JP4372489B2 - 周期分極反転構造の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、周期分極反転構造の製造方法に関するものである。
強誘電体の分極を強制的に反転させる分極反転構造を周期的に形成することで、表面弾性波を利用した光周波数変調器や、非線型分極の分極反転を利用した光波長変換素子などを実現することができる。特に、非線型光学材料の非線型分極を周期的に反転することが可能となれば、高効率な波長変換素子を作製することができ、これを用いて固体レーザなどの光を変換すれば、印刷、光情報処理、光応用計測制御などの分野に応用できる小型軽量の短波長光源を構成することができる。
強誘電体非線型光学材料に周期状の分極反転構造を形成する手法としては、いわゆる電圧印加法が知られている。この方法では、強誘電体単結晶の基板の一方の主面に櫛形電極を形成し、他方の主面に一様電極を形成し、両者の間にパルス電圧を印加する。こうした方法は、特許文献1に記載されている。
特開平8−220578
ニオブ酸リチウム単結晶などの非線型光学材料から第二高調波を発生させるためには、単結晶に周期状の分極反転を形成する必要がある。この場合には、例えば図4に示すような櫛形電極20を基板の上面に形成する。櫛形電極20は、周期状に配列されている多数の細長い電極片18と、電極片18を電気的に接続する給電パッド15とを備えている。隣接する電極片18の間には隙間17が形成されている。Pは分極反転周期であり、Wは電極片の幅である。この櫛形電極20に対して、抗電界以上となるように電圧を供給すると、各電極片18の主として先端部分から分極反転部が伸び、周期状分極反転構造が生成する。
本発明者は、例えば周期Pが10μm以上の長周期の周期分極反転構造を形成しようと試みた。このような周期分極反転構造は、例えば光通信用のレーザー光を発生させるのに適している。しかし、この場合、良好な周期分極反転構造が生成しないことを見いだした。すなわち、各電極片18において、電極片の2つの角点18aを起点としてそれぞれ各分極反転部が別々に生成し、各分極反転部がつながらないために、幅Wに対応する分極反転部が生成しないことが判明した。このため、例えば図5に示すように、各角点18a近辺でのみ分極反転部が生成し、隣接する分極反転部の間は非分極反転部として残留した。このような周期分極反転構造では、光の変換効率が低くなる。
本発明の課題は、単分域化している強誘電体単結晶基板に電圧印加法によって分極反転部を製造するのに際して、分極反転周期を大きくした場合であっても良好な分極反転部を形成できるようにすることである。
本発明は、単分域化している強誘電体単結晶基板の一方の主面上に櫛形電極を設け、前記強誘電体単結晶基板の他方の主面側に一様電極を設け、前記櫛形電極と前記一様電極との間に電圧を印加することによって、複数の分極反転部と非分極反転部とが周期的に所定方向に向かって配列された周期分極反転構造を製造する方法であって、
櫛形電極が、各分極反転部に対応して、それぞれ前記所定方向へと向かって配列された複数の電極片を備えている。
そして、周期分極反転構造の周期が10μm以上、40μm以下であり、各分極反転部に対応して配列された複数の電極片の間隔が1.0μm以上、3.0μm以下である。
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明を説明する。
本発明者は、例えば図1に示すように、基板上に櫛形電極14を形成するのに際して、各分極反転部に対応して、それぞれ所定方向Aへと向かって複数の電極片16a、16b、16cを配列することを想到した。すなわち、図1の櫛形電極14においては、隣接する分極反転領域16の間に隙間17が形成されており、各分極反転領域16と隙間17とが矢印A方向に向かって配列されている。従って、生成する周期分極反転構造は、矢印A方向へと向かって伸びる。こうした構造において、更に、各分極反転領域16において、複数の電極片16a、16b、16cを矢印A方向に向かって配列する。tは、隣接する電極片の間隔である。
このような構造によれば、各電極片16a、16b、16cの各角点からそれぞれ分極反転部が延びる(図2参照)。そして、電圧の印加時間や大きさを調整することによって、各分極反転部が互いに連続し、一つの幅広い分極反転部が生成する(図3参照)ことを見いだし、本発明に到達した。
本発明においては、各分極反転部に対応して、所定方向Aへと向かって配列された複数の電極片16a、16b、16cを設ける。ここで、分極反転領域16の形成周期Pが大きい場合ほど、幅広い分極反転部を形成することが一般に難しくなり、従って本発明の作用効果が特に大きい。この観点から、周期Pは10μm以上である。周期Pの上限は、実用的な観点からは、40μm以下であ
各分極反転領域16における電極片の個数は2つ以上であれば特に限定されない。幅広い分極反転部を良好に形成するという観点からは、各分極反転領域における電極片の個数は3つ以上であることが更に好ましい。また、各分極反転領域における電極片の個数の上限は特にない。
隣接する電極片の間隔tを3.0μm以下とすることによって、各電極片から伸びる各分極反転部が互いに連結しやすくなる。この観点からは、tを2.5μm以下とすることが更に好ましい。また、tを1.0μm以上とすることによって、隣接する電極片の短絡を防止し、各電極片の各角点から分極反転部が伸びるように制御しやすい。
各電極片の線幅Wは、各電極片の先端角点から伸びる分極反転部が互いに連結しやすいようにするためには、1.0μm以下とすることが好ましく、0.5μm以下とすることが更に好ましい。
強誘電体単結晶基板を構成する強誘電体単結晶の種類は限定されない。しかし、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体、KLiNb15の各単結晶が特に好ましい。
強誘電体単結晶中には、三次元光導波路の耐光損傷性を更に向上させるために、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、スカンジウム(Sc)及びインジウム(In)からなる群より選ばれる1種以上の金属元素を含有させることができ、マグネシウムが特に好ましい。分極反転特性(条件)が明確であるとの観点からは、ニオブ酸リチウム単結晶、ニオブ酸リチウムータンタル酸リチウム固溶体単結晶、タンタル酸リチウム単結晶にそれぞれマグネシウムを添加したものが特に好ましい。また、強誘電体単結晶中には、ドープ成分として、希土類元素を含有させることができる。この希土類元素は、レーザー発振用の添加元素として作用する。この希土類元素としては、特にNd、Er、Tm、Ho、Dy、Prが好ましい。
ただし、これらの耐光損傷性向上元素や希土類元素を添加した場合には、強誘電体単結晶の導電性が高くなり、周期状分極反転部が櫛形電極の全体にわたって一様に形成されにくくなる。以下の実施形態は、こうした場合に特に好適である。
すなわち、櫛型電極をパターニングした全域にわたって分極反転構造を一様に形成させるために、例えば図6に示すような別体の下地基板13を積層する。例えばMgOドープニオブ酸リチウム単結晶からなる基板2の一方の主面1aには櫛形電極14を形成し、基板2の他方の主面2bには一様電極4が形成されている。この基板2の下に、別体の下地基板13を積層する。下地基板13の本体5の一方の主面5a上には第一の導電膜6を形成し、本体5の他方の主面5b上には第二の導電膜7を形成する。本例では、第一の導電膜6と一様電極4とを接触させることで両者を電気的に接続したが、第一の導電膜6と一様電極4との間に別に導電物(好ましくは導電膜)を介在させることによって、両者を電気的に接続することができる。
そして、例えば図7、図8に示すように、容器9内に絶縁オイル8を収容し、絶縁オイル8内に積層体1を浸漬する。この際、櫛形電極14には電線11を接続し、第二の導電膜7には電線10を接続する。電線10および11は高電圧源12に接続されている。この状態で、所定電圧、パルス幅のパルス状電圧を印加すると、櫛形電極14と一様電極4との間に周期状分極反転部が形成される。
ここで、下地基板13をも積層し、下地基板13上の導電膜6、7を介して電圧を印加することによって、櫛形電極3の全体にわたって周期状分極反転部が一様に生成しやすくなる。
櫛形電極、一様電極の材質は限定されないが、Al、Au、Ag、Cr、Cu、Ni、Ni-Cr、Pd、Taが好ましい。
第一の導電膜、第二の導電膜の材質は、限定されないが、Al、Au、Ag、Cr、Cu、Ni、Ni-Cr、Pd、Taが好ましい。
下地基板の基板本体5の材質は絶縁性が高く、材質内の体積抵抗率が均一で、所定の構造強度を有していることが必要である。この材質としては、シリコン、サファイア、水晶、ガラス、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体MgOドープニオブ酸リチウム、MgOドープタンタル酸リチウム、ZnOドープニオブ酸リチウム、ZnOドープタンタル酸リチウムを例示できる。
基板2としては、いわゆるZカット基板,オフカットX板、オフカットY板を使用することが特に好適である。オフカットX板、オフカットY板を使用する場合には、オフカット角度は特に限定されない。特に好ましくは、オフカット角度は1°以上であり、あるいは、20°以下である。
印加電圧の大きさは3kV〜8kVが好ましく、パルス周波数は1Hz〜1000Hzが好ましい。
本発明によって形成された周期状分極反転部は、このような分極反転部を有する任意の光学デバイスに対して適用できる。このような光学デバイスは、例えば、第二高調波発生素子等の高調波発生素子を含む。第二高調波発生素子として使用した場合には、高調波の波長は330−1600nmが好ましい。
比較例1
図6に示すような積層体1を作成し、図7、図8に示すような装置を使用して電圧印加法により周期状分極反転構造を形成した。ただし、図4に示すようなパターンの櫛形電極20を形成した。
具体的には、MgOをドープしたニオブ酸リチウム単結晶からなる、厚さ0.5mmのzカット基板2と、5度オフyカットの0.5mm厚さの基板5とを用意し、それぞれzカット基板2の+z面2aに櫛型電極20をパターニングし、-z面2bには一様電極4を成膜した。5度オフyカット基板5については上下面5a、5bともに一様電極6、7を形成した。分極反転周期Pを18μmとした。各電極片の線幅Wは7μmとした。各電極の材質はTaを使用した。電極厚さは全て1000オングストロームとした。また、zカット基板2の櫛型電極20の表面に、SiO2を2000オングストローム成膜した。図6に示すように、上側にzカット基板2を、下側に5度オフカット基板5を積層し、積層体1を得た。積層体1を、図7に示すように絶縁オイル8内に浸漬し、6kV、パルス幅10Hzのパルス状電圧を、パルス間隔約1秒で印加した。
分極反転が形成されているのかどうかを確認するため、弗硝酸混合液(弗酸:硝酸=1:2)で、ウェハ表面の+z面をウエットエッチングした。図5はこの顕微鏡写真である。図5に示すように、写真の白っぽく見えるところが反転部であり、櫛型電極の角点近傍にしか反転構造が得られていないことが分かる。各電極片の角点近傍には分極反転部が生成したが、各角点から伸びる分極反転部が互いに連結しなかった。電圧印加の条件は、電圧を上げたり、パルスの幅を変えたり、種々試みたが、反転部の大きさが多少増減するものの、電極片の全幅にわたって分極反転部を形成することが困難であった。
比較例1と同様にして、電圧印加法により周期状分極反転構造を形成した。ただし、図1に示すようなパターンの櫛形電極14を形成した。
具体的には、MgOをドープしたニオブ酸リチウム単結晶からなる、厚さ0.5mmのzカット基板2と、5度オフyカットの0.5mm厚さの基板5とを用意し、それぞれzカット基板2の+z面2aに櫛型電極14をパターニングし、-z面2bには一様電極4を成膜した。5度オフyカット基板5については上下面5a、5bともに一様電極6、7を形成した。分極反転周期Pを18μmとした。分極反転部16間の隙間の幅は9μmとした。各電極片6a、6b、6cの線幅Wはそれぞれ0.3μmとし、隣接する各電極片の隙間は約2.5μmとした。電極の材質はTaを使用した。電極厚さは全て1000オングストロームとした。また、zカット基板2の櫛型電極14の表面に、SiO2を2000オングストローム成膜した。図6に示すように、上側にzカット基板2を、下側に5度オフカット基板5を積層し、積層体1を得た。積層体1を、図7に示すように絶縁オイル8内に浸漬し、6kV、パルス幅10Hzのパルス状電圧を、パルス間隔約1秒で印加した。
図2に、弗硝酸でエッチング後ウェハの+z面を観察した結果を示す。電極の根元から先端にかけて周期状の分極反転が形成されていることが分かる。但し、一部で反転ができていない領域がある。そこで、電圧印加の条件として、印加するパルスの回数を増やし、2000回印加した。結果を図3に示す。図2とは拡大率が異なるが、櫛型電極の全域に渡って、周期状の分極反転が形成されていることが確認できる。
本発明の実施形態に係る櫛形電極14を示す平面図である。 実施例1で形成された分極反転部のパターン例を示す顕微鏡写真である。 実施例1で形成された分極反転部のパターン例を示す顕微鏡写真である。 比較例に係る櫛形電極20を示す平面図である。 比較例で形成された分極反転部のパターン例を示す顕微鏡写真である。 基板2と5との積層体1を示す正面図である。 積層体1に電圧印加法によって分極反転部を形成するための装置を示す模式図である。 図7の装置の上面図である。
符号の説明
1 積層体 2 強誘電体単結晶基板 2a 基板2の一方の主面 2b 基板2の他方の主面 4 一様電極 5 下地基板の基板本体 5a 基板本体5の一方の主面 5b 基板本体5の他方の主面 6 第一の導電膜 7 第二の導電膜 8 絶縁オイル 9 容器 12 高電圧源 13 下地基板 14 本発明の実施形態に係る櫛形電極 15 給電パッド 16 櫛形電極の分極反転領域 16a、16b、16c 電極片 17 分極反転部の隙間 18 比較例の電極片 20 比較例の櫛形電極 A 所定方向 P 分極反転周期 W 電極片の線幅 t 電極片の間隔

Claims (5)

  1. 単分域化している強誘電体単結晶基板の一方の主面上に櫛形電極を設け、前記強誘電体単結晶基板の他方の主面側に一様電極を設け、前記櫛形電極と前記一様電極との間に電圧を印加することによって、複数の分極反転部と非分極反転部とが周期的に所定方向に向かって配列された周期分極反転構造を製造する方法であって、
    前記櫛形電極が、各分極反転部に対応して、それぞれ前記所定方向へと向かって配列された複数の電極片を備えており、前記周期分極反転構造の周期が10μm以上、40μm以下であり、各分極反転部に対応して配列された複数の前記電極片の間隔が1.0μm以上、3.0μm以下であることを特徴とする、周期分極反転構造の製造方法。
  2. 前記強誘電体単結晶基板下に別体の下地基板を積層し、この下地基板の一方の主面上に第一の導電膜を形成し、前記下地基板の他方の主面上に第二の導電膜を形成し、前記第一の導電膜を前記一様電極と電気的に接続し、前記櫛形電極と前記第二の導電膜との間に電圧を印加することによって、この櫛形電極と前記一様電極との間に電圧を印加することを特徴とする、請求項1記載の方法。
  3. 前記強誘電体単結晶基板が、ニオブ酸リチウム単結晶、タンタル酸リチウム単結晶、およびニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体単結晶からなる群より選ばれた単結晶からなることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
  4. 前記単結晶に、酸化マグネシウムと酸化亜鉛との少なくとも一方が含有されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の方法。
  5. 前記強誘電体単結晶基板がZカット基板であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載の方法。
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