JP2005068277A - ラジアルタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】金属コードと該コードを被覆するゴムとからなるベルト層及び/又はカーカスプライを備えたラジアルタイヤにおいて、金属コードとゴムとの初期接着性及び耐熱寿命を維持しつつ、該ゴムの入力歪みを低減してゴムの耐疲労破壊性を向上させたラジアルタイヤを提供する。
【解決手段】前記ベルト層及びカーカスプライの少なくとも一方で、金属コードを被覆するゴムに、ジエン系ゴムからなるゴム成分に下記式(I):
(式中、R0は、水素、アルキル基、フェニル基又はメチロール基で;R1及びR2は、それぞれアリーレン基、炭素数2〜10のアルキレン基、アラルキレン基、シクロアルケニレン基又はシクロアルカジエニレン基で;nは0〜10である)で表されるフェノール系樹脂を配合してなるゴム組成物を用いたことを特徴とするラジアルタイヤである。
【選択図】なし
【解決手段】前記ベルト層及びカーカスプライの少なくとも一方で、金属コードを被覆するゴムに、ジエン系ゴムからなるゴム成分に下記式(I):
(式中、R0は、水素、アルキル基、フェニル基又はメチロール基で;R1及びR2は、それぞれアリーレン基、炭素数2〜10のアルキレン基、アラルキレン基、シクロアルケニレン基又はシクロアルカジエニレン基で;nは0〜10である)で表されるフェノール系樹脂を配合してなるゴム組成物を用いたことを特徴とするラジアルタイヤである。
【選択図】なし
Description
本発明は、金属コードを含むベルト層及び/又はカーカスプライを備えたラジアルタイヤに関し、特に金属コードと該コードを被覆するゴムとの接着性を維持しつつ該ゴムの耐疲労破壊性を向上させたラジアルタイヤに関するものである。
近年、カーカス及びベルトの少なくとも一方の補強材料としてスチールコードを用いたスチールコード補強タイヤが、広く用いられるようになってきた。ここで、スチールコード補強タイヤにおいては、スチールコードと該コードを被覆するゴムとの接着性を確保することが重要であり、この接着性が低下するとカーカス及び/又はベルトの耐久性が低下し、ひいてはタイヤの耐久性に問題が生じることが知られている。
一方、昨今、タイヤの寿命が延びてきたため、スチールコードとゴムとの接着性に加え、タイヤの使用により発生したスチールコードとゴム間の亀裂の進展を抑制することが必要となってきた。ここで、スチールコードを被覆するゴム中を進展する亀裂は、タイヤの走行に伴う発熱によってゴムが高温に曝されて劣化し、ゴム自身の耐疲労破壊性が低下することによって発生すると考えられている。そのため、スチールコードを被覆するゴムの耐疲労破壊性を改善するために、ゴム自身の耐熱劣化性を向上させる対策が考えられ、具体的には、該ゴムに硫黄の配合量を減じたゴム組成物を用いる手法が考えられる。一方、スチールコードを被覆するゴムの剛性を向上させ入力歪みを低減して、ゴムの耐疲労破壊性を改善する方策も考えられ、具体的には、該ゴムに硫黄の配合量を増量したゴム組成物を用いる手法が考えられる。
しかしながら、硫黄の配合量を減じたゴム組成物は、耐熱劣化性が向上するものの、剛性が低下し、該ゴム組成物をスチールコードを被覆するゴムに適用した場合、該ゴムにかかる入力歪みが増大し、結果として、耐疲労破壊性が低下し、更には、スチールコードとゴムとの初期接着性や耐熱寿命も悪化してしまう。また、隣接部材の入力歪みも増大するため、隣接部材の耐疲労破壊性までもが低下してしまう。
一方、硫黄の配合量を増量したゴム組成物は、剛性が向上し、該ゴム組成物をスチールコードを被覆するゴムに適用した場合、該ゴムにかかる入力歪みが低減され、また、スチールコードとゴムとの初期接着性や耐熱寿命も向上するものの、ゴム自身の耐熱劣化性が低下するため、結果として、ゴムの耐疲労破壊性が低下してしまう。更には、スチールコードを被覆するゴムと隣接部材との硫黄配合量の差に起因して、硫黄が加硫中に該ゴムから隣接部材に移行し、隣接部材の耐熱劣化性までもが低下してしまう。
従って、硫黄の配合量を調整して、スチールコードとゴムとの初期接着性や耐熱寿命を維持しつつ、該ゴムの入力歪みの低減と耐熱劣化性の向上とを同時に達成してゴムの耐疲労破壊性を改善することは難しかった。
一方、ゴム組成物を高弾性化して剛性を向上させる手段として、未変性のフェノール樹脂や、トールオイル又はカシューオイル等の不飽和油、或いはキシレン又はメシチレン等の芳香族炭化水素で変性したフェノール樹脂を添加する方法が提案されている。(例えば、特許文献1及び2参照)。しかしながら、未変性フェノール樹脂や変性フェノール樹脂は、通常使用される極性の低いゴム成分に対して分散性が低く、その結果、フェノール樹脂の偏在した部分がゴム組成物中に存在して破壊の基点となるため、耐疲労破壊性を充分に向上させることができなかった。
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、金属コードと該コードを被覆するゴムとからなるベルト層及び/又はカーカスプライを備えたラジアルタイヤにおいて、金属コードとゴムとの初期接着性及び耐熱寿命を維持しつつ、該ゴムの入力歪みを低減してゴムの耐疲労破壊性を向上させたラジアルタイヤを提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定のフェノール系樹脂を配合したゴム組成物を金属コードを被覆するゴムに適用することで、該ゴムの剛性が向上して入力歪みが低減し、金属コードとゴムとの初期接着性及び耐熱寿命を維持しつつ、ゴムの耐疲労破壊性を改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明のラジアルタイヤは、金属コードと該コードを被覆するコーティングゴムとからなるベルト層及び/又はカーカスプライを備えたラジアルタイヤにおいて、前記ベルト層及びカーカスプライの少なくとも一方で、金属コードを被覆するコーティングゴムに、ジエン系ゴムからなるゴム成分に下記式(I):
(式中、R0は、水素、アルキル基、フェニル基又はメチロール基で;R1及びR2は、それぞれアリーレン基、炭素数2〜10のアルキレン基、アラルキレン基、シクロアルケニレン基又はシクロアルカジエニレン基で;nは0〜10である)で表されるフェノール系樹脂を配合してなるゴム組成物を用いたことを特徴とする。
(式中、R0は、水素、アルキル基、フェニル基又はメチロール基で;R1及びR2は、それぞれアリーレン基、炭素数2〜10のアルキレン基、アラルキレン基、シクロアルケニレン基又はシクロアルカジエニレン基で;nは0〜10である)で表されるフェノール系樹脂を配合してなるゴム組成物を用いたことを特徴とする。
本発明のラジアルタイヤの好適例においては、前記金属コードと前記コーティングゴムとの間にインシュレーションゴムが介在し、該インシュレーションゴムに前記ゴム組成物を用いる。
また、前記ベルト層及び/又はカーカスプライの構造としては、金属コード表面を直接前記ゴム組成物で被覆した構造及び/又は略平面状に複数本並べた金属コードの周囲を前記ゴム組成物で被覆して該コードを埋設した構造が好ましい。
本発明のラジアルタイヤは、大型車両用タイヤとして好適である。
本発明のラジアルタイヤの他の好適例においては、前記ゴム組成物が、前記ゴム成分100質量部に対して、前記式(I)のフェノール系樹脂0.5〜10質量部と、耐熱架橋剤0.1〜3.0質量部と、前記式(I)のフェノール系樹脂の3〜20質量%の硬化剤とを配合してなる。ここで、前記耐熱架橋剤がヘキサメチレン-1,6-ビス(チオ硫酸ナトリウム)二水和物又はN,N'-ジフェニルメタンビスマレイミドであって、該耐熱架橋剤と前記式(I)のフェノール系樹脂との総配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して10質量部以下であるのが更に好ましい。
本発明のラジアルタイヤにおいては、前記式(I)中のR1及びR2がそれぞれキシリレン基又は[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジメチレン基であるのが好ましく、R0が水素であるのが好ましい。
本発明によれば、金属コードと該コードを被覆するゴムとからなるベルト層及び/又はカーカスプライを備えたラジアルタイヤにおいて、特定のフェノール系樹脂を含むゴム組成物を金属コードを被覆するゴムに適用することで、金属コードとゴムとの初期接着性及び耐熱寿命を維持しつつ、該ゴムの入力歪みを低減して該ゴムの耐疲労破壊性を向上させたラジアルタイヤを提供することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のラジアルタイヤは、金属コードと該コードを被覆するコーティングゴムとからなるベルト層及び/又はカーカスプライを備えたラジアルタイヤにおいて、前記ベルト層及びカーカスプライの少なくとも一方で、金属コードを被覆するコーティングゴムに、ジエン系ゴムからなるゴム成分に前記式(I)で表されるフェノール系樹脂を配合してなるゴム組成物を用いたことを特徴とする。
本発明のラジアルタイヤにおいては、前記金属コードと前記コーティングゴムとの間にインシュレーションゴムが介在してもよく、この場合、コーティングゴムに加えインシュレーションゴムにも前記ゴム組成物を適用する。ここで、ベルト層及び/又はカーカスプライの構造としては、金属コード表面を直接前記ゴム組成物で被覆した構造や、略平面状に複数本並べた金属コードの周囲を前記ゴム組成物で被覆して該コードを埋設した構造が好ましい。
従来用いられていた未変性のフェノール樹脂は、極性の官能基であるフェノール基とフェノール基との距離が短いため、極性の低いジエン系ゴムからなるゴム成分に対する分散性が低い。このため、フェノール樹脂の偏在した部分がゴム組成物中に存在し、該部分が破壊の基点となり耐破壊性を低下させていた。また、変性フェノール樹脂は、フェノール樹脂を重合した後、該重合体を変性するので、構造的に分子の末端のみが変性され、中央部は未変性のフェノール樹脂と同じである。そのため、分子末端のゴム成分への相溶性は改善されるものの、中央部の相溶性が低いので、充分なゴム物性が得られない。
これに対して、式(I)のフェノール系樹脂は、末端及び中央の双方のゴム成分に対する相溶性が改善されている。即ち、式(I)のフェノール系樹脂は、複数のフェノール類がメチレン基より大きな2価の基を介して結合しているため、未変性又は変性フェノール樹脂よりも、極性の官能基であるフェノール基とフェノール基との距離が長い。そのため、式(I)のフェノール系樹脂は、上記未変性及び変性フェノール樹脂よりも極性が低く、ゴム成分中での分散性が改善され、ゴム組成物を大幅に高弾性化して、剛性を向上させることができる。また、ゴム成分中での分散性が良好なため、式(I)のフェノール系樹脂を含むゴム組成物は、均一で破壊の起点となる部分がなく、硬化後の形態が応力に対しより強く、耐疲労破壊性を充分に改善することができる。更に、該ゴム組成物においては、硫黄の配合量を減ずる必要がないため、金属コードとゴムとの初期接着性及び耐熱寿命を維持することができる。
上記ゴム組成物に用いるゴム成分は、ジエン系ゴムからなり、該ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)及び合成イソプレンゴム(IR)等が挙げられ、これらの中でも天然ゴムが好ましい。これらジエン系ゴムは、一種単独でも、ブレンドでもよい。
上記ゴム組成物は、上記ゴム成分100質量部に対して、上記式(I)のフェノール系樹脂を0.5〜10質量部配合してなるのが好ましく、1〜5質量部配合してなるのが更に好ましい。式(I)のフェノール系樹脂の配合量が、ゴム成分100質量部に対して0.5質量部未満では、ゴムの剛性を向上させる効果が不充分であり、10質量部を超えると、発熱性が著しく上昇してしまうことに加え、隣接部材との剛性段差によって、ゴム-ゴム間の界面に亀裂が進展してしまう。
式(I)において、繰り返し単位数nは、0〜10である。また、R0は、水素、アルキル基、フェニル基又はメチロール基である。ここで、アルキル基としては、メチル基、エチル基等が挙げられる。これらの中でも、R0としては、硬化反応の点から水素が好ましい。
式(I)において、R1及びR2は、それぞれアリーレン基、炭素数2〜10のアルキレン基、アラルキレン基、シクロアルケニレン基又はシクロアルカジエニレン基である。従来高弾性化を目的としてゴム組成物に配合されていた未変性フェノール樹脂及び変性フェノール樹脂は、R1及びR2がメチレン基であるが、本発明に用いるフェノール系樹脂は、R1及びR2がメチレン基より大きな2価の基であるため、フェノール基同士の距離が長くなり、前述のような作用を発揮する。ここで、アリーレン基としては、フェニレン基等が挙げられ、炭素数2〜10のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基等が挙げられ、アラルキレン基としては、キシリレン基(−CH2−C6H4−CH2−)又は[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジメチレン基(−CH2−C6H4−C6H4−CH2−)等が挙げられ、シクロアルケニレン基としては、シクロヘキシレン基、ジシクロデシレン基、トリシクロデシレン基等が挙げられ、シクロアルカジエニレン基としては、シクロペンタジエニレン基等が挙げられる。これらの中でも、R1及びR2としては、キシリレン基及び[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジメチレン基が好ましい。
式(I)のフェノール系樹脂として、具体的には、下記式(II)又は式(III):
で表される樹脂が好ましく、市販品を利用することができる。該市販のフェノール系樹脂としては、例えば、明和化成社のMEH-7800、MEH-7851等が挙げられる。
で表される樹脂が好ましく、市販品を利用することができる。該市販のフェノール系樹脂としては、例えば、明和化成社のMEH-7800、MEH-7851等が挙げられる。
上記ゴム組成物は、更にメチレン供与体である硬化剤を含むのが好ましい。但し、前記R0がメチロール基の場合、該フェノール系樹脂は自己硬化性なので、硬化剤は不要である。該硬化剤としては、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサメチルメチロールメラミン等が挙げられる。ここで、硬化剤の配合量は、前述した式(I)のフェノール系樹脂の3〜20質量%の範囲が好ましく、5〜15質量%の範囲が更に好ましい。3質量%未満では、フェノール系樹脂の硬化性が低く、20質量%を超えると、ゴムの弾性率が著しく上昇してしまう。
上記ゴム組成物は、上記ゴム成分100質量部に対して、耐熱架橋剤を0.1〜3.0質量部配合してなるのが好ましい。ここで、耐熱架橋剤としては、ヘキサメチレン-1,6-ビス(チオ硫酸ナトリウム)二水和物[HTS, NaO3S−S−(CH2)6−S−SO3Na・2H2O]、並びにN,N'-1,2-フェニレンビスマレイミド、N,N'-1,3-フェニレンビスマレイミド、N,N'-1,4-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、N,N'-ジフェニルメタンビスマレイミド等のビスマレイミド系化合物(BMI)が挙げられ、これらの中でも、ヘキサメチレン-1,6-ビス(チオ硫酸ナトリウム)二水和物及びN,N'-ジフェニルメタンビスマレイミドが好ましい。これら耐熱架橋剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。上記耐熱架橋剤は、硫黄架橋に比べて熱的に安定な架橋構造を形成できるため、ゴム組成物の耐熱老化性を向上させることができる。但し、耐熱架橋剤の配合量が、ゴム成分100質量部に対して0.1質量部未満では、長時間加硫による耐熱性の低下を充分に抑制できないことがあり、3.0質量部を超えると、耐亀裂性が低下する傾向があることに加え、加硫後のゴム組成物中に耐熱架橋剤が未反応のまま残存する傾向があるため、耐熱架橋剤が安定な架橋形態を形成できず、充分に耐熱老化性を改善できないことがある。
上記ゴム組成物において、上記耐熱架橋剤と式(I)のフェノール系樹脂との総配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して10質量部以下であるのが好ましい。耐熱架橋剤と式(I)のフェノール系樹脂との総配合量が、ゴム成分100質量部に対して10質量部を超えると、ゴムが硬化しすぎてもろくなる上に、ゴムとスチールコードとの接着も阻害される。
上記ゴム組成物は、更にヒドラゾン化合物を含有するのが好ましい。該ヒドラゾン化合物の配合量は、上記ゴム成分100質量部に対して0.1〜5.0質量部の範囲が好ましく、0.3〜2.0質量部の範囲が更に好ましい。ヒドラゾン化合物の配合量が、ゴム成分100質量部に対して0.1質量部未満では、加硫戻りを抑制する効果及び発熱性を低減する効果が小さく、5.0質量部を超えると、コストが上昇すると共にゴム組成物の作業性が低下する。該ヒドラゾン化合物としては、3-ヒドロキシ-N'-(1-メチルエチリデン)-2-ナフトエ酸ヒドラジド,3-ヒドロキシ-N'-(1-メチルプロピリデン)-2-ナフトエ酸ヒドラジド,3-ヒドロキシ-N'-(1-メチルブチリデン)-2-ナフトエ酸ヒドラジド,3-ヒドロキシ-N'-(1,3-ジメチルブチリデン)-2-ナフトエ酸ヒドラジド,3-ヒドロキシ-N'-(2,6-ジメチル-4-ヘプチリデン)-2-ナフトエ酸ヒドラジド,3-ヒドロキシ-N'-(1,2-ジフェニルエチリデン)-2-ナフトエ酸ヒドラジド;N'-(1-メチルエチリデン)-サリチル酸ヒドラジド,N'-(1-メチルプロピリデン)-サリチル酸ヒドラジド,N'-(1-メチルブチリデン)-サリチル酸ヒドラジド,N'-(1,3-ジメチルブチリデン)-サリチル酸ヒドラジド,N'-(2,6-ジメチル-4-ヘプチリデン)-サリチル酸ヒドラジド等が挙げられる。
上記ゴム組成物は、加硫後の物性として、100%伸長時の引張応力が3.0MPa以上であるのが好ましく、3.0〜4.0MPaであるのが更に好ましい。なお、引張応力は、JIS K6301-1995に準拠して測定することができる。
上記ゴム組成物には、上記ゴム成分、フェノール系樹脂、硬化剤、耐熱架橋剤、ヒドラゾン化合物の他に、ゴム業界で通常使用される配合剤、例えば、充填剤、加硫促進剤、老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、軟化剤、オゾン劣化防止剤、加硫剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。なお、充填剤としては、カーボンブラック及びシリカ等の補強性充填剤、炭酸カルシウム及び炭酸ナトリウム等の無機充填剤が挙げられ、加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール(M)、ジベンゾチアジルジスルフィド(DM)及びN-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CZ)等のチアゾール系加硫促進剤、テトラメチルチウラムジスルフィド(TT)等のチウラム系加硫促進剤、並びにジフェニルグアニジン(DPG)等のグアニジン系加硫促進剤が挙げられる。これら配合剤は、市販品を好適に使用することができる。なお、上記ゴム組成物は、ゴム成分に、フェノール系樹脂と共に必要に応じて適宜選択した各種配合剤を配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
本発明のラジアルタイヤのベルト層及び/又はカーカスプライに用いる金属コードの材質としては、鉄、銅、アルミニウム、SUS、真鍮等を挙げることができる。該金属コードとしては、スチールコード、特に、ブラスコートされ、加硫ゴムとの接着性が高められたスチールコードが好ましい。そのコーティング処理の方法は特に制限されず、通常の方法、例えば、メッキ処理法、各種CVD法、PVD法等を利用することができる。また、上記金属コードは、1本の線材コード、或いは複数の金属フィラメントを撚り合わせた構成のコードでもよい。また、このようなコードを複数本並べて、或いは織物とした平面状のスチールコードとしても良い。
上記ベルト層及び/又はカーカスプライは、金属コード表面に直接上述のゴム組成物を被覆した構造及び/又は略平面状に複数本並べた金属コードの周囲に上記ゴム組成物を被覆して該コードを埋設した構造であるのが好ましい。図1に示すように、本発明のラジアルタイヤのベルト層及び/又はカーカスプライは、スチールコード1がほぼ平面状に配置される場合、上記ゴム組成物からなるインシュレーションゴム2でスチールコード1の表面を直接被覆した構造とすることができる。ここで、インシュレーションゴム2の厚さは、0.1〜3.0mmの範囲が好ましく、0.5〜2.0mmの範囲が更に好ましい。また、上記ベルト層及び/又はカーカスプライは、上記ゴム組成物からなるコーティングゴム3で、ほぼ平面状に複数本並べられたスチールコード1の周囲を被覆した構造とすることができる。ここで、コーティングゴム3が、インシュレーションゴム2を介さず、直接スチールコード1の表面に接する構造とすることもできる。
本発明のラジアルタイヤは、一対のビード部と、一対のサイド部と、トレッド部と、該ビード部に埋設されたビードコア間にトロイド状に延在させたカーカスと、該カーカスのクラウン部でタイヤ半径方向外側に配したベルトとを備える。ここで、カーカスは、少なくとも1枚のカーカスプライからなり、ベルトは、少なくとも2枚のベルト層かなるのが好ましい。本発明のラジアルタイヤにおいては、上記ベルト層及び/又はカーカスプライに上述の剛性の高いゴム組成物を適用しているため、ベルト及び/又はカーカスの耐疲労破壊性が高く、発熱が大きく使用期間の長い大型車両用タイヤとして特に好適である。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
表1に示す配合処方のゴム組成物を調製し、下記の方法で該ゴム組成物のスコーチ特性、通常加硫時及び過加硫時の切断時伸び、引張強さ及び引張応力を測定した。これらの結果を表1に示す。
(1)スコーチ特性
JIS K6300に準拠して、130℃において、最低ムーニー粘度値から上昇値に達するまでの時間を測定して、スコーチ特性を評価した。
JIS K6300に準拠して、130℃において、最低ムーニー粘度値から上昇値に達するまでの時間を測定して、スコーチ特性を評価した。
(2)引張試験
145℃×60分の条件で通常加硫を行ったサンプルと、145℃×300分の条件で過加硫を行ったサンプルの双方に対して、JIS K6301に準拠して引張試験を実施し、切断時伸び(EB)、引張強さ(TB)及び引張応力(M )を測定した。ここで、引張応力は、300%伸長時の値である。
145℃×60分の条件で通常加硫を行ったサンプルと、145℃×300分の条件で過加硫を行ったサンプルの双方に対して、JIS K6301に準拠して引張試験を実施し、切断時伸び(EB)、引張強さ(TB)及び引張応力(M )を測定した。ここで、引張応力は、300%伸長時の値である。
黄銅メッキ(Cu:63wt%、Zn:37wt%)したスチールコード[1×5×0.25mm(素線径)]を1.25mm間隔で平行に並べ、このスチールコードを上下両側から上記ゴム組成物でコーティングし、145℃で60分間加硫してコード-ゴム複合体を作製した。該複合体におけるコードとゴムとの耐熱接着性を下記の方法で測定し、表1に示す結果を得た。
(3)耐熱接着性
上記コード-ゴム複合体を100℃、20%RHの環境下に7日間放置した後、ASTM-D-2229に準拠して、各複合体からスチールコードを引き抜き、露出したスチールコードのゴムの被覆状態を目視で観察し、その被覆率を0〜100%で表示して耐熱接着性の指標とした。数値が大きい程、耐熱接着性が高く良好であることを示す。
上記コード-ゴム複合体を100℃、20%RHの環境下に7日間放置した後、ASTM-D-2229に準拠して、各複合体からスチールコードを引き抜き、露出したスチールコードのゴムの被覆状態を目視で観察し、その被覆率を0〜100%で表示して耐熱接着性の指標とした。数値が大きい程、耐熱接着性が高く良好であることを示す。
上記コード-ゴム複合体をベルト層に適用し、サイズ3700R57のラジアルタイヤを常法により試作し、ベルト層の耐疲労破壊性を下記の方法で評価した。結果を表1に示す。
(4)耐疲労破壊性
上記供試タイヤに対し、一定速度・ステップロード条件のドラムテストを実施し、ドラムテスト終了後のベルト層端からの亀裂長さを測定し、比較例1の亀裂長さを100として指数表示した。指数値が大きい程、亀裂長さが短く、耐疲労破壊性に優れることを示す。
上記供試タイヤに対し、一定速度・ステップロード条件のドラムテストを実施し、ドラムテスト終了後のベルト層端からの亀裂長さを測定し、比較例1の亀裂長さを100として指数表示した。指数値が大きい程、亀裂長さが短く、耐疲労破壊性に優れることを示す。
*1 Nipol2200.
*2 FLEXSIS製, SANTOFLEX 6PPD.
*3 バーサチック酸コバルト.
*4 2号スピンドルオイル, 出光興産製, ダイアナプロセスオイルNS-24.
*5 大内新興化学製, ノクセラーDZ-G.
*6 式(III)のフェノール系樹脂, 明和化成製, MEH-7851-4H、繰り返し単位数(n)=0〜7、軟化点130℃.
*7 ヘキサメチレンテトラミン.
*8 BMH, N'-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド.
*9 三井化学製, N,N'-ジフェニルメタンビスマレイミド.
*10 FLEXSIS製, ヘキサメチレン-1,6-ビス(チオ硫酸ナトリウム)・二水和物.
*2 FLEXSIS製, SANTOFLEX 6PPD.
*3 バーサチック酸コバルト.
*4 2号スピンドルオイル, 出光興産製, ダイアナプロセスオイルNS-24.
*5 大内新興化学製, ノクセラーDZ-G.
*6 式(III)のフェノール系樹脂, 明和化成製, MEH-7851-4H、繰り返し単位数(n)=0〜7、軟化点130℃.
*7 ヘキサメチレンテトラミン.
*8 BMH, N'-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド.
*9 三井化学製, N,N'-ジフェニルメタンビスマレイミド.
*10 FLEXSIS製, ヘキサメチレン-1,6-ビス(チオ硫酸ナトリウム)・二水和物.
表1から、実施例2及び3のゴム組成物を用いたベルト層(コード-ゴム複合体)は、耐熱接着性が高く、且つ耐疲労破壊性にも優れることが分かる。一方、比較例のゴム組成物を用いたベルト層(コード-ゴム複合体)は、実施例2及び3よりも耐熱接着性及び耐疲労破壊性が劣っていた。
1 スチールコード
2 インシュレーションゴム
3 コーティングゴム
2 インシュレーションゴム
3 コーティングゴム
Claims (9)
- 前記金属コードと前記コーティングゴムとの間にインシュレーションゴムが介在し、該インシュレーションゴムに前記ゴム組成物を用いたことを特徴とする請求項1に記載のラジアルタイヤ。
- 前記ベルト層及び/又はカーカスプライが、金属コード表面を直接前記ゴム組成物で被覆した構造及び/又は略平面状に複数本並べた金属コードの周囲を前記ゴム組成物で被覆して該コードを埋設した構造からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のラジアルタイヤ。
- 前記ラジアルタイヤが大型車両用タイヤであることを特徴とする請求項1に記載のラジアルタイヤ。
- 前記ゴム組成物が、前記ゴム成分100質量部に対して、前記式(I)のフェノール系樹脂0.5〜10質量部と、耐熱架橋剤0.1〜3.0質量部と、前記式(I)のフェノール系樹脂の3〜20質量%の硬化剤とを配合してなることを特徴とする請求項1に記載のラジアルタイヤ。
- 前記耐熱架橋剤がヘキサメチレン-1,6-ビス(チオ硫酸ナトリウム)二水和物又はN,N'-ジフェニルメタンビスマレイミドであって、該耐熱架橋剤と前記式(I)のフェノール系樹脂との総配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して10質量部以下であることを特徴とする請求項5に記載のラジアルタイヤ。
- 前記式(I)中のR1及びR2がそれぞれキシリレン基であることを特徴とする請求項1に記載のラジアルタイヤ。
- 前記式(I)中のR1及びR2がそれぞれ[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジメチレン基であることを特徴とする請求項1に記載のラジアルタイヤ。
- 前記式(I)中のR0が水素であることを特徴とする請求項1に記載のラジアルタイヤ。
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