JP4100937B2 - 波長変換素子および周期分極反転構造の形成方法 - Google Patents

波長変換素子および周期分極反転構造の形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば疑似位相整合方式の第二高調波発生デバイスに適した光導波路素子の製造に利用できる、周期分極反転構造の形成に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光情報処理技術全般において、高密度光記録を実現するためには、波長400−430nm程度の青色光を,30mW以上の出力で安定的に発振する青色光レーザーが要望されており、開発競争が行われている。青色光光源としては、赤色光を基本波として発振するレーザーと、QPMグレーディングが形成された第二高調波発生素子とを組み合わせた光導波路型の波長変換素子が期待されている。
【0003】
波長変換素子においては、所定の周期を有する周期分極反転構造によって、QPMグレーディングが実現されており、周期分極反転構造の形成方法としては、いわゆる電圧印加法が知られている。図9は、電圧印加法によって、強誘電体単結晶の基板1内に周期分極反転構造20を形成するプロセスを模式的に示す斜視図である。
【0004】
この方法においては、強誘電体単結晶からなるオフカット基板1を使用する。この基板を構成する強誘電体単結晶の方向Bは、表面1Aおよび裏面1Bに対して所定角度、例えば5°傾斜しているので、この基板1は、オフカット基板と呼ばれている。
【0005】
基板1の表面1Aに第一の電極30および第三の電極6を形成し、裏面1Bに第二の電極(一様電極)5を形成する。第一の電極30は、周期的に配列された複数の細長い電極片34と、多数の電極片34を接続する細長い給電電極32とからなる櫛型電極である。第三の電極6は細長い対向電極片6Aからなっており、対向電極片6Aは、電極片34の先端に対向するように設けられている。
【0006】
最初に基板1の全体を方向B、すなわち非分極反転方向4Bに分極させておく。そして、例えば第一の電極30と第三の電極6との間にV1の電圧を印加し、第一の電極30と第二の電極5との間にV2の電圧を印加すると、分極反転部22が各電極片34の先端から方向Bと平行に徐々に進展する。分極反転部22の分極の方向である分極反転方向4Aは、非分極反転方向4Bとは正反対になる。なお、電極片34に対応しない位置、すなわち隣接する分極反転部22の間には、分極反転していない非分極反転部24が形成されている。このようして、分極反転部22と非分極反転部24とが交互に配列された周期分極反転構造20が形成される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
周期分極反転構造20の周期は、第一の電極30の電極片34により決定されるので、分極反転の周期の分解能を向上させるためには、電極片34の周期の分解能を向上させる必要がある。各電極片34はマスク(レクチル)製造装置のパターニングによって形成されるので、電極片34の周期の分解能は、パターニングの分解能により定まる。すなわち、周期分極反転構造20における分解能は、マスク製造装置のパターニングの分解能により定まる。
【0008】
しかし、マスク製造装置のパターニングの分解能を向上させようとすると、コストが大幅にアップしてしまう。また、他の方法としては、ステッパ露光装置を使用すれば、マスク製造装置を使用した場合に比べて分解能の高い電極片34を有する第一の電極30を製造できるが、やはりコストが大幅にアップしてしまう。
【0009】
本発明の課題は、変換効率の低減を抑制しつつ、低コストでより分解能の高い周期分極反転構造を形成することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を解決すべく、本発明は、光導波路と、この光導波路内に形成されている周期分極反転構造とを備えている波長変換素子であって、周期分極反転構造は、交互に配列された分極反転部と非分極反転部とを有し、設計幅の異なる第一の分極反転部と第二の分極反転部とが交互に配列されている分極反転部は、マスクを用いて形成された電極を用いて形成され、分極反転部は、設計幅の異なる第一の分極反転部と第二の分極反転部とを含み、第一の分極反転部の設計幅と第二の分極反転部の設計幅との差分がマスクの精度の奇数倍であり、非分極反転部の設計幅が略一定である。
【0011】
また、本発明は、第一の電極を強誘電性材料からなる基板の一表面上に配置し、基板上の、当該第一の電極に対向する位置に第二の電極を配置し、第一の電極と第二の電極との間に電圧を印加することによって周期分極反転構造を形成する方法であって、第一の電極は、設計幅の異なる交互に配列された一方の電極片および他方の電極片を有する。第一の電極をマスクを用いて形成する。第一の電極は、設計幅の異なる一方の電極片および他方の電極片を有しており、一方の電極片の設計幅と他方の電極片の設計幅との差分がマスクの精度の奇数倍であり、第一の電極において隣接する一方の電極片と他方の電極片の間隔が略一定である。
また、本発明では、第一の電極をマスクを用いて形成し、第一の電極において電極片の設計幅が一定であり、隣接する電極片の間に設計幅の異なる第一の離間部および第二の離間部が交互に形成されており、第一の離間部および設計幅と第二の離間部の設計幅との差分がマスクの精度の奇数倍である。
【0012】
これにより、変換効率の低減を抑制しつつ、低コストでより分解能の高い周期分極反転構造を形成することができる。なお、各分極反転部、各電極片などの各設計幅とは、電極片を成形するための前記マスクの幅で設計上決まる各幅を意味している。マスクの幅の精度は、露光装置の種類によって定まる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る周期分極反転構造20を示す図である。周期分極反転構造20は、基板1に設けられている。基板1は、強誘電体単結晶で構成されている。基板1は、固定用基板7上に、接合層8を介して接着されている。
【0014】
基板1の一表面1Bには、平板部16、17とリッジ型の光導波路素子15とが形成されている。平板部16の16Aおよび平板部17の17Aは加工面である。光導波路素子15には、光導波路15Aが設けられており、光導波路15Aには、分極反転部22と非分極反転部24とが交互に配列された周期分極反転構造20が形成されている。
【0015】
分極反転部22は、分極反転方向4Aに分極しており、非分極反転部24は、非分極反転方向4Bに分極している。複数の分極反転部22および非分極反転部24は、それぞれ互いに平行に形成されている。
【0016】
さらに、分極反転部22は、第一の分極反転部22Aと第二の分極反転部22Bとを有し、第一の分極反転部22Aと第二の分極反転部22Bは交互に配列されている。なお、第一の分極反転部22Aは、第二の分極反転部22Bに比べて設計幅が狭い。ここで、設計幅とは、分極反転方向4Aに垂直な方向の長さである。
【0017】
図2は、図1に示す周期分極反転構造20の第一の分極反転部22Aおよび第二の分極反転部22B付近の拡大図である。図2に示すように周期分極反転構造20は、第一の分極反転部22A、第一の非分極反転部24A、第二の分極反転部22Bおよび第二の非分極反転部24Bの順の組を繰り返し単位とした配列を有している。ここで、第一の分極反転部22Aの設計幅はA、第二の分極反転部22Bの設計幅は(A+C)、第一の非分極反転部24Aおよび第二の非分極反転部24Bの設計幅はともにBである。すなわち、第二の分極反転部22Bは、第一の分極反転部22Aに比べてCだけ設計幅が広い。
【0018】
図2を参照して、周期分極反転構造20の周期について説明する。周期分極反転構造20の1周期は、分極反転部22の配列間隔によって定められる。ここで配列間隔とは、分極反転部22の設計幅の中心位置から、隣接する非分極反転部24を介して次に配列される分極反転部22の設計幅の中心位置までの長さである。
【0019】
本実施の形態に係る周期分極反転構造20における第一の分極反転部22Aから第二の分極反転部22Bまでの第一の間隔28Aは、
(A/2+B+(A+C)/2)=A+B+C/2
となる。同様に、第二の分極反転部22Bから第一の分極反転部22Aまでの第二の間隔28Bは、
((A+C)/2+B+A/2)=A+B+C/2
である。
【0020】
このように、本実施の形態に係る周期分極反転構造20においては、設計幅の異なる第一の分極反転部22Aと第二の分極反転部22Bが配列されているが、第一の分極反転部22Aと第二の分極反転部22Bの間隔は、一定(A+B+C/2)である。すなわち、本実施の形態の周期分極反転構造20は、設計上は、周期(A+B+C/2)を有する。
【0021】
また、周期分極反転構造20の周期は(A+B+C/2)であるから、例えば第一の分極反転部22A、第二の分極反転部22B、第一の非分極反転部24Aおよび第二の非分極反転部24Bの分解能がいずれもxであって、かつCがxの奇数倍である場合に、周期分極反転構造20の周期(A+B+C/2)の分解能はx/2となる。このように、本実施の形態における周期分極反転構造20は、第一の分極反転部22Aおよび第二の分極反転部22Bの分解能よりも高い分解能の周期を有することができる。
【0022】
例えば、A=0.3μm、B=2.5μmおよびC=0.1μmである場合、周期分極反転構造20の周期(A+B+C/2)は、2.85μmとなる。このように、分解能が0.1μmの第一の分極反転部22Aおよび第二の分極反転部22Bを配列した周期分極反転構造20において、分解能0.05μmの周期を形成することができる。
【0023】
以下、本実施の形態における周期分極反転構造20の形成方法を説明する。周期分極反転構造20は、図9において説明した電圧印加法によって強誘電体単結晶で構成された基板1に形成される。
【0024】
図3は、本実施の形態における周期分極反転構造20の形成方法を説明するための図である。周期分極反転構造20の形成に用いられる第一の電極30は、設計幅の異なる一方の電極片34Aと、他方の電極片34Bと、複数の一方の電極片34Aおよび複数の他方の電極片34Bをそれぞれ接続する給電電極32とを有している。一方の電極片34Aと他方の電極片34Bは、分極反転方向4Aに垂直な方向に交互に配列されている。
【0025】
例えば第一の電極30と第三の電極6との間にV1の電圧を印加し、第一の電極30と第二の電極5との間にV2の電圧を印加すると、第一の分極反転部22Aおよび第二の分極反転部22Bがそれぞれ一方の電極片34Aおよび他方の電極片34Bの先端から分極反転方向4Aに徐々に進展する。これによって、分極反転部22と非分極反転部24とが交互に配列された周期分極反転構造20が形成される。この周期分極反転構造20において、さらに第一の分極反転部22Aと第二の分極反転部22Bとが交互に配列されている。
【0026】
図4は、図3に示す第一の電極30の一方の電極片34Aおよび他方の電極片34B付近の拡大図である。図4に示すように、第一の電極30においては、給電電極32には一方の電極片34Aと他方の電極片34Bとが交互に接続されている。また、一方の電極片34Aと他方の電極片34Bの間には、これらを離間する第一の離間部38Aおよび第二の離間部38Bが交互に設けられている。すなわち、第一の電極30においては、一方の電極片34A、第一の離間部38A、他方の電極片34Bおよび第二の離間部38Bの順の組を繰り返し単位とした配列が繰り返されている。
【0027】
ここで、一方の電極片34Aの設計幅はA、他方の電極片34Bの設計幅は(A+C)、第一の離間部38Aおよび第二の離間部38Bの設計幅はBである。すなわち、他方の電極片34Bは、一方の電極片34Aに比べてCだけ設計幅が広い。このように、設計幅の異なる一方の電極片34Aおよび他方の電極片34Bを有する第一の電極30を用いることによって、設計幅の異なる第一の分極反転部22Aおよび第二の分極反転部22Bを有する周期分極反転構造20を形成することができる。
【0028】
第一の電極30は、マスクを用いたパターニングによって形成されるので、第一の電極30における一方の電極片34Aの設計幅A、第一の離間部38Aおよび第二の離間部38Bの設計幅Bおよび他方の電極片34Bの設計幅(B+C)の分解能は、いずれもパターニングの分解能によって定まる。
【0029】
すなわち、マスクの分解能がxであって、かつCがxの奇数倍である場合に、第一の電極30の一方の電極片34Aおよび他方の電極片34Bの分解能は、x/2となる。従って、この第一の電極30を用いることにより、分解能がx/2の周期を有する周期分極反転構造20が形成されると期待される。従って、例えばマスク製造装置におけるマスクの分解能が0.1μmであって、一方の電極片34Aと他方の電極片34Bとの差分Cが0.1μmの奇数倍である場合には、分解能0.05μmの周期の周期分極反転構造20を形成することができる。また例えば、マスクの分解能が0.01μmであって、一方の電極片34Aと他方の電極片34Bとの差分Cが0.01μmの奇数倍である場合には、分解能0.005μmの周期の周期分極反転構造20を形成することができる。このように、差分Cが、マスクの分解能の奇数倍になるような一方の電極片34Aおよび他方の電極片34Bを有する第一の電極30を用いることにより、マスクの分解能の半分の分解能の周期分極反転構造20を形成することができる。
【0030】
図5は、図3および図4において説明した第一の電極30と形状の異なる第一の電極40の要部拡大図である。図5に示す第一の電極40においては、一方の電極片44Aと他方の電極片44Bの設計幅は等しく、一方の電極片44Aと他方の電極片44Bの間に設けられた第一の離間部48Aと第二の離間部48Bの設計幅が異なる。一方の電極片44Aおよび他方の電極片44Bの設計幅はA、第一の離間部48Aの設計幅はB、第二の離間部48Bの設計幅は、(B+C)である。すなわち、第二の離間部48Bは、第一の離間部48Aに比べてCだけ設計幅が広い。
【0031】
また、電極片44の第一の間隔47Aは、
(A/2+B+A/2)=A+B
である。また、第二の間隔47Bは、
((A/2+(B+C)+A/2)=A+B+C
である。このように、第一の間隔47Aと第二の間隔47Bは異なっているが、2つの間隔の平均は、(A+B+C/2)で、本実施の形態における第一の電極30と等しい。従って、第一の電極40においても、第一の電極30と同様に、マスク製造装置におけるパターニングの分解能の半分の分解能の周期を有する周期分極反転構造を形成することが可能である。
【0032】
本実施の形態における周期分極反転構造20は、図5に示す第一の電極40を用いて形成された周期分極反転構造に比べて周期の精度が高く、またduty比の良好なQPMグレーディングが得られ、数%の出力高の第二高調波発生素子を形成することができる。この理由は、おそらく、実際に形成される各電極片の幅が、設計値と少しずれた値となるためと思われる。例えば、一方の電極片の設計幅と他方の電極片の設計幅との差を0.1μmに設定したときに、この設計値が忠実に電極片に転写されると、変換効率がかなり低下するはずである。しかし、実際に形成された電極片の幅の差は、0.1μmよりもかなり小さくなり、この結果、変換効率の低下が抑制されるものと考えられる。
【0033】
第一の電極においては、一方の電極片および他方の電極片が隣りに配列される。
【0034】
また、周期分極反転構造においては、第一の分極反転部および第二の分極反転部が隣りに配列され
【0035】
高出力を得るという点からは、一方の電極片の数m、第一の分極反転部の数m、他方の電極片の数n、第二の分極反転部の数nは、それぞれ10以下であることが好ましく、m+nは15以下であることが好ましい。
【0036】
図6は、図3に示した電圧印加工程により周期分極反転構造20が形成された状態の基板1を示す。図6に示すように、周期分極反転構造20に沿って、光導波路15Aを基板1内に形成できる。この形成方法は特に限定されないが、チタン内拡散法、プロトン交換法が好ましい。
【0037】
他の方法においては、図7に示すように、基板1の表面1Aに、固定用基板7を接合層8を介して接合する。好ましくは、この前に基板1から第一の電極30、第二の電極5および第三の電極6を除去しておく。図7の段階では、基板1の表面1Aの近傍に周期分極反転構造20が形成されている。
【0038】
図8を参照して、次の工程を説明する。周期分極反転構造20が形成された後、基板1の裏面1B側を研削加工し、基板1を薄くする。この段階では、光を厚さ方向に閉じ込め得る寸法まで基板1を薄くすることは困難である。このため、図1で示したリッジ型の光導波路15Aを残して基板1を加工し、除去する。すなわち、図1に示す光導波路15Aの両端となる縁15Bから縁15Cまでを残して、その両端の除去部18Bおよび除去部18Cが除去される。この段階では、除去部18Bおよび除去部18Cが除去された後の基板1に図1に示した非常に薄い平板部16、17が残される。この加工の際に光導波路15Aの厚さを調節する。こうした加工は、例えばダイシング加工装置やレーザー加工装置によって可能であるが、ダイシング加工のような機械的加工が好ましい。
【0039】
上記の実施形態においては、基板1を接合層8によって固定用基板7に対して接着している。この場合には、接合層8の屈折率は基板1の屈折率よりも低いことが好ましく、また接合層8は非晶質であることが好ましい。接合層8の屈折率と基板1の屈折率との屈折率差は、5%以上であることが好ましく、10%以上であることが更に好ましい。
【0040】
接合層8の材質は、有機樹脂やガラス(特に好ましくは低融点ガラス)が好ましい。有機樹脂としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン樹脂等を例示できる。ガラスとしては、酸化珪素を主成分とする低融点ガラスが好ましい。
【0041】
なお、強誘電体単結晶の種類は限定されない。しかし、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体、KLiNb15の各単結晶が特に好ましい。
【0042】
強誘電体単結晶中には、三次元光導波路の耐光損傷性を更に向上させるために、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、スカンジウム(Sc)及びインジウム(In)からなる群より選ばれる1種以上の金属元素を含有させることができ、マグネシウムが特に好ましい。
【0043】
分極反転特性(条件)が明確であるとの観点からは、ニオブ酸リチウム単結晶、ニオブ酸リチウムータンタル酸リチウム固溶体単結晶、又はこれらにマグネシウムを添加したものが特に好ましい。
【0044】
強誘電体単結晶中には、ドープ成分として、希土類元素を含有させることができる。この希土類元素は、レーザー発振用の添加元素として作用する。この希土類元素としては、特にNd、Er、Tm、Ho、Dy、Prが好ましい。
【0045】
周期分極反転構造20を形成するためのマスクパターンを形成する材質としては、レジスト、SiO、Ta等を例示できる。マスクパターンを形成する方法としては、フォトリソグラフィー法を例示できる。
【0046】
電圧印加法において使用する電極の材質としては、Al、Au、Ag、Cr、Cu、Ni、Ni-Cr、Pd、Taが好ましい。
【0047】
固定用基板7の材質は特に限定されず、所定の構造強度を有していればよい。ただし、光導波路と熱膨張係数等の物性値が近い方が好ましく、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、ニオブ酸リチウム−タンタル酸リチウム固溶体、KLiNb15の各単結晶が特に好ましい。
【0048】
本発明の素子を第二高調波発生装置として使用した場合には、高調波の波長は330−1600nmが好ましく、400−430nmが特に好ましい。
【0049】
上記の各例においては、強誘電体単結晶基板を、例えば5°オフカット基板としたが、このオフカット角度は特に限定されない。特に好ましくは、オフカット角度は1°以上であり、あるいは、20°以下である。
【0050】
また、基板1として、いわゆるXカット基板、Yカット基板、Zカット基板を使用可能である。Xカット基板やYカット基板を使用する場合には、第二の電極を裏面1Bに設けず、一表面1A上に設け、第一の電極と第二の電極との間に電圧を印加することができる。この場合には、第三の電極はなくともよいが、浮動電極として残しておいても良い。また、Zカット基板を使用する場合には、第二の電極を裏面1B上に設け、第一の電極と第二の電極との間に電圧を印加することができる。この場合には、第三の電極は必ずしも必要ないが、浮動電極として残しておいても良い。
【0051】
【実施例】
図3、図4および図6−図8を参照しつつ説明したプロセスに従って、図1のデバイスを形成した。具体的には、直径φ3インチ×厚さ0.5mmの、マグネシウムを5%ドープしたニオブ酸リチウム単結晶からなる基板1を準備した。基板1は5°オフカットY基板である。この基板1に、フォトリソグラフィー法によって金属タンタルからなる第一の電極30、第二の電極5、および第三の電極6を形成した。ここで、レチクル上においては、第一の電極30における一方の電極片34Aの設計幅を0.3μm、他方の電極片34Bの設計幅を0.4μmで設計した。この結果、第一の電極30における一方の電極片34Aおよび他方の電極片34Bの現実の幅は、それぞれ平均して0.411μmおよび0.453μmであった。また、離間部38の現実の幅は、平均して2.389μmであった。電極片34と第3の電極6との間隔は300μmとした。
【0052】
なお、使用しているステッパ露光装置の性能にも依存するが、設計した二つの電極片34Aおよび34Bの幅の0.3μmおよび0.4μmという大きさは、使用した露光装置の分解能力以上であり、レチクル上では電極片の幅の差が0.1μmであるのに対し、実際に形成された電極片の差は上記に示す通り、約0.04μmと小さくなっている。レチクルの設計通りに電極片の幅が形成される場合には、SHG出力の変換効率が低下することになるが、実際形成された電極片の幅の差が小さいので、均一に電極片と離間部の幅が構成されているものと比べて、変換効率の低下を極めて小さくすることができた。さらに、以下に説明する電圧印加を行うと、電極片34Aおよび34B位置で形成される分極反転の幅の差はさらに小さくなり、変換効率の低下はほとんどなくすことができた。但し、電極片34Aおよび34Bの設計幅が1μm以上となると、レチクルで設計した通りの幅で電極片が形成される。
【0053】
電源から2.0kVのパルス状の電圧(パルス幅20msec、25ヘルツ、パルス回数4回、印加電流の上限値は2mA)を発生させ、周期分極反転構造20を形成した。電圧を4回程度印加した時、各電極片34の先端から基板1の表面から垂直下方向に深さ約2.5μmの分極反転が周期状に形成された。
【0054】
次いで、基板1を基板の分極方向Bに垂直な面で切断、研磨し、フッ酸と硝酸との混合液を用いて断面のエッチングを行い、この後の断面の写真を撮影した。図1に示す分極反転パターンを有する周期分極反転構造が形成されていた。
【0055】
この素子を使用し、チタン−サファイアレーザーを使用し、第二高調波を発生させた。位相整合波長が850nmであり、第二高調波の波長は425nmであった。SHG変換効率は約830%/Wであった。基本波の入射出力が100mWのときに、30mWの第二高調波出力が得られ、第二高調波において、光損傷等による特性劣化は観測されなかった。
【0056】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、変換効率の低減を抑制しつつ、より高い分解能の周期を有する周期分極反転構造を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る周期分極反転構造20を示す図である。
【図2】図1に示す周期分極反転構造20の第一の分極反転部22Aおよび第二の分極反転部22B付近の拡大図である。
【図3】周期分極反転構造20の形成方法を説明するための図である。
【図4】図3に示す第一の電極30の一方の電極片34Aおよび他方の電極片34B付近の拡大図である。
【図5】第一の電極40の要部拡大図である。
【図6】周期分極反転構造20の形成方法において、基板1に第二の電極5が形成された状態を示す図である。
【図7】周期分極反転構造20の形成方法において、基板1に固定用基板7が形成された状態を示す図である。
【図8】周期分極反転構造20の形成方法においては、裏面1Bを研削加工する前の状態を示す図である。
【図9】従来例における周期分極反転構造20の形成方法を説明するための図である。
【符号の説明】
1 基板 1A 表面 1B 裏面 4A 分極反転方向 4B 非分極反転方向 5 第二の電極 6 第三の電極 6A 対向電極片 7 固定用基板 8 接合層 15 光導波路素子 15A 光導波路 15B、15C 縁 16、17 平板部 16A、17A 加工面 18B、18C除去部 20 周期分極反転構造 22 分極反転部 22A 第一の分極反転部 22B 第二の分極反転部 24 非分極反転部 24A 第一の非分極反転部 24B 第二の非分極反転部 28A 第一の間隔 28B 第二の間隔 30 第一の電極 32 給電電極 34 電極片 34A 一方の電極片 34B 他方の電極片 37A 第一の間隔 37B 第二の間隔 38A 第一の離間部 38B 第二の離間部 40 第一の電極 42 給電電極 44A 一方の電極片44B 他方の電極片 47A 第一の間隔 47B 第二の間隔 48A 第一の離間部 48B 第二の離間部

Claims (3)

  1. 光導波路と、この光導波路内に形成されている周期分極反転構造とを備えている波長変換素子であって、
    前記周期分極反転構造は、交互に配列された分極反転部と非分極反転部とを有し、マスクを用いて形成された電極を用いて形成され、
    設計幅の異なる第一の分極反転部と第二の分極反転部とが交互に配列されており、前記第一の分極反転部の設計幅と前記第二の分極反転部の設計幅との差分が前記マスクの精度の奇数倍であり、前記非分極反転部の設計幅が略一定であることを特徴とする、波長変換素子。
  2. 第一の電極を強誘電性材料からなる基板の一表面上に配置し、前記基板上の、当該第一の電極に対向する位置に第二の電極を配置し、前記第一の電極と前記第二の電極との間に電圧を印加することによって周期分極反転構造を形成する方法であって、
    前記第一の電極をマスクを用いて形成し、前記第一の電極は、設計幅の異なる交互に配列された一方の電極片および他方の電極片を有しており、前記一方の電極片の設計幅と前記他方の電極片の設計幅との差分が前記マスクの精度の奇数倍であり、前記第一の電極において隣接する前記一方の電極片と前記他方の電極片の間隔が略一定であることを特徴とする、周期分極反転構造の形成方法。
  3. 第一の電極を強誘電性材料からなる基板の一表面上に配置し、前記基板上の、当該第一の電極に対向する位置に第二の電極を配置し、前記第一の電極と前記第二の電極との間に電圧を印加することによって周期分極反転構造を形成する方法であって、
    前記第一の電極をマスクを用いて形成し、前記第一の電極において電極片の設計幅が一定であり、隣接する前記電極片の間に設計幅の異なる第一の離間部および第二の離間部が交互に形成されており、前記第一の離間部の設計幅と前記第二の離間部の設計幅との差分が前記マスクの精度の奇数倍であることを特徴とする、周期分極反転構造の形成方法。
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