JP4384871B2 - スチールコード用コーティングゴム組成物及び重荷重用タイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スチールコード用コーティングゴム組成物及びそれを用いた重荷重用タイヤに関し、特に高弾性で、耐クリープ性、耐劣化性及びスチールコードとの接着性に優れた重荷重用タイヤのスチールコード用コーティングゴム組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、トラック・バス等に用いられる重荷重用空気入りタイヤにおいては、その補強部材としてスチールコードと該コードを被覆するコーティングゴムとからなるスチールベルトが用いられている。ここで、スチールベルトを構成するコーティングゴムには、以下の3点、即ち、(1)タイヤが径方向に拡大するのを抑制してタイヤの形状を確保すべく高弾性で且つ耐クリープ性に優れること、(2)長期間使用しても耐破壊性の低下が小さく耐劣化性に優れること、及び(3)スチールコードとの接着性に優れることが要求される。ここで、上記3点が満たされない場合、走行時のタイヤの性能が変化したり、長期間の使用によりベルト故障が発生する可能性がある。
【0003】
これに対し、従来、スチールコード用コーティングゴム組成物においては、硫黄の配合量をゴム成分100質量部に対し4.0〜6.5質量部と通常より多くし、更に、スチールコードとの接着性を確保するために、ゴム組成物の145℃における90%加硫時間が25分以上となるよう、遅延性の加硫促進剤DZ(N,N'-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)を1.0質量部以下配合していた。しかしながら、かかる配合からなるゴム組成物を上記コーティングゴムに用いた場合、加硫後のコーティングゴムに充分高い弾性と耐クリープ性とを付与するには、90%加硫時間の1.5倍以上の加硫時間を要する。一方、ゴム組成物のゴム成分として天然ゴムやポリイソプレンゴムを用いた場合、加硫時間が長くなるにつれて加硫ゴムの耐劣化性が低下するため、加硫時間を短くする必要があり、具体的には、ゴム組成物の90%加硫時間を145℃において12〜20分程度にする必要があった。そのため、従来のコーティングゴム組成物は、上記3点を同時に満たすことができなかった(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−362107号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、高弾性で、耐クリープ性、耐劣化性及びスチールコードとの接着性に優れた重荷重用タイヤのスチールコード用コーティングゴム組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかるゴム組成物をスチールコードのコーティングゴムに用いた耐久性の高い重荷重用タイヤを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、トランスポリブタジエンゴムを所定量含むゴム成分に、耐熱性架橋剤である1,6-ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・2水和物と特定の加硫促進剤とを夫々特定量配合してなるゴム組成物が、高弾性で、耐クリープ性、耐劣化性及びスチールコードとの接着性に優れ、更に、該ゴム組成物を、スチールコードと該コードを被覆するコーティングゴムとからなるタイヤ補強部材を備えた重荷重用タイヤのコーティングゴムに適用することにより、該重荷重用タイヤの耐久性が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明の重荷重用タイヤのスチールコード用コーティングゴム組成物は、天然ゴム及びポリイソプレンゴムの少なくとも一方を合計50〜98質量%、トランスポリブタジエンゴムを2.0〜5.0質量%含むゴム成分100質量部に対して、0.3〜2.0質量部の1,6-ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・2水和物と、0.3〜1.5質量部のN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとを配合してなり、加硫後の100%伸長時の引張応力が4.5 MPa以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明のコーティングゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して、0.3〜2.5質量部の接着促進剤と4.0〜6.5質量部の硫黄とを含有するのが好ましい。
【0010】
また、本発明のコーティングゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して、窒素吸着比表面積(N2SA)が70〜90m2/gで且つジブチルフタレート(DBP)吸油量が70〜110mL/100gであるカーボンブラックを40〜80質量部含有するのが好ましい。
【0011】
本発明のコーティングゴム組成物の好適例においては、前記ゴム成分中の天然ゴム及びポリイソプレンゴムの総含有率が95〜98質量%である。
【0012】
本発明のコーティングゴム組成物の他の好適例においては、前記トランスポリブタジエンゴムは、トランス結合含有量が82〜98モル%であり、且つ重量平均分子量が30,000〜200,000である。
【0013】
本発明のコーティングゴム組成物の他の好適例においては、前記ゴム組成物は、加硫後の25℃における2%歪時の損失正接(tanδ)が0.26以下である。
【0014】
本発明のコーティングゴム組成物の他の好適例においては、前記ゴム組成物は、145℃における90%加硫時間が12〜25分である。
【0015】
更に、本発明の重荷重用タイヤは、スチールコードと該コードを被覆するコーティングゴムとからなるタイヤ部材を備えた重荷重用タイヤにおいて、該コーティングゴムに上記ゴム組成物を用いたことを特徴とする。
【0016】
本発明の重荷重用タイヤの好適例においては、前記タイヤ部材がベルトである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の重荷重用タイヤのスチールコード用コーティングゴム組成物は、天然ゴム及びポリイソプレンゴムの少なくとも一方を合計50〜98質量%、トランスポリブタジエンゴムを2.0〜5.0質量%含むゴム成分100質量部に対して、0.3〜2.0質量部の1,6-ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・2水和物(HTS)と、0.3〜1.5質量部のN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとを配合してなり、加硫後の100%伸長時の引張応力が4.5 MPa以上であることを特徴とする。
【0018】
本発明のスチールコード用コーティングゴム組成物は、従来のスチールコード用コーティングゴム組成物に比べ、加硫促進作用のよい強い加硫促進剤を用いているため、90%加硫時間が短いものの、スチールコードとの接着性が充分高い。この理由としては、該ゴム組成物に含まれるHTSが架橋剤であり、ゴム成分等のポリマーと反応する一方、スチールコードのメッキ中の銅とも反応するため、コーティングゴムとスチールコードとの接着性の向上に有効に作用したこと等が考えられる。なお、この接着性の向上効果は、ゴム組成物が上記加硫促進剤を本発明で規定する量含有する場合に発現される。
【0019】
また、本発明のゴム組成物は、90%加硫時間が短い、即ち、加硫速度が速いため、短時間の加硫でも充分高弾性になる一方、加硫時間を短くすることで、耐劣化性が著しく向上する。更に、該ゴム組成物は、HTSとトランスポリブタジエンゴムとを夫々特定量含むため、耐クリープ性も向上している。
【0020】
本発明のゴム組成物に用いるゴム成分としては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、トランスポリブタジエンゴム(trans-BR)の他、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、他のポリブタジエンゴム(BR)等が挙げられる。ここで、該ゴム成分は、天然ゴム及びポリイソプレンゴムを合計で50〜98質量%、好ましくは95〜98質量%含む。ゴム成分中の天然ゴム及びポリイソプレンゴムの総含有率が、50質量%未満では、ゴム組成物の抗破壊性が低下してくる。
【0021】
また、上記ゴム成分は、トランスポリブタジエンゴムを2.0〜5.0質量%含む。ゴム成分中のトランスポリブタジエンゴムの含有率が2.0質量%未満では、スチールコードとの接着性及び耐クリープ性が低下し、5.0質量%を超えると、スチールコードとの接着性及び耐クリープ性を向上させる効果が飽和に達し、更に向上させることができない。
【0022】
上記トランスポリブタジエンゴムは、トランス結合含有量が82〜98モル%であるのが好ましく、86〜98モル%であるのが更に好ましい。トランスポリブタジエンゴムのトランス結合含有量が高いほど、天然ゴム及びイソプレンゴムの伸張結晶性を促進する効果が高くなる傾向がある。ここで、トランスポリブタジエンゴムのトランス結合含有量が82モル%未満では、天然ゴム及びイソプレンゴムの伸張結晶性の促進効果が充分得られない。一方、トランス結合含有量が98モル%を超えるトランスポリブタジエンゴムは、合成上困難である。
【0023】
また、上記トランスポリブタジエンゴムは、重量平均分子量(Mw)が3×104〜20×104であるのが好ましく、5×104〜15×104であるのが更に好ましい。重量平均分子量がこの範囲にあると、ゴム組成物の未加硫時の加工性と加硫時の物性とのバランスがよい。ここで、トランスポリブタジエンゴムの重量平均分子量が3×104未満では、加硫後のゴム組成物の弾性率が低下する傾向があり、20×104を超えると、未加硫時の作業性が低下する傾向がある。
【0024】
本発明のコーティングゴム組成物は、下記式(I)で表される1,6-ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・2水和物(HTS)を上記ゴム成分100質量部に対して0.3〜2.0質量部含有する。
NaO3S−S−(CH2)6−S−SO3Na・2H2O ・・・ (I)
【0025】
上記HTSの配合量が0.3質量部未満では、ゴム成分及びスチールコードのメッキ中の銅との反応が充分進まず、コーティングゴムとスチールコードとの接着性を向上させる効果が小さい上、タイヤの耐クリープ性を充分に向上させることができない。一方、HTSの配合量が2.0質量部を超えると、スチールコードとの接着性及び耐クリープ性を向上させる効果が飽和に達し、更に向上させることができない。
【0026】
本発明のコーティングゴム組成物は、上記ゴム成分100質量部に対して、加硫促進剤としてN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(以下、加硫促進剤CZと略記することがある)を0.3〜1.5質量部含む。従来のスチールコード用コーティングゴム組成物においては、遅延性の加硫促進剤DZを1.0質量部以下配合し、90%加硫時間を25分以上にして、スチールコードとの接着性を確保していたが、本発明のゴム組成物は、上述のトランスポリブタジエンゴム及びHTSを所定量含むことでスチールコードとの接着性が充分に確保されている。そのため、本発明のゴム組成物においては、加硫促進剤DZに代えて、加硫促進剤CZを用いて、加硫速度を上げることができる。ゴム組成物の加硫速度を上昇させることで、短時間の加硫でも充分な弾性率を確保することができ、また、加硫時間を短くすることで、コーティングゴムの耐劣化性を向上させることができる。加硫促進剤CZの配合量が0.3質量部未満では、加硫速度を充分に上昇させることができない上、前述のHTSによるコード-ゴム接着性の向上効果が充分に発現されない。一方、加硫促進剤CZの配合量が1.5質量部を超えた場合、ゴム組成物の抗破壊性が低下してくる上に、スチールコードとの接着性も低下する。
【0027】
本発明のコーティングゴム組成物は、上記ゴム成分100質量部に対して、0.3〜2.5質量部の接着促進剤と4.0〜6.5質量部の硫黄とを含有するのが好ましい。接着促進剤の配合量が0.3質量部未満では、スチールコードとの接着性が低下し、2.5質量部を超えると、ゴム組成物の老化特性が悪化し過ぎる。また、硫黄の配合量が4.0質量部未満では、スチールコードとの接着性が不充分であり、6.5質量部を超えると、ゴム組成物が過加硫となりスチールコードとの接着性が低下する。ここで、上記接着促進剤としては、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ロジン酸コバルト、バーサチック酸コバルト、トール油酸コバルト等が挙げられる。該接着促進剤は、有機酸の一部をホウ酸等で置き換えた複合塩でもよい。
【0028】
本発明のコーティングゴム組成物は、上記ゴム成分100質量部に対して、窒素吸着比表面積(N2SA)が70〜90m2/gで且つジブチルフタレート(DBP)吸油量が70〜110mL/100gであるカーボンブラックを40〜80質量部含有するのが好ましい。カーボンブラックのN2SAが70m2/g未満では、ゴム組成物の補強性が低下し、90m2/gを超えると、ゴム組成物の発熱性が低下してくる。また、カーボンブラックのDBP吸油量が70mL/100g未満では、ゴム組成物の補強性が低下し、110mL/100gを超えると、カーボンブラックの分散が悪く、ゴム組成物の抗破壊性が低下してくる。更に、かかる物性を有するカーボンブラックの配合量が40質量部未満では、ゴム組成物の補強性が不足し、80質量部を超えると、ゴム組成物の発熱性が低下してくる。
【0029】
上記ゴム組成物は、加硫後の100%伸長時の引張応力が4.5 MPa以上である。また、上記ゴム組成物は、加硫後の25℃における2%歪時の損失正接(tanδ)が0.26以下であるのが好ましい。加硫後の物性として、100%伸長時の引張応力が4.5 MPa未満では、ゴムの弾性が低く、タイヤが径方向に拡大するのを充分に抑制することができず、タイヤの形状を充分に確保できない。また、加硫後の物性として、25℃における2%歪時のtanδが0.26を超えると、発熱量が多くなり、コーティングゴムの耐発熱性が低下する。
【0030】
本発明のコーティングゴム組成物は、145℃における90%加硫時間が12〜25分であるのが好ましい。ここで、90%加硫時間は、加硫曲線におけるトルクの最大値をFmax、最小値をFminとしたとき、{(Fmax−Fmin)×0.9+Fmin}のトルクに達するまでの時間(分)を指し、加硫速度の指標として一般に使用されるものである。145℃における90%加硫時間が12分未満では、タイヤ加硫において過加硫となり、タイヤ中のゴムの抗破壊性や発熱性が低下してくる一方、25分を超えると、加硫ゴムの弾性と耐クリープ性を充分高くするために、加硫時間を長くする必要があり、その結果、加硫ゴムの耐劣化性が低下する。
【0031】
上記ゴム組成物には、上述のゴム成分、HTS、加硫促進剤、硫黄、接着促進剤、カーボンブラックの他、上記以外の充填剤、加硫剤及び加硫促進剤、更には、老化防止剤、スコーチ防止剤、軟化剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、シランカップリング剤等のゴム業界で通常使用される配合剤を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択し配合することができる。これら配合剤は、市販品を好適に使用することができる。なお、上記ゴム組成物は、ゴム成分に、HTS及び加硫促進剤、並びに必要に応じて適宜選択した各種配合剤とを混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0032】
本発明の重荷重用タイヤは、スチールコードと該コードを被覆するコーティングゴムとからなるタイヤ部材を備え、該コーティングゴムに上述のゴム組成物を用いたことを特徴とする。ここで、上記タイヤ部材としては、ベルトが好ましい。本発明の重荷重用タイヤは、タイヤ部材、特にベルトとして、スチールコードと該コードを被覆するコーティングゴムとからなるスチールコード-ゴム複合体を備え、高弾性で、耐クリープ性、耐劣化性及びスチールコードとの接着性に優れた上述のゴム組成物を上記コーティングゴムに適用しているため、耐久性に優れる。なお、本発明の重荷重用タイヤは、上記ゴム組成物をスチールコードのコーティングゴムに用いる以外、特に制限はなく、常法により製造することができる。
【0033】
本発明の空気入りタイヤのタイヤ部材、特にベルトに用いられるスチールコードは、コーティングゴムとの接着性を良好にするために黄銅、亜鉛或いはこれらにニッケルやコバルトを含有する金属でメッキ処理されているのが好ましく、黄銅メッキ処理されているのが特に好ましい。また、該コードのサイズ、撚り数、撚り条件等は、タイヤの要求性能に応じて適宜選択される。
【0034】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0035】
表1に示す配合処方のゴム組成物を調製し、下記に示す方法で90%加硫時間(tc(90))を測定した。更に、該ゴム組成物を145℃で25分又は50分加硫し、加硫後のゴム組成物の引張応力及び損失正接(tanδ)を測定し、耐クリープ性及び耐劣化性を評価した。更に、黄銅(Cu:63質量%、Zn:37質量%)メッキしたスチールコード(1×5構造、素線径0.25mm)を上記ゴム組成物で被覆してコード-ゴム複合体を作製し、下記の方法で接着耐久性を評価した。結果を表1に示す。
【0036】
(1)90%加硫時間
JIS K6300-2:2001に準拠して、ゴム組成物の加硫曲線を、ジェイエスアール(株)製のキュラストメーターを用いて、145℃で測定した。具体的には、加硫曲線におけるトルクの最大値(Fmax)と最小値(Fmin)を測定し、{(Fmax−Fmin)×0.9+Fmin}のトルクに達するまでの時間(分)を90%加硫時間(tc(90))とした。
【0037】
(2)引張応力
JIS#3号型試験片を用いて、JIS K 6251-1993に準拠して引張試験を行い、25℃における100%伸長時の引張応力(MPa)を測定した。引張応力が高いほど、高弾性であることを示す。
【0038】
(3)損失正接(tanδ)
粘弾性測定装置(東洋精機社製スペクトロメーター)を用い、温度25℃、歪2%、周波数52Hzの条件で、ゴム組成物の損失正接(tanδ)を測定した。
【0039】
(4)耐クリープ性
JIS#3号型試験片について、島津製作所製クリープ試験機を用い、定荷重モードでクリープ量を測定し(試験条件:繰り返し引張試験、荷重:1.5kg、周波数:5Hz)、比較例1のゴム組成物を50分間加硫して得たサンプルのクリープリ量を100として指数表示した。指数値が大きくなる程、クリープ量が小さく、良好であることを示す。
【0040】
(5)耐劣化性
JIS#3号型試験片を空気中80℃で4日間劣化させ、該劣化試験片に対して、JIS K 6251に準拠して引張試験を行い、25℃における切断時の引張強さ(TB)を測定し、比較例1のゴム組成物を50分間加硫して得たサンプルの引張強さを100として指数表示した。指数値が大きくなる程、劣化後の引張強さが大きく、耐劣化性に優れることを示す。
【0041】
(6)接着耐久性
上記コード-ゴム複合体を145℃で25分又は50分加硫した後、該複合体を80℃、80%RHで10日間劣化させた。劣化後のコード-ゴム複合体からスチールコードを引き抜き、スチールコードのゴム被覆率を測定し、比較例1のゴム組成物を用いたコード-ゴム複合体を50分間加硫して得たサンプルのゴム被覆率を100として指数表示した。指数値が大きくなる程、ゴム被覆率が高く、スチールコードとゴムとの接着性が高いことを示す。
【0042】
【表1】
【0043】
比較例1のような天然ゴム及び硫黄の配合量が多い従来のコーティングゴム組成物は、耐劣化性が悪いため、耐劣化性の改良が必要である。この要請に対し、加硫時間を短くすることで、ゴム組成物の耐劣化性を向上させることができことが、比較例1の結果から分かるが、この場合、100%伸長時の引張応力、耐クリープ性及びスチールコードとの接着耐久性が低下してしまう。
【0044】
比較例2及び3の結果から、加硫促進剤DZの配合量を増量したり、加硫促進剤CZを代用することで、90%加硫時間を短くすることができ、加硫時間を短くした際の100%伸長時の引張応力の低下を抑制することができるが、耐クリープ性及びスチールコードとの接着耐久性が低下してしまうことが分かる。
【0045】
90%加硫時間を短くした比較例3の配合における天然ゴムの一部をトランスポリブタジエンゴムで置き換え、更にHTSを加えた実施例1及び2のゴム組成物は、加硫時間を短くすることによる耐劣化性の向上効果を維持したまま、耐クリープ性及びスチールコードとの接着耐久性が向上していた。
【0046】
なお、ゴム成分中のトランスポリブタジエンの含有率が5.0質量%を超えている比較例4のゴム組成物は、実施例のゴム組成物に比べ耐クリープ性及びスチールコードとの接着耐久性が向上していなかった。この結果から、ゴム成分中のトランスポリブタジエンの含有率は5.0質量%以下で充分であることがわかる。
【0047】
また、HTSの配合量が2.0質量部を超えている比較例5のゴム組成物も、実施例のゴム組成物に比べ耐クリープ性及びスチールコードとの接着耐久性が向上しておらず、この結果から、HTSの配合量は2.0質量部以下で充分であることがわかる。
【0048】
一方、比較例6の結果から、加硫促進剤DZの配合量が1.0質量部以下で、加硫速度が遅い従来のゴム組成物(特開2002−362107号の実施例のゴム組成物に相当)に、更にトランスポリブタジエン及びHTSを配合しても、加硫時間を短くした場合、100%伸長時の引張応力、耐クリープ性及びスチールコードとの接着耐久性の低下を抑制することができないことが分かる。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、トランスポリブタジエンを特定量含有するゴム成分に、HTSと特定の加硫促進剤とを夫々特定量配合してなり、高弾性で、耐クリープ性、スチールコードとの接着性及び耐劣化性に優れたスチールコード用コーティングゴム組成物を提供することができる。また、スチールコードと該コードを被覆するコーティングゴムとからなるタイヤ部材を備え、該コーティングゴムに上記ゴム組成物を適用した、耐久性の優れた重荷重用タイヤを提供することができる。
Claims (9)
- 天然ゴム及びポリイソプレンゴムの少なくとも一方を合計50〜98質量%、トランスポリブタジエンゴムを2.0〜5.0質量%含むゴム成分100質量部に対して、
0.3〜2.0質量部の1,6-ヘキサメチレンジチオ硫酸ナトリウム・2水和物と、0.3〜1.5質量部のN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドとを配合してなり、
加硫後の100%伸長時の引張応力が4.5 MPa以上であることを特徴とする重荷重用タイヤのスチールコード用コーティングゴム組成物。 - 前記ゴム成分100質量部に対して、0.3〜2.5質量部の接着促進剤と4.0〜6.5質量部の硫黄とを含有することを特徴とする請求項1に記載の重荷重用タイヤのスチールコード用コーティングゴム組成物。
- 前記ゴム成分100質量部に対して、窒素吸着比表面積(N2SA)が70〜90 m2/gで且つジブチルフタレート(DBP)吸油量が70〜110 mL/100gであるカーボンブラック40〜80質量部を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤのスチールコード用コーティングゴム組成物。
- 前記ゴム成分中の天然ゴム及びポリイソプレンゴムの総含有率が95〜98質量%であることを特徴とする請求項1に記載の重荷重用タイヤのスチールコード用コーティングゴム組成物。
- 前記トランスポリブタジエンゴムは、トランス結合含有量が82〜98モル%であり、且つ重量平均分子量が30,000〜200,000であることを特徴とする請求項1に記載の重荷重用タイヤのスチールコード用コーティングゴム組成物。
- 前記ゴム組成物は、加硫後の25℃における2%歪時の損失正接(tanδ)が0.26以下であることを特徴とする請求項1に記載の重荷重用タイヤのスチールコード用コーティングゴム組成物。
- 前記ゴム組成物は、145℃における90%加硫時間が12〜25分であることを特徴とする請求項1に記載の重荷重用タイヤのスチールコード用コーティングゴム組成物。
- スチールコードと該コードを被覆するコーティングゴムとからなるタイヤ部材を備えた重荷重用タイヤにおいて、該コーティングゴムに請求項1〜7のいずれかに記載のゴム組成物を用いたことを特徴とする重荷重用タイヤ。
- 前記タイヤ部材がベルトであることを特徴とする請求項8に記載の重荷重用タイヤ。
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