しかし、この種の構造のエイミング機構を備えたヘッドランプでは、スクリュー挿通孔1aによって片持ち支持されたエイミングスクリュー4の先端部にリフレクター2の重量Wが作用し、エイミングスクリュー4がスクリュー挿通孔1aに対し揺動してリフレクター2が振動するおそれがある。そこで、金属製のプッシュオンフィクス8によって、エイミングスクリュー4をスクリュー挿通孔1aの周縁部に強く圧接保持するようにして、エイミングスクリュー4の揺動(リフレクター2の振動)を防止している。
しかし、プッシュオンフィクス8によるエイミングスクリュー4の挟持力を高めると、エイミングスクリュー4の回動性が損なわれてエイミング操作しにくいという問題があった。
そこで、出願人は、特願2000−165437号(平成12年6月2日出願)を提案した。これは、図31に示すように、ナット部材を、エイミングスクリュー4と螺合する雌ねじ部の形成されたナット部材本体5の側方に、リフレクター2側のブラケット2aとの装着部である係合突起6と、ランプボディ1に設けた摺動ガイド8とのスライド係合部であるスライダー部7とを正面視直交するように一体に形成した構造とし、スライダー部7を摺動ガイド8で支持しかつ担持することで、エイミングスクリュー4に作用するリフレクター2側の重量負荷を軽減し、リフレクター2の揺動(振動)を抑制するというものである。符号9は前面レンズ、符号aはエイミング支点、符号Lxは水平傾動軸、符号Lyは垂直傾動軸を示す。
しかし、前記した先行技術(特願2000−165437号)では、リフレクター2側の重量負荷が摺動ガイド8で担持されるため、エイミングスクリュー4にリフレクター2側の重量負荷が曲げモーメントとして作用しないものの、エイミングスクリュー4に螺合しているナット部材本体5の側方にオフセットして設けられた係合突起6に作用するリフレクター側の慣性重量によって、ねじりモーメントがナット部材に生じ、リフレクターの振動を確実に抑制することが困難である。また、図31白抜き矢印に示すように、このねじりモーメントが繰り返しナット部材に作用すると、ナット部材がエイミングスクリューに対し勝手に回動して、適正なエイミングができないおそれもある、という問題も提起された。
また、ナット部材は、正面視T字型またはL字型のため、それだけ嵩張り、ランプボディが大型化するという問題も生じた。
そこで前記した種々の問題を解決するべく、出願人は、特願2000−400085号(平成12年12月28日出願)を提案した。これは、図32に示すように、エイミングスクリューに螺合するナット部材本体自体が玉部5aを構成するとともに、リフレクター側のブラケット2aに玉受け部を構成する係合穴2bを形成した構造となっている。
しかし、この特願2000−400085号では、前記した種々の問題は解決されるものの、リフレクター側のブラケットに玉受け部(係合穴)2bを設けるため、ブラケットの構造およびリフレクター成形用の金型の構造が複雑となって、それだけ製造コストがかさむという新たな問題が提起された。
本発明は前記従来技術および先行技術の問題点に鑑みなされたもので、その目的は、リフレクターの振動を確実に防止できるとともに、エイミングスクリューのスムーズな回動を確保でき、しかもリフレクターの形状およびリフレクター成形用の金型の構造を複雑にすることのないコンパクトなリフレクター可動型自動車用ヘッドランプを提供することにある。
前記目的を達成するために、請求項1に係るリフレクター可動型自動車用ヘッドランプにおいては、容器状のランプボディと、灯室を画成するべく前記ランプボディの前面開口部に組み付けられた前面レンズと、前記灯室に収容された、光源を装着したリフレクターと、前記ランプボディとリフレクター間に介装されて、前記リフレクターをランプボディに対し傾動可能に支持するエイミング機構とを備え、
前記エイミング機構を、前記リフレクターの傾動支点を構成するエイミング支点と、前記ランプボディに設けたスクリュー挿通孔に回転可能に支承されて前方に延出するエイミングスクリューと、前記リフレクター側のブラケットに装着されるとともに、前記エイミングスクリューに螺合し、エイミングスクリューの回動に連係して前後進退するエイミング点構成部材である合成樹脂製ナット部材とから構成し、
前記ランプボディには、前記エイミングスクリューと平行に延びて前記ナット部材を担持しかつ前後方向摺動可能に支持するナット摺動ガイドを一体に延出形成し、
エイミング点を構成する前記ナット部材と前記ブラケットとの装着部には、ナット部材の進退に伴って前記装着部に生ずる応力を解放する玉継手構造の応力解放手段を設けたリフレクター可動型自動車用ヘッドランプであって、
前記ナット部材は、雌ねじ部を形成したナット部材本体自体が前記玉継手の玉部を構成するとともに、前記ナット部材本体の側方にオフセットした位置に前記ナット摺動ガイドによって支持されるスライダーを一体に形成した構造で、
前記ブラケットには、合成樹脂製ベアリングを取着し、前記ベアリングには、前記玉部を支承する玉受け部および前記エイミングスクリューとの干渉をさけるための前後貫通孔を設けるように構成した。
(作用)ランプボディに一体形成されたナット摺動ガイドが、エイミングスクリューに螺合するナット部材(に作用するリフレクターの重量)を担持するので、エイミングスクリューにはリフレクターの重量による曲げモーメントが作用しない。このため、エイミングスクリューのスクリュー挿通孔に対する揺動、即ちリフレクターの振動が抑制されるので、プッシュオンフィックス等によるエイミングスクリューの回転支承部における挟持力を従来よりも弱めて、エイミングスクリューのスムーズな回動を確保できる。
また、ナット部材に対するリフレクター側の重量の作用点がナット部材とエイミングスクリューとの螺合部に一致するので、リフレクター側の重量に起因したねじりモーメントがナット部材に作用しない。このため、リフレクターが振動したり、ナット部材がエイミングスクリューに対し勝手に回動するおそれがない。
また、リフレクターがランプボディに対し傾動する際や、光源の発熱に起因してリフレクターが熱膨張する際等に、ナット部材とブラケットとの装着部(エイミングスクリューとリフレクター間)に発生しようとする応力は、ナット部材とブラケットとの装着部に設けられた玉継手構造の応力解放手段(ナット部材の玉部とブラケットに取着されたベアリングの玉受け部で構成する玉継手)によって解放される。
なお、リフレクターの傾動(傾動中心軸周りの円運動)とナット部材の進退(エイミングスクリューに沿った直線運動)の移動軌跡が異なることによりブラケットとベアリング間の取着部に生じる応力は、ブラケットのベアリング挿着孔とベアリング間に、負荷作用方向にベアリングがスライドできる隙間を設けておくことで解決できる。
また、エイミングスクリューの回動に伴って前後方向に進退するナット部材は、ナット摺動ガイドによって、エイミングスクリューに沿った方向にガイドされるので、ナット部材とエイミングスクリューとの螺合部の摩擦トルクが一定に保持される。
また、ナット摺動ガイドをエイミングスクリュー配設位置の側方にオフセットした位置(であるランプボディとリフレクター間の広いスペース位置)に配設することで、傾動するリフレクターとナット摺動ガイドとの干渉を回避できる。
また、ナット部材は、ナット部材本体の側方にスライダー部を一体に形成したコンパクトな構造で、それだけランプボディとリフレクター間の狭いスペースにナット部材を配置できる。
また、リフレクター側のブラケットに玉受け部(係合穴)を直接形成するのではなく、リフレクター側のブラケットに取着するコンパクトなベアリングに玉受け部を形成すればよいので、玉受け部を有するベアリングを樹脂の成形体で構成することは容易である。また、またブラケットは、ベアリングを取着できるシンプルな形状に形成すればよいので、ブラケットを一体に形成したリフレクターの構造も複雑化せず、樹脂製リフレクターおよびアルミ製リフレクターいずれの場合も成形用または鋳造用の金型構造は簡潔となる。
また、請求項1においては、L字型延出部を介して玉部である前記ナット部材本体の後方に前記スライダーを設け、前記ベアリングを、前記玉部を抜け止めするとともに前記ナット部材のL字型延出部に遊合するように後方に開口し、玉受け部を後端側に設けた中空容器体であって、前記前後貫通孔に沿って縦割りし、分割面を互いに付き合わせることでベアリングとして一体化できる、薄肉ヒンジを介して互いに接続された一対の分割成形体で構成し、前記玉部を挟み込むようにして前記薄肉ヒンジ周りに分割成形体を回動してベアリングとして一体化することで前記玉継手を構成するようにした。
(作用)玉部を分割成形体で挟み込んで一体化することで、玉部は、玉受け部に抜け止めされるとともに、玉受け部に支承された形態に保持される。
ナット部材とスライダーを接続する延出部をナット部材本体の後方に設けたので、ナット部材本体全体を玉部にでき、それだけ玉継手(の玉部と玉受け部)に大きな摺接面を確保できる。また、スライダーがL字型延出部を介してナット部材本体の後方に設けられているため、スライダーをナット部材本体の真横に設けた構造のナット部材に比べて、その前後方向の長さは多少大きくなるものの、抜け止め用のフックを側方に設けない分、ナット部材本体からスライダーまでの長さ(ナット部材の巾方向の長さ)を小さくできる。
また、請求項4のように、前記一対の分割成形体の対応する付き合わせ面側に、分割成形体をベアリングとして固定一体化する、フックとフック係合部で構成された凹凸ランス係合部を設けるように構成してもよい。
(作用)一対の分割成形体が薄肉ヒンジで接続され(請求項1)てベアリングとして一体化されており、取り扱いに便利である。また、ヒンジ周りに回動して分割成形体を付き合わせれば、凹凸ランス係合部が自動的に係合してベアリングとして一体化される。そして一旦、分割成形体の凹凸ランス係合部を係合させてベアリングとして一体化すると、分割成形体同士を簡単には分離できず、玉部が玉受け部から逸脱するおそれはない。
また、請求項2のように、前記ベアリングの前端側に、前記ブラケットに設けた矩形状のベアリング挿着孔に整合する矩形状のプラグを形成してもよい。
また、前記薄肉ヒンジとしては、請求項3のように、前記ベアリング前端側に形成したプラグの対向する側壁前端部に分割成形体の分割面を跨ぐ形態に一対設けるようにしてもよい。
また、前記凹凸ランス係合部としては、請求項5のように、前記玉受け部を取り囲む前方側2箇所と後方側2箇所の合計4ヶ所に設けるとともに、フックまたはフック係合部が一対の分割成形体の一方にのみ偏在しないように配置してもよい。
また、請求項6のように、前記一対の分割成形体の付き合わせ面後端側に、前記凹凸ランス係合部と干渉しない、位置決め用の突出ピンとピン係合孔を設けるようにしてもよい。
請求項7においては、請求項1〜6のいずれかに記載のリフレクター可動型自動車用ヘッドランプにおいて、前記エイミングスクリューを、下方に設けられた前記エイミング支点に対し上方に離間しかつ左右方向に互いに離間する左右一対のエイミングスクリューで構成するようにした。
(作用)アークチュエータの駆動によってエイミング支点が前後方向に移動し、これによってリフレクターがレベリング軸(左右のエイミング点を通る軸)周りに傾動し、ヘッドランプ(リフレクター)の光軸が上下方向に変化する。そして、車軸の前後方向への傾きが、例えば自動車の重心位置の前後方向への移動を検出する重心移動検出センサにより検出され、この検出値に基づいてアークチュエータが駆動する。即ち、ヘッドランプ(リフレクター)の光軸が車軸に対し常に一定となるようにリフレクターが自動的に傾動調整(オートレベリング)される。
また、左右一対のエイミングスクリューを回動すると、それぞれのナット部材がエイミングスクリューに沿って進退し、リフレクターがエイミング点を通る仮想水平傾動軸周りに傾動する。また、エイミング支点を左右一対のエイミング点(エイミングスクリュー)の一方の真下に配置した場合には、エイミング支点から左右方向に離間するエイミングスクリューを回動すると、ナット部材がエイミングスクリューに沿って進退し、エイミング支点とその上方に位置する他のエイミングスクリューに螺合するナット部材・ブラケット間装着部とを通る垂直傾動軸周りにリフレクターが傾動する。
前記したオートレベリングやエイミング時にリフレクターがランプボディに対し傾動する際や、光源の発熱に起因してリフレクターが熱膨張する際等に、ナット部材とブラケットとの装着部(エイミングスクリューとリフレクター間)に発生しようとする応力は、ナット部材とブラケットとの装着部に設けられた玉継手構造の応力解放手段(ナット部材の玉部とブラケットに取着されたベアリングの玉受け部で構成する玉継手)によって解放される。
また、請求項1では、オートレベリング機能を備えているため、ナット部材の玉部とベアリングの玉受け部間での回動は頻繁で、特に車両の停車・走行中を問わずに常にオートレベリングする、いわゆるダイナミックオートレベリングでは、玉部と玉受け部間の回動はさらに頻繁で、それだけ摺接面は摩滅し易い。特に、ナット部材としては摺動性に優れたエンジニアリングプラスチック製が一般的で、リフレクターとしては剛性に優れたBMC等の樹脂で構成することも一般的であるが、このような場合は、第2の先行技術(特願2000−400085号)においては、ナット部材(エンジニアリングプラスチック)の玉部とブラケット(BMC等の繊維混入樹脂)に形成した係合穴との摺接面において、玉部側の外表面が係合穴側の内表面に露呈する混入繊維によって削られて、玉部と玉受け部(係合穴)間の滑らかな動きが妨げられるおそれがある。しかし、請求項1では、ブラケットに取着されてナット部材の玉部を支承するベアリングをエンジニアリングプラスチック製とすることで、頻繁に回動する玉部と玉受け部における摩滅が少なく、長期にわたり滑らかな回動が保証される。
また、請求項1〜7のいずれかに記載のリフレクター可動型自動車用ヘッドランプにおいて、前記エイミングスクリューを合成樹脂によって構成し、前記スクリュー挿通孔を、ランプボディに一体に形成されランプボディを貫通して前方に延出する筒状部によって構成するとともに、前記エイミングスクリューのスクリュー挿通孔によって支承される被支承部の前端側には、半径方向内側に弾性変形してスクリュー挿通孔を通過できるとともに、前記スクリュー挿通孔の前端側の周縁部に係合してエイミングスクリューを後方に抜け止めする弾性掛止部を一体に形成し、一方、前記被支承部の後端側には、前記スクリュー挿通孔の後端側の周縁部に圧接して、エイミングスクリューを前後方向に位置決め固定するスカート状の弾性リブを一体に形成した構成としてもよい。
そして、このように構成することで、ランプボディの後方からエイミングスクリューをスクリュー挿通孔に押し込むと、エイミングスクリューにおける被支承部の弾性掛止部が、スクリュー挿通孔の後端側の周縁部に押されて半径方向内方に縮径するように弾性変形して筒状部を通過し、弾性掛止部が前端側の周縁部に係合し、かつスカート状弾性リブがスクリュー挿通孔の後端側の周縁部に圧接することで、スクリュー挿通孔に対しエイミングスクリューが軸方向に位置決め固定される。
また、エイミングスクリューの被支承部後端側に形成されたスカート状の弾性リブは、スクリュー挿通孔の周縁部に圧接かつ摺接し、エイミングスクリュー被支承部内への水の侵入を多少なりとも阻止するとともに、エイミングスクリューを前後方向に弾性支持する。
また弾性リブおよびランプボディはいずれも合成樹脂製で、弾性リブとスクリュー挿通孔周縁部間の摺接部では両者の滑動が確保されて、エイミングスクリューの回動を妨げるものでもない。また、合成樹脂製弾性リブは、ゴム製のOリングに比べ、水によって劣化しにくい。
この結果、エイミングスクリューに一体に形成されてスクリュー挿通孔の周縁部に圧接かつ摺接するスカート状の弾性リブによって、エイミングスクリューは回転支承部において前後方向にガタなく弾性支持されるとともに、エイミングスクリューの回転支承部における防水がある程度確保されるので、エイミングスクリューの回転支承部にプッシュオンフィックス等の弾性部材やOリングなどのシール部材を介装する必要がなくなり、それだけエイミング機構を構成する部品点数が減って、エイミング機構の構成が簡潔となるとともに、エイミング機構の組み付け作業も簡単となる。
また、合成樹脂製弾性リブは、長期使用しても水による劣化はなく、エイミングスクリューの回転支承部における長期にわたる弾性支持とある程度の防水が保証される。
また、エイミングスクリューの被支承部に、スクリュー挿通孔の内周面に摺接する円環状の弾性防水リブを一体に形成するように構成してもよい。
そして、このように構成することで、エイミングスクリューの被支承部に形成されてスクリュー挿通孔の内周面に摺接する円環状の弾性防水リブは、スクリュー挿通孔内周面に圧接状態に保持されて、エイミングスクリューの回転支承部における防水を確保する。
また、この合成樹脂製防水リブは弾性(可撓性)をもつことから、エイミングスクリューの被支承部を筒状部(スクリュー挿通孔)に挿入する際には、弾性防水リブが弾性変形して、エイミングスクリューのスクリュー挿通孔への組付けを妨げず、また弾性防水リブとスクリュー挿通孔内周面間の摺接部が、エイミングスクリューの回動を妨げるものでもない。
また、合成樹脂製の弾性防水リブは、ゴム製のOリングに比べ水によって劣化しにくい。
この結果、エイミングスクリューの回転支承部は、ランプボディ外側のスクリュー挿通孔周縁部における弾性リブによる防水手段と、スクリュー挿通孔内部における弾性防水リブによる防水手段の2カ所によって防水がとられているので、それだけエイミングスクリューの回転支承部における防水を確実なものとすることができる。
以上の説明から明らかなように、請求項1に係るリフレクター可動型自動車用ヘッドランプによれば、リフレクター側の重量負荷が曲げモーメントとしてエイミングスクリューに作用することも、リフレクター側の重量負荷がねじりモーメントとしてナット部材に作用することもないので、リフレクターの振動が確実に抑制されて、適正なエイミングが保証される。また、エイミングスクリューの回転支承部における挟持力を適切にすることで、エイミングスクリューのスムーズで軽快な回動操作が可能となる。
また、ナット部材がコンパクトであるため、それだけンプボディをリフレクターに接近させることで、ヘッドランプ全体を小型化できる。
また、リフレクターの構造が簡潔なため、リフレクターの製造が容易で、それだけリフレクターのコストが安価となり、ひいてはヘッドランプ全体のコストも安価となる。
また、ナット部材の巾方向長さが短く、それだけナット部材の配置スペースがいらないので、エイミング機構のレイアウトの自由度が高くなる。
また、ナット部材の玉部を簡単にベアリングの玉受け部に係合保持できるので、エイミング機構を介してのリフレクターの組み付けが容易となる。
また、ベアリングを構成する一対の分割成形体が薄肉ヒンジで接続一体化されており、管理や保管に不都合はない。
請求項7によれば、左右一対のエイミング点に対応するナット摺動ガイドがリフレクターの重量を担持するとともに、リフレクターの上下方向および左右方向の振動を抑制するので、リフレクターのレベリング軸周りのスムーズな傾動による適正なオートレベリングが確保される。
次に、本発明の実施の形態を、実施例に基づいて説明する。
図1〜図16は本発明の第1の実施例を示し、図1は本発明の第1の実施例であるリフレクター可動型の自動車用ヘッドランプの正面図、図2は同ヘッドランプの水平断面図(図1に示す線II−IIに沿う断面図)、図3は同ヘッドランプの縦断面図(図1に示す線III−IIIに沿う断面図)、図4はランプボディ,リフレクタおよびエイミング機構の分解斜視図、図5はエイミングスクリューの回転支承部を構成する筒状部を示し、(a)は同筒状部の拡大斜視図、(b)は同筒状部の拡大縦断面図である。図6はエイミングスクリューを示し、(a)はエイミングスクリューの拡大斜視図、(b)はエイミングスクリューの拡大側面図、(c)はエイミングスクリューの横断面図(図6(b)に示す線VI-VIに沿う断面図)である。図7はエイミングスクリューの回転支承部の拡大縦断面図、図8はエイミングスクリューがスクリュー挿通孔に挿入される様子を説明する説明図、図9はエイミング支点である玉継手の分解斜視図、図10はナット部材とベアリングの分解斜視図、図11はベアリングとブラケット間の装着部の分解斜視図、図12はナット部材を示し、(a)はナット部材の正面図、(b)はナット部材の縦断面図(図12(a)に示す線XIIb−XIIbに沿う断面図)、(c)はナット部材の水平断面図(図12(a)に示す線XIIc−XIIcに沿う断面図)、図13はベアリングを示し、(a)はベアリングの縦断面図、(b)はベアリングの水平断面図(図13(a)に示す線XIII−XIIIに沿う断面図)、図14はエイミング点を構成するナット部材とベアリング間の係合部の断面図、図15は同ナット部材とベアリング間の係合部の断面図(図14に示す線XV−XVに沿う断面図)、図16は同ナット部材とベアリング間の係合部の断面図(図14に示す線XVI−XVIに沿う断面図)で、ナット部材とブラケット間の装着部における応力解放作用を説明する説明図である。
これらの図において、符号10は、ポリプロピレン樹脂製の容器状ランプボディで、ランプボディ10の前面開口部には前面レンズ12が組み付けられて灯室Sが画成されている。灯室S内には、放物面形状の合成樹脂製リフレクター14に光源であるハロゲンバルブ18を挿着一体化した光源ユニットUが、エイミング機構Eによって傾動可能に設けられている。符号13は、リフレクター14と前面レンズ12間に配置されて、リフレクター14とランプボディ10間の隙間を隠すとともに、灯室S内全体を鏡面色に見せるエクステンションリフレクターである。
エイミング機構Eは、ランプボディ10とリフレクター14間に介装されたエイミング支点Pを構成する玉継手20と、ランプボディ10に設けられたスクリュー挿通孔10a,10bにそれぞれ回転可能に支承されて前方に延出する一対のエイミングスクリュー30,40と、リフレクター14の背面側に突出するブラケット150a,150bにそれぞれ取着されたベアリング160A,160Bと、エイミングスクリュー30,40のねじ部32,42にそれぞれ螺合するとともに、前記ベアリング160A,160Bに支承されてエイミング点P1,P2を構成する一対の合成樹脂製ナット部材130A,130Bと、を備えて構成されている。
なお、図1に示すように、エイミング点P1,P2を構成する左右一対のエイミングスクリュー30,40(一対のナット部材130A,130B)は、バルブ18より上方でバルブ18を挟んで左右に対向する位置に配置され、エイミング支点Pは、ランプを正面視した左隅で、エイミング点P2の真下に配置されている。
図3における符号22は、リフレクター14の背面に突設されたブラケット150cに取着された合成樹脂(エンジニアリングプラスチック)製のベアリングで、ランプボディ10に取着されたオートレベリング用アクチュエータ60の進退ロッド62の前端玉部64がこのベアリング22に支承されている。即ち、進退ロッの前端玉部64とベアリング22によって玉継手20が構成されている。
符号230A(230B)は、ランプボディ10に一体形成された蟻溝構造のナット摺動ガイドで、エイミングスクリュー30(40)に螺合するナット部材130A(130B)は、この摺動ガイド230A(230B)に担持かつガイドされて、前後方向に進退動作できる。
そして、エイミングスクリュー30を回動すると、ナット部材130A(とベアリング160A間の係合部である上下・左右エイミング点P1)がエイミングスクリュー30のねじ部32に沿って進退し、エイミング支点P(玉継手20)とナット部材130B(とベアリング160B間の係合部である上下エイミング点P2)を結ぶ垂直傾動軸Ly周りにリフレクター14が傾動する。さらに、エイミングスクリュー40もエイミングスクリュー30と同方向に回動すると、ナット部材130B(とベアリング160B間の係合部である上下エイミング点P2)もエイミングスクリュー40のねじ部42に沿って進退し、エイミング支点P(玉継手20)を通る仮想水平傾動軸(上下エイミング点P2と上下・左右エイミング点P1を結ぶ軸に平行な軸)Lx周りにリフレクター14が傾動する。
即ち、エイミングスクリュー30は、ランプの光軸を傾動軸Lx,Ly周りに傾動調整する上下・左右エイミングスクリューを構成し、エイミングスクリュー40は、ランプの光軸を傾動軸Lx周りに傾動調整する上下エイミングスクリューを構成している。
また、リフレクター14は、オートレベリング用アクチュエータ60の駆動により、上下エイミング点P2と上下・左右エイミング点P1を結ぶレベリング軸Lx1周りに傾動して、ランプ(リフレクター)の光軸Lが車両の走行状態に合わせて自動的に上下方向に傾動調整される。
即ち、アークチュエータ60は、例えば自動車の重心位置の前後方向への移動を検出する重心移動検出センサ(図示せず)からの信号に基づいて、進退ロッド62を進退させてエイミング支点である玉継ぎ手20(玉部64と玉受け部24間係合部)の位置を前後に移動させ、レベリング軸Lx1 周りにリフレクター14を傾動させて、常にランプの光軸Lを車軸に対し一定に保つようになっている。
また、オートレベリング用アクチュエータ60は、ステッピングモータおよびギヤ機構を内蔵したアクチュエータユニットケース61から前方に進退ロッド62が突出したユニット構造で、ランプボディ10の背面壁に形成されたアクチュエータ取付孔10cにアクチュエータユニットケース61が取着されている。そして、ランプボディ10内前方に延出する進退ロッド62の前端部には玉部64が形成され、一方、リフレクター14の背面側に突設されたブラケット150cには、玉部64を支承する玉受部24の形成された合成樹脂製のベアリング22が取着されている。ベアリング22の前端側には、図9に示すように、ブラケット150cに形成した矩形状のベアリング挿着孔150c1に整合するプラグ26が形成されている。プラグ26の対向側壁には、挿着孔150c1の周縁部に係合して挿着されたプラグ26を抜け止めする弾性フック27,27が設けられている。一方、ベアリング22の後端側に設けられた玉受部24には、玉部64を挟持する左右一対のフック25,25が形成され、玉部64と玉受け部24(フック27,27)は、相対回動に加えて、上下方向に相対摺動できる。したがって、アクチュエータ60の駆動による玉部64の前後方向の直線的進退動作(移動軌跡)と、これに連係するベアリング22(の玉受け部24)のレベリング軸Lx1周りの回転動作(移動軌跡)の違いよって、玉部64とベアリング22(の玉受け部24)間に発生しようとする応力は、相対回動および上下方向相対摺動可能な玉部64と玉受け部24の玉継手構造によって吸収(解放)される。
次に、エイミング機構Eを構成する各部材について、詳細に説明する。
スクリュー挿通孔10a,10bは、図5(a)(b)に示すように、ランプボディ10に一体に形成されて前後方向に延出する円筒形状の筒状部50によって構成されている。
筒状部50の前後長さは、エイミングスクリュー30(40)を回転可能に支承しかつがたつかないように保持できるに十分な長さに形成されている。また、後方延出部50Bの延出量は、図7に示すように、ランプボディ10に沿って配設したエイミングスクリュー回動操作用のドライバDの先端部を担持できる大きさに形成されている。また、後方延出部50Bの上側面には、ドライバDの先端部が当接したときに、ドライバDの歯が冠状歯車の歯に噛み合った状態となる位置決め用の平坦面51が形成されており、ドライバDを回動する際に、ドライバDの先端部が筒状部50外周面に沿って滑動しないようになっている。
筒状部50は、ランプボディ10と一体に成形されるが、その形状が簡潔であるため、成形用の金型の構造も金型の成形面もシンプルで、成形も簡単である。
一方、エイミングスクリュー30(40)は、図6,7に示すように、雄ねじ部32(42)の形成された前端側のスクリュー本体31(41)は勿論のこと、後端の冠状歯車部35(45)を含む全体が、例えばポリアセタール樹脂等の合成樹脂で構成されている。
符号34(44)は、エイミングスクリュー30(40)のうち、筒状部50によって支承される部位、即ち被支承部で、この被支承部34(44)の後端側には、筒状部50の後方延出部の端面50bに当接する冠状歯車部35(45)が一体に形成されており、被支承部34(44)の前端側には、筒状部50の前方延出部50Aの内フランジ状の前端部の端面(筒状部の前端面)50aに係合する弾性掛止片38(48)が設けられている。
弾性掛止片38(48)は、図6,7に示すように、被支承部34(44)前端側の左右の側面36a(46a)が対向するように面取りされた横断面矩形状の基部36(46)の両側に、L字型に形成され、その後方に延出する水平延出部が半径方向に弾性変形可能に構成されている。弾性掛止片38(48)の水平延出部は、先端側ほど厚く形成されて、板ばねとしての剛性強度が高められるとともに、筒状部50の端面50aとの係合が外れにくいようになっている。
そして、このエイミングスクリュー30(40)における被支承部後端側の冠状歯車35(45)の付根側には、筒状部50の後端面50bに摺接するスカート状の弾性リブ35b(45b)が設けられている。そして、この弾性リブ35b(45b)が筒状部50の後端面50bに当接し、かつ被支承部34(44)の前端側の弾性掛止片38(48)が筒状部50の前端面50aに係合することで、エイミングスクリュー30(40)はスクリュー挿通孔10a(10b)に対し軸方向に位置決め固定される。この弾性リブ35b(45b)は、筒状部50の後端面50bに圧接状態に保持されて、エイミングスクリュー30(40)を軸方向に弾性支持して、エイミングスクリュー30(40)が回転支承部においてがたつかないように保持する。また、この弾性リブ35b(45b)は、エイミングスクリュー30(40)の回転支承部における防水を多少確保する作用もある。
冠状歯車部35(45)の歯35a(45a)は、前方(ランプボディ10に臨む側)に設けられており、図7に示すように、ランプボディ10に沿って配設したエイミングスクリュー回動操作用のドライバDの先端部を筒状部50の平坦面51に当接させると、ドライバDの歯が冠状歯車部35(45)の歯35a(45a)にちょうど噛み合って、ドライバD側の回転力が冠状歯車部35(45)側に伝達されるようになっている。
また、エイミングスクリュー30(40)の後端部(冠状歯車部35(45)の後方)には、外形が断面正六角形で、端面に角溝37a(47a)の設けられた回動操作部37(47)が一体に形成されており、ドライバDに代えて、スパナなどの工具を使ってエイミングスクリュー30(40)を回動操作することもできる。
また、この合成樹脂製の弾性リブ35b(45b)は適度の弾性(可撓性)をもつとともに、合成樹脂製の筒状部50の後端面50bが平滑面であることから、弾性リブ35b(45b)と筒状後端面50b間の摺接部が、エイミングスクリュー30(40)の回動を妨げるものではない。
また、エイミングスクリューの被支承部34(44)には、筒状部50(スクリュー挿通孔10a,(10b))の内周面に摺接する円環状の弾性防水リブ34a(44a)が一体に形成されている。防水リブ34a(44a)の外径は、スクリュー挿通孔10a(10b)の内径よりわずかに大きく形成されて、防水リブ34a(44a)の先端部が常にスクリュー挿通孔10a(10b)の内周面に圧接されるようになっている。
被支承部34(44)の外周面における弾性防水リブ34a(44a)の両側には、防水リブ34a(44a)に沿って延びる環状溝34b(44b)が形成されて、エイミングスクリューの被支承部34(44)とスクリュー挿通孔10a(10b)間における隙を拡げることなく、弾性防水リブ34a(44a)の半径方向の突出量を大きくすることで、弾性防水リブ34a(44a)の弾性(可撓性)が高められ、これによって弾性防水リブ34a(44a)とスクリュー挿通孔10a(10b)内周面との間に適度の圧接力が作用するようになっている。
なお、エイミングスクリュー30(40)の被支承部34(44)より前方の部分は、図6(c)の白抜き矢印に示すように、半径方向に分割された一対の分割金型60A,60Bを用いて、またエイミングスクリュー30(40)の冠状歯車部35(45)は、図6(b)の白抜き矢印に示すように、軸方向に分割された一対の分割金型61A,61Bを用いて、それぞれ射出成形することができる。図6(b)、(c)における符号61C,60Cは、分割金型のパーティングラインを示す。
また、エイミングスクリュー30,40をランプボディ10の筒状部50(スクリュー挿通孔10a,10b)に組み付けるには、ランプボディ10の後方側からスクリュー挿通孔10a(10b)に押し込めばよい。即ち、図8に示すように、弾性掛止片38(48)が半径方向内側に弾性変形して筒状部50内を通過でき、通過した弾性掛止片38(48)は半径方向外側に復元して筒状部前端面50aに係合して、エイミングスクリュー30(40)が後方に抜け止めされる。同時に、被支承部34(44)後端側のスカート状弾性リブ35b(45b)が筒状部後端面50bに圧接状態となって、スクリュー挿通孔10a(10b)に対しエイミングスクリュー30(40)が軸方向に位置決め固定される。
次に、エイミングスクリュー30(40)に螺合するナット部材130A(130B)と、ブラケット150a(150b)に取着されてナット部材130A(130B)を支承するベアリング160A(160B)と、ナット部材130A(130B)を回り止めするとともに、ナット部材130A(130B)を担持し、かつ摺動可能に支持するナット摺動ガイド230A(230B)のそれぞれの構造について、説明する。
ナット摺動ガイド230A(230B)は、図1,3,4,14,15に示されるように、エイミングスクリュー30(40)の上方のランプボディ壁面近傍位置において前後に延びて、エイミングスクリュー30(40)に臨む側面が開口する幅広の蟻溝232(242)を備えた矩形枠状に形成されている。符号231は、蟻溝232の開口部を示す。また、ナット摺動ガイド230A(230B)は、ランプボディ10の壁面に一体に形成されて、ナット摺動ガイドとしての強度が確保されている。そして、ナット摺動ガイド230A(230B)は、図1,4に示すように、ランプボディ10を正面視した右上隅(左上隅)に設けられている。
一方、ナット部材130A(130B)は、剛性強度および摺動性に優れたエンジニアリングプラスチックの成形体で、図1〜4,10〜12,14〜16に示されるように、エイミングスクリュー30(40)に螺合する雌ねじ部132が中央に形成されたほぼ球状のナット部材本体131の側方に、延出軸部136を介してスライダー137が一体に形成されている。即ち、フラットなスライダー137の裏面ほぼ中央部に球状のナット部材本体131)が突出する形態に構成されている。
また、ベアリング160A(160B)は、ナット部材130A(130B)と同様、剛性強度および摺動性に優れたエンジニアリングプラスチックの成形体で、エイミングスクリュー30(40)を挿通できる、前後に延びる貫通孔161が設けられており、ベアリング160A(160B)の前端側には、ブラケット150a(150b)に形成されているベアリング挿着孔150a1(150b1)に整合する矩形状のプラグ168が形成されている。プラグ168の対向側面には、ベアリング挿着孔150a1(150b1)に係合して抜け止め保持される弾性フック169,169が設けられている。一方、ベアリング160A(160B)の後端側には、玉部であるナット部材本体131を支承する玉受け部162が形成されている。玉受け部162は、玉部であるナット部材本体131を側方から導入して係合できるように、側方に開口する縦断面U字型に形成されている。玉受け部162の内周面は、玉部であるナット部材本体131の球状外周面131aに整合する球状内周面162aが形成されている。
また、ナット部材本体131の雌ねじ部132を挟んだスライダー137形成側と反対側には、玉受け部162の底(U字断面横棒状部)に設けた孔163の周縁部に係合してナット部材130A(130B)をベアリング160A(160B)に対し抜け止めする弾性フック133が延出形成され、図10に示すように、ナット部材130A(130B)を弾性フック側133から玉受け部162内に圧入することで、ナット部材本体131である玉部をベアリング160A(160B)の玉受け部162に係合保持できる。
孔163は矩形状で、図14に示すように、弾性フック133が孔163の周縁部に係合して弾性フック延出前後軸(Y軸)方向には抜け止めされるが、図15に示すように、孔163に挿着されたフック133と孔163の周縁部間には、前後方向(図15左右方向,図16上下方向)に所定の隙間が設けられて、即ち、弾性フック133が弾性フック延出前後軸(Y軸)周りには孔163と遊合して、相対回動できる(図16矢印参照)。
また、ナット部材本体131外側面における弾性フック延出前後軸(Y軸)方向と直交し雌ねじ部132を挟んだ対向位置には、図12(a)に示すように、門型リブ134が雌ねじ部132を横切って跨ぐように突設されている。一方、玉受け部162の内側には、図13に示すように、門型リブ134が係合できる、ナット部材圧入方向に延びる溝164が形成されている。そして、弾性フック133が孔163の周縁部に係合すると、門型リブ134の水平梁部の外側表面134aが溝の底面164aに圧接した形態(図14,16参照)となって、玉受け部162と玉部であるナット部材本体131の雌ねじ部中心軸(Z軸)周りの相対回動が阻止される。このため、ナット部材130A(130B)がベアリング160A(160B)に対し左右にぐらつくことがなく、リフレクター14はスライダー137と摺動ガイド230A(230B)によって、左右方向に緩みなく支持される。
また、門型リブ134の水平梁部の外側表面134aおよびこの水平梁部の外側表面134aが摺接する玉受け部内側の溝の底面164aは横断面円弧形状に形成されて、玉部であるナット部材本体131と玉受け部164の弾性フック延出前後軸(Y軸)周りの相対回動が円滑となっている。
スライダー137は、矩形状のスライドプレート137aと、その底面側に形成された左右一対の板ばね状弾性延出片138とから構成されている。弾性延出片138は、スライドプレート137aの幅方向外側から内側に向かって断面円弧状に湾曲して延出するとともに、スライドプレート137aの幅方向中央部には、前後に延びる縦リブ137bが形成されており、スライダー137がナット摺動ガイド230A(230B)に組み付けられると、図12(a)仮想線に示されるように、弾性変形した左右一対の弾性延出片138の先端部が縦リブ137bに当接するようになっている。即ち、スライダー部137がナット摺動ガイド230A(230B)の蟻溝232に係合した形態では、内壁面234に圧接する弾性延出片138の先端部が縦リブ137bの両側に当接し、弾性延出片138がアーチを形成して、スライダー部137がナット摺動ガイド230A(230B)において上下左右方向にがた無く支持されるとともに、ナット摺動ガイド230A(230B)の延在方向である前後方向にスライド可能に保持される。
また、スライダー137の背面側における弾性延出片138の側縁は、符号138aに示すように、斜めにカットされた形状で、スライダー137のナット摺動ガイド230A(230B)内への挿入が容易となっている。
摺動ガイド230A(230B)は、ナット部材130A(130B)を介してリフレクター14の重量を懸吊支持するとともに、リフレクター14を左右方向および上下方向に位置決めして、エイミングスクリュー30(40)の上下方向および上下方向の揺動(リフレクター14の上下左右方向の振動)を抑制する。したがって、リフレクター14は、上下左右方向にがたつくことなく支持されて、エイミング支点Pの進退動作に連係してレベリング軸Lx1周りにスムーズに傾動する。
また、例えば、特願2000−165437号に示すように、ナット部材本体の側方に玉部である係合突起が設けられ、ブラケットに設けられた玉受け部である係合穴に玉部である係合突起が係合するブラケット・ナット部材間の装着構造では、リフレクター側の重量負荷がねじりモーメントとしてナット部材に作用して、リフレクターの振動につながるおそれがあるが、本実施例では、ナット部材本体131自体が玉継手の玉部を構成して、ブラケットに取着されたベアリング160A(160B)の玉受け部162に支承された構造であるため、このような不都合がない。即ち、リフレクター14側の慣性重量負荷は、ナット部材本体131の雌ねじ部132に螺合するエイミングスクリュー30(40)の軸心位置に作用するため、リフレクター14側の重量負荷がねじりモーメントとしてナット部材に作用するようなことがなく、それだけリフレクター14が上下左右方向に振動することもない。
また、ナット部材本体131の背面側には、エイミングスクリュー30(40)を雌ねじ部132に螺合させ易いように、雌ねじ部132に収れんするテーパ状の開口部132a(図12(b),(c)参照)が形成されている。
また、ブラケット150a(150b)の延出先端部に設けられているベアリング挿着孔150a1(150b1)は、ベアリング160A(160B)の矩形状プラグ168に整合する矩形状に形成されているが、ベアリング160Bがブラケット150b側のベアリング挿着孔15b1に挿着固定されて不動であるのに対し、ブラケット150aに挿着されたベアリング160Aはベアリング挿着孔15a1に対し左右方向にスライドできるように構成されている。
即ち、図11に示されるように、ベアリング挿着孔150a1の左右幅d1がベアリング160Aの矩形状プラグ168の左右幅d2よりも僅かに大きく形成されて、ベアリング挿着孔150a1とプラグ168間に隙間s1が形成されている。このため、エイミングスクリュー30を回動した場合に、リフレクター14の垂直傾動軸Ly周りの円運動(ベアリング160Aの垂直傾動軸Ly周りの円運動)とナット部材130Aの進退動作(エイミングスクリュー30に沿った直線運動)の移動軌跡が異なることにより、ブラケット150aとベアリング160A間の取着部には、レベリング軸Lx1に沿った引っ張り応力または圧縮応力が発生しようとするが、ベアリング160A(プラグ168)とベアリング挿着孔150a1とが負荷作用方向である図16左右方向に相対スライドすることで、左右エイミングの際のブラケット150aとベアリング160A間の取着部には不測の応力が発生しない。
また、玉受け部162と玉部であるナット部材本体131は、弾性フック延出前後軸(Y軸)周り(図16矢印参照)、弾性フック延出前後軸(Y軸)と雌ねじ部中心軸(Z軸)にそれぞれ直交する軸(X軸)周り(図15矢印参照)にそれぞれ相対回動できるので、リフレクター14の傾動(レベリング軸Lx1,仮想水平傾動軸Lx,垂直傾動軸Ly周りの傾動)によって玉受け部162と玉部であるナット部材本体131間に不測の応力が生じることはない。
また、光源の発熱が原因でリフレクター14が熱膨張するするなどの場合にも、ナット部材130A(130B)とベアリング160A(160B)の係合部には、リフレクター14の熱変形に伴う応力が生じようとするが、玉部であるナット部材本体131と玉受け部162から構成された玉継手構造によって、解放される。
次に、エイミング機構を介してリフレクター14をランプボディ10に組み付ける手順を説明する。先ず、エイミングスクリュー30,40を組み付けたランプボディ10を上向きにしておく。次ぎに、ベアリング160A,160Bの玉受け部162にナット部材130A,130Bの玉部(ナット部材本体131)をそれぞれ係合し、ブラケット150cには、ベアリング22を取り付け、ブラケット150a,150bの挿着孔150a1,150b1には、それぞれナット部材130A,130Bを一体化したベアリング160A,160Bを取着する。そして、ブラケット150a,150b,150cを下向きにして、ランプボディ10の上方からリフレクター14を下降させ、ナット部材130A,130Bの雌ねじ部132をエイミングスクリュー30,40の先端に位置合わせする。そして、エイミングスクリュー30,40を回動することで、ナット部材130A,130Bの雌ねじ部132をエイミングスクリュー30,40にそれぞれ螺合させるとともに、スライダー137をナット摺動ガイド230A,230B内に挿入する。最後に、レベリング用アクチュエータ60の玉部64をランプボディ10のアクチュエータ取り付け孔10cを貫通するようにして、ブラケット150cに取着されているベアリング22(の玉受部24)に圧入し、アクチュエータ60をランプボディ10(の取り付け孔10c)に固定することで、リフレクター14をオートレベリング機構を備えたエイミング機構Eを介してランプボディ10に一体化することができる。
図17〜図26は、本発明の第2の実施例のヘッドランプを示し、図17は同ヘッドランプの正面図、図18は同ヘッドランプの縦断面図(図17に示す線XVIII−XVIIIに沿う断面図)、図19は同ヘッドランプの縦断面図(図17に示す線XIX−XIXに沿う断面図)、図20はエイミング点を構成するナット部材とベアリングの分解斜視図、図21はベアリングの斜視図、図22はベアリングとブラケット間の装着部の分解斜視図、図23はナット部材を示し、(a)はナット部材の側面図、(b)はナット部材の断面図である。図24はベアリングを示し、(a)は展開したベアリングの側面図、(b)は同ベアリングの平面図、(c)は同ベアリングの縦断面図である。図25はエイミング点を構成するナット部材とベアリング間の係合部の断面図、図26は同ナット部材とベアリング間の係合部の縦断面図(図25に示す線XXVI−XXVIに沿う断面図)である。
前記した第1の実施例では、放物面形状の合成樹脂製リフレクター14にハロゲンバルブ18が挿着一体化されて反射式光源ユニットUが構成されていたが、この第2の実施例では、放電バルブ18Aを挿着した楕円体形状のアルミニウム製リフレクター14Aに筒形状のアルミニウム製レンズホルダー15を介して投射レンズ16を一体化することで投射式光源ユニットU1が構成されている。符号17は、楕円体形状リフレクター14Aの第2焦点近傍に配置されたクリアカットライン形成用のシェードである。
リフレクター14Aの前面開口部の周縁部には、ベアリング挿着孔152a1,152b1,152c1を設けたフランジ状のブラケット152a,152b,152cが一体に形成されて、光源ユニットU1の左右方向および下方にこれらのブラケットが延出している。そして、前記第1の実施例の場合と同様に、ベアリング挿着孔152a1,152b1,152c1にはベアリング170A,170B,22が挿着され、ランプボディ10を貫通して延出するエイミングスクリュー30,40に螺合するナット部材140A,140Bの玉部141,141およびオートレベリング用アクチュエータ60の進退ロッド先端の玉部64がベアリング170A,170B,22で支承されて、光源ユニットU1がオートレベリング機構を兼ねるエイミング機構E1によって傾動可能に支持されている。
そして、光源ユニットU1は、オートレベリング用アクチュエータ60の駆動により、上下エイミング点P2と上下・左右エイミング点P1を結ぶレベリング軸Lx1周りに傾動して、ランプの光軸Lが車両の走行状態に合わせて自動的に上下方向に傾動調整される。また、エイミングスクリュー30の回動操作によって、光源ユニットU1が、エイミング支点P(玉継手20)とナット部材140B(とベアリング170B間の係合部である上下エイミング点P2)を結ぶ垂直傾動軸Ly周りに傾動して、光軸Lを左右方向に傾動調整できる。さらに、エイミングスクリュー30,40の同方向の回動操作によって、光源ユニットU1が、エイミング支点P(玉継手20)を通る仮想水平傾動軸(上下エイミング点P2と上下・左右エイミング点P1を結ぶ水平傾動軸Lx1に平行な軸)Lx周りに傾動して、その光軸を上下方向に傾動調整できる。
以上の基本的構造は前記した第1の実施例と同一であるが、ナット部材140A(140B)とベアリング170A(170B)の形状が第1の実施例と相違している。
即ち、ナット部材140A(140B)は、中央部に雌ねじ部142の形成されたナット部材本体141の外周面が球状に形成されて玉部が構成され、ナット部材本体141の後方に延出するL字型延出部146を介して、玉部であるナット部材本体141に対してオフセットするスライダー147が設けられている。スライダー147は、前記した第1の実施例におけるナット部材130A(130B)におけるスライダー137と、同一構造であり、同一の符号を付すことでその重複した説明は省略する。
ベアリング170A(170B)は、前後に貫通する中空成形容器体で構成され、その後端側には、玉部141の球状外周面141aに整合する球状内周面172aが形成された玉受け部172が設けられている。また、ベアリング170A(170B)は、中空容器体の前後貫通孔171に沿って縦割りされて分割面を互いに付き合わせることでベアリングとして一体化できる一対の分割成形体170A1,170A2(170B1,170B2)で構成されている。そして、それぞれの分割成形体の後端側は、図24(a)符号172bに示すように、大きく切り切り欠かれて、ベアリング170A(170B)の後端部に、ナット部材本体141の後方に延出するL字型延出部146が遊合できる開口部171A(171B)が設けられている。また、分割成形体170A1,170A2(170B1,170B2)の前端側は、互いに一対の薄肉ヒンジ174を介して連成され、分割成形体170A1,170A2(170B1,170B2)の対応する付き合わせ面には、フック175a,176aとフック掛止部175b,176bおよびピン177aとピン係合穴177bがそれぞれ対向して設けられている。そして、ナット部材本体である玉部141を挟み込むようにしてヒンジ174周りに分割成形体170A1,170A2(170B1,170B2)を回動してフックとフック掛止部を凹凸ランス係合させると、ベアリング170A(170B)として一体化されて、玉部141が玉受け部172に支承された形態に保持される。
また、ベアリング170A(170B)の前端側には、前記した第1の実施例におけるベアリング160A(160B)のプラグ168と同一構造のプラグ178が設けられており、プラグ178のフック179がブラケット152aのベアリング挿着孔152a1,152b1に係合して抜け止めされる。
また、エイミング点P1におけるベアリング挿着孔152a1の巾d3は、図22に示すように、前記した第1の実施例におけるエイミング点P1におけるブラケット挿着孔150a1の場合と同様、ベアリング170A(170B)のプラグ178の巾d4よりも大きめに形成されて、図22左右方向に作用する負荷に対してベアリング170Aがベアリング挿着孔152a1の周縁に沿って左右方向にスライドして応力を吸収(解放)する構造となっている。
その他は、前記第1の実施例と同一であるため、同一の符号を付すことで、その重複した説明は省略する。
図27〜図29は本発明の第3の実施例を示し、図27は第3の実施例である自動車用ヘッドランプの正面図、図28は左右エイミング点を構成するベアリングとブラケット間の装着部の分解斜視図、図29は上下エイミング点を構成するベアリングとブラケット間の装着部の分解斜視図である。
前記した第1,第2の実施例では、エイミング支点Pがリフレクター14の左隅下方に配置され、上下左右エイミング点P1が右上隅に、上下エイミング点P2が左上隅にそれぞれ配置された、オートレベリング機構を兼ねるエイミング機構Eを備えたヘッドランプについて説明したが、この第3の実施例では、エイミング支点Pがリフレクター14の左上隅に配置され、左右エイミング点P3が右上隅に、上下エイミング点P4が左下隅にそれぞれ配置されたエイミング機構E1を備えた構造となっている。
エイミング支点Pは、ランプボディ10の内側に突出形成された円筒形状の玉受け部124と、放物面形状のリフレクター14側のブラケット150c(図示せず)に突出形成された玉部122からなる玉継手120で構成されている。
左右エイミング点P3において、断面U字型の玉受け部162が側方に開口するように、ベアリング160Aがブラケット150aの挿着孔150a1に挿着されている。玉部であるナット部材本体131が玉受け部162に支承されたナット部材130Aのスライダー137は、ランプボディ10の右側壁に形成された前後に延びる摺動ガイド230Aに支持されている。
また、上下エイミング点P4において、断面U字型の玉受け部162が下方に開口するように、ベアリング160Bがブラケット150bの挿着孔150b1に挿着されている。玉部であるナット部材本体131が玉受け部162に支承されたナット部材130Bのスライダー137は、ランプボディ10の下側壁に形成された前後に延びる摺動ガイド230Bに支持されている。
また、左右エイミング点P3におけるベアリング挿着孔150a1の左右巾d1は、図28に示すように、前記した第1の実施例におけるエイミング点P1におけるブラケット挿着孔150a1と同様、ブラケット160Aのプラグ168の左右巾d2よりも大きめに形成されて、作用する負荷に対してベアリング160Aが左右方向にスライドすることで、左右エイミング点P3におけるベアリング取着部に不測の応力が生じない構造となっている。
また、上下エイミング点P4におけるベアリング挿着孔150bの上下巾d3は、図29に示すように、プラグ168の上下巾(ブラケット160Aのプラグ168の左右巾に等しい)d2よりも大きめに形成されて、作用する負荷に対してベアリング160Bが上下方向にスライドすることで、上下エイミング点P4におけるベアリング取着部に不測の応力が生じない構造となっている。
なお、前記した2つの実施例では、ランプボディ10はポリプロピレン樹脂で構成され、エイミングスクリュー30,40は、適度な弾力があり、耐摩耗性に優れ、しかもポリプロピレン樹脂との摺動性のよいポリアセタール樹脂で構成されているが、ポリアセタール樹脂に代えて、ナイロン樹脂で構成してもよい。
また、前記した実施例では、エイミングスクリュー30,40全体が合成樹脂製として説明されているが、少なくとも被支承部34(44)を合成樹脂製で、その他の部分を金属製としてもよい。さらに、エイミングスクリュー30,40を従来公知の金属製とし、プッシュオンフィックスによるエイミングスクリュー30,40の挟持力を弱めて、エイミングスクリュー30,40の回動操作性を高めた構造であってもよい。