JP4373763B2 - 生分解性材料および生分解性材料の製造方法 - Google Patents
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Description
天然生分解性多糖類は、石油合成高分子に比べて、燃焼に伴う熱量が少なく自然環境での分解再合成のサイクルが保たれる等、生態系を含む地球環境に悪影響を与えない。中でも、セルロースやデンプンは植物から安定して豊富に供給されることと、他の生分解高分子に比べて非常に安価になりつつある点から、現在その応用について多くの検討がなされている。
しかしながら、生分解性ポリエステルの添加は疎水性デンプン自身の強度特性を改善するものではなく、混合した生分解性ポリエステルの特性に近付くだけであり、添加する生分解性ポリエステル単独より当然、強度的に劣るものとなるため高価な疎水性デンプンをわざわざ使用する必要性に疑問がある。また、鉱物フィラーを配合した場合には平滑性や透明性が損なわれて、用途が限定されたものとなる。
よって、疎水性デンプン誘導体は水には全く不溶であるため、水との混練は不可能であり、したがって、従来の放射線架橋技術では架橋は出来なかった。また、一般的にデンプンの架橋の化学処理に使用されるアルデヒド等の架橋剤でも架橋は不可能であった。
トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメタアリルイソシアヌレート(TMAIC)、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリメタアリルシアヌレート(TMAC)から選ばれるアリル基を有するモノマー、1.6ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、トリメチロールプロパントリメタアクリレート(TMPT)から選ばれるアクリル系、またはメタクリル系のモノマーからなる架橋型多官能性モノマーが添加され、
上記疎水性多糖類誘導体100重量%に対して、上記架橋型多官能性モノマーが0.1〜3重量%配合され、電離性放射線照射で架橋構造とされて、(ゲル分乾燥重量/初期乾燥重量)が10〜90%の架橋構造とされていることを特徴とする生分解性材料を提供している。
ここでいう置換度とは、多糖類が1構成単位にもつ3つの水酸基のうち、エステル化などで置換された水酸基の数の平均値をいい、したがって置換度の最大値は3である。多糖類の誘導体は、その置換導入した官能基にも影響されるが、一般にこの置換度1.5以下が親水性、1.5以上が疎水性を示す。
トリアリルイソシアヌレート(以下、TAICと記す)、トリメタアリルイソシアヌレート(以下、TMAICと記す)、トリアリルシアヌレート、トリメタアリルシアヌレート、ジアリルアミン、トリアリルアミン、ジアクリルクロレンテート、アリルアセテート、アリルペンゾエート、アリルジプロピルイソシナヌレート、アリルオクチルオキサレート、アリルプロピルフタレート、ビチルアリルマレート、ジアリルアジペート、ジアリルカーボネート、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルフマレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルマロネート、ジアリルオキサレート、ジアリルフタレート、ジアリルプロピルイソシアヌレート、ジアリルセバセート、ジアリルサクシネート、ジアリルテレフタレート、ジアリルタトレート、ジメチルアリルフタレート、エチルアリルマレート、メチルアリルフマレート、メチルメタアリルマレート。
本発明に使用することができる化学開始剤は、熱分解により過酸化ラジカルを生成する過酸化ジクミル、過酸化プロピオニトリル、過酸化ペンソイル、過酸化ジーt−ブチル、過酸化ジアシル、過酸化ベラルゴニル、過酸化ミリストイル、過安息香酸−t−ブチル、2,2’−アゾビスイソブチルニトリルなどの過酸化物触媒又はモノマーの重合を開始する触媒であればいずれでもよい.橋かけは、放射線照射の場合と同様、空気を除いた不活性雰蹄気下や真空下で行うのが好ましい。
実施形態の生分解性材料は、疎水性多糖類誘導体に多官能性モノマーが添加され、電離性放射線で照射して橋架け反応を生じさせて架橋構造としたものである。
上記疎水性多糖類誘導体は、水酸基の置換度が2.0以上3.0以下で、エーテル化、エステル化、アルキル化あるいはアセチル化されたデンプン誘導体、セルロース誘導体、あるいはプルランから選ばれた1種又は複数種からなり、具体的には、脂肪酸エステルスターチ、酢酸エステルスターチ、酢酸エステルセルロースあるいはアセチル化プルランから選択して用いている。
上記多官能モノマーは、アリル基を有するモノマーを用い、具体的には、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)あるいはトリメタイソアリルシアヌレート(TMAIC)を用いている。
疎水性多糖類誘導体として、脂肪酸エステルスターチ(日本コーンスターチ製CP−5)を使用した。該多糖類は水酸基の置換度が約2.0、脂肪酸のCH2側鎖は平均10で、水には不溶であるがアセトンに溶解し、完全に疎水性である。この脂肪酸エステルスターチを略閉鎖型混練機ラボプラストミルにて、150℃で融解させた中に、アリル系モノマーの1種であるTAIC(日本化成株式会社製)を脂肪酸エステルスターチに対して3重量%添加し、回転数20rpmで10分間良く練って混合した。その後、この混練物を150℃熱プレスにて1m厚のシートを作製した。このシートを、空気を除いた不活性雰囲気下で電子加速器(加速電圧2MeV 電流量1mA)により電子線を照射し、得られた放射線架橋物を実施例1とした。
実施例1で用いたアリル系モノマーのTAICの添加量を1重量%としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2を得た。また用いたモノマーを同じアリル系モノマーであるTMAIC(日本化成株式会社製)を1重量%としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3を得た。
疎水性多糖類誘導体として、置換度が2である酢酸エステルスターチ(日本コーンスターチ製 CP−1)を用い、アリル系モノマーとしてはTAICを1重量%使用し、樹脂の軟化温度に合わせて混練時及びプレス時の加熱温度を200℃とした以外は実施例1と同様にして、実施例4を得た。
実施例7は多官能性モノマーとしてHDDAを3重量%用い、実施例8ではTMPT(アルドリッチ社製)を3重量%としたこと以外は実施例1と同様にした。
実施例1〜8の電子線照射を行わなかったものをそれぞれ比較例1〜8とした。また、モノマーを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較例9とした。
以上の実施例1〜8、および比較例1〜9の違いを下記の表1にまとめた。
各シートの所定量を200メッシュのステンレス金網に包み、アセトン液の中で48時間煮沸したのちに、アセトンに溶解したゾル分を除いて残ったゲル分を得る。50℃24時間で乾燥してゲル中のアセトンを除去してゲル分の乾燥重量を測定し、以下の式でゲル分率を計算する。
ゲル分率(%)=(ゲル分乾燥重量)/(初期乾燥重量)×100
また、実施例1、3、7,8および実施例9の電子線照射量とゲル分率の関係を示すグラフを図1に示す。
幅1cm長さ10cmの長方形に、実施例1と比較例9の両サンプルを成型したのちに、本サンプルをチャック間2cm、引張速度10m/分にて破断するときの強度を測定した。
破断強度(kg/cm2)=破断時の引張荷重/(サンプル厚み×サンプル幅)
その結果から電子線照射量と破断強度の関係を表すグラフを図2に示す。
ゲル分率の結果(表1)より、まったく架橋していない比較例1〜9に比べて、実施例1〜8では放射線によって多糖類の分子同士が橋架けしていることがわかった。実施例の中でも、TAICやTMAICなどアリル系のモノマーは、HDDAやTMPT等のモノマーに比べて効率的に分子を架橋していることがわかる。
図2をみてもこのことは明らかで、TAICは1%低濃度でも十分な橋かけを行うことが出来るため、生分解性樹脂としての疎水性多糖類誘導体の橋架けには非常に適したモノマーであることがわかる。
Claims (4)
- 水酸基の置換度が2.0以上3.0以下で、エーテル化、エステル化、アルキル化あるいはアセチル化されたデンプン誘導体、セルロース誘導体、あるいはプルランから選ばれた1種又は複数種からなる疎水性多糖類誘導体に、
トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリメタアリルイソシアヌレート(TMAIC)、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリメタアリルシアヌレート(TMAC)から選ばれるアリル基を有するモノマー、1.6ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、トリメチロールプロパントリメタアクリレート(TMPT)から選ばれるアクリル系、またはメタクリル系のモノマーからなる架橋型多官能性モノマーが添加され、
上記疎水性多糖類誘導体100重量%に対して、上記架橋型多官能性モノマーが0.1〜3重量%配合され、電離性放射線照射で架橋構造とされて、(ゲル分乾燥重量/初期乾燥重量)が10〜90%の架橋構造とされていることを特徴とする生分解性材料。 - 上記疎水性多糖類誘導体は、脂肪酸エステルスターチ、酢酸エステルスターチ、酢酸エステルセルロースあるいはアセチル化プルランからなり、
上記架橋型多官能性モノマーが、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)あるいはトリメタアリルイソシアヌレート(TMAIC)からなり、
ゲル分率が55%以上である請求項1に記載の生分解性材料。 - 請求項1乃至請求項2に記載の生分解性材料の製造方法であって、疎水性多糖類誘導体に架橋型多官能性モノマーを添加して混練し、該混合物を所要形状に成形した後、該成形品を電離性放射線で照射して橋架け反応を生じさせて架橋構造としていることを特徴とする生分解性材料の製造方法。
- 上記電離性放射線の照射量を2〜50kGyとしている請求項3に記載の生分解性材料の製造方法。
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