JP2007063359A - 耐熱性ポリ乳酸およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 工業的な大量生産に適した耐熱性ポリ乳酸の製造方法および耐熱性ポリ乳酸を提供することを課題としている。
【解決手段】 アリル基とグリシジル基の両方を有する多官能性モノマーとポリ乳酸をポリ乳酸の融点以上の温度で混合してポリ乳酸組成物を作製する工程と、前記工程で得られたポリ乳酸組成物を所望の形状に成形する工程と、前記工程で得られたポリ乳酸成形物を架橋する工程とを含むことを特徴とする耐熱性ポリ乳酸の製造方法、および当該製造方法により製造され、ゲル分率が30〜100%であることを特徴とする耐熱性ポリ乳酸を提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、生分解性を有する耐熱性ポリ乳酸の製造方法および該方法で製造された耐熱性ポリ乳酸に関し、該耐熱性ポリ乳酸は、フィルム、容器または筐体などの構造体や部品などのプラスチック製品が利用される分野において、特に使用後の廃棄処理問題の解決を図るために有用な生分解性製品または部品として利用されるものである。
現在、多くのフィルムや容器に利用されている石油合成高分子材料は、加熱廃棄処理に伴う熱および排気ガスによる地球温暖化、さらに燃焼ガスおよび燃焼後の残留物中の毒性物質による食物や健康への悪影響、廃棄埋設処理地の確保など、その廃棄処理過程についてだけでも様々な社会問題が懸念されている。
このような石油合成高分子材料の廃棄処理の問題点を解決する材料として、デンプンやポリ乳酸に代表される生分解性高分子材料が注目されてきている。生分解性高分子材料は、石油合成高分子材料に比べて、燃焼に伴う熱量が少なく、かつ自然環境での分解・再合成のサイクルが保たれる等、生態系を含む地球環境に悪影響を与えない。生分解性高分子材料のなかでも、脂肪族ポリエステル系樹脂は強度や加工性の点で石油合成高分子材料に匹敵する特性を有し、近年特に注目を浴びている素材である。
脂肪族ポリエステル系樹脂のなかでも、特にポリ乳酸は植物から供給されるデンプンから作られ、近年の大量生産によるコストダウンで他の生分解性高分子材料に比べて非常に安価になりつつある点から、現在その応用について多くの検討がなされている。
しかし、ポリ乳酸はガラス転移温度の60℃以上では形状が維持できないくらい軟らかくなるため実用化の妨げとなっている。60℃という温度は自然界における気温や水温としては容易に達しない温度であるが、例えば真夏の締め切った自動車の車内や窓材などでは達し得る温度である。ゆえに、60℃以上になると軟弱になって形成された形状を維持できないという特性の著しい変化は致命的な欠陥である。
このような著しい特性の変化はポリ乳酸の結晶構造に由来している。すなわち、溶融成形後の通常の冷却スピードでは、ポリ乳酸はほとんど結晶化せず、大部分は非結晶となる。ポリ乳酸は融点が160℃と高く、結晶部分は容易に融けないが、大部分を占める非結晶部分はガラス転移温度の60℃付近で拘束が解けて動き始める。そのため、ガラス転移温度の60℃付近で極端な特性変化を生じる。
このガラス転移温度の60℃以上では柔軟になりすぎて強度が低下してしまうという問題を解決するために、電離性放射線や化学開始剤を利用してポリ乳酸を架橋させることが特開2003−313214号公報(特許文献1)で提案されている。
特許文献1に記載の発明では、トリアリルイソシアヌレート(以下「TAIC」という)に代表されるアリル基を有するモノマーを生分解性材料に少量添加し、得られた混練物に電離性放射線を照射することにより生分解性材料を架橋させており、得られた架橋生分解性材料では耐熱性の向上において効果をみることができる。
しかし、当該方法を工業的な大量生産に応用した場合には問題を生じることが判明した、即ち、前記方法では生分解性材料を溶融し、溶融された生分解性材料中にアリル基を有するモノマーを添加し混練するが、生分解性材料の融点のほうがアリル基を有するモノマーの沸点よりも高いか、同程度である場合が多い。この場合には混練中にアリル基を有するモノマーが蒸発し、一部または全て失われることとなる。その結果、生分解性材料の架橋が不十分となり、耐熱性向上の効果が小さくなる。
具体的には、例えば、特許文献1の実施例3に記載されているように生分解性材料としてポリ乳酸を用い、アリル基を有するモノマーとしてTAICを用いた場合、一般的なポリ乳酸の融点である160℃以上、通常は180℃程度に加熱してポリ乳酸を液状に溶融させた状態でTAICを混合する。しかし、TAICの沸点は144℃付近であり、前記加工温度よりはるかに低いため、混合時にTAICは蒸発し一部が失われる。
このようなアリル基を有するモノマーの蒸発による損失は、実験的規模で少量ずつ混合する場合にはあまり問題にならないが、工業的規模で大量に混合する場合、例えばオープンロールによる混合等の場合には蒸発による損失が大きいので致命的な問題となる。
さらに、生分解性材料とアリル基を有するモノマーとの混練を閉鎖的に行い、アリル基を有するモノマーの蒸発による損失を防いだとしても、混練物を成形加工する際には高温になることから、このときにもアリル基を有するモノマーが蒸発し一部または全て失われてしまうという新たな問題が生じる。特に応用範囲の広いフィルムを形成するためのインフレーション加工または押出加工などでは成形物の厚みが薄いため、成形加工後に表面からほとんどのアリル基を有するモノマーが失われてしまい、実質的に架橋物を得られない。
特開2003−313214号公報
本発明は、工業的な大量生産に適した耐熱性ポリ乳酸の製造方法および耐熱性ポリ乳酸を提供することを課題としている。より具体的には、材料の混練を閉鎖的に行う装置等の特殊な設備や、材料の混練時および成形加工時における厳密な温度管理を必要とせず、従来の設備を用いて簡便に効率よくポリ乳酸を架橋させることができる耐熱性ポリ乳酸の製造方法、および厚さに左右されることなく、特に厚さが薄くても高い架橋度を達成でき、より耐熱性に優れたポリ乳酸を提供することを課題としている。
本発明は上記課題を解決するため、第一の発明として、
アリル基とグリシジル基の両方を有する多官能性モノマーとポリ乳酸を、ポリ乳酸の融点以上の温度で混合してポリ乳酸組成物を作製する工程と、
前記工程で得られたポリ乳酸組成物を所望の形状に成形する工程と、
前記工程で得られたポリ乳酸成形物を架橋する工程とを含むことを特徴とする耐熱性ポリ乳酸の製造方を提供している。
第二の発明として、ポリ乳酸と、ポリ乳酸100質量部に対して1〜15質量部の割合でアリル基とグリシジル基の両方を有する多官能性モノマーとを含み、ゲル分率が30〜100%の架橋構造を有していることを特徴とする耐熱性ポリ乳酸を提供している。
本発明者らは鋭意実験検討の結果、アリル基を有するモノマーの代わりに、アリル基とグリシジル基の両方を有する多官能性モノマーを用いれば、材料の混練時および成形加工時において、当該多官能性モノマーが蒸発により損失されることなく、当該多官能性モノマーの働きにより、高い架橋度合いを有する耐熱性ポリ乳酸を得られることを知見した。
本発明で用いるポリ乳酸としては、L−乳酸からなるポリ乳酸、D−乳酸からなるポリ乳酸、L−乳酸とD−乳酸の混合物を重合することにより得られるポリ乳酸、またはこれら2種以上の混合物が挙げられる。なお、ポリ乳酸を構成するモノマーであるL−乳酸またはD−乳酸は化学修飾されていても良い。
本発明で用いるポリ乳酸としては前記のようなホモポリマーが好ましいが、乳酸モノマーまたはラクチドとそれらと共重合可能な他の成分とが共重合されたポリ乳酸コポリマーを用いても良い。コポリマーを形成する前記「他の成分」としては、例えばグリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、5−ヒドロキシ吉草酸もしくは6−ヒドロキシカプロン酸などに代表されるヒドロキシカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、デカンジカルボン酸、テレフタル酸もしくはイソフタル酸などに代表されるジカルボン酸;エチレングリコール、プロパンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、グリセリン、ソルビタンもしくはポリエチレングリコールなどに代表される多価アルコール;グリコリド、ε−カプロラクトンもしくはδ−ブチロラクトンに代表されるラクトン類等が挙げられる。
本発明で用いる多官能性モノマーとしてはアリル基とグリシジル基の両方を有するモノマーであればとくに限定されないが、例えば、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、モノグリシジルジメタアリルイソシアヌレート、ジグリシジルモノメタアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルシアヌレート、モノアリルジグリシジルシアヌレート、モノグリシジルジメタアリルシアヌレート、ジグリシジルモノメタアリルシアヌレート、アリルグリシジルアミン、ジアリルモノグリシジルアミン、モノアリルジグリシジルアミン、モノグリシジルジメタアリルアミン、ジグリシジルモノメタアリルアミン、グリシジルアクリルクロレンテート、アリルグリシジルアジペート、アリルグリシジルカーボネート、アリルグリシジルジメチルアンモニウムクロリド、アリルグリシジルフマレート、アリルグリシジルイソフタレート、アリルグリシジルマロネート、アリルグリシジルオキサレート、アリルグリシジルフタレート、アリルグリシジルプロピルイソシアヌレート、アリルグリシジルセバセート、アリルグリシジルサクシネート、アリルグリシジルテレフタレート、アリルグリシジルタトレートまたはグリシジルメチルアリルフタレートなどが挙げられる。
本発明で用いる多官能性モノマーとしては、ポリ乳酸の溶融温度より十分高い沸点をもつイソシアヌレート系多官能性モノマーが好ましい。なかでも、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート(以下「DA−MGIC」という。)は沸点がTGA測定によると18.5℃、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート(以下「MA−DGIC」という。)の沸点はDA−MGIC以上と予想され、かつ、ポリ乳酸に対する架橋効果が高いために特に好ましい。また、DA−MGICと加熱によって相互に構造変換しうるジアリルモノグリシジルシアヌレート、またはMA−DGICと加熱によって相互に構造変換しうるモノアリルジグリシジルシアヌレートを用いても実質的に効果は同様である。
前記多官能性モノマーはポリ乳酸100質量部に対して1質量部以上15質量部以下の割合で配合されていることが好ましい。多官能性モノマーの配合量を1質量部以上としているのは、多官能性モノマーの配合量が1質量部未満であると、多官能性モノマーによるポリ乳酸の架橋効果が十分に発揮されず、60℃以上の高温時において本発明の耐熱性ポリ乳酸の強度が低下し、最悪の場合形状を維持できなくなる可能性があるからである。一方、多官能性モノマーの配合量を15質量部以下としているのは、多官能性モノマーの配合量が15質量部を超えると、ポリ乳酸に多官能性モノマー全量を均一に混合するのが困難になり、実質的に架橋効果に顕著な差が出なくなるという理由からである。
多官能性モノマーの配合量は、60℃以上の高温時における形状維持効果を確実にするために2質量部以上であることがより好ましく、ポリ乳酸の含有量を多くして生分解性を高めるために10質量部以下であることがより好ましい。
本発明の耐熱性ポリ乳酸を構成するポリ乳酸組成物には、前記ポリ乳酸および多官能性モノマー以外に、本発明の目的に反しない限り、他の成分を配合しても良い。
例えば、ポリ乳酸以外の生分解性樹脂を配合しても良い。ポリ乳酸以外の生分解性樹脂としては、ラクトン樹脂、脂肪族ポリエステル、ポリブチレンアジペートテレフタレート共重合体もしくはポリビニルアルコール等の合成生分解性樹脂、またはポリヒドロキシブチレート・バリレート等の天然直鎖状ポリエステル系樹脂等の天然生分解性樹脂を挙げることができる。
また、生分解性を有する合成高分子および/または天然高分子を、溶融特性を損なわない範囲で混合してもよい。生分解性を有する合成高分子としては、酢酸セルロース、セルロースブチレート、セルロースプロピオネート、硝酸セルロース、硫酸セルロース、セルロースアセテートブチレートもしくは硝酸酢酸セルロース等のセルロースエステル、またはポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸もしくはポリロイシン等のポリペプチドが挙げられる。天然高分子としては、例えば澱粉として、トウモロコシ澱粉、コムギ澱粉もしくはコメ澱粉などの生澱粉、または酢酸エステル化澱粉、メチルエーテル化澱粉もしくはアミロース等の加工澱粉が挙げられる。
さらに、前記組成物には、生分解性樹脂以外の樹脂成分、硬化性オリゴマー、各種安定剤、難燃剤、帯電防止剤、防カビ剤もしくは粘性付与剤等の添加剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉末、タルク、マイカもしくはシリカ等の無機・有機充填材、染料もしくは顔料などの着色剤等を加えることもできる。
上述したポリ乳酸、多官能性モノマーおよび所望により他の成分を例えばバンバリーミキサー、ニーダー、オープンロールなど公知の方法で混ぜ合わせる。本発明においては混練時における多官能性モノマーの蒸発による損失を考慮しなくてもよいので、混練に閉鎖系の装置を使わなければならない等の制約はなくオープン雰囲気下で行うことができる。
混練時の温度はポリ乳酸の融点以上の温度であればよく、混練時間も多官能性モノマーの種類や混練時の温度によって適宜選択すればよい。また、混合順序も特に問わず、全ての成分を一度に混ぜ合わせても良いし、一部を予め混ぜ合わせ、得られた混練物に他の成分を混合しても良い。
上記のようにして得られるポリ乳酸、多官能性モノマーおよび所望により他の成分を含むポリ乳酸組成物を所望の形状に成形する。
成形方法は特に限定されず、公知の方法を用いて良い。例えば、押出成形機、圧縮成形機、真空成形機、ブロー成形機、Tダイ型成形機、射出成形機、インフレーション成形機等の公知の成形機が用いられる。
本発明ではポリ乳酸の融点以上の沸点を有するアリル基とグリシジル基の両方を有する多感能モノマーを配当して、加熱による蒸発を抑制し或いは無くしているため、前記ポリ乳酸組成物の作製する工程はオープン雰囲気下で行い、前記ポリ乳酸組成物を成形する工程はポリ乳酸の融点以上の温度で、インフレーション加工あるいは押出加工してフィルムあるいは該フィルムよりは厚いシートとして成形することができ、実用上で非常に有用なものとすることができる。
前記のようにして得られるポリ乳酸成形物を架橋する方法は公知の方法を用いてよいが、電離性放射線を照射して架橋することが特に好ましい。
具体的には、ポリ乳酸、多官能性モノマーおよび所望により他の成分を含むポリ乳酸組成物を成形することにより得られるポリ乳酸成形物に電離性放射線を照射しポリ乳酸を架橋させることにより、本発明の耐熱性ポリ乳酸を得ることができる。
電離性放射線としてはγ線、エックス線、β線またはα線などが使用できるが、工業的生産にはコバルト−60によるγ線照射や、電子線加速器による電子線照射が好ましい。
電離性放射線の照射は空気を除いた不活性雰囲気下や真空下で行うのが好ましい。電離性放射線の照射によって生成した活性種が空気中の酸素と結合して失活すると架橋効率が低下するためである。
電離性放射線の照射量は10kGy以上200kGy以下であることが好ましい。
多官能性モノマーの量によっては電離性放射線の照射量が1kGy以上10kGy未満であってもポリ乳酸の架橋は認められるが、ポリ乳酸のガラス転移温度である60℃以上の温度における強度低下を防ぐことができる程度にポリ乳酸分子を架橋するには電離性放射線の照射量が10kGy以上であることが好ましい。さらに、ほぼ100%のポリ乳酸分子を架橋するには電離性放射線の照射量が50kGy以上であることがより好ましい。そして、架橋一体化を完全に行うためには、電離性放射線の照射量が80kGy以上であることがより好ましい。
一方、電離性放射線の照射量が200kGy以下であるのは、ポリ乳酸が樹脂単独では放射線で崩壊する性質を有するため、電離性放射線の照射量が200kGyを超えると架橋とは逆に分解を進行させることになるからである。電離性放射線の照射量の上限値は150kGyであることが好ましく、100kGyであることがより好ましい。
本発明においては、電離性放射線を照射する代わりに化学開始剤を用いることによってもポリ乳酸成形物を架橋することができる。より具体的には、多官能性モノマーとポリ乳酸とさらに化学開始剤とを混合してポリ乳酸組成物を作製する工程と、前記工程で得られたポリ乳酸組成物を所望の形状に成形する工程と、前記工程で得られたポリ乳酸成形物を化学開始剤が熱分解する温度まで加熱することによりポリ乳酸を架橋する工程から、本発明の耐熱性ポリ乳酸を作製することができる。
化学開始剤としては、熱分解により過酸化ラジカルを生成する過酸化ジクミル、過酸化プロピオニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−t−ブチル、過酸化ジアシル、過酸化ペラルゴニル、過酸化ミリストイル、過安息香酸−t−ブチルもしくは2,2’−アゾビスイソブチロニトリルなどの過酸化物触媒をはじめとするモノマーの重合を開始する触媒であればいずれでもよい。
架橋させるための温度条件は化学開始剤の種類により適宜選択することができる。架橋は、放射線照射の場合と同様、空気を除いた不活性雰囲気下や真空下で行うのが好ましい。
このようにして製造される本発明の耐熱性ポリ乳酸はゲル分率が30〜100%であることを特徴とする。ゲル分率が30%以上としているのは、ゲル分率が30%未満であるとポリ乳酸のガラス転移温度である60℃以上の温度における強度低下を有効に防ぐことができないからである。より形状維持効果を発揮するためには、本発明の耐熱性ポリ乳酸のゲル分率は60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。
本発明の耐熱性ポリ乳酸は、ポリ乳酸のガラス転移温度である60℃を超える高温時においてもポリ乳酸の架橋ネットワークにより確実に形状を維持することができる。
また、本発明の耐熱性ポリ乳酸の製造においては、一般的なポリ乳酸の融点である160℃以上に加熱してポリ乳酸と多官能性モノマーとを混練しても、多官能性モノマーが蒸発して損失されることを懸念することがない。そのため、閉鎖系の装置など特殊な設備が必要なく、オープンロール等の既存のオープン雰囲気下の設備を用いて工業的規模で大量に混合することができる。
さらに、ポリ乳酸と多官能性モノマーの混合物を成形加工する際に加熱しても多官能性モノマーの蒸発による損失を懸念することがない。特に厚みが薄いフィルムを形成する際のインフレーション加工または押出加工などにおいて、成形加工後に表面から多官能性モノマーが失われてしまうことなく、確実にポリ乳酸を架橋させることができる。
本発明の耐熱性ポリ乳酸は生分解性を有していることから、自然界において生態系に及ぼす影響が極めて少なく、従来のプラスチックが有していた廃棄処理に関わる諸問題を解決できる。しかも、本発明の耐熱性ポリ乳酸は今までにない耐熱性、高温時の形態維持性を有する点から、これまでポリ乳酸を利用できなかった分野への応用が期待できる。また、生体への影響がない点から、生体内外に利用される注射器やカテーテルなどの医療用器具への適用が可能な材料である。
以下に、本発明の実施形態を説明する。
本発明においてはポリ乳酸のホモポリマーを用いる。本発明で用いるポリ乳酸はDSC法により測定される融点が150℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましい。さらに、ASTM D−1238により測定される190℃におけるMFRが1〜5g/10分であることが好ましい。
多官能性モノマーとしてはDA−MGICまたはMA−DGICを用いている。
まず、ポリ乳酸をポリ乳酸を融点以上の温度に加熱し軟化させる。具体的には160℃以上、より好ましくは180℃程度に加熱する。
クロロホルムやクレゾール等のポリ乳酸が溶解しうる溶媒中にポリ乳酸を溶解または分散させるという方法もあるが、溶媒の除去の必要がないことからポリ乳酸を融点以上の温度に加熱し軟化させることが好ましい。ただし、本発明においてはポリ乳酸を溶媒中に溶解または分散させることを否定するものではない。ポリ乳酸を溶媒中に溶解または分散させた場合、溶媒の除去は成形前や成形後など適当なときに行えばよい。
軟化したポリ乳酸に多官能性モノマーを少しずつ添加し、均一になるようにオープンロールなどの公知の混合機を用いて撹拌混合する。このとき、多官能性モノマーの添加量はポリ乳酸100質量部に対し2質量部以上10質量部以下、より好ましくは3質量部以上8質量部以下である。
このようにして、ポリ乳酸と多官能性モノマーを含有するポリ乳酸組成物を調製する。
前記組成物を再び加熱などにより軟化させて、シート、フィルム、繊維、トレイ、容器または袋等の所望の形状に成形する。
ついで、得られたポリ乳酸成形物に電離性放射線を照射し、ポリ乳酸を架橋させ、本発明の耐熱性ポリ乳酸を得る。
電離性放射線は、電子線加速器による電子線照射が好ましい。
放射線照射量は10kGy以上200kGy以下の範囲から多官能性モノマーの配合量等に応じて適宜選択する。放射線照射量は50kGy以上200kGy以下であることが好ましく、80kGy以上150kGy以下であることがより好ましい。
このようにして製造される本発明の耐熱性ポリ乳酸は、架橋物のゲル分率が30〜100%である。本発明の耐熱性ポリ乳酸のゲル分率は実質的に100%であることが特に好ましい。
さらに、本発明の耐熱性ポリ乳酸は耐熱性にも優れており、3cm角で厚さ500μmのシートまたは3cm角で厚さ60μmのフィルムの状態で90℃の水中に5分間浸漬しても全く変形することがない。
以下、本発明について実施例および比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
ポリ乳酸として、ペレット状の三井化学(株)製ポリ乳酸レイシア(LACEA)H−400を使用した。アリル基とグリシジル基の両方を持つ多官能性モノマーの1種であるジアリルモノグリシジルイソシアヌレートである(四国化成工業(株)製「DA−MGIC」)を用意し、ロール温度180℃のロール混合機にて予め溶融させて練った状態の前記ポリ乳酸に少量ずつ添加した。最終的にジアリルモノグリシジルイソシアヌレートの配合量がポリ乳酸100質量部に対して3質量部になるようにした。
この混合物を冷やしたのちにペレタイザーにてペレット化し、ポリ乳酸と多官能性モノマーのペレット状のポリ乳酸組成物を得た。
このポリ乳酸組成物を180℃でシート状に熱プレスした後、水冷で急冷し、500μm厚のシートを作製した。
このシートに対し、空気を除いた不活性雰囲気で電子加速器(加速電圧10MeV、電流量12mA)により電子線を100kGy照射し、本発明の耐熱性ポリ乳酸を得た。
(実施例2)
実施例1で得たペレット状のポリ乳酸組成物を、シリンダ温度および口金温度175℃のインフレーション加工機(口金径60mm)でシリンダ回転速度、巻き上げ速度および空気量を調整しながら成形し、厚み60μmのフィルムを得た。得られたフィルムに対し実施例1と同一条件で電子線照射し、本発明の耐熱性ポリ乳酸を得た。
(比較例1〜4)
多官能性モノマーの代わりにTAICを配合したこと以外は実施例1,2と同様にして、各々比較例1,2とした。
また、電子線照射を行わなかったこと以外は実施例1,2と同様にして、各々比較例3,4とした。
実施例および比較例において、耐熱性ポリ乳酸のゲル分率を下記方法で評価し、耐熱性を調査するために温水浸漬試験を下記方法で行った。
(1)ゲル分率の評価
各耐熱性ポリ乳酸の乾燥質量を正確に計ったのち、200メッシュのステンレス金網に包み、クロロホルム液の中で48時間煮沸したのちに、クロロホルムに溶解したゾル分を除いて残ったゲル分を得た。50℃で24時間乾燥して、ゲル中のクロロホルムを除去し、ゲル分の乾燥質量を測定した。得られた値をもとに下記式に基づきゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=(ゲル分乾燥質量/ポリ乳酸架橋物の乾燥質量)×100
(2)温水浸漬試験
シートおよびフィルムを3cm角にカットし、90℃の水中に5分間浸漬して変形するか否かを観察した。
前記評価の結果を、製造条件の相違点とともに、下記の表1にまとめた。
Figure 2007063359
(評価結果)
実施例ではゲル分率がほぼ100%であり、耐熱性ポリ乳酸中のほとんどの構成分子が架橋により一体化していた。
これらに対して、TAICを混合した比較例1,2では、厚み500μmのプレスシートに加工した比較例1の場合はゲル分率が22%と実施例の約1/5の架橋が認められたが、厚み60μmのフィルムに加工した比較例2では全く架橋していなかった。また、電子線照射をしなかった比較例3,4では架橋がみられなかった。
温水浸漬試験では、ほとんどの構成分子が架橋されている実施例1,2は温水中でも形状を維持するのに対して、比較例1〜4のシートおよびフィルムは収縮して丸まり塊状に変形した。
上記の評価結果から明らかなように、実施例では電子線照射により十分に架橋され耐熱性を獲得しているが、比較例では架橋の度合いが低いか全く架橋されておらず、その結果耐熱性に劣ることが確認出来た。
(電子線照射量とゲル分率の関係)
実施例1と比較例1において電子線照射量を変化させて、電子線照射量とゲル分率の関係を調査した。
その結果を図1に示す。
いずれの電子線照射量においても実施例1のゲル分率は比較例1のゲル分率の4〜6倍の値を示し、多官能性モノマーを配合したポリ乳酸組成物の方がTAICに代表されるアリル基を有するモノマーを配合したポリ乳酸組成物よりも効率的に架橋物を製造できることが確認できた。
また、比較例1〜4では温水浸漬試験で変形が生じたことから耐熱性を確保するためにはゲル分率が30%以上であることが必要であることがわかる。さらに、本発明において前記ゲル分率を得るためには電子線照射量が10〜200kGyであることが好ましく、80〜180kGyであることがより好ましいことが確認出来た。
実施例1と比較例1において電子線照射量を変化させた場合の電子線照射量とゲル分率の関係を示すグラフである。○は実施例1の場合の値を示し、×は比較例1の場合の値を示す。

Claims (8)

  1. アリル基とグリシジル基の両方を有する多官能性モノマーとポリ乳酸をポリ乳酸の融点以上の温度で混合してポリ乳酸組成物を作製する工程と、
    前記工程で得られたポリ乳酸組成物を所望の形状に成形する工程と、
    前記工程で得られたポリ乳酸成形物を架橋する工程とを含むことを特徴とする耐熱性ポリ乳酸の製造方法。
  2. アリル基とグリシジル基の両方を有する多官能性モノマーを、ポリ乳酸100質量部に対して1〜15質量部の割合で配合する請求項1に記載の耐熱性ポリ乳酸の製造方法。
  3. アリル基とグリシジル基の両方を有する多官能性モノマーがモノアリルジグリシジルイソシアヌレートまたはジアリルモノグリシジルイソシアヌレートである請求項1または請求項2に記載の耐熱性ポリ乳酸の製造方法。
  4. 前記架橋する工程が電離性放射線の照射により架橋する工程である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の耐熱性ポリ乳酸の製造方法。
  5. 前記電離性放射線の照射量が10kGy以上200kGy以下である請求項4に記載の耐熱性ポリ乳酸の製造方法。
  6. 前記ポリ乳酸組成物の作製する工程はオープン雰囲気下で行い、
    前記ポリ乳酸組成物を成形する工程はポリ乳酸の融点以上の温度で、インフレーション加工あるいは押出加工してフィルムあるいは該フィルムよりは厚いシートとして成形している請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の耐熱性ポリ乳酸の製造方法。
  7. 請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の製造方法により製造され、ゲル分率が30%以上であることを特徴とする耐熱性ポリ乳酸。
  8. ポリ乳酸と、ポリ乳酸100質量部に対して1〜15質量部の割合でアリル基とグリシジル基の両方を有する多官能性モノマーとを含み、ゲル分率が30%以上の架橋構造を有していることを特徴とする耐熱性ポリ乳酸。
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