JP4390384B2 - カルボキシル基含有ゴムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリビニルアルコールを乳化剤または分散剤としたカルボキシル基含有ゴムのラテックスから、特定の凝固剤を用いたスクリュー押出機型の脱水・乾燥装置を用いて凝固、脱水、洗浄及び乾燥を連続的に行うことにより、良好な加硫特性を有し、且つ良好な耐スコーチ性を有するカルボキシル基含有ゴムを収量よく連続的に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、産業の大型化、高速化に伴い、これらに使用されるゴム部品はますます高度の耐久性を保持することが要求されている。特に、大型化、高速化は、機械・装置の運転温度の上昇を招くため、ゴム部品に対して、高度の耐熱性が要求され、同時に潤滑油温度の上昇のためにゴム部品に対して耐油性の向上が要求されている。また、産業活動の広域化に伴う寒冷地等の苛酷な環境における使用により、ゴム部品に対する耐寒性の要求も強まっている。
【0003】
特公昭59−14498号公報には、エチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル及び架橋サイトモノマーとして、グリシジルメタクリレートなどのモノエポキシモノオレフィン化合物よりなる共重合体と加硫剤からなるゴム組成物が、耐油性、耐熱性および耐候性に優れていることが記載されている。
これらの組成物では、耐油性、耐熱性および耐候性のバランスが良好であることも認められるが、上記のような使用条件の苛酷化から、耐油性、耐寒性および耐熱性のバランスにおいて、更なる改良が求められていた。
【0004】
更に、これらの組成物は、脂肪酸石けん/イオウ、ポリアミン系または、有機カルボン酸およびそのアンモニウム塩などの加硫系を用いて加硫することができ、機械的性質も良好であるが、加硫速度が遅いという欠点を有している。
即ち、所期の物性を得るために、通常の加硫を行った後、後加硫を行っているのが現状であり、この後加硫に要する時間を短縮するか、完全に省くことが可能となれば、その工業的意義は非常に大きく、そのためにこれらが改良されたゴム組成物への要望が急速に高まってきた。
【0005】
アクリル酸アルキルまたはエチレン/アクリル酸アルキルを主成分とし、架橋サイトモノマーとして、ブテンジオン酸モノアルキルエステルを用いたエラストマー組成物は、良好な加硫速度を有することが特開昭50−45031号公報で公知となっている。
【0006】
一方、これらのゴムを製造する方法としては、先ず重合によりゴムラテックスを得て、これに酸あるいは塩などを加え、凝固させた後これを脱水し、更に乾燥する手法が一般的に行われている。
【0007】
特公平3−29085号公報には、ゴムラテックスが乳化剤としてポリビニルアルコールを含み、凝固剤として硼素化合物と硫酸根を含んだ化合物の混合物を脱水、乾燥装置に供給し、凝固、脱水、乾燥等を連続的に且つ収量良く行えるようにした乾燥ゴムの連続製造方法が記載されている。
しかしながらゴムラテックスがカルボキシル基含有ゴムのラテックスの場合、凝固状態が不十分となり機械的圧搾に抗することができず、乾燥ゴムの収量が不十分となったり、得られた乾燥ゴムが混練加工工程でスコーチする欠点がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の課題を解決し、良好な加硫特性を有し、且つ良好な耐スコーチ性を有するカルボキシル基含有ゴムを収量よく連続的に製造する方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ポリビニルアルコールを乳化剤または分散剤としたカルボキシル基含有ゴムのラテックスを、特定の凝固剤を用いてスクリュー押出機の中で凝固、脱水、洗浄及び乾燥を連続的に行うことにより、良好な加硫速度を有し、且つ良好な耐スコーチ性を有するゴムを収量よく得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明はポリビニルアルコールを乳化剤または分散剤としたカルボキシル基含有ゴムのラテックスから、硼酸アンモニウムを含有する凝固剤を用いてスクリュー押出機型の脱水・乾燥装置の中にて凝固、脱水、洗浄及び乾燥を連続的に行い乾燥ゴムを製造するカルボキシル基含有ゴムの製造方法である。
【0010】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明に用いるカルボキシル基含有ゴムのラテックスはポリビニルアルコールを乳化剤または分散剤とし、カルボキシル基含有化合物を共重合せしめたゴムラテックスであれば特に制限はないが、特にポリビニルアルコールが乳化剤または分散剤として好適なラテックス、例えばエチレン・酢酸ビニル・アクリル酸アルキルエステル及び/またはアクリル酸アルコキシアルキルエステル・カルボキシル基含有化合物の共重合体ラテックス、エチレン・アクリル酸アルキルエステル及び/またはアクリル酸アルコキシアルキルエステル・カルボキシル基含有化合物の共重合体ラテックスなどが好適に用いられる。
【0011】
本発明のカルボキシル基含有ゴムは、(A)エチレン単量体単位0〜5質量%、(B)酢酸ビニル単量体単位0〜50質量%、(C)下記の一般式(1)で表されるマレイン酸モノアルキルエステル及び/または下記の一般式(2)で表されるマレイン酸モノアルコキシアルキルエステル単位1〜12質量%と(D)アクリル酸アルキルエステル及び/またはアクリル酸アルコキシアルキルエステル単位99〜33質量%からなる上記のカルボキシル基含有ゴムであることが好ましい。
【0012】
【化3】
(式中のR1は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【0013】
【化4】
(式中のR2は炭素数1〜4のアルキレン基、R3は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【0014】
本発明のカルボキシル基含有ゴムの(A)エチレン単量体単位は0〜5質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましく、0.5〜2.5質量%が更に好ましい。
【0015】
本発明の(B)酢酸ビニル単量体単位は0〜50質量%が好ましく、0〜30質量%であることがより好ましく、0〜10質量%であることが更に好ましい。
【0016】
本発明に用いられるカルボキシル基含有化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−ペンテン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、マレイン酸モノアルコキシアルキルエステルなどが挙げられ、実用的な加硫特性/耐スコーチ性のバランスの点で、(C)上記の一般式(1)または一般式(2)で示されるマレイン酸モノアルキルエステル、マレイン酸モノアルコキシアルキルエステルが好ましく、具体的にはマレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノメトキシエチル、マレイン酸モノエトキシエチル、マレイン酸モノメトキシブチル、マレイン酸モノエトキシブチルなどが挙げられる。
本発明の(C)マレイン酸モノアルキルエステル及び/またはマレイン酸モノアルコキシアルキルエステル単位は1〜12質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。
【0017】
本発明に用いられる(D)アクリル酸アルキルエステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどが挙げられ、機械的な性質、実用的な耐寒/耐油バランスの点で、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレートが好ましい。
【0018】
本発明に用いられる(D)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−(n−プロポキシ)エチルアクリレート、2−(n−ブトキシ)エチルアクリレート、3−メトキシプロピルアクリレート、3−エトキシプロピルアクリレート、2−(n−プロポキシ)プロピルアクリレート、2−(n−ブトキシ)プロピルアクリレートなどが挙げられる。
【0019】
本発明の(D)アクリル酸アルキルエステル及び/またはアクリル酸アルコキシアルキルエステル単位は99〜33質量%であることが好ましく、95〜50質量%であることがより好ましい。
【0020】
本発明のカルボキシル基含有ゴムには、本発明の目的を損なわない範囲で上記の単量体と共重合可能な他の単量体を共重合させたものでもよい。
共重合可能な他の単量体としては、シアノメチルアクリレート、1−シアノエチルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、1−シアノプロピルアクリレート、2−シアノプロピルアクリレート、3−シアノプロピルアクリレート、4−シアノブチルアクリレート、6−シアノヘキシルアクリレート、2−エチル−6−シアノヘキシルアクリレート、8−シアノオクチルアクリレートなどのアクリル酸エステルが挙げられる。
【0021】
更に、1,1−ジヒドロペルフルオロエチル(メタ)アクリレート、1,1−ジヒドロペルフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1,1,5−トリヒドロペルフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、1,1,2,2−テトラヒドロペルフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1,1,7−トリヒドロペルフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1,1−ジヒドロペルフルオロオクチル(メタ)アクリレート、1,1−ジヒドロペルフルオロデシル(メタ)アクリレートなどの含フッ素アクリル酸エステル、1−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有アクリル酸エステル、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの第3級アミノ基含有アクリル酸エステル、メチルメタクリレート、オクチルメタクリレートなどのメタクリレート、メチルビニルケトンのようなアルキルビニルケトン、ビニルエチルエーテル、アリルメチルエーテルなどのビニル及びアリルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどのビニル芳香族化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのビニルニトリル、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、プロピオン酸ビニル、アルキルフマレートなどのエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
【0022】
また、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、メタアリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有化合物、2−クロルエチルビニルエーテル、2−クロルエチルアクリレート、ビニルベンジルクロライド、ビニルクロルアセテート、アリルクロルアセテートなどの活性塩素基含有化合物が挙げられる。
【0023】
本発明に用いられるポリビニルアルコールとしては、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコールの内で如何なるものでも良く、その使用量はポリマー100質量部に対して2〜7質量部であり、好ましくは4〜7質量部である。
【0024】
本発明の凝固剤としては、硼酸アンモニウムを含有する凝固剤または硼酸アンモニウムと硫酸アンモニウムをともに含有する凝固剤が用いられる。
【0025】
本発明の凝固剤には、本発明の目的を損なわない範囲で上記化合物に加え、ポリビニルアルコールのゲル化剤を混合させたものでもよい。
混合可能なゲル化剤として硼酸、四硼酸カリウム、四硼酸水素アンモニウム、四硼酸ナトリウム(硼砂)などの硼素化合物、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸第一鉄、硫酸銅、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウム、カリみょうばん、硫酸などの硫酸根を含んだ化合物が挙げられる。
使用する凝固剤の量はポリマー100質量部に対して0.2〜15質量部であり、好ましくは0.5〜10質量部である。凝固剤の量が0.2質量部より少ないとポリマーが十分凝固されず、分離してくる水は白濁し、乾燥ポリマーの収量が悪くなる。また、15質量部より多いと凝固剤がポリマー中に残存して、ポリマーの物性を悪化させることがある。
【0026】
本発明の脱水、乾燥装置としてはスクリュー押出機型のもので、少なくとも脱水と乾燥を同一装置内でできるものであれば良く、具体的には機械的圧搾とそれによって生じる遊離水のスリットからの排水、並びに加熱やベント孔からの排気による乾燥機能を同一装置内に有するスクリュー押出機型のものであれば良い。脱水、乾燥装置のケーシングは分割式でも一体式のものでも良く、スクリューも分割式のものを組み合わせたものでも一体型のものでも良いが、自由な組み合わせによる適した機能の選択ができることから、分割式のものの方が好ましい。スクリューは、順方向スクリュー、逆方向スクリューを直列方向に組み合わせて、絞り機構を有するものが好ましい。
また、スクリューはセルフクリーニング機構を有する二軸同方向回転のものが好ましい。
【0027】
以下に説明する装置及び方法に限定されるものではないが、本発明の実施例で用いた装置を例として本発明の方法及び使用する装置を説明する。
図1は装置全体を示す説明図、図3は脱水・乾燥装置のケーシングとスクリューの関係、図4は掻き取り型(セルフクリーニング型)スクリューのかみ合いの模式図である。
【0028】
図1中、1はカルボキシル基含有ゴムラテックス貯槽、3は凝固液貯槽、2、4はポンプ、5は二軸同方向回転のスクリュー押出機型の脱水・乾燥装置で、A〜Mの分割されたケーシングを連結したものである。Aは原料供給ケーシング、B、D、Hはスリットケーシング、C及びFはそれぞれ圧入孔P及びQを有する圧入ケーシング、J、Lはベント孔V1、V2を有するベントケーシング、他は単なるケーシングで、ケーシングMには乾燥ゴムを取り出すダイスが取り付けてある。
スクリューは、図3及び図4に示されるように二軸同方向回転で互いに掻き取るセルフクリーニング型式となっており、ケーシングA〜Mと同様に分割式となっている。更に、図2に示したように、逆方向スクリューZを組み合わせてある。
【0029】
ポンプ2及び4により圧入されたカルボキシル基含有ゴムラテックス及び凝固液は、ケーシングAで混合・凝固され、順方向に移送される。水分及び残留凝固塩類を含んだ凝固物は逆方向スクリューZによりスリットケーシングB、Dに極短時間滞留し、脱水される。更に圧入孔P及びQから対流してくる温水により、残留凝固塩類をスリットケーシングB、Dから押出機系外に流出させ、凝固物を洗浄する。ケーシングI〜Mの部分では、ケーシングの温度を高温にし、更にベント孔V1、V2により減圧させることにより、凝固物の含水率を低下させることができ、ケーシングMの先端より共重合ポリマーが得られる。
【0030】
カルボキシル基含有ゴムラテックスの固形分濃度に制限はないが、20〜50質量%が好ましい。20質量%未満では生産性が劣り、50質量%を越えると凝固が不充分となる。
【0031】
カルボキシル基含有ゴムラテックス、凝固液及び洗浄用温水の流量は、アクリルゴムラテックスの流量を10(容積)とすると、凝固液流量は2〜10が好ましく、3〜6が更に好ましい。流量2未満では凝固が不充分となり、10を越えると残留凝固塩類が多くなる。洗浄用温水流量は、圧入孔PとQの合計量として0〜50が好ましく、5〜20が更に好ましい。流量50を越えるとスリットケーシングからのロスゴムが多くなる。
【0032】
ケーシングA〜Mの温度及び、ベント減圧は、共重合ポリマーの目的とする含水率に応じて調整されるが、ケーシングの温度が250℃を越えると共重合ポリマー自体の劣化が進むので好ましくない。
【0033】
本発明のカルボキシル基含有ゴム組成物は、実用に供するに際してその目的に応じ、充填剤、可塑剤、安定剤、滑剤、補強剤等を添加して成形、加硫を行うことができる。
本発明のカルボキシル基含有ゴムは、カルボキシル基含有ゴムに通常用いられる加硫系を用いて加硫して用いられるが、適用される加硫系としては、脂肪族または芳香族第一アミン類が適当であり、これにグアニジン系化合物を加えた加硫系が好適に用いられる。
【0034】
脂肪族第一アミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、テトラメチレンペンタミン、芳香族第一アミンとしては、4,4’−メチレンジアニリン、4,4’−オキシフェニルジフェニルアミン、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0035】
グアニジン系化合物としては、グアニジン、テトラメチルグアニジン、ジブチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジンなどが挙げられる。
【0036】
アミン類の添加量は、カルボキシル基含有ゴム100質量部に対して、0.2〜0.5質量部が好ましく、0.5〜3.0質量部が更に好ましい。0.2質量部未満では加硫反応が十分に行われず、5.0質量部を越えると過加硫となる。
【0037】
カーボンブラック、無水ケイ酸、表面処理炭酸カルシウムなどの充填剤、補強剤は要求されるゴム物性から、2種類以上を混合して使用することも可能であり、これらの添加量は合計で、カルボキシル基含有ゴム100質量部に対して通常用いられる30〜100質量部が好ましい。
【0038】
また、本発明のカルボキシル基含有ゴム、カルボキシル基含有ゴム組成物及びその加硫物を混練、成型、加硫する機械としては、通常ゴム工業で用いるものを使用することができる。
【0039】
本発明のカルボキシル基含有ゴム、カルボキシル基含有ゴム組成物及びその加硫物は特にゴムホースやガスケット、パッキング等のシール部品として好適に用いられる。また、ゴムホースとしては、具体的には自動車、建設機械、油圧機器の各種配管系等に使用されるホースに用いられる。
特に、本発明のカルボキシル基含有ゴム、カルボキシル基含有ゴム組成物及びその加硫物から得られるゴムホースは、機械的性質が優れていることに加えて、耐寒性、耐油性及び耐熱性に優れるため、特に最近の使用環境が苛酷になっている自動車用ゴムホースとして極めて好適に用いられる。
【0040】
【実施例】
以下に実施例をもって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
実施例に用いた装置は上記に詳述した装置を使用した。図1は装置全体を示す説明図、図2は逆方向スクリューZの配置を示すスクリューの組合せ図、図3は脱水・乾燥装置のケーシングとスクリューの関係、図4は掻き取り型(セルフクリーニング型)スクリューのかみ合いの模式図である。
【0041】
図1中、1はカルボキシル基含有ゴムラテックス貯槽、3は凝固液貯槽、2、4はポンプ、5は二軸同方向回転のスクリュー押出機型の脱水・乾燥装置で、A〜Mの分割されたケーシングを連結したものである。Aは原料供給ケーシング、B、D、Hはスリットケーシング、Fは圧入孔Pを有する圧入ケーシング、J、Lはベント孔V1、V2を有するベントケーシング、他は単なるケーシングで、ケーシングMには乾燥ゴムを取り出すダイスが取り付けてある。
スクリューは、図3及び4に示されるように二軸同方向回転で互いに掻き取るセルフクリーニング型式となっており、ケーシングA〜Mと同様に分割式となっている。
【0042】
実施例1
内容積40リットルの耐圧反応容器に、アクリル酸エチル7.8Kg、アクリル酸n−ブチル3.4Kg、マレイン酸モノブチル0.6Kg、部分けん化ポリビニルアルコール4質量%の水溶液17Kg、酢酸ナトリウム22gを投入し、攪拌機であらかじめよく混合し、均一懸濁液を作製した。槽内上部の空気を窒素で置換後、エチレンを槽上部に圧入し、圧力を20Kg/cm2に調整した。攪拌を続行し、槽内を55℃に保持した後、別途注入口よりt−ブチルヒドロペルオキシド水溶液を圧入して重合を開始させた。反応中槽内温度は55℃に保ち、6時間で反応が終了した。生成した重合液を固形分35質量%に調整し、原料ゴムラテックスとした。
析出・乾燥は図1に示す装置を用い、原料ゴムラテックスを貯槽1よりその供給量を60L/hr、硼酸アンモニウム5質量%水溶液を貯槽3から30L/hrでそれぞれポンプ2及び4より供給した。
供給開始と共に脱水・乾燥装置5のスクリュー回転数を徐々に150rpmまで上げ、ベント用ケーシングJ、Lのベント孔V1、V2に直結した真空ポンプを作動させ、圧力は300Torrに調整した。開始後10分間で定常状態となり、ケーシングMの先端より、水分0.4質量%、色相は無色の共重合体の生ゴムを得た。
なお、ケーシングの温度は次のように設定し、また温度80℃の温水をケーシングFの圧入孔P及びケーシングCの圧入孔Qよりそれぞれ100L/hr、50L/hrで供給した。
ケーシング記号 温度
I 140℃
J 150℃
K 160℃
L 170℃
M 180℃
【0043】
実施例2〜3
実施例1と同様の原料ゴムラテックスを用い、表1に示した凝固液の流量に変えて、共重合体の生ゴムを得た。
【0044】
実施例4〜6
実施例1〜3と同様の原料ゴムラテックスを用い、凝固液を硼酸アンモニウム2質量%、硫酸アンモニウム2質量%の混合水溶液に変えて、共重合体の生ゴムを得た。
【0045】
比較例1〜3
実施例1〜3と同様の原料ゴムラテックスを用い、凝固液を硼砂2質量%、硫酸アンモニウム2質量%の混合水溶液に変えて、共重合体の生ゴムを得た。
【0046】
ポリマー収率の測定(実施例1〜6、比較例1〜3)
ポリマー収率(質量%)の測定は下式により求めた。
ポリマー収率=100×FP/(FL×0.35)
但し、FPは単位時間当たりにケーシングMに取り付けてあるダイスより吐出した生ゴムの質量を表し、FLは単位時間当たりにケーシングAに供給した原料ゴムラテックスの質量を表す。
各実施例、比較例についてのポリマー収率の測定結果を表1に示した。
【0047】
加硫物の作製(実施例1〜6、比較例1〜3)
上記の実施例及び比較例で得た生ゴムは表1の配合組成により、8インチオープンロールで混練を行い、厚さ約2.4mmのシートに分出しした後、プレス加硫機で170℃10分のプレス加硫を行い、一次加硫物として物性試験に供した。更に、この加硫物をギヤーオーブン内で170℃4時間の熱処理を行い、二次加硫物として物性試験に供した。
【0048】
物性試験方法
ムーニースコーチ時間はJIS K6300に準拠し、125℃でのt5を測定した。
引張強さ、伸びはJIS K6251に準拠して測定した。
硬さは、JIS K6253に準拠して測定した。
△TB(一次加硫物と二次加硫物の引張強さの差)は、下式により求めた。
TB(%)=100×(TB2/TB1)−100
但し、TB2は二次加硫物引張強さを表し、TB1は一次加硫物引張強さを表す。
各実施例、比較例についての加硫物の物性測定結果を表1に示した。
【0049】
【表1】
【0050】
実施例1、比較例1の比較により、本発明の実施例1はムーニースコーチ時間が長く、耐スコーチ性に優れており、ポリマー収率が顕著に改善されている。同様の結果が実施例4、比較例1による比較、実施例2、実施例5、比較例2による比較、実施例3、実施例6、比較例3による比較により認められる。
また、実施例1は△TBが小さく良好な加硫速度を有している。
【0051】
【発明の効果】
実施例と比較例の対比で示すように、ポリビニルアルコールを乳化剤または分散剤としたカルボキシル基含有ゴムのラテックスから、硼酸アンモニウムを含有する凝固剤及び硼酸アンモニウムと硫酸アンモニウムを共に含有する凝固剤を用いてスクリュー押出機型の脱水・乾燥装置の中にて凝固、脱水、洗浄及び乾燥を連続的に行ない乾燥ゴムを製造する本発明の製造方法は、優れたポリマー収率を与えるとともに、得られたカルボキシル基含有ゴムを原料とする組成物は、良好な加硫速度と耐スコーチ性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 装置全体を示す説明図
【図2】 逆方向スクリューZの配置を示すスクリューの組合せ図
【図3】 脱水・乾燥装置のケーシングとスクリューの関係の模式図(平面図)
【図4】 掻き取り型(セルフクリーニング型)スクリューのかみ合いの模式図(断面図)
Claims (4)
- ポリビニルアルコールを含有するカルボキシル基含有ゴムのラテックスからスクリュー押出機型の脱水・乾燥装置の中で凝固、脱水、洗浄及び乾燥を連続的に行うことにより乾燥ゴムを製造する方法において、硼酸アンモニウムを含有する凝固剤を用いることを特徴とするカルボキシル基含有ゴムの製造方法。
- 凝固剤が硼酸アンモニウムと硫酸アンモニウムを共に含有する凝固剤であることを特徴とする請求項1または2記載のカルボキシル基含有ゴムの製造方法。
- 順方向スクリュー及び逆方向スクリューを直列方向に組み合わせて絞り機構を有するスクリュー押出機型の脱水・乾燥装置を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のカルボキシル基含有ゴムの製造方法。
Priority Applications (4)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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