JP2006249384A - ポリ乳酸製架橋材の製造方法およびポリ乳酸製架橋材 - Google Patents
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Abstract
【課題】 ポリ乳酸のガラス転移点である60℃以下では一般的なプラスチックとして使用するのに必要とされる100%程度の破断伸びを有し、かつ60℃以上の高温になっても形状を維持することができるポリ乳酸製架橋材を提供する。
【解決手段】 ポリ乳酸に、少なくともロジン誘導体を含む可塑剤と、架橋性モノマーを混練し、該混練物を所要形状に成形し、該成形材に電離性放射線を照射して架橋している。電離性放射線の照射量が10kGy以上100kGy以下とし、前記可塑剤はポリ乳酸100重量%に対して15〜30重量部配合している。
【選択図】なし
【解決手段】 ポリ乳酸に、少なくともロジン誘導体を含む可塑剤と、架橋性モノマーを混練し、該混練物を所要形状に成形し、該成形材に電離性放射線を照射して架橋している。電離性放射線の照射量が10kGy以上100kGy以下とし、前記可塑剤はポリ乳酸100重量%に対して15〜30重量部配合している。
【選択図】なし
Description
本発明は、ポリ乳酸製架橋材の製造方法および該方法から製造されたポリ乳酸製架橋材に関し、フィルム、容器または筐体などの構造体や部品などのプラスチック製品が利用される分野において、特に使用後の廃棄処理問題の解決を図るために有用な生分解性を有するポリ乳酸製架橋材に関するものである。
現在、多くのフィルムや容器に利用されている石油合成高分子材料は、加熱廃棄処理に伴う熱および排気ガスによる地球温暖化、さらに燃焼ガスおよび燃焼後の残留物中の毒性物質による食物や健康への悪影響、廃棄埋設処理地の確保など、その廃棄処理過程についてだけでも様々な社会的問題が懸念されている。
このような石油合成高分子材料の廃棄処理の問題点を解決する材料として、デンプンやポリ乳酸に代表される生分解性高分子材料が注目されてきている。生分解性高分子材料は、石油合成高分子材料に比べて、燃焼に伴う熱量が少なく、かつ自然環境での分解・再合成のサイクルが保たれる等、生態系を含む地球環境に悪影響を与えない。生分解性高分子材料のなかでも、脂肪族ポリエステル系樹脂は強度や加工性の点で石油合成高分子材料に匹敵する特性を有し、近年特に注目を浴びている素材である。脂肪族ポリエステル系樹脂のなかでも、特にポリ乳酸は植物から供給されるデンプンから作られ、近年の大量生産によるコストダウンで他の生分解性高分子材料に比べて非常に安価になりつつある点から、現在その応用について多くの検討がなされている。
このような石油合成高分子材料の廃棄処理の問題点を解決する材料として、デンプンやポリ乳酸に代表される生分解性高分子材料が注目されてきている。生分解性高分子材料は、石油合成高分子材料に比べて、燃焼に伴う熱量が少なく、かつ自然環境での分解・再合成のサイクルが保たれる等、生態系を含む地球環境に悪影響を与えない。生分解性高分子材料のなかでも、脂肪族ポリエステル系樹脂は強度や加工性の点で石油合成高分子材料に匹敵する特性を有し、近年特に注目を浴びている素材である。脂肪族ポリエステル系樹脂のなかでも、特にポリ乳酸は植物から供給されるデンプンから作られ、近年の大量生産によるコストダウンで他の生分解性高分子材料に比べて非常に安価になりつつある点から、現在その応用について多くの検討がなされている。
しかし、ポリ乳酸は、ガラス転移点の60℃以下では非常に硬く、実質的に伸びがほとんどないのに対し、ガラス転移点の60℃以上では逆に形状が維持できないくらい軟らかくなる点が、実用化で問題となる。
60℃という温度は自然界における気温や水温としては容易に達しない温度であるが、例えば、真夏の締め切った自動車の車内や窓材などでは達し得る温度である。ゆえに、60℃以下では硬くて脆いのに対し、60℃以上になると今度は軟弱になって成形された形状を維持できないという強度の著しい変化は、致命的な欠陥となる。
このような強度の変化は、ポリ乳酸の結晶構造に由来している。すなわち、溶融成形後の通常の冷却スピードでは、ポリ乳酸はほとんど結晶化せず、大部分は非結晶となる。ポリ乳酸は融点が160℃と高く、結晶部分は容易には融けないが、大部分を占める非結晶部分はガラス転移点の60℃付近で拘束が解けて動き始める。そのため、ガラス転移点の60℃付近で極端な強度変化を生じる。
60℃という温度は自然界における気温や水温としては容易に達しない温度であるが、例えば、真夏の締め切った自動車の車内や窓材などでは達し得る温度である。ゆえに、60℃以下では硬くて脆いのに対し、60℃以上になると今度は軟弱になって成形された形状を維持できないという強度の著しい変化は、致命的な欠陥となる。
このような強度の変化は、ポリ乳酸の結晶構造に由来している。すなわち、溶融成形後の通常の冷却スピードでは、ポリ乳酸はほとんど結晶化せず、大部分は非結晶となる。ポリ乳酸は融点が160℃と高く、結晶部分は容易には融けないが、大部分を占める非結晶部分はガラス転移点の60℃付近で拘束が解けて動き始める。そのため、ガラス転移点の60℃付近で極端な強度変化を生じる。
ポリ乳酸を含む生分解性樹脂として、例えば、特開2004―277682号公報(特許文献1)に「ポリ乳酸を含む生分解性樹脂100重量部に対しロジン系化合物を3重量部から80重量部配合し、改質された生分解性樹脂」が記載されている。
前記改質された生分解性樹脂は、柔軟性や粘接着性については改良されたとしているが、ポリ乳酸のガラス転移点以上の温度における成形体の形状維持については全く検討されておらず、この点から改良の余地があり、かつ、該特許文献1第(7)頁表2から分かるように、破断伸びが1.7〜3.4%程度であるため、柔軟性の点でも不十分である。
前記改質された生分解性樹脂は、柔軟性や粘接着性については改良されたとしているが、ポリ乳酸のガラス転移点以上の温度における成形体の形状維持については全く検討されておらず、この点から改良の余地があり、かつ、該特許文献1第(7)頁表2から分かるように、破断伸びが1.7〜3.4%程度であるため、柔軟性の点でも不十分である。
本発明は、ガラス転移点である60℃前後での強度変化が少ないポリ乳酸製架橋材、より具体的には、ポリ乳酸のガラス転移点である60℃以下では一般的なプラスチックとして使用するのに必要とされる100%以上の引張破断伸びを有し、汎用石油合成高分子と同等の柔軟性を付与し、かつ、60℃以上の高温になっても形状を維持することができるポリ乳酸製架橋材の製造方法および該方法で製造されたポリ乳酸製架橋材を提供することを課題としている。
本発明は、前記課題を解決するため、第一に、ポリ乳酸に、少なくともロジン誘導体を含む可塑剤と、架橋性モノマーを混練し、該混練物を所要形状に成形し、該成形材に電離性放射線を照射して架橋していることを特徴とするポリ乳酸製架橋材の製造方法を提供している。
本発明者らは、ポリ乳酸のガラス転移点である60℃より高温となった場合でも形状を維持させるためにはポリ乳酸同士の架橋を行えばよいことに想到し、架橋手段について鋭意検討した結果、電離性放射線の照射による架橋が好ましいことを知見した。
よって、本発明では、前記したように、電離性放射線を照射し、ポリ乳酸を架橋させることにより、本発明のポリ乳酸製架橋材を得ている。
よって、本発明では、前記したように、電離性放射線を照射し、ポリ乳酸を架橋させることにより、本発明のポリ乳酸製架橋材を得ている。
電離性放射線としてはγ線、エックス線、β線またはα線などが使用できるが、工業的生産にはコバルト−60によるγ線照射や、電子線加速器による電子線照射が好ましい。
また、電離性放射線の照射量は10kGy以上100kGy以下であることが好ましい。
なお、電離性放射線の照射量は1kGy以上でも架橋させることができるが、10kGy以上とするとポリ乳酸を十分に架橋させることができ、60℃以上の高温時において確実に形状を維持させることができる。一方、電離性放射線の照射量が100kGy以下としているのは、ポリ乳酸が樹脂単独では放射線で崩壊する性質を有するため、電離性放射線の照射量が100kGyを超えると架橋とは逆に分解を進行させることになるからである。
また、電離性放射線の照射量は10kGy以上100kGy以下であることが好ましい。
なお、電離性放射線の照射量は1kGy以上でも架橋させることができるが、10kGy以上とするとポリ乳酸を十分に架橋させることができ、60℃以上の高温時において確実に形状を維持させることができる。一方、電離性放射線の照射量が100kGy以下としているのは、ポリ乳酸が樹脂単独では放射線で崩壊する性質を有するため、電離性放射線の照射量が100kGyを超えると架橋とは逆に分解を進行させることになるからである。
本発明では、第二に、前記製造方法により製造されたポリ乳酸製架橋材を提供しており、該ポリ乳酸製架橋材では、前記したように、ポリ乳酸に、少なくともロジン誘導体を含む可塑剤と、架橋性モノマーを配合している。
前記ロジン誘導体を含む可塑剤は、ポリ乳酸を架橋させた状態でも柔軟性を保持するために配合しており、ポリ乳酸100重量%に対して15重量%以上30重量%以下の割合で配合することが好ましい。
前記可塑剤の配合量を15重量%以上としているのは、可塑剤の配合量が15重量%未満であるとポリ乳酸の柔軟性を十分に改善できないからである。一方、可塑剤の配合量を30重量%以下としているのは、可塑剤の配合量が30重量%を超えると、成形後に可塑剤が析出するという所謂ブリードが起る可能性があることによる。
前記可塑剤の配合量を15重量%以上としているのは、可塑剤の配合量が15重量%未満であるとポリ乳酸の柔軟性を十分に改善できないからである。一方、可塑剤の配合量を30重量%以下としているのは、可塑剤の配合量が30重量%を超えると、成形後に可塑剤が析出するという所謂ブリードが起る可能性があることによる。
ポリ乳酸の可塑剤としては、グリセリン、エチレングリコールもしくはトリアセチルグリセリンなどの常温で液体の可塑剤、またはポリグリコール酸もしくはポリビニルアルコール等の生分解性樹脂などの常温で固体の可塑剤が挙げられる。
しかし、本発明ではポリ乳酸を電離性放射線の照射により架橋することを必須としているため、可塑剤としては電離性放射線に対する耐性や架橋阻害を起こさないことが必要となる。そのため、本発明者らは前記観点から可塑剤についても精査した結果、特にロジン誘導体を主成分とする可塑剤を用いている。
しかし、本発明ではポリ乳酸を電離性放射線の照射により架橋することを必須としているため、可塑剤としては電離性放射線に対する耐性や架橋阻害を起こさないことが必要となる。そのため、本発明者らは前記観点から可塑剤についても精査した結果、特にロジン誘導体を主成分とする可塑剤を用いている。
本発明で用いるロジン誘導体としては、ガムロジン、ウッドロジンもしくはトール油ロジン等の原料ロジン類、該原料ロジンを不均化または水素化処理した安定化ロジンや重合ロジン、その他にロジンエステル類、強化ロジンエステル類、ロジンフェノール類、ロジン変性フェノール樹脂等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いても良い。
ロジンエステル類とは、原料ロジン類とアルコール類とをエステル化反応させたものをいう。ロジンフェノール類とは原料ロジン類にフェノール類を付加させ熱重合させたもの、または次いでエステル化させたものをいう。また、前記ロジン類にエチレンオキシドやプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシド類を付加反応させて得られる化合物も、上記ロジンエステル類と同様に使用できる。
ロジンエステル類とは、原料ロジン類とアルコール類とをエステル化反応させたものをいう。ロジンフェノール類とは原料ロジン類にフェノール類を付加させ熱重合させたもの、または次いでエステル化させたものをいう。また、前記ロジン類にエチレンオキシドやプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシド類を付加反応させて得られる化合物も、上記ロジンエステル類と同様に使用できる。
なお、前記エステル化に用いられるアルコール類としては、
メタノールなどの1価アルコール類;
トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルなどの2価アルコール類又はこれらのモノアルキルエーテル類; グリセリン、ペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコール類などの各種公知のものを例示でき、これらの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
メタノールなどの1価アルコール類;
トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルなどの2価アルコール類又はこれらのモノアルキルエーテル類; グリセリン、ペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコール類などの各種公知のものを例示でき、これらの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
前記可塑剤は、ロジン誘導体を主成分とし、かつ本発明の目的に反しない限り、ロジン誘導体以外の他の成分を含んでいても良い。可塑剤におけるロジン誘導体の含有量は80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
本発明で用いるポリ乳酸としては、L−乳酸からなるポリ乳酸、D−乳酸からなるポリ乳酸、L−乳酸とD−乳酸の混合物を重合することにより得られるポリ乳酸、またはこれら2種以上の混合物が挙げられる。なお、ポリ乳酸を構成するモノマーであるL−乳酸またはD−乳酸は化学修飾されていても良い。
本発明で用いるポリ乳酸としては前記のようなホモポリマーが好ましいが、乳酸モノマーまたはラクチドとそれらと共重合可能な他の成分とが共重合されたポリ乳酸コポリマーを用いても良い。コポリマーを形成する前記「他の成分」としては、例えばグリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などに代表されるヒドロキシカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、デカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などに代表されるジカルボン酸;エチレングリコール、プロパンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、グリセリン、ソルビタン、ポリエチレングリコールなどに代表される多価アルコール;グリコリド、ε−カプロラクトン、δ−ブチロラクトンに代表されるラクトン類等が挙げられる。
本発明で用いるポリ乳酸としては前記のようなホモポリマーが好ましいが、乳酸モノマーまたはラクチドとそれらと共重合可能な他の成分とが共重合されたポリ乳酸コポリマーを用いても良い。コポリマーを形成する前記「他の成分」としては、例えばグリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などに代表されるヒドロキシカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、デカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などに代表されるジカルボン酸;エチレングリコール、プロパンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、グリセリン、ソルビタン、ポリエチレングリコールなどに代表される多価アルコール;グリコリド、ε−カプロラクトン、δ−ブチロラクトンに代表されるラクトン類等が挙げられる。
また、本発明のポリ乳酸製架橋材に配合している架橋性モノマーとしては、電離性放射線の照射により架橋できるモノマーであれば特に制限を受けないが、例えばアクリル系もしくはメタクリル系の架橋性モノマーまたはアリル系架橋性モノマーが挙げられる。
アクリル系もしくはメタクリル系の架橋性モノマーとしては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
アクリル系もしくはメタクリル系の架橋性モノマーとしては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
アリル系架橋性モノマーとしては、トリアリルイソシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメタアリルシアヌレート、ジアリルアミン、トリアリルアミン、ジアクリルクロレンテート、アリルアセテート、アリルベンゾエート、アリルジプロピルイソシアヌレート、アリルオクチルオキサレート、アリルプロピルフタレート、ビチルアリルマレート、ジアリルアジペート、ジアリルカーボネート、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルフマレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルマロネート、ジアリルオキサレート、ジアリルフタレート、ジアリルプロピルイソシアヌレート、ジアリルセバセート、ジアリルサクシネート、ジアリルテレフタレート、ジアリルタトレート、ジメチルアリルフタレート、エチルアリルマレート、メチルアリルフマレート、メチルメタアリルマレートなどが挙げられる。
本発明で用いる架橋性モノマーとしては、比較的低濃度で高い架橋度を得ることができることからアリル系架橋性モノマーが好ましい。なかでもトリアリルイソシアヌレート(以下、TAICという)はポリ乳酸に対する架橋効果が高いために特に好ましい。また、TAICと加熱によって相互に構造変換しうるトリアリルシアヌレートを用いても、実質的に効果は同じである。
本発明では、前記架橋性モノマーをポリ乳酸100重量%に対して3重量%以上8重量%以下の割合で配合することが好ましい。
架橋性モノマーの配合量を0.5重量%としても架橋は認められるが、本発明の目的である60℃以上の高温時の強度維持効果を確実にするためには、3重量%以上が必要である。一方、架橋性モノマーの配合量を8重量%以下としているのは、架橋性モノマーの配合量が8重量%を超えると、ポリ乳酸に架橋性ポリマー全量を均一に混合するのが困難になり、実質的に効果に顕著な差が出なくなるという理由からである。
なお、ポリ乳酸の含有量を多くして生分解性を高めるために5重量%以下であることがより好ましく、よって、3〜5重量%が最も好ましい。
架橋性モノマーの配合量を0.5重量%としても架橋は認められるが、本発明の目的である60℃以上の高温時の強度維持効果を確実にするためには、3重量%以上が必要である。一方、架橋性モノマーの配合量を8重量%以下としているのは、架橋性モノマーの配合量が8重量%を超えると、ポリ乳酸に架橋性ポリマー全量を均一に混合するのが困難になり、実質的に効果に顕著な差が出なくなるという理由からである。
なお、ポリ乳酸の含有量を多くして生分解性を高めるために5重量%以下であることがより好ましく、よって、3〜5重量%が最も好ましい。
前記ポリ乳酸、ロジン誘導体を主成分とする可塑剤および架橋性モノマー以外に、本発明の目的に反しない限り、の他の成分を配合しても良い。
例えば、ポリ乳酸以外の生分解性樹脂を配合しても良い。ポリ乳酸以外の生分解性樹脂としては、ラクトン樹脂、脂肪族ポリエステルもしくはポリビニルアルコール等の合成高分子、またはポリヒドロキシブチレート・バリレート等の天然直鎖状ポリエステル系樹脂等の天然高分子等を挙げることができる。
また、生分解性を有する合成高分子および/または天然高分子を、溶融特性を損なわない範囲で混合してもよい。生分解性を有する合成高分子としては、酢酸セルロース、セルロースブチレート、セルロースプロピオネート、硝酸セルロース、硫酸セルロース、セルロースアセテートブチレートもしくは硝酸酢酸セルロース等のセルロースエステル、またはポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸もしくはポリロイシン等のポリペプチドが挙げられる。天然高分子としては、例えば澱粉として、トウモロコシ澱粉、コムギ澱粉もしくはコメ澱粉などの生澱粉、または酢酸エステル化澱粉、メチルエーテル化澱粉もしくはアミロース等の加工澱粉等が挙げられる。
例えば、ポリ乳酸以外の生分解性樹脂を配合しても良い。ポリ乳酸以外の生分解性樹脂としては、ラクトン樹脂、脂肪族ポリエステルもしくはポリビニルアルコール等の合成高分子、またはポリヒドロキシブチレート・バリレート等の天然直鎖状ポリエステル系樹脂等の天然高分子等を挙げることができる。
また、生分解性を有する合成高分子および/または天然高分子を、溶融特性を損なわない範囲で混合してもよい。生分解性を有する合成高分子としては、酢酸セルロース、セルロースブチレート、セルロースプロピオネート、硝酸セルロース、硫酸セルロース、セルロースアセテートブチレートもしくは硝酸酢酸セルロース等のセルロースエステル、またはポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸もしくはポリロイシン等のポリペプチドが挙げられる。天然高分子としては、例えば澱粉として、トウモロコシ澱粉、コムギ澱粉もしくはコメ澱粉などの生澱粉、または酢酸エステル化澱粉、メチルエーテル化澱粉もしくはアミロース等の加工澱粉等が挙げられる。
さらに、生分解性樹脂以外の樹脂成分、硬化性オリゴマー、各種安定剤、難燃剤、帯電防止剤、防カビ剤もしくは粘性付与剤等の添加剤、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉末、タルク、マイカもしくはシリカ等の無機・有機充填材、染料もしくは顔料等の着色剤等を加えることもできる。
本発明のポリ乳酸製架橋材は、示差走査熱量計による40℃から200℃までの熱量解析において、前記ポリ乳酸のガラス転移点における熱吸収が無いと共に、融点付近の結晶溶融に伴う熱吸収とが無い物性を有するものとすることが好ましい。
前記物性を付与することにより、従来のポリ乳酸からなる成形体で見られるような、ガラス転移点において非結晶部分の拘束が解けて一気に動き始め、ガラス転移点前後で極端な特性変化を生じるという現象が起こりにくいものとすることができる。
前記物性を付与することにより、従来のポリ乳酸からなる成形体で見られるような、ガラス転移点において非結晶部分の拘束が解けて一気に動き始め、ガラス転移点前後で極端な特性変化を生じるという現象が起こりにくいものとすることができる。
本発明のポリ乳酸製架橋材は、ポリ乳酸のガラス転移点である60℃を超える高温時においても確実に形状を維持することができる指標として、ゲル分率が20%以上であり、好ましくは30%以上である。ゲル分率が高くなりすぎると破断伸びが小さくなることから、ゲル分率の上限は50%以下であることがより好ましい。
なお、ゲル分率は、下記実施例に記載の方法で測定する。
なお、ゲル分率は、下記実施例に記載の方法で測定する。
さらに、本発明のポリ乳酸製架橋材は、ポリ乳酸のガラス転移点以下の温度においては汎用プラスチックに匹敵する物性を有することが好ましい。その指標として、ポリ乳酸のガラス転移点以下での破断伸びが100%以上であることが好ましく、200%以上であることがより好ましく、300%以上であることがさらに好ましい。加えて、ポリ乳酸のガラス転移点以下での破断強度が25MPa以上であることが好ましく、30MPa以上であることがより好ましい。
本発明のポリ乳酸製架橋体は、ポリ乳酸のガラス転移点である60℃を超える高温時においても、放射線の照射により架橋しているために、確実に形状を維持することができる。かつ、ポリ乳酸のガラス転移点以下の温度においては汎用プラスチックに匹敵する柔軟性を有する。ゆえに、現在プラスチックが利用されている一般的な用途、特にゴム吸盤など軟質塩化ビニルが利用されている用途への応用が期待できる。また、柔軟性と形状記憶性の両方が必要となる形状記憶製品として利用することも好適である。
さらに、放射線の照射量によりガラス転移温度の制御も可能であるため、製品の硬さが変わる温度も任意に選ぶことが可能であり、玩具等の用途にも応用することができる。
さらに、放射線の照射量によりガラス転移温度の制御も可能であるため、製品の硬さが変わる温度も任意に選ぶことが可能であり、玩具等の用途にも応用することができる。
また、ポリ乳酸を主成分とし生分解性を有していることから、生態系に及ぼす影響が極めて少なく、従来のプラスチックが有していた廃棄処理に関わる諸問題を解決できる。しかも、本発明の架橋性樹脂組成物は透明性を有し、これは他の生分解性樹脂には見られない特性である。また、生体への影響がない点から、生体内外に利用される注射器やカテーテルなどの医療用器具への適用が可能な材料である。
以下、本発明の実施形態を説明する。
本発明のポリ乳酸製架橋材を下記の手順で製造している。
まず、ポリ乳酸を加熱により軟化させるか、あるいはクロロホルムやクレゾール等のポリ乳酸が溶解しうる溶媒中にポリ乳酸を溶解または分散させる。
ついで、ロジン誘導体を主成分とする可塑剤を添加する。添加量は、ポリ乳酸100重量%に対して15重量%以上20重量%以下が好ましい。添加後、可塑剤が均一になるように撹拌混合する。
得られた組成物に、さらに架橋性モノマーを添加する。架橋性モノマーとしてはTAICが特に好ましい。架橋性モノマーの添加量は、ポリ乳酸100重量%に対して5重量%以上8重量%以下が好ましい。
添加後、架橋性モノマーが均一になるように撹拌混合する。
ついで、さらに溶媒を乾燥除去しても良い。
このようにして、成形する樹脂組成物を調製している。
本発明のポリ乳酸製架橋材を下記の手順で製造している。
まず、ポリ乳酸を加熱により軟化させるか、あるいはクロロホルムやクレゾール等のポリ乳酸が溶解しうる溶媒中にポリ乳酸を溶解または分散させる。
ついで、ロジン誘導体を主成分とする可塑剤を添加する。添加量は、ポリ乳酸100重量%に対して15重量%以上20重量%以下が好ましい。添加後、可塑剤が均一になるように撹拌混合する。
得られた組成物に、さらに架橋性モノマーを添加する。架橋性モノマーとしてはTAICが特に好ましい。架橋性モノマーの添加量は、ポリ乳酸100重量%に対して5重量%以上8重量%以下が好ましい。
添加後、架橋性モノマーが均一になるように撹拌混合する。
ついで、さらに溶媒を乾燥除去しても良い。
このようにして、成形する樹脂組成物を調製している。
前記樹脂組成物を再び加熱などにより軟化させて、シート、フィルム、繊維、トレイ、容器または袋等の所望の形状に成形する。この成形は、樹脂組成物を調製したあと、例えば溶媒に溶解した状態のまま続けて行っても良いし、一旦冷却または溶媒を乾燥除去した後に行っても良い。成形方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、押出成形機、圧縮成形機、真空成形機、ブロー成形機、Tダイ型成形機、射出成形機、インフレーション成形機等の公知の成形機が用いられる。
ついで、得られた成形体に電離性放射線を照射し、ポリ乳酸を架橋させ、ポリ乳酸製架橋材を得ている。
電離性放射線は、電子線加速器による電子線照射が好ましい。
放射線照射量は10kGy以上100kGy以下の範囲からロジン誘導体を主成分とする可塑剤の配合量等に応じて適宜選択する。特に、電離性放射線照射後に得られる架橋成形体のゲル分率が20%以上50%以下で、ガラス転移点以下における破断伸びが100%以上となることを目安に選択する。
具体的には、ロジン誘導体を主成分とする可塑剤の配合量がポリ乳酸100重量%に対して15重量%の場合は、照射量が5〜15kGyであることが特に好ましい。ロジン誘導体を主成分とする可塑剤の配合量がポリ乳酸100重量%に対して18重量%の場合は、照射量が20〜55kGyであることが特に好ましい。ロジン誘導体を主成分とする可塑剤の配合量がポリ乳酸100重量%に対して20重量%の場合は、照射量が50〜80kGyであることが特に好ましい。
電離性放射線は、電子線加速器による電子線照射が好ましい。
放射線照射量は10kGy以上100kGy以下の範囲からロジン誘導体を主成分とする可塑剤の配合量等に応じて適宜選択する。特に、電離性放射線照射後に得られる架橋成形体のゲル分率が20%以上50%以下で、ガラス転移点以下における破断伸びが100%以上となることを目安に選択する。
具体的には、ロジン誘導体を主成分とする可塑剤の配合量がポリ乳酸100重量%に対して15重量%の場合は、照射量が5〜15kGyであることが特に好ましい。ロジン誘導体を主成分とする可塑剤の配合量がポリ乳酸100重量%に対して18重量%の場合は、照射量が20〜55kGyであることが特に好ましい。ロジン誘導体を主成分とする可塑剤の配合量がポリ乳酸100重量%に対して20重量%の場合は、照射量が50〜80kGyであることが特に好ましい。
以下、本発明について実施例および比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
ポリ乳酸として、ペレット状の三井化学(株)製ポリ乳酸レイシア(LACEA)H−280を使用した。ロジン誘導体を主成分とする可塑剤である荒川化学工業(株)製「ラクトサイザーGP−2001」とアクリル系架橋性モノマーの1種であるTAICの混合液を用意し、池貝鉄工(株)製PCM30型押出機を用いて、シリンダ温度160℃でポリ乳酸を溶融押出する際に、ペレットの供給部にペリスタポンプにて定速滴下して添加した。其の際、可塑剤と架橋性モノマーは、各々ポリ乳酸100重量%に対して15重量%および7重量%となるように、混合液の混合比率及び樹脂の押出品の製造速度と添加する速度に比率を調整した。押出品は水冷の後にペレタイザーにてペレット化し、ポリ乳酸に可塑剤と架橋性モノマーのペレット状の混練物を得た。
ポリ乳酸として、ペレット状の三井化学(株)製ポリ乳酸レイシア(LACEA)H−280を使用した。ロジン誘導体を主成分とする可塑剤である荒川化学工業(株)製「ラクトサイザーGP−2001」とアクリル系架橋性モノマーの1種であるTAICの混合液を用意し、池貝鉄工(株)製PCM30型押出機を用いて、シリンダ温度160℃でポリ乳酸を溶融押出する際に、ペレットの供給部にペリスタポンプにて定速滴下して添加した。其の際、可塑剤と架橋性モノマーは、各々ポリ乳酸100重量%に対して15重量%および7重量%となるように、混合液の混合比率及び樹脂の押出品の製造速度と添加する速度に比率を調整した。押出品は水冷の後にペレタイザーにてペレット化し、ポリ乳酸に可塑剤と架橋性モノマーのペレット状の混練物を得た。
その後、この混練物を、160℃でシート状に熱プレスした後、水冷にて急冷し、500μm厚のシートを作製した。
このシートを、空気を除いた不活性雰囲気下で電子加速器(加速電圧10MeV、電流量12mA)により電子線を10kGy照射し、シート状の本発明の架橋成形体を得た。
このシートを、空気を除いた不活性雰囲気下で電子加速器(加速電圧10MeV、電流量12mA)により電子線を10kGy照射し、シート状の本発明の架橋成形体を得た。
(実施例2)
可塑剤の配合量を18質量%とし、電子線照射量を30kGyとした以外は、実施例1と同様にしてシート状の本発明の架橋成形体を得た。
(実施例3)
可塑剤の配合量を20質量%とし、電子線照射量を60kGyとした以外は、実施例1と同様にしてシート状の本発明の架橋成形体を得た。
可塑剤の配合量を18質量%とし、電子線照射量を30kGyとした以外は、実施例1と同様にしてシート状の本発明の架橋成形体を得た。
(実施例3)
可塑剤の配合量を20質量%とし、電子線照射量を60kGyとした以外は、実施例1と同様にしてシート状の本発明の架橋成形体を得た。
(比較例1〜3)
可塑剤として、乳酸誘導体を主成分とする可塑剤である荒川化学工業(株)製「ラクトサイザーGP−4001」を用いたこと以外は、実施例1〜3と同様にして、各々比較例1〜3とした。
可塑剤として、乳酸誘導体を主成分とする可塑剤である荒川化学工業(株)製「ラクトサイザーGP−4001」を用いたこと以外は、実施例1〜3と同様にして、各々比較例1〜3とした。
(比較例4、5)
電子線照射量を0kGy(未照射)、150kGyとした以外は、実施例1と同様にして、比較例4、5とした。
電子線照射量を0kGy(未照射)、150kGyとした以外は、実施例1と同様にして、比較例4、5とした。
実施例1〜3および比較例1〜5で得られたシートについて、ゲル分率の測定および引張試験を行った。
(1)ゲル分率の測定
各シートの乾燥重量を正確に計った後、200メッシュのステンレス金網に包み、クロロホルム液の中で48時間煮沸したのちに、クロロホルムに溶解したゾル分を除いて残ったゲル分を得た。50℃で24時間乾燥して、ゲル中のクロロホルムを除去し、ゲル分の乾燥重量を測定した。得られた値をもとに下記式に基づきゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=(ゲル分乾燥重量/シート乾燥重量)×100
(1)ゲル分率の測定
各シートの乾燥重量を正確に計った後、200メッシュのステンレス金網に包み、クロロホルム液の中で48時間煮沸したのちに、クロロホルムに溶解したゾル分を除いて残ったゲル分を得た。50℃で24時間乾燥して、ゲル中のクロロホルムを除去し、ゲル分の乾燥重量を測定した。得られた値をもとに下記式に基づきゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=(ゲル分乾燥重量/シート乾燥重量)×100
(2)引張試験
各シートを幅1cm、長さ10cmの長方形に成形した後、得られたサンプルをチャック間2cm、引張速度10mm/分にて引張って、破断するときの強度と伸びを測定した。
本試験は、温度25℃の環境下で行った。
破断強度(MPa)=破断時の引張強度(kgf)×サンプル幅(cm)×サンプル厚み(cm)×0.098
破断伸び(%)={(破断時のチェック間距離(cm)−2)/2}×100
各シートを幅1cm、長さ10cmの長方形に成形した後、得られたサンプルをチャック間2cm、引張速度10mm/分にて引張って、破断するときの強度と伸びを測定した。
本試験は、温度25℃の環境下で行った。
破断強度(MPa)=破断時の引張強度(kgf)×サンプル幅(cm)×サンプル厚み(cm)×0.098
破断伸び(%)={(破断時のチェック間距離(cm)−2)/2}×100
実施例1〜3で作製したシート状の架橋成形体は、35MPa以上の破断強度に300%以上の破断伸びを持ち、汎用プラスチック並みの強度と伸びを実現していた。さらに、ゲル分率は32〜34%であり、60℃以上の高温になっても形状維持が可能である。
これに対して、乳酸誘導体を主成分とする可塑剤を用いた比較例1〜3のシート、および実施例1と同量の可塑剤を含むが電離放射線を照射しなかった比較例4のシートは、破断伸びは大きいものの、ゲル分率が極端に低く、ほとんど架橋が認められない。そのため、ポリ乳酸のガラス転移点以上の温度、具体的には60℃以上の高温になった場合、形状維持が困難となり得る。
また、電子線照射量を150kGyとした比較例5のシートは、ゲル分率が大きく、高度な架橋が認められるものの、破断伸びがほとんど無かった。
これに対して、乳酸誘導体を主成分とする可塑剤を用いた比較例1〜3のシート、および実施例1と同量の可塑剤を含むが電離放射線を照射しなかった比較例4のシートは、破断伸びは大きいものの、ゲル分率が極端に低く、ほとんど架橋が認められない。そのため、ポリ乳酸のガラス転移点以上の温度、具体的には60℃以上の高温になった場合、形状維持が困難となり得る。
また、電子線照射量を150kGyとした比較例5のシートは、ゲル分率が大きく、高度な架橋が認められるものの、破断伸びがほとんど無かった。
(実施例7)
実施例1と比較例4,5のように、可塑剤の種類および配合量が同じでも電子線照射量によりゲル分率および破断伸びの値が異なる。そこで、電子線照射量と、ゲル分率および破断伸びとの関係を調べるために、以下の実験を行った。
実施例1と全く同様に500μm厚のシートを作製し、当該シートに実施例1と同様に電子線を照射する際に、その電子線照射量を0kGy(未照射)、10kGy、30kGy、60kGy、90kGy、120kGy、150kGyおよび200kGyの8段階に変化させ、8種類の架橋成形材を作製した。
8種類の架橋成形体について、上記の方法でゲル分率および破断伸びを測定した。図1に、電子線照射量とゲル分率および破断伸びとの関係をグラフで示した。図1において斜線で示す領域は本発明の架橋成形体として特に有効な領域を示す。
実施例1と比較例4,5のように、可塑剤の種類および配合量が同じでも電子線照射量によりゲル分率および破断伸びの値が異なる。そこで、電子線照射量と、ゲル分率および破断伸びとの関係を調べるために、以下の実験を行った。
実施例1と全く同様に500μm厚のシートを作製し、当該シートに実施例1と同様に電子線を照射する際に、その電子線照射量を0kGy(未照射)、10kGy、30kGy、60kGy、90kGy、120kGy、150kGyおよび200kGyの8段階に変化させ、8種類の架橋成形材を作製した。
8種類の架橋成形体について、上記の方法でゲル分率および破断伸びを測定した。図1に、電子線照射量とゲル分率および破断伸びとの関係をグラフで示した。図1において斜線で示す領域は本発明の架橋成形体として特に有効な領域を示す。
(実施例8)
可塑剤の配合量を実施例2と同様に18質量%とした以外は、実施例7と全く同様に実験を行った。図2に、電子線照射量とゲル分率および破断伸びとの関係をグラフで示した。図2中において斜線で示す領域は本発明の架橋成形体として特に有効な領域を示す。
可塑剤の配合量を実施例2と同様に18質量%とした以外は、実施例7と全く同様に実験を行った。図2に、電子線照射量とゲル分率および破断伸びとの関係をグラフで示した。図2中において斜線で示す領域は本発明の架橋成形体として特に有効な領域を示す。
(実施例9)
可塑剤の配合量を実施例3と同様に20質量%とした以外は、実施例7と全く同様に実験を行った。図3に、電子線照射量とゲル分率および破断伸びとの関係をグラフで示した。図3中において斜線で示す領域は本発明の架橋成形体として特に有効な領域を示す。
可塑剤の配合量を実施例3と同様に20質量%とした以外は、実施例7と全く同様に実験を行った。図3に、電子線照射量とゲル分率および破断伸びとの関係をグラフで示した。図3中において斜線で示す領域は本発明の架橋成形体として特に有効な領域を示す。
図1〜図3に示したグラフから、一般的なプラスチックとして使用するのに必要な破断伸びを100%以上とし、60℃以上の高温になっても形状維持が可能である実質的に有効な架橋が認められるゲル分率を20%以上50%以下とすると、可塑剤の配合量に応じて最適な電子線照射量があることが分かった。
具体的には、ロジン誘導体を主成分とする可塑剤の配合量が15質量%の場合は、電子照射量が5〜15kGyであることが好ましい。
ロジン誘導体を主成分とする可塑剤の配合量が18質量%の場合は、電子照射量が20〜55kGyであることが好ましい。
ロジン誘導体を主成分とする可塑剤の配合量が20質量%の場合は、電子照射量が50〜80kGyであることが好ましい。
具体的には、ロジン誘導体を主成分とする可塑剤の配合量が15質量%の場合は、電子照射量が5〜15kGyであることが好ましい。
ロジン誘導体を主成分とする可塑剤の配合量が18質量%の場合は、電子照射量が20〜55kGyであることが好ましい。
ロジン誘導体を主成分とする可塑剤の配合量が20質量%の場合は、電子照射量が50〜80kGyであることが好ましい。
(実施例10)
前記実施例3と全く同様に500μm厚のシートを作製し、当該シートに実施例1と同様に電子線を照射する際に、その電子線照射量を(1)0kGy(未照射)、(2)5kGy、(3)10kGy、(4)20kGy、(5)30kGy、(6)60kGy、(7)90kGy、(8)120kGyのの8段階に変化させ、8種類の架橋成形体を作製した。
(1)〜(8)の8種類の架橋成形体について、温度を0℃〜100℃に昇温し、示唆捜査熱量計による熱吸収ピークを測定した。
その結果を図4、図5に示す。図4は昇温1回目の吸熱カーブを模式的に示し、図5は昇温2回目の吸熱カーブを模式的に示す。
図4、5に示すように、60℃付近にあるポリ乳酸のガラス転移点ピークは可塑剤の混入で25℃常温付近まで低下するが、電子線を照射するとピークは照射量に応じて上昇することが確認できた。
前記実施例3と全く同様に500μm厚のシートを作製し、当該シートに実施例1と同様に電子線を照射する際に、その電子線照射量を(1)0kGy(未照射)、(2)5kGy、(3)10kGy、(4)20kGy、(5)30kGy、(6)60kGy、(7)90kGy、(8)120kGyのの8段階に変化させ、8種類の架橋成形体を作製した。
(1)〜(8)の8種類の架橋成形体について、温度を0℃〜100℃に昇温し、示唆捜査熱量計による熱吸収ピークを測定した。
その結果を図4、図5に示す。図4は昇温1回目の吸熱カーブを模式的に示し、図5は昇温2回目の吸熱カーブを模式的に示す。
図4、5に示すように、60℃付近にあるポリ乳酸のガラス転移点ピークは可塑剤の混入で25℃常温付近まで低下するが、電子線を照射するとピークは照射量に応じて上昇することが確認できた。
Claims (8)
- ポリ乳酸に、少なくともロジン誘導体を含む可塑剤と、架橋性モノマーを混練し、該混練物を所要形状に成形し、該成形材に電離性放射線を照射して架橋していることを特徴とするポリ乳酸製架橋材の製造方法。
- 電離性放射線の照射量が10kGy以上100kGy以下である請求項1に記載のポリ乳酸製架橋材の製造方法。
- 請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の方法で製造されたポリ乳酸製架橋材。
- 前記ロジン誘導体を含む可塑剤が、ポリ乳酸100重量%に対して15重量%以上30重量%以下の割合で含まれている請求項3に記載のポリ乳酸製架橋材。
- 前記架橋性モノマーとしてアリル系モノマーが配合され、その配合量はポリ乳酸100重量%に対して3重量%以上8重量%以下とされている請求項3または請求項4に記載のポリ乳酸製架橋材。
- 示差走査熱量計による40℃から200℃までの熱量解析において、前記ポリ乳酸のガラス転移点における熱吸収が無いと共に、融点付近の結晶溶融に伴う熱吸収が無い請求項3乃至請求項5のいずれか1項に記載の特徴とするポリ乳酸製架橋材。
- ゲル分率が20%以上50%未満である請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載のポリ乳酸製架橋材。
- 前記ポリ乳酸のガラス転移点以下での破断伸びが100%以上である請求項3乃至請求項7のいずれか1項に記載のポリ乳酸製架橋材。
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