JP4730641B2 - 表面サイズ剤 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、表面サイズ剤に関し、さらに詳しくは、機械的安定性、保存安定性、酸性紙から中性紙に対してのサイズ性能、情報用紙に対する適性、塗工液における低発泡性、他の併用薬品との相溶性に優れた製紙用の表面サイズ剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からの製紙用表面サイズ剤としては、スチレン−マレイン酸系共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体、α−オレフィン−マレイン酸系共重合体等のアルカリ金属塩の水溶液が知られている。
【0003】
スチレン−マレイン酸系共重合体の表面サイズ剤では、硫酸バンドを多く使用した酸性抄紙の紙に対して良いサイズ効果を発現できるが、硫酸バンドを使用しない中性抄紙、及び硫酸バンドの使用量の少ない中性抄紙の紙ではサイズ性能が著しく劣る。
【0004】
また、表面塗工する際、サイズ剤自体の発泡が多いので、消泡剤の使用量を多くする必要があり、その結果として塗工面でハジキを起こしたり、サイズ効果を悪化させる等の問題がある。
【0005】
スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体の表面サイズ剤は、上記の中性抄紙の紙に対して比較的良好なステキヒトサイズ度を発現できるが、ペン書きサイズ度が劣るため、筆記時に文字がにじむ等の問題がある。また、この表面サイズ剤を用いて調製した塗工液は、金属イオンに対する安定性が著しく劣るため、凝集物(現場では「粕」と称している。)の発生及び発泡が多い等の操業上の問題が多い。
【0006】
α−オレフィン−マレイン酸系共重合体の表面サイズ剤は、良好なペン書きサイズ度を示すが、PPC用紙に用いるとトナーの定着性が低く、印刷用紙に用いるとインキの密着性に問題があり、またこの表面サイズ剤を用いて調製した塗工液は、発泡が多い等の操業上の問題がある。
【0007】
また、乳化重合法によるエマルション型表面サイズ剤の特許が既に先行技術としていくつか報告されている。
【0008】
例えば特開平8−246391号公報に、「[B](1)カルボキシル基含有不飽和単量体及び(2)疎水性不飽和単量体を含有してなる水溶性共重合体100重量部を含む水溶液中で、[A]疎水性不飽和単量体10〜500重量部を乳化重合して得られるエマルションを含有してなる製紙用表面サイズ剤」が開示されている。
【0009】
この粒子型表面サイズ剤は、従来の溶液型表面サイズ剤と比較して、他の併用薬品との相容性、及び塗工液を調製した場合における溶存金属イオンに対する安定性、あるいはこの塗工液の発泡性が改良されているが、未だサイズ性能が不十分である。
【0010】
さらに特開昭49−50209号公報には、「セラックのアルカリ水溶液中にスチレン及びスチレン誘導体より選択される少なくとも1種のモノマー、または必要に応じ更にこれらと共重合可能な他のモノマーを混合し、これにラジカル重合触媒を加えて共重合することにより得られる水性分散液よりなる紙の表面加工剤」が開示されている。
【0011】
しかし、前記表面加工剤は、セラックのアンモニア水溶液中でスチレン及びスチレン誘導体を乳化重合したものであり、紙の耐水性及び光沢性を改善できるが、乳化重合時に凝集物の発生が多い等の製造上の問題があり、耐水性も不充分である。また、得られた表面加工剤の金属イオンに対する安定性、及び機械的安定性が極めて劣るために、実機での操業上種々の問題が生じる。
【0012】
さらに最近では、インクジェット専用紙のみならずPPC用紙にも、モノクロ又はカラーインクを用いたインクジェット方式で印刷された画質に要求される、印字濃度、フェザリング、裏抜け、境界にじみ等のインクジェット適性が要求されるようになってきており、その適性を満たす紙を得ることができるようなサイズ剤が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、サイズ剤自体の機械的安定性及び保存安定性に優れ、酸性紙から中性紙に対するサイズ性能が優れており、さらに情報用紙、特にインクジェット用紙に対して優れたインクジェット適性を有し、なおかつ塗工液を調製した場合に、その塗工液の発泡性が著しく小さく、他の併用薬品との相溶性に優れた製紙用表面サイズ剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、少なくともセラックのアルカリ塩存在下で、疎水性モノマー及び非イオン性親水性モノマー、あるいは疎水性モノマー、非イオン性親水性モノマー及びアニオン性モノマーからなるモノマーを重合した後、高分子分散剤を混合することにより、またセラックのアルカリ塩以外の界面活性能を有する物質存在下で、疎水性モノマー及び非イオン性親水性モノマー、あるいは疎水性モノマー、非イオン性親水性モノマー及びアニオン性モノマーからなるモノマーを重合した後、セラックのアルカリ塩及び高分子分散剤を混合することにより前記問題を克服できる製紙用表面サイズ剤を完成するに至った。
【0015】
すなわち本発明の第1の態様は、
セラックのアルカリ塩(a)の存在下で非イオン性親水性モノマー(b)及び疎水性モノマー(d)を重合して得られる反応液に、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体の塩及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系共重合体である高分子分散剤(e)を混合することにより得られることを特徴とする表面サイズ剤であり、
本発明の第2の態様は、
セラックのアルカリ塩(a)の存在下で非イオン性親水性モノマー(b)、アニオン性モノマー(c)及び疎水性モノマー(d)を重合して得られる反応液に、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体の塩及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系共重合体である高分子分散剤(e)を混合することにより得られることを特徴とする表面サイズ剤であり、
本発明の第3の態様は、
セラックのアルカリ塩(a)以外の界面活性能を有する物質(f)の存在下で非イオン性親水性モノマー(b)及び疎水性モノマー(d)を重合して得られる反応液に、セラックのアルカリ塩(a)及び高分子分散剤(e)を混合することにより得られることを特徴とする表面サイズ剤であり、
本発明の第4の態様は、
セラックのアルカリ塩(a)以外の界面活性能を有する物質(f)の存在下で非イオン性親水性モノマー(b)、アニオン性モノマー(c)及び疎水性モノマー(d)を重合して得られる反応液に、セラックのアルカリ塩(a)及び高分子分散剤(e)を混合することにより得られることを特徴とする表面サイズ剤であり、
本発明の第5の態様は、
セラックのアルカリ塩(a)と、非イオン性親水性モノマー(b)及び疎水性モノマー(d)を繰り返し単位として有するポリマー、又は、非イオン性親水性モノマー(b)、アニオン性モノマー(c)及び疎水性モノマー(d)を繰り返し単位として有するポリマーと、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体の塩及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系共重合体である高分子分散剤(e)とを含有することを特徴とする表面サイズ剤であり、
本発明の第6の態様は、前記第3又は第4の態様において、
セラックのアルカリ塩(a)以外の界面活性能を有する物質(f)が、重合性基を有する界面活性剤であり、
本発明の第7の態様は、前記第6の態様において、
重合性基を有する界面活性剤が、メタクリロイル基及び/又はアリル基を有する反応性乳化剤であり、
本発明の第8の態様は、前記第1〜第5のいずれかの態様において、
前記非イオン性親水性モノマー(b)が、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートより成る群から選択される少なくとも一種であり、
本発明の第9の態様は、前記第1〜第5のいずれかの態様において、
前記疎水性モノマー(d)が、スチレン誘導体及びアルキル(メタ)アクリレートより成る群から選択される少なくとも一種であり、
本発明の第10の態様は、前記第2、第4及び第5のいずれかの態様において、
前記アニオン性モノマー(c)が、カルボン酸基を有するモノマーであり、
本発明の第11の態様は、前記第1又は第2の態様において、
前記反応液が、前記セラックのアルカリ塩(a)と前記セラックのアルカリ塩(a)以外の界面活性能を有する物質(f)の存在下で得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る表面サイズ剤はエマルション型表面サイズ剤である。この表面サイズ剤は、セラックのアルカリ塩(a)の存在下に、非イオン性親水性モノマー(b)及び疎水性モノマー(d)、又は非イオン性親水性モノマー(b)、アニオン性モノマー(c)及び疎水性モノマー(d)を重合した一段階の重合物に、高分子分散剤(e)を混合すること、あるいはセラックのアルカリ塩(a)以外の界面活性能を有する物質(f)の存在下に非イオン性親水性モノマー(b)及び疎水性モノマー(d)、又は非イオン性親水性モノマー(b)、アニオン性モノマー(c)及び疎水性モノマー(d)を重合した一段階の重合物に、セラックのアルカリ塩(a)と高分子分散剤(e)を混合することによって得ることができる。
【0017】
本発明で使用するセラックは、南洋植物に寄生するラック貝殻虫の分泌する樹脂状物質を精製したものであり、多数の樹脂酸の混合物からなっており、例えばアレウリチン酸とジャラール酸又はラクシジャラール酸とがエステル結合した軟化樹脂やその軟化樹脂が数個結合したものからなっている。
【0018】
本発明のセラックのアルカリ塩(a)とは、セラックをアルカリ物質で中和したものである。セラックのアルカリ塩を得る為に使用するアルカリ物質は、実質的にセラックを水溶液化できるものであればよく、特に限定されることはないが、苛性カリ、苛性ソーダ及びアンモニアが好ましい。前記アルカリ物質の使用量はセラックの酸価に対して当量以上とするのが、乳化重合時の安定性及び得られた表面サイズ剤の安定性が向上する点で好ましい。
【0019】
本発明においては、重合時にセラックのアルカリ塩を存在させると、重合が緩やかに進行し、特に乳化重合時に微細な粒子が得られるという利点があり、得られる乳化重合物の安定性が良好であり、耐水性が向上し、発泡が低減される傾向がある。
【0020】
本発明で使用するセラックのアルカリ塩以外の界面活性能を有する物質(f)として、公知の乳化剤あるいは分散剤が使用でき、例えば低分子界面活性剤、重合性基を有する界面活性剤が挙げられ、これらの群から選択される少なくとも一種を使用することができる。これらの中では、低発泡性に優れた表面サイズ剤が得られることから、重合性基を有する界面活性剤が特に好ましい。
【0021】
前記低分子界面活性剤としては、通常、乳化重合に適用できるものが使用可能であり、ノニオン性、アニオン性、両性及びカチオン性の低分子界面活性剤が使用でき、これらの群から選択される少なくとも一種を使用することができる。これらのなかでは、エマルションの安定性の観点から、ノニオン性の低分子界面活性剤及びアニオン性の低分子界面活性剤が好ましい。
【0022】
ノニオン性低分子界面活性剤としては、例えばポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコールグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコール等などが挙げられる。本発明においては、前記ノニオン性低分子界面活性剤の一種単独を使用することもできるし、また、その二種以上を併用することもできる。
【0023】
アニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンモノ及びジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等のリン酸エステル塩、スルホン酸塩、コハク酸エステル塩及びスルホコハク酸エステル塩、並びにアルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ塩、アルケニルコハク酸塩、ロジンのアルカリ金属塩及び強化ロジンのアルカリ金属塩等が挙げられる。本発明においては、前記アニオン性低分子界面活性剤の一種単独を使用することもできるし、また、その二種以上を併用することもできる。
【0024】
カチオン性界面活性剤としては、テトラアルキルアンモニウムクロライド、トリアルキルベンジルアンモニウムクロライド、アルキルアミン、モノ及びポリオキシエチレンアルキルアミン等を例示することができる。本発明においては、前記カチオン性低分子界面活性剤の一種単独を使用することもできるし、また、その二種以上を併用することもできる。
【0025】
前記重合性基を有する界面活性剤は、一般に反応性乳化剤と称され、分子中に疎水基、親水基及び炭素−炭素二重結合を有する化合物である。炭素−炭素二重結合とは、例えば、(メタ)アリル基、1−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、イソプロペニル基、ビニル基、及び(メタ)アクリロイル基等における二重結合をいう。
【0026】
これらの重合性基を有する界面活性剤としては、通常乳化重合に適用できるものが使用可能であり、特に限定されるものではないが、具体例として分子中に前記官能基を一つ以上有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアラルキルエーテル、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンモノ及びジスチリルフェニルエーテル等及びこれらのスルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩及びスルホコハク酸エステル塩、分子中に前記官能基を一つ以上有するポリオキシアルキレンアルキルエーテルあるいはポリオキシアルキレンフェニルエーテルの脂肪族及び芳香族カルボン酸塩、酸性リン酸(メタ)アクリル酸エステル系化合物、ロジン−グリシジル(メタ)アクリレート系化合物、さらにはアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物、例えばヘキシルジフェニルエーテルジスルホン酸、デシルジフェニルエーテルジスルホン酸、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸、ヘキサデシルジフェニルエーテルジスルホン酸及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等を例示できる。本発明においては、前記重合性基を有する界面活性剤の一種単独を使用することもできるし、またその二種以上を併用することもできる。
【0027】
通常、前記界面活性剤(f)は、セラックのアルカリ塩を用いず単独で使用する場合は疎水性モノマー(d)100重量部に対して0.5〜5重量部、セラックのアルカリ塩と併用して用いる場合は、セラックのアルカリ塩100重量部に対して1〜20重量部の範囲で使用する。
【0028】
本発明で用いる前記高分子分散剤(e)としては、基本的には疎水性基、非イオン性基及び/又はイオン性基をもつ合成高分子あるいは一般の天然高分子分散剤が使用でき、合成高分子の一例を挙げれば、ポリビニルアルコール及びその変性物、アニオン性スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体の部分あるいは完全中和物、アニオンあるいはカチオン性の(メタ)アクリル酸エステル系共重合体あるいは(メタ)アクリルアミド系共重合体、ポリエステル、ウレタン、アルキッド及びポリアミド等の水性樹脂を例示することができる。天然高分子乳化剤として、例えばカゼイン、レシチン、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、澱粉及び加工澱粉などが挙げられる。本発明においては、前記高分子分散剤(e)の一種単独を使用することもできるし、またその二種以上を併用することもできる。本発明において好適な高分子分散剤としては、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体の塩たとえばアンモニウム塩、及び(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を挙げることができる。
【0029】
前記高分子分散剤(e)は、一部重合前にセラックのアルカリ塩と併用することも可能であるが、重合後に添加するのが、エマルション粒子の機械的安定性、及び金属イオンを含有する水で稀釈した時の稀釈安定性が良好になる点で好ましい。
【0030】
前記高分子分散剤(e)の使用量は、疎水性モノマー(d)100重量部に対して5〜100重量部、さらに好ましくは5〜50重量部の範囲が良く、それ以上添加しても上記効果の向上は見られず、サイズ性能の低下をもたらすため好ましくない。
【0031】
本発明においては、非イオン性親水性モノマー(b)を重合成分にすると、特に乳化重合時に副成する凝集物の発生が抑えられ、製造が容易になるという利点があり、得られる表面サイズ剤の保存安定性、金属イオンに対する安定性及び機械的安定性が良好となる利点ももたらされる。
【0032】
本発明で用いる非イオン性親水性モノマー(b)は、カチオン性基及びアニオン性基を備えず、親水性基を備えた重合性モノマーであり、例えば(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。本発明においては、非イオン性親水性モノマーの一種を単独で使用することもできるし、その二種以上を併用することもできる。本発明で用いる非イオン性親水性モノマー(b)は、カチオン性基及びアニオン性基を備えず、親水性基を備えた重合性モノマーであればよく、非イオン性の水溶性モノマーを含有する。前記非イオン性親水性モノマーの中でも、安価であり入手しやすいアクリルアミドが好ましい。
【0033】
本発明においては、疎水性モノマー(d)を重合成分としていることで、得られる表面サイズ剤の耐水性が良好になる。
【0034】
本発明で用いる疎水性モノマー(d)は、水不溶性モノマーを含む。この疎水性モノマーとしては、例えばスチレン、及びα−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等のスチレン誘導体、アルキル(メタ)アクリレート、環状アルキル(メタ)アクリレート、マレイン酸及びフマル酸のジアルキルジエステル類、炭素数5〜10のターシャリーカルボン酸ビニル及びプロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、Nアルキル(メタ)アクリルアミド類、並びにメチルビニルエーテル等が挙げられる。これら各種の疎水性モノマーの一種を単独で使用することができ、またその二種以上を混合して使用することもできる。アルキル(メタ)アクリレート類と他の疎水性モノマーとを使用するときは、その配合比として、アルキル(メタ)アクリレート類の量は、全疎水性モノマー量に対して少なくとも25重量%、好ましくは40〜100重量%であることがサイズ性能の点で好ましい。
【0035】
本発明においては、アニオン性モノマー(c)を重合成分にすると、乳化重合時の安定性がさらに改善されるという利点があり、得られる表面サイズ剤の機械的安定性がより改善される。
【0036】
本発明で用いるアニオン性モノマー(c)は、アニオン性基を有するモノマーであり、たとえば(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸等のカルボン酸基を有するモノマー、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スルホン化スチレン等のスルホン酸基を有するモノマー、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのリン酸エステル等のリン酸エステル基を有するモノマーを挙げることができる。これらのアニオン性モノマーの一種を単独で使用することができ、またその二種以上を混合して使用することもできる。これらの中でもカルボキシル基を有するアニオン性モノマーが表面サイズ剤に低発泡性という特性を与えるので好ましく、その中でも(メタ)アクリル酸及びイタコン酸が特に好ましい。
【0037】
上記のモノマー成分の組み合わせとしては、非イオン性親水性モノマー(b)と疎水性モノマー(d)との組み合わせ、及び非イオン性親水性モノマー(b)とアニオン性モノマー(c)と疎水性モノマー(d)との組み合わせを挙げることができる。非イオン性親水性モノマー(b)と疎水性モノマー(d)との組み合わせを採用することにより本発明の目的を達成することができ、さらに非イオン性親水性モノマー(b)とアニオン性モノマー(c)と疎水性モノマー(d)との組み合わせを採用すると、機械的安定性がより改善されるという点に優れた表面サイズ剤を得ることができる。
【0038】
つまり、本発明の表面サイズ剤は、非イオン性親水性モノマー(b)及び疎水性モノマー(d)を繰り返し単位として有するポリマー、又は、非イオン性親水性モノマー(b)、アニオン性モノマー(c)及び疎水性モノマー(d)を繰り返し単位として有するポリマーを含有する。
【0039】
本発明の表面サイズ剤の製造時におけるセラックのアルカリ塩(a)、界面活性能を有する物質(f)、非イオン性親水性モノマー(b)、アニオン性モノマー(c)、疎水性モノマー(d)及び高分子分散剤(e)の使用量としては、疎水性モノマー(d)100重量部に対し、セラックのアルカリ塩(a)1〜20重量部、界面活性能を有する物質(f)0.5〜5重量部、非イオン性親水性モノマー(b)1〜20重量部及びアニオン性モノマー(c)0.1〜10重量部、高分子分散剤(e)5〜100重量部とするのが表面サイズ剤の安定性及びサイズ性能の点から好ましく、特に好ましいのは、疎水性モノマー(d)100重量部に対し、セラックのアルカリ塩(a)5〜15重量部、界面活性能を有する物質(f)0.5〜3重量部、非イオン性親水性モノマー(b)5〜15重量部、アニオン性モノマー(c)0.5〜5重量部及び高分子分散剤(e)5〜50重量部である。なお、前記界面活性能を有する物質(f)の使用量は、セラックのアルカリ塩(a)と併用しないで、単独に使用する場合の使用量であって、セラックのアルカリ塩(a)と併用する場合には、セラックのアルカリ塩(a)に対して1〜20重量%の範囲で使用する。
【0040】
本発明の表面サイズ剤を製造するにあたって、従来から公知の重合法を適用でき、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法等が適用できるが、製造の容易さから乳化重合法が好ましい。なお、この場合、モノマーは実質的に全て重合して単独重合体又は共重合体が生成し、セラックを重合前に存在させる場合は、セラックも重合に関与していると考えられる。
【0041】
前記重合法で使用するラジカル重合触媒としては、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、ターシャリーブチルハイドロパーオキシド、過酸化水素などの過酸化物、これら過硫酸塩又は過酸化物と還元剤の組合せによるレドックス系重合触媒、あるいは2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2−メチルプロピオナミジンジヒドロクロリド等のアゾ系触媒を挙げることができる。また必要に応じて公知の連鎖移動剤を適宜併用しても差し支えない。
【0042】
本発明の表面サイズ剤の適用される原紙に使用されるパルプとしては、クラフトパルプあるいはサルファイトパルプなどの晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプあるいはサーモメカニカルパルプなどの晒あるいは未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙などの古紙パルプ等を挙げることができる。
【0043】
原紙を得るために、填料、染料、酸性抄紙用ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー系あるいはアルケニルコハク酸無水物系中性抄紙用サイズ剤、中性抄紙用ロジン系サイズ剤等のサイズ剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、消泡剤などの添加物も、各々紙種に要求される物性を発現するために、必要に応じて使用してもよい。填料としては、クレー、タルク、酸化チタン、重質又は軽質炭酸カルシウム等が挙げられる。これらを単独であるいは併用して用いてもよい。
【0044】
本発明の表面サイズ剤を塗工するための塗工機としては、サイズプレス、フィルムプレス、ゲートロールコーター、シムサイザー、ブレードコーター、キャレンダー、バーコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター等を用いることができる。また、スプレー塗工機により原紙表面に塗布することもできる。
【0045】
本発明の表面サイズ剤を塗工する際に、酸化澱粉、燐酸エステル化澱粉、酵素変性澱粉、カチオン化澱粉などの澱粉類、カルボキシメチルセルロース等のセルロース類、ポリビニルアルコール類、ポリアクリルアミド類、アルギン酸ソーダ等の水溶性高分子を塗工液に混合して使用することもできる。また、他の表面サイズ剤、防滑剤、防腐剤、防錆剤、消泡剤、粘度調整剤、染料、顔料等の添加物を併用してもかまわない。
【0046】
本願発明の表面サイズ剤を前記原紙に塗工して得ることができるサイジング紙としては、各種の紙及び板紙を挙げることができる。例えば、PPC用紙、インクジェット記録用紙、レーザープリンター用紙、フォーム用紙、熱転写用紙、感熱記録用紙等の記録用紙、アート紙、キャストコート紙、上質コート紙等のコート紙、クラフト紙、純白ロール紙等の包装用紙、写真用印画紙、その他ノート用紙、書籍用紙、印刷用紙、新聞用紙等の洋紙、マニラボール、白ボール、チップボール等の紙器用板紙、ライナー等の板紙が挙げられる。
【0047】
本願発明の表面サイズ剤を塗工する際に使用する塗工液中の表面サイズ剤濃度は、通常、0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜1重量%である。0.1重量%未満ではサイズ効果が不十分である場合があり、5重量%を超えて使用してもサイズ効果の向上はほとんどなく経済的に不利益であるため好ましくない。
【0048】
また、通常、塗工量は、固形分で0.01〜1g/m2、好ましくは0.02〜0.1g/m2である。前記範囲内であると、特に良くサイズ効果が発揮される。
【実施例】
【0049】
以下に実施例、及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
(合成例1)
特開平8−246391号公報の参考例2に準じて、本発明における高分子分散剤であるスチレン−アクリル酸共重合体のアンモニウム塩(S−1)の水溶液、すなわち高分子分散剤溶液(S−1溶液)を以下のようにして合成した。
【0051】
攪拌器、温度計、還流冷却管及び窒素導入管を備えた1リットルの四つ口フラスコに、水100部、95%イソプロピルアルコール75部を加え、攪拌しながら加熱し、温度を80℃にまで上昇させた。これに、スチレン45部及びアクリル酸55部を混合した単量体混合液と、過硫酸カリウム5部を水120部に溶解した重合開始剤溶液とを3時間で全量滴下させた後、2時間熟成させ反応を完結させた。その後、イソプロピルアルコールを留去し、冷却後に28%アンモニア水溶液46.4部(アクリル酸に対して100モル%)を加え、水で希釈し、共重合体の濃度が20%になるように調製し、水溶性共重合体であるスチレン−アクリル酸共重合体のアンモニウム塩(S−1)の水溶液、すなわち高分子分散剤溶液(S−1溶液)を得た。
【0052】
(合成例2)
攪拌器、温度計、還流冷却管及び窒素導入管を備えた1リットルの四つ口フラスコに、水586部、スチレン80部、α−メチルスチレン39部、メチルメタクリレート22部、メタクリル酸75部、ノルマルドデシルメルカプタン3.3部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1部を加え、さらに30%過硫酸アンモニウム水溶液33部を加え80℃に加熱し、80℃で2時間熟成させ反応を完結させた。その後、30%苛性ソーダ水溶液121部(メタクリル酸に対して95モル%)を加え、80℃で30分保持した。水で希釈し、共重合体の濃度が25%になるように調製し、水溶性共重合体であるスチレン−メタクリル酸系共重合体のナトリウム塩(S−2)の水溶液、すなわち高分子分散溶液(S−2溶液)を得た。
【0053】
(実施例1)
攪拌器、温度計、還流冷却管及び窒素導入管を備えた1リットルの四つ口フラスコに、水535部、セラック(岐阜セラック(株)製N811)13.2部(疎水性モノマー全体を100重量部とした場合において8重量部)、エレミノールJS−2(三洋化成製)4.2部(疎水性モノマー全体を100重量部とした場合において1重量部)、アクリルアミド12.9部(疎水性モノマー全体を100重量部とした場合において8重量部)、48%苛性カリ3.4部を加え、さらにスチレン64.5部(疎水性モノマー全体を100重量部とした場合において40重量部)、ノルマルブチルアクリレート96.7部(疎水性モノマー全体を100重量部とした場合において60重量部)、及び過硫酸アンモニウム0.8部を加え、窒素気流下で混合攪拌しながら80℃に昇温した。80℃で2時間保持して乳化重合反応を完結させ、高分子分散剤溶液(S−1溶液)を161部(疎水性モノマー全体を100重量部とした場合において、S−1として20重量部)添加し、固形分濃度25.3%のエマルション型表面サイズ剤を得た。
【0054】
(実施例2〜9、比較例1〜4)
重合前の分散剤、非イオン性親水性モノマー、アニオン性モノマーの種類及び量、疎水性モノマー種類及び量、重合後の分散剤の種類及び量を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様にしてエマルション型表面サイズ剤を得た。
【0055】
(比較例5)
比較例5として市販のスチレン−アクリル系表面サイズ剤SS315(日本PMC社製)を用いた。
【0056】
(試験例1)酸性上質紙での評価
(1)酸性上質紙用原紙の製造
380mlカナディアン・スタンダード・フリーネスまで叩解したパルプ(広葉樹対針葉樹のパルプ比が9対1である混合パルプ)を2.5%のスラリーとし、これに対パルプ15%(絶乾重量基準)のタルク(富士タルク工業製:NDタルク)を添加した。これに、対パルプ2%(絶乾重量基準)の硫酸バンド、対パルプ0.3%(絶乾重量基準)の酸性紙用ロジン系サイズ剤(日本PMC製;AL120)を順次添加した後、pH4.5の希釈水でこのパルプスラリーを濃度0.25%まで希釈した。その後、対パルプ0.01%の歩留り向上剤(ハイモ社製;NR12MLS)を添加し、ノーブルアンドウッド抄紙機で、坪量65g/m2となるように抄紙した。尚、この時の抄紙pHは4.5であった。湿紙の乾燥は、ドラムドライヤーを用いて100℃で80秒間の条件で行った。
【0057】
(2)塗工液の調製方法
酸化澱粉(MS3800 日本食品化工社製)を濃度10%に水で希釈し、95℃で糊化を行い、この糊化液に前記表面サイズ剤を混和して塗工液を調製した。このとき、塗工液中の酸化澱粉及び表面サイズ剤の固形分濃度が以下の値になるように調整した。さらにこの塗工液を苛性ソーダ又は硫酸でpH8に、又は硫酸でpH6に調整して、pH8の塗工液及びpH6の塗工液を調製した。
塗工液中の酸化澱粉の固形分濃度:6%
塗工液中の表面サイズ剤の固形分濃度:0.2%
【0058】
(3)酸性上質紙の製造と評価
前記(1)で抄造した原紙に、前記(2)で配合した塗工液をサイズプレス機にて塗工し、酸性上質紙を得た。得られた試験紙を恒温恒湿(20℃、65%相対湿度)環境下で24時間調湿し、ステキヒトサイズ度(JIS P8122に準拠)及びペン書きサイズ度の測定(J TAPPI 紙パルプ試験方法No.12−76に準拠)を測定した。
【0059】
評価結果を、表2に示す。尚、ステキヒトサイズ度及びペン書きサイズ度は、何れも、値が高いほど良好であることを示す。
【0060】
(試験例2)中性上質紙での評価
(1)中性上質用原紙の抄造
380mlカナディアン・スタンダード・フリーネスまで叩解したパルプ(広葉樹対針葉樹のパルプ比が9対1である混合パルプ)を2.5%のスラリーとし、これに対パルプ2%(絶乾重量基準)の炭酸カルシウム(奥多摩工業社製;TP121S)を添加した。これに、対パルプ0.5%(絶乾重量基準)の両性デンプン(ナショナルスターチ社製;Cato3210)及び対パルプ0.08%(絶乾重量基準)のアルキルケテンダイマー系サイズ剤(日本PMC製;AS263)を順次に添加した後、pH7.5の希釈水でこのパルプスラリーを濃度0.25%まで希釈した。その後、希釈したパルプスラリーに対パルプ8%(絶乾重量基準)の炭酸カルシウム(奥多摩工業社製;TP121S)、対パルプ0.01%の歩留り向上剤(ハイモ社製;NR12MLS)を添加し、ノーブルアンドウッド抄紙機で、坪量65g/m2となるように抄紙した。尚、この時の抄紙pHは7.5であった。湿紙の乾燥は、ドラムドライヤーを用いて100℃で80秒間の条件で行った。
【0061】
(2)塗工液の調製方法
酸化澱粉(MS3800 日本食品化工社製)を濃度10%に水で希釈し、95℃で糊化を行い、この糊化液に前記表面サイズ剤を混和して塗工液を調製した。このとき、塗工液中の酸化澱粉及び表面サイズ剤の固形分濃度が以下の値になるように調整した。さらにこの塗工液を苛性ソーダ又は硫酸でpH8に調整して、pH8の塗工液を調製した。
塗工液中の酸化澱粉の固形分濃度:6%
塗工液中の表面サイズ剤の固形分濃度:0.2%
【0062】
(3)中性上質紙の製造と評価
前記(1)で抄造した原紙に、前記(2)で配合したpH8の塗工液をサイズプレスを用いて塗工し、中性上質紙を得た。得られた試験紙を恒温恒湿(20℃、65%相対湿度)環境下で24時間調湿し、試験例1と同様にして、ステキヒトサイズ度及びペン書きサイズ度の測定を行った。結果を表2に示す。
【0063】
(試験例3)インクジェット記録紙での評価
(1)記録紙用中性原紙の抄造
380mlカナディアン・スタンダード・フリーネスまで叩解したパルプ(広葉樹対針葉樹のパルプ比が9対1である混合パルプ)を2.5%のスラリーとし、これに対パルプ1%(絶乾重量基準)の炭酸カルシウム(奥多摩工業社製;TP121S)及び5%のタルク(富士タルク工業社製:NDタルク)を添加した。これに、対パルプ1. 0%(絶乾重量基準)の硫酸バンド、対パルプ0. 5%(絶乾重量基準)の両性デンプン(ナショナルスターチ社製;Cato3210)及び対パルプ0.3%(絶乾重量基準)の中性紙用ロジン系サイズ剤(日本PMC製;CC167)を順次に添加した後、pH7.5の希釈水でこのパルプスラリーを濃度0.25%まで希釈した。その後、希釈したパルプスラリーに対パルプ4%(絶乾重量基準)の炭酸カルシウム(奥多摩工業社製;TP121S)、対パルプ0.01%の歩留り向上剤(ハイモ社製;NR12MLS)を添加し、ノーブルアンドウッド抄紙機で、坪量65g/m2となるように抄紙した。尚、この時の抄紙pHは7.5であった。湿紙の乾燥は、ドラムドライヤーを用いて100℃で80秒間の条件で行った。
【0064】
(2)塗工液の調製方法
酸化澱粉(MS3800 日本食品化工社製)を濃度10%に水で希釈し、95℃で糊化を行い、この糊化液に前記表面サイズ剤及び食塩を混和して塗工液を調製した。このとき、塗工液中の酸化澱粉、表面サイズ剤及び食塩の固形分濃度が以下の値になるように調整した。さらにこの塗工液を苛性ソーダ又は硫酸でpH8に調整して、pH8の塗工液を調製した。
塗工液中の酸化澱粉の固形分濃度:8%
塗工液中の表面サイズ剤の固形分濃度:0.2%
塗工液中の食塩の固形分濃度:0.5%
【0065】
(3)記録紙の製造
前記(1)で抄造した記録用原紙に、前記(2)で配合した塗工液をサイズプレスを用い塗工し、記録紙を得た。得られた試験紙を恒温恒湿(20℃、65%相対湿度)環境下で24時間調湿した。
【0066】
(4)記録紙の評価
前記(3)で得られた試験紙を恒温恒湿(20℃、65%相対湿度)環境下で24時間調湿し、以下のインクジェット適性試験を行った。
【0067】
(インクジェット適性試験方法)
インクジェット適性の評価は、上記サイズ効果試験で得られた試験紙をカレンダー処理した後、恒温恒湿(20℃、65%相対湿度)環境下で24時間以上調湿を行った後、キャノン(株)製バブルジェットプリンターであるBJ−220JCIIを用いて以下の方法にて行った。結果を表3に示す。
【0068】
(a) 印字濃度試験
試験紙にベタ印刷をし、ベタ部分の印字濃度をマクベスインク濃度計で測定した。数値が大きいほど印字濃度が高いことを示す。
【0069】
(b) フェザリング試験
試験紙に直交する線幅一定の直線及び文字を印字し、目視にて直線及び文字の外縁のにじみを5段階で評価した。フェザリングの全くないものを5とし、インクがにじんでしまって文字の判別がつかないものを1とした。通常の使用に耐えうる印字品質は4以上である。
【0070】
(c) 裏抜け試験
試験紙にベタ印刷をし、ベタ印字部分裏側のインクのにじみ程度を、目視にて5段階で評価した。裏にインクがにじんでいないものを5とし、ベタ部分が完全に裏抜けしたものを1とした。通常の使用に耐えうる印字品質は、4以上である。
【0071】
(試験例4)発泡性試験
(1)発泡性評価用試験液の調製
酸化澱粉(MS3800 日本食品化工社製)を濃度10%に水で希釈し、95℃で糊化を行い、この糊化液に前記表面サイズ剤及び食塩を混和して塗工液を調製した。このとき、塗工液中の酸化澱粉、表面サイズ剤及び食塩の固形分濃度が以下の値になるように調整した。
塗工液中の酸化澱粉の固形分濃度:5%
塗工液中の表面サイズ剤の固形分濃度:0.2%
塗工液中の食塩の固形分濃度:0.5%
【0072】
(2)塗工液の発泡性評価
前記(1)で配合した塗工液600gを、内径7cm及び長さ50cmのフォームセルに入れ、下記の条件で循環し、泡の高さ(mm)を測定した。結果を表3に示す。
【0073】
塗工液温度60℃、循環ポンプ流量9リットル/分、循環時間3分。
尚、表3において、泡の高さが低い程、低発泡性である(発泡量が少ない)ことを示す。
【0074】
(試験例5)機械的安定性試験
前記(試験例4)の(1)で調製した塗工液50gをカップに入れ、温度60℃、荷重20kg、回転数800rpmにて10分間マーロン式安定性試験を行った。生成した凝集物を325メッシュ金網にてろ過して全固形分に対する析出量を測定し百分率で表した。結果を表3に示す。
【0075】
(試験例6)金属イオンに対する安定性試験
700ppmの硬度(CaCO3として)の稀釈水を用い、表面サイズ剤を固形分で0.2%に稀釈して分散液を調整した。この分散液の状態の変化を観察して、変化がみられなかったものを○、やや濁りが生じたものを△、沈殿物が生じたものを×とした。結果を表3に示す。
【0076】
表2の酸性上質紙及び中性上質紙での評価結果から、実施例の表面サイズ剤は、塗工液pHの変化に対する影響が少なく、ステキヒトサイズ度、ペン書きサイズ度が比較例1、3、4の表面サイズ剤に比べ良好であることがわかった。
【0077】
表3のインクジェット記録用紙での評価結果から、実施例の表面サイズ剤は印字濃度、フェザリング、裏抜け評価が比較例1,3,4の表面サイズ剤に比べ良好であることがわかった。
【0078】
表3の評価結果から、発泡性は、実施例の表面サイズ剤が全ての比較例の表面サイズ剤に比べ低く、機械的安定性は、実施例の表面サイズ剤が比較例5を除く全ての表面サイズ剤に比べ優れ、金属イオンに対する安定性は、実施例の表面サイズ剤が比較例の全ての表面サイズ剤に比べ優れていることがわかった。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
なお、表中の略号は以下の物質を表わす。
AAm:アクリルアミド
MAA:メタクリル酸
AA:アクリル酸
St:スチレン
iBMA:イソブチルメタクリレート
nBMA:ノルマルブチルメタクリレート
iBA:イソブチルアクリレート
nBA:ノルマルブチルアクリレート
MS‐60:アントックスMS−60(日本乳化剤社製)(メタクリロイル基を有する反応性乳化剤であって、以下の構造式を有する。)
【0082】
【化1】
【0083】
ただし、前記式中、Rはアルキル基、nは整数、Xはナトリウム等のアルカリ金属を示す。
【0084】
JS-2:エレミノールJS-2(三洋化成製)(アリル基を有する反応性乳化剤であり、以下の構造式を有する。)
CH2−COOR
|
NaO3S−CH−COOCH2CH=CH2
セラック:N811(岐阜セラック(株)製)、表中のセラックは、全てKOHで100%中和されてなる。
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の表面サイズ剤は、機械的安定性、低発泡性及び保存安定性の全てに優れ、酸性紙から中性紙のサイズ性能を改善することができ、さらに情報用紙、特にインクジェット用紙に対して優れた適性を有し、さらに塗工液での低発泡性、他の併用薬品との相溶性及び溶存金属イオンに対する安定性に優れている。
Claims (11)
- セラックのアルカリ塩(a)の存在下で非イオン性親水性モノマー(b)及び疎水性モノマー(d)を重合して得られる反応液に、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体の塩及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系共重合体である高分子分散剤(e)を混合することにより得られることを特徴とする表面サイズ剤。
- セラックのアルカリ塩(a)の存在下で非イオン性親水性モノマー(b)、アニオン性モノマー(c)及び疎水性モノマー(d)を重合して得られる反応液に、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体の塩及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系共重合体である高分子分散剤(e)を混合することにより得られることを特徴とする表面サイズ剤。
- セラックのアルカリ塩(a)以外の界面活性能を有する物質(f)の存在下で非イオン性親水性モノマー(b)及び疎水性モノマー(d)を重合して得られる反応液に、セラックのアルカリ塩(a)及び高分子分散剤(e)を混合することにより得られることを特徴とする表面サイズ剤。
- セラックのアルカリ塩(a)以外の界面活性能を有する物質(f)の存在下で非イオン性親水性モノマー(b)、アニオン性モノマー(c)及び疎水性モノマー(d)を重合して得られる反応液に、セラックのアルカリ塩(a)及び高分子分散剤(e)を混合することにより得られることを特徴とする表面サイズ剤。
- セラックのアルカリ塩(a)と、非イオン性親水性モノマー(b)及び疎水性モノマー(d)を繰り返し単位として有するポリマー、又は、非イオン性親水性モノマー(b)、アニオン性モノマー(c)及び疎水性モノマー(d)を繰り返し単位として有するポリマーと、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体の塩及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系共重合体である高分子分散剤(e)とを含有することを特徴とする表面サイズ剤。
- セラックのアルカリ塩(a)以外の界面活性能を有する物質(f)が、重合性基を有する界面活性剤である前記請求項3又は4に記載の表面サイズ剤。
- 重合性基を有する界面活性剤が、メタクリロイル基及び/又はアリル基を有する反応性乳化剤である前記請求項6に記載の表面サイズ剤。
- 前記非イオン性親水性モノマー(b)が、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートより成る群から選択される少なくとも一種である前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面サイズ剤。
- 前記疎水性モノマー(d)が、スチレン誘導体及びアルキル(メタ)アクリレートより成る群から選択される少なくとも一種である前記請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面サイズ剤。
- 前記アニオン性モノマー(c)が、カルボン酸基を有するモノマーである前記請求項2、4及び5のいずれか1項に記載の表面サイズ剤。
- 前記反応液は、前記セラックのアルカリ塩(a)と前記セラックのアルカリ塩(a)以外の界面活性能を有する物質(f)の存在下で得られることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面サイズ剤。
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