JP5310275B2 - 加硫ゴムが有する粘弾性特性を改善させるための6−アミノヘキシルチオスルファートの使用 - Google Patents
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本発明は、加硫ゴムが有する粘弾性特性を改善させるための6−アミノヘキシルチオスルファートの使用に関する。
近年、環境保護の要請から、自動車の燃費向上(すなわち、低燃費化)が求められている。そして、自動車用タイヤの分野において、粘弾性特性を改善させることにより、自動車の燃費が向上することが知られている(非特許文献1参照)。
日本ゴム協会編「ゴム技術入門」丸善株式会社、124頁
タイヤの分野において、タイヤ製造に用いられる加硫ゴムの粘弾性特性を改善させる方法が求められていた。
本発明者は、このような状況下、鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち、本発明は、
1.加硫ゴムが有する粘弾性特性を改善させるための下記式
(H2N−(CH2)6−SSO3 −)n・Mn+
(式中、Mn+は金属イオンを表し、nはその価数を表す。)
で示される6−アミノヘキシルチオスルファートの使用;および
2.金属イオンが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、コバルトイオン、銅イオンまたは亜鉛イオンである前項1に記載される使用;
等を提供するものである。
1.加硫ゴムが有する粘弾性特性を改善させるための下記式
(H2N−(CH2)6−SSO3 −)n・Mn+
(式中、Mn+は金属イオンを表し、nはその価数を表す。)
で示される6−アミノヘキシルチオスルファートの使用;および
2.金属イオンが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、コバルトイオン、銅イオンまたは亜鉛イオンである前項1に記載される使用;
等を提供するものである。
本発明により、タイヤの製造に用いられる加硫ゴムの粘弾性特性を改善させる方法が提供可能となる。
以下、本発明について詳細に説明する。
まずは、本発明に用いる下記式
(H2N−(CH2)6−SSO3 −)n・Mn+
(式中、Mn+は金属イオンを表し、nはその価数を表す。)
で示される6−アミノヘキシルチオスルファートについて説明する。
まずは、本発明に用いる下記式
(H2N−(CH2)6−SSO3 −)n・Mn+
(式中、Mn+は金属イオンを表し、nはその価数を表す。)
で示される6−アミノヘキシルチオスルファートについて説明する。
6−アミノヘキシルチオスルファートは、例えば、6−ハロヘキシルアミンとチオ硫酸ナトリウムとを反応させる方法;フタルイミドカリウム塩と1,6−ジハロヘキサンとを反応させ、得られた化合物とチオ硫酸ナトリウムとを反応させ、次いで、得られた化合物を加水分解する方法;等の任意の公知の方法により製造することができる。
Mn+で示される金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、コバルトイオン、銅イオンおよび亜鉛イオンが好ましく、リチウムイオン、ナトリウムイオンおよびカリウムイオンがより好ましい。nは金属イオンの価数を表し、当該金属において可能な範囲であれば、特に限定されない。例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオンのようなアルカリ金属イオンの場合、nは通常1であり、コバルトイオンの場合、nは通常2または3であり、銅イオンの場合、nは通常1〜3の整数であり、亜鉛イオンの場合、nは通常2である。上記の製法によれば、通常、ナトリウム塩が得られるが、必要に応じてカチオン交換すればよい。
本発明は、該6−アミノヘキシルチオスルファートを加硫ゴムの製造時に配合することにより実施される。
加硫ゴムは、通常、ゴム成分、充填剤、酸化亜鉛、硫黄成分および加硫促進剤を含む。
ゴム成分としては、天然ゴムのほか、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン・ブタジエン共重合ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル・ブタジエン共重合ゴム(NBR)、イソプレン・イソブチレン共重合ゴム(IIR)、エチレン・プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、ハロゲン化ブチルゴム(HR)等の各種の合成ゴムが例示されるが、天然ゴム、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム等の高不飽和性ゴムが好ましく用いられる。特に好ましくは天然ゴムである。また、天然ゴムとスチレン・ブタジエン共重合ゴムの併用、天然ゴムとポリブタジエンゴムの併用等、数種のゴム成分を組み合わせることも有効である。
充填剤としては、ゴム分野で通常使用されているカーボンブラック、シリカ、タルク、クレイ等が例示されるが、カーボンブラックが特に好ましく使用される。カーボンブラックとしては、HAF(High Abrasion Furnace)、SAF(Super Abrasion Furnace)、ISAF(Intermediate SAF)等のカーボンブラックが好ましい。また、カーボンブラックとシリカの併用等、数種の充填剤を組み合わせることも有効である。かかる充填剤の使用量は特に限定されるものではないが、ゴム成分100重量部あたり10〜100重量部の範囲が好ましい。特に好ましくは30〜70重量部である。
硫黄成分としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、及び高分散性硫黄等が挙げられる。粉末硫黄および不溶性硫黄が好ましい。加硫促進剤の例としては、ゴム工業便覧<第四版>(平成6年1月20日社団法人 日本ゴム協会発行)の412〜413ページに記載されているチアゾール系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が挙げられる。
一般に、加硫ゴムを製造する場合、その製造は基本的に3つの工程で行われる。すなわち、ゴム成分、充填剤や酸化亜鉛等を比較的高温で配合する第1の工程、硫黄成分や加硫促進剤等を比較的低温で配合する第2の工程、最後に比較的高温で加硫処理を行う第3の工程により加硫ゴムを得る。
6−アミノヘキシルチオスルファートを配合する工程は、特に限定されるものではないが、充填剤や酸化亜鉛とともに、第1の工程で配合することが好ましい。6−アミノヘキシルチオスルファートの使用量は特に限定されるものではない。例えば、ゴム成分100重量部あたり0.1〜10重量部の範囲が好ましい。より好ましくは0.5〜3重量部の範囲である。
従来より用いられているプロセスオイルやステアリン酸等の脂肪酸類を配合することも可能である。これらを配合する工程は特に限定されるものではないが、第1の工程で配合することが好ましい。
従来より用いられている老化防止剤やモルフォリンジスルフィド等の加硫剤を配合することも可能である。これらを配合する工程は特に限定されるものではないが、第2の工程で配合することが好ましい。
第1の工程の配合温度は、210℃以下が好ましい。より好ましくは170〜200℃である。第2の工程の配合温度は、60〜120℃が好ましい。第3の工程の加硫処理温度は、120〜170℃が好ましい。
また、6−アミノヘキシルチオスルファートと充填剤とを配合すると、トルクの上昇が見られるが、これを改良する目的で、しゃく解剤やリターダ−を併用してもよく、さらには、一般の各種ゴム薬品や軟化剤等を必要に応じて併用してもよい。
かくして得られる加硫ゴムを用いて、通常の方法によって空気入りタイヤが製造される。すなわち、上記加硫処理前の段階のゴム組成物をトレッド用部材に押出し加工し、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形し、生タイヤが成形され、この生タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤが得られる。
このようにして得られるタイヤが装着された自動車の燃費は向上し、低燃費化が達成できる。
以下、実施例、試験例及び製造例等を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
製造例1:N−(6−ブロモヘキシル)フタルイミド
攪拌機、温度計、冷却機を備えた500mlの四つ口フラスコに、フタルイミドカリウム49.6g(0.27mol)およびジメチルホルムアミド240mlを仕込み、得られた混合物に、1,6−ジブロモヘキサン100g(0.41mol)とジメチルホルムアミド100mlとの混合物を室温で滴下した。滴下終了後、得られた混合物を120℃まで昇温し、4時間還流させた。反応終了後、反応混合物から溶媒を留去した。そこに、酢酸エチルと水とを加えて分液した後、有機層を濃縮した。得られた残渣にヘキサンと酢酸エチルとを加え、得られた混合物を静置したところ、結晶が析出した。結晶をろ取し、真空乾燥して、N−(6−ブロモヘキシル)フタルイミドを56.5g得た。
攪拌機、温度計、冷却機を備えた500mlの四つ口フラスコに、フタルイミドカリウム49.6g(0.27mol)およびジメチルホルムアミド240mlを仕込み、得られた混合物に、1,6−ジブロモヘキサン100g(0.41mol)とジメチルホルムアミド100mlとの混合物を室温で滴下した。滴下終了後、得られた混合物を120℃まで昇温し、4時間還流させた。反応終了後、反応混合物から溶媒を留去した。そこに、酢酸エチルと水とを加えて分液した後、有機層を濃縮した。得られた残渣にヘキサンと酢酸エチルとを加え、得られた混合物を静置したところ、結晶が析出した。結晶をろ取し、真空乾燥して、N−(6−ブロモヘキシル)フタルイミドを56.5g得た。
製造例2:6−フタルイミドヘキシルチオスルファートのナトリウム塩
攪拌機、温度計、冷却機を備えた500mlの四つ口フラスコに、N−(6−ブロモヘキシル)フタルイミド20g(64.4mmol)、チオ硫酸ナトリウム・五水和物16.0g(64.4mmol)、メタノール100mlおよび水100mlを仕込み、得られた混合物を4時間還流させた。反応終了後、反応混合物から溶媒を留去した。そこに、エタノール100mlを加えて1時間還流した。熱ろ過により副生成物である臭化ナトリウムを約5g除去した。ろ液を減圧下で、結晶が析出するまで濃縮し、その後静置した。結晶をろ取し、エタノールとヘキサンで洗浄した。得られた結晶を真空乾燥することにより、6−フタルイミドヘキシルチオスルファートのナトリウム塩を22.1g得た。
攪拌機、温度計、冷却機を備えた500mlの四つ口フラスコに、N−(6−ブロモヘキシル)フタルイミド20g(64.4mmol)、チオ硫酸ナトリウム・五水和物16.0g(64.4mmol)、メタノール100mlおよび水100mlを仕込み、得られた混合物を4時間還流させた。反応終了後、反応混合物から溶媒を留去した。そこに、エタノール100mlを加えて1時間還流した。熱ろ過により副生成物である臭化ナトリウムを約5g除去した。ろ液を減圧下で、結晶が析出するまで濃縮し、その後静置した。結晶をろ取し、エタノールとヘキサンで洗浄した。得られた結晶を真空乾燥することにより、6−フタルイミドヘキシルチオスルファートのナトリウム塩を22.1g得た。
製造例3:6−アミノヘキシルチオスルファートのナトリウム塩
攪拌機、温度計、冷却機を備えた500mlの四つ口フラスコを窒素置換し、そこに、6−フタルイミドヘキシルチオスルファートのナトリウム塩20.0g(54.7mmol)およびエタノール200mlを仕込み、得られた混合物にヒドラジン・一水和物4.25g(84.8mmol)を滴下した。滴下終了後、得られた混合物を70℃で5時間攪拌した後、減圧下でエタノールを留去した。残渣にメタノール100mlを加えて1時間還流させた。熱ろ過により結晶を取得し、これをメタノールで洗浄し、真空乾燥することにより、6−アミノヘキシルチオスルファートのナトリウム塩を得た。
1H−NMR(270.05MHz,MeOD)δppm:3.1(2H,t,J=6.7Hz),3.0(2H,t,J=6.5Hz),1.6−1.8(4H,m),1.4−1.5(4H,m)
攪拌機、温度計、冷却機を備えた500mlの四つ口フラスコを窒素置換し、そこに、6−フタルイミドヘキシルチオスルファートのナトリウム塩20.0g(54.7mmol)およびエタノール200mlを仕込み、得られた混合物にヒドラジン・一水和物4.25g(84.8mmol)を滴下した。滴下終了後、得られた混合物を70℃で5時間攪拌した後、減圧下でエタノールを留去した。残渣にメタノール100mlを加えて1時間還流させた。熱ろ過により結晶を取得し、これをメタノールで洗浄し、真空乾燥することにより、6−アミノヘキシルチオスルファートのナトリウム塩を得た。
1H−NMR(270.05MHz,MeOD)δppm:3.1(2H,t,J=6.7Hz),3.0(2H,t,J=6.5Hz),1.6−1.8(4H,m),1.4−1.5(4H,m)
実施例
<第1の工程>
バンバリーミキサー(東洋精機製600mlラボプラストミル)を用いて、天然ゴム(RSS#1)100重量部、HAFブラック45重量部、ステアリン酸3重量部、酸化亜鉛5重量部および6−アミノヘキシルチオスルファートのナトリウム塩1重量部を混練配合し、ゴム組成物を得た。該工程は、各種薬品及び充填剤投入後5分間、50rpmのミキサーの回転数で混練することにより実施し、その時のゴム温度は180〜200℃であった。
<第2の工程>
オープンロール機で60〜80℃の温度にて、第1の工程により得られたゴム組成物と、加硫促進剤(N−シクロへキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド:商品名「ソクシノール(登録商標)CZ」住友化学株式会社製)1重量部、硫黄2重量部および老化防止剤(N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン:商品名「アンチゲン(登録商標)6C」住友化学株式会社製)1重量部とを混練配合し、ゴム組成物を得た。
<第3の工程>
第2の工程で得たゴム組成物を145℃で加硫処理を行い、加硫ゴムを得た。
<第1の工程>
バンバリーミキサー(東洋精機製600mlラボプラストミル)を用いて、天然ゴム(RSS#1)100重量部、HAFブラック45重量部、ステアリン酸3重量部、酸化亜鉛5重量部および6−アミノヘキシルチオスルファートのナトリウム塩1重量部を混練配合し、ゴム組成物を得た。該工程は、各種薬品及び充填剤投入後5分間、50rpmのミキサーの回転数で混練することにより実施し、その時のゴム温度は180〜200℃であった。
<第2の工程>
オープンロール機で60〜80℃の温度にて、第1の工程により得られたゴム組成物と、加硫促進剤(N−シクロへキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド:商品名「ソクシノール(登録商標)CZ」住友化学株式会社製)1重量部、硫黄2重量部および老化防止剤(N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン:商品名「アンチゲン(登録商標)6C」住友化学株式会社製)1重量部とを混練配合し、ゴム組成物を得た。
<第3の工程>
第2の工程で得たゴム組成物を145℃で加硫処理を行い、加硫ゴムを得た。
参考例
上記実施例において、第1の工程で6−アミノヘキシルチオスルファートのナトリウム塩を用いない以外は、実施例と同様にして加硫ゴムを得た。
上記実施例において、第1の工程で6−アミノヘキシルチオスルファートのナトリウム塩を用いない以外は、実施例と同様にして加硫ゴムを得た。
試験例
以下のとおり、引張特性および粘弾性特性を測定した。
(1)引張特性
JIS−K6251に準拠し、測定を行った。
引張応力(M200)は、ダンベル3号形を用いて測定した。
レジリエンスは、リュプケタイプの試験機を用いて測定した。
(2)粘弾性特性
株式会社上島製作所製の粘弾性アナライザを用いて測定した。
条件:温度−5℃〜80℃(昇温速度:2℃/分)
初期歪10%、動的歪2.5%、周波数10Hz
以下のとおり、引張特性および粘弾性特性を測定した。
(1)引張特性
JIS−K6251に準拠し、測定を行った。
引張応力(M200)は、ダンベル3号形を用いて測定した。
レジリエンスは、リュプケタイプの試験機を用いて測定した。
(2)粘弾性特性
株式会社上島製作所製の粘弾性アナライザを用いて測定した。
条件:温度−5℃〜80℃(昇温速度:2℃/分)
初期歪10%、動的歪2.5%、周波数10Hz
参考例で得た加硫ゴムを対照とした場合、実施例で得た加硫ゴムは、レジリエンスが18%向上し、引張応力(M200)が7%向上し、粘弾性特性(tanδ)が28%低下し、いずれの試験においても各種物性の改善が確認された。
本発明により、タイヤの製造に用いられる加硫ゴムの粘弾性特性を改善させる方法が提供可能となる。
Claims (3)
- 加硫ゴムが有する粘弾性特性を改善させるための下記式
(H2N−(CH2)6−SSO3 −)n・Mn+
(式中、Mn+は金属イオンを表し、nはその価数を表す。)
で示される6−アミノヘキシルチオスルファートの使用。 - 金属イオンが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、コバルトイオン、銅イオンまたは亜鉛イオンである請求項1に記載される使用。
- 金属が、リチウムイオン、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンである請求項1に記載される使用。
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JP2009134838A JP5310275B2 (ja) | 2009-06-04 | 2009-06-04 | 加硫ゴムが有する粘弾性特性を改善させるための6−アミノヘキシルチオスルファートの使用 |
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