本発明の含水クラムの脱水方法は、クラム状のニトリルゴムを含有する含水クラムを、バレルの内部にスクリューが回転自在に配置されている押出機を用いて脱水する方法であって、前記押出機の、前記含水クラムを供給するための供給ゾーンに対応する領域における、前記スクリューのフライト形状を、角フライトとすることを特徴とする。
ニトリルゴム
まず、本発明で用いるニトリルゴムについて説明する。
本発明で用いるニトリルゴムとしては、特に限定されないが、たとえば、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、共役ジエン単量体、および、必要に応じて用いられるこれらと共重合可能なその他の単量体を共重合することで得られる共重合体が挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物であれば限定されず、アクリロニトリル;α−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリルなどのα−ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリルなどのα−アルキルアクリロニトリル;などが挙げられ、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましい。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体として、単独で用いてもよく、これらの複数種を併用してもよい。
本発明で用いるニトリルゴム中における、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合は、全単量体単位100重量%中に、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜55重量%、特に好ましくは20〜50重量%の量である。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が少なすぎると得られるゴム架橋物の耐油性が低下するおそれがあり、逆に、多すぎると耐寒性が低下する可能性がある。
共役ジエン単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、クロロプレンなどの炭素数4〜6の共役ジエン単量体が好ましく、1,3−ブタジエンおよびイソプレンがより好ましく、1,3−ブタジエンが特に好ましい。これらのなかでも、1,3−ブタジエンが好ましい。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
本発明で用いるニトリルゴム中における、共役ジエン単量体単位の含有割合は、全単量体単位100重量%中に、好ましくは40〜90重量%、より好ましくは45〜85重量%、特に好ましくは50〜80重量%の量である。共役ジエン単量体単位の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の弾性が低下するおそれがあり、多すぎると、ゴム架橋物の耐油性、耐熱老化性、耐化学的安定性などが損なわれる可能性がある。
また、本発明で用いるニトリルゴムは、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、および共役ジエン単量体と、共重合可能なその他の単量体とを共重合したものであってもよい。このようなその他の単量体としては、エチレン、α−オレフィン単量体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸無水物単量体、芳香族ビニル単量体、フッ素含有ビニル単量体、共重合性老化防止剤などが例示される。
α−オレフィン単量体としては、炭素数が3〜12のものが好ましく、たとえば、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸n−ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの、アクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルであって、アルキル基の炭素数が1〜18のもの;アクリル酸メトキシメチル、メタクリル酸メトキシエチルなどのアクリル酸アルコキシアルキルエステルおよびメタクリル酸アルコキシアルキルエステルであって、アルコキシアルキル基の炭素数が2〜12のもの;アクリル酸α−シアノエチル、アクリル酸β−シアノエチル、メタクリル酸シアノブチルなどのアクリル酸シアノアルキルエステルおよびメタクリル酸シアノアルキルエステルであって、シアノアルキル基の炭素数が2〜12のもの;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピルなどのアクリル酸ヒドロキシアルキルエステルおよびメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステルであって、ヒドロキシアルキル基の炭素数が1〜12のもの;アクリル酸フルオロベンジル、メタクリル酸フルオロベンジルなどのフッ素置換ベンジル基含有アクリル酸エステルおよびフッ素置換ベンジル基含有メタクリル酸エステル;アクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸テトラフルオロプロピルなどのフルオロアルキル基含有アクリル酸エステルおよびフルオロアルキル基含有メタクリル酸エステル;マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチルなどの不飽和多価カルボン酸ポリアルキルエステル;アクリル酸ジメチルアミノメチル、アクリル酸ジエチルアミノエチルなどのアミノ基含有α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル;などが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などのα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸;マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノn−ブチルなどのマレイン酸モノアルキルエステル、マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘプチルなどのマレイン酸モノシクロアルキルエステル、マレイン酸モノメチルシクロペンチル、マレイン酸モノエチルシクロヘキシルなどのマレイン酸モノアルキルシクロアルキルエステル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノn−ブチルなどのフマル酸モノアルキルエステル、フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘプチルなどのフマル酸モノシクロアルキルエステル、フマル酸モノメチルシクロペンチル、フマル酸モノエチルシクロヘキシルなどのフマル酸モノアルキルシクロアルキルエステル、シトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、シトラコン酸モノn−ブチルなどのシトラコン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、シトラコン酸モノシクロヘプチルなどのシトラコン酸モノシクロアルキルエステル、シトラコン酸モノメチルシクロペンチル、シトラコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのシトラコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノn−ブチルなどのイタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、イタコン酸モノシクロヘプチルなどのイタコン酸モノシクロアルキルエステル、イタコン酸モノメチルシクロペンチル、イタコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのイタコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル、などのα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステル;などが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸無水物単量体としては、例えば、無水マレイン酸などが挙げられる。
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
フッ素含有ビニル単量体としては、フルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o−トリフルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニル、ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
共重合性老化防止剤としては、N−(4−アニリノフェニル)アクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)シンナムアミド、N−(4−アニリノフェニル)クロトンアミド、N−フェニル−4−(3−ビニルベンジルオキシ)アニリン、N−フェニル−4−(4−ビニルベンジルオキシ)アニリンなどが挙げられる。
これらの共重合可能なその他の単量体として、単独で用いてもよく、複数種類を併用してもよい。本発明で用いるニトリルゴム中における、これらの他の単量体単位の含有量は、全単量体単位100重量%中に、好ましくは30重量%以下、より好ましくは15重量%以下、特に好ましくは5重量%以下の量である。
本発明で用いるニトリルゴムのムーニー粘度〔ML1+4(100℃)〕は、好ましくは5〜200、より好ましくは10〜100、さらに好ましくは30〜80である。ニトリルゴムのムーニー粘度は、連鎖移動剤の量、重合反応温度、重合開始剤濃度などの条件を適宜選定することにより調整することができる。
本発明で用いるニトリルゴムの製造方法は、特に限定されず、たとえば、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、共役ジエン単量体、および、必要に応じて加えられるこれらと共重合可能なその他の単量体を共重合する方法が便利で好ましい。重合法としては、公知の乳化重合法および溶液重合法のいずれをも用いることができるが、重合反応の制御が容易であることから乳化重合法が好ましい。乳化重合法によれば、ニトリルゴムを、水媒体中にニトリルゴムが分散してなるラテックスの形態で得ることができ、また、溶液重合法によれば、ニトリルゴムを、有機溶媒中にニトリルゴムが溶解してなるセメントの形態で得ることができる。
そして、本実施形態においては、必要に応じて、ニトリルゴムのポリマー主鎖中の炭素−炭素二重結合のうち少なくとも一部を水素化させてもよい。水素化反応に用いる水素化触媒の種類と量、水素化温度などは、公知の方法に準じて決めればよい。なお、ニトリルゴムを水素化する場合には、得られる水素化ニトリルゴムのヨウ素価を、好ましくは120以下、より好ましくは80以下、さらに好ましくは50以下となるように、水素化を行ってもよい。
含水クラム
次いで、本発明で用いる含水クラムについて、説明する。
含水クラムの製造方法としては、特に限定されないが、たとえば、ニトリルゴムの製造を上述した乳化重合法により行った場合には、乳化重合法により得られたニトリルゴムのラテックスに、凝固剤を添加してニトリルゴムを凝固させることで、水を含んだクラム状のニトリルゴム(含水クラム)を得ることができる。
なお、ラテックスのニトリルゴムを凝固させるための凝固剤としては、特に限定されず、たとえば硫酸、塩酸などの無機酸類;酢酸などの有機酸類;塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化バリウムなどの無機塩類;およびこれらの混合物などが挙げられるが、ニトリルゴムのラテックスに使用されている乳化剤の種類などにより適宜決定すればよい。これらのなかでも、無機塩類が好ましく、一価の無機塩類である塩化ナトリウムがより好ましい。
あるいは、ニトリルゴムの製造を上述した溶液重合法により行った場合には、溶液重合法により得られたセメント状のニトリルゴムに、水などの凝固液を添加してニトリルゴムを析出させることにより、水を含んだクラム状のニトリルゴム(含水クラム)を得ることができる。
なお、セメントのニトリルゴムを凝固させるための凝固液としては、たとえば水が用いられる。凝固液の量としては、特に限定されないが、セメント状のニトリルゴムの溶媒(たとえばアセトン)に対して、(ニトリルゴムの溶媒:凝固液)の容積比で(1:0.05)〜(1:3)程度が好ましい。凝固液の量を、上記範囲とすることにより、ニトリルゴムの凝固を十分に進行させることができ、未凝固分を低減することができ、収率の向上が可能となる。
本実施形態では、上述したようにして得られた含水クラムについて、含水クラムに含まれる凝固剤などを除去するために、濾過および水洗を行うことが好ましい。
含水クラムの脱水方法
次いで、上記のようにして得られる含水クラムを脱水する方法について、説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る含水クラムの脱水方法に用いる押出機を示す概略図、図2は図1の押出機の内部に配置されるスクリューを示す概略図、図3は図2のスクリューのうち、供給ゾーンに対応する領域を示した図、図4は従来例に係る順フライトのスクリューの一部を示した図である。
以下、本発明で用いる含水クラムの脱水装置として図1に示す単一の押出機1を例示し、その構成を説明する。
本実施形態に係る含水クラムの脱水装置としての押出機1は、バレル3の内部に一対のスクリューを備えてなる二軸押出機である。押出機1のバレル3は、図1に示すように、駆動ユニット2、および分割された15個のバレルブロック31〜45で構成され、バレル3の内部には、供給ゾーン100、脱水ゾーン102、および乾燥ゾーン104が、バレル3の上流側から下流側にかけて順次形成されている。
供給ゾーン100は、含水クラムを含むスラリーをバレル3の内部に供給する領域である。脱水ゾーン102は、含水クラムを含むスラリーから、凝固剤などが含まれる液体(セラム水)を分離し排出する領域である。乾燥ゾーン104は、脱水後のクラムを乾燥させる領域である。
本実施形態では、バレルブロック31,32の内部が供給ゾーン100に対応し、バレルブロック33〜37の内部が脱水ゾーン102に対応し、バレルブロック38〜45の内部が乾燥ゾーン104に対応する。なお、各バレルブロックの設置数は、取り扱う含水クラムに応じて最適な数をもって実施することができ、本実施形態の態様に限定されるものではない。
供給ゾーン100を構成するバレルブロック31には、含水クラムを受け入れるフィード口310が形成されている。脱水ゾーン102を構成するバレルブロック34,37には、含水クラムに含まれる水分を排水する排出スリット340,370が形成されている。また、乾燥ゾーン104の一部を構成するバレルブロック39,41,43,45には、脱気のためのベント口390,410,430,450が、それぞれ形成されている。
バレル3の内部には、図2に示す形状を有する一対のスクリュー5が配置されている。一対のスクリュー5の基端には、これを駆動するために、駆動ユニット2(図1参照)に格納されたモーターなどの駆動手段が接続されており、これにより一対のスクリュー5は、それぞれ回転自在に保持される。
なお、本実施形態では、図2に示すように、スクリュー5全体の長さをL(mm)とし、スクリュー5の外径をDa(mm)とした場合に、L/Daは、好ましくは30〜100であり、より好ましくは40〜80である。なお、スクリュー5の外径Daは、スクリューを構成する角フライトの山部50A(図3参照)の、軸方向から見た場合における直径で定義される。また、スクリュー5のうち、供給ゾーン100に対応する領域の軸方向の長さをL1(mm)とした場合に、L1と、上述したスクリュー5全体の長さをL(mm)との関係は、L1/Lで、好ましくは0.05〜1.0であり、より好ましくは0.05〜0.8であり、さらに好ましくは0.1〜0.5である。
本実施形態では、スクリュー5は、少なくとも供給ゾーン100に対応する領域のフライト形状が、図3に示すような角フライト形状、すなわち、スクリューの軸芯の外周に、軸芯に対して略垂直に立ち上がるようにして、断面矩形形状の角棒を螺旋状に巻きつけたフライトが形成された形状となっている。
本実施形態においては、押出機1を構成するスクリュー5について、供給ゾーン100に対応する領域を角フライトとすることにより、たとえば、供給ゾーン100に対応する領域を、図4に示すような順フライトのスクリュー5aで形成した場合と比較して、含水クラムを効率的に処理することができるようになる。
すなわち、供給ゾーン100に対応する領域を、図4に示すような順フライトのスクリュー5aで形成した場合には、順フライトのスクリュー5aは、フライト形状が湾曲しており、そのため、スクリュー5aとスクリュー5aとの間の空間や、スクリュー5とバレル3内壁との間の空間が小さくなってしまい、これにより、供給ゾーン100に対応する領域におけるバレル3内の空間体積も小さくなってしまうため、含水クラムがスクリュー5aに食い込み難くなり、またフライト形状が湾曲しているためにスクリュー5aによる含水クラムの脱水ゾーンへの押出性が低下してしまう場合がある。特に、ニトリルゴムなどのかさ密度が低いゴムを用いた場合には、スクリュー5aへの食い込み性が十分でない場合が多く、そのため、押出性の低下が顕著となる場合がある。
これに対し、押出機1を構成する一対のスクリュー5の、供給ゾーン100に対応する領域のフライト形状を、角フライトとすることにより、スクリュー5とスクリュー5との間の空間や、スクリュー5とバレル3内壁との間の空間を大きくすることができ、結果として、供給ゾーン100に対応する領域におけるバレル3内の空間体積が大きくなることで、含水クラムがスクリュー5に食い込み易くなり、スクリュー5により含水クラムを効率的に押出すことができるようになる。
また、スクリュー5の供給ゾーン100に対応する領域に形成される角フライトにおける、山部50Aの軸芯に対する高さは、特に限定されないが、含水クラムのスクリュー5への食い込み性を良好なものとすることができる点より、含水クラムの種類に応じて、下記の範囲とすることが好ましい。すなわち、谷部50Bの軸芯に対する高さに対する比(山部50Aの軸芯に対する高さ/谷部50Bの軸芯に対する高さ)で、好ましくは1.1〜5.0、より好ましくは1.1〜4.5、より好ましくは1.2〜3.0とする。
さらに、スクリュー5の供給ゾーン100に対応する領域に形成される角フライトにおける、山部50Aの幅(厚み)は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜10mm、より好ましくは0.5〜5mmである。
あるいは、スクリュー5の供給ゾーン100に対応する領域に形成される角フライトにおける、スクリュー5の軸芯方向における山部50Aの間隔は、特に限定されないが、角フライトの山部50Aの幅(厚み)と、角フライトが形成されていない谷部50B(すなわち、隣り合う角フライトの山部50A,50Aの間の部分)の幅との比(山部50Aの幅/谷部50Bの幅)が、好ましくは0.01〜1、より好ましくは0.02〜0.5、さらに好ましくは0.02〜0.2である。
また、供給ゾーン100に対応する領域では、スクリュー5に形成される角フライトの螺旋の角度(すなわち、角フライトがスクリュー5から立ち上がっている角度)が、好ましくは50〜90°、より好ましくは55〜85°、さらに好ましくは60〜80°である。
本実施形態においては、供給ゾーン100に対応する領域では、スクリュー5に形成された角フライトについて、上述した高さ、幅、間隔および角度のうち少なくとも1つを、含水クラムの種類、物性、処理量などに応じて、上記範囲となるように適宜調整することにより、押出機1のスクリュー5による含水クラムの押出性を向上させることができる。
なお、本実施形態では、脱水ゾーン102や乾燥ゾーン104に対応する領域におけるスクリュー5のフライト形状は、特に限定されず、含水クラムの脱水・乾燥に適したフライト形状とすればよいが、たとえば、含水クラムをせん断して適度に発熱させることができるという点より、半角フライトや順フライトなどのフライト形状とすることができる。あるいは、スクリュー5としては、脱水ゾーン102や乾燥ゾーン104に対応する領域に、擬似楕円形、小判形または切頂三角形などの断面形状を有する複数のニーディングディスクを有するものとしてもよい。
なお、本実施形態では、上述したバレルブロック45の下流側には、バレル3内で脱水・乾燥処理されたニトリルゴムを、所定形状に押し出し製品化するためのダイ4が接続されている。ダイ4には、カッティング機構(図示省略)が取り付けてあり、ダイから押し出されるストランド状、もしくはシート状の重合体を、適当な大きさに切断し、所定状のペレット、もしくはシートとする。カッティング機構としては、押し出されたストランド、もしくはシートをホットカット装置により直ちに切断するか、あるいは冷却槽で冷却してカッターで切断する等の機構を採用すればよい。
次に、本実施形態に係る押出機1を用いた含水クラムの脱水方法を説明する。
まず、上述したようにして得られたニトリルゴムの含水クラムを含むスラリーを準備する。本実施形態においては、準備した含水クラムを含むスラリーについて、押出機1による脱水を行う前に、含水クラムを水に分散させた含水クラムを含むスラリーの固形分濃度を調整する。
たとえば、上述した乳化重合法を用いて得られた含水クラムを含むスラリー、すなわち、乳化重合法により得られたニトリルゴムのラテックスに、凝固剤を添加して形成されたニトリルゴムの含水クラムを含むスラリーは、通常、固形分濃度が15重量%以上と比較的高いため、押出機1による脱水を行う前に、固形分濃度を5〜10重量%に調整することが好ましい。特に、ニトリルゴムの含水クラムを含むスラリーは、上述したように固形分濃度が比較的高いため、含水クラム同士が互着し易くなってしまい、押出機1により含水クラムの脱水を行う際において、押出機1のスクリュー5による含水クラムの食い込み性が低下する場合がある。そのため、押出機1による脱水を行う前に、予め、含水クラムを含むスラリーに水を添加し、これにより、含水クラムを含むスラリーの固形分濃度を5〜10重量%に調整することが好ましい。
なお、含水クラムを含むスラリーの固形分濃度を調整する場合には、含水クラムを含むスラリーの固形分濃度を、上述したように5〜10重量%とすることが好ましいが、より好ましくは5〜9重量%、特に5〜8重量%とすることが好ましい。含水クラムを含むスラリーの固形分濃度が低すぎる場合には、押出機1により含水クラムの脱水を行う際において、含水クラムを含むスラリーから排出される水の量が多くなり、押出機1からの排水が追い付かなくなってしまうおそれがある。
そして、本実施形態においては、準備した含水クラムを含むスラリーを、フィード口310から供給ゾーン100に導入する。供給ゾーン100に導入された含水クラムを含むスラリーに含まれる含水クラムは、スクリュー5の回転により、供給ゾーン100の下流側へ押出されていく。供給ゾーン100内部の温度は、好ましくは30〜100℃、より好ましくは40〜100℃とする。供給ゾーンの温度を上記範囲とすることにより、含水クラムの粘度が適度なものとなり、含水クラムの押出性が向上する。
供給ゾーン100に導入された含水クラムは、スクリュー5の回転により脱水ゾーン102に送られる。脱水ゾーン102では、バレルブロック34,37に設けられたスリット340,370から、含水クラムに含まれる水分を排水させる。脱水ゾーン102内部の温度は、好ましくは50〜100℃、より好ましくは80〜100℃とする。
脱水ゾーン102で脱水された含水クラムは、スクリュー5の回転により乾燥ゾーン104に送られる。乾燥ゾーン104に送られたクラムは、スクリュー5の回転により可塑化混練されて融体となり、発熱して昇温しながら下流側へ運ばれる。そして、この融体がバレルブロック39,41,43,45に設けられたベント口390,410,430,450に達すると、圧力が解放されるために、融体中に含まれる水分が分離気化される。この分離気化された水分(蒸気)はベント配管(図示省略)を通じて外部へ排出される。乾燥ゾーン104内部の温度は、好ましくは90〜200℃、より好ましくは100〜180℃である。また、内部圧力は1000〜5000kPa程度である。
乾燥ゾーン104を通過して水分が分離されたクラムは、スクリュー5により出口側へ送り出され、実質的に水分をほとんど含まない状態(水分含有量が1重量%以下)でダイ4に導入され、ここで、たとえばストランド状で排出された後、ペレタイザー(図示省略)に導入されて切断され、適当な長さとされて製品(ペレット)化される。
本実施形態によれば、押出機1を構成するスクリュー5について、供給ゾーン100に対応する領域のフライト形状を、角フライトとすることにより、含水クラムの脱水・乾燥などに用いられる順フライトのスクリュー5aと比較して、バレル3内における空間体積が大きくなり、これにより、含水クラムがスクリュー5に食い込み易くなり、またフライトが軸芯の外周に略垂直に立ち上がるようにした形成されたスクリュー5により含水クラムを効率的に押出すことができるようになる。
そのため、押出機1を用いて含水クラムの脱水を行う際において、押出機1に導入できる含水クラムの量を増加させることができ、押出機1にて脱水させたニトリルゴムの回収レートを向上させることができる。
なお、従来より、図4に示すスクリュー5a,5aを備えた押出機を用いて含水クラムの脱水を行う際には、スクリュー5a,5aの湾曲したフライト形状により、押出機のバレル3内の空間体積が小さくなってしまうことから、押出機に導入する含水クラムの量を多くすると、供給ゾーン100において、含水クラムがスクリュー5に食い込み難くなり、含水クラムの滞留が起こってしまい、含水クラムを押出機内部に供給するためのフィード口310が閉塞してしまうという問題があった。このような問題は、含水クラムを構成するゴムとして、かさ密度が低いゴム、特に、ニトリルゴムを用いた場合に顕著となる。すなわち、ニトリルゴムは、比較的かさ密度が低いことから、ニトリルゴムにより形成される含水クラムは、比較的柔らかく、スクリューへの食い込み性が十分でなく、また、フィード口310近傍で含水クラムの互着が起こり易くなり、含水クラムによるフィード口310の閉塞が起こってしまう場合があった。そのため、従来においては、ニトリルゴムなどのかさ密度が低いゴムの含水クラムを、押出機1にて脱水する場合に、脱水させたニトリルゴムの回収レートは、駆動ユニット2に格納されたモーターなどによるトルクリミットではなく、押出機1への含水クラムの導入が追い付かないことによるフィードリミットにより制限されてしまうという問題があった。
これに対し、本実施形態では、供給ゾーン100におけるスクリュー5のフライト形状を角フライトとすることにより、このような含水クラムの滞留およびフィード口310の閉塞を防止することができ、特に、比較的かさ密度が低いニトリルゴムの含水クラムを脱水する際においても、有効にニトリルゴムの回収レートを向上させることができる。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
たとえば、上述した実施形態では、図3に示すように、押出機1のスクリュー5を、二軸としたが、それ以上の多軸式(3本以上)であってもよく、あるいは単軸式(1本)であってもよい。
あるいは、上述した実施形態では、図3に示すように、2本のスクリュー5,5の角フライトを、スクリュー5の軸芯から見た際に互いに重なり合うように配置することで、スクリュー5,5を、かみ合い式としたが、含水クラムの押出を阻害しない範囲であれば、スクリュー5,5を、角フライトが互いに重なり合わない非かみ合い式としてもよい。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り重量基準である。また、物性の測定は下記によった。
ムーニー粘度(ポリマームーニー)
カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのムーニー粘度(ポリマームーニー)をJIS K6300に従って測定した(単位は(ML1+4、100℃))。
実施例1
金属製ボトル中に、イオン交換水225部、濃度10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液25部、アクリロニトリル37部、フマル酸モノn−ブチル4部、t−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.5部の順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、ブタジエン59部を仕込んだ。次いで、金属製ボトルを5℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部を仕込み、金属製ボトルを回転させながら16時間重合反応を行った。そして、濃度10重量%のハイドロキノン水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合反応を停止させた後、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去し、アクリロニトリル単量体単位34重量%、ブタジエン単量体単位62.5重量%およびフマル酸モノn−ブチル単量体単位3.5重量%を有するカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(固形分濃度30重量%)を得た。
そして、得られたラテックスに含有される乾燥ゴム重量に対して、パラジウム含有量が1,000重量ppmになるように、オートクレーブにパラジウム触媒溶液(1重量%酢酸パラジウムアセトン溶液に、等重量のイオン交換水を混合した溶液)を添加して、水素圧3MPa、温度50℃で6時間水素添加反応を行い、その後イオン交換水により固形分濃度を調整して、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス(固形分濃度13重量%)を得た。
次いで、得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムのラテックス100部(固形分換算)を、濃度5重量%の塩化ナトリウム水溶液80部に、攪拌しながら添加して混合することで、凝固クラムを得た。なお、上記攪拌しながら添加して混合する際には、得られる混合液に、硫酸を添加することにより、該混合液をpH=4に調整した。次いで、得られた凝固クラムを取り出し、濾過および水洗した後、水を添加することで、濃度が6重量%であるカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムの含水クラムを含むスラリーを得た。なお、得られた含水クラムの一部について、濾過を行った後、一晩真空乾燥することで得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムは、ムーニー粘度(ポリマームーニー)が62であった。
そして、得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムの含水クラムを含むスラリーを使用して、図1〜図3に示すような構成を有する押出機1(日本製鋼所社製、TEX44αII)を用いて、含水クラムの脱水を行った。
本実施例では、押出機1として、バレル3内に2本のスクリュー5,5を平行に設け、これらのスクリュー5,5を、かみ合い式で同方向に回転させる二軸押出機を用いた。
スクリュー5としては、供給ゾーン100に対応する領域におけるフライト形状が、図3に示す角フライトであり、かつ、脱水ゾーン102および乾燥ゾーン104に対応する領域におけるフライト形状が、図4に示す順フライトであるスクリューを用いた。なお、スクリュー5の角フライトについては、上述した(山部50Aの軸芯に対する高さ/谷部50Bの軸芯に対する高さ)の比が1.6、山部50Aの幅(厚み)が2.5mm、(山部50Aの幅/谷部50Bの幅)が0.06、角フライトがスクリュー5から立ち上がっている角度が65°であるものを用いた。
そして、このような構成の押出機1のフィード口310に、得られたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムの含水クラムスラリーを300kg/hrのレートで供給した。なお、本実施例では、供給ゾーン100の内部温度を50℃、脱水ゾーン102の内部温度を90℃、乾燥ゾーン104の内部温度を120℃、にそれぞれ設定した。
その結果、バレルの下流側に接続されたダイ4から、シート状の乾燥したカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムが20kg/hrの回収レートで回収された。なお、押出機1のモーターについては、表1に示すように、回転数を146rpm、トルクをモーターの最大出力の29.0%、電流値を77A、電力値を6kW、比動力を、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムの重量当たりで0.300kwh/kg、回収量とスクリュー回転数との比(Q/Ns)を0.137とした。また、乾燥ゾーン104においては、含水クラムがせん断されることで発熱し、乾燥ゾーン104内の温度(乾燥温度)が168℃となった。
本実施例においては、押出機1のフィード口310において含水クラムの滞留は発生しなかった。また、回収されたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムは、含有される水分の残揮発分が0.26%であり、良好に含水クラムの脱水を行うことができた。なお、回収されたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムは、ムーニー粘度(ポリマームーニー)が57.1であった。結果を表1に示す。
比較例1
押出機内に配置するスクリューとして、供給ゾーン100、脱水ゾーン102および乾燥ゾーン104に対応する領域におけるフライト形状が、図4に示す順フライトであるスクリューを用い、押出機のモーターの回転数、トルク、電流値、および電力値を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムの製造、およびカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムの含水クラムの脱水を行った。結果を表1に示す。
比較例2
押出機のモーターの回転数、トルク、電流値、および電力値を表1に示すように変更した以外は、比較例1と同様にして、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムの製造、およびカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムの含水クラムの脱水を行った。結果を表1に示す。
表1に示すように、押出機1のスクリュー5として、供給ゾーン100に対応する領域におけるフライト形状が、角フライトであるスクリューを用いることにより、押出機1のフィード口310における含水クラムの滞留を防止することができ、さらに、水分の残揮発分が0.26%と少なく、良好に脱水されたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムを、20kg/hrと高い回収レートで回収することができた(実施例1)。
一方、スクリューの供給ゾーン100に対応する領域のフライト形状を、角フライトに代えて順フライトとした場合には、カルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムの回収レートが低下したことが確認された(比較例1,2)。
また、比較例1,2のような形状のスクリューを用い、かつ、押出機に供給する含水クラムの量を、実施例1と同等の量としたところ、すなわち、脱水されたカルボキシル基含有高飽和ニトリルゴムの回収レートが20kg/hr程度となるように調整したところ、押出機のフィード口310にて含水クラムの滞留が発生する結果となった。