JP4382385B2 - 歪矯正方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、長軸部材に生じた歪を矯正する方法及び装置であって、特に歪矯正効率の向上を図る歪矯正方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、トランスミッション軸等といった、焼き入れや焼き戻し等の熱処理が施される長軸部材に対しては、熱処理時に生じる歪を取るために、歪矯正装置により歪矯正が行われる。この歪矯正は、長軸部材の歪量を測定した後、歪矯正装置のメモリに予め記憶された歪量と押し込み量との関係を示す矯正曲線に基づいて、測定された歪量から押し込み量を決定し、歪矯正装置のプレス装置にて決定した押し込み量だけ、長軸部材を押し込むことで行われる。
例えば、図8に示すように、駆動部120により上下駆動されるプレス装置113を、決定された押し込み量だけ下降させることで、受け台114・114に支持される長軸部材105が押し込まれる。
また、このプレス装置113による長軸部材105の押し込みは、押し込み開始位置から一定速度でプレス装置113を下降させて行われる。この際、長軸部材105のプレス装置113とは反対側に配置される変位計111にて検知される押し込み量がコントローラ115に入力され、押し込み量が目標位置まで達すると、駆動部120へ停止信号が出力されてプレス装置113が停止するような制御(所謂オープン制御)がなされていた。(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−314233号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述の如く、従来の歪矯正は、オープン制御にてプレス装置を下降させるため、押し込み量が目標位置まで到達したことを変位計111にて確認してから、プレス装置113を停止させるまでに応答遅れが発生する。
例えば、図9に示すように、プレス装置113は初期位置では長軸部材との間に隙間を空けて配置されているため、下降を開始してから所定時間経過するまでの領域はプレス装置空走領域Raとなり、長軸部材の変位は変化せず一定である。
その後、プレス装置が長軸部材105と接触してからは、プレス装置加圧領域Rbとなって、長軸部材の変位は一定度合いで増加していき、変位が目標停止位置Y1に達すると、停止信号が出力されてプレス装置113は停止するが、目標停止位置Y1に達してから停止するまでにタイムラグがあるため、停止位置Y2と目標停止位置Y1との間には停止位置誤差ΔYが生じる。
【0005】
また、前記応答遅れ時間(タイムラグ)はプレス装置113の下降速度等によって変動し、停止位置誤差ΔYの大きさも変動するため、実際の停止位置Y2の精度が低下する。
停止位置Y2の精度は歪矯正にとって重要であり、停止精度が低いと歪矯正回数が増加したり、歪矯正不能の原因となったりする。さらに、停止位置Y2が目標停止位置Y1から大きくずれると、長軸部材105が破損する等の問題が生じる。
【0006】
これらの問題を解消するためには、変位計111にて検出される長軸部材105の変位情報(押し込み量の推移)をフィードバックして、プレス装置113の下降速度を制御することが望ましい。
しかし、変位計111にて長軸部材105の変位を捕らえてフィードバック制御することが可能となるのは、プレス装置113が長軸部材105に当接した後のプレス装置加圧領域Rbのみであり、プレス装置空走領域Raでは制御できない。
従って、変位計111からの変位情報に基づいて位置制御を行うためには、プレス装置が長軸部材105に確実に当接したことを精度良く把握する必要がある。
【0007】
また、長軸部材の歪量の測定値のみから押し込み量を決定すると、長軸部材の軸径や、焼き入れ等の表面処理状態のばらつきによって、長軸部材の曲げ易さが変化した場合でも、押し込み量は一定となってしまうため、歪矯正の際に過矯正や矯正不足が発生する可能性が生じる。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の歪矯正方法及び装置は、以下の特徴を有する。
即ち、請求項1においては、長軸部材の変位を計測して歪量を求める計測工程と、求めた歪量に基づいてプレス装置のパンチを下降して、長軸部材を加圧して押し込む押し込み工程とを備える歪矯正方法であって、押し込み工程では、プレス装置の動作開始から、プレス装置のパンチによる押し込み荷重が、該長軸部材の弾性変形領域内における所定の荷重に達するまでは、押し込み荷重に基づいてプレス装置の制御を行い、押し込み荷重が所定の荷重に達した後は、押し込まれる長軸部材の変位に基づいてプレス装置の制御を行い、前記押し込み荷重に基づいてプレス装置の制御を行う際には、前記押し込み荷重を検出し、検出した押し込み荷重の大きさに応じてパンチの下降速度が制御され、パンチの下降速度は、検出される荷重が大きくなるに従って減少し、前記長軸部材の変位に基づいてプレス装置の制御を行う際には、前記長軸部材の変位を検出し、検出した変位の大きさに応じてパンチの下降速度が制御され、パンチの下降速度は、検出される変位が大きくなるに従って減少する。
これにより、位置制御の開始時点から長軸部材の変位を正確に捕らえてフィードバック制御することができ、狙い通りの目標停止位置で高精度にプレス装置を停止させることが可能となって、歪矯正の精度を向上することができ、効率的な歪矯正を行うことができる。
【0009】
また、請求項2においては、前記押し込み工程では、押し込み荷重に基づく制御の期間内における長軸部材の変位量を用いて初期変形補正量を算出し、前記計測工程にて求められた長軸部材の歪量に基づいて算出される初期目標押し込み量に、前記初期変形補正量を加算して目標押し込み量を算出し、該目標押し込み量から決定される目標停止位置までプレス装置による長軸部材の押し込みを行う。
これにより、長軸部材の軸径や、焼き入れ等の表面処理状態のばらつきによって、長軸部材の曲げ易さが変化した場合でも、その変化に応じて押し込み量を補正することが可能となり、過矯正や矯正不足がない高精度で効率の良い歪矯正を行うことができる。
【0010】
また、請求項3においては、歪矯正装置は、長軸部材の変位を計測する計測手段と、下降により長軸部材に対する押し込み動作を行う押し込み手段と、押し込み手段による長軸部材に対する押し込み荷重を検出する荷重検出手段と、計測手段により計測された変位、及び荷重検出手段により検出された押し込み荷重に基づいて、押し込み手段の駆動制御を行う駆動部とを備え、前記駆動部は、プレス装置の動作開始から、プレス装置の押し込み荷重が、該長軸部材の弾性変形領域内における所定の荷重に達するまでは、押し込み荷重に基づいてプレス装置の制御を行い、押し込み荷重が所定の荷重に達した後は、長軸部材の変位量に基づいてプレス装置の制御を行い、前記駆動部により、前記押し込み荷重に基づいてプレス装置の制御を行う際には、前記押し込み荷重を検出し、検出した押し込み荷重の大きさに応じて押し込み手段の下降速度が制御され、押し込み手段の下降速度は、検出される荷重が大きくなるに従って減少し、前記駆動部により、前記長軸部材の変位に基づいてプレス装置の制御を行う際には、前記長軸部材の変位を検出し、検出した変位の大きさに応じてパンチの下降速度が制御され、パンチの下降速度は、検出される変位が大きくなるに従って減少する。
これにより、歪矯正動作の開始時に、押し込み荷重に基づく荷重制御を行い、その後に長軸部材の変位に基づく位置制御を行うといったように、荷重制御と位置制御との2段階の制御を行うことが可能となる。
そして、位置制御の開始時点から長軸部材の変位を捕らえてフィードバック制御することができ、狙い通りの目標停止位置で高精度にプレス装置を停止させることが可能となって、歪矯正の精度を向上することができ、効率的な歪矯正を行うことができる。
【0011】
また、請求項4においては、前記駆動部は、プレス装置による長軸部材の押し込み量を、前記計測工程にて求めた長軸部材の歪量に基づいて算出される初期目標押し込み量に、押し込み荷重に基づく制御の期間内における長軸部材の変位量を用いて算出した初期変形補正量を加算して、算出する。
これにより、長軸部材の軸径や、焼き入れ等の表面処理状態のばらつきによって、長軸部材の曲げ易さが変化した場合でも、その変化に応じて押し込み量を補正することが可能となり、過矯正や矯正不足がない高精度で効率の良い歪矯正を行うことができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を添付の図面を用いて説明する。
【0013】
まず、本発明の歪矯正方法に用いられる歪矯正装置について説明する。
図1に示す歪矯正装置1は、歪矯正を行う長軸部材5の歪量を測定する変位計11と、歪測定時に長軸部材を両端から支持するための支持部材12・12と、長軸部材5における所望の箇所を押し込んで歪矯正を行うためのプレス装置13と、歪矯正時に長軸部材5を受けるための受け部材14・14と、歪矯正装置1の作動・制御を行うコントローラ15と、コントローラ15からの指示に基づいてプレス装置13を駆動するプレス駆動部20とを備えている。
【0014】
前記支持部材12・12は、支持する長軸部材5を、軸心を中心として回転させることができる回転機構を具備している。
また、プレス装置13は、プレス駆動部20によりパンチ13aが駆動されて上昇・下降動作を行うが、該パンチ部13aにはパンチ13aにかかる荷重の大きさを検出する荷重計16が付設されている。
さらに、長軸部材5のプレス装置13が配置される側の反対側には、変位計11が設けられており、該変位計11にて長軸部材5の変位を検出するようにしている。
荷重計16及び変位計11はコントローラ15に電気的に接続されており、コントローラ15は電気的にプレス駆動部20に接続されている。
なお、長軸部材5は、主に、軸、ロッド、及びシャフト等の棒状部材であるが、それ以外のものでもアスペクト比が高い部材であれば適用可能である。
【0015】
このように構成される歪矯正装置1においては、長軸部材5を支持部材12・12にて支持しつつ変位計11により該長軸部材5の変位を計測し、その計測値からコントローラ15にて歪量を求めた後、プレス装置13をプレス駆動部20により駆動し、パンチ13aにて長軸部材5を所定の押し込み量だけ押し込むことで、歪矯正を行うようにしている。
【0016】
次に、この歪矯正方法について、図2に示すフローにより詳説する。
まず、歪矯正装置1の変位計11により、長軸部材5の歪量及び歪の位相を計測する(S101)。
この計測は、長軸部材5を、支持部材12・12の回転機構により軸中心を中心に回転させながら、所定の測定箇所にて、回転方向における各位相の変位を断続的又は連続的に測定し、その測定値から歪量を算出することで行う。
なお、長軸部材5の歪量は、該長軸部材5が1回転する間に計測された変位の最大値と最低値との変位差とされる。
【0017】
計測した歪量が予め定められた規格値以下であるか否かを判断し(S102)、歪量が規格値を超えていれば、歪量の計測結果から、最大変位が計測されたポイント(位相)を割り出して(S103)、その最大変位ポイントがプレス装置13のパンチ13a側に向くように長軸部材5を回転させる。また、計測した歪量に基づいて、長軸部材5をパンチ13aで押し込む量をコントローラ15にて算出する。
なお、長軸部材5の押し込み量は、例えば、図3に示すような歪量と押し込み量との関係を示す矯正曲線51を用いて、歪量の計測値から算出される。
また、計測した歪量が予め定められた規格値以下であった場合は、歪矯正は行われない。
【0018】
その後、プレス装置13を駆動部20により作動させて、算出した押し込み量だけ、長軸部材5に対する押し込みを行うが、本歪矯正方法では、プレス装置13による押し込み動作の制御を、パンチ13aにかかる荷重に基づく荷重制御と、長軸部材5の変位に基づく位置制御とを用いて行うようにしている。
歪矯正動作が開始されると、駆動部20が、まず荷重制御にてプレス装置13のパンチ13aを下降させる(S104)。
【0019】
ここで、図4には、パンチ13aが下降動作を開始してからの長軸部材5の変位h、及びパンチ13aにかかる荷重Tを示している。
パンチ13aは、歪矯正動作開始前の初期位置では、長軸部材5と隙間を空けて配置されているため、パンチ13aが下降動作を開始してから所定時間経過するまでの領域はプレス装置空走領域Raとなり、長軸部材5の変位hは変化せず初期位置h1で一定である。
その後、パンチ13aが長軸部材5と接触するとプレス装置加圧領域Rbとなって、長軸部材5の変位hは増加していく。同時に、長軸部材5に当接するパンチ13aが受ける荷重Tも増加していく。
【0020】
荷重制御によるパンチ13aの下降動作においては、荷重計16が検出したパンチ13aの荷重Tがコントローラ15にフィードバック入力され、検出された荷重Tの大きさに応じてパンチ13aの下降速度が制御される。
パンチ13aの下降速度は、検出される荷重Tが大きくなるに従って減少し、検出荷重Tが、予め定められた目標荷重Taに達するとパンチ13aは停止する(S105、S106)。
【0021】
このように、荷重Tがコントローラ15にフィードバックされ、目標荷重Taに近づくにつれてパンチ13aの下降速度が減少するので、パンチ13aは目標とする停止位置を超えることなく、目標荷重Taに達する位置に正確に停止することが可能となっている。長軸部材5は、この荷重制御の間に初期位置h1から制御切換位置h2までの荷重制御時変位量Awだけ変位する。
なお、この目標荷重Taは、長軸部材5にパンチ13aの先端が確実に当たった状態で押し込まれ、安定的に荷重が検出可能となっているとともに、該長軸部材5を塑性変形させない弾性変形領域の範囲内にある値としており、実験等により求めている。従って、荷重Tが目標荷重Taとなる制御切換位置h2が、安定して得られることとなっている。
【0022】
次に、プレス装置13の制御が位置制御に切り換えられて(S107)、プレス装置13のパンチ13aが位置制御にて下降を開始する(S108)。
位置制御によるパンチ13aの下降動作においては、変位計11が検出した長軸部材5の変位hがコントローラ15にフィードバック入力され、検出された変位hの大きさに応じてパンチ13aの下降速度が制御される。
【0023】
パンチ13aの下降速度は、検出される変位hが大きくなるに従って減少し、検出変位hが、コントローラ15にて求められた前記押し込み量に基づいて算出される、目標停止位置haに達するとパンチ13aが停止する(S109、S110)。
【0024】
目標停止位置haは、長軸部材5の初期位置h1から目標変位量Aだけ変位させた位置に設定されており、この目標変位量Aは、図3に示す前記矯正曲線51から決定される。
また、荷重制御時の長軸部材5の変位量である荷重制御時変位量Awは、荷重制御が終了した時点(位置制御の開始時点)での長軸部材5の変位である制御切換位置h2から、初期位置h1を減じることにより求められる。
そして、目標停止位置haは長軸部材5の塑性領域に入っており、長軸部材5がパンチ13aにて塑性領域まで押し込まれることで、塑性変形して歪が矯正されることとなる。
パンチ13aは、下降動作を停止した後上昇して、歪矯正動作が終了する(S111)。
【0025】
以上の如く、歪矯正装置1は、長軸部材の歪量を計測する計測手段としての変位計11と、長軸部材に対する押し込み動作を行う押し込み手段であるプレス装置13と、プレス装置13による長軸部材5に対する押し込み荷重を検出する荷重検出手段としての荷重計16と、変位計11により計測された変位h、及び荷重計16により検出された押し込み荷重Tに基づいて、プレス装置13の駆動制御を行う駆動部20とを備えている。
そして、この歪矯正装置1での歪矯正方法における押し込み工程では、プレス装置13の動作開始から、プレス装置13の押し込み荷重Tが、該長軸部材5の弾性変形領域内における所定の荷重Taに達するまでは、押し込み荷重に基づいてプレス装置の制御を行い、押し込み荷重Tが所定の荷重Taに達した後は、押し込まれる長軸部材5の変位hに基づいてプレス装置13の制御を行うようにしている。
【0026】
このように、歪矯正動作の開始から荷重制御にてプレス装置13を制御し、その後、長軸部材5の弾性領域内でプレス装置13の制御を位置制御に切り換えることで、まず、荷重制御にてフィードバック制御を行い、パンチ13aの停止位置(即ち位置制御の開始時点での長軸部材5の変位である制御切換位置h2)を、ばらつきなく、安定して正確に把握することができる。
これにより、位置制御の開始時点からの長軸部材5の変位を正確に捕らえてフィードバック制御することが可能となり、狙い通りの目標停止位置haで高精度にパンチ13aを停止させることが可能となって、歪矯正の精度を向上することができ、効率的な歪矯正を行うことができる。
【0027】
また、本歪矯正方法では、前記目標押し込み量Aを次のようにして求めることで、曲げ易さが異なる長軸部材5に対しても、その曲げ易さに応じた目標押し込み量Aを正確に算出して、各々の長軸部材5に対して適正な歪矯正を行うことができる。
つまり、前述のように、目標押し込み量Aを前記矯正曲線51から直接求めるのではなく、矯正曲線51から直接算出された押し込み量を初期目標押し込み量Aiとし、この初期目標押し込み量Aiに所定の補正量を加えたものを目標押し込み量Aとして求める。
【0028】
初期目標押し込み量Aiを補正して目標押し込み量Aを求める具体的な方法については、図5と図6のフローとを用いて以下に説明する。
まず、長軸部材5の歪量を求める計測工程を経た後の押し込み工程では、矯正箇所の変位の最大ポイントを割り出した(S210)後に、矯正動作がスタートされ(S211)、プレス装置13のパンチ13aが下降を開始する(S212)。
この下降制御は荷重制御にて行われ、荷重計16にて検出される荷重Tが目標荷重値Taに達すると(S213)、プレス装置13が停止する(S214)。
【0029】
この時点で、荷重制御時変位量Awが求められ、この変位量Awから次式(1)により初期変形補正量Cを算出する(S215)。
C=Aw×β ・・・(1)
ここで、βは、初期変形補正量Cを調整するための係数である。
【0030】
次に、算出された初期変形補正量Cを、予め矯正曲線51から決定されている初期目標押し込み量Aiに加えて、次式(2)により目標押し込み量Aを求める(S216)。
A=Ai+C ・・・(2)
【0031】
目標押し込み量Aが求められると目標停止位置haが決定され、パンチ13aが下降を開始して(S217)、長軸部材5の変位hが目標停止位置haに達するまで下降し、その後停止する(S218、S219)。
このように、初期目標押し込み量Aiから決定される初期目標停止位置hiは、目標停止位置haに補正される。
【0032】
長軸部材の軸径や焼き入れ等の表面処理状態のばらつきにより曲げ易さが異なる長軸部材5に対して、荷重制御にて同じ目標荷重Taに達するまで長軸部材5を押し込んだ場合、それぞれの長軸部材5についての荷重制御時変位量Awは異なった値となる可能性があるため、初期目標押し込み量Aiをそのまま目標押し込み量Aとすると、目標停止位置haが、必ずしも適正な歪矯正を実現できる位置とならない。
しかし、前述のように、長軸部材5の曲げ易さを考慮しない初期目標押し込み量Aiに、曲げ易さにより変化する荷重制御時変位量Awから求められる初期変形補正量Cを加えて、目標押し込み量Aを決定することで、適正な歪矯正を行うことが可能となる。
【0033】
即ち、歪矯正装置1にて行われる前記押し込み工程では、押し込み荷重Tに基づく荷重制御の期間内における長軸部材5の荷重制御時変位量Awを用いて初期変形補正量Cを算出し、初期目標押し込み量Aiに、前記初期変形補正量Cを加えて目標押し込み量Aを算出し、該目標押し込み量Aから決定される目標停止位置haまでプレス装置13による長軸部材5の押し込みを行う。
これにより、長軸部材の軸径や、焼き入れ等の表面処理状態のばらつきによって、長軸部材5の曲げ易さが変化した場合でも、その変化に応じて押し込み量を補正することが可能となり、過矯正や矯正不足がない高精度で効率の良い歪矯正を行うことができる。
【0034】
次に、以上の如く、プレス装置13の下降制御を、荷重制御及びその後の位置制御にて行った場合の、目標停止位置haでの停止位置ばらつきと、従来の制御を行った場合の停止位置ばらつきとの比較データを図7に示す。
図7に示すように、プレス装置の下降速度が低速の場合、中速の場合、及び高速の場合の何れの場合も、従来の制御でのばらつきに比べて、本発明の歪矯正方法におけるばらつきの方がかなり小さくなっており、本発明の歪矯正方法が停止位置ばらつきの改善に顕著な効果を奏することがわかる。
特に、プレス装置の下降速度が高速の場合には、本発明の歪矯正方法におけるばらつきの大きさは、従来の制御でのばらつきの大きさに対して10分の1以下となっている。
【0035】
なお、本実施形態では、長軸部材5の歪量を一箇所のみで計測した歪矯正装置1における歪矯正方法について説明したが、長軸部材5の歪量を複数箇所で計測する仕様の歪矯正装置においても同様に適用することができる。
歪量を複数箇所で計測する場合には、前記初期目標押し込み量Aiを、押し込みを行う箇所の歪量から求められた基本押し込み量に、他の箇所の歪量及び歪の位相を考慮して求めた補正押し込み量を加えて算出するようにすることで、長軸部材5の歪量や歪形状が変化した場合にも対応可能な初期目標押し込み量Aiを求めることができる。
【0036】
また、本発明では、荷重制御と位置制御と用いてプレス装置13を作動させているが、位置制御を行わずに荷重制御のみで歪矯正を行うことが可能である長軸部材5に対しては、前記目標停止位置haを、目標荷重に置き換えて荷重制御のみによる制御を行えばよい。
さらに、本実施形態では、荷重検出に荷重計16を用いているが、プレス装置の駆動装置に液圧アクチュエータを用いる場合は、荷重計16の検出値を液圧にて代用することができ、電動式のプレス装置を用いた場合には負荷電圧で代用することも可能である。
【0037】
そして、このような荷重制御と位置制御と用いた制御を実施するには、プレス装置の駆動装置に、サーボアンプ及びコントローラを有した液圧アクチュエータ、又は電動の加圧装置を用いるのが望ましい。
しかし、バルブ制御タイプの液圧アクチュエータでも、外部信号にてバルブ開度の制御を行うことができるもの(サーボバルブ等)であれば、本発明の荷重制御と位置制御とを用いた歪矯正方法を採ることで、パンチ13aの停止位置精度を向上することができる。
【0038】
また、長軸部材5は、目標押し込み量Aを超えて押し込まれると割れが発生することがあるため、歪矯正装置1においては、割れ発生の検知をAE(Acoustic Emisson)センサ等を用いて行っているが、従来の位置制御のみの一段階で歪矯正を行っていた場合には、長軸部材5にパンチ13aが当たったときに発生するノイズの影響を除去することが困難であった。
しかし、本発明のように、一旦、荷重制御にて長軸部材5の弾性領域内にある目標荷重Taとなる位置まで押し込みを行った後に、位置制御へ切り換えて塑性領域まで押し込むような歪矯正方法を採った場合、長軸部材5の割れは塑性領域にて発生するため、割れ発生の検知は位置制御へ切り換えた後のみで行えばよい。パンチ13aが長軸部材5に当たったときのノイズは荷重制御の際に生じるため、その後の位置制御時のみで割れ発生の検知を行えば、ノイズの影響を必然的に回避することが可能となる。
【0039】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、
狙い通りの目標停止位置で高精度にプレス装置を停止させることが可能となって、歪矯正の精度を向上することができ、効率的な歪矯正を行うことができる。
また、長軸部材の軸径や、焼き入れ等の表面処理状態のばらつきによって、長軸部材の曲げ易さが変化した場合でも、その変化に応じて押し込み量を補正することが可能となり、過矯正や矯正不足がない高精度で効率の良い歪矯正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の歪矯正方法に用いられる歪矯正装置を示す図である。
【図2】 荷重制御と位置制御との2段階でプレス装置の制御を行う際のフローを示す図である。
【図3】 矯正曲線を示す図である。
【図4】 押し込み動作開始時からの長軸部材の変位及びパンチにかかる荷重の変化を示す図である。
【図5】 押し込み動作開始時からの長軸部材の変位及びパンチにかかる荷重の変化を示す図であって、初期目標押し込み量を補正して目標押し込み量を求める方法を説明するための図である。
【図6】 目標押し込み量を初期目標押し込み量に初期変形補正量を加えて求める際のフローを示す図である。
【図7】 プレス装置の下降制御を荷重制御及びその後の位置制御にて行った場合の、目標停止位置での停止位置ばらつきと、従来の制御を行った場合の停止位置ばらつきとの比較データを示す図である。
【図8】 従来の歪矯正方法に用いられていた歪矯正装置を示す図である。
【図9】 従来の歪矯正方法における、押し込み動作開始時からの長軸部材の変位及びパンチにかかる荷重の変化を示す図である。
【符号の説明】
1 歪矯正装置
5 長軸部材
11 変位計
13 プレス装置
13a パンチ
16 荷重計
A 目標押し込み量
Ai 初期目標押し込み量
Aw 荷重制御時変位量
h 変位
ha 目標停止位置
T 荷重
Ta 目標荷重
Claims (4)
- 長軸部材の変位を計測して歪量を求める計測工程と、求めた歪量に基づいてプレス装置のパンチを下降して、長軸部材を加圧して押し込む押し込み工程とを備える歪矯正方法であって、
押し込み工程では、
プレス装置の動作開始から、プレス装置のパンチによる押し込み荷重が、該長軸部材の弾性変形領域内における所定の荷重に達するまでは、押し込み荷重に基づいてプレス装置の制御を行い、
押し込み荷重が所定の荷重に達した後は、押し込まれる長軸部材の変位に基づいてプレス装置の制御を行い、
前記押し込み荷重に基づいてプレス装置の制御を行う際には、
前記押し込み荷重を検出し、検出した押し込み荷重の大きさに応じてパンチの下降速度が制御され、パンチの下降速度は、検出される荷重が大きくなるに従って減少し、
前記長軸部材の変位に基づいてプレス装置の制御を行う際には、
前記長軸部材の変位を検出し、検出した変位の大きさに応じてパンチの下降速度が制御され、パンチの下降速度は、検出される変位が大きくなるに従って減少する、
ことを特徴とする歪矯正方法。 - 前記押し込み工程では、
押し込み荷重に基づく制御の期間内における長軸部材の変位量を用いて初期変形補正量を算出し、
前記計測工程にて求められた長軸部材の歪量に基づいて算出される初期目標押し込み量に、前記初期変形補正量を加算して目標押し込み量を算出し、
該目標押し込み量から決定される目標停止位置までプレス装置による長軸部材の押し込みを行うことを特徴とする請求項1に記載の歪矯正方法。 - 長軸部材の変位を計測する計測手段と、
下降により長軸部材に対する押し込み動作を行う押し込み手段と、
押し込み手段による長軸部材に対する押し込み荷重を検出する荷重検出手段と、
計測手段により計測された変位、及び荷重検出手段により検出された押し込み荷重に基づいて、押し込み手段の駆動制御を行う駆動部とを備え、
前記駆動部は、プレス装置の動作開始から、プレス装置の押し込み荷重が、該長軸部材の弾性変形領域内における所定の荷重に達するまでは、押し込み荷重に基づいてプレス装置の制御を行い、押し込み荷重が所定の荷重に達した後は、長軸部材の変位量に基づいてプレス装置の制御を行い、
前記駆動部により、前記押し込み荷重に基づいてプレス装置の制御を行う際には、
前記押し込み荷重を検出し、検出した押し込み荷重の大きさに応じて押し込み手段の下降速度が制御され、押し込み手段の下降速度は、検出される荷重が大きくなるに従って減少し、
前記駆動部により、前記長軸部材の変位に基づいてプレス装置の制御を行う際には、
前記長軸部材の変位を検出し、検出した変位の大きさに応じてパンチの下降速度が制御され、パンチの下降速度は、検出される変位が大きくなるに従って減少する、
ことを特徴とする歪矯正装置。 - 前記駆動部は、
プレス装置による長軸部材の押し込み量を、
前記計測工程にて求めた長軸部材の歪量に基づいて算出される初期目標押し込み量に、押し込み荷重に基づく制御の期間内における長軸部材の変位量を用いて算出した初期変形補正量を加算して、算出することを特徴とする請求項3に記載の歪矯正装置。
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