JP4374740B2 - 研削砥石およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種平面研削に使用されるカップ型砥石等の研削砥石及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えばカップ型砥石は、カップ型台金の軸線方向一端面に、直方体形状のものを円弧状に湾曲させて得た砥粒層セグメントを、台金の軸線を中心とする円周に沿って多数並べて固定したものであり、各種の平面研削に使用される。この種の平面研削の中でも、特に高い平面精度が要求されるのはウェーハの平面研削である。
一般的なウェーハの平面研削では、図9および図10に示すように下定盤1上にウェーハWを平行かつ同軸に固定し、下定盤1を中心軸線Ow回りに回転させる。一方、カップ型砥石2の砥粒層をなすセグメント4の下端面である研削面5をウェーハWの上面に平行に当接させながら、カップ型砥石2をその軸線回りに回転させることにより、ウェーハWの上面を平面研削する。カップ型砥石2は、カップ型台金3の下端面に軸線Oを中心とする真円の円周に沿って多数の円弧状のセグメント4…を固定したものである。
研削に際し、セグメント4はほぼウェーハWの中心軸線Ow上を通過するように位置決めされ、ウェーハWの中心部も削り残すことがないように配慮される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上述の方法によると、セグメント4の研削面における外周側および内周側のエッジにおいてウェーハ研削量が大きくなるので、これら内外縁部分においてセグメント4の摩耗速度が相対的に大きくならざるを得ない。したがって、時間経過につれてセグメント4の内外縁部分に形状ダレが生じ、特に、ウェーハWの中心に僅かな突起が形成され、この突起によってウェーハWの平面精度が悪化するという問題があった。同様の問題は他の被削材、他の形式の平面研削においても発生し得るものである。
またセグメント4はその配列方向の円周とほぼ同一の曲率半径を有する円弧状に形成されていて、その周方向に回転移動するためにその内側縁と外側縁の各エッジによって研削領域がクリヤーに仕切られ、ウエーハWにはこのエッジの研削痕による段差が生じてしまい研削精度が低下することもあった。
【0004】
そこで、例えば実公平7−5983号公報には、砥粒層のセグメントの配列を完全な真円ではなく、部分的に内または外へ偏心した歪んだ円形状にする発明が開示されている。この発明によれば、砥石回転につれてセグメントが砥石半径方向の内外に揺動するため、この揺動につれてウェーハ中心部の突起の発生や段差の発生を防止することが可能である。
しかし、実公平7−5983号公報に記載された発明においては、セグメントを複雑な曲線に沿って配列させ、しかも砥石全体の重心を砥石の軸線Oと合致させなければならないため、実際には製造が難しくコストがかかるという問題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、高い精度を以て平面研削を効率的に行うことができるようにした研削砥石を提供することを目的とする。
また本発明の他の目的は、高い精度で平面研削を効率的に行うことができる研削砥石を容易に製造できるようにした研削砥石の製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る研削砥石は、台金の軸線方向の一端面に、複数の砥粒部を、台金の軸線を中心とする円周に沿って配列した研削砥石であって、少なくとも一部の前記砥粒部は、外側面が、中央領域を内側面に略平行な平面とし、前記中央領域を挟んで両側を前記台金の軸線を中心とする円周に沿う円弧状の凸曲面として形成され、研削面と前記外側面の交差稜線をなす外側縁が、研削面と前記内側面の交差稜線をなす内側縁に略平行な直線状の中央領域と、該直線状の中央領域の両側の前記台金の軸線を中心とする円周に沿う円弧状凸曲線とで構成されていることを特徴とする。
研削砥石を回転研削するに際して、研削面は研削量が周方向に一定の主研削部分とこの主研削部分の両側にあって内側縁及び外側縁によってそれぞれ仕切られて研削量が周方向に増減変化する副研削部分とで構成されるから、被削材に対して砥粒部の研削面が移動しつつ研削する際に主研削部分に隣接する副研削部分による研削量が砥粒部の幅方向外側(径方向内側及び外側)に向けて連続して変化するために特に周辺の研削がなだらかに行われて研削面に突起や段差や研削痕を生じさせることなく仕上げ面精度を高めることができる。
また、砥粒部の外側縁が、内側縁に略平行な直線状の中央領域と、この中央領域の両側の台金の軸線を中心とする円周に沿う円弧状凸曲線とで構成されているため、中央領域の両側に副切削部分を残すことができ、研削精度を良好にすることができる。さらに、外側面の両端部側(中央領域を挟んで両側)を凸曲面として、外側縁の直線状の中央領域の両側を円弧状凸曲線にすることで、風切り音や振動の発生を抑制でき、エッジの摩耗やダレを抑えることも可能になる。
【0007】
また、一部の砥粒部は、内側縁の両端部が台金の軸線を中心とする円周(R1)に重なるように配設されていてもよい。
この場合、砥粒部の長さを適宜設定することで被削材の中心軸線に交差する砥粒部の線上での研削面の接触確率を自在に変化させることができるから、被削材の中心軸線近傍であっても突起のない平坦研削加工が可能である。
【0008】
また、一部の砥粒部の長さは、砥粒部の内側縁の周方向端部を含む軸線を中心とする円周の長さの1/20〜1/100の範囲であってもよい。
この砥粒部の長さが円周(R1)の長さ(=2πr1)の1/100より小さいとその研削挙動は単純な円周状砥粒層の挙動に近くなり被削材の中心軸線近傍での突起形成の抑制効果が小さいという欠点があり、1/20より大きいと被削材の表面粗さが荒くなるという欠点がある。
【0009】
また本発明による研削砥石の製造方法は、略直方体または立方体形状の砥粒部を台金の軸線方向の一端面にこの軸線を中心とする円周に沿って所定間隔で配列固定し、台金と同軸に別の研削用砥石を配設し、台金と別の研削用砥石を同軸回転させて砥粒部の外周面の両端部に別の研削用砥石を接触させて研磨することで、上記の研削砥石を製造するようにしたことを特徴とする。
この製造方法によれば、砥粒部が単純な直方体形状や円弧板状とは異なる異形状であっても高価で特殊な型を製作して型成形する必要がなく、一般的な直方体または立方体形状から外側縁を含む外周面の両端を研削加工によって成形でき、低廉で容易に成形できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図5により説明する。図1は、本発明の第一の実施の形態によるカップ型砥石を下から見た図、図2は図1に示すカップ型砥石における砥粒層セグメントの部分拡大図、図3は砥粒層セグメントの幅方向における主及び副研削部分による研削量の変化を示す図、図4はカップ型砥石によるウエーハの研削状態を示す図、図5は砥粒層セグメントの主及び副研削部分によるウエーハの研削領域を示す図である。
本発明の第一の実施の形態によるカップ型砥石10(研削砥石)は、図1及び図2に示すように、例えば円盤形をなすカップ型台金11の軸線方向の一端面11aに、複数の砥粒層セグメント(砥粒部)12…を、台金の軸線Oを中心とする円周に沿って周方向に所定の間隔13…を空けた状態で配列したものである。ここで台金11の形状や材質は本発明では限定されず、従来よりカップ型砥石に使用されているものであればいかなる形状、材質であってもよい。台金11は図示しない締結手段を介して砥石軸9に取り付け可能とされ、この砥石軸9によって回転駆動される。
【0011】
砥粒層セグメント12は、ダイヤモンドやCBNなどの超砥粒、もしくはSiC,Al23等の一般砥粒などを金属、樹脂、もしくはガラスなどの結合材で固めてなるメタルボンド砥粒層、レジンボンド砥粒層、ビトリファイドボンド砥粒層、または電着砥粒層のいずれでもよい。
そして各砥粒層セグメント12は、例えば略直方体形状(または立方体形状)からなり台金11の一端面11aへの固着面に対向する面が研削面15とされ、その内側即ち軸線O側の側面は略長方形平面状の内側面17とされ、内側面に対向する外側の側面は略長方形平面状の外側面18とされ、内外側面17,18は互いに平行とされている。
研削面15と内側面17との交差稜線は内側縁15aとされ、研削面15と外側面17との交差稜線は外側縁15bとされ、内外側縁15a,15bはそれぞれ直線状をなし互いに平行とされている。図2において、台金11の一端面11a上で複数の砥粒層セグメント12…の配列領域に設けた仮想の円周R1,R2,R3は軸線Oを中心とする仮想の同心円をなしており、それぞれ半径r1,r2,r3(r1<r2<r3)とされている。
しかも各砥粒層セグメント12は内側縁15aの両端a,aが最も内周側に位置する仮想の円周R1上にあって内側縁15aはその弦を構成するように配設されている。仮想の円周R1の外側に設けた仮想の円周R2は外側縁15bの内接円とされ、更に円周R2の外側に設けた仮想の円周R3は外側縁15bの両端b,bと重なり外側縁15bはその弦を構成する。
【0012】
そして砥粒層セグメント12は直方体であるから、研削面15はその長手方向全長にほぼ同一幅とされた略長方形とされている。この研削面15において、仮想の円周R1−R2間の領域は略円弧状の主研削部分14とされ、カップ型砥石10の回転研削時に常時同一幅で研削され、仮想の円周R1と内側縁15a間の領域が副研削部分16a、仮想の円周R3と外側縁15b間の領域が副研削部分16bとされていて、回転研削時に研削幅が増減変化することになる。
そのため、カップ型砥石10を軸線O回りに回転させて研削させた場合、各砥粒層セグメント12は円周R1,R2,R3方向に摺動して研削面15で研削する。この場合、研削面15の各部分の研削量は図3に示すように主研削部分14で100%、副研削部分16a、16bでは主研削部分14側から幅方向両側(径方向内側及び外側)に漸次研削量が滑らかに減少するように幅方向に変化することになる。
しかも径方向内側の副研削部分16aの研削量が最小の両端部で径方向外側の副研削部分16bの研削量が最大とされ、径方向内側の副研削部分16aの研削量が最大の中央部で径方向外側の副研削部分16bの研削量が最小となるように互いに相補的に研削量が増減変化する。
【0013】
砥粒層セグメント12の幅は特に限定されないが、例えばウェーハ研削用として使用するのであれば1.5〜6mm程度であると好適である。
砥粒層セグメント12の長さは限定されないが、仮想の円周R1の長さ(2πr1)の1/20〜1/100の範囲とする。ここで砥粒層セグメント12の長さが円周R1の長さの1/100より小さいとその研削挙動は単純な円周状砥粒層の挙動に近くなり被削材の中心軸線近傍での突起形成の抑制効果が小さいという欠点があり、1/20より大きいと被削材の表面粗さが荒くなるという欠点がある。
尚、砥粒層セグメント12の研削面15の内外側縁15a,15bを含む四辺は、必要であればいずれも面取りされていてよい。また、砥粒層セグメント12の4つの角は、必要であれば適宜丸められていてもよい。
【0014】
次に本実施の形態によるカップ型砥石10を使用したウェーハの平面研削方法について図4及び図5により説明する。この方法ではまず、研磨すべきウェーハWを従来通りの方法により下定盤1上に同軸に固定し、下定盤1をその軸線Ow回りに定速で回転させる。さらにカップ型砥石10をその軸線O回りに回転させながら、ウェーハWの研削すべき面に各砥粒層セグメント12の下端面である研削面15を平行に当接させる。
この時、ウェーハWとカップ型砥石10との位置は、図4の通りに設定することが望ましい。図5において斜線をなす主研削領域24は砥粒層セグメント12の研削面15の主研削部分14によって研削される領域を示し、その両側の斜線をなす副研削領域26a,26bは研削面15の副研削部分16a,16bによってそれぞれ研削される領域を示している。
【0015】
研削を行うとき、ウェーハWの中心Owは、主研削領域24に入っていることが必要であり、より好ましくは、仮想の円弧R1またはR2上にウェーハWの中心Owを位置させる。仮想の円弧R2上にウェーハWの中心Owを位置させた場合、砥石10の回転につれて砥粒層セグメント12の外側縁15bのエッジによりウェーハWの中心部が剪断的に研削されるため、中心Owに突起が一層残りにくくなる。また、仮想の円周R1上にウェーハWの中心Owを位置させた場合、カップ型砥石10の回転につれて砥粒層セグメント12の内側縁15aのエッジによりウェーハWの中心部が剪断的に研削されるため、やはり中心Owに突起が残りにくくなる。
【0016】
この平面研削方法によれば、図5に示すように、砥粒層セグメント12の主研削部分14が研削を行う研削量100%の主研削領域24の両側に位置する副研削領域26a,26bを、副研削部分16a,16bで主研削領域24から幅方向両側になだらかに研削量が減少するように研削することができるので、各砥粒層セグメント12の内側縁15aおよび外側縁15bが早く摩耗しすぎることを防止できる。
したがって、砥粒層セグメントの形状ダレに起因してウェーハWの中心Owに突起が生じることを防止できるから、高い精度を以てウェーハWの平面研削を行うことが可能である。同様の効果は、ウェーハW以外の被削材に対しても得ることが可能である。しかも砥粒層セグメント12の中央から幅方向外側に研削量が漸次減少することで段差による研削痕をウエーハWに生じることがなく研削精度が高い。
【0017】
上述のように本実施の形態によれば、研削面15として主研削部分14の両側に幅方向の研削量が次第に減少する副研削部分16a、16bを設けたことで砥粒層セグメント12の四辺のエッジの形状ダレを防止し、ウエーハWに突起や段差や研削痕等が生じるのを抑制できて高精度な平面研削を行うことができる。特に研削面15が略長方形で円周R1の弦を構成するように配置したから、研削面15の長さを適宜設定することでウエーハWの中心軸線Owを横切る線上での研削面15の接触確率を適宜設定できて中心軸線Ow近傍でも突起を生じることなく平坦研削加工が可能であり、振動が少なく研削がソフトである。
しかも砥粒層セグメント12は直方体形状であるから成形が簡単且つ容易であり、従来の異形状セグメントのように型成形するための特殊な成形型が不要であるから製造コストが低廉である。また、砥粒層セグメントの配列そのものを歪んだ円形とする実公平7−5983号公報に記載された発明に比べ、本実施の形態の研削面15は幅方向の副研削部分16a、16bの研削量が相補的に増減することでウェーハWに対する研削抵抗を一定にしやすいため、回転バランスがよいという利点も有する。
【0018】
次に本発明の第二の実施の形態を図6及び図7により説明するが、第一の実施の形態と同様の部分には同一の符号を用いて説明する。
図6に示すカップ型砥石30において、台金11の一端面11a上に軸線Oを中心にして複数の砥粒層セグメント32(砥粒部)…がそれぞれ周方向に間隔13を開けて配列されている。各砥粒層セグメント32は第一の実施の形態による砥粒層セグメント12とほぼ同様な構成を有している。
即ち、この砥粒層セグメント32は略直方体形状を呈し、研削面15に隣接する内側面17は平面形状とされ、内側面17と研削面15との交差稜線が内側縁15aとされている。内側面17に対向する外側面33は中央領域33aが内側面17に平行な平面とされ、その両側は平面視で略円弧状の凸曲面33b、33cとされている。この凸曲面33b、33cは軸線Oを中心とする仮想の円周R4に沿う円弧状を呈しており、この円周R4の半径r4はr2より大きくr3より小さい値に設定されている。そのため仮想の円周R4は円周2とR3との間に位置することになる。これによって各凸曲面33b,33cは中央領域33aとの接続部から各端部に向けて漸次内側面17に近づく傾斜面となる。また研削面15と外側面33との交差稜線をなす外側縁15cは内側縁15aに平行な直線状の中央領域15cAとその両側の円弧状凸曲線15cB、15cCとで構成されている。
【0019】
そして一端面11aにおいて軸線Oを中心とする半径r1の円周R1上に内側縁15aの両端a,aが位置するように各砥粒層セグメント32を配列固定した状態で、各砥粒層セグメント32の研削面15は仮想の円周R1−R2間の主研削部分34と、円周R2と内側縁15aとの間の副研削部分36aと、円周R2と外側縁15cとの間の副研削部分36bとで構成されることになる。
そのため、砥粒層セグメント32の幅方向の研削量は、主研削部分34で100%、その内側の副研削部分36aで径方向(幅方向)内側の軸線Oに近づくに従って漸次減少するようになっている点で図3に示す第一の実施の形態による砥粒層セグメント12と同一であり、径方向外側の副研削部分36bは砥粒層セグメント12による副研削部分12bの研削量の変化よりも幅方向の減少の傾きが大きい。
この場合でも主研削部分34でウエーハWの軸線Owを研削すれば、ウエーハWが自転するために研削量がなだらかに変化する内側の副研削部分36aと研削量が比較的急激に変化する外側の副研削部分36bとを有することで、中心Owに削り残しによる突起が残りにくくウエーハ表面に段差や研削痕も生じない。また研削抵抗が比較的均一で振動が少ない上に外側縁15c両端の凸曲線15cB、15cCのために研削時の風切り音や振動が少ない。
【0020】
次に本実施の形態によるカップ型砥石30に装着配列する砥粒層セグメント32の製造方法について図7により説明する。
まず砥粒を結合相で分散固着させた砥粒層を直方体形状または長方形板状に成形して砥粒層セグメント32Aを製作する。砥粒層セグメント32Aが例えばメタルボンド砥石であれば超砥粒をメタルボンドで分散状態で結合し、型などで直方体形状に成形する。
次に複数の砥粒層セグメント32Aを台金11の一端面11aにおいて軸線Oを中心とする仮想の円周R1に沿って所定間隔13をおいて研削面15に対向する固着面で固着して周方向に配列する。その際、各砥粒層セグメント32Aの内側面17の両端、即ち平面視で内側縁15aの両端a,aが仮想の円周R1に重なって弦を構成するように配置する。このようにして得られたカップ型砥石30を図示しない研削盤に装着して研削盤の回転軸とカップ型砥石32の軸線Oとを一致させる。
【0021】
そしてカップ型砥石30とは別の研削用砥石40を研削盤のもう一軸に装着してカップ型砥石30と別の研削用砥石40とを同軸に回転させる。この時、別の研削用砥石40は例えば一軸を中心としてリング状砥石または円弧状のセグメント砥石で構成されているものとし、このリング状砥石または円弧状のセグメント砥石の内周面は一軸を中心とする半径r4の円周R4上に設定する。
カップ型砥石30と別の研削用砥石40とを同軸に回転研削させた状態で、研削用砥石40の砥石をカップ型砥石30の各砥粒層セグメント32Aの外側面18の両端部に接触させて研磨する。
これによって各砥粒層セグメント32Aの外側面33の中央領域33aを除く両端領域が断面円弧状の凸曲面33b、33cに成形されてカップ型砥石30が得られる。これを焼結等すればよい。
【0022】
このようにして直方体形状をなす砥粒層セグメント32Aを研削によって平面状の中央領域33aとその両端の凸曲面状領域33b、33cとを有する外側面33に加工成形して、砥粒層セグメント32を製作できる。従来、直方体とは異なる異形状の砥粒層セグメントの製作に際しては高価な型を製作して型成形していたが、本実施の形態による砥粒層セグメント32は型成形でなく研削によって簡単且つ容易に製作できる。
【0023】
尚、上述の各実施の形態では、台金11の一端面11aに複数の砥粒層セグメント12、32をそれぞれ円周状に配列して構成したが、一部の砥粒層セグメント12…または砥粒層セグメント32…に異なる砥粒層のセグメントが混在して略円周状に配列されていてもよい。
例えば第一の実施の形態によるカップ型砥石で説明すると、図8に示すように台金11の一端面11aに配列された複数の砥粒層セグメント12…の一部を例えば従来の砥粒層のセグメント4…に交換して配設してもよい。この場合、セグメント4は研削面5が砥粒層セグメント12の主研削部分14と同等の円弧形状を呈しており、研削面の内側縁4aと外側縁4bが仮想の円周R1−R2に重なって形成された平面視で長手方向に略同一幅の円弧板状を呈している。
この構成によれば、カップ型砥石50で回転研削する際に、セグメント4では図5に示す斜線の主研削領域14のみの研削を行い砥粒層セグメント12では主研削領域24とその両側の副研削領域16a,16bの研削を行うことになる。
【0024】
尚、複数のセグメント4の総数に対する砥粒層セグメント12(32)の占める割合は特に限定されるものではないが、一般に5〜35%であることが好ましく、より好ましくは7〜30%とされる。5%よりも少ないと、砥粒層セグメント12の内側縁15a、外側縁15bにかかる研削負担が大きくなり、これらの摩耗速度が大きすぎて、本発明の効果が不十分となるおそれがある。一方、35%より大きくしてもよいが、それ以上の効果の向上は期待できない。
或いは、砥粒層セグメント12、32、セグメント4の一部または全部を周方向に混在させて配列させてもよい。
また砥粒層セグメント12、32とセグメント4は相互に素材が異なっていてもよく、例えば実施の形態による砥粒層セグメント12、32のみをセグメント4よりも摩耗しにくい相対的に硬い砥粒層によって形成してもよい。あるいは逆に、砥粒層セグメント12、32をセグメント4よりも摩耗しやすい、相対的に柔らかい砥粒層によって形成してもよい。
【0025】
複数の砥粒層セグメント12…(または32…)同士の間に配置されるセグメント4の個数は一定でなくても良く、砥石の重心さえ回転軸に一致していれば、間隔13を不等間隔にして配置してもよい。
また、上記各実施の形態では、砥粒層セグメント12,32等を軸線Oを中心とする真円の円周に沿って配列すればよいから、砥石製造時にこれらの位置決めが容易であり、例えば砥粒層セグメント12,32等をはめ込むために台金11に環状溝を形成する場合などでも、溝の形成コストが安い。
尚、本発明は、カップ型砥石10、30、50に限らずその他の各種研削砥石に用いることができる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る研削砥石では、少なくとも一部の砥粒部は、研削面の外側縁の中央領域が直線状であり該外側縁に対向する内側縁も直線状で外側縁及び内側縁は略平行とされているため、被削材に対して砥粒部の研削面が相対移動しつつ研削する際に主研削部分に隣接する副研削部分による研削量が砥粒部の幅方向外側に向けて連続して変化するために特に周辺の研削が滑らかに行われて研削面に突起や段差や研削痕が生じさせることなく仕上げ面精度を高めることができる。
【0027】
また、一部の砥粒部は、内側縁の両端部が台金の軸線を中心とする円周に重なるように配設されているから、砥粒部の長さを適宜設定することで被削材の中心軸線に交差する砥粒部の線上での研削面の接触確率を自在に変化させることができ、被削材の中心軸線近傍であっても突起のない平坦研削加工が可能である。
また研削面は長方形であるから、内側縁とその内側の仮想の円弧で構成する副研削部分と、外側縁がなす直線とこれに内接する仮想の円弧とで構成する副研削部分とで研削量がその長さ方向に沿って相補的に増減変化して砥粒層セグメントにかかる負荷をバランスさせて研削抵抗を均一にでき、研削時の振動が少なくソフトである。
【0028】
また研削面の外側縁は中央領域の両端部が円弧状であるから、この両端部によって風切り音や振動の発生を抑制でき、角部の摩耗やダレを抑えることができて研削抵抗を抑え、しかも外側縁の中央領域を直線状に形成することで外周側にも副切削部分を残すことができ、研削精度を良好にすることができる。しかも主研削部分の両側の副研削部分で研削量がその長さ方向に沿って相補的に増減変化して砥粒層セグメントにかかる負荷をバランスさせて研削抵抗を均一にでき、研削時の振動が少なくソフトである。
また一部の砥粒部の長さは、砥粒部の内側縁の周方向端部を含む軸線を中心とする円周の長さの1/20〜1/100の範囲であるから、この砥粒部の長さが円周R1の長さ(=2πr1)の1/100より小さいとその研削挙動は単純な円周状砥粒層の挙動に近くなり被削材の中心軸線近傍での突起形成の抑制効果が小さいという欠点があり、1/20より大きいと被削材の表面粗さが荒くなるという欠点がある。
【0029】
また本発明による研削砥石の製造方法は、略直方体または立方体形状の砥粒部を台金の軸線方向の一端面にこの軸線を中心とする円周に沿って所定間隔で配列固定し、台金と同軸に別の研削用砥石を配設し、台金と別の研削用砥石を同軸回転させて砥粒部の外周面の両端部に別の研削用砥石を接触させて研磨することで、研削砥石を製造するようにしたから、砥粒部が単純な直方体形状や円弧板状とは異なる異形状であっても、高価で特殊な型を製作して型成形する必要がなく、一般的な直方体または立方体形状から外側縁を含む外周面の両端を研削加工で成形でき、低廉で容易に成形できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第一の実施の形態によるカップ型砥石を研削面側から見た平面図である。
【図2】 図1に示すカップ型砥石の砥粒層セグメントの配列を示す部分拡大図である。
【図3】 実施の形態によるカップ型砥石の砥粒層セグメントの幅方向における研削部分と研削量との関係を示す図である。
【図4】 カップ型砥石でウエーハを研削する状態を示す図である。
【図5】 ウエーハに対して実施の形態によるカップ型砥石の砥粒層セグメントの研削面で研削した研削領域を示す平面図である。
【図6】 第二の実施の形態によるカップ型砥石の砥粒層セグメントの構成及び配列を示す部分平面図である。
【図7】 第二の実施の形態によるカップ型砥石の砥粒層セグメントの製造方法を示す説明図である。
【図8】 砥粒層セグメント配列の変形例を示す部分平面図である。
【図9】 従来のウエーハの平面研削方法を示す側面図である。
【図10】 従来のウエーハの平面研削方法を示す平面図である。
【符号の説明】
W ウェーハ
4 セグメント(砥粒部)
10,30,50 カップ型砥石
11 台金
12,32 砥粒層セグメント(砥粒部)
15 研削面
15a 内側縁
15b,35 外側縁
14,34 主研削部分
16a,16b,36a,36b 副研削部分
40 研削用砥石

Claims (4)

  1. 台金の軸線方向の一端面に、複数の砥粒部を、台金の軸線を中心とする円周に沿って配列した研削砥石であって、
    少なくとも一部の前記砥粒部は、外側面が、中央領域を内側面に略平行な平面とし、前記中央領域を挟んで両側を前記台金の軸線を中心とする円周に沿う円弧状の凸曲面として形成され、
    研削面と前記外側面の交差稜線をなす外側縁が、研削面と前記内側面の交差稜線をなす内側縁に略平行な直線状の中央領域と、該直線状の中央領域の両側の前記台金の軸線を中心とする円周に沿う円弧状凸曲線とで構成されていることを特徴とする研削砥石。
  2. 前記一部の砥粒部は、内側縁の両端部が前記台金の軸線を中心とする円周に重なるように配設されていることを特徴とする請求項1記載の研削砥石。
  3. 前記一部の砥粒部の長さは、前記砥粒部の内側縁の周方向端部を含む前記軸線を中心とする円周の長さの1/20〜1/100の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の研削砥石。
  4. 略直方体または立方体形状の砥粒部を台金の軸線方向の一端面にこの軸線を中心とする円周に沿って所定間隔で配列固定し、前記台金と同軸に別の研削用砥石を配設し、前記台金と別の研削用砥石を同軸回転させて前記砥粒部の外側面の両端部側に前記別の研削用砥石を接触させて研磨することで、前記請求項1乃至3のいずれか記載の研削砥石を製造するようにした研削砥石の製造方法。
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