂分散体〔A〕における有効分重量比が、アニオン性高分子分散剤(a)/疎水性ビニル系単量体(b)=(50〜90)/(50〜10)であることが好ましい。
アニオン性高分子分散剤(a)は、少なくともオレフィンとマレイン酸類を反応して得られる共重合体のアルカリ塩を含有する高分子であり、共重合体全体としてアニオン性を有するものである。重量平均分子量は、1000〜100000であることが好ましい。
前記オレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1 − テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−イコセン、1−ドコセン、1 − テトラコセン、1 − トリアコンテン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン等を挙げることができ、これらは2種以上併用することができる。
前記マレイン酸類としては、マレイン酸及びその塩、無水マレイン酸、マレイン酸モノエステル及びその塩を挙げることができ、好ましくは、無水マレイン酸、マレイン酸モノエステルである。マレイン酸モノエステルとしては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル、マレイン酸ノルマルプロピル、マレイン酸モノブチルなどを挙げることができる。
前記共重合体は、オレフィンとマレイン酸類以外にも発明の性能を害さない範囲でその他の単量体を使用することができる。
その他の単量体としては、スチレン、アクリル酸エステルなどの疎水性単量体、アクリル酸、イタコン酸、フマル酸などのアニオン性単量体、アクリルアミドなどのノニオン性単量体などを挙げることができ、ジアリルアミンなどのカチオン性単量体も使用できるが、共重合体全体としてアニオン性を示す使用量である必要がある。
前記共重合体の製造は、有機溶剤を溶媒として、重合後に脱溶剤することなどにより製造できる。全ての単量体を反応容器に一括で仕込んで重合する一括添加重合法、単量体の一部又は全部を反応容器に分割して添加して重合する分割添加重合法、及び単量体の一部又は全部を反応容器に連続的に滴下しながら重合する連続滴下重合法等を用いることができる。
重合時の単量体濃度は、通常40〜80重量%である。40重量%未満の反応速度が遅くなり、重合時間がかかるため、経済性の点から好ましくはない。また、80重量%を超える単量体濃度で重合する場合は、重合熱の制御が困難となる。重合反応温度は、通常100〜200℃、であり、反応時間は、1〜20時間である。
前記共重合体を製造するにあたって使用できる重合開始剤としては、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、及びこれらと還元剤の組合せによるレドックス系重合触媒、並びに2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオナミジンジヒドロクロリド等のアゾ系触媒等を挙げることができるが、特にこれらに限定されることはなく、他の公知慣用の重合開始剤も使用できる。これらの重合開始剤は、2種以上併用してもよい。
重合開始剤の使用量は、単量体の合計量に対して、通常0.1〜10重量%である。また、重合開始剤は、単量体とともに反応容器に一括で仕込んでもよく、連続滴下してもよい。
また、共重合体を製造するにあたって、公知の連鎖移動剤が使用可能であり、アルキルメルカプタン系化合物、チオグリコール酸誘導体、メルカプトプロピオン酸誘導体、メルカプタン誘導体等の連鎖移動剤(分子量調整剤)が挙げられる。
具体的に、アルキルメルカプタン系化合物としてはノルマルオクチルメルカプタン、ターシャリードデシルメルカプタン、ノルマルドデシルメルカプタン、ノルマルオクタデシルメルカプタン、ノルマルヘキサデシルメルカプタン等を挙げることができ、メルカプタン誘導体としてはメルカプトエタノール、チオリンゴ酸、チオサリチル酸等を挙げることができる。これらは2種類以上を併用することもできる。
これらの連鎖移動剤は、単量体とともに反応容器に一括で仕込んでもよく、連続滴下してもよい。これらの連鎖移動剤は、2種以上併用してもよい。連鎖移動剤の使用量は、単量体の合計量に対して、0.01〜5重量%の範囲が好ましい。
前記有機溶媒には、脱溶媒が容易な溶媒が好ましく、有機溶媒としては、アミド類、芳香族類、炭化水素類、エステル類を挙げることができる。具体的に、アミド類としては、ジメチルホルムアミド等を挙げることができ、芳香族類としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等を挙げることができ、炭化水素類としては、ヘキサン等を挙げることができ、エステル類としては、酢酸エチル、酢酸ブチル等を挙げることができる。これらは2種類以上を併用することもできる。
前記共重合体をアルカリ塩とする方法としては、共重合体に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどのアルカリ水溶液を作用させることにより、共重合体のアルカリ塩とすることができ、これをアニオン性高分子分散剤(a)とすることができる。
このようにして得られるアニオン性高分子分散剤(a)の存在下に少なくとも疎水性ビニル系単量体(b)を乳化重合する。
前記疎水性ビニル系単量体(b)とは、実質的に水に不溶、或いは難溶なビニル単量体であり、スチレン類、(メタ)アクリル酸エステル類、不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステル類、ビニルエステル類等が挙げられ、これらは2種以上併用することができる。
具体的に、スチレン類としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等を挙げることができ、(メタ)アクリル酸エステル類としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ノルマルブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ターシャリーブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル等を挙げることができ、不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステル類としては、マレイン酸やフマル酸のジメチルエステル、ジエチルエステルを挙げることができ、ビニルエステル類としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルを挙げることができ、これらは2種以上併用することができる。これらの中でも乳化重合した際のエマルションの安定性の観点や、サイズ性能等の性能などの観点からスチレン類、(メタ)アクリル酸エステル類が好ましく、スチレン及びα−メチルスチレン、炭素数1から8であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル類が、特に好ましい。
乳化重合にあたって使用する単量体は、疎水性ビニル系単量体(b)外にも本発明の性能を害さない範囲でその他の単量体を使用することができる。
その他の単量体としては、アニオン性単量体、ノニオン性単量体、カチオン性単量体等を挙げることができる。
前記アニオン性単量体としては、カルボキシル基含有単量体、スルホン酸基含有単量体、リン酸エステル基含有単量体、これらの塩等を挙げることができる。
前記カルボキシル基含有単量体としては、α,β−不飽和カルボン酸類、α,β−不飽和ジカルボン酸半エステル類が挙げられ、これらは2種以上併用することができる。
具体的に、α,β−不飽和カルボン酸類としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、これらの塩等を挙げることができ、α,β−不飽和ジカルボン酸半エステル類としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノブチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノブチル、これらの塩等を挙げることができ、これらは2種以上併用することができる。
これらの中でもα,β−不飽和カルボン酸類が好ましく、特に、アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらの塩が、表面塗工液の発泡性が少ないという点で好ましい。
具体的に、スルホン酸基含有単量体としては、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホン化スチレン等を挙げることができ、リン酸エステル基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルのリン酸エステルを挙げることができることができる。
前記ノニオン性単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド(以下、アクリルアミド及びメタクリルアミドをアクリルアミド類と略することがある)、N−置換モノアルキル(メタ)アクリルアミド類、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類、N−置換ジアルキル(メタ)アクリルアミド類、ジアセトンアクリルアミド、ビニルピロリドン等を挙げることができる。
前記N−置換モノアルキル(メタ)アクリルアミド類としては、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ターシャリーブチル(メタ)アクリルアミド、N−ラウリル(メタ)アクリルアミド、N−ターシャリーオクチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
前記N−置換ジアルキル(メタ)アクリルアミド類としては、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジターシャリーブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジラウリル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジターシャリーオクチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジシクロヘキシル(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
前記カチオン性単量体としては、(メタ)アクリル酸(モノ−又はジ−アルキル)アミノアルキル、(メタ)アクリル酸(モノ−又はジ−アルキル)アミノヒドロキシルアルキル、(モノ−又はジ−アルキル)アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ジアリルアミン等を挙げることができる。
疎水性ビニル系単量体(b)と共重合し得る他の単量体の中ではノニオン性単量体が好ましく、ノニオン性単量体の中でもアクリルアミド類、N−置換モノアルキル(メタ)アクリルアミド類、N−置換ジアルキル(メタ)アクリルアミド類のようなアクリルアミド類が好ましく、特にアクリルアミド類が好ましい。
前記疎水性ビニル系単量体(b)と共重合し得る他の単量体は、疎水性ビニル系単量体(b)の固形分を100部とした場合、20部以下であることが好ましい。
水性樹脂分散体〔A〕の製造は、全ての単量体を反応容器に一括で仕込んで重合する一括添加重合法、単量体の一部又は全部を反応容器に分割して添加して重合する分割添加重合法、及び単量体の一部又は全部を反応容器に連続的に滴下しながら重合する連続滴下重合法等を用いることができる。
水性樹脂分散体〔A〕は水溶液中、または、有機溶媒/水混合溶媒中で乳化重合後に脱溶剤することで製造できる。
重合時の有効分濃度は、通常15〜50重量%である。15重量%未満の単量体濃度で重合し、濃縮操作により、15重量%以上の濃度の重合体を得ることも可能であるが、経済性の点から好ましくはない。また、50重量%を超える単量体濃度で重合する場合は、重合熱の制御が困難となる。重合反応温度は、通常40〜95℃、好ましくは50〜90℃であり、反応時間は、1〜20時間である。
水性樹脂分散体〔A〕を製造するにあたって使用できる重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、及び過硫酸ナトリウムなどの無機過硫酸塩、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、これらの無機過硫酸塩又は有機過酸化物と還元剤の組合せによるレドックス系重合触媒、並びに2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオナミジンジヒドロクロリド等のアゾ系触媒等を挙げることができるが、特にこれらに限定されることはなく、他の公知慣用の重合開始剤も使用できる。これらの重合開始剤は、2種以上併用してもよい。
重合開始剤の使用量は、単量体の合計量に対して、通常0.1〜10重量%である。また、重合開始剤は、単量体とともに反応容器に一括で仕込んでもよく、連続滴下してもよい。
また、水性樹脂分散体〔A〕を製造するにあたって、公知の連鎖移動剤が使用可能であり、アルキルメルカプタン系化合物、チオグリコール酸誘導体、メルカプトプロピオン酸誘導体、メルカプタン誘導体等の連鎖移動剤(分子量調整剤)が挙げられる。
具体的に、アルキルメルカプタン系化合物としてはノルマルオクチルメルカプタン、ターシャリードデシルメルカプタン、ノルマルドデシルメルカプタン、ノルマルオクタデシルメルカプタン、ノルマルヘキサデシルメルカプタン等を挙げることができ、メルカプタン誘導体としてはメルカプトエタノール、チオリンゴ酸、チオサリチル酸等を挙げることができる。
これらの連鎖移動剤は、単量体とともに反応容器に一括で仕込んでもよく、連続滴下してもよい。これらの連鎖移動剤は、2種以上併用してもよい。連鎖移動剤の使用量は、単量体の合計量に対して、0.01〜5重量%の範囲が好ましい。
前記有機溶媒としては、脱溶媒が容易なアルコール類、グリコール類が好ましい。具体的に、アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等を挙げることができ、グリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコールを挙げることができ、これらは2種類以上を併用することもできる。この中でも安全性や価格の観点から、アルコール類の使用が好ましく、具体的には、エタノール、イソプロパノールが好ましい。
また、アニオン性高分子分散剤(a)とともに各種界面活性剤を用いることができる。
前記界面活性剤としては、通常、乳化重合に適用できるものが使用可能であり、ノニオン性、アニオン性、及び両性の界面活性剤、並びに重合性基を有する界面活性剤が使用できる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコールグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコール等が挙げられる。
本発明においては、前記ノニオン性界面活性剤を2種以上併用することもできる。
アニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン類、スルホコハク酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、アルケニルコハク酸塩、ロジン塩、強化ロジン塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物を挙げることができる。ポリオキシアルキレン類としては、ポリオキシアルキレン化合物のリン酸エステル塩、スルホン酸塩、コハク酸エステル塩を挙げることができ、ポリオキシアルキレン化合物としては、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンモノスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等を挙げることができる。アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物としては、ヘキシルジフェニルエーテルジスルホン酸、デシルジフェニルエーテルジスルホン酸、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸、及びヘキサデシルジフェニルエーテルジスルホン酸等を挙げることができる。前記塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等を例示でき、アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等を挙げることができる。
本発明においては、前記アニオン性界面活性剤を2種以上併用することもできる。
両性界面活性剤は、アニオン性基とカチオン性基とを有する界面活性剤、及び前記界面活性剤においてアニオン性基がナトリウム塩等のアルカリ金属塩又はアミン塩になっているもの等を挙げることができる。本発明においては、前記界面活性剤を2種以上併用することもできる。
前記重合性基を有する界面活性剤は、一般に反応性乳化剤と称され、分子中に疎水基、親水基及び炭素−炭素二重結合を有する化合物である。前記炭素−炭素二重結合を有する化合物には、例えば、(メタ)アリル基、1−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、イソプロペニル基、ビニル基、及び(メタ)アクリロイル基の官能基を有する化合物が含まれる。具体的に市販品として、「エミノールJS−20」、「エレミノールRS−30」(三洋化成(株)製);「ラテムルPD−104」、「ラテムルPD−420」(花王(株)製);「アントックスMS−60」(日本乳化剤(株)製)、「アクアロンKH−05」、「アクアロンKH−10」(第一工業製薬(株)製)等が挙げることができる。これらは2種以上併用することもできる。
<アニオン性アクリルアミド系樹脂〔B〕>
前記アニオン性アクリルアミド系樹脂〔B〕は、少なくともアクリルアミド類(d)と不飽和ジカルボン酸(塩)(c)とを反応して得られるアニオン性アクリルアミド系樹脂であればよく、その他の単量体を用いてもよいが、得られた樹脂の主要成分がアクリルアミド類(d)であり、アニオン性を有する必要がある。
前記アクリルアミド類(d)は、アクリルアミド及びメタクリルアミドよりなる群から選択される少なくとも一種であり、単量体成分としてこれらを単独で含有していても良く、また共重合体中にこれらが併存していても良い。安価であり入手しやすいという観点から、アクリルアミドを使用することが、好ましい。アクリルアミド類はサイズ性の観点からアニオン性アクリルアミド系樹脂(B)の単量体単位として80〜99モル%を有していることが好ましい。
前記不飽和ジカルボン酸(塩)(c)は、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸などの2価の不飽和カルボン酸並びにそれらの塩をいい、塩としては、それらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。これらは重合性の観点から、イタコン酸が好ましい。なお、本発明でいう不飽和ジカルボン酸(塩)(c)は、不飽和ジカルボン酸無水物も不飽和ジカルボン酸を含む。
不飽和ジカルボン酸(塩)(c)はサイズ性能の観点からアニオン性アクリルアミド系樹脂(B)の単量体単位として1〜20モル%を有していることが好ましい。
その他の単量体として、前記不飽和ジカルボン酸(塩)(c)を除くアニオン性単量体、ノニオン性単量、カチオン性単量体、疎水性ビニル系単量体を挙げることができる。
前記アニオン性単量体としては、不飽和ジカルボン酸(塩)(c)を除くカルボキシル基含有単量体、スルホン酸基含有単量体、リン酸エステル基含有単量体、これらの塩等を挙げることができる。
前記不飽和ジカルボン酸(塩)(c)を除くカルボキシル基含有単量体としては、α,β−不飽和モノカルボン酸類、α,β−不飽和ジカルボン酸半エステル類を挙げることができ、これらは1種又は2種以上含有していることができる。
具体的に、α,β−不飽和モノカルボン酸類としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸及びこれらの塩等を挙げることができ、α,β−不飽和ジカルボン酸半エステル類としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノブチル、これらの塩等を挙げることができ、これらは2種以上併用することもできる。
前記これらの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、並びにアミン塩等が挙げられ、これらは2種以上併用することもできる。
前記不飽和ジカルボン酸(塩)(c)を除くカルボキシル基含有単量体としては、α,β−不飽和モノカルボン酸類が好ましく、特に、アクリル酸、メタクリル酸が、サイズ性という点で好ましい。
具体的に、スルホン酸基含有単量体としては、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホン化スチレン等を挙げることができ、リン酸エステル基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルのリン酸エステルを挙げることができることができる。
前記ノニオン性単量体としては、N−置換モノアルキル(メタ)アクリルアミド類、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート類、N−置換ジアルキル(メタ)アクリルアミド類、ジアセトンアクリルアミド、ビニルピロリドン等を挙げることができる。
前記N−置換モノアルキル(メタ)アクリルアミド類としては、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ターシャリーブチル(メタ)アクリルアミド、N−ラウリル(メタ)アクリルアミド、N−ターシャリーオクチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
前記N−置換ジアルキル(メタ)アクリルアミド類としては、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジターシャリーブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジラウリル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジターシャリーオクチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジシクロヘキシル(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
前記カチオン性単量体としては、(メタ)アクリル酸(モノ−又はジ−アルキル)アミノアルキル、(メタ)アクリル酸(モノ−又はジ−アルキル)アミノヒドロキシルアルキル、(モノ−又はジ−アルキル)アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ジアリルアミン等を挙げることができる。
アニオン性アクリルアミド系樹脂[B]の製造は、全ての単量体を反応容器に一括で仕込んで重合する一括添加重合法、単量体の一部又は全部を反応容器に分割して添加して重合する分割添加重合法、単量体の一部又は全部を反応容器に連続的に滴下しながら重合する連続滴下重合法等を用いることができる。
重合時の有効分濃度は、通常15〜50重量%である。15重量%未満の単量体濃度で重合し、濃縮操作により、15重量%以上の濃度の共重合体を得ることも可能であるが、経済性の点から好ましくはない。また、50重量%を超える単量体濃度で重合する場合は、重合熱の制御が困難となる。重合反応温度は、通常40〜95℃、好ましくは50〜90℃であり、反応時間は、1〜20時間である。
アニオン性アクリルアミド系樹脂[B]を製造するにあたって使用できる重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、及び過硫酸ナトリウムなどの無機過硫酸塩、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、これらの無機過硫酸塩又は有機過酸化物と還元剤の組合せによるレドックス系重合触媒、並びに2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオナミジンジヒドロクロリド等のアゾ系触媒等を挙げることができるが、特にこれらに限定されることはなく、他の公知慣用の重合開始剤も使用できる。これらの重合開始剤は、2種以上併用することもできる。
重合開始剤の使用量は、単量体の合計量に対して、通常0.01〜5重量%である。また、重合開始剤は、単量体とともに反応容器に一括で仕込んでもよく、連続滴下してもよい。
アニオン性アクリルアミド系樹脂[B]は水中での重合や、公知の界面活性剤を用いた乳化重合法により、または、有機溶媒中、または有機溶媒/水混合溶媒中で重合後に脱溶剤することで製造できる。
前記有機溶媒としては、脱溶媒が容易なアルコール類、グリコール類が好ましい。具体的に、アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等を挙げることができ、グリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコールを挙げることができ、これらは2種類以上を併用することもできる。この中でも安全性や価格の観点から、アルコール類の使用が好ましく、具体的には、エタノール、イソプロパノールが好ましい。
本発明の塗工液組成物は、塗工液として調製され、紙および板紙に塗工される。
本発明の塗工液組成物が適用される原紙に使用されるパルプとしては、クラフトパルプ及びサルファイトパルプなどの晒又は未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプ及びサーモメカニカルパルプなどの晒又は未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、並びに段ボール古紙及び脱墨古紙などの古紙パルプを挙げることができる。
原紙を得るために、填料、染料、酸性抄紙用ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー系又はアルケニルコハク酸無水物系中性抄紙用サイズ剤、中性抄紙用ロジン系サイズ剤等のサイズ剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、消泡剤などの添加物も、各々紙種に要求される物性を発現するために、必要に応じて使用してもよい。填料としては、クレー、タルク、酸化チタン、重質又は軽質炭酸カルシウム等が挙げられる。これらを2種以上併用することもできる。
本発明の塗工液組成物を塗工するための塗工機としては、2本ロールサイズプレス、フィルムプレス、ゲートロールコーター、シムサイザー、ブレードコーター、キャレンダー、バーコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、及びカーテンコーター等を用いることができる。また、スプレー塗工機により本発明の表面サイズ剤を原紙表面に塗工することもできる。
本発明の塗工液組成物を塗工する際に、水溶性高分子を塗工液に混合して使用することもできる。水溶性高分子としては、澱粉類、セルロース類、ポリビニルアルコール類、ポリアクリルアミド類、アルギン酸ソーダ等を挙げることができ、これら1種又は2種以上を用いることができる。澱粉類としては、酸化澱粉、燐酸エステル化澱粉、酵素変性澱粉、カチオン化澱粉などを挙げることができ、セルロース類としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどを挙げることができ、これらを2種以上併用することもできる。
また、表面サイズ剤、防滑剤、防腐剤、防錆剤、消泡剤、粘度調整剤、染料、及び顔料等の添加物は本発明の塗工液組成物を塗工液として調製する際に添加してもかまわない。
本発明の塗工液組成物を前記原紙に塗工して得ることができるサイジング紙及び板紙としては、PPC用紙、インクジェット記録用紙、レーザープリンター用紙、フォーム用紙等の記録用紙、ノート用紙、書籍用紙、印刷用紙、新聞用紙等の印刷適性が要求される各種原紙だけでなく、ライナー、コート白ボール、段ボールなどの板紙が挙げられる。これらの中でもライナーが好ましく、さらに好ましくは中性ライナーである。
本発明の塗工液組成物を塗工する際の塗工液中の塗工液組成物濃度は、水性樹脂分散体〔A〕については、固形分で、好ましくは0.01〜5重量%、さらに好ましくは0.05〜2重量%である。また、アニオン性アクリルアミド系樹脂〔B〕については、好ましくは0.05〜10重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%である。水性樹脂分散体〔A〕の濃度が0.01重量%未満ではサイズ性能が不十分である場合があり、5重量%を超えて使用してもサイズ性能がそれ以上向上することはほとんどなく経済的に不利益である。また、アニオン性アクリルアミド系樹脂〔B〕の濃度が0.05重量%未満ではサイズ性能が不十分である場合があり、10重量%を超えて使用してもサイズ性能がそれ以上向上することはほとんどなく経済的に不利益である上に、塗工液粘度が高すぎて均一に塗工できない等の問題が生じる場合がある。
また、塗工液組成物の塗工量は、水性樹脂分散体〔A〕について固形分で好ましくは0.005〜0.2g/m、さらに好ましくは0.01〜0.1g/mであり、アニオン性アクリルアミド系樹脂〔B〕について固形分で好ましくは0.01〜0.3g/m、さらに好ましくは0.01〜0.2g/mである。前記範囲内であると、特に良くサイズ効果や印刷適性(インクジェット適性等)の効果が発現される。
以下に合成例、実施例、及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下における「部」及び「%」はいずれも重量基準による。
<アニオン性高分子分散剤(a)の製造方法>
(合成例1−1)
攪拌機、冷却器、滴下ロート、温度計、窒素導入管を備えた1リットルの四つ口フラスコに、無水マレイン酸93.2部、およびキシレン120部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら還流温度(約110℃)まで昇温した。滴下ロートにジイソブチレン(2,4,4−トリメチル−1−ペンテンの含有率75%) 142.4部を仕込み、また別の滴下ロートにt−ブチルパーオキシベンゾエート6部およびキシレン40部を仕込んだ。滴下ロートから各内容物を3時間を要してフラスコに滴下し、さらに還流下に4時間保温した。その後、減圧下にキシレンを留去して、固形物を得た。次いで、前記固形物を粉砕したのち、水454.9部を添加し、25%アンモニア水129.5部で中和し、固形分を25%に調整して、25℃での粘度480mPa・s、pH9.0の高分子分散剤水溶液(a)−1を得た。
(合成例1−2〜1−5)
オレフィン及びその他単量体の種類と使用量、マレイン酸類の種類と使用量、並びに中和に使用するアルカリの種類と使用量を表1のように変えた以外は合成例1−1と同様に合成反応を行った。得られた高分子分散剤水溶液(a)−2〜(a)−5の性状を表1に示す。
Figure 0005115087
表1中の略号の説明。
DIB:2,4,4−トリメチル−1−ペンテン、C12:1−ドデセン、C18:1−オクタデセン、St:スチレン、nBA:アクリル酸ノルマルブチル、MAn:無水マレイン酸、MA−IP:マレイン酸モノイソプロピル
<水性樹脂分散体〔A〕の製造方法>
(合成例2−1)
攪拌器、温度計、還流冷却管、及び窒素導入管を備えた1リットルの四つ口フラスコに、水111.4部、高分子分散剤((a)−1)795.7部、スチレン30.0部、アクリル酸ノルマルブチル20.0部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら70℃に昇温した。これに10%過硫酸アンモニウム水溶液5.0部を添加し、加熱及び発熱により温度を90℃まで上昇させ、その後、温度を90℃に保ちつつ4時間熟成させて反応を完結させた。冷却後、固形分を25%に調整して、25℃での粘度が90mPa・s、pH8.9の水性樹脂分散体〔A〕−1を得た。
(合成例2−2〜2−9)
高分子乳化剤(a)、疎水性ビニル系単量体(b)、その他成分を表2のように変えた以外は合成例2−1と同様に合成反応を行った。得られた水性樹脂分散体〔A〕−2〜〔A〕−9の性状を表2に示す。
Figure 0005115087
表2中の略号の説明。
St:スチレン、nBA:アクリル酸ノルマルブチル、EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル、iBMA:メタクリル酸イソブチル、JS20:反応性乳化剤(三洋化成製)、HDSA−K塩:ヘキサデセニルコハク酸のカリウム塩
<アニオン性アクリルアミド系樹脂[B]の合成例>(合成例3−1)
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素導入管を備えた1リットルの四つ口フラスコに水387.6部、50%アクリルアミド水溶液364.8部、イタコン酸17.6部、及び連鎖移動剤としてメタリルスルホン酸ナトリウム2.6部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら60℃に昇温した。これに5%過硫酸アンモニウム水溶液6.0部を添加し、80℃まで昇温し、2時間反応させた。冷却後、25%NaOHと水を加え、25%での粘度が5100mPa・s、pH7.0のアニオン性アクリルアミド系樹脂〔B〕−1を得た。
(合成例3−2〜3−5)
不飽和ジカルボン酸(塩)(c)、不飽和ジカルボン酸(塩)(c)以外のアニオン性ビニル単量体、アクリルアミド類を表3のように変えた以外は合成例3−1と同様に合成反応を行った。得られたアニオン性アクリルアミド系樹脂〔B〕−2〜〔B〕−5の性状を表3に示す。
Figure 0005115087
表3中の略号の説明。
IA:イタコン酸、MA:マレイン酸、AA:アクリル酸、AAm:アクリルアミド
(試験例1)中性ライナーでのサイズ性能の評価
(1)中性ライナー用原紙の抄造
450mlカナディアン・スタンダード・フリーネスにまで叩解した未晒しクラフトパルプを2.4%の水性スラリーとし、これに対パルプ0.5%(絶乾重量基準)の硫酸バンドを添加した後、pH7.5の希釈水でこのパルプスラリーを濃度0.25%まで希釈した。その後、ノーブルアンドウッド抄紙機で、坪量100g/mとなるように抄紙した。尚、このときの抄紙pHは7.2であった。湿紙の乾燥は、ドラムドライヤーを用いて100℃で80秒間の条件で行った。
(2)塗工液の調製方法
表4に記載した有効分重量濃度となるように水性樹脂分散体〔A〕およびアニオン性アクリルアミド系樹脂〔B〕を水で希釈し、塗工液を調製した。
(3)中性ライナーの製造とサイズ性能の評価
前記(1)で抄造した中性ライナー用原紙に、前記(2)で配合した塗工液を2本ロールサイズプレスを用いて水性樹脂分散体〔A〕の有効分の塗工量が0.02g/mとなるように塗工し、ドラムドライヤーを用いて80℃で30秒間の条件で乾燥し、中性ライナーを得た。得られた中性ライナーを恒温恒湿(23℃、50%相対湿度)環境下で24時間調湿し、コブサイズ度(120秒)(JISP8140に準拠)を測定した。結果を表4に示す。
Figure 0005115087
(試験例2 中性記録用紙での評価)
(1)中性記録紙用原紙の抄造
400mlカナディアン・スタンダード・フリーネスにまで叩解した晒しクラフトパルプ(広葉樹対針葉樹のパルプ比が9対1である混合パルプ)を2.4%の水性スラリーとし、これに対パルプ1%(絶乾重量基準)の炭酸カルシウム(奥多摩工業(株)製;TP121S)と5%のタルク(富士タルク工業(株)製;NDタルク)とを添加した。
次いで、対パルプ0.5%(絶乾重量基準)の硫酸バンド、対パルプ0. 8%(絶乾重量基準)の両性デンプン(ナショナルスターチ社製;Cato3210)及び対パルプ0. 15%(絶乾重量基準)の中性紙用ロジンサイズ剤(星光PMC(株)製;CC1404)を順次に添加した後、pH7.5の希釈水でこのパルプスラリーを濃度0.25%まで希釈した。その後、希釈したパルプスラリーに対パルプ4%(絶乾重量基準)の炭酸カルシウム(奥多摩工業(株)製;TP121S)、対パルプ0.01%(絶乾重量基準)の歩留り向上剤(ハイモ社製;NR12MLS)を添加し、ノーブルアンドウッド抄紙機で、坪量65g/mとなるように抄紙した。尚、このときの抄紙pHは7.5であった。湿紙の乾燥は、ドラムドライヤーを用いて100℃で80秒間の条件で行った。
(2)塗工液の調製方法
酸化澱粉(MS3800、日本食品化工(株)製)を濃度10%に水で希釈し、95℃で糊化を行い、食塩、前記酸化澱粉、水性樹脂分散体〔A〕およびアニオン性アクリルアミド系樹脂〔B〕を、食塩の固形分濃度が0.2%になり、酸化澱粉、水性樹脂分散体〔A〕およびアニオン性アクリルアミド系樹脂〔B〕が表5に記載した有効分重量濃度になるように配合した。
(3)記録紙の製造
前記(1)で抄造した記録紙用原紙に、前記(2)で配合した塗工液を2本ロールサイズプレスを用いて水性樹脂分散体〔A〕の有効分の塗工量が0.02g/mとなるように塗工し、ドラムドライヤーを用いて80℃で30秒間の条件で乾燥し、記録紙を得た。得られた試験紙を恒温恒湿(23℃、50%相対湿度)環境下で24時間調湿した。
(4)記録紙の評価
前記(3)で得られた試験紙のステキヒトサイズ度(JIS P8122に準拠)、及びインクジェット適性試験を行った。 評価結果を表5に示す。
尚、ステキヒトサイズ度は、値が高いほど良好であることを示す。
(5)インクジェット適性試験方法
インクジェット適性の評価は、前記(3)で得られた試験紙をカレンダー処理した後、恒温恒湿(23℃、50%相対湿度)環境下で24時間以上調湿を行った後、キャノン(株)製バブルジェット(登録商標)プリンターであるBJC−465Jを用いて以下の方法にて行った。結果を表5に示す。
(a) 印字濃度試験
試験紙に黒のベタ印刷をし、ベタ部分の印字濃度をマクベスインク濃度計で測定した。数値が大きいほど印字濃度が高いことを示す。結果を表5に示す。
(b) フェザリング試験
試験紙に直交する黒の線幅一定の直線及び文字を印字し、目視にて直線及び文字の外縁のにじみを5段階で評価した。フェザリングの全くないものを5とし、インクがにじんでしまって文字の判別がつかないものを1とした。通常の使用に耐えうる印字品質は4以上である。結果を表5に示す。
(c) 裏抜け試験
試験紙に黒のベタ印刷をし、ベタ印字部分裏側のインクのにじみ程度を、目視にて5段階で評価した。裏にインクがにじんでいないものを5とし、ベタ部分が完全に裏抜けしたものを1とした。通常の使用に耐えうる印字品質は、4以上である。結果を表5に示す。
Figure 0005115087

Claims (5)

  1. オレフィンとマレイン酸類を反応して得られる共重合体のアルカリ塩を含有するアニオン性高分子分散剤(a)水溶液中で疎水性ビニル系単量体(b)を乳化重合して得られる水性樹脂分散体〔A〕と、
    不飽和ジカルボン酸(塩)(c)とアクリルアミド類(d)を反応して得られるアニオン性アクリルアミド系樹脂〔B〕
    とを含有し、かつ
    有効分重量比がアニオン性アクリルアミド系樹脂〔B〕100に対して、水性樹脂分散体〔A〕が5〜200であり、かつ、
    水性樹脂分散体〔A〕における有効分重量比が、アニオン性高分子分散剤(a)/疎水性ビニル系単量体(b)=(50〜90)/(50〜10)であることを特徴する紙および板紙用の塗工液組成物。
  2. アニオン性アクリルアミド系樹脂〔B〕の反応の際に用いる不飽和ジカルボン酸が1〜20モル%であることを特徴とする請求項1に記載の紙および板紙用の塗工液組成物。
  3. アニオン性アクリルアミド系樹脂〔B〕の反応の際に用いる不飽和ジカルボン酸がイタコン酸であることを特徴とする請求項1又は2に記載の紙および板紙用の塗工液組成物。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の塗工液組成物を用いることを特徴とする紙及び板紙。
  5. 中性ライナーであることを特徴とする請求項4に記載の紙及び板紙。
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