JP4393690B2 - 車椅子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は車椅子に関し、特にリクライニング機能が改良された車椅子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車椅子は、身体障害者、高齢者、負傷者等の自力歩行が困難な者に利用される。図7は、一般的な車椅子が示された右側面図であり、図8はその正面図である。この車椅子は、本体フレーム101、レッグサポート103、押手105、肘掛けパイプ107、肘掛け109、背シート111、大車輪113、ハンドリム115、前輪117、座シート119等を備えている。レッグサポート103は、レッグパイプ121、レッグレスト123及びフットレスト125から構成されている。利用者(すなわち身体障害者等)は座シート119に着座し、背シート111に背中をもたれさせて車椅子を利用する。
【0003】
図7から明らかなように、背シート111の取り付け角度は鉛直方向に対して若干後方に傾斜している。利用者の中には、このような取り付け角度の背シート111が適さない症状の者も多い。例えば、腰が曲がりにくい利用者が図7及び図8に示された車椅子に着座するには苦痛を伴う。また、図7及び図8に示された車椅子に着座すると上半身が前方に倒れてしまう者もいる(例えば小児麻痺の利用者)。
【0004】
このような利用者のためにいわゆるリクライニング式の車椅子が提案され、実用されている。リクライニング式車椅子では、背シートの傾斜角度が調整可能である。利用者は、自らの症状に応じて背シートを傾斜させることができる。しかしながら、背シートを大幅に後方傾斜(すなわち、上方ほど後方に位置するような傾斜)させた場合は、利用者の尻が徐々に滑って前方にずれ、無理な姿勢となって利用者が苦痛を感じてしまうことがある。前方へのずれが大きいと、利用者が座シートから転落してしまうこともある。
【0005】
座シートと背シートとが一体的に回動する車椅子も提案されている。この車椅子では、座シートに対する背シートの角度は、常に一定である。従って、背シートが後方に傾斜するのに伴って、座シートは前上がりとなる。座シートが前上がりとなることによって、尻の前方へのずれが抑制される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、座シートが前上がりとなることに伴って、却って苦痛を感じてしまう利用者もいる。また、腰の曲がりにくい利用者にとっては、座シートに対する背シートの角度が常に一定である車椅子は依然として利用しづらいものである。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、様々な症状や体型の利用者が最適な姿勢で利用することができる車椅子の提供をその目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するためになされた発明は、
メインフレーム、座部及び背部を備えた車椅子であって、
この座部と背部とが一体となって回動することによってメインフレームに対する座部及び背部の傾斜角度が調整可能であり、かつ背部が回動することによって座部に対する背部の傾斜角度が調整可能であるように構成されたことを特徴とする車椅子、
である。
【0009】
この車椅子では、座部及び背部が一体的に傾斜し、しかも座部とは別個に背部が傾斜するので、利用者にとって最適な姿勢が達成されうる。
【0010】
このような傾斜角度の調整は、2つの伸縮部材(第一伸縮部材と第二伸縮部材)によって達成されうる。第一伸縮部材はメインフレームと座部又は背部とに連結され、第二伸縮部材は座部と背部とに連結される。第一伸縮部材が伸縮することによってメインフレームに対する座部及び背部の傾斜角度が調整され、第二伸縮部材が伸縮することによって座部に対する背部の傾斜角度が調整される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、適宜図面が参照されつつ、本発明の実施形態が説明される。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態にかかる車椅子1が示された斜視図である。この車椅子1は、メインフレームM、座部S及び背部Bを備えている。座部Sは、メインフレームMの上方に取り付けられている。背部Bは、座部Sの後方に取り付けられている。また、この車椅子1は、メインフレームMに取り付けられた前輪3及び後輪5、座部Sの前方に取り付けられたレッグサポート7、座部Sの側方に取り付けられた左右一対の肘掛け9並びに背部Bの上方に取り付けられた押し手11及びリリースレバー13を備えている。背部Bは、その前面を覆う背シート15を備えている。この図では左側の押し手11及びリリースレバー13のみが示されているが、車椅子1は右側にも同様の押し手及びリリースレバーを備えている。図示されていないが、例えばタッグルブレーキ等の付属品が車椅子1に装着されてもよい。
【0013】
図2は、図1の車椅子1の一部が示された拡大斜視図である。メインフレームMは、左右一対のベースフレーム17、左右一対のアッパーフレーム19、フロントフレーム21及びリアフレーム23を備えている。各フレーム17、19、21、23は、溶接等によって固定されている。
【0014】
座部Sは、左右一対のサイドパイプ25、第一横パイプ27及び第二横パイプ29を備えている。第一横パイプ27及び第二横パイプ29は、左右のサイドパイプ25、25を連結している。左右のサイドパイプ25、25の間には座シートが張り渡されるが、図2では便宜上この座シートの図示が省略されている。座部Sは、軸ボルト31によってメインフレームMに軸支されている。
【0015】
背部Bは、左右一対の背パイプ33、ボトムパイプ35及び背シート15を備えている。ボトムパイプ35は、左右の背パイプ33、33を連結している。背シート15は、左右の背パイプ33、33の間に張り渡されている。背部Bは、軸ボルト37によって座部Sに軸支されている。
【0016】
この車椅子1は、さらに第一伸縮部材39と第二伸縮部材41とを備えている。第一伸縮部材39の一端はフロントフレーム21に軸着されており、他端は第二横パイプ29に軸着されている。すなわち、第一伸縮部材39は、メインフレームMと座部Sとに連結されている。第二伸縮部材41の一端は第一横パイプ27に軸着されており、他端はボトムパイプ35に軸着されている。すなわち、第二伸縮部材41は、座部Sと背部Bとに連結されている。
【0017】
図3から図6は、図1の車椅子1が示された左側面図である。図3に示された状態では、座部Sはほぼ水平方向に延びており、背部Bはほぼ鉛直方向に伸びている。従って、座部Sと背部Bとのなす角度は、ほぼ直角である。第一伸縮部材39及び第二伸縮部材41には、ロックがかかっている。従って、第一伸縮部材39及び第二伸縮部材41は、伸縮しない。
【0018】
図4では、座部Sは前上がりに傾斜しており、背部Bは後方に傾斜している。座部Sと背部Bとのなす角度は、ほぼ直角のままである。図4に示された状態が達成されるには、図3に示された状態でまず左側のリリースレバー13が介助者によって引かれる。これにより、第一伸縮部材39のロックが解除され、第一伸縮部材39が伸縮可能となる。介助者が押し手11を下方に押すと、第一伸縮部材39が短縮される。同時に、軸ボルト31を支点として、座部S及び背部BがメインフレームMに対して一体的に回動する。介助者がリリースレバー13を戻すことにより、第一伸縮部材39にロックがかかる。こうして、図4に示された状態が達成される。図4では座部Sが前上がりに傾斜しているので、背部Bが傾斜しているにもかかわらず、利用者の尻が前方にずれることがない。もちろん、図3に示された状態から第一伸縮部材39を伸長させることにより、座部Sを前下がりに傾斜させ、背部Bを前方に傾斜させることも可能である。座部Sが前下がりになれば、利用者の車椅子1からの降車が容易となる。
【0019】
図5では、座部Sの傾斜角度は図4に示された状態のままである。背部Bは、図4に示された状態よりもさらに後方に傾斜している。すなわち、図4に示された状態よりも図5に示された状態の方が、座部Sに対する背部Bの傾斜角度が大きい。図5に示された状態が達成されるには、図4に示された状態でまず右側のリリースレバー(図示されず)が介助者によって引かれる。これにより、第二伸縮部材41のロックが解除され、第二伸縮部材41が伸縮可能となる。介助者が押し手11を後方に引くと、第二伸縮部材41が短縮される。同時に、軸ボルト37を支点として、座部Sに対して背部Bが回動する。介助者がリリースレバーを戻すことにより、第二伸縮部材41にロックがかかる。こうして、図5に示された状態が達成される。図5では座部Sが前上がりに傾斜しているので、利用者の尻が前方にずれることがない。また、図5では座部Sに対する背部Bの傾斜角度が大きいので、例えば腰が曲がりにくい利用者でも苦痛を感じにくい。もちろん、図3又は図4に示された状態から第二伸縮部材41を伸長させることにより、座部Sに対する背部Bの傾斜角度を小さくするとも可能である。
【0020】
図6には、折り畳まれた車椅子1が示されている。図6に示された状態が達成されるには、例えば図3に示された状態から、第一伸縮部材39及び第二伸縮部材41が伸長させられる。図6に示された状態から、左右の押し手11及びリリースレバー13が中寄せ方向にたたまれ、レッグサポート7が取り外され、前輪3及び後輪5が取り外されれば、車椅子1がさらにコンパクトとなる。従って、例えば自家用車等で車椅子1が運搬されるときに便利である。
【0021】
第一伸縮部材39及び第二伸縮部材41は、伸縮が可能でかつ伸縮にロックがかかる機能を有するものであれば、どのような種類のものでも構わない。好適には、伸縮部材39、41として、ガススプリング又はメカニカルスプリングが用いられる。
【0022】
この車椅子1では、第一伸縮部材39の他端は第二横パイプ29(すなわち座部S)に連結されているが、他端が背部Bに連結されてもよい。この場合でも、第一伸縮部材39の伸縮により、座部Sと背部Bとが一体となって回動する。
【0023】
第一伸縮部材39の両端は、座部及び背部が一体となってメインフレームに対して回動しうる位置であれば、どの部分に取り付けられてもよい。また、第二伸縮部材41の両端は、背部が座部に対して回動しうる位置であれば、どの部分に取り付けられてもよい。さらに、剛性及び強度向上の目的で、第一伸縮部材39が複数本設けられてもよく、第二伸縮部材41が複数本設けられてもよい。
【0024】
【発明の効果】
以上説明されたように、本発明の車椅子では、座部及び背部の傾斜角度が任意に調整されうる。この車椅子は、1台で種々の利用者に適合されうる。この車椅子は、福祉の向上に寄与しうるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかる車椅子が示された斜視図である。
【図2】図2は、図1の車椅子の一部が示された拡大斜視図である。
【図3】図3は、図1の車椅子が示された左側面図である。
【図4】図4は、図1の車椅子が示された左側面図である。
【図5】図5は、図1の車椅子が示された左側面図である。
【図6】図6は、図1の車椅子が示された左側面図である。
【図7】図7は、従来の一般的な車椅子が示された右側面図である。
【図8】図8は、図7の車椅子が示された正面図である。
【符号の説明】
1・・・車椅子
3・・・前輪
5・・・後輪
7・・・レッグサポート
9・・・肘掛け
11・・・押し手
13・・・リリースレバー
15・・・背シート
17・・・ベースフレーム
19・・・アッパーフレーム
21・・・フロントフレーム
23・・・リアフレーム
25・・・サイドパイプ
27・・・第一横パイプ
29・・・第二横パイプ
31・・・軸ボルト
33・・・背パイプ
35・・・ボトムパイプ
37・・・軸ボルト
39・・・第一伸縮部材
41・・・第二伸縮部材
Claims (1)
- メインフレーム、座部、背部、第一伸縮部材及び第二伸縮部材を備えた車椅子であって、
この座部と背部とが一体となって回動することによってメインフレームに対する座部及び背部の傾斜角度が調整可能であり、かつ背部が回動することによって座部に対する背部の傾斜角度が調整可能であるように構成されており、
第一伸縮部材はメインフレームと座部又は背部とに連結されており、第二伸縮部材は座部と背部とに連結されており、第一伸縮部材が伸縮することによってメインフレームに対する座部及び背部の傾斜角度が調整され、第二伸縮部材が伸縮することによって座部に対する背部の傾斜角度が調整されており、
背部の上方に、左右一対の押し手及びリリースレバーを備えており、一方のリリースレバーが引かれると第一伸縮部材の伸縮のロックが解除され、一方のリリースレバーが戻されると第一伸縮部材の伸縮がロックされ、他方のリリースレバーが引かれると第二伸縮部材の伸縮のロックが解除され、他方のリリースレバーが戻されると第二伸縮部材の伸縮がロックされるように構成されたことを特徴とする車椅子。
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